JP2010209511A - 強靭で通気性のよい作業用手袋 - Google Patents

強靭で通気性のよい作業用手袋 Download PDF

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Abstract

【課題】湿式成膜される樹脂を用いてコーティングされた背抜き作業用手袋の風合い及び通気性を損ねずに、部分的に耐摩耗性を改善した作業用手袋を提供する。
【解決手段】湿式成膜される樹脂を用いてコーティングされた背抜き作業用手袋において、指先部や掌部を部分的にプレーティング編みによって補強した原手を用いることによって、大幅に耐摩耗性を改善することができる。柔らかさや使いやすさおよび通気性を損ねないために、必要最小限の部分に補強することによって、補強前の風合いを維持しながら、耐久性の良い手袋ができる。また、さらに指先部分にゴムまたは樹脂をコーティングすることにより、テープによる樹脂の剥がれを改善することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、コーティング樹脂を湿式で成膜させることを特徴とする作業用手袋において、強靭さと通気性を向上させるため、部分的に補強した作業用手袋に関する。
従来、繊維製手袋(以下、原手と称する)にゴムや樹脂でコーティングした手袋は、全面にコーティングしたフルコーティング手袋と、背部(手の甲側)と手首部を除いて樹脂をコーティングした背抜き手袋に分類される。
このように、ゴムや樹脂を原手にコーティングすることにより、グリップ性、耐摩耗性が向上し、作業性を高めている。
通常、コーティング層を付与するには、液体を使用する場合と、あらかじめ作成されたシートを使う場合とがある。液体を使用する場合は、(1)天然ゴムラテックスのようなエマルジョンを原手に付着させる場合と、(2)塩化ビニルのようにペーストの状態で原手に付着させる場合と、(3)ウレタン樹脂のように原手に染み込ませて、湿式で成膜する場合(以下、湿式成膜)とがある。
(1)の場合においては、凝固剤を使用することや、粘度や安定度を調整することによって、原手への浸透を防止している。(2)の場合においては、粘度及び降伏値を調整することによって、原手への浸透を防止している。
浸透の程度によって樹脂と繊維の剥離強度が異なり、耐久性に影響を与える。そのため、強度を上げる場合は、その剥離強度を上げることは重要である。しかしながら、浸透度合いが多くなると硬くなるという傾向がある。
一方で、(3)の場合においては、合成樹脂と水溶性溶剤とを混合した合成樹脂配合液を原手に染み込ませ、その後に水溶性溶剤を水と置換すること(湿式成膜)によって、フォーム状の合成樹脂と原手とを一体化させることが特徴である。湿式成膜によれば、水溶性溶剤を水と置換することから、樹脂がポーラスの状態となり、適度なグリップ性と通気性を兼ね備えた手袋となる。しかしながら、樹脂がポーラスであることは、構造的に弱いため、耐久性に欠けるという問題点がある。
耐久性を向上させる方法には、特許文献1のようにシートを作成して部分的に貼り付ける方法がある。また、原手の補強としては、特許文献2のようにプレーティング編みによって、部分的に補強する方法がある。
特許文献3には、通気性を良くする方法として、湿式成膜のウレタン樹脂を用いたフルコーティング手袋が提案されている。
特開平10−212614号公報 特開2000−80506号公報 特開2002−371411号公報
しかしながら、上記特許文献1では、耐久性は著しく向上するが、ゴムシートを貼り付けるため、製品が厚くなってしまい、使いにくいことや、貼り付ける工程が煩雑なことが問題であった。特許文献2では、メリヤスのみを補強することによって、通気性は良好であるが、表面が繊維であるために、耐久性の面で効果が少なく、問題があった。特許文献3では、湿式成膜のウレタン樹脂でコーティングされ、通気性はあるが、指先が破れやすいことが問題であった。
したがって、本発明では、コーティング樹脂を湿式成膜させる背抜き手袋において、フィット性や作業性を損なうことなく、部分的に強度アップした強靭で通気性のよい作業用手袋を提供することを課題とする。
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、繊維製手袋の掌部及び指部に、湿式成膜する樹脂をコーティングしている背抜き手袋において、繊維製手袋の一部または全部を、主糸と添糸とを編織してなるプレーティング編みで形成し、掌部及び指部を部分的に補強していることを第一の特徴とする。
ここで、背抜き手袋とは、図2(A)及び(B)に示すように原手の指先部分及び掌部分を樹脂によってコーティングしており、甲部はコーティングしていない手袋であり、甲部に通気性を有する手袋である。
ここで、プレーティング編みとは、通常、添糸編みとも言われ、主糸に他の添糸を給糸し、そのうちの一方を表面に、他方を裏面に表すようにした編み方であり、片面だけを見るときには1種類の糸のみによって編まれたように見える編み方である。
プレーティングに使用された添糸は、親指以外では各指の付け根部分をつなぐ様に線を形成する。親指付け根部にも同様に形成された線は、そのまま掌の周方向に伸びた線を形成する。また、袖と掌との境界にも同様の線を形成する。この線の幅は任意に変えることができる。
この編み方を用いる事によって、必要な部分だけにプレーティング編みを行うことで、必要な部分のみを強靭にし、他の部分は従来通りの柔軟性と通気性を保持させることができる。
湿式成膜する手袋においては、原手に樹脂を染み込ませるため、原手を補強した部分は、糸の密度も上がるが、樹脂の付着量も多くなることが特徴である。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、プレーティング編み手袋を構成している主糸及び/または添糸は、伸縮性を有する合成繊維、または天然繊維であることを第二の特徴とする。
合成繊維には、ナイロン、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、キュプラ、アセテート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ素系、ポリクラール、アラミド繊維、セルロース、グラスファイバー等の既存の繊維を用いることができる。
天然繊維には、綿、木綿、麻、羊毛等の既存の繊維を用いることができる。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、合成繊維は捲縮加工されたナイロン及び/またはポリエステルであることを第三の特徴とする。
ここで、捲縮加工とは、ウーリー加工とも言い、伸縮性を出すために施したものである。
繊維自体が強靭で、ウーリー加工のかかりやすいナイロン、ポリエステルを使用することにより、強靭さと通気性をより確保することができる。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、補強部分は、指部における面積の20%〜100%であって、かつ掌部における面積の40%〜100%を占めることを第四の特徴とする。
指の曲げ伸ばしやすさを損なわないためには、指先から第一関節までの、20%程度がより好ましい。しかし、指部全てが危険にさらされる用途には指部全てを補強することもできる。
掌部においても、用途により破れやすい部分だけを選択して補強することができる。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、湿式成膜する樹脂は、ウレタン樹脂であることを第五の特徴とする。
ウレタン樹脂以外では、水溶性の溶剤に溶かして使用できるものであれば良く、ナイロン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂などの公知の樹脂があり、好ましくは分子量5〜13万のウレタン樹脂がよい。また、これらを混合させたものであっても良い。
水溶性の溶剤としては、DMAA(ジメチルアセトアミド)、MEK(メチルエチルケトン)等があり、好ましくはDMF(ジメチルホルムアミド)がよい。
本発明の強靭で通気性のよい作業用手袋は、特に補強した指先部の上層にゴムもしくは樹脂を部分的に付着してなることを第六の特徴とする。
これは、上記の樹脂コーティングの上層の一部または全部にゴムまたは樹脂をコーティングすることにより、テープによる樹脂の剥がれ性を改善することができる。すなわち、湿式成膜する樹脂は、ポーラス状になるため、テープによって樹脂の剥がれが生じることがあるため、部分的強靭さをより向上させることができる。
上層部に付着させるゴムとしては、天然ゴム(NR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)があり、樹脂としては、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂(PU)など、公知の樹脂が用いられる。特に素材が安価であり、強度および耐油性に優れていることから、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)が好ましい。
(1)樹脂コーティング部分のみを厚くする従来の方法に比べて、原手の補強と樹脂コーティングとの相乗効果により、大幅に強度を改善することができる。
(2)特に、湿式成膜するウレタン樹脂を使うことによって、通気性を持った作業用手袋ができる。
(3)指部と4本胴または5本胴を部分的にプレーティングすることにより、フィット感を保ち、使いやすさ、耐久性を兼ね備えた作業用手袋ができる。
(4)ウレタン背抜き手袋で問題となっている粘性物質(例えばセロハンテープ等)による樹脂の剥がれに対しては、さらに指先をゴムまたは異なる樹脂でコーティングすることで、改善することができる。
(5)原手による補強は、補強部分を指先部分にしたり、掌部分にしたりと様々に設計することが容易であり、従来のウレタン背抜き手袋工程を変更せずに製造できるため安価にできる。
実施例1で作成された手袋サンプルの模式図(掌部)。 (A)比較例2で作成された従来手袋サンプルの模式図(掌部)、(B)比較例2で作成された従来手袋サンプルの模式図(甲部)。 実施例3で作成された指先部及び掌部(4本胴)を部分的に補強した模式図(掌部)。 指先部及び掌部(5本胴)を部分的に補強した手袋サンプルの模式図(掌部)。 比較例1で作成された指部全体を部分的に補強した手袋サンプルの模式図(掌部)。 (A)実施例4で作成された手袋サンプルの模式図(掌部)、(B)実施例4で作成された手袋サンプルの模式図(甲部)。
次に手袋の製造工程について、実施例を挙げて説明する。
ウーリーナイロン100デニール双糸2本に、指先と掌部のみをウーリーナイロン50デニール双糸2本をプレーティング編みして作成した原手を手袋金型に取り付け、ウレタン樹脂配合液(ウレタン樹脂(固形分30%) 100重量部、DMF 150重量部、セル調整剤 1重量部)に掌部を浸漬する。引き上げて、50℃の温水に30分間浸漬し、DMFを水と置換する。
その後100℃で1時間乾燥させて、ウレタン樹脂コーティング背抜き手袋を作成した。サンプルの掌部側からの模式図を図1に示す。破線の部分はウレタン樹脂をコーティングされた部分とされていない部分との境界線である。
その手袋の掌部について、欧州統一規格(EN388)の耐摩耗試験(マーチンデール摩耗試験)により耐摩耗性を測定し、その破損回数から8000回以上(レベル4)を◎、2000回以上(レベル3)を○、500回以上(レベル2)を△、100回以上(レベル1)を×、100回未満(レベル0)を××の4段階で評価した。
また、数人の官能テストによってフィット性、通気性を測定した。フィット性については、手にはめて指の曲げ伸ばしをした時の感覚を◎、○、△、×の4段階で評価した。通気性については、常温の部屋で10分間手袋をはめた後の手のムレを◎、○、△、×の4段階で評価した。
ウーリーナイロン100デニール双糸2本に、指先と掌部のみをウーリーポリエステル50デニール双糸2本をプレーティング編みして作成した原手を用い、実施例1と同様にしてウレタン背抜き手袋を作成した。また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。
ウーリーナイロン100デニール双糸2本に、指先と掌部の5本胴のみをウーリーナイロン50デニール双糸2本でプレーティング編みして作成した原手を使用し、実施例1と同様にしてウレタン背抜き手袋を作成した。サンプルの掌部側からの模式図を図3に示す。また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。
(比較例1)
ウーリーナイロン100デニール双糸2本に、手袋全体をウーリーナイロン50デニール双糸2本でプレーティング編みして作成した原手を用い、実施例1と同様にウレタン背抜き手袋を作成した。また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。
(比較例2)
従来のウレタン背抜き手袋である、ウーリーナイロン100デニール双糸2本により作成した原手を用い、実施例1と同様にウレタン背抜き手袋を作成した。また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。サンプルの掌部と甲部側からの模式図を図2(A)及び(B)に示す。図1と同様に破線部分はウレタン樹脂をコーティングされた部分とされていない部分の境界線である。
(比較例3)
実施例1において、ウレタン加工を施さないものについても試験した。すなわち、実施例1の原手と同様にプレーティングした原手のみについて、また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。
(比較例4)
比較として、比較例2の原手と同様にプレーティングなしの原手のみについて、また、同様に耐摩耗性及びフィット性、通気性を測定した。
以上の結果から、掌部をプレーティング編みによって補強している実施例1〜3及び比較例1においては、破損回数が8000回以上となり、プレーティング編みなしである比較例2の2500回と比較して3倍以上になった。糸を1.5倍に増やしたことにより、手袋の耐摩耗性が3倍以上となったことは、予想以上の結果であった。
また、原手のみではプレーティング編みによって補強している比較例3の場合は150回であり、プレーティング編みなしの比較例4の場合では100回であった。このことは、糸を1.5倍に増やすことによっては、強度も1.5倍程度にしかならないことがわかった。
このことから、プレーティング編みした原手にウレタン樹脂をコーティングした場合には、糸が増えることでウレタン付着量が増し、さらに糸密度も増すため、糸それぞれがウレタン中で構造的に柱の役目を果たしており、相乗効果になっていると考えられる。実際に摩耗試験の途中で試料を観察すると、摩耗面に対して糸が垂直に並んでおり、ウレタン樹脂を補強する役目を果たしていることがわかった。これらの結果からプレーティング編みすることによって糸密度を上げることは、ウレタン樹脂との相互作用により、かなりの相乗効果があることが確認できた。
しかしながら、糸を多くすることによって、ウレタンの付着量が増し、風合いが硬くなるため、ウレタン背抜き手袋の柔らかく使いやすい風合いを維持することができない。そのため、補強部は必要最小限にすることが重要である。特に指部の間接部分は作業性を悪くすることから、図3及び図4に示すように指全体の補強をせず、指先のみを補強するのが好ましい。もちろん、指部全体を保護する必要があるものについては、図5のように補強することもできる。
指先部をプレーティングした原手を用いて、実施例1と同様にしてウレタン樹脂をコーティングした後に、さらに指先だけをNBR配合液(乾燥重量部でNBR 100重量部に対して、コロイド硫黄 1重量部、BZ 1重量部、亜鉛華 3重量部、安定剤ABS 1重量部、増粘剤 1重量部)に浸漬した手袋を作成した。
図6(A)及び(B)にサンプルの掌部及び甲部側からの模式図を示す。
この手袋にセロハンテープを貼り付けた後に剥がすことで、樹脂の剥がれが生じるか否かの試験を行い、実施例1の手袋と比較した。
実施例1ではウレタン樹脂が剥がれるのに対して、実施例4では剥がれなかった。このように、指先にさらにNBRコーティングすることによって湿式ウレタン樹脂手袋と比較して、テープによる樹脂の剥がれ性について改善することができた。
以上のことから、ウレタン手袋において、原手部分の補強を行うことは摩耗強度を大幅に上げることができる。特に風合いを損なわないために指先もしくは掌部を部分的に補強することによって、使いやすくて耐久性のある手袋を提供することができる。また、さらに指先にゴムまたは、樹脂をコーティングすることによって、テープによる樹脂剥離を改善することができる。
1 補強部分
2 補強なし部分
3 ウレタン樹脂のコーティングされた部分とされていない部分との境界線
4 袖口部分
5 樹脂付着なし補強なし部分(補強なし原手のみの部分)
6 樹脂付着なし補強部分(原手補強のみの部分)
7 上層NBRコーティング部分

Claims (6)

  1. 繊維製手袋の掌部及び指部に、湿式成膜する樹脂をコーティングしている背抜き手袋において、繊維製手袋の一部または全部を、主糸と添糸とを編織してなるプレーティング編みで形成し、掌部及び指部を部分的に補強していることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
  2. 請求項1において、プレーティング編み手袋を構成している主糸及び/または添糸は、伸縮性を有する合成繊維、または天然繊維であることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
  3. 請求項2において、合成繊維は捲縮加工されたナイロン及び/またはポリエステルであることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
  4. 請求項1において、補強部分は、指部における面積の20%〜100%であって、かつ掌部における面積の40%〜100%を占めることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
  5. 請求項1において、湿式成膜する樹脂は、ウレタン樹脂であることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
  6. 請求項1〜5のうちいずれか一項において、補強した指先部の上層にゴムもしくは樹脂を部分的に付着してなることを特徴とする強靭で通気性のよい作業用手袋。
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