JP2010209379A - 端子・コネクタ用銅合金材及びその製造方法 - Google Patents

端子・コネクタ用銅合金材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を兼備した端子・コネクタ用に最適な銅合金材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】Niを1質量%以上5質量%以下、Siを0.2質量%以上1質量%以下、およびTiを0.03質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金母相の平均結晶粒径が10μm以下、かつ、前記銅合金母相中に分散する析出物の平均結晶粒径が0.2μmより大きく1μm以下であり、前記析出物の数密度が0.3個/μm以上1.2個/μm以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、端子・コネクタ用銅合金材及びその製造方法に関し、特に、Cu−Ni−Si系合金材からなる端子・コネクタ用銅合金材及びその製造方法に関するものである。
近年、各種の電気・電子機器において小型・薄型化及び軽量化が進行している。それに伴い、小型・薄型化及び軽量化された電気・電子機器において使用される部品の小型化も進行している。
このような部品の小型化を実現するために、端子・コネクタ部品においては小型で電極間のピッチの狭いものが求められる傾向にある。
また、こうした小型化によって、端子・コネクタ部品に使用される素材においても、より薄肉であることが求められる傾向にある。
その一方、使用される素材が薄肉であっても、機器内の電気接続の信頼性を保つ必要から、より高いばね性を持った素材が要求されている。この高いばね性を確保するためには、素材の引張強さ及び耐力(以降、機械的強度ともいう)を十分に高める必要がある。
さらに、こうした小型化に伴い、より小さく複雑な形状の部品を一体成型で製作する要求も強くなっている。そのため、より厳しい条件での曲げ加工に適用できる高い曲げ加工性を有する素材が強く求められている。
また、電気・電子機器の小型・薄型化及び軽量化と同時に、機器の高性能化も進行している。この機器の高性能化に伴う電極数の増加や通電電流の増加によって、発生するジュール熱も増加傾向にあり、従来以上に導電性のよい素材への要求も強まっている。
まとめると、端子・コネクタ部品の素材としては、高い機械的強度および良好な曲げ加工性を同時に満足し、さらに良好な導電性を兼備する素材が強く求められている。
従来、ばね性を要求される端子・コネクタ部品の素材には、リン青銅やベリリウム銅が広く使用されてきていた。
しかしながら、リン青銅の場合、導電率が20%IACS程度にとどまることから、前述したジュール熱の増加に対応できないという問題がある。
また、ベリリウム銅の場合、高いばね性と良好な導電性を兼備するものの高価であることから、汎用的な部品に広く適用していくには限界がある。
そこで、より高いばね性や導電率への要求に対して、低コストの素材としてCu−Ni−Si系などの銅合金材が用いられてきている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
Cu−Ni−Siを主成分とする銅合金材は、合金成分であるNiやSiが単独又は化合物の形で母相となるCu相中に析出する析出硬化型の合金であり、40%IACS前後の導電率を持つため、ジュール熱の増加に対応することができる。
さらに、ベリリウム銅に比べて低コストでの製造が可能であるため、端子・コネクタ部品を安価に提供できる。
特許第2572042号公報 特許第2977845号公報 特開2008−1937号公報 特開2008−75152号公報
しかし、こうしたCu−Ni−Si系合金材であってもばね性、すなわち機械的強度と曲げ加工性とは二律背反的な関係を有する。つまり、機械的強度を高めると、曲げ加工性が低下し、曲げ加工性を高めると、機械的強度が低下するという問題がある。
そのため、従来の素材では高いばね性と良好な曲げ加工性を同時に満足させることは困難であった。
本発明の目的は、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を兼備した端子・コネクタ用に最適な銅合金材およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第一の態様は、Niを1質量%以上5質量%以下、Siを0.2質量%以上1質量%以下、およびTiを0.03質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金母相の平均結晶粒径が10μm以下、かつ、前記銅合金母相中に分散する析出物の平均結晶粒径が0.2μmより大きく1μm以下であり、前記析出物の数密度が0.3個/μm以上1.2個/μm以下であることを特徴とする。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載の発明において、前記銅合金母相中の析出物に加え、さらに平均粒径が10nmより大きく30nm以下の微細析出物が分散していることを特徴とする。
本発明の第三の態様は、第一または第二の態様に記載の発明において、Snを0質量%より大きく2質量%以下、Znを0質量%より大きく5質量%以下含有することを特徴とする。
本発明の第四の態様は、第一ないし第三のいずれかの態様に記載に示す組成を有する銅合金を素材として形成した後、圧延加工、溶体化および時効処理を組み合わせて所望形状の銅合金材を形成する銅合金材の製造方法において、前記溶体化を800℃以上860℃以下の温度範囲において行い、前記時効処理を380℃以上450℃以下の範囲の温度であるT℃において、下記式1に示される指数が14300以上14800以下となるt時間行うことを特徴とする端子・コネクタ用銅合金材の製造方法である。
指数=(T+273)×(20+Logt)(式1)。
本発明の第五の態様は、第一ないし第三のいずれかの態様に記載された組成を有する銅合金を素材として形成した後、素材である前記銅合金に対して熱間圧延を行い、前記熱間圧延された前記銅合金を800℃以上860℃以下の温度範囲において溶体化し、前記溶体化された前記銅合金に対して、加工度が5%より大きく20%以下の冷間圧延を行い、前記冷間圧延が行われた前記銅合金を、380以上450℃以下の範囲の温度であるT℃において、下記式1に示される指数が14300以上14800以下となるt時間、時効処理することを特徴とする端子・コネクタ用銅合金材の製造方法である。
指数=(T+273)×(20+Logt)(式1)
本発明によれば、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を兼備した端子・コネクタ用に最適な銅合金材およびその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態における銅合金材の製造工程フローの説明図である。 本発明の実施例及び比較例における組成、溶体化温度、溶体化時間、時効処理温度、時効処理時間、指数を示した図である。 本発明の実施例及び比較例における平均結晶粒径および析出物の数密度、ならびに試験結果である引張強さ、0.2%耐力およびW曲げ評価を示した図である。
発明者らは、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を兼備した端子・コネクタ用に最適なCu−Ni−Si系合金材の組成およびそれを製造する工程について種々検討した。
その結果、発明者らは、前記Cu−Ni−Si系合金材にTiを加え、さらに銅合金母相内に比較的大きな平均粒径の析出物を所定の数密度で分散させることにより、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を有する銅合金材が得られることを見出した。
以下に、本発明の一実施形態に係る端子・コネクタ用銅合金材及びその製造方法について説明する。
(銅合金材の組成)
銅合金の素材には、Niを1質量%以上5質量%以下、Siを0.2質量%以上1質量%以下、およびTiを0.03質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金材を用いる。以下、前記銅合金材に添加される各合金成分について詳述する。
(Ni、Si)
Ni、Siは、Ni、Siを主成分とする金属間化合物を銅合金材中に分散析出させるために添加される。前記金属間化合物によって銅合金材のばね性すなわち機械的強度が高まるとともに、良好な導電率を保つことができる。
なお、Ni、Siを主成分とする金属間化合物としては、例えば、NiSiが挙げられる。NiSiの他にも、NiSi、NiSiが挙げられる。
Niの含有量は1質量%以上5質量%以下に規定する。この範囲に規定することにより、高い機械的強度と良好な導電率を効果的に両立させることができる。
この含有量よりも少ないと、前記金属間化合物を銅合金材中に十分に分散できず、高い強度を得ることができなくなる。一方、この含有量よりも多いと、鋳造時に形成した粗大な晶出物を後述する溶体化において、十分に固溶させることができない。そのため、前記金属間化合物を銅合金材中に十分に分散できなくなる。
なお、Niの含有量は2.5質量%以上4質量%以下にあれば、より好ましいといえる。
Siの含有量は0.2質量%以上1質量%以下に規定する。この範囲に規定することにより、高い機械的強度と良好な導電率を効果的に両立させることができる。
この含有量よりも少ないと、Niの場合と同様に、前記金属間化合物を銅合金材中に十分に分散できず、高い強度を得ることができなくなる。一方、この含有量よりも多いと、鋳造時に形成した粗大な晶出物を後述する溶体化において、十分に固溶させることができない。そのため、前記金属間化合物を銅合金材中に十分に分散できなくなる。
なお、Siの含有量は0.5質量%以上0.8質量%以下にあれば、より好ましいとい
える。
(Ti)
Tiは、Cu−Ni−Si系合金材において800℃以上の高温の溶体化処理が行われた場合に、結晶粒の成長を抑え、微細な結晶粒を維持するために添加される。ここで、Ti含有物はCuからなる母相中に析出してTi含有析出物となり、銅合金材の機械的強度を向上させる。
Tiの含有量は0.03質量%以上0.5質量%以下に規定する。この範囲に規定することにより、高い機械的強度と良好な導電率を効果的に両立させることができる。
この含有量よりも少ないと、Tiによる結晶成長抑制効果が十分に得られなくなる。一方、この含有量よりも多いと、導電率低下や曲げ加工性の悪化といった悪影響を引き起こすおそれがでてくる。
なお、Tiの含有量は0.05質量%以上0.3質量%以下にあれば、より好ましいといえる。
(Sn、Zn)
さらに前記銅合金材の組成に加えて、Snを0質量%より大きく2質量%以下、Znを0質量%より大きく5質量%以下含有するのが好ましい。なぜなら、より高い機械的強度を実現しやすくなるとともに、めっき密着性やはんだ濡れ性、耐マイグレーションといつた端子・コネクタ用素材に要求される副次的な特性を向上させることができるためである。
この含有量よりも多いと、導電率の低下などの悪影響を引き起こすおそれがでてくる。
なお、Snの含有量は0.3質量%以上2質量%以下にあれば、より好ましいといえる。添加物による悪影響なしに、上述する副次的な特性を得ることができるためである。
(銅合金材の金属組織)
次に、前記銅合金材における平均結晶粒径および析出物の数密度について詳述する。
まず、本実施形態における銅合金材には、0.2μmより大きくlμm以下という比較的大きな平均結晶粒径のTi含有析出物を分散させている。このTi含有析出物は、本実施形態の溶体化処理温度でも存在し、溶体化の際に発生する母相結晶粒径の粗大化の抑制、さらには時効処理後の銅母相内における結晶粒の微細化という効果を発揮することができる。
なお、前記析出物に加えて、Ni、Siを主成分とする平均結晶粒径が数十nmオーダーの微細な金属間化合物(以降、微細析出物ともいう)が分散されているのが好ましい。具体的には、10nmより大きく30nm以下の平均結晶粒径を有していることが好ましい。この範囲ならば、後述する時効処理にて析出を強化することができるためである。さらには、0.2μmより大きくlμm以下という比較的大きな平均結晶粒径の前記析出物との相互作用により、より高い機械的強度、曲げ加工性、導電性が得られるためである。なお、前記微細析出物が平均結晶粒径10nm以下だと、析出物が容易に転位方向にせん断されることが原因と考えられる機械的強度の低下が生じる。一方、平均結晶粒径30nmよりも大きくても、析出物の転位移動を妨げる効果が小さくなることが原因と考えられる機械的強度の低下が生じる。
なお、前記平均結晶粒径とは、走査型電子顕微鏡の反面反射電子像又は透過型電子顕微鏡の暗視野像観察結果をもとに画像解析した粒子径の粒度分布から求めた平均径のことであって、平均径は、粒度分布を小粒子径側から積算した積算値50%の粒度のことである。
ここで、Cuを主成分とする母相の平均結晶粒径について詳述する。銅母相の平均結晶粒径を、0μmより大きく10μm以下に規定する。これにより、高い機械的強度を保持
しつつも良好な曲げ加工性を得ることができる。10μmよりも大きいと、結晶粒が粗大であるため、曲げ加工性が低下する可能性がある。
好ましくは0μmより大きく8μm以下に規定する。これにより、さらに高い機械的強度を得ることができる。
次に、前記析出物における平均結晶粒径を、0.2μmより大きく1μm以下に規定する。さらに、前記析出物の数密度を、0.3個/μm以上1.2個/μm以下に規定する。これにより、十分なばね性すなわち高い機械的強度を保持しつつ、良好な曲げ加工性を得ることができる。
前記析出物における平均結晶粒径よりも小さいと、結晶粒径微細化効果が十分に発揮されない。従って、結晶粒が粗大化し、曲げ加工性が低下する可能性がある。一方、この析出物における平均結晶粒径よりも大きいと、結晶粒径微細化効果を有するはずの前記析出物自体が粗大であるため、母相の結晶粒が粗大化するのを防止できないばかりか、前記析出物が変形の起点となり、曲げ加工性が低下する可能性がある。
前記数密度よりも小さいと、析出物が少なすぎるので、結晶粒径微細化効果が十分に発揮されない。従って、結晶粒が粗大化し、曲げ加工性が低下する可能性がある。一方、この数密度よりも大きいと、平均粒径が比較的大きい析出物が多すぎるので、曲げ加工時に、せん断体の形成が促進され、却って曲げ加工性が低下する。
なお、前記析出物の数密度は0.3個/μm以上1.0個/μm以下にあれば、より好ましい。
(銅合金材の製造工程)
図1は、本発明の実施に係る銅合金材の製造工程のフローを示す図である。
本実施の形態の銅合金材は、上述の銅合金組成を有する銅合金を素材として形成した後、圧延加工、溶体化および時効処理を組み合わせて所望形状の銅合金材を形成する際、前記溶体化を800℃以上860℃以下の温度範囲において行い、前記時効処理を380℃以上450℃以下の範囲の温度であるT℃において、下記式1に示される指数が14300以上14800以下となるt時間行う。
指数=(T+273)×(20+Logt)(式1)
以下、銅合金材の製造工程を、工程毎に詳述する。
(圧延加工処理)
前記銅合金を素材として形成した後、銅合金材の板厚をより薄く等、必要に応じて熱間圧延や冷間圧延などの圧延加工処理を行う。前記冷間圧延によって、銅合金材は加工硬化して機械的強度が向上する。また、前記冷間圧延によって銅合金材中には多数の格子欠陥が導入され、これが後の時効処理において析出物形成の起点として働くことから、均一に分散した析出を促進する効果も持つ。
(溶体化処理)
次に、上記組成を持つ銅合金材を、溶体化処理する。ここで、溶体化処理時の加熱は、鋳造工程で生じた銅合金材中の析出物をいったん母相中に固溶させる効果を有する。この溶体化処理により、この後の時効処理で生成する析出物の分布状態をより均一且つ微細な望ましい状態にすることができる。
溶体化処理は、より好ましい溶体化状態を得るために、加熱温度を800℃以上860℃以下の温度範囲とすることが望ましい。また、溶体化処理後はできるだけ急速に冷却することが望ましい。
なお、前記溶体化処理の後、必要に応じて再び冷間圧延などの圧延加工処理を行ってもよい。
(時効処理)
次に、溶体化処理した銅合金材を時効処理する。前記時効処理は析出強化に寄与する微細な析出物を多数分散させるために行う。これにより、銅合金材の導電率とばね性を向上させることができる。また、前記冷間加工で低下した延性を回復させる効果も持つ。
前記時効処理の温度(T(℃))を、380℃以上450℃以下に規定する。
微細な析出物を析出させるという点では低温で長い時間加熱させることが好ましいものの、380℃より小さいと、金属間化合物の析出に非常に多くの時間がかかり、量産に向かない。
一方、析出を促進させるという点では温度を上げることが好ましいものの、450℃より大きいと、析出する金属間化合物のサイズが粗大になり、析出強化に寄与するサイズの析出物を得ることができず、高い強度が得られない。
なお、前記時効処理の温度は400℃以上440℃以下にあれば、より好ましい。
また、所望の析出物を得るためには、温度と共に時間(t(h))を規定することが必要である。そのため、時効処理などの熱活性過程を伴う現象に対してよく用いられるLarson―Miller指数(前記式1)にて時間条件を設定した。
前記式1に従って時間条件を設定した場合、前記指数が14300以上14800以下となるt時間、時効処理を行う。
前記範囲よりも短時間の条件では、析出が十分に起こらないために充分な導電率や機械的強度を得ることができない。一方、前記範囲より長時間の条件では、一度の時効処理で一気に析出が進行して析出物が粗大化し、機械的強度が低下するおそれがある。
なお、前記指数が14300以上14500以下にあれば、より好ましい。
従って、前記時効処理の温度が380℃以上450℃以下、前記指数が14300以上14800以下ならば、所望の金属組織形態を得ることができる。その結果、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性を得ることができる。
なお、前記溶体化処理および時効処理を1セットとして、複数セット繰り返し行ってもよい。
上述した本実施形態で得られる銅合金材は、Cu−Ni−Si系合金材の優れた導電性とコストパフォーマンスを損なうことなく、従来よりも高いばね性と良好な曲げ加工性をバランスよく兼ね備えた材料であり、電気・電子部品の小型・薄型化、軽量化および高性能化に大きく貢献することができる。
以下に、本発明の実施例を説明する。
まず、種々の組成の銅合金材の試料(実施例、比較例)を作製して特性の評価を行い、銅合金材の組成を検討した。
(実施例1)
実施例及び比較例における銅合金材の組成と、溶体化温度、溶体化時間、時効処理温度、時効処理時間、指数との関係を記載した図2に示すように、無酸素銅を母材にして、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを0.05質量%含有した銅合金材を、高周波溶解炉を用いて溶製し、インゴット(直径30mm、長さ250mm)に鋳造した。このインゴットを850℃に加熱して厚さ8mmまで熱間圧延した。その後、厚さ0.25mmまで冷間圧延した。なお、図2において、不可避不純物はCuに含めて表記した。
次に、溶体化処理として、冷間圧延した銅合金材を840℃に加熱して1分間保持した後、水中に投入して室温(約20℃)まで冷却した。
次に冷却した材料を厚さ0.2mmまで冷間圧延した。
その後、これに430℃で4時間保持する時効処理を行った。なお、図1に示すように
、時効処理の際のLarson―Miller指数(式1)は、14483であった。
以上のようにして製造した実施例1の試料について、平均結晶粒径、析出物の数密度を測定した。その結果、図3に示すように、平均結晶粒径は8μm、析出物の数密度は1.1個/μmであった。
さらに、引張強さ、0.2%耐力の評価試験を実施すると共に、W曲げ試験を実施した。前記測定結果および試験結果を図3に示す。
なお、前記測定方法に関して、平均結晶粒径は、圧延方向に垂直な試料断面を金属顕微鏡(倍率400倍)で観察し、JIS H0501の比較法による結晶粒径評価に準拠した方法で評価した。析出物の数密度は圧延方向に垂直な試料断面を、FE―SEMによる後方向散乱電子像観察(倍率10000倍)を行い、その像から析出物の直径が0.1μm以上1μm以下の範囲にある析出物の数量を計測し、これを計測面積で除して算出した。
引張強さと0.2%耐力はJIS Z2241に準拠した引張試験で測定した。
W曲げ試験は、曲げ軸が試料の圧延方向と平行になるように採取した試験片を用いてJIS H3110、JIS H3130に準拠した方法で行い、試料表面に割れが発生しない曲げ半径の最小R(mm)を求めて試料の厚さt(mm)との比率R/tで評価結果を表した。
その結果、実施例1においては、平均結晶粒径が8μm、析出物の数密度が1.1個/μm、引張強さが852MPa、0.2%耐力が772MPa、R/t≦1.0の結果となり、850MPa以上の高い引張強さ及び750MPa以上の高い0.2%耐力の高い強度、ならびに優れた曲げ加工性を兼ね備えた銅合金材が得られた。
(実施例2〜4)
実施例2の試料は、実施例1と同じく無酸素銅を母材にして、Niを4.0質量%、Siを0.8質量%、Tiを0.05質量%含有した銅合金材を溶製し、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を1.2個/μmとした。
実施例3の試料は、実施例1と同じく無酸素銅を母材にして、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを0.1質量%含有した銅合金材を溶製し、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を9μm、析出物の数密度を1.1個/μmとした。
実施例4の試料は、実施例1と同じく無酸素銅を母材にして、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを0.3質量%含有した銅合金材を溶製し、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を1.2個/μmとした。
(実施例5〜10)
実施例5の試料は、実施例1と同じく無酸素銅を母材にして、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを0.05質量%含有した銅合金材に、さらに、Snを0.2質量%、Znを1.7質量%添加して溶製し、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を0.9個/μmとした。
また、実施例6の試料は、実施例5の試料の組成において、時効処理時間を8時間とし
たこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を1.2個/μmとした。
また、実施例7の試料は、実施例5の試料の組成において、溶体化温度を830℃としたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を9μm、析出物の数密度を0.7個/μmとした。
また、実施例8の試料は、実施例5の試料の組成において、溶体化温度を860℃としたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を9μm、析出物の数密度を0.6個/μmとした。
また、実施例9の試料は、実施例5の試料の組成において、時効処理温度を400℃、時効処理時間を21時間としたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を1.0個/μmとした。
また、実施例10の試料は、実施例5の試料の組成において、時効処理温度を450℃、時効処理時間を2時間としたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。このとき、平均結晶粒径を9μm、析出物の数密度を0.8個/μmとした。
実施例2〜10の組成及び処理条件を図2に示す。また、実施例2〜10の特性を図3に示す。
実施例2〜10においても、850MPa以上の高い引張強さ及び750MPa以上の高い0.2%耐力の高い強度、ならびに優れた曲げ加工性を兼ね備えた銅合金材が得られた。またSn、Znの添加が機械的強度の向上に寄与していることがわかった。
(比較例1〜4)
比較例1の試料は、Niを本実施形態の範囲(1質量%以上5質量%以下)から外れた0.5質量%、Siを本実施形態の範囲(0.2質量%以上1質量%以下)から外れた0.1質量%、Tiを0.1重量%含有し、平均結晶粒径を本実施形態の範囲(10μm以下)から外れた25μm、析出物の数密度を本実施形態の範囲(0.3個/μm以上1.2個/μm以下)から外れた0.2個/μmとした銅合金材であることを除けば、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、Ni、Si量を少なくすると、平均結晶粒径が大きくなり、機械的強度が低下し、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
比較例2の試料は、Niを本実施形態の範囲(1質量%以上5質量%以下)から外れた8.0質量%、Siを0.5質量%、Tiを0.1重量%含有し、析出物の数密度を0.3個/μmとした銅合金材であることを除けば、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、Ni量を多くすると、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
比較例3の試料は、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを本実施形態の範囲(0.03質量%以上0.5質量%以下)から外れた0.025質量%含有し、平均結晶粒径を本実施形態の範囲(10μm以下)から外れた11μm、析出物の数密度を1.0個/μmとした銅合金材であることを除けば、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、Ti量を少なくすると、平均結晶粒径が大きくなり、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
比較例4の試料は、Niを3.0質量%、Siを0.7質量%、Tiを本実施形態の範囲(0.03質量%以上0.5質量%以下)から外れた0.7重量%含有し、平均結晶粒径を8μm、析出物の数密度を本実施形態の範囲(0.3個/μm以上1.2個/μm以下)から外れた2.0個/μmとした銅合金材であることを除けば、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、Ti量を多くすると、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
(比較例5〜8)
また、比較例5の試料は、実施例5の試料の組成において、溶体化温度を本実施形態の範囲(800℃以上860℃以下)から外れた780℃とし、析出物の数密度を0.9個/μmとしたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、溶体化温度を低くすると、機械的強度が低下し、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
また、比較例6の試料は、実施例5の試料の組成において、溶体化温度を本実施形態の範囲(800℃以上860℃以下)から外れた870℃とし、平均結晶粒径を本実施形態の範囲(10μm以下)から外れた11μmとし、析出物の数密度を本実施形態の範囲(0.3個/μm以上1.2個/μm以下)から外れた0.2個/μmとしたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、溶体化温度を高くし、平均結晶粒径を大きくし、析出物の数密度を低くすると、0.1μm以上5μm以下のサイズの析出物が少なくなることから、比較例1と同様に平均結晶粒径が大きくなり、曲げ加工性が悪くなることがわかった。
また、比較例7の試料は、実施例5の試料の組成において、時効処理温度を410℃、指数を本実施形態の範囲(14300以上14800以下)から外れた14071とし、析出物の数密度を0.9個/μmとしたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、前記指数を低くすると、機械的強度が低下することがわかった。
また、比較例8の試料は、実施例5の試料の組成において、時効処理温度を450℃、指数を本実施形態の範囲(14300以上14800以下)から外れた14895とし、平均結晶粒径を9μmとし、析出物の数密度を1.0個/μmとしたこと以外は、前記実施例1と全く同一の工程を実施して作製し、試験を行った。図3より、前記指数を高くすると、比較例7と同様に、機械的強度が低下することが分かった。

Claims (5)

  1. Niを1質量%以上5質量%以下、Siを0.2質量%以上1質量%以下、およびTiを0.03質量%以上0.5質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金母相の平均結晶粒径が10μm以下、かつ、前記銅合金母相中に分散する析出物の平均結晶粒径が0.2μmより大きく1μm以下であり、前記析出物の数密度が0.3個/μm以上1.2個/μm以下であることを特徴とする端子・コネクタ用銅合金材。
  2. 前記銅合金母相中の析出物に加え、さらに平均粒径が10nmより大きく30nm以下の微細析出物が分散していることを特徴とする請求項1に記載の端子・コネクタ用銅合金材。
  3. Snを0質量%より大きく2質量%以下、Znを0質量%より大きく5質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の端子・コネクタ用銅合金材。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに示す組成を有する銅合金を素材として形成した後、圧延加工、溶体化および時効処理を組み合わせて所望形状の銅合金材を形成する銅合金材の製造方法において、
    前記溶体化を800℃以上860℃以下の温度範囲において行い、
    前記時効処理を380℃以上450℃以下の範囲の温度であるT℃において、下記式1に示される指数が14300以上14800以下となるt時間行うことを特徴とする端子・コネクタ用銅合金材の製造方法。
    指数=(T+273)×(20+Logt)(式1)
  5. 請求項1ないし3のいずれかに示す組成を有する銅合金を素材として形成した後、
    素材である前記銅合金に対して熱間圧延を行い、
    前記銅合金を800℃以上860℃以下の温度範囲において溶体化し、
    前記溶体化された前記銅合金に対して、加工度が5%より大きく20%以下の冷間圧延を行い、
    前記冷間圧延が行われた前記銅合金を、380以上450℃以下の範囲の温度であるT℃において、下記式1に示される指数が14300以上14800以下となるt時間、時効処理する
    ことを特徴とする端子・コネクタ用銅合金材の製造方法。
    指数=(T+273)×(20+Logt)(式1)




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