JP2010207696A - メタクリル酸製造用触媒の製造方法及びメタクリル酸の製造方法 - Google Patents

メタクリル酸製造用触媒の製造方法及びメタクリル酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 優れた転化率及び選択率でメタクリル酸を製造できるメタクリル酸製造用触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】 リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法と、この方法により得られた触媒を用いてメタクリル酸を製造する方法とに関する。
従来、メタクリル酸は、例えばメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化する方法で工業的に製造されており、その際、リン及びモリブデンを含むヘテロポリ酸化合物からなる触媒が使用されている。このようにして得られるメタクリル酸の収率は、用いる触媒の性能(転化率及び選択率)に大きく左右される。そのため、これまでから、ヘテロポリ酸化合物からなる触媒の性能向上を目指し、その製造方法に関し種々の検討がなされてきた。
例えば、1)リン、モリブデン及びセシウムを含むヘテロポリ酸系触媒を製造するにあたり、リン、モリブデン及びセシウムを含む水性スラリーを120℃で乾燥して固形分としてヘテロポリ酸化合物を得、この固形分を水に懸濁した後、リン及びモリブデンを含みセシウムを含まない触媒原料を水に溶解させた状態で添加する方法(特許文献1)や、2)リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸合成用触媒を製造するにあたり、モリブデン、リン及び元素Xを含む水性スラリーを130℃で乾燥することにより、モリブデンに対する元素Xの原子比が2.5/12〜12/12であるヘテロポリ酸化合物を得、これを、別途調製されたモリブデンに対する元素Xの原子比が0.05/12〜0.4/12である水性スラリーに加える方法(特許文献2)が提案されている。これら1)、2)の方法は、固体状のヘテロポリ酸化合物と触媒構成元素を含む水性スラリーとを混合する方法であり、ここで用いる固体状のヘテロポリ酸化合物は所定の元素を含む水性スラリーを乾燥することにより得ているのであるが、当該ヘテロポリ酸化合物の調製過程においては300℃以上で熱処理する過程が含まれていないことが好ましい旨が報告されている(特許文献2、明細書[0010]参照)。
特開平05−177141公報 特開2002−233758号公報
しかしながら、上述した1)や2)の方法で得られたメタクリル酸製造用触媒は、転化率や選択率の点で必ずしも満足のいくものではなかった。
そこで、本発明の目的は、優れた転化率及び選択率でメタクリル酸を製造できるメタクリル酸製造用触媒の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の目的は、この方法により得られた触媒を用いて、良好な収率でメタクリル酸を製造する方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成することによって、リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなる触媒を得るようにし、その際、ヘテロポリ酸化合物A及び水性スラリーBにおけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)を特定範囲に設定するとともに、前記ヘテロポリ酸化合物Aに300℃以上で熱処理を施しておけば、得られた触媒は、メタクリル酸の製造において優れた転化率及び選択率を示すものになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(2)ヘテロポリ酸化合物Aが、これを構成する元素を含む原料化合物と水とを混合して得られる前駆体スラリーを乾燥し、この乾燥物を300℃以上で熱処理することにより得られたものである前記(1)に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(3)メタクリル酸製造用触媒を構成するヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む前記(1)又は(2)に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
本発明によれば、優れた転化率及び選択率でメタクリル酸を製造できるメタクリル酸製造用触媒を提供することができる。そして、この触媒を用いれば、良好な収率でメタクリル酸を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法は、リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含むヘテロポリ酸化合物からなる触媒を製造するものである。ここで、前記触媒を構成するヘテロポリ酸化合物は、遊離のヘテロポリ酸であってもよいし、ヘテロポリ酸の塩であってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)が好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩がよい。また、本発明において、前記触媒を構成するヘテロポリ酸化合物は、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下「元素Y」と称することもある)とを含有することが望ましい。
本発明において得ようとする触媒を構成するヘテロポリ酸化合物は、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12である。つまり、本発明の触媒の製造方法においては、得られる触媒を構成するヘテロポリ酸化合物のモリブデンに対する元素Xの原子比が前記範囲となるように、後述するヘテロポリ酸化合物A及び水性スラリーBにおける触媒構成元素の含有比率や、両者の混合割合などを適宜調整するのである。
さらに、本発明において得ようとする触媒を構成するヘテロポリ酸化合物の好ましい組成は、下記式(1)の通りである。
PaMobVcXdYeOx (1)
(式(1)中、P、Mo及びVはそれぞれリン、モリブデン及びバナジウムを表し、Xはカリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを示し、Yは銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(元素Y)を示し、Oは酸素を表し、b=12としたとき、0<a≦3、0≦c≦3、0.5≦d≦2、0≦e≦3であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である)
本発明の触媒の製造方法においては、まず、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12、好ましくは2.5/12〜3.5/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12、好ましくは0/12〜0.3/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBと、を各々調製する。
前記固体状のヘテロポリ酸化合物Aの調製方法は、300℃以上で熱処理する工程を含む限り、特に制限はなく、例えば、共沈法、蒸発乾固法、酸化物混合法等の公知の方法を適宜採用することができる。特に、前記ヘテロポリ酸化合物Aは、これを構成する元素を含む原料化合物と水とを混合して得られる前駆体スラリーを乾燥し、この乾燥物を300℃以上で熱処理することにより得られるものであるのが好ましい。
前記ヘテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含む原料化合物(ヘテロポリ酸化合物Aの原料化合物)としては、例えば、本発明において得ようとする触媒におけるヘテロポリ酸化合物を構成する上述した各元素を含む化合物(例えば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等)が挙げられる。具体的には、リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が挙げられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウムの如きモリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が挙げられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸アンモニウム(メタバナジン酸アンモニウム)の如きバナジン酸塩(メタバナジン酸塩)、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が挙げられ、元素Xを含む化合物としては、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウムの如き酸化物、硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸タリウムの如き硝酸塩、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムの如き炭酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムの如き重炭酸塩、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムの如き水酸化物、塩化カリウム、塩化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウムの如きハロゲン化物等が挙げられる。また、前記元素Yを含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が挙げられる。
前駆体スラリーを作製するに際しては、前記ヘテロポリ酸化合物Aの原料化合物として、どの元素を含む化合物をどのような割合で使用するのかについて、得られる前駆体スラリー中に存在するモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が前述した範囲(ヘテロポリ酸化合物AにおけるX/Mo比)になるように調整されている限り、特に制限はなく、適宜設定することができる。
前駆体スラリーを作製する際に前記ヘテロポリ酸化合物Aの原料化合物と混合する水としては、通常イオン交換水が用いられる。水の混合量は、得られる前駆体スラリー中のモリブデン量1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
前駆体スラリーを作製する際には、硝酸根及びアンモニウム根をも含有させることが、得られる触媒の転化率や選択率の点から好ましい。
硝酸根を含有させる場合、硝酸根供給源として、例えば、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含む硝酸塩のほか、硝酸、硝酸アンモニウムのような硝酸塩等を用いればよく、他方、アンモニウム根を含有させる場合、アンモニウム根供給源として、例えば、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含むアンモニウム塩のほか、アンモニア、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩等を用いればよい。好ましくは、硝酸根の供給源またはアンモニウム根の供給源として、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含む硝酸塩やアンモニウム塩を用いるのがよく、さらに、硝酸根とアンモニウム根との比率を後述の範囲に調整するために、硝酸、アンモニア、硝酸アンモニウムを用いるのがよい。
前記前駆体スラリーにおける硝酸根とアンモニウム根との比率は、硝酸根1モルに対してアンモニウム根が1.0〜3.0モルであることが好ましい。アンモニウム根が、前記範囲を外れると、触媒活性(転化率や選択率)の向上効果が充分に得られないおそれがある。
なお、前駆体スラリーを調製する際の各成分の混合順序は、特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
前駆体スラリーを乾燥する際の乾燥方法は、特に制限されるものではなく、例えば、静置乾燥法のほか、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法など、この分野で通常用いられる方法を採用することができる。また、乾燥条件については、得られる乾燥物の水分含量が充分に低減されるよう乾燥方法等に応じて適宜設定すればよい。
本発明においては、ヘテロポリ酸化合物Aが300℃以上で熱処理されたものであることが重要であり、前記前駆体スラリーを乾燥して得られた乾燥物は、通常、300℃以上での熱処理が施されてヘテロポリ酸化合物Aとなる。これにより、優れた転化率及び選択率を示す触媒を得ることができる。かかる必須の熱処理(ヘテロポリ酸化合物Aに対する熱処理)の温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上である。また、かかる必須の熱処理温度の上限は、ヘテロポリ酸化合物の安定性の観点からは、700℃以下で行うのが好ましい。前述した必須の熱処理の処理時間は、特に制限されないが、通常0.5〜24時間程度、好ましくは1〜20時間程度とする。また、前述した必須の熱処理の際の雰囲気や圧力などについても、特に制限はなく、例えば、酸素含有ガス等の酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよい。
なお、前述した必須の熱処理は、前駆体スラリーの乾燥と別に行う(具体的には、乾燥して得られた乾燥物に熱処理を施す)ようにしてもよいが、前駆体スラリーの乾燥と同時に行う(具体的には、乾燥の際の加熱温度を300℃以上に設定する)ようにしてもよい。
かくして調製されるヘテロポリ酸化合物Aは、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものが好ましい。このヘテロポリ酸化合物Aにおけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)は、通常、前駆体スラリーにおけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)と同様となる。
前記水性スラリーBの調製は、少なくともモリブデンを含む原料化合物と水とを、得られる水性スラリーB中のモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が前述した範囲(水性スラリーBにおけるX/Mo比)になるように調整して混合すればよい。
前記水性スラリーBの調製においては、ヘテロポリ酸化合物の原料化合物として、少なくともモリブデンを含む化合物を用い、このモリブデンを含む化合物に対して前述した比率を満足する量だけ、元素Xを含む化合物を用いる。よって、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)を0/12に設定する場合には、元素Xを含む化合物は必ずしも混合する必要はない。勿論、前記水性スラリーBには、モリブデンや元素X以外の触媒構成元素を含む化合物を加えることもできる。
なお、水性スラリーBの調製において混合する各元素を含む化合物としては、上述したヘテロポリ酸化合物Aの原料化合物と同様のものが挙げられる。
水性スラリーBの調製において混合する水としては、通常イオン交換水が用いられる。水の混合量は、得られる水性スラリーB中のモリブデン原子の量1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
水性スラリーBを調製する際には、上述した各成分の混合順序は特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
本発明の触媒の製造方法においては、次に、前記固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、前記水性スラリーBとを混合する。ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合割合は、両者(ヘテロポリ酸化合物Aおよび水性スラリーB)に含まれるモリブデンおよび元素Xの量を考慮して、最終的に得られる触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12となるようにすればよい。
ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとを混合する際の混合順序、温度、攪拌条件などは、特に制限されるものではなく、適宜設定すればよいが、混合順序に関しては、水性スラリーBの中に固体状のヘテロポリ酸化合物Aを添加するのが好ましい。
ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとを混合する際や、後述する熟成処理の際または該熟成処理後には、必要に応じて、さらに触媒の構成元素を含む化合物、中でも、前記元素Yを含む化合物を混合することもできる。その場合、通常、触媒構成元素を含む化合物を水に懸濁させた状態で加えることが好ましい。
本発明の触媒の製造方法において、前記ヘテロポリ酸化合物Aと前記水性スラリーBとを混合して得られた混合スラリーは、次いで乾燥に付される。乾燥する際の乾燥方法は、特に制限されるものではなく、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法など、この分野で通常用いられる方法を採用することができる。また、乾燥条件については、混合スラリー中の水分含量が充分に低減されるよう適宜設定すればよく、特に制限されないが、その温度は、通常、300℃未満である。
ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとを混合して得られた混合スラリーは、上述した乾燥に付す前に、密閉容器内で100℃以上にて加熱することにより熟成させる熟成処理を施すことが好ましい。前記混合スラリーにこのような熟成処理を施すことにより、より良好な触媒性能を得ることができる。熟成処理における加熱温度の上限は、200℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましい。熟成処理における加熱時間は、触媒活性の点では、通常0.1時間以上、好ましくは2時間以上であり、生産性の観点からは、20時間以下であるのがよい。
本発明の触媒の製造方法において、前記乾燥後に得られた乾燥物は、次いで焼成に付される。焼成は、この分野で通常用いられる方法により行うことができ、特に制限はされない。例えば、酸素等の酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよく、焼成温度は通常300℃以上で行われる。中でも、触媒寿命の点では、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下で多段焼成するのが好ましく、酸化性ガスの雰囲気下で第一段焼成を行い、次いで非酸化性ガスの雰囲気下で第二段焼成を行う、二段階の焼成方法を採用するのがより好ましい。
焼成に用いられる酸化性ガスは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスを用いる場合、その酸素濃度は、通常1〜30容量%程度とすればよく、酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。また、前記酸化性ガスには、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。酸化性ガスとしては、中でも、空気が好ましい。酸化性ガス雰囲気下で行う焼成は、通常、このような酸化性ガスの気流下で行われる。また、酸化性ガス雰囲気下で行う焼成の温度は、通常360〜410℃であり、好ましくは380〜400℃である。
焼成に用いられる非酸化性ガスは、実質的に酸素の如き酸化性物質を含有しないガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。また、前記非酸化性ガスには、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。非酸化性ガスとしては、中でも、窒素が好ましい。非酸化性ガス雰囲気下で行う焼成は、通常、このような非酸化性ガスの気流下で行われる。また、非酸化性ガス雰囲気下で行う焼成の温度は、通常420〜500℃であり、好ましくは420〜450℃である。
なお、前記乾燥後に得られた乾燥物には、上述した焼成に先立ち、前焼成として、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下に、180〜300℃程度の温度で保持する熱処理を行うことが好ましい。
前記乾燥後に得られた乾燥物には、上述した焼成もしくは前焼成に付す前に、必要に応じて、所望の形状(リング状、ペレット状、球状、円柱状など)に成形する成形処理を施すことができる。成形処理は、例えば打錠成形や押出成形など、この分野で通常用いられる方法により行えばよい。成形処理に際しては、必要に応じて、前記乾燥物に、水、成形助剤、気孔剤等を加えることができる。成形助剤としては、例えば、セラミックファイバーやグラスファイバーのほか、硝酸アンモニウム等が挙げられる。特に、硝酸アンモニウムは、成形助剤としての機能を有するほか、気孔剤としての機能も有する。
前記成形処理で得られた成形体には、引き続き、調温調湿処理を施すことが好ましい。焼成もしくは前焼成に付す前に調温調湿処理を施すことにより、より安定な触媒を得ることができる。調温調湿処理は、具体的には、40〜100℃、相対湿度10〜60%の雰囲気下に、成形体を0.5〜10時間程度曝すことにより行われる。該処理は、例えば、調温、調湿された槽内にて行ってもよいし、調温、調湿されたガスを成形体に吹き付けることにより行ってもよい。また、該処理を行う際の雰囲気ガスとしては、通常、空気が用いられるが、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。
かくして得られた触媒は、例えばメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に、優れた転化率及び選択率を示す。
本発明のメタクリル酸の製造方法は、前記本発明の触媒の製造方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物(以下「メタクリル酸原料」と称することもある)を気相接触酸化反応に付すものである。このように本発明の触媒の製造方法により得られた触媒を用いることにより、優れた転化率及び選択率でメタクリル酸を製造することができる。
メタクリル酸の製造は、通常、固定床多管式反応器に触媒を充填し、これに前記メタクリル酸原料と酸素とを含む原料ガスを供給することにより行われるが、これに限定されるものではなく、流動床や移動床のような反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気が用いられる。また、原料ガス中には、前記メタクリル酸原料及び酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれていてもよい。
前記原料ガスに含まれるメタクリル酸原料は、必ずしも高純度の精製品である必要はなく、例えば、メタクロレインとしては、イソブチレンやt−ブチルアルコールの気相接触酸化反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを用いることもできる。なお、前記原料ガスに含まれるメタクリル酸原料は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
メタクリル酸の製造における反応条件は、原料ガスに含まれるメタクリル酸原料の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、前記メタクリル酸原料としてメタクロレインを用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、水蒸気濃度は1〜30容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は500〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPa、である条件下で反応が行われる。他方、前記メタクリル酸原料としてイソブタンを用いる場合、通常、原料ガス中のイソブタン濃度は1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPa、である条件下で反応が行われる。また、前記メタクリル酸原料としてイソブチルアルデヒドやイソ酪酸を用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合とほぼ同様の反応条件が採用される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
なお、以下で使用した空気は3.5容量%の水分を含むもの(大気相当)であり、以下で使用した窒素は実質的に水分を含まないものである。
以下の各例において得られた触媒の分析、評価は、下記のようにして行った。
<触媒組成(構成元素比)>
蛍光X線分析装置(リガク社製「ZSX Primus II」)を用い、触媒を蛍光X線分析することにより求めた。
<触媒の活性試験>
触媒9gを内径16mmのガラス製マイクロリアクターに充填し、この中に、メタクロレイン、空気、スチーム及び窒素を混合して調製した原料ガス(組成:メタクロレイン4容量%、分子状酸素12容量%、水蒸気17容量%、窒素67容量%)を空間速度670h-1で供給して、一旦、炉温(マイクロリアクターを加熱するための炉の温度)355℃にて1時間反応を行った後、上記と同じ組成の原料ガスを、上記と同じ空間速度で供給して、炉温280℃で反応を行った。この反応開始から(炉温を280℃としてから)1時間経過時の出口ガス(反応後のガス)をサンプリングし、ガスクロマログラフィーにより分析して、下記式に基づき、メタクロレイン転化率(%)、メタクリル酸選択率(%)及び収率(%)を求めた。
メタクロレイン転化率(%)=〔反応したメタクロレインのモル数÷供給したメタクロレインのモル数〕×100
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷反応したメタクロレインのモル数〕×100
収率(%)=〔転化率(%)×選択率(%)〕÷100
(実施例1)
〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水224gに、硝酸セシウム[CsNO3]81.8g、75重量%オルトリン酸27.4g、及び67.5重量%硝酸26.1gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物[(NH46Mo724・4H2O]297gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]8.19gを懸濁させ、これをβ液とした。
α液とβ液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、β液にα液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。次いで、三酸化アンチモン[Sb23]10.2g及び硝酸銅3水和物[Cu(NO32・3H2O]10.2gを、イオン交換水23g中に懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られたスラリーを135℃にて18時間乾燥し、得られた乾燥物に、空気中500℃にて5時間、熱処理を施して、固体状のヘテロポリ酸化合物A1を得た。
得られたヘテロポリ酸化合物A1の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び3.0であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は3.0/12であった。
〔水性スラリーBの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水150gに、75重量%オルトリン酸9.48g、67.5重量%硝酸9.03g、及び硝酸アンモニウム20.1gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水220gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物103gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム2.83gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下して、水性スラリーB1を得た。この水性スラリーB1に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン及びバナジウムがそれぞれ1.5、12、0.5であり(アンチモン、銅、セシウムはいずれも0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕
上記水性スラリーB1の全量に上記ヘテロポリ酸化合物A1を99.2g混合した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン3.53g及び硝酸銅3水和物3.53gを、イオン交換水7.9gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られた混合スラリーを135℃にて乾燥し、得られた乾燥物100重量部に対して、セラミックファイバー4重量部、硝酸アンモニウム18重量部、及びイオン交換水7.5重量部を加えて混練した後、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。得られた成形体を、温度90℃、相対湿度30%にて3時間乾燥させた後、空気気流中にて390℃で4時間、続いて窒素気流中にて435℃で4時間、保持することにより焼成して、触媒(1)を得た。
得られた触媒(1)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(1)の活性試験の結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から410℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A2を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A2の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例1で得られたヘテロポリ酸化合物A1と同じであった。
次に、このヘテロポリ酸化合物A2と、実施例1の〔水性スラリーBの調製〕と同様にして得られた水性スラリーB1とを用いて、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様の操作を行ない、触媒(2)を得た。
得られた触媒(2)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(2)の活性試験の結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から250℃に変更し、該熱処理の時間を5時間から1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A3を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A3の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例1で得られたヘテロポリ酸化合物A1と同じであった。
次に、このヘテロポリ酸化合物A3と、実施例1の〔水性スラリーBの調製〕と同様にして得られた水性スラリーB1とを用いて、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様の操作を行ない、比較用の触媒(C1)を得た。
得られた触媒(C1)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(C1)の活性試験の結果を表1に示す。
(実施例3)
〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水224gに、硝酸セシウム87.3g、75重量%オルトリン酸27.4g、及び67.5重量%硝酸39.2gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物297gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム8.19gを懸濁させ、これをβ液とした。
α液とβ液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、β液にα液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。次いで、三酸化アンチモン10.2g及び硝酸銅3水和物10.2gを、イオン交換水23g中に懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られたスラリーを135℃にて18時間乾燥し、得られた乾燥物に、空気中500℃にて5時間、熱処理を施して、固体状のヘテロポリ酸化合物A4を得た。
得られたヘテロポリ酸化合物A4の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び3.2であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は3.2/12であった。
〔水性スラリーBの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水150gに、75重量%オルトリン酸10.2g、67.5重量%硝酸9.69g、及び硝酸アンモニウム20.0gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水220gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物110gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム3.04gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下して、水性スラリーB2を得た。この水性スラリーB2に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン及びバナジウムがそれぞれ1.5、12、0.5であり(アンチモン、銅、セシウムはいずれも0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕
上記水性スラリーB2の全量に上記ヘテロポリ酸化合物A4を94.6g混合した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン3.78g及び硝酸銅3水和物3.78gを、イオン交換水8.5gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られた混合スラリーを用いたこと以外は、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様に、乾燥、混練、押出成形、乾燥及び焼成の操作を行い、触媒(3)を得た。
得られた触媒(3)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(3)の活性試験の結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から600℃に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A5を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A5の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例3で得られたヘテロポリ酸化合物A4と同じであった。
次に、このヘテロポリ酸化合物A5と、実施例3の〔水性スラリーBの調製〕と同様にして得られた水性スラリーB2とを用いて、実施例3の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様の操作を行ない、触媒(4)を得た。
得られた触媒(4)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(4)の活性試験の結果を表1に示す。
(比較例2)
〔ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水105gに、硝酸セシウム38.2g、75重量%オルトリン酸12.8g、及び67.5重量%硝酸12.2gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水154gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物138gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム3.82gを懸濁させ、これをβ液とした。
α液とβ液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、β液にα液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。次いで、三酸化アンチモン4.76g及び硝酸銅3水和物4.76gを、イオン交換水11g中に懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌して、ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーを得た。この前駆体スラリーに含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び3.0であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は3.0/12であった。
〔水性スラリーBの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水120gに、75重量%オルトリン酸14.6g、及び67.5重量%硝酸13.9gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水176gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物158gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム4.37gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン5.44g及び硝酸銅3水和物5.44gを、イオン交換水12gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌して、水性スラリーB3を得た。この水性スラリーB3に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、及び銅がそれぞれ1.5、12、0.5、0.5及び0.3であり(セシウムは0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
〔ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーと水性スラリーBとの混合〕
上記水性スラリーB3の全量に、上記ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーの全量を混合した。こうして得られた混合スラリーを用いたこと以外は、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様に、乾燥、混練、押出成形、乾燥及び焼成の操作を行い、比較用の触媒(C2)を得た。
得られた触媒(C2)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(C2)の活性試験の結果を表1に示す。
Figure 2010207696

Claims (4)

  1. リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、
    モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  2. ヘテロポリ酸化合物Aが、これを構成する元素を含む原料化合物と水とを混合して得られる前駆体スラリーを乾燥し、この乾燥物を300℃以上で熱処理することにより得られたものである請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  3. メタクリル酸製造用触媒を構成するヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項1又は2に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
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