JP2010207696A - メタクリル酸製造用触媒の製造方法及びメタクリル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成する。
【選択図】 なし
Description
(1)リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(2)ヘテロポリ酸化合物Aが、これを構成する元素を含む原料化合物と水とを混合して得られる前駆体スラリーを乾燥し、この乾燥物を300℃以上で熱処理することにより得られたものである前記(1)に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(3)メタクリル酸製造用触媒を構成するヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む前記(1)又は(2)に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
本発明のメタクリル酸製造用触媒の製造方法は、リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含むヘテロポリ酸化合物からなる触媒を製造するものである。ここで、前記触媒を構成するヘテロポリ酸化合物は、遊離のヘテロポリ酸であってもよいし、ヘテロポリ酸の塩であってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)が好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩がよい。また、本発明において、前記触媒を構成するヘテロポリ酸化合物は、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下「元素Y」と称することもある)とを含有することが望ましい。
PaMobVcXdYeOx (1)
(式(1)中、P、Mo及びVはそれぞれリン、モリブデン及びバナジウムを表し、Xはカリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを示し、Yは銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(元素Y)を示し、Oは酸素を表し、b=12としたとき、0<a≦3、0≦c≦3、0.5≦d≦2、0≦e≦3であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である)
硝酸根を含有させる場合、硝酸根供給源として、例えば、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含む硝酸塩のほか、硝酸、硝酸アンモニウムのような硝酸塩等を用いればよく、他方、アンモニウム根を含有させる場合、アンモニウム根供給源として、例えば、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含むアンモニウム塩のほか、アンモニア、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウムのようなアンモニウム塩等を用いればよい。好ましくは、硝酸根の供給源またはアンモニウム根の供給源として、前記へテロポリ酸化合物Aを構成する元素を含む硝酸塩やアンモニウム塩を用いるのがよく、さらに、硝酸根とアンモニウム根との比率を後述の範囲に調整するために、硝酸、アンモニア、硝酸アンモニウムを用いるのがよい。
なお、前駆体スラリーを調製する際の各成分の混合順序は、特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
なお、前述した必須の熱処理は、前駆体スラリーの乾燥と別に行う(具体的には、乾燥して得られた乾燥物に熱処理を施す)ようにしてもよいが、前駆体スラリーの乾燥と同時に行う(具体的には、乾燥の際の加熱温度を300℃以上に設定する)ようにしてもよい。
なお、水性スラリーBの調製において混合する各元素を含む化合物としては、上述したヘテロポリ酸化合物Aの原料化合物と同様のものが挙げられる。
水性スラリーBを調製する際には、上述した各成分の混合順序は特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとを混合する際や、後述する熟成処理の際または該熟成処理後には、必要に応じて、さらに触媒の構成元素を含む化合物、中でも、前記元素Yを含む化合物を混合することもできる。その場合、通常、触媒構成元素を含む化合物を水に懸濁させた状態で加えることが好ましい。
かくして得られた触媒は、例えばメタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する際に、優れた転化率及び選択率を示す。
なお、以下で使用した空気は3.5容量%の水分を含むもの(大気相当)であり、以下で使用した窒素は実質的に水分を含まないものである。
<触媒組成(構成元素比)>
蛍光X線分析装置(リガク社製「ZSX Primus II」)を用い、触媒を蛍光X線分析することにより求めた。
触媒9gを内径16mmのガラス製マイクロリアクターに充填し、この中に、メタクロレイン、空気、スチーム及び窒素を混合して調製した原料ガス(組成:メタクロレイン4容量%、分子状酸素12容量%、水蒸気17容量%、窒素67容量%)を空間速度670h-1で供給して、一旦、炉温(マイクロリアクターを加熱するための炉の温度)355℃にて1時間反応を行った後、上記と同じ組成の原料ガスを、上記と同じ空間速度で供給して、炉温280℃で反応を行った。この反応開始から(炉温を280℃としてから)1時間経過時の出口ガス(反応後のガス)をサンプリングし、ガスクロマログラフィーにより分析して、下記式に基づき、メタクロレイン転化率(%)、メタクリル酸選択率(%)及び収率(%)を求めた。
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷反応したメタクロレインのモル数〕×100
収率(%)=〔転化率(%)×選択率(%)〕÷100
〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水224gに、硝酸セシウム[CsNO3]81.8g、75重量%オルトリン酸27.4g、及び67.5重量%硝酸26.1gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物[(NH4)6Mo7O24・4H2O]297gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]8.19gを懸濁させ、これをβ液とした。
40℃に加熱したイオン交換水150gに、75重量%オルトリン酸9.48g、67.5重量%硝酸9.03g、及び硝酸アンモニウム20.1gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水220gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物103gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム2.83gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下して、水性スラリーB1を得た。この水性スラリーB1に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン及びバナジウムがそれぞれ1.5、12、0.5であり(アンチモン、銅、セシウムはいずれも0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
上記水性スラリーB1の全量に上記ヘテロポリ酸化合物A1を99.2g混合した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン3.53g及び硝酸銅3水和物3.53gを、イオン交換水7.9gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られた混合スラリーを135℃にて乾燥し、得られた乾燥物100重量部に対して、セラミックファイバー4重量部、硝酸アンモニウム18重量部、及びイオン交換水7.5重量部を加えて混練した後、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。得られた成形体を、温度90℃、相対湿度30%にて3時間乾燥させた後、空気気流中にて390℃で4時間、続いて窒素気流中にて435℃で4時間、保持することにより焼成して、触媒(1)を得た。
実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から410℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A2を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A2の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例1で得られたヘテロポリ酸化合物A1と同じであった。
次に、このヘテロポリ酸化合物A2と、実施例1の〔水性スラリーBの調製〕と同様にして得られた水性スラリーB1とを用いて、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様の操作を行ない、触媒(2)を得た。
得られた触媒(2)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(2)の活性試験の結果を表1に示す。
実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から250℃に変更し、該熱処理の時間を5時間から1時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A3を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A3の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例1で得られたヘテロポリ酸化合物A1と同じであった。
得られた触媒(C1)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(C1)の活性試験の結果を表1に示す。
〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水224gに、硝酸セシウム87.3g、75重量%オルトリン酸27.4g、及び67.5重量%硝酸39.2gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物297gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム8.19gを懸濁させ、これをβ液とした。
40℃に加熱したイオン交換水150gに、75重量%オルトリン酸10.2g、67.5重量%硝酸9.69g、及び硝酸アンモニウム20.0gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水220gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物110gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム3.04gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下して、水性スラリーB2を得た。この水性スラリーB2に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン及びバナジウムがそれぞれ1.5、12、0.5であり(アンチモン、銅、セシウムはいずれも0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
上記水性スラリーB2の全量に上記ヘテロポリ酸化合物A4を94.6g混合した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン3.78g及び硝酸銅3水和物3.78gを、イオン交換水8.5gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られた混合スラリーを用いたこと以外は、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様に、乾燥、混練、押出成形、乾燥及び焼成の操作を行い、触媒(3)を得た。
実施例3の〔ヘテロポリ酸化合物Aの調製〕において、乾燥物の熱処理の温度を500℃から600℃に変更したこと以外は、実施例3と同様の操作を行ない、ヘテロポリ酸化合物A5を得た。得られたヘテロポリ酸化合物A5の酸素を除く金属元素の原子比(モリブデンに対するセシウムの原子比)は、実施例3で得られたヘテロポリ酸化合物A4と同じであった。
得られた触媒(4)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(4)の活性試験の結果を表1に示す。
〔ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーの調製〕
40℃に加熱したイオン交換水105gに、硝酸セシウム38.2g、75重量%オルトリン酸12.8g、及び67.5重量%硝酸12.2gを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水154gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物138gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム3.82gを懸濁させ、これをβ液とした。
40℃に加熱したイオン交換水120gに、75重量%オルトリン酸14.6g、及び67.5重量%硝酸13.9gを溶解させ、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水176gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物158gを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム4.37gを懸濁させ、これをb液とした。a液とb液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、b液にa液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン5.44g及び硝酸銅3水和物5.44gを、イオン交換水12gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌して、水性スラリーB3を得た。この水性スラリーB3に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、及び銅がそれぞれ1.5、12、0.5、0.5及び0.3であり(セシウムは0である)、モリブデンに対するセシウムの原子比は0/12であった。
上記水性スラリーB3の全量に、上記ヘテロポリ酸化合物Aの前駆体スラリーの全量を混合した。こうして得られた混合スラリーを用いたこと以外は、実施例1の〔ヘテロポリ酸化合物Aと水性スラリーBとの混合〕と同様に、乾燥、混練、押出成形、乾燥及び焼成の操作を行い、比較用の触媒(C2)を得た。
得られた触媒(C2)は、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、該ヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.5、0.5、0.3及び1.4であり、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この触媒(C2)の活性試験の結果を表1に示す。
Claims (4)
- リンと、モリブデンと、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xとを含み、かつモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒を製造する方法であって、
モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ300℃以上で熱処理された固体状のヘテロポリ酸化合物Aと、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12となるように少なくともモリブデンを含む水性スラリーBとを混合した後、乾燥、焼成することを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の製造方法。 - ヘテロポリ酸化合物Aが、これを構成する元素を含む原料化合物と水とを混合して得られる前駆体スラリーを乾燥し、この乾燥物を300℃以上で熱処理することにより得られたものである請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- メタクリル酸製造用触媒を構成するヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項1又は2に記載のメタクリル酸製造用触媒の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりメタクリル酸製造用触媒を製造し、該触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
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