JP2010205443A - イオン溶出量の少ない固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼および固体高分子形燃料電池 - Google Patents

イオン溶出量の少ない固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼および固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高電位域でのイオン溶出量の少ない燃料電池セパレータ用ステンレス鋼およびそれを用いた固体高分子形燃料電池を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:0.01〜2.0%、Mn:0.01〜2.0%、Al:0.001〜0.3%、Cr:20〜35%、Mo:4.0%以下およびNb:0.2〜2.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物とし、特にCr量、Nb量およびMo量について、次式(1)、(2)の関係を満足させる。
Cr+3Mo≧ 23 --- (1)
Nb/(Cr+5Mo)≧ 0.01 --- (2)
【選択図】図2

Description

本発明は、高電位でのイオン溶出量が少ない燃料電池セパレータ用ステンレス鋼およびかかるステンレス鋼を燃料電池のセパレータとして用いる固体高分子形燃料電池に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、発電効率に優れ、二酸化炭素を排出しない燃料電池の開発が進められている。この燃料電池は、水素と酸素を反応させて電気を発生させるもので、その基本構造は、サンドイッチのような構造を有しており、電解質膜(イオン交換膜)、2つの電極(燃料極と空気極)、水素および酸素(空気)の拡散層ならびに2つのセパレータから構成されている。そして、用いる電解質の種類により、リン酸形、溶融炭酸塩形、固体酸化物形、アルカリ形および固体高分子形などに分類される。
上記の燃料電池の中で、固体高分子形燃料電池は、溶融炭酸塩形やリン酸形燃料電池に比べて、
(1) 運転温度が80℃程度と格段に低い、
(2) 電池本体の軽量化・小形化が可能である、
(3) 立上げが早く、燃料効率、出力密度が高い
などの特長を有している。
このため、固体高分子形燃料電池は、電気自動車の搭載用電源や家庭用、業務用の小型分散型電源(定置型の小型発電機)として、今日もっとも注目されている燃料電池の一つである。
固体高分子形燃料電池は、高分子膜を介して水素と酸素から電気を取り出す原理によるものであり、その構造は、図1に示すように、高分子膜とその膜の表裏面に白金系触媒を担持したカーボンブラック等の電極材料を一体化した膜−電極接合体(MEA: Membrane-Electrode Assembly、厚み:数10〜数100μm)1を、カーボンクロス等のガス拡散層2,3およびセパレータ4,5により挟み込み、これを単一の構成要素 (単セル) として、セパレータ4と5の間に起電力を生じさせるものである。このとき、ガス拡散層はMEAと一体化される場合も多い。かような単セルを数十から数百個直列につないで燃料電池スタックを構成し、使用されている。
セパレータには、単セル間を隔てる隔壁としての役割に加えて、
(a) 発生した電子を運ぶ導電体、
(b) 酸素(空気)や水素の流路(それぞれ図1中の空気流路6、水素流路7)および生成した水や排出ガスの排出路(それぞれ図1中の空気流路6、水素流路7)
としての機能が求められる。
また、耐久性に関しては、自動車用の燃料電池では約5,000時間、家庭用の小型分散電源などとして使用される定置型の燃料電池では約40,000時間が想定されている。
現在までに実用化された固体高分子形燃料電池は、セパレータとして、カーボン素材を用いたものが提供されている。しかしながら、このカーボン製セパレータは、衝撃により破損しやすいだけでなく、コンパクト化が困難で、しかも流路を形成するための加工コストが高いという欠点があった。特にコストの問題は、燃料電池普及の最大の障害になっている。
そこで、カーボン素材に替わり、金属素材、特にステンレス鋼を適用しようとする試みがなされている。
ステンレス鋼を適用する場合には、耐食性と導電性(接触抵抗が低いこと)が求められる。
耐食性に関しては、例えば特許文献1に、Cr,Moの含有量を増量し成分面から耐食性を向上させたセパレータ用ステンレス鋼が開示されている。
また、導電性に関しては、ステンレス鋼表面に種々の導電性物質をコーティングする方法が提案されている。この点、発明者らも、特許文献2において、導電性析出物としてラーベス相を用いる技術を提案した。
その他、例えば、特許文献3には、不動態皮膜を形成しやすい金属をセパレータとして用いる技術が、特許文献4には、フェライト系ステンレス鋼基材に、カーボン粉末を分散付着させて、電導性(接触抵抗)を改善したセパレータを得る技術が、さらに特許文献5には、M23C6型炭化物あるいはM2B型硼化物を表面に析出させて接触抵抗を低減したセパレータが開示されている。
しかしながら、例えば非特許文献1に示されているように、近年、カソード極(空気極)側で、反応の不均一性などに起因して、局所的、一時的に1Vを超える電位が発生する場合があることが指摘されている。電位が1Vを超える場合には、ステンレス鋼の過不動態化領域となるため、ステンレス鋼からの金属イオン溶出が増大し、電解質膜、電極触媒の性能低下を引き起こすおそれがある。この問題に対し、上記した従来技術では、ステンレス鋼からの高電位でのイオン溶出を抑えることは困難である。
この点、特許文献6には、SUS304などの金属セパレータの表面に、金めっきを施すことによって接触抵抗を低減し、高出力を確保する技術が開示されている。この場合、高電位でのイオン溶出は低減できるものの、薄金めっきではピンホールの発生防止が困難であり、逆に厚い金めっきではコストの問題が残っている。
特開2000-239806号公報 特開2007-254794号公報 特開平8-180883号公報 特開2000-277133号公報 特開2000−214186号公報 特開平10-228914号公報
C.A.Reiser et al., Electrochem. Solid-State Lett., vol.8, p.A273-A276 (2005)
本発明は、従来の技術が抱えている上記の問題に鑑み開発されたもので、高電位域でのイオン溶出量の少ない燃料電池セパレータ用ステンレス鋼を、それを用いた固体高分子形燃料電池と共に提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく、高電位域でのイオン溶出量(腐食電流)を低減する方法について、成分面から詳細な検討を行った。その結果、
(1) Cr含有量を高めるとかえって高電位域での腐食電流が増加する、
(2) またMo含有量を高めるとさらに高電位域での腐食電流が増加する、
(3) これに対し、Nb含有量を高めると上記した腐食電流の増加を抑制できる
ことを見出した。
さらに、ステンレス鋼表面に導電性物質をコーティングしたり、あるいは導電性析出物を露出させることによって、接触抵抗が低下するが、高電位域での腐食電流が小さくなると、腐食により表面に形成される皮膜も薄くなるため、導電性物質による接触抵抗低減効果をより長期にわたって保持できることも併せて見出した。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.03%以下、
N:0.03%以下、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.01〜2.0%、
Al:0.001〜0.3%、
Cr:20〜35%、
Mo:4.0%以下および
Nb:0.2〜2.0%
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、さらにCr量、Nb量およびMo量が下記式(1)、(2)の関係を満足することを特徴とする、高電位でのイオン溶出量が少ない固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。

Cr+3Mo≧ 23 --- (1)
Nb/(Cr+5Mo)≧ 0.01 --- (2)
2.前記成分に加えて、さらに、質量%で
TiおよびZrのうちから選んだ一種または二種:1.0%以下
を含有することを特徴とする上記1に記載のステンレス鋼。
3.80℃のpH3の硫酸中水溶液中で、0.8V vs. SHEと1.2V vs. SHEの範囲を20mV/minの掃引速度で繰返し分極したときの20回目の最大電流密度が1μA/cm2以下であることを特徴とする上記1または2に記載のテンレス鋼。
4.表面に導電性物質が存在することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼。
5.前記導電性物質が、Fe2Nb型ラーベス相であることを特徴とする上記4に記載のステンレス鋼。
6.固体高分子膜、電極、ガス拡散層およびセパレータからなる固体高分子形燃料電池であって、前記セパレータとして上記1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
本発明によれば、グラファイト板や金めっきステンレス鋼板を用いなくても、カソード極側が高電位になった場合でもイオン溶出量が少ない燃料電池セパレータ用ステンレス鋼を得ることができる。
その結果、従来、高価なカーボンセパレータや金めっきセパレータの使用を余儀なくされていた燃料電池に対し、安価なステンレス鋼セパレータを提供することが可能となり、製造コストの大幅な低減が達成できる。
燃料電池の基本構造を示す模式図である。 Nb/(Cr+5Mo)値と電流密度(μA/cm2)の関係を示すグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明に係るセパレータ用ステンレス鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.03%以下、N:0.03%以下
CおよびNはいずれも、鋼中のCrと化合物を形成し、粒界にCr炭窒化物として析出して、耐食性の低下をもたらす。このため、両元素とも低いほど望ましいが、C:0.03%以下、N:0.03%以下であれば、耐食性を著しく低下させることはない。このため、C:0.03%以下、N:0.03%以下に制限した。好ましくはC:0.015%以下、N:0.015%以下である。
Si:0.01〜2.0%
Siは、脱酸のために有効な元素であるので、この目的で添加されるが、この効果を得るためには少なくとも0.01%の添加が必要である。一方、過度に含有させると鋼板の硬質化と延性の低下を招くので、Si量の上限は2.0%とした。好ましくは0.05〜1.0%である。
Mn:0.01〜2.0%
Mnは、Sと結合し、固溶Sを低減することによりSの粒界偏析を抑制し、熱間圧延時の割れを防止する有効な元素である。この効果を得るためには少なくとも0.01%の添加が必要であるが、2.0%を超えてもその効果は飽和するので、Mn量は0.01〜2.0%の範囲に限定した。好ましくは0.05〜1.0%の範囲である。
Al:0.001〜0.3%
Alは、製鋼工程における脱酸に寄与するが、含有量が0.001%に満たないとその添加効果に乏しく、一方0.3%を超えてもその効果は飽和に達し、むしろコストアップとなるので、Al量は0.001〜0.3%の範囲に限定した。好ましくは0.01〜0.2%の範囲である。
Cr:20〜35%
Crは、ステンレス鋼としての基本的な耐食性を確保するために必要な元素である。セパレータの動作環境は燃料電池の構造や運転方法により異なるが、実使用時の動作環境の変動を考えると、Cr量が20%未満ではセパレータとして長期の使用に耐えられず、一方Cr量が35%を超えると製造性の著しい低下を招く不利がある。そのため、Cr量は20〜35%の範囲に限定した。好ましくは24〜35%の範囲である。
Mo:4.0%以下
Moは、ステンレス鋼の耐食性、特に耐局部腐食性を改善するのに有効な元素である。従って、0.1%以上含有させることが好ましいが、Mo量が4.0%を超えると製造性の低下のみならず、コストの上昇を招く。このため、Mo量は4.0%以下とした。好ましくは2.0%以下である。
Nb:0.2〜2.0%
Nbは、鋼中のC,Nを炭窒化物として固定し、耐食性、プレス成形性を改善するのに有効な元素である。また、Nbを0.2%以上添加することにより、導電性を有するラーベス相をステンレス鋼の表面に析出させて電気伝導性を向上させることもできる。一方、2.0%を超えて添加すると製造性、成形性が低下する。このため、Nb量は0.2〜2.0%の範囲に限定した。好ましくは0.3〜1.0%の範囲である。
以上、本発明の基本成分の適正組成範囲について説明したが、本発明では、各々の元素が単に上記の範囲を満足するだけでは不十分で、Cr,MoおよびNbについては、次の関係を満足させることが重要である。
Cr+3Mo:23%以上
Moは、上述したとおり、ステンレス鋼の耐食性、特に耐局部腐食性を改善するのに有効な元素である。セパレータの動作環境は燃料電池の構造や運転方法により異なるが、実使用時の動作環境の変動を考えると、Cr+3Mo≧23を満足する範囲で含有させる必要がある。(Cr+3Mo)が23%に満たないと、運転中にpHが低下した場合に耐食性の低下を招く。
Nb/(Cr+5Mo):0.01%以上
CrおよびMo量の増加は、非定常運転モードで発生する高電位域での腐食電流を増加させるため、これを抑制するためにNbの複合添加が不可欠である。ここに、高電位域での腐食電流の増加は、Crに比べてMoの影響が大きいため、Nb/(Cr+5Mo)≧0.01を満足するようにNbを含有させる必要がある。
図2に、Nb/(Cr+5Mo)値と電流密度(μA/cm2)との関係について調べた結果を示す。この電流密度とは、80℃のpH3の硫酸中水溶液中で、0.8V vs. SHEと1.2V vs. SHEの範囲を20mV/minの掃引速度で繰返し分極したときの20回目の最大電流密度のことであり、実使用時における動作環境の変動を考慮したものである。
同図から明らかなように、Nb/(Cr+5Mo)値を0.01以上とすることにより、実使用時に動作環境が変動した場合であっても、電位の上昇を1V以下に抑制することができ、従って、従来懸念された高電位域でのイオン溶出量(腐食電流)を効果的に低減することができる。
以上、本発明の基本成分について説明したが、本発明では、その他にも必要に応じて、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
TiおよびZrのうちから選んだ一種または二種:1.0%以下
TiおよびZrはいずれも、鋼中のC,Nを炭窒化物として固定し、耐食性やプレス成形性を改善するのに有効な元素である。しかしながら、TiとZrを、合計で1.0%を超えて添加すると、鋼板が著しく脆化して製造性が低下する。従って、Ti,Zrは、単独添加または複合添加いずれの場合も1.0%以下で含有させるものとした。
なお、本発明では、上記の元素以外に、さらに熱間加工性の向上を目的として、Ca,Mg,REMおよびBのうちから選んだ一種または二種以上を0.1%以下で添加することができる。また、耐食性の向上を目的として、Ni:1.0%以下、Cu:5.0%以下を添加することもできる。その他の元素は、残部Feおよび不可避的不純物である。
上記したステンレス鋼の製造方法については、特に制限はなく、従来公知の方法に従えばよい。好適な製造条件を述べると次のとおりである。
上記した好適成分組成に調整した鋼片を、1150℃以上に加熱後、熱間圧延し、ついで1000〜1100℃の温度で焼鈍を施し、さらに冷間圧延を施したのち、950〜1100℃の温度で光輝焼鈍を施す。
かくして、板厚:0.05〜0.3mm程度のステンレス鋼板とする。
かくして、イオン溶出量の少ない固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼を得ることができる。
ここに、「イオン溶出量の少ない」とは、80℃のpH3の硫酸中水溶液中で、0.8V vs. SHEと1.2V vs. SHEの範囲を20mV/minの掃引速度で繰返し分極したときの20回目の最大電流密度が1μA/cm2以下であることを意味する。
さらに、本発明では、導電性を付与するために表面に導電性物質をコーティングするか、導電性析出物を表面に露出させることが好ましい。コーティングとしては、金、黒鉛、TiNなどの窒化物、TiCなどの炭化物等が有利に適合する。なお、本発明の鋼は優れた耐食性を有するので、かかるコーティングは鋼板の全面を覆う必要はない。
また、導電性析出物を用いる場合は、本発明鋼がNbを含有しているので、Fe2Nb型のラーベス相を用いることができる。ラーベス相は700〜950℃の時効処理により析出させることができるが、鋼板製造工程で熱処理あるいは熱処理後の冷却速度を制御して析出させることもできる。また、セパレータに加工してから時効処理を行ってもよい。析出処理の後、酸洗などにより表面をエッチングすれば接触抵抗の低い表面を得ることができる。
そして、上記のようにして得たステンレス鋼を、固体高分子形燃料電池のセパレータに適用することにより、高電位でのイオン溶出量が少ない固体高分子形燃料電池を得ることができる。
表1に示す化学組成の鋼を、真空溶解により溶製し、得られたインゴットを1150℃以上に加熱したのち、熱間圧延により板厚:5mmの熱延板とし、1000〜1100℃の熱延板焼鈍と酸洗処理を施した。ついで、冷間圧延と焼鈍・酸洗を繰り返し施して板厚:0.3mmの冷延焼鈍板とした。また、一部の鋼板(No.1,7,13,19,24)については接触抵抗を低減するために800℃,10分間の時効処理を施してFe2Nb型ラーベス相を析出させたのち、硝フッ酸で酸洗してラーベス相を鋼板表面に露出させた。
冷延焼鈍板および時効処理鋼板から30mm□の試験片を切出し、アセトンで脱脂後、燃料電池の動作環境を模擬したpH3の硫酸(80℃)中で、非定常時の電位上昇を模擬し、0.8V vs. SHEと1.2V vs. SHEの範囲を20mV/minの掃引速度で繰り返し分極処理した。このとき、各電位での電流密度を測定した。繰返し分極により電流密度は減少するが、20回目の電位掃引時の最大電流が1μA/cm2以下であるものを高電位での耐食性が良好と判断した。
得られた結果を表1に併記する。
また、時効処理鋼板については、30回分極処理後のサンプルを純水で洗浄し、送風乾燥した後、接触抵抗を測定した。接触抵抗の測定は、分極測定後の試験片の両面を10mm×10mmのカーボンペーパ(東レ製:TGP-H-120)で挟み、さらに同じ面積の銅板に金めっきを施した電極を接触させ、単位面積当たり:196 MPa(20kgf/cm2)の圧力をかけて分極測定面側の金めっき電極と試験片との間の抵抗を測定することにより行った。この接触抵抗値が10mΩ・cm2以下であれば導電性は良好といえる。
得られた結果を表2に示す。
Figure 2010205443
Figure 2010205443
表1に示したとおり、発明例(No.1〜17)はいずれも、20回分極測定時の最大電流密度が1μA/cm2以下であり、高電位での耐食性に優れていることが分かる。これに対して、Cr量、Mo量に対するNb含有量が適正量に満たない比較例(No.18〜27)はいずれも、20回繰り返し分極時における最大電流密度は1μA/cm2超であり、良好な高電位耐食性は得られなかった。
また、表2から明らかなように、発明例(No.1,7,13)はいずれも、接触抵抗値が 10mΩ・cm2以下であり、良好な導電性が得られていることが分かる。この理由は、本発明鋼は、高電位でのイオン溶出量が少ない、すなわち腐食電流が小さいため、表面に生成する腐食生成物も少なくなる結果、繰返し分極後の接触抵抗も低下したものと考えられる。
これに対し、比較例(No.19,24)はいずれも、接触抵抗値が 10mΩ・cm2を超えていた。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.03%以下、
    N:0.03%以下、
    Si:0.01〜2.0%、
    Mn:0.01〜2.0%、
    Al:0.001〜0.3%、
    Cr:20〜35%、
    Mo:4.0%以下および
    Nb:0.2〜2.0%
    を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、さらにCr量、Nb量およびMo量が下記式(1)、(2)の関係を満足することを特徴とする、高電位でのイオン溶出量が少ない固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。

    Cr+3Mo≧ 23 --- (1)
    Nb/(Cr+5Mo)≧ 0.01 --- (2)
  2. 前記成分に加えて、さらに、質量%で
    TiおよびZrのうちから選んだ一種または二種:1.0%以下
    を含有することを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼。
  3. 80℃のpH3の硫酸中水溶液中で、0.8V vs. SHEと1.2V vs. SHEの範囲を20mV/minの掃引速度で繰返し分極したときの20回目の最大電流密度が1μA/cm2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のテンレス鋼。
  4. 表面に導電性物質が存在することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のステンレス鋼。
  5. 前記導電性物質が、Fe2Nb型ラーベス相であることを特徴とする請求項4に記載のステンレス鋼。
  6. 固体高分子膜、電極、ガス拡散層およびセパレータからなる固体高分子形燃料電池であって、前記セパレータとして請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス鋼を用いることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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