JP2010203785A - 音源推定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】車室内などの、室内モードの影響が大きい場所であっても、音源を精度よく推定することのできる音源推定方法を提供する。
【解決手段】複数のマイクロフォンM1〜M5とカメラ12とを一体化した音・映像採取ユニット10を一定の速度でゆっくりと移動させて、異音発生の指摘があった場所Pを中心に音と映像の情報を採取し、各マイクロフォンM1〜M5で採取した音の音圧信号を用いて音源方向(θ,φ)とを周波数毎に算出した後、音源方向のデータ(θkj,φkj)と音源の方向の推定に用いたときに撮影された映像の画像データGkとを合成して、推定された音源の方向を示す図形32が描画された音源位置推定画面33kを作成し、この音源位置推定画面33k中の上記図形32が集中的に描画されている箇所を上記異音の発生源の方向として、異音の発生源を特定するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数のマイクロフォンで採取した音の情報と、撮影手段で撮影した映像の情報とを用いて、音源を推定する方法に関するものである。
従来、音の到来方向を推定する方法としては、多数のマイクロフォンを等間隔に配置したマイクロフォンアレーを構築し、基準となるマイクロフォンに対する各マイクロフォンの位相差から音波の到来方向である音源の方向を推定する、いわゆる音響学的手法が考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、計測点に配置された複数のマイクロフォンの出力信号の位相差からではなく、複数のマイクロフォンから互いに交わる直線状に配置された複数のマイクロフォン対を構成し、対となる2つのマイクロフォン間の位相差に相当する到達時間差と、他の対となる2つのマイクロフォンMc,Md間の到達時間差との比から音源の方向を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
具体的には、図8に示すように、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するように配置し、前記マイクロフォン対(M1,M3)を構成するマイクロフォンM1,M3に入力する音圧信号の到達時間差と、前記マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4に入力する音圧信号の到達時間差との比から、計測点と音源の位置との水平角θを推定するとともに、第5のマイクロフォンM5を前記マイクロフォンM1〜M4の作る平面上にない位置に配置して、更に4組のマイクロフォン対(M5, M1),(M5, M2),(M5, M3),(M5, M4)を構成し、各マイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の到達時間差から、計測点と音源の位置との成す仰角φを推定する。
これにより、マイクロフォンアレーを用いて音源方向を推定する場合に比較して、少ないマイクロフォン数で音源の方向を正確に推定することができる。
また、このとき、CCDカメラ等の映像採取手段を設けて推定された音源方向の映像を撮影した後、この映像のデータと音源の方向のデータとを合成して、映像中に推定した音源方向と音圧レベルとを図形で表示するようにすれば、音源を視覚的に把握することができる。
特開2002−181913号公報 特開2006−324895号公報 特開2008−224259号公報
大賀寿郎,山崎芳男,金田豊;音響システムとディジタル処理,コロナ社,1995
ところで、前記従来の方法では、車室内などの室内で音源の測定を行った場合、計測点の位置によっては、室内モードの影響を強く受けてしまうことがある。つまり、室内では反射音が多く発生するため、音の共振により、音圧レベルが直接音よりも高くなる場所が発生する。そのため、室内モードの影響が強い場合には、推定した音源方向を示す図形が映像中の様々な位置に描画されるので、音源の位置を特定することが困難であった。
前記従来の方法でも、複数の計測点で測定を行って音源の方向を特定することも考えられる。すなわち、室内モードの影響が少なく、推定した音源方向を示す図形が映像の特定の箇所に集中して描画された映像が得られるまで計測点を順次移動させて測定すれば、音源の方向を特定することができるので、音源を正確に推定することができる。
しかしながら、前記従来の方法では、音源方向を推定した後に、音源方向の映像を撮影していることから、複数の計測点で測定した場合には、測定時間や手間が増えてしまうといった問題点があった。
また、計測点が適切でない場合には、再度計測点を変更して再測定する必要があるため、作業効率が悪かった。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、車室内などの、室内モードの影響が大きい場所であっても、音源の方向を精度よく特定して、音源を確実に推定することのできる音源推定方法を提供することを目的とする。
本願の請求項1に記載の発明は、複数のマイクロフォンで採取した音の情報と、撮影手段で撮影した映像の情報とを用いて、音源を推定する音源推定方法であって、複数のマイクロフォンと撮影手段とを一体化した音・映像採取ユニットを移動させて、音源と推定される方向から伝播される音と前記音源と推定される方向の映像とを採取する第1のステップと、前記複数のマイクロフォンで採取した音の音圧信号の位相差から音源の方向(水平角θと仰角φ)を複数の撮影位置にてそれぞれ推定する第2のステップと、前記推定された音源の方向のデータと、前記音源の方向の推定に用いた音を採取したときに撮影された映像の画像データとを合成して、前記推定された音源の方向を示す図形が描画された映像を前記複数の撮影位置毎に作成する第3のステップと、前記推定された音源の方向が描画された複数の映像から、音源を推定する第4のステップとを備え、前記第4のステップでは、前記推定された音源の方向を示す図形が描画された映像中の、前記図形が所定数以上重なって描画された箇所が音源の方向であるとして音源の位置を推定することを特徴とする。
なお、映像中の、音源方向を示す図形が重なって描画された箇所を特定するには、例えば、連続して撮影された映像の複数の画像データGk(k=1〜n)のそれぞれについて、各画像データGkをm個の領域Rk(k=1〜m)に分割して、各領域Rkにおける点(θ,φ)の密度をそれぞれ算出して、密度が最も高い領域Rmがある複数の画像データGkを抽出することで、音源方向を示す図形が重なって描画された箇所を特定することができる。音源の推定位置は、前記画像データGkの密度が最も高い領域Rm内に存在するので、例えば、前記領域Rm内における点(θ,φ)の平均値を求めれば、音源の位置を精度よく推定することができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の音源推定方法において、前記第4のステップで音源の方向であるとした方向を、前記第1のステップにおける音源と推定される方向であるとして、前記第1のステップから前記第4のステップまでを繰り返して、前記音源を推定することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の音源推定方法において、前記音・映像採取ユニットを、床面もしくは天井面と交差する空間内で移動させることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音源推定方法であって、前記複数のマイクロフォンは、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対を構成する第1〜第4のマイクロフォンと、前記2組のマイクロフォン対の作る平面上にない第5のマイクロフォンとを有し、前記2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差の比と、前記第5のマイクロフォンと前記2組のマイクロフォン対を構成する4個のマイクロフォンのそれぞれとで構成される4組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差とを用いて前記音源の方向を推定することを特徴とする。
本発明によれば、複数のマイクロフォンと撮影手段とを一体化した音・映像採取ユニットを移動させて、音源と推定される方向から伝播される音と前記音源と推定される方向の映像とを採取して、音源方向を示す図形が描画された複数の映像を作成し、これら複数の映像から、音源方向を示す図形が集中している映像を選び出し、この選ばれた映像中の図形が集中している箇所が音源の方向であるとして音源の位置を推定するようにしたので、車室内などの、室内モードの影響が大きい場所であっても、音源の位置を短い測定時間で精度よく推定することができる。
本発明の方法では、音源方向を推定した後に音源の方向の映像を撮影するのではなく、音源と推定される方向から伝播される音の情報を採取しながら音源と推定される方向を撮影しているので、得られた複数の映像では、映像中心が推定した音源方向とはなっていないが、音の音圧信号と映像信号とを同時にかつほぼ連続的に測定しているので、音源方向を示す図形が描画された複数の映像を効率よく作成することができる。
また、第1のステップから第4のステップまでを繰り返して、音源を推定するようにしたので、単に、計測点を移動させて測定する場合に比較して、推定した音源方向を示す図形が映像の特定の箇所に集中して描画されている映像を確実に得ることができる。したがって、音源方向の推定精度を大幅に向上させることができる。
また、音・映像採取ユニットを、床面もしくは天井面と交差する空間内で移動させることにより、音・映像採取ユニットの高さを変えながら測定して、室内の形状に依存する音圧レベルの分布の影響をなくすようにしたので、音源の推定精度を更に向上させることができる。
また、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対を構成する第1〜第4のマイクロフォンと、2組のマイクロフォン対の作る平面上にない第5のマイクロフォンとから成る音採取手段を構成し、2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差の比と、前記第1〜第5のマイクロフォン間の位相差とを用いて音源の方向を推定するようにしたので、水平角θだけでなく、仰角φについても、少ないマイクロフォン数で、効率よくかつ正確に推定することができる。
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
本発明による音源推定方法の概要を示す図である。 音源を推定する際に用いられる音源位置推定システムの構成を示す機能ブロック図である。 異音の発生源を推定する方法を示すフローチャートである。 音・映像採取ユニットの移動方法の一例を示す図である。 音源位置推定画面が表示された表示画面の一例を示す図である。 音及び映像の採取位置と音源位置推定画面との関係を示す図である。 音源位置推定のための再測定の方法を説明するための図である。 従来のマイクロフォン対を用いた音源探査方法におけるマイクロフォンの配列を示す図である。
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は本発明による音源推定方法の概要を示す図で、本例では、乗用車50の車室51内で発生した異音の発生源を推定する。
また、図2は音源の推定に用いられる音源位置推定システムの構成を示す機能ブロック図である。
各図において、10は音・映像採取ユニット、20は音源位置推定装置である。
音・映像採取ユニット10は、音採取手段としての複数のマイクロフォンM1〜M5と映像採取手段としてのCCDカメラ(以下、カメラという)12とを一体化したものである。マイクロフォンM1〜M5により音採取手段11を構成する。
音採取手段11を構成するマイクロフォンM1〜M5は、マイクロフォン固定部13にそれぞれ固定される。また、カメラ12はカメラ支持台14に固定される。マイクロフォン固定部13とカメラ支持台14とは、カメラ支持台14に立設された3本の支柱15によって連結されている。つまり、音採取手段11とカメラ12とは一体化されている。なお、マイクロフォンM1〜M5は、カメラ12の上部に配置される。
3本の支柱15のうち、カメラ12の撮影方向とは反対方向に位置する支柱15には、把手(とって)16が設けられている。この把手16を把持してカメラ支持台14を移動させることで、音採取手段11とカメラ12とを一体に移動させることができる。
マイクロフォンM1〜M5は、図示しない音源から伝播される音の音圧レベルをそれぞれ測定する。
マイクロフォンM1〜M5の配置は、前記図8に示したものと同様で、4個のマイクロフォンM1〜M4を、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するように配置するとともに、第5のマイクロフォンM5を前記マイクロフォンM1〜M4の作る平面上にない位置、詳細には、マイクロフォンM1〜M4の作る正方形を底面とする四角錐の頂点の位置に配置する。これにより、更に4組のマイクロフォン対(M5, M1)〜(M5, M4)が構成される。
本例では、カメラ12の撮影方向を、前記直交する2直線の交点を通り前記2直線とほぼ45°をなす方向に設定している。したがって、音・映像採取ユニット10の向きは、図1の白抜きの矢印Dの方向となる。カメラ12は、音・映像採取ユニット10の向きに応じた映像を採取する。
音源位置推定装置20は、増幅器21と、A/D変換器22と、映像入出力手段23と、記憶手段24と、音圧信号取出手段25と、音源方向推定手段26と、映像信号取出手段27と、データ合成手段28と、音源位置表示手段29とを備える。
増幅器21はローパスフィルタを備え、マイクロフォンM1〜M5で採取した各音の音圧信号から高周波ノイズ成分を除去するとともに、各音圧信号をそれぞれ増幅してA/D変換器22に出力する。A/D変換器22は、各音圧信号をA/D変換した音圧波形データを作成し、これを、記憶手段24に出力する。
映像入出力手段23は、カメラ12で連続的に撮影された映像信号を入力し、所定時間(例えば、1/30秒)毎に撮影方向の画像データを出力する。
記憶手段24は、音圧波形データと画像データとを時系列に配列して記憶する。
音圧波形データと画像データとを時系列に配列して記憶する方法としては、音圧波形データと画像データとを同期させて記憶するか、あるいは、音圧波形データと画像データとにそれぞれに時刻データを付けて記憶するなど、周知の方法を用いることができる。
音圧信号取出手段25は、記憶手段24から、音圧波形データを取出してこれを音源方向推定手段26に出力する。このとき、音圧波形データを、画像データに対応した所定時間毎の音圧波形データとして取出す。
音源方向推定手段26では、取出された音圧波形データから各マイクロフォンM1〜M5間の位相差を求め、この求められた位相差から音源方向を推定し、その推定結果をデータ合成手段28に出力する。音源方向の推定の詳細については、後述する。
映像信号取出手段27は、記憶手段24から、前記所定時間毎の画像データを取出してこれをデータ合成手段28に出力する。
データ合成手段28は、音源方向推定手段26で推定された音源方向のデータと映像信号取出手段27から出力される画像データ(音源の方向の推定に用いた音の音圧信号を採取したときに撮影された映像)とを合成する。
音源位置表示手段29は、データ合成手段28で合成された、画像中に音源の方向を示す図形が描画された音源方向推定画像を表示する。
次に、乗用車50の車室51内で発生した異音の発生源を推定する方法について、図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、音・映像採取ユニット10と音源位置推定装置20とを乗用車50の車室51内に持ち込み、音・映像採取ユニット10と音源位置推定装置20とを接続してから、音源位置推定装置20を立ち上げて測定の準備をする(ステップS10)。
そして、図4に示すように、音・映像採取ユニット10を、車室51内を一定の速度でゆっくりと移動させ、マイクロフォンM1〜M5にて音を採取し、カメラ12にて映像を採取する(ステップS11)。このとき、音・映像採取ユニット10を、同図の矢印で示すカメラ12の撮影方向Dを、図示しない乗員から異音発生の指摘があった場所P方向に向けながら、車室51内の空間を8の字を描くようにして移動させる。
音・映像採取ユニット10を移動させる空間Sとしては、車体51の床面もしくは天井面と交差する平面内で移動させることが好ましい。
また、移動速度の目安としては、10cm/sec.以下とすることが好ましい。
次に、各マイクロフォンM1〜M5で採取した音の音圧信号(アナログ信号)をデジタル信号(音圧波形データ)に変換した後、これを記憶手段24に記憶するとともに、カメラ12で採取した映像信号についても、デジタル信号に変換した後、これを記憶手段24に記憶する(ステップS12)。
そして、記憶手段24に記憶された音圧波形データを取出して、音源方向の推定計算を行う(ステップS13)。音圧波形データの取出しは、撮影方向の画像データと同じ所定時間毎に行われるので、音源方向の推定を、所定時間毎に記憶された撮影方向の画像データ毎に行うことができる。
音源方向の推定は、音圧波形データをFFTにて周波数解析し、各周波数毎にマイクロフォンM1〜M5間のそれぞれの位相差を求め、この求められた位相差から各周波数毎に音源の方向を推定する。
ステップS14の水平角θ及び仰角φの計算方法について後述する。
推定された音源の方向のデータは、画像データ毎に求められるので、画像番号をk、周波数をjとすると、音源の方向のデータは(θkj,φkj)と表わせる。
この音源の方向のデータ(θkj,φkj)と音源の方向の推定に用いた音の音圧信号を採取したときに撮影された映像の画像データGkとを合成することにより、図5に示すような、推定された音源の方向を示す図形(ここでは、網目模様の丸印)32が描画された音源位置推定画面33kが表示された表示画面30kを、各画像データGk毎に作成する(ステップS14)。
表示画面30kには、カメラ12で撮影した映像のうちのk番目の映像31k(画像データとしては、画像データGk)上に、音源の方向を表す網目模様の丸印32が描画された音源位置推定画面33kが表示される。音源位置推定画面33kの横軸は水平角θkで、縦軸は仰角φkである。
また、丸印32の丸の大きさは音圧信号の大きさである音圧レベルを表す。
なお、推定された音源の方向を、予め設定した周波数帯域毎に表示することも可能である。この場合には、周波数帯域毎に丸印32の色を設定すればよい。
また、音源位置推定画面33の下側には、横軸をθとしたときの音圧レベル(dB)を表示した音圧レベル表示画面34kが表示される。この音圧レベル表示画面34kについても、周波数帯域毎に表示することも可能である。
本例では、画像データGk(k=1〜n)毎に作成された多数の音源位置推定画面33kを用いて、異音の発生源を推定する。すなわち、多数音源位置推定画面33kの中から、音源位置推定画面33k中に描画された網目模様の丸印32が所定数以上重なって描画された箇所が集中している最適推定画面を選び出し、(ステップS15)、この最適推定画面中の網目模様の丸印32が集中している箇所を異音の発生源の方向と推定する(ステップS16)。
本例では、この異音の発生源の位置の推定機能を、音源位置表示手段29に持たせているが、別途、最適推定画面を選び出す手段である最適推定画面選定手段、及び、異音の発生源の位置を推定する音源位置特定手段を設けてもよい。
なお、異音の発生源とその位置については、前記推定された異音の発生源の方向を参照して、測定者が特定する。
最適推定画面の選定方法としては、以下のような方法がある。
まず、図6に示すように、前記連続して撮影された映像の複数の画像データGk(k=1〜n)のそれぞれについて、車室51内の空間を8の字を描くようにして移動させて撮影した映像の各画像データGkを、それぞれm個の領域Rk(k=1〜m)に分割して、各領域Rkにおける点(θ,φ)の数をそれぞれ算出して、この数の最大値を各画像データGkの集中数n(k)とする。各領域Rkにおける点(θ,φ)が、映像31kにおける網目模様の丸印32に対応する。
例えば、図6の左側で撮影した映像31pの画像データGで最も点(θ,φ)の数が多いのは領域R4で、その数は4個である。したがって、画像データGの集中数n(p)は4である。一方、図6の左上側で撮影した映像31qの画像データGqで最も点(θ,φ)の数が多いのは領域R5で、その数は12個である。したがって、画像データGqの集中数n(q)は12である。
このようにして、複数の画像データGkの集中数n(k)をそれぞれ算出して比較することで、最適推定画面を特定することができる。本例では、画像データGqの集中数n(q)は12である映像31qを最適推定画面とする。
最適推定画面を用いて音源方向を推定する際には、最適推定画面の画像データ(ここでは、画像データGq)の分割数を増やして異音の発生源の方向を推定する。具体的には、映像の各画像データGkを、上記m個よりも大きな数n個の領域rk(k=1〜n)に分割して、各領域rkにおける点(θ,φ)の数をそれぞれ算出して、再度、点(θ,φ)の数が最も多い領域rMを求める。そして、この領域rMを音源の方向とすれば、異音の発生源の方向を精度よく推定することができる。
なお、最適推定画面の画像データGqで最も点(θ,φ)の数が多い領域Rm内における点(θ,φ)の平均位置を求め、これを音源の方向としてもよい。
最適推定画面である映像31qでは、図6に示すように、異音の発生源は、同図の黒い太丸で示す領域Xにあることが推定される。領域Xにはカーステレオのスピーカがあることから、異音は、運転者が間違ってカーステレオのスイッチをONしたために発生したと推定される。一方、最適推定画面ではない映像31pでは、異音の発生源であるカーステレオのスピーカが映っているにもかかわらず、網目模様の丸印32が領域Xから大きく外れている。
このように、複数の画像データGkから最適推定画面となる画像データを特定してこれを映像で表示し、この最適推定画面を用いて音源を推定するようにすれば、車室51内などのように、室内モードの影響が大きい場所であっても、音源の位置を精度よく推定することができる。
なお、最適推定画面を選び出す方法としては、音源位置推定画面33k(k=1〜n)を時系列に連続して音源位置表示手段29の表示画面に映し出し、これを測定者が動画として観察し、判定するのが最も簡便である。つまり、測定者が動画をみて、音源位置推定画面33k中に描画された網目模様の丸印32が集中している箇所が映っている画面が連続して現れたときに動画を停止させる。そして、その時刻前後の複数枚の音源位置推定画面33kを音源位置表示手段29の表示画面に順次映し出して、最適推定画面を特定すればよい。
ところで、最適推定画面を選択しても、最適推定画面中での網目模様の丸印32の集中度が低い場合がある。この場合には、前記最適推定画面を用いて音源方向を推定しても、その精度は低いことが予想される。
そこで、本例では、最適推定画面の画像データをGMとしたとき、このGM中の領域Rm内における点(θ,φ)の分布幅wを求めて、予め設定した閾値wkと比較することで、前記分布の分布幅が広いかどうかを判定する(ステップS17)。
分布の幅が広い場合には、図7(a)に示すように、異音の発生源のあると推定される領域Mも広いので、測定箇所を、前記領域Mからの音が採取しやすい箇所Qに変更して(ステップS18)、ステップS11に戻り、再測定を行う。このときも、音・映像採取ユニット10の向きを前記音が採取しやすい箇所Qの向きになるようにして、音・映像採取ユニット10を一定の速度でゆっくりと移動させて測定する。これにより、推定された音源の方向を示す図形32の集中度がより高い音源位置推定画面33を選択することができるので、この音源位置推定画面33を最適推定画面として、音源の方向を特定すれば、異音の発生源をより精度良く推定することができる。
また、前記ステップS11〜S18までを繰り返し行って音源の方向を推定すれば、音源方向の推定精度を向上させることができ、異音の発生源を確実に推定できる。
なお、ステップS14における水平角θ及び仰角φの計算方法は以下の通りである。
各マイクロフォン対(Mi, Mj)のマイクロフォンMiとマイクロフォンMjとの間の到達時間差をDijとすると、音の入射方向である水平角θと仰角φとは以下の式(1),(2)で表わせるので、各マイクロフォンM1〜M5の出力信号をFFTを用いて周波数分析し、対象となる周波数fにおける各マイクロフォンM,M間の到達時間差Dijを算出することにより、前記水平角θ及び仰角φを求めることができる。
Figure 2010203785
すなわち、互いに直交する2直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対(M1,M3)及びマイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM1,M3に入力する音圧信号の到達時間差D13と、前記マイクロフォン対(M2,M4)を構成するマイクロフォンM2,M4に入力する音圧信号の到達時間差D24との比から、計測点と音源位置との水平角θを推定し、前記到達時間差D13,D24と、前記第5のマイクロフォンM5と他のマイクロフォンM1〜M4との到達時間差D5j(j=1〜4)とから計測点と音源位置との成す仰角φを推定する。
なお、前記到達時間差Dijは、2つのマイクロフォン対(M,M)に入力される信号のクロススペクトルPij(f)を求め、更に、対象とする前記周波数fの位相角情報Ψ(rad)を用いて、以下の式(3)を用いて算出される。
Figure 2010203785
音源方向の推定結果は、所定時間毎に記憶された撮影方向の画像データ毎に行う。
このように、本実施の形態では、複数のマイクロフォンM1〜M5とカメラ12とを一体化した音・映像採取ユニット10を一定の速度でゆっくりと移動させて、異音発生の指摘があった場所Pを中心に音と映像の情報を採取し、各マイクロフォンM1〜M5で採取した音の音圧信号を用いて音源の方向である水平角θと仰角φとを周波数毎に算出した後、音源の方向のデータ(θkj,φkj)と音源の方向の推定に用いた音の音圧信号を採取したときに撮影された映像の画像データGkとを合成して、推定された音源の方向を示す図形32が描画された音源位置推定画面33kを作成し、この音源位置推定画面33kにおいて、音源の方向を示す図形32が集中的に描画されている箇所を異音の発生源の方向として、異音の発生源を特定するようにしたので、乗用車50の車室51内などのような、室内モードの影響が大きい場所であっても、異音の発生源とその位置とを短い測定時間で精度よく推定することができる。
また、音源位置推定画面中での音源の方向を示す図形32の集中度が低い場合には、推定した異音の発生源の方向を、異音発生の指摘があった方向として再測定を行うようにしたので、異音の発生源をより精度良く推定することができる。
なお、前記実施の形態では、車室内における異音の発生源を推定する方法について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、室内などの壁等による反射音の影響が大きい箇所での音源の推定に用いることができる。
また、前記例では、音源位置の撮影間隔である所定時間を1/30秒としたが、これに限るものではなく、音源の種類や必要測定精度等により適宜決定すればよい。
また、音・映像採取ユニット10を移動させる際には、必ずしも、車室51内の空間を8の字を描くようにして移動させる必要はなく、車体51の床面もしくは天井面と交差する平面内で移動させるようにすればよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
以上説明したように、本発明によれば、車室内などの、室内モードの影響が大きい場所であっても、音源を精度よく推定できるので、室内で発生した異音等の発生源を特定することができる。したがって、室内における防音対策を効率よく行うことができる。
10 音・映像採取ユニット、11 音採取手段、12 CCDカメラ、
13 マイクロフォン固定部、14 カメラ支持台、15 支柱、16 把手、
M1〜M5 マイクロフォン、
20 音源位置推定装置、21 増幅器、22 A/D変換器、23 映像入出力手段、
24 記憶手段、25 音圧信号取出手段、26 音源方向推定手段、
27 映像信号取出手段、28 データ合成手段、29 音源位置表示手段、
30 表示画面、31 映像、32 音源の方向を表す図形、33 音源位置推定画面、
34 音圧レベル表示画面、50 乗用車、51 車室。

Claims (4)

  1. 複数のマイクロフォンと撮影手段とを一体化した音・映像採取ユニットを移動させて、音源と推定される方向から伝播される音と前記音源と推定される方向の映像とを採取する第1のステップと、
    前記複数のマイクロフォンで採取した音の音圧信号の位相差から音源の方向を複数の撮影位置にてそれぞれ推定する第2のステップと、
    前記推定された音源の方向のデータと、前記音源の方向の推定に用いた音を採取したときに撮影された映像の画像データとを合成して、前記推定された音源の方向を示す図形が描画された映像を前記複数の撮影位置毎に作成する第3のステップと、
    前記推定された音源の方向が描画された複数の映像から、音源を推定する第4のステップとを備え、
    前記第4のステップでは、前記推定された音源の方向を示す図形が描画された映像中の、前記図形が所定数以上重なって描画された箇所が音源の方向であるとして音源の位置を推定することを特徴とする音源推定方法。
  2. 前記第4のステップで音源の方向であるとした方向を、前記第1のステップにおける音源と推定される方向であるとして、前記第1のステップから前記第4のステップまでを繰り返して、前記音源を推定することを特徴とする請求項1に記載の音源推定方法。
  3. 前記音・映像採取ユニットを、床面もしくは天井面と交差する空間内で移動させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の音源推定方法。
  4. 前記複数のマイクロフォンは、互いに交わる2つの直線上にそれぞれ所定の間隔で配置された2組のマイクロフォン対を構成する第1〜第4のマイクロフォンと、前記2組のマイクロフォン対の作る平面上にない第5のマイクロフォンとを有し、前記2組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差の比と、前記第5のマイクロフォンと前記2組のマイクロフォン対を構成する4個のマイクロフォンのそれぞれとで構成される4組のマイクロフォン対を構成するマイクロフォン間の位相差とを用いて前記音源の方向を推定することを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の音源推定方法。
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