JP2010202994A - 金属合紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少ない、金属箔製品に好適な合紙を提供すること。
【解決手段】JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000に準拠して測定したpHが6〜8で、JIS K 0101に準拠して測定した塩素イオン濃度が80ppm以下で、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が23g/m2以下、JIS P 8118に準拠して測定した紙厚が28μm以下、かつJIS P 8118に準拠して測定した密度が0.82g/cm3以下であり、さらに、JIS P 8119に準拠して測定した片面のベック平滑度が1000秒以上、かつもう一方の面のベック平滑度が100秒以下となるように、ドライヤーにて乾燥処理を施した用紙に、熱ソフトカレンダーにて平坦化処理を施してなることを特徴とする、金属合紙。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属合紙に関する。さらに詳しくは、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時に紙ズレや吸湿等によるシワの発生が少なく使用工程内での再使用性にも優れた、例えばステンレス鋼や銅といった金属箔製品の合紙に関し、特に、対象とする金属箔の厚みが45μm程度以下の薄物金属箔用の金属合紙に関する。
金属箔の主な用途は、例えばフレキシブルプリント基盤や、ハードディスクに使用される精密部品であり、部品同士の擦れによる傷入り防止のために、合紙、いわゆる金属合紙が用いられる。
一般的な金属製品に用いられる合紙には、金属面や金属メッキ面と接触しても腐食し難いことや、合紙と金属が巻き取られた際に圧力によって合紙表面の微細な突起部分が金属面を押し付け、打痕と呼ばれる傷が入らないように紙中異物が少ないこと等が要求されており、例えば、塩素イオン濃度が所定範囲に調整され、植物油が主原料の剥離剤を含有した中性金属合紙(特許文献1参照)や、カチオン系澱粉、防滑剤及び剥離剤が各々所定割合で配合され、硫酸アルミニウム濃度が所定範囲に調整された中性金属合紙(特許文献2参照)が提案されている。
ところが、本発明が特に対象とする金属箔はそれ自身が45μm程度、さらには30μm程度と薄く、該金属箔による精密部品は、一般的な金属製品と比較して傷が生じ易く、金属合紙の凹凸による傷が製品歩留まりを低下させる要因となってしまうといった大きな問題がある。さらに合紙を薄くすると収縮によるシワ入りが発生し易いだけでなく、金属箔と合紙とが滑り易いため、合紙挿入時に紙がずれることで金属箔に傷が入ってしまうといった問題がある。また、通常、金属合紙はその工程内で繰り返し使用されるが、合紙を薄くすると強度不足やシワ入りにより再使用性が劣ってしまう。
そこで、従来の金属合紙と比較して、金属箔に適用し得る薄さであるのは勿論のこと、特に紙中異物や使用時のシワの発生が少なく、精密部品を傷付け難い合紙の開発が進められているものの、収縮によるシワ入りや金属箔と合紙との滑り改善、クッション性等充分な品質を有する金属合紙は未だ得られていないのが実情である。
特開2008−057080号公報 特開2005−154979号公報
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少ない、金属箔製品に好適な合紙を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000に準拠して測定したpHが6〜8で、JIS K 0101に準拠して測定した塩素イオン濃度が80ppm以下である金属合紙において、
JIS P 8124に準拠して測定した坪量が23g/m2以下、JIS P 8118に準拠して測定した紙厚が28μm以下、かつJIS P 8118に準拠して測定した密度が0.82g/cm3以下であり、さらに、JIS P 8119に準拠して測定した片面のベック平滑度が1000秒以上、かつもう一方の面のベック平滑度が100秒以下となるように、
ドライヤーにて乾燥処理を施した用紙に、熱ソフトカレンダーにて平坦化処理を施したものであり、金属箔間に挿入時の紙ズレや吸湿等によるシワの発生や打痕が少なく、紙厚の変動が生じ難いことを特徴とする、金属合紙に関する。
なお、本明細書でいう金属箔とは、例えばステンレス鋼、銅といった金属を、例えば45μm程度、さらには30μm程度の薄さに延ばした極めて薄い金属箔のことをいう。
本発明の金属合紙は、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な合紙である。
本発明の金属合紙は、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000「紙及び板紙−表面pH試験方法−第2部:指示薬法」に記載の方法に準拠して測定したpHが6〜8、JIS K 0101「工業用水試験方法」に記載の方法に準拠して測定した塩素イオン濃度が80ppm以下、好ましくは50ppm以下といった、通常金属合紙に要求される物性を有しており、原料パルプにサイズ剤が内添された原紙から製造することができる。
前記原紙に用いる原料パルプには特に限定がなく、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプを好適に使用することができ、必要に応じて、サーモメカニカルパルプ(TMP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)等の機械パルプ;デインキングパルプ(DIP)、ウェストパルプ(WP)等の市中回収古紙からなる古紙パルプ等の中から1種以上を選択し、クラフトパルプを主成分に適宜使用すればよい。
なお、異物混入の点や、結束繊維を殆ど含有していないという点から、機械パルプや古紙パルプを原料パルプに用いることはあまり好ましくなく、地合による金属箔面への影響がより少ないという点から、原料パルプにクラフトパルプを用いることが好ましい。特に好ましくは、漂白処理を行い、パルプ中の樹脂分を除去した晒クラフトパルプを100質量%用いることであり、その中でも、地合い形成や均質な紙厚を得ることができる広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を100質量%用いることが好ましい。
本発明者が見出した、好適な原料パルプ構成は、前記広葉樹晒クラフトパルプが用いられており、原料パルプのルンケル比((パルプ繊維細胞壁の厚み×2)/パルプ繊維細胞腔の直径)が0.9以下に調整されている構成である。原料パルプのルンケル比が小さい場合には、製紙適性が向上する他、同じ坪量で紙厚が小さい原紙を得ることができるという利点がある。したがって本発明では、特に好適には、前記晒クラフトパルプ、特には広葉樹晒クラフトパルプのルンケル比を0.9以下、さらには0.85以下に調整することが好ましい。
ルンケル比は、原料パルプに若年の植林木からなるパルプを用いたり、粘状叩解処理を行って調整することが可能である。
本発明においては、2〜5%の叩解濃度で原料パルプを粘状叩解することが好ましい。原料パルプの叩解濃度が2%未満では、求める内部フィブリル化及び外部フィブリル化が、叩解効果によって充分に進行せず、パルプ繊維のカッティングが生じるため、所定のルンケル比を得難いだけでなく、充分な嵩高さが得られ難くなる場合がある。逆に原料パルプの叩解濃度が5%を超えると、叩解時の消費電力量が多くなり、費用対効果が低下するため好ましくない。原料パルプの最適な叩解濃度は2〜4%であり、叩解時の消費電力は70〜100kW/tが好適で、約80kW/t近傍で最も嵩が高くなる。したがって、このような叩解条件が、坪量が23g/m2以下、紙厚が28μm以下、かつ密度が0.82g/cm3以下であり、さらに片面のベック平滑度が1000秒以上、かつもう一方の面のベック平滑度が100秒以下である本発明の金属合紙を得るのに好適な条件である。
前記粘状叩解処理には、例えば通常のディスクリファイナーを利用することができるが、該ディスクリファイナーはリファイナーの高速回転による遠心力で、一過性の粘状叩解処理が行われることに留まる。これに対して、コニカル型ディスクリファイナーは、リファイナーの高速回転による遠心力で、叩解刃と叩解刃との間の溝で生じる原料の流動渦により、原料パルプ繊維が繰り返し叩解刃で粘状叩解される頻度が増加し、粘状叩解が進行する。したがって、粘状叩解処理にはコニカル型ディスクリファイナーを用いることが好ましい。
特に、刃幅と溝幅とが「刃幅<溝幅」の関係にあり、従来の刃幅が2.0mm以上のリファイナーとは異なり、刃幅が1.5mm以下、さらには1.0mm以下で、溝幅が1.5mm以上であり、さらに刃幅の3倍以上の溝深さを有する回転刃及び/又は固定刃を備えたコニカル型ディスクリファイナーを用い、原料の流動渦を多く発生させて叩解処理を施すことにより、ルンケル比を好適に調整することができる。なお、最適な刃幅及び溝幅は、それぞれ1.3mm及び2.4mmである。このような条件のコニカル型ディスクリファイナーを用いた場合には、高いルンケル比を有する樹種からなる原料パルプであっても、内部フィブリル化が可能となり、このように処理した原料パルプを用いることで、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な合紙を容易に得ることができる。
前記原料パルプからなるパルプスラリーには、サイズ剤を内添することが好ましい。該サイズ剤を内添することにより、金属合紙の使用時に吸湿によるシワの発生を充分に抑制することができる。
サイズ剤の種類には特に限定がないが、樹脂分によるピッチ成分の低減を考慮すると、ロジン系サイズ剤に比べて、例えばカチオン性のスチレン−アクリル系ポリマー、スチレンマレイン酸−アクリル系等のカチオン性スチレン系サイズ剤に代表されるスチレン系サイズ剤が、ピッチ成分となる樹脂分が少なく、中性処方においてサイズ性が良好であり、金属合紙の使用時に吸湿によるシワの発生を抑制する効果が大きく、金属合紙の再使用性をより向上させることが可能である点で、特に好ましい。
前記スチレン系サイズ剤としては、例えば、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する(以下同様))、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等が例示され、これらの中から1種以上を適宜選択して用いることができる。
スチレン系サイズ剤は、原料パルプ中への分散性が高く、サイズ効果の発現も高いので、本発明に用いられる熱ソフトカレンダーとの組み合わせにおいて、均等な紙厚と平坦性とが得られ易くなり、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な合紙を容易に得ることができる。
なお、サイズ剤としては、前記スチレン系サイズ剤の他にも、例えば、エチレン/アクリル酸共重合体、イソブチレン/アクリル酸共重合体、n−ブチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、プロピレン/マレイン酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体等のオレフィン系サイズ剤が例示され、これらの中から1種以上を適宜選択して用いることができる。
サイズ剤の配合量は、金属合紙の使用時に吸湿によるシワの発生を抑制する効果を充分に発現させるには、原料パルプ100質量部に対して0.05質量部以上、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、原紙地合への影響やドライヤー剥離性等の操業性、サイズ性能の上限という点から、サイズ剤の配合量は、原料パルプ100質量部に対して3質量部以下、さらには2質量部以下であることが好ましい。
本発明における金属合紙は、pHが6〜8になるように中性域で抄紙されるため、乾燥時にドライヤー表面に貼り付き易い傾向を示す場合もある。そこで、原料パルプからなるパルプスラリーには、前記サイズ剤の他にも、例えば剥離剤が配合されていてもよい。該剥離剤の種類には特に限定がないが、例えば植物油、鉱物油、界面活性剤等があげられ、これらの中から1種以上を適宜選択して用いることができる。
剥離剤の配合量は、良好な滑り性を発現させるには、原料パルプ100質量部に対して0.1質量部以上であることが好ましい。また、金属箔との滑り防止のために、剥離剤の配合量は、原料パルプ100質量部に対して1.0質量部以下であることが好ましい。
さらに原料パルプからなるパルプスラリーには、前記サイズ剤や剥離剤の他にも、例えば澱粉等の紙力増強剤、硫酸バンド等の定着剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の通常原紙に配合される種々の添加剤を、必要に応じて適宜その種類及び量を調整して配合することができる。
前記のごときパルプスラリーを、通常使用される長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の抄紙機で適宜抄紙条件を調整して抄造し、ヤンキードライヤー、多筒式ドライヤー等のドライヤーにて乾燥させて原紙を得ることができる。なかでも、使用時にシワの発生やキズ入りを少なくするためには、寸法安定性が良好で表面の平滑性が高いヤンキードライヤーを用いて乾燥させることが好ましい。
なお、剥離剤は、前記のごとくパルプスラリーに配合してもよいが、例えばドライヤーシリンダにスプレー塗布したり、サイズプレスで塗布することにより、原紙の表面に塗工することもできる。
次に、得られた原紙(用紙)を熱ソフトカレンダーに通紙し、用紙に平滑化処理を施す。この平滑化処理を、例えば後述する条件にて行うことにより、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた金属合紙を容易に得ることができる。
本発明において、弾性ロール及び剛性ロールを備えた熱ソフトカレンダーが好適に用いられる。
前記熱ソフトカレンダーとしては、オフタイプ及びオンタイプのいずれも使用することができるが、抄紙から熱ソフトカレンダーによる平坦化処理を一連で行うオンタイプのものが、例えば好適には、ヤンキードライヤーを用いた乾燥処理、スチレン系サイズ剤によるサイズ性の付与、紙厚の変動幅の減少、紙質強度の得易さ、さらには生産性の面で好ましい。
熱ソフトカレンダーには、弾性ロールとして、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリレート樹脂等の樹脂ロール、コットン、ナイロン、アスベスト、アラミド繊維等を成型したロール等が、ロールショアーD硬度80以上で好適に使用される。また剛性ロールとして、金属ロール、金属ロールの表面に硬質クロムメッキ等で鏡面処理を施したロール、金属ロールの表面に粗面化処理を施したロール等が適宜使用される。
また、用紙を熱ソフトカレンダーに通紙する際に、例えば以下に示すニップ温度等の条件で、用紙の艶面が弾性ロール側に、非艶面が剛性ロール側になるようにし、艶面を弾性ロールにて、非艶面を剛性ロールにて処理することによって、過度な平坦性の付与や非艶面の過度な凸部発生を抑制し、適当な範囲内で表裏面の平滑化処理を行うことができ、また紙厚の変動幅が非常に小さい金属合紙を得ることができる。
平滑化処理の条件として、ニップ温度を適宜調整することが好ましい。ニップ温度があまりにも低い場合には、金属箔へのキズ入りを防止するための最低限の平滑度が得られないので、70℃以上、さらには75℃以上、特に78℃以上とすることが好ましい。逆にニップ温度があまりにも高い場合には、密度が高くなりクッション性が低下し、金属箔へのキズ入りが発生するので、88℃以下、さらには85℃以下、特に83℃以下とすることが好ましい。
また、ニップ段数は、多段や熱ソフトカレンダーのスタック数を適宜組み合わせることによって調整が可能であるが、本発明の金属合紙の特に好ましい用途である、薄物金属箔用途においては、所望の密度、平坦性、剛度、紙力を得るために、1段とすることが好ましい。ニップ段数1段の熱ソフトカレンダーにより平坦化処理を施すことで、特に用紙表裏面の平滑度の差を設けることができ、金属箔と適度に密着することから、より優れた滑り防止効果が得られる。さらに、金属箔へのキズ入りを防止するために好適な平滑度を得るという点から、ニップ圧は90kg/cm以上、さらには95kg/cm以上であることが好ましい。なお、ニップ圧があまりにも高い場合には、密度が高くなりクッション性が低下することで、金属箔へのキズ入りが発生する恐れがあるので、150kg/cm以下、さらには120kg/cm以下であることが好ましい。
また、得られる金属合紙の平滑度をより向上させるためには、前記ニップ温度、ニップ段数、ニップ圧等の調整に加えて、熱ソフトカレンダーに通紙する前の用紙の紙水分を、例えば3.5〜4.5質量%程度に調整することが好ましい。熱ソフトカレンダーに通紙する前の用紙の紙水分が3.5質量%未満では、平坦性を得る効果が低く、静電気を発生しやすい問題が生じ、作業性が低下する恐れがある。逆に熱ソフトカレンダーに通紙する前の用紙の紙水分が4.5質量%を超えると、過度の平滑性が生じ易く、カールの発生や寸法安定性が低下する場合がある。
かくして得られる金属合紙は、JIS P 8124「坪量測定方法」に記載の方法に準拠して測定した坪量が23g/m2以下、JIS P 8118「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定した紙厚が28μm以下、かつ、同JIS P 8118に準拠して測定した密度が0.82g/cm3以下であり、さらに、JIS P 8119「紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法」に記載の方法に準拠して測定した片面のベック平滑度が1000秒以上、かつもう一方の面のベック平滑度が100秒以下である。
このように、本発明の金属合紙は、その坪量、紙厚、密度及び平滑度がいずれも特定範囲内に調整されたものであるので、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙である。
前記坪量は、従来の金属合紙と比較して、金属箔製品用の合紙として好適に使用し得る程度の軽量化を図るには、JIS P 8124に準拠して測定して23g/m2以下、好ましくは22g/m2以下、さらに好ましくは21g/m2以下である。なお、該坪量があまりにも小さい場合には、クッション性の低下や、強度不足による断紙が発生するといった問題が生じるため、14g/m2以上、さらには16g/m2以上であることが好ましい。坪量が23g/m2を超えると、紙厚のバラツキが大きくなったり、所望の小さな紙厚を維持することが困難となる。
前記紙厚は、従来の金属合紙と比較して、金属箔製品用の合紙として好適に使用し得る薄さであり、JIS P 8118に準拠して測定して28μm以下、好ましくは27μm以下、さらに好ましくは26μm以下である。なお、該紙厚があまりにも小さい場合には、強度が低下する恐れがあるので、20μm以上、さらには22μm以上であることが好ましい。紙厚が28μmを超えると、紙厚のバラツキが大きくなり、合紙の凹凸により金属箔への打痕が発生し易くなる。
また、本発明の金属合紙について、JIS P 8118に準拠して幅方向の紙厚を2cm間隔で40箇所を測定した際に、隣接する測定点の最大紙厚差(以下、「最大隣接差」ともいう)は3μm以下、さらには1〜3μm、特に1〜2μmであることが好ましく、かつ、40箇所の紙厚の最大値と最小値との差が5μm以下、さらには4μm以下、特に3μm以下であることが好ましい。
前記最大隣接差及び最大値と最小値との差を求める際の、幅方向の紙厚の測定は、紙中のフロックの大きさが約2cmであることから、2cmの間隔で行うことが望ましい。2cmを超える間隔で測定を行うと、紙中の凹凸を捕らえ難く、最大隣接差が小さくなるため、抄紙条件に応じた差異が生じ難い。逆に2cm未満の間隔で測定を行ったとしても、最大隣接差や最大値と最小値との差が、2cm間隔で測定した結果と比較して変化がない。したがって、2cm間隔で測定することで、最小の測定数で、信頼し得る測定値を得ることができる。
なお、紙厚の調整は、前記熱ソフトカレンダーによる手段が主であるものの、原料パルプにルンケル比が0.9以下のクラフトパルプを用いること、熱ソフトカレンダーに通紙する前の用紙の紙水分を3.5〜4.5質量%程度に調整することでも容易に可能である。その結果、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができる。
前記密度は、金属箔製品用の合紙として好適に使用し得る程度の良好なクッション性を得るには、JIS P 8118に準拠して測定して0.82g/cm3以下、好ましくは0.81g/cm3以下、さらに好ましくは0.80g/cm3以下である。なお、該密度があまりにも小さい場合には、所望の小さな紙厚を維持することが困難であり、また腰が強く曲げ難い合紙となる恐れがあるので、0.70g/m3以上、さらには0.72g/m3以上であることが好ましい。密度が0.82g/cm3を超えると、クッション性が低下し、金属箔へのキズ入りが発生し易くなる。
前記平滑度は、使用時に金属箔への打痕・キズ入りを防ぐためには、その片面において、JIS P 8119に準拠して測定したベック平滑度が1000秒以上、好ましくは1100秒以上、さらに好ましくは1500秒以上であり、かつもう一方の面において、ベック平滑度が100秒以下、好ましくは90秒以下、さらに好ましくは80秒以下である。片面のベック平滑度が1000秒未満の場合、金属箔コイルに合紙を挿入した際、合紙表面の凹凸が金属箔へ転移して打痕となってしまう。また、もう一方の面のベック平滑度が100秒を超えた場合、挿入時に紙ズレが発生し、金属箔にキズ入りが発生し易くなる。なお、一方の面の平滑度を極端に低くすることは困難であるので、一方の面のベック平滑度は30秒以上、さらには40秒以上であることが好ましい。
本発明の金属合紙は、金属箔製品用の合紙として充分な強度が得られ、また紙中に固い無機物が存在すると金属箔へ打痕が発生するため、JIS P 8251「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に記載の方法に準拠して測定した紙中灰分が0.5質量%以下、さらには0.3質量%以下であることが好ましい。
本発明の金属合紙は、合紙挿入時の滑り防止という点から、JIS P 8147「紙及び板紙の摩擦係数試験方法」に記載の方法に準拠して測定した、金属合紙表面同士又は裏面同士で、表裏面の紙の流れ方向(縦方向)の静摩擦係数が、片面で0.47〜0.57、もう一方の面で0.33〜0.43であることが好ましい。
なお、静摩擦係数の調整は、前記熱ソフトカレンダーによる手段が主であるものの、スチレン系サイズ剤の内添によってより詳細に行うことが容易であり、さらには、原料パルプにルンケル比が0.9以下のクラフトパルプを用いること、熱ソフトカレンダーに通紙する前の用紙の紙水分を3.5〜4.5質量%程度に調整することでも容易に可能である。その結果、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができる。
本発明の金属合紙は、合紙挿入時に静電気による密着を防止するという点から、JIS P 8111「紙、板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」の記載に準拠した温度23±1℃及び相対湿度50±2%の標準状態での、JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に記載の方法に準拠して測定した体積電気抵抗が1.0×1012〜1.0×1014Ω・cm、さらには1.0×1013〜5.0×1013Ω・cmであることが好ましい。
なお、体積電気抵抗の調整には、例えば公知の静電気調整剤を用いることができ、好適にはサイズプレスやドライヤーにおける剥離剤と共に、金属合紙表面に設けることが、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にすぐれた、金属箔製品に好適な金属合紙が容易に得られるという点で好ましい。
本発明の金属合紙は、使用時の作業性や合紙挿入時のシワの解消を考慮すると、JIS P 8143「紙のクラークこわさ試験機によるこわさ試験方法」に記載の方法に準拠して測定した剛度(こわさ)が、縦方向で3.5〜5.5cm3/100、さらには3.8〜5.2cm3/100で、横方向で2.2〜3.2cm3/100、さらには2.5〜3.0cm3/100であることが、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができるという点で好ましい。
なお、剛度の調整は、原料パルプにルンケル比が0.9以下のクラフトパルプを用いること、熱ソフトカレンダーによる平坦化処理、スチレン系サイズ剤を組み合わせることで容易に可能である。その結果、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができる。
本発明の金属合紙は、使用時の作業性、再使用性や強度不足による断紙防止を考慮すると、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に記載の方法に準拠して測定した引張強度が、縦方向で1.10〜1.50kN/m、さらには1.15〜1.45kN/mで、横方向で0.75〜1.10kN/m、さらには0.80〜1.05kN/mであることが、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔と合紙との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができるという点で好ましい。
なお、引張強度の調整も、原料パルプにルンケル比が0.9以下のクラフトパルプを用いること、熱ソフトカレンダーによる平坦化処理、スチレン系サイズ剤を組み合わせることで容易に可能である。その結果、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、金属箔との密着性に優れ、紙厚の変動幅が小さく、使用時にシワの発生が少なく再使用性にも優れた、金属箔製品に好適な金属合紙を容易に得ることができる。
次に、本発明の金属合紙を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜9及び比較例1〜5(金属合紙の製造)
パルプ、サイズ剤、剥離剤及び紙力増強剤として、各々以下のものを準備した。
(a)パルプ
LBKP
(カナディアンスタンダードフリーネス:300〜400mL)
NBKP
(カナディアンスタンダードフリーネス:400〜500mL)
PGW
(カナディアンスタンダードフリーネス:100〜200mL)
(b)サイズ剤
・スチレン系サイズ剤(荒川化学工業(株)製、品番:NAサイズ)
・ロジン系サイズ剤(星光PMC(株)製、品番:AL1302)
・AKDサイズ剤(星光PMC(株)製、品番:AD1624)
(c)剥離剤
内添鉱物油(星光PMC(株)製、品番:CR 6102)
(d)紙力増強剤
カチオン性澱粉(敷島スターチ(株)製、品番:マーメイドC−50)
表1に示すように、絶乾パルプ1tに対して、有効成分でサイズ剤1.8kg、剥離剤2kg、紙力増強剤5kg、ピッチコントロール剤0.5kg、消泡剤適量及び染料(日本化薬(株)製、商品名:バイオレット P リキッド)適量を添加し、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを、長網抄紙機を用いて抄紙速度約350m/分で抄造し、ヤンキードライヤーにて乾燥処理を施して原紙を得た。
なお、比較例4では、ヤンキードライヤーの代わりに多筒式ドライヤーにて乾燥処理を施した。
Figure 2010202994
次いで、得られた原紙を、以下に示す弾性ロール及び剛性ロールを備えた熱ソフトカレンダーに一連(オンマシン)で通紙し、表2に示す条件にて、原紙の艶面(表面)が弾性ロール側に、非艶面(裏面)が剛性ロール側に接するようにして平滑化処理を施し、金属合紙を得た。カレンダーに通紙する前の原紙の紙水分を、併せて表2に示す。
なお、比較例1では、原紙に平坦化処理を施さず、比較例2では、弾性ロール及び剛性ロールを備えた熱ソフトカレンダーの代わりに、剛性ロールを2本備えたマシンカレンダーを用いて平滑化処理を行い、比較例4では、弾性ロール/剛性ロールと剛性ロール/弾性ロールとの組み合わせを備えた熱ソフトカレンダーを用いて平滑化処理を行った。
弾性ロール((株)淀川製鋼所製)
材質:ミラーマット(YCR5100)、硬度:85SD、片肉:25mm
剛性ロール:((株)淀川製鋼所製)
材質:合金チルド、硬度:78HS
Figure 2010202994
なお、得られた金属合紙の熱水抽出pH(JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000に準拠して測定)は、6.0〜8.0の範囲であり、塩素イオン濃度(JIS K 0101に準拠して測定)は、80ppm以下である。
さらに、得られた金属合紙について、各物性及び特性を以下に示す方法にしたがって調べた。その結果を表3〜表5に示す。
なお、市販の金属合紙についても、同様に各物性及び特性を調べた。その結果を比較例6として表3〜表5に示す。
(1)物性
(a)坪量
JIS P 8124に準拠して測定した。
(b)紙厚及び密度
JIS P 8118に準拠して測定した。
(c)ベック平滑度
JIS P 8119に準拠して、表裏面のベック平滑度を測定した。
(d)紙中灰分
JIS P 8251に準拠して測定した。
(e)静摩擦係数
JIS P 8147に準拠して、金属合紙表面同士又は裏面同士で表裏面の紙の流れ方向(縦方向)の静摩擦係数を測定した。
(f)体積電気抵抗
JIS P 8111に準拠した温度23±1℃及び相対湿度50±2%の標準状態で、JIS K 6911に準拠して測定した。
(g)剛度(こわさ)
JIS P 8143に準拠して、縦方向及び横方向の剛度を測定した。
(h)引張強度
JIS P 8113に準拠して、縦方向及び横方向の引張強度を測定した。
(2)特性
(ア)紙厚の変動幅
金属合紙の幅方向においてJIS P 8118に準拠して2cm間隔で40箇所の紙厚を測定し、その変動幅を求めた。
(イ)打痕の有無
ステンレススチール箔(厚み:約30μm)コイルに金属合紙を挿入し、巻き戻した後、ステンレススチール箔への打痕の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:20m2当たりの打痕数が0.5個未満
4:20m2当たりの打痕数が0.5個以上、1個未満
3:20m2当たりの打痕数が1個以上、3個未満
2:20m2当たりの打痕数が3個以上、5個未満
1:20m2当たりの打痕数が5個以上
なお、評価3〜5であれば、金属箔用の合紙として実使用可能である。
(ウ)挿入時の紙ズレ
走行するステンレススチール箔(厚み:約30μm)コイルに金属合紙を1万m挿入した後、ステンレススチール箔と金属合紙とのズレを測定し、その最大値を以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:最大値が0.5mm未満
4:最大値が0.5mm以上、1.0mm未満
3:最大値が1.0mm以上、1.5mm未満
2:最大値が1.5mm以上、2.0mm未満
1:最大値が2.0mm以上
なお、評価3〜5であれば、金属箔用の合紙として実使用可能である。
(エ)吸湿によるシワ
走行するステンレススチール箔(厚み:約30μm)コイルに金属合紙を1万m挿入した後、巻き戻して金属合紙を回収し、上巻10mの吸湿によるシワを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
5:吸湿による形状変化が全くない。
4:吸湿により紙の一部に伸縮が見られるが、シワの発生はない。
3:吸湿により紙全体に伸縮が見られるが、シワの発生はない。
2:吸湿により紙の一部にシワが発生している。
1:吸湿により紙全体にシワが発生している。
なお、評価3〜5であれば、金属箔用の合紙として実使用可能である。
Figure 2010202994
Figure 2010202994
Figure 2010202994
表3〜表5に示された結果から、実施例1〜9の金属合紙は、ドライヤーで乾燥した用紙に、熱ソフトカレンダーで平坦化処理を施して製造されたものであるので、通常金属合紙に要求されるpH及び塩素イオン濃度を有するのは勿論のこと、その坪量、紙厚、密度及び平滑度がいずれも特定範囲内に調整されているだけでなく、金属箔製品用の合紙として好適な各種物性を具備していることがわかる。
このように、実施例1〜9の金属合紙は、紙厚が小さく極めて軽量であるにも係らず、紙厚の変動幅が小さく、金属箔への打痕も少なく、金属箔との密着性に優れて挿入時に紙ズレが殆どないうえ、使用時にシワの発生も少ないものである。
これに対して、比較例1〜5の金属合紙は、金属箔用の合紙として好適な坪量、紙厚、密度及び平滑度を具備しておらず、紙厚の変動幅が大きく、金属箔への打痕も多く、挿入時に紙ズレが生じ、使用時にシワも発生してしまうものである。
また市販の金属合紙は、紙厚の変動幅は小さく、金属箔への打痕も少ないものの、挿入時に紙ズレが生じ、使用時にシワも発生してしまうため、通常の金属合紙として使用するには問題がないが、金属箔用の合紙としては不適切である。
本発明の金属合紙は、例えばフレキシブルプリント基盤や、ハードディスクに使用される精密部品といった金属箔製品等の合紙として好適に利用することができる。

Claims (3)

  1. JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法 No.49−2:2000に準拠して測定したpHが6〜8で、JIS K 0101に準拠して測定した塩素イオン濃度が80ppm以下である金属合紙において、
    JIS P 8124に準拠して測定した坪量が23g/m2以下、JIS P 8118に準拠して測定した紙厚が28μm以下、かつJIS P 8118に準拠して測定した密度が0.82g/cm3以下であり、さらに、JIS P 8119に準拠して測定した片面のベック平滑度が1000秒以上、かつもう一方の面のベック平滑度が100秒以下となるように、
    ドライヤーにて乾燥処理を施した用紙に、熱ソフトカレンダーにて平坦化処理を施してなることを特徴とする、金属合紙。
  2. 用紙が、原料パルプが晒クラフトパルプ100質量%で構成され、該晒クラフトパルプのルンケル比が0.9以下であり、かつ該原料パルプにスチレン系サイズ剤が内添された原紙からなる、請求項1に記載の金属合紙。
  3. ニップ温度70〜88℃の条件で、用紙の片面を弾性ロールで処理し、用紙のもう一方の面を剛性ロールで処理してなる、請求項1又は2に記載の金属合紙。
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