JP2010200661A - 簡便かつ迅速な核酸抽出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】核酸回収容器の核酸吸着担体として通液孔、直径、厚さを限定したモノリス構造体を用いることで核酸含有溶液を大気圧以下で吸引・吐出可能な液通りと核酸回収効率とを両立できる。
【選択図】なし
Description
核酸を含む溶液から核酸を抽出する方法であって、
空気を媒体として圧力を利用した吸引吐出ができる機構を有する装置を使用して、核酸の固相担体への特異的な吸着・洗浄および溶出により核酸を抽出する方法において、
次の(1)〜(6)の工程を含む核酸抽出方法。
(1)以下の(a)(b)の特徴を有する容器を準備する工程。
(a)核酸を含む溶液を吸引吐出する側(通液部側)および空気を媒体として圧力を加減する側(通気部側)の二方向に開放面をもつ。
(b)固相担体として、平均細孔径が20μm以上100μm以下のモノリス構造体が、該容器の空間を完全に二つに分かつように固定されている。
(2)該容器の通気部側を吸引吐出機構に接続する工程。
(3)核酸を含む溶液と吸着液を混合する工程。
(4)核酸を含む溶液と混合した吸着液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させて核酸をモノリス構造体に吸着した後、容器内の液体を吐出する工程。
(5)洗浄液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させてモノリス構造体内部及び容器内を洗浄した後、容器内の液体を吐出する工程。
(6)溶出液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に吸着した核酸を溶出した後、容器内の液体を吐出する工程。
[項2]
モノリス構造体の通液方向に対して垂直方向の切断面積が0.1平方mm以上100平方mm以下である項1に記載の核酸抽出方法。
[項3]
モノリス構造体の通液方向の厚さが0.2mm以上5mm以下である項1または2に記載の核酸抽出方法。
[項4]
溶液の吸引速度が、10μL/秒より速く、500μL/秒より遅い速度である項1から3のいずれかに記載の核酸抽出方法。
[項5]
溶液の吐出速度が、10μL/秒より速く、500μL/秒より遅い速度である項1から4のいずれかに記載の核酸抽出方法。
[項6]
吸着液がカオトロピック塩を含む項1に記載の核酸抽出方法。
[項7]
吸着液がカオトロピック塩を含み、かつ酢酸塩を含む項6に記載の核酸抽出方法。
[項8]
カオトロピック塩が、グアニジン塩、ヨウ化物塩および尿素からなる群より選ばれるいずれか1つ以上である項6または7のいずれかに記載の核酸抽出方法。
[項9]
洗浄液がアルコール類を含む項1に記載の核酸抽出方法。
[項10]
洗浄液がアルコール類を含み、かつ酢酸塩を含む項9に記載の核酸抽出方法。
[項11]
アルコール類が、エタノール、イソプロパノールおよび1−プロパノールからなる群より選ばれるいずれか1つ以上である項9または10に記載の核酸抽出方法。
[項12]
酢酸塩が、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウムおよび酢酸リチウムからなる群より選ばれるいずれか1つ以上である項7または10に記載の核酸抽出方法。
[項13]
溶出液がpH7以上の溶液であることを特徴とする項1に記載の核酸抽出方法。
次の(1)〜(6)の工程を含む核酸抽出方法である。
(1)以下の(a)(b)の特徴を有する容器を準備する工程。
(a)核酸を含む溶液を吸引吐出する側(通液部側)および空気を媒体として圧力を加減する側(通気部側)の二方向に開放面をもつ。
(b)固相担体として、平均細孔径が20μm以上100μm以下のモノリス構造体が、該容器の空間を完全に二つに分かつように固定されている。
(2)該容器の通気部側を吸引吐出機構に接続する工程。
(3)核酸を含む溶液と吸着液を混合する工程。
(4)核酸を含む溶液と混合した吸着液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させて核酸をモノリス構造体に吸着した後、容器内の液体を吐出する工程。
(5)洗浄液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させてモノリス構造体内部及び容器内を洗浄した後、容器内の液体を吐出する工程。
(6)溶出液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に吸着した核酸を溶出した後、容器内の液体を吐出する工程。
本発明で用いるモノリス構造体は、一体成型された多孔質体を意味し、以下に例示する方法で作製することができるが、特に限定されるものではない。
この反応時に種々の有機モノマーを添加すると、有機・無機ハイブリッドモノリスも簡単に作成できる。従って、添加する有機モノマーの種類によって、化学的特性を加えることも可能となる。
例えば、親水基を持つ有機モノマーを添加することによって、水系試料成分の吸水性を向上することができる。又、有機・無機を混在させることによって、モノリス構造体の化学的安定を上げることも可能となる。ゾル−ゲル法にて作成される有機・無機ハイブリッドモノリス構造体は、添加有機モノマーの種類で目的に応じた化学表面を構成したり、化学的安定性を向上したりといった性質を付加できる。核酸抽出において有効なモノリス特性を目的に応じて自由に改善できることを示している。
基本的には、ゾルーゲル法からのモノリス構造体の合成と同様の有効性があるが、ゾルーゲルモノリスよりもマクロ細孔を大きく作る事ができるので、2次ミクロ細孔を内部表面に作る場合に有効である。更に、ガラス分相は、その組成より耐アルカリ性が高く、アルカリ洗浄による再生が出来ると言うメリットがある。
核酸抽出に用いるモノリス構造体は、ブーム法として広く知られているシリカを用いた核酸抽出方法と同様の原理で核酸を吸脱着させるため、表面にシラノール基を持つことが好ましい。
本発明の実施形態における特徴の一つは、平均細孔径が20μm以上100μm以下のモノリス構造体を用いることである。
吸着液や洗浄液の吸引および吐出時にはモノリス構造体の体積よりも溶液の体積のほうが極めて大きいため溶液の通過に影響は与えない。しかし、溶出液の場合は核酸の濃縮のためできるだけ少量を用いることが好ましく、少量の場合はモノリス構造体を通過する時の溶液通過速度の制御が難しくなる。溶出液の体積がモノリス構造体の体積と同じ場合は、吸引および吐出する時に気体を含む可能性が高く、溶出液の制御が極めて難しい。例えば、使用する溶出液とモノリス構造体の体積の比が2以上であることが好ましい。より好ましくは4以上である。さらに好ましくは5以上である。特に限定はされないが、モノリス構造体の形状は、円柱形、直方体、円錐形、円錐形を切断した形、球などが考えられる。形状は容器の形状や大きさによって選択される。
本発明では、上記のようなモノリス構造体を、核酸を含む溶液を吸引吐出する側(通液部側)および空気を媒体として圧力を加減する側(通気部側)の二方向に開放面をもつ容器に固定する。該容器において、モノリス構造体は、該容器の空間を完全に二つに分かつように固定される。
モノリス構造体が容器に固定される位置は、特に限定されないが、容器の中心部より通液側にあることが好ましい。モノリス構造体から通液部側の開放面までの距離が20mm以内であることがより好ましい。モノリス構造体から通液部側の開放面までの距離は溶液を吐出した後の残存溶液の増加を引き起こす。この理由によりモノリス構造体から通液部側の開放面までの距離は、溶液を吸引吐出する容器の構造上可能な限り、短いことが好ましい。
チップへのモノリス構造体の固定はチップとモノリス構造体が強固に固定されるのであれば良く、例えば超音波による溶着法で固定できる。
核酸を含む溶液としては、特に限定されるものではないが、血液、血清、血球、喀痰、尿、胃液、スワブなどの生体試料が挙げられる。各生体試料に適した前処理方法を施したサンプルも含まれる。また培養した組織、細胞、細菌、ウイルスなども挙げられる。さらには別に最適な方法で核酸を抽出した溶液や精製後の核酸についても該当する。
空気を媒体として圧力を利用した吸引吐出ができる機構を有する装置、すなわち、モノリス構造体を固定した容器に圧力変化を加える装置(「吸引吐出装置」とも表現する。)としては溶液の吸引および吐出ができれば特に限定されないが、圧力変化を制御できる装置が好ましい。例えば、手動で操作が行えるピペットやシリンジなどが挙げられる。また自動装置であれば自動分注機のようにピペットチップをかん合し、吸引および吐出時の液量と速度が正確に制御できるものも適している。例えば、ニチリョー製のMulti−CHOT(商標登録)の1000μLディスポーザブルチップヘッドを利用して、モノリス構造体を固定した容器を勘合させ、通常のピペットチップのように吸引・吐出を行うことができる。
高い核酸回収率を得るには、溶液中の核酸とモノリス構造体表面との接触時間を長くする必要がある。接触時間を長くするためには、溶液の吸引および吐出速度は極力遅いほうが好ましい。しかしながら、簡便、迅速な核酸抽出方法が望まれており、短時間かつ高回収率達成可能な吸引および吐出速度が好ましい。
吸引および吐出速度は一定量の溶液を吸引するのに要した時間(秒)あるいは一定量の溶液を吐出するのに要した時間(秒)で定義される。例えば、500μLの溶液を吸引する場合、モノリス構造体を固定した容器の先端に溶液を吸引した時点からモノリス構造体を固定した容器に500μLの溶液が全て吸引された時点の時間を計測し、5秒かかった時は100μL/秒とする。また、吐出も同様にモノリス構造体を固定した容器の内部に保持した500μLの溶液を、モノリス構造体を固定した容器外へ溶液を押し出した時点の時間を計測して算出できる。
吸引吐出速度の下限については、全体の処理時間を考慮して、迅速性が損なわれない程度に適宜設定すればよく、特に限定されない。
本発明の核酸抽出方法では、上記のモノリス構造体を固定した容器の通気部側を、吸引吐出装置に接続し、ブーム法として広く知られているシリカを用いた核酸抽出方法と同様の原理で、核酸の固相担体への特異的な結合・洗浄および溶出により核酸を抽出する。
核酸の固相担体への特異的な結合は、核酸を含む溶液を吸着液と混合し、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させることにより行われる。
吸着液は、核酸を効率よくモノリス構造体表面へ吸着させることができる組成であることが好ましい。
さらには、粘性が低く泡立ちの少ない溶液が適している。特に限定はされないが、シリカ担体に核酸を吸着させる時に用いるカオトロピック塩を用いることができる。例えば、グアニジウム塩、ヨウ化物塩が挙げられる。特にグアニジウム塩は濃度1Mから8Mの範囲で使用することが好ましい。さらに詳細にはグアニジウム塩としてグアニジン塩酸塩、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン硫酸塩などが使用できる。また、ヨウ化物塩として、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどが使用できる。その他にも、チオシアン酸ナトリウム、尿素などが使用できるがこの限りではない。
吸着液のpHは2〜7であることが好ましい。pH3〜6であることがさらに好ましい。吸着液のpHを安定化させるため、緩衝液を用いることができる。また、酢酸塩などの塩を加えることができる。酢酸塩は一価の陰イオンとの塩が好ましく、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸リチウムを用いることができる。
核酸をモノリス構造体に特異的に結合させたのち、容器内の液体は吐出され、次にモノリス構造体および容器内の洗浄を行う。
洗浄は、洗浄液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させてモノリス構造体内部及び容器内を洗浄した後、容器内の液体を吐出することにより行われる。
洗浄液には、モノリス構造体に吸着している核酸を脱離させない溶液が好ましい。さらには、粘性が低く泡立ちの少ない溶液が適している。核酸を溶解しない溶液、例えば30%以上の濃度のアルコール類が挙げられる。アルコール類はエタノール、イソプロパノール、1−プロパノールが好ましい。また、アルコール類とカオトロピック塩との組み合わせも洗浄液の試薬組成として適している。カオトロピック塩は吸着液のカオトロピック塩濃度よりも低い濃度であれば良く、3M以下が好ましく、2M以下がより好ましく、1M以下がさらに好ましい。アルコール類はカオトロピック塩と混合して用いる場合、10%以上の濃度が好ましく、30%以上の濃度がさらに好ましい。
洗浄後、モノリス構造体からの核酸の溶出を行う。
溶出は、溶出液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させてモノリス構造体に吸着した核酸を溶出した後、容器内の液体を吐出することにより行われる。
溶出液については、核酸を溶解し、モノリス構造体から脱離できる溶液が好ましい。さらには、核酸抽出後の反応、例えばPCRに代表される核酸増幅反応を阻害しない溶液組成が好ましい。例えば、トリス緩衝液などの低濃度緩衝液、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液などのpH7以上の溶液、好ましくはアルカリ性溶液が挙げられる。また、溶出液の温度を上げることによってモノリス構造体に吸着した核酸を溶出することもできる。この場合は特にアルカリ性溶液を用いなくとも効率よく吸着した核酸を溶出することが可能である。
上記の結合、洗浄、溶出の各工程においては、吸引および吐出を複数回行っても良い。
結合(吸着)工程においては、核酸を含む溶液の吸引および吐出回数を増加させることにより、核酸とモノリス構造体との接触時間を延ばすことができ、それが、吸引・吐出速度と並んで核酸の吸着効率に影響を与えている。接触機会を増やす点では回数は多いほうが好ましいが、速度同様迅速な核酸抽出を達成するためにはより少ない回数で高い吸着効率を得られることが望ましい。
(1)試料の調製
細菌ゲノムは、Mycobacterium bovis BCG株のゲノムを使用した。3%小川培地(日水製薬製)にて培養後、フェノール・クロロホルム法にてゲノムDNAを抽出して添加回収用試料とした。
細孔径が10μm、20μm、30μm、40μm、50μmと異なるモノリス構造体をレイニン製LTS1000μLピペットチップに超音波により溶着する方法で固定したもの(以下モノリスチップと略す)を作成した。その他モノリス構造体の性状は全て切断面積3.14平方mm、厚さ1mmとした。圧力変化を起こす装置として、テルモ製1mLシリンジを利用した。吸着液は5Mグアニジンチオシアン酸、0.8M酢酸カリウム溶液、洗浄液は0.8M酢酸カリウム溶液、70%エタノール、溶出液には10mM水酸化カリウム溶液を使用した。サンプルには抽出した添加回収用試料を10mMトリス緩衝液で1μL中に約1000コピー含むように希釈して用いた。
モノリス構造体の細孔径が異なる5種類のモノリスチップを利用して、それぞれ図2の簡略図に示されるような操作を実施した。
以下に詳細に記載する。1.5mLのチューブに吸着液500μLを分注し、サンプル100μLを加えてピペッティングにて5回混合した。シリンジに装着した各モノリスチップを用いて吸着液・サンプル混合液を100μL/秒の速度で10回吸引および吐出した。混合液を完全に出し切った後に、洗浄液500μLの入ったチューブにモノリスチップを移動させ、洗浄液を100μL/秒の速度で3回吸引および吐出して洗浄した。洗浄工程をもう一度繰り返した。最後に溶出液100μLの入ったチューブにモノリスチップを移動させ、溶出液を100μL/秒の速度で5回吸引および吐出してモノリスチップ内に吸着したゲノムDNAを溶出した。溶出効率の低下を抑えるため、吸引および吐出の間はモノリス構造体に空気が接触しないように注意した。
モノリス構造体の細孔径が異なるモノリスチップを利用して添加回収した5種類のゲノムDNA溶液、モノリスチップによる添加回収を実施していないサンプル(標準物質)および陰性コントロールをそれぞれ(5)に示す試薬に添加して、(6)に示す条件によりリアルタイムPCR検出を行った。オリゴ1およびオリゴ2をプライマーとして使用し、かつオリゴ3をプローブとして使用した試薬はBCG株を特異的に検出できるプライマー及びプローブの組み合わせである。増幅産物とプローブがハイブリダイゼーションすることでプローブに標識された蛍光色素の蛍光が消光することを検出原理としている。核酸増幅および検出にはロシュ・ダイアグノスティック社製ライトサイクラー(登録商標)を使用した。測定モードは530nmを利用し、得られたリアルタイム検出データを利用して、アニーリング時のQProbe消光率を算出した。さらに消光率2%に達したサイクル数を求めて、従来のSYBR Green Iを用いたリアルタイム定量PCR法同様に解析を行った。添加回収効率は標準物質の検出を100%として、それぞれのサンプルについて算出した。
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1(配列番号1) 250nM、
オリゴ2(配列番号2) 1500nM、
オリゴ3(配列番号3)(5’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO4 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
溶出液 1μL
94℃2分
98℃0秒、60℃5秒(蛍光検出)、50サイクル
94℃60秒、40℃60秒、40℃から75℃へ0.5℃/秒の温度上昇
表1は、モノリス構造体の細孔径が異なる5種類のモノリスチップを利用して添加回収したゲノムDNA溶液を用いて検出・解析した添加回収率を示している。表1より明らかなようにモノリス構造体の細孔径が20μmから50μmで回収が可能であった。20μmから40μmで回収率が50%以上となり良好な結果を示した。
10μmの細孔径を持つモノリス構造体を用いて回収を行った場合、吸着液の吸引・吐出が液詰まりにより困難となり、添加回収操作を途中で断念した。
(1)使用した材料、操作方法、測定方法、解析方法
直径が0.4mm、1.5mm、2mmと異なるモノリス構造体をレイニン製LTS1000μLピペットチップに固定したもの(以下モノリスチップと略す)を作成した。また直径が4mm、10mmのものについてはそれぞれ内径4mm、10mmで1mLのシリンジにかん合できる容器に固定した。その他モノリス構造体の性状は全て平均細孔径30μm、厚さ1mmとした。それぞれの切断面積は、0.126平方mm、1.767平方mm、3.14平方mm、78.5平方mmとなる。その他の材料、操作方法、測定方法、解析方法は実施例1に従って実施した。
表2は、モノリス構造体の切断面積が異なる5種類のモノリスチップを利用して添加回収したゲノムDNA溶液を用いて検出および解析した添加回収率を示している。表2より明らかなようにモノリス構造体の直径が0.4mmから10mmで核酸の回収が可能であった。直径が10mmの場合は、モノリス構造体への残液量が増えて溶出後の溶液量が少なくなった。また吸引および吐出速度を200μL/秒以上にすると溶出工程中に空気が入りやすいため、注意する必要がある。
(1)使用した材料、操作方法、測定方法、解析方法
厚さが1mm、2mm、5mm、10mmと異なるモノリス構造体をレイニン製LTS1000μLピペットチップに固定したもの(以下モノリスチップと略す)を作成した。その他モノリス構造体の性状は全て平均細孔径30μm、切断面3.14平方mmとした。その他の材料、操作方法、測定方法、解析方法は実施例1に従って実施した。
表3は、モノリス構造体の厚さが異なる4種類のモノリスチップを利用して添加回収したゲノムDNA溶液を用いて検出および解析した添加回収率を示している。表3より明らかなようにモノリス構造体の厚さが1mmから5mmで核酸の回収が可能であった。厚さが10mmの場合は、モノリス構造体の通液抵抗が増加しており、操作に10分以上を要したため、迅速な核酸抽出には適さなかった。
(1)材料の準備
モノリス構造体は円柱状で平均細孔径30μm、直径2mm、厚さ1mmを基本構造とした。平均細孔径を10μm、20μm、30μm、40μm、50μmに変更したもの、直径を0.4mm、1.5mm、2mm、4mm、10mmに変更したもの、厚さを1mm、2mm、5mm、10mmに変更したもの、合計14種類を使用した。それぞれを適した容器に固定したものをモノリスチップとした。テストに用いる粘性溶液には0.1%ムチン溶液(シグマ社製)となるように含有した実施例1の吸着液を使用した。圧力変化を起こす器具は実施例1同様に1mLのシリンジを利用した。
1.5mLチューブに分注した吸着液500μLに粘性溶液100μLを混合し、ピペッティングにより混合十分に混合した。テストするモノリスチップを用いて、混合液600μLを全量吸引(チューブ内に粘性溶液がない状態で、かつ液下面がモノリス構造体の下にある状態、図3に例示した)後、全量吐出(モノリスチップ内の溶液を出し切った状態)までの時間を計測した。
粘性溶液を用いて吸引および吐出した時にかかる時間が60秒以内である時を通液性良好とした。60秒を超える時は通液性不良とした。
表4から表6に示されるように、平均細孔径10μm、20μm、直径0.4mm、厚さ5mm、10mmにそれぞれ変更したモノリス構造体を用いた場合にモノリス構造体中での抵抗が強く、通液性が不良であった。平均細孔径20μm、直径0.4mm、厚さ5mmに変更したモノリス構造体の場合、ゲノム溶液程度なら問題はないが、臨床検体など不純物が含まれ、粘性のある溶液を使用した場合に液詰まりの可能性がある。
(1)使用した材料、操作方法、測定方法、解析方法
平均細孔径30μm、切断面3.14平方mm、厚さ1mmのモノリス構造体をレイニン製LTS1000μLピペットチップに固定したモノリスチップを作成した。その他の材料、操作方法、測定方法、解析方法は実施例1に従って実施した。3回実施して、それぞれの時間を計測した。
細菌ゲノム溶液の混合から溶出完了までの時間は、4分00秒、3分47秒、3分53秒であった。吸引吐出を用いた核酸精製方法として開示されている特開2007−306967では吸引吐出による核酸の精製は、全血サンプルの混合から溶出完了までの時間が比較例では16分、加圧と減圧を同時に行う方法で8分であり、本発明による方法は極めて迅速な核酸精製方法であることがわかった。
Claims (13)
- 核酸を含む溶液から核酸を抽出する方法であって、
空気を媒体として圧力を利用した吸引吐出ができる機構を有する装置を使用して、核酸の固相担体への特異的な吸着・洗浄および溶出により核酸を抽出する方法において、
次の(1)〜(6)の工程を含む核酸抽出方法。
(1)以下の(a)(b)の特徴を有する容器を準備する工程。
(a)核酸を含む溶液を吸引吐出する側(通液部側)および空気を媒体として圧力を加減する側(通気部側)の二方向に開放面をもつ。
(b)固相担体として、平均細孔径が20μm以上100μm以下のモノリス構造体が、該容器の空間を完全に二つに分かつように固定されている。
(2)該容器の通気部側を吸引吐出機構に接続する工程。
(3)核酸を含む溶液と吸着液を混合する工程。
(4)核酸を含む溶液と混合した吸着液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させて核酸をモノリス構造体に吸着した後、容器内の液体を吐出する工程。
(5)洗浄液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に接触させてモノリス構造体内部及び容器内を洗浄した後、容器内の液体を吐出する工程。
(6)溶出液を、該容器の通液部側から吸引して、モノリス構造体に吸着した核酸を溶出した後、容器内の液体を吐出する工程。 - モノリス構造体の通液方向に対して垂直方向の切断面積が0.1平方mm以上100平方mm以下である請求項1に記載の核酸抽出方法。
- モノリス構造体の通液方向の厚さが0.2mm以上5mm以下である請求項1または2に記載の核酸抽出方法。
- 溶液の吸引速度が、10μL/秒より速く、500μL/秒より遅い速度である請求項1から3のいずれかに記載の核酸抽出方法。
- 溶液の吐出速度が、10μL/秒より速く、500μL/秒より遅い速度である請求項1から4のいずれかに記載の核酸抽出方法。
- 吸着液がカオトロピック塩を含む請求項1に記載の核酸抽出方法。
- 吸着液がカオトロピック塩を含み、かつ酢酸塩を含む請求項6に記載の核酸抽出方法。
- カオトロピック塩が、グアニジン塩、ヨウ化物塩および尿素からなる群より選ばれるいずれか1つ以上である請求項6または7のいずれかに記載の核酸抽出方法。
- 洗浄液がアルコール類を含む請求項1に記載の核酸抽出方法。
- 洗浄液がアルコール類を含み、かつ酢酸塩を含む請求項9に記載の核酸抽出方法。
- アルコール類が、エタノール、イソプロパノールおよび1−プロパノールからなる群より選ばれるいずれか1つ以上である請求項9または10に記載の核酸抽出方法。
- 酢酸塩が、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウムおよび酢酸リチウムからなる群より選ばれるいずれか1つ以上である請求項7または10に記載の核酸抽出方法。
- 溶出液がpH7以上の溶液であることを特徴とする請求項1に記載の核酸抽出方法。
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