以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係わるインピーダンス整合装置の構成を示したものである。本実施形態に係わるインピーダンス整合装置は、本出願人が行った先の出願(特願2008−117554)に開示されたインピーダンス整合装置が備えている構成に加えて、可変インピーダンス素子が寿命を迎える時期を推定する機能を実現するための構成を更に備えたものである。
図1において1は高周波電源、2は半導体製造装置等のプロセスチャンバである。プロセスチャンバ2内にはプラズマ発生装置等の、高周波電源1の負荷が収容されている。3及び4は高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2との間に設けられた第1及び第2の可変インピーダンス素子で、第1の可変インピーダンス素子3は高周波電源1及び負荷に対して並列に接続され、第2の可変インピーダンス素子4は、高周波電源1及びプロセスチャンバ2に対して直列に接続されている。本実施形態では、第1の可変インピーダンス素子3が第1の可変コンデンサVC1からなり、第2の可変インピーダンス素子4が第2の可変コンデンサVC2からなっている。第1の可変コンデンサVC1及び第2の可変コンデンサVC2としては真空可変コンデンサが用いられている。図示の例では、第2の可変コンデンサVC2とプロセスチャンバとの間にインダクタンス5が挿入されている。
また、負荷に入力される電圧Vinと、電流Iinと、電圧Vinと電流Iinとの間の位相差θinとを検出する入力検出部6が、高周波電源1と第2の可変コンデンサVC2との間に設けられている。入力検出部6による電圧Vin、電流Iinおよび位相差θinの検出方法は、周知であるので説明を省略する。
第1の可変コンデンサVC1に対しては、第1のモータ7aを駆動源として該第1の可変コンデンサVC1の操作軸を操作する第1の操作機構が設けられ、第2の可変コンデンサVC2に対しては、第2のモータ7bを駆動源として該第2の可変コンデンサVC2の操作軸を操作する第2の操作機構が設けられている。インピーダンス整合装置の可変インピーダンス素子を操作するモータとしては、パルスモータやステップモータが多く用いられる。本実施形態では、第1の可変コンデンサVC1及び第2の可変コンデンサVC2をそれぞれ操作するモータ7a及び7bとしてステップモータを用いるものとする。各操作機構は、各モータの回転を各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により構成することができる。例えば、各モータの回転軸と各可変コンデンサの操作軸とを接続するカップリングを用いた機構により各操作機構を構成することができる。場合によっては、各モータの回転を減速して各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により各操作機構を構成することもできる。
また第1の可変コンデンサVC1の操作軸の位置を検出する第1の位置検出部8aと、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の位置を検出する第2の位置検出部8bとを備えた操作軸位置検出部8が設けられ、第1及び第2の位置検出部8a及び8bの出力信号Spa及びSpbが、入力検出部6から得られる入力電圧検出信号Sv、入力電流検出信号Si及び位相差検出信号Sθとともに目標位置設定部9に入力されている。
目標位置設定部9は、入力検出部6により検出された入力電圧Vin及び入力電流Iinを用いて、インピーダンス整合装置の入力端(入力検出部6の入力端)から負荷側を見たインピーダンスを演算により求めて、高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2とのインピーダンス整合を行なうために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置を設定するとともに、設定した目標位置と、操作軸位置検出部8により検出された可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータ7a及び7bの駆動量を演算する。
即ち、目標位置設定部9は、先ずインピーダンス整合装置の入力端から伝送線路を経由し高周波電源1側を見た電源側インピーダンス(通常は50Ω)と、インピーダンス整合装置の入力端からプロセスチャンバ(負荷)2側を見た負荷側インピーダンスとを整合させるために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の位置を演算し、演算した位置を可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置として設定する。
目標位置設定部9はまた、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の演算された目標位置と、第1の位置検出部8aにより検出された可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なステップモータ7aの駆動量(ステップモータ7aに与えるパルス数)を演算して、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdaを第1のモータ駆動部10aに与え、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の演算された目標位置と、第2の位置検出部8bにより検出された第2の可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なステップモータ7bの駆動量(ステップモータに与えるパルス数)を演算して、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdbを第2のモータ駆動部10bに与える。本実施形態では、第1のモータ駆動部10aと第2のモータ駆動部10bとにより、モータ駆動部10が構成されている。
可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置の演算は、例えば、インピーダンスの整合を図るために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のリアクタンス値を目標リアクタンス値として演算する手段と、各可変コンデンサに対して予め求めた操作軸の回転角度位置と各可変コンデンサの静電容量との間の関係を用いて、演算された各目標リアクタンス値に対応する各可変コンデンサの操作軸の回転角度位置(目標位置)を演算する手段とにより行なうことができる。
第1及び第2の位置検出部8a及び8bは、例えば、可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸が微少角度回転する毎に位置検出パルスを発生するエンコーダを用いて構成することができる。
11は第1の可変コンデンサVC1の機構部及び第2の可変コンデンサVC2の機構部の異常の有無を判定する異常判定部である。異常判定部11は、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置、及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置をそれぞれ監視して、目標位置設定部9から第1のモータ駆動部10a及び第2のモータ駆動部10bにそれぞれ演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbが与えられた後、モータ7a及び7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサVC1の機構部の状態が異常である(正常な範囲から外れている)との異常判定を行う。同様に、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサVC2の機構部の状態が異常であるとの異常判定を行う。
なお可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との「残留偏差」は、モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点で、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差である。ここで、「モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点」とは、通常は、検出の遅れを考慮して、モータが実際に駆動したと考えられる時点を示す。
即ち、可変コンデンサの操作軸の現在位置の検出には遅れが伴うことが避けられず、可変コンデンサの操作軸の目標位置のデータ及びその目標位置に対応する現在位置の検出データは、同時に発生するものではないので、モータが脱調状態になったときに、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検知するためには何らかの工夫を要する。例えば、目標位置のデータを目標位置設定部9から異常判定部11に出力する際に、検出の遅れを考慮して現在位置の検出データを出力するタイミングを遅らせる処理を行うことにより、モータが脱調状態になったときに可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検知することができる。また、異常判定部11に目標位置のデータ及び現在位置の検出データを一旦記憶するメモリを設け、遅れを考慮してメモリから読み出す等の処理を行うことによっても、上記の偏差を正確に検知することができる。
ところで、本実施形態のように、ステップモータ7a及び7bにより可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸をそれぞれ駆動する場合、各操作軸を現在位置から最終目標位置まで移動させるために必要な数のパルスが多すぎると、そのパルスをモータ駆動部10a,10bからモータ7a,7bに一度に与えても、モータが応答できないため、モータ駆動部10a,10bからモータ7a,7bに与えるパルスの数は、モータが正常に応答し得る範囲の数に制限する必要がある。
そのため、上記目標位置設定部9は、実際には、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を現在位置から最終目標位置まで動かすために必要な駆動量を一度に演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号をモータ駆動部10a及び10bに与えるのではなく、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算して、その駆動量だけモータを駆動したときに到達する筈の操作軸の位置を暫定目標位置として演算する。
目標位置設定部9は、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与える。モータ駆動部10a及び10bは、与えられた目標位置設定信号Sda及びSdbに応じてモータ7a及び7bに駆動パルスを与えて、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置を暫定目標位置まで変位させる。
また目標位置設定部9は、演算した前記暫定目標位置を異常判定部11に与える。異常判定部11は、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差を監視し、モータ7aの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサが異常であると判定し、モータ7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサが異常であると判定する。
目標位置設定部9は、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置が暫定目標位置に達したときに、新たなモータの駆動量と、その駆動量に相応した暫定目標位置とを演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a,10bに与えると共に、暫定目標位置を異常判定部11に与えて異常判定を行わせる。これらの動作を繰り返しながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。
すなわち、暫定目標位置をそのときの目標位置としながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。なお、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々と変化する負荷の状態に迅速に対応させるため、通常は可変コンデンサの操作軸が最終目標位置に移動する過程においても最終目標位置(インピーダンスの整合を行うための目標位置)の演算が行われ、新たな最終目標位置が演算された場合には、最終目標位置が新たに演算された位置に更新される。
暫定目標位置まで可変コンデンサの操作軸を変位させるようにモータ7a及び7bを駆動する過程と、異常判定部11により異常判定処理を行なう過程とを行なわせるためには、「所定の処理時間」を必要とする。モータ7a及び7bが可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を現在位置から暫定目標位置まで動かすために必要な時間が上記処理時間よりも長いと、モータが正常に回転していても、操作軸の現在位置と暫定目標位置との間の残留偏差が許容値を超えてしまい、異常判定部11が異常判定を行ってしまう。従って、残留偏差が許容値を超えているか否かの判定を正確に行わせるためには、目標位置設定部9が一度に演算する駆動量を、上記処理時間内にモータを駆動できるだけの大きさ以下に制限して、演算した駆動量に基づいて可変コンデンサの操作軸の暫定目標位置を演算する必要がある。
なお、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々と変化する負荷の状態に対応させるため、上記「所定の処理時間」が短く設定されることが多い。しかし、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、負荷の状態を考慮する必要がないため、上記「所定の処理時間」を長く設定することが可能である。そのため、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、「所定の処理時間」を長くすることで、暫定目標位置を設定することなく異常判定を行わせることが可能となる。この場合は、最終目標位置が唯一の目標位置になる。もちろん、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際にも、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際と同様に、暫定目標位置を設定するようにしてもよい。
異常判定部11は、第1の可変コンデンサVC1の機構部が異常であるとの異常判定を行ったときに第1の異常判定信号Saaを発生し、第2の可変コンデンサVC2の可動部が異常であるとの異常判定を行ったときに第2の異常判定信号Sabを発生する。異常判定部11が出力する第1の異常判定信号Saa及び第2の異常判定信号Sabはそれぞれ第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bに与えられる。
第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bは、インピーダンス整合時及び可変コンデンサVC1及びVC2の検査時に、第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクを設定する部分である。インピーダンス整合時には、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bが、異常判定部11による判定結果に応じて第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクを設定し、可変コンデンサVC1及びVC2の検査時には、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bが、モータ7a及び7bの出力トルクを、その値を変化させながら段階的に変化させる。
本実施形態で用いる第1の出力トルク設定部12aは、インピーダンス整合時に、異常判定部11が第1のモータ7aについて最初の異常判定を行うまでの間、モータ7aの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部11が最初の異常判定を行った後はモータ7aの出力トルクを上記初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
また第2の出力トルク設定部12bも、インピーダンス整合時に、異常判定部11が最初の異常判定を行うまでの間、モータ7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部11が最初の異常判定を行った後はモータ7bの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
従来のインピーダンス整合装置においては、可変コンデンサ(可変インピーダンス素子)を操作するモータの出力トルクを,メンテナンスが必要な程度まで可変コンデンサの機構部の劣化が進んだ状態でも、可変コンデンサの操作軸を目標位置まで回転させることができるような大きさに設定していたが、上記初期トルクは、従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクよりも小さい値に設定する。また異常検出後トルクは、従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクと同等の大きさに設定する。初期トルクの設定の仕方については後で詳細に説明する。
第1及び第2の出力トルク設定部12a及び12bはまた、後記するように、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値の情報を含む数値を判定対象値として求めるために、モータ7a及び7bの出力トルクの設定値を、大きい値から小さい値まで値を異ならせて段階的に変化させることができるようになっている。可変コンデンサVC1及びVC2の検査は、製造ラインが停止しているときに行われる。
第1のモータ駆動部10aは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第1のモータ7aに駆動パルスを与えるとともに、第1のモータ7aの出力トルクを第1の出力トルク設定部12aにより設定されたトルクに等しくするように、該第1のモータ7aに流す駆動電流を調整する。
また第2のモータ駆動部10bは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第2のモータ7bに駆動パルスを与えるとともに、第2のモータ7bの出力トルクを第2の出力トルク設定部12bにより設定されたトルクに等しくするように、第2のモータ7bに流す駆動電流を調整する。
本実施形態では、第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクをそれぞれ第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bにより設定されたトルクに等しくするように、第1のモータ7a及び第2のモータ7bに流す駆動電流を調整するが、後記する可変インピーダンス素子の検査時には、モータ7a及び7bの出力トルクを細かく調整し得るようにしておくことが望ましい。
そのため、本実施形態では、図2に示すように、モータ駆動部10a,10bを、制御端子に与えられるトルク設定信号電圧(アナログ電圧)Vτa,Vτbの大きさに応じてモータ7a,7bに流す駆動電流を調整し得る機能を有するドライバICにより構成するとともに、出力トルク設定部12a,12bの出端子とモータ駆動部10a,10bをそれぞれ構成するドライバICの制御端子との間にDAコンバータ14a,14bを設けて、出力トルク設定部12a,12bがそれぞれ出力したトルク設定値(デジタル値)をトルク設定信号電圧(アナログ電圧)Vτa,Vτbに変換してモータ駆動部10a,10bに与えるようにしている。
出力トルク設定部12a及び12bにはそれぞれ第1及び第2のメモリ20a及び20bが接続されている。メモリ20a,20bには、多数のトルク設定信号電圧値(デジタル値)と、該多数のトルク設定信号電圧値のアナログ変換値である出力トルク設定信号電圧Vτa,Vτbをそれぞれモータ駆動部10a,10bを構成するドライバICに与えたときに得られるモータの出力トルクとの間の関係を与えるデータテーブルが記憶されている。このデータテーブルは、トルク設定信号電圧値の大きさが大きくなっていくに従って、設定されるモータの出力トルクが大きくなっていくようにトルク設定信号電圧値の大きさとモータの出力トルクとの間の関係を定めて、各トルク設定信号電圧値(デジタル値)と対応するモータの出力トルクとを1対1で対応させてテーブルの形にまとめたものである。
出力トルク設定部12a,12bは、可変コンデンサVC1及びVC2の検査時に、メモリ20a,20bからトルク設定信号電圧のデジタル値を小さい順に読み出して、DAコンバータ14a,14bを介してモータ駆動部10a,10bに与える。
本実施形態では、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bにより出力トルク設定部12が構成されている。またモータ駆動部10と出力トルク設定部12とにより、可変コンデンサ(可変インピーダンス素子)VC1及びVC2の操作軸の位置を目標位置設定部9で設定された目標位置に一致させるように(操作軸の現在位置と目標位置との偏差を零にするように)モータ7a,7bを制御するモータ制御部13が構成され、モータ制御部13と目標位置設定部9とにより、インピーダンスの整合を図るように可変インピーダンス素子3及び4の操作軸の位置を制御する「操作軸位置制御装置」が構成されている。
前述のように、第1の可変コンデンサVC1の可動部がグリスの固化や機械的摺動部の摩耗などにより劣化すると、第1の可変コンデンサVC1の操作軸から第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていく。第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていき、ある限界と超えると、モータ7aの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になりモータ7aを回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第1の可変コンデンサVC1の操作軸を目標位置まで回転させることができなくなり、高周波電源1と負荷2との間のインピーダンスの整合をとることができなくなって、モータ駆動部10aがモータ7aの駆動を完了した時点での可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が大きくなる。
同様に、第2の可変コンデンサVC2の可動部が劣化した場合には、モータ7bの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になり、モータ7bを正常に回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第2の可変コンデンサVC2の操作軸を目標位置まで回転させることができなくなるため、高周波電源1と負荷との間のインピーダンスの整合をとることができなくなり、モータ駆動部10bがモータ7bの駆動を完了した時点での可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が大きくなる。
従って、異常判定部11で、各可変コンデンサの操作軸の現在位置と目標位置とを監視して、両位置の間の残留偏差が許容値を超えたか否かを判定することにより、各可変コンデンサの可動部が異常であるか否かを判定することができる。
前述のように、本実施形態では、インピーダンス整合時に、異常判定部11により異常判定が行われるまでの間、モータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部11により異常判定を行われた後にモータ7a,7bの出力トルクを従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクと同等の異常検出後トルクに設定する。
本実施形態において、初期トルクの大きさは、異常検出後トルクよりも小さく、かつ可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化した状態になる前の状態では、該可変コンデンサの操作軸を操作し得るが、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化した状態では、可変コンデンサの操作軸を操作することができなくなる程度の大きさに設定される。即ち、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えて異常判定部が異常判定を行うように初期トルクの大きさが設定される。
本実施形態のように、異常判定部11が最初の異常判定を行ったときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すようにすると、最初の異常判定が行われたこと、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り換えられたことから、可変コンデンサの機構部が一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に(メンテナンスの時期が近いといえる程度に)劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。また、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すことによって、再度、残留偏差が許容値に収まるようにモータを駆動させることが可能となる。
上記の説明では、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えて異常判定部が最初の異常判定を行うようにモータの初期トルクの大きさを設定して、異常判定部が最初の異常判定を行ったときに、メンテナンスの時期が近いことを知り得るようにしたが、モータの初期トルクを小さめに設定して、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化するまでの間に異常判定が複数回行われるようにしてもよい。
即ち、モータ制御部13は、異常判定部11が最初の異常判定を行うまでの間は、モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部が最初の異常判定を行った後は、モータの出力トルクを、初期トルクよりも大きく、かつ異常判定が行われる毎に値が増大していく異常検出後トルクに設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とすることができる。
上記のように異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの大きさを増大させていく場合、出力トルク設定部12は、異常判定部11が最初の異常判定を行った後異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの値を増大させていく際の該異常検出後トルクの増分を予め定めた値(例えば予め定めた一定値)とするように構成することができる。
また上記のように異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの大きさを増大させていく場合、出力トルク設定部12は、異常判定部が最初の異常判定を行った後異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの値を増大させていく際の増分を、異常判定が行われた回数と設定するトルクとの間の予め定められた関係に基づいて決定するように構成することもできる。例えば、異常判定が行われる回数の増大に伴って、異常検出後トルクの値の増分を大きくしていくように、出力トルク設定部12を構成することができる。
製造ラインの停止時に、インピーダンス整合装置の可変コンデンサ(可変インピーダンス素子)VC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を行い得るようにするとともに、可変コンデンサの機構部が寿命を迎える時期を十分な余裕をもって推定することを可能にするために、本実施形態においては、第1の可変コンデンサVC1及び第2の可変コンデンサVC2のそれぞれの機構部の劣化の状態が反映される第1及び第2の判定対象値を検出する第1及び第2の判定対象値検出手段を設けている。
可変コンデンサVC1及びVC2の操作機構の検査と寿命の判定とを行わせるために、検査及び寿命推定のためのデータ収集時に、データ収集のためにモータ7a及び7bを制御して操作軸の位置を制御する検査専用の制御ブロックを特に設けてもよいが、本実施形態では、目標位置設定部9とモータ制御部13とにより構成される「操作軸位置制御装置」に、上記第1及び第2の判定対象値を検出する機能を持たせている。
即ち、本実施形態では、「操作軸位置制御装置」を構成する目標位置設定部9及びモータ制御部13の機能を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムに、判定対象値を検出するためのタスクを実行する部分を設けることにより、上記第1の判定対象値及び第2の判定対象値をそれぞれ検出する機能を実現する第1の判定対象値検出手段及び第2の判定対象値検出手段を構成し、これら第1及び第2の判定対象値検出手段により、「判定対象値検出手段」が構成されている。
本実施形態では、上記第1の判定対象値検出手段が、製造ラインの停止時に、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、トルク設定信号Vτaの大きさを段階的に増加させながら可変コンデンサVC1の操作軸の位置を目標位置に一致させるようにモータ7aを制御する制御動作を繰り返すことにより、異常判定部11に異常か否かの判定を行う過程を反復させて、異常判定部11が初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定を行わなかったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値Vkaとして検出するように構成される。
同様に、第2の判定対象値検出手段は、製造ラインの停止時に、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、トルク設定信号Vτbの大きさを段階的に増加させながら可変コンデンサVC2の操作軸の位置を目標位置に一致させるようにモータ7bを制御する制御動作を繰り返すことにより、異常判定部11に異常か否かの判定を行う過程を反復させて、異常判定部11が初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定を行わなかったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値Vkbとして検出するように構成される。
上記「トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値」は、初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさがどの程度の範囲にあるかを示す数値である。本実施形態では、トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを5段階に評価するものとし、初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値を、1ないし5のいずれかの数値で表す。
本実施形態において、「検査対象範囲の全範囲で異常判定が行われなくなった」状態とは、可変インピーダンス素子3,4の操作軸の目標位置が検査対象範囲のいずれの位置にある場合でも、操作軸の位置をその目標位置に一致させる制御を行わせる際に異常判定部が異常判定を行うことがない状態を意味する。検査対象範囲の全範囲に亘って検査を行って判定対象値を検出する際には、例えばトルク設定信号電圧値(出力トルク設定信号の電圧値を与えるデジタル値)をn個(nは2以上の整数)用意しておいて、検査対象範囲の最終位置を唯一の目標位置として操作軸を検査対象範囲の初期位置から最終位置まで動かす制御を、トルク設定信号の大きさを段階的に増加させながら最大でn回繰り返すようにすればよい。また、検査対象範囲の最終位置を唯一の目標位置とするのではなく、検査対象範囲の初期位置と最終位置との間に少なくとも1つの暫定目標位置を設定して、操作軸を該暫定目標位置を経て検査対象位置の初期位置から最終位置まで動かす制御を、トルク設定信号の大きさを段階的に増加させながら最大でn回繰り返すようにしてもよい。
なお、機構部の劣化度合いを細かく検出して寿命の推定を精度よく行うためには、n(トルク設定信号電圧値の数)を大きな値とするのが好ましいが、nの値を大きくすると、検出にかかる時間を多く必要とする。そのため、nの値は、製造ラインの休止期間等を考慮して適切な値に設定する。
上記の実施形態では、出力トルク設定信号電圧Vτa,Vτbの大きさを増大させながら、目標位置設定部9及びモータ制御部13により構成される「操作軸位置制御装置」に操作軸の目標位置と現在位置との間の残留偏差を零に近づける制御を繰り返し行わせて、異常判定部11が初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定を行わなかったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値、または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように判定対象値検出部を構成している。この場合、判定対象値として検出されるトルク設定信号により与えられるモータの出力トルクの大きさは、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータの出力トルクの最小値に等しい。
従って、第1の判定対象値検出手段は、基本的には、トルク設定信号Vτaの大きさを段階的に増加させながら可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を零に近づける制御を繰り返して、目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータ7aの出力トルクの最小値の情報を含む数値または該最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成されていればよい。
同様に、第2の判定対象値検出手段は、基本的には、トルク設定信号Vτbの大きさを段階的に増加させながら可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を零に近づける制御を繰り返して、目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータ7bの出力トルクの最小値の情報を含む数値または該最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成されていればよい。
即ち、判定対象値検出手段は、トルク設定信号の大きさを増加させながら可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を繰り返して、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値または該最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成されていればよく、上記の実施形態のように、トルク設定信号の大きさを増加させながら操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を繰り返して、異常判定部が初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定を行わなかったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成する場合に限定されない。
例えば、操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づけるようにモータ7a,7bを制御して、該制御が完了した時点で操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を演算する過程を、モータの出力トルクの大きさを増加させながら繰り返し行わせることにより、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値(または該最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値)を探索して、探索した値を判定対象値とするように判定対象値検出手段を構成することもできる。なお「出力トルクの最小値の情報を含む数値」は、出力トルクの最小値そのものでもよく、該出力トルクの最小値に対応する数値、例えば出力トルクの最小値を与えるトルク設定信号の大きさでもよい。
上記「最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値」は、残留偏差を許容値以下に抑えるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値の大きさがどの程度の範囲にあるかを示す数値である。
製造ラインの停止時に判定対象値を求めるために、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を目標位置に向けて動かしていく際の動作は、インピーダンス整合時のそれと同様でよい。即ち、判定対象値を求める際に、目標位置設定部9は、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算して、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与える。モータ駆動部10a及び10bは、与えられた目標位置設定信号Sda及びSdbに応じてモータ7a及び7bに駆動パルスを与えて、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を暫定目標位置まで変位させる。目標位置設定部9はまた、演算した駆動量だけモータを駆動したときに到達する筈の操作軸の位置を暫定目標位置として演算して、演算した暫定目標位置を異常判定部11に与え、該異常判定部11に第1及び第2の可変コンデンサが異常であるか否かの判定を行なわせる。暫定目標位置まで可変コンデンサの操作軸を変位させるようにモータ7a及び7bを駆動する過程と、異常判定部11により異常判定処理を行なう過程とからなる一連の処理過程を繰り返しながら、第1及び第2の可変コンデンサの操作軸を検査時に適した最終目標位置に向けて変位させていく。
検査時及び寿命推定時に設定する可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の最終目標位置は、予め定めておいた一定の位置でもよく、検査を行う際に外部から入力された位置でもよい。
検査時及び寿命推定時における操作軸の初期位置は、任意の位置に設定することができる。即ち、検査時及び寿命推定時における操作軸の初期位置は、検査及び寿命推定時を開始する際の現在位置のままでもよく、予め設定した一定の位置であってもよい。検査時及び寿命推定時における操作軸の初期位置を予め設定した初期位置とする場合には、検査及び寿命推定のためのデータの収集を開始する前にモータ7a,7bにより、可変コンデンサVC1,VC2の操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。
なお、いずれの場合であっても、初期位置から最終目標位置までが、検査対象範囲となる。
上記のように、可変コンデンサの検査及び寿命の推定を行なう際の操作軸の初期位置を任意の位置に設定し得るようにしておくとともに、操作軸の最終目標位置を任意に設定し得るようにしておくと、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査及び寿命の推定を操作軸の任意の回転範囲を検査対象範囲として行うことが可能になる。例えば、操作軸の回転範囲のうち、使用頻度の高い範囲、すなわち、摩耗度合いが高いと思われる範囲を検査対象範囲として検査を行えば、検査時間を短縮できるので効率的に検査を行うことが可能となる。また摩耗度合いが高いと思われる範囲を検査対象範囲として寿命予測に用いる判定対象値を求めるようにすれば、寿命予測をより的確に行うことができる。
本実施形態では、第1の判定対象値検出手段が検出した第1の判定対象値Vkaを第1の可変コンデンサVC1に対して設定された第1の判定基準値と比較して、第1の判定対象値Vkaが第1の判定基準値以上であるときに第1の可変コンデンサVC1の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する第1の検査結果出力部15aと、第2の判定対象値検出手段が検出した第2の判定対象値Vkbを第2の可変コンデンサVC2に対して設定された第2の判定基準値と比較して、第2の判定対象値Vkbが第2の判定基準値以上であるときに第2の可変コンデンサVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する第2の検査結果出力部15bとが設けられている。
可変コンデンサを操作するために必要なトルクは、可変コンデンサの機構部の劣化が進行するにつれて大きくなっていき、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて該可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていく。そのため、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせたときに操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値は、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。
また新品の可変インピーダンス素子であっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変コンデンサを操作するために必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値が大きい値を示す。
従って、上記のように、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否か(メンテナンス時期が近いか否か、寿命が近いか否か、機構部に異常があるか、機構部が故障しているか否かなど)を判定することができる。
図1に示した例では、第1及び第2の判定対象値検出手段が第1及び第2の判定対象値Vka及びVkbをそれぞれ第1の検査結果出力部15a及び15bに与えるとともに、外部にも出力するようになっている。このように、判定対象値Vka及びVkbを外部にも出力し得るようにしておくと、判定対象値を可変インピーダンス素子のメンテナンスの管理に利用することができる。例えば、出力された判定対象値を、検査を行なった日時とともに記憶しておいて、次のメンテナンスの際に参考にすることができる。
上記のように、第1及び第2の判定対象値検出手段が出力する第1及び第2の判定対象値Vka及びVkbをそれぞれに対して設定された判定基準値と比較すると、それぞれの判定対象値が判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていると判定することができる。
判定対象値を判定基準値と比較することにより可変コンデンサの機構部の状態の判定を可能にする上記の構成は、特願2008−117554に記載された既提案のインピーダンス整合装置にも備わっている構成である。しかしながら、判定対象値を判定基準値と比較することにより可変コンデンサの機構部の状態の判定が可能になるのは、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の摩耗が相当に進んで寿命に近づいたときであるため、判定対象値を判定基準値と比較した結果、第1の検査結果出力部15a及び15bにより可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているとの判定された時点で、可変コンデンサの代替品を発注しても間に合わないおそれがある。
そこで本発明においては、判定対象値が判定基準値に達する前に可変インピーダンス素子の機構部の寿命を推定する機能をインピーダンス整合装置に持たせる。そのため、本発明においては、判定対象値検出手段に加えて、更に、判定対象値と寿命を表わす変数である可変データ(例えば基準時からの経過日数)とを記憶する判定対象値・可変データ記憶部と、判定対象値・可変データ記憶部に記憶された判定対象値と可変データとの関係から寿命を推定する寿命推定部とが設けられる。
本実施形態においては、判定対象値・可変データ記憶部を構成するために第3のメモリ31及び第4のメモリ32が設けられ、寿命推定部を構成するために第1の寿命推定部34及び第2の寿命推定部35が設けられている。また日時のデータを得るためにカレンダー部33が設けられ、推定結果を表示するためにモニタを備えた表示部36が設けられている。
以下、本発明の特徴部分である、可変インピーダンス素子の機構部の寿命の推定機能を実現するための構成について詳細に説明する。
本実施形態では、寿命の推定を可能にするため、インピーダンス整合装置が整合動作を休止しているときに、第1の判定対象値検出手段及び第2の判定対象値検出手段により、第1の判定対象値及び第2の判定対象値を検出し、検出された第1の判定対象値Vka及び第2の判定対象値Vkbをそれぞれ第3のメモリ31及び第4のメモリ32に記憶させる。
可変インピーダンス素子の機構部の寿命を推定するためには、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の状態が反映される判定対象値の他に、寿命を表す何らかの変数が必要である。寿命を表す変数としては、寿命とある相関関係をもって値が変化する変数を用いることができる。例えば、基準時からの累積日数(経過日数)または累積時間(経過時間)、可変インピーダンス素子の機構部を操作するモータの駆動量の基準時からの累積値、モータの往復回数の基準時からの累積値及び高周波電源から負荷に電力を供給する時間(高周波電力供給時間、以下RF供給時間という。)の基準時からの累積値等を、寿命を表す変数(可変データ)として用いることができる。
目標位置設定部9は、モータ7a,7bの駆動量の累積値、モータ7a,7bの往復回数の累積値及びRF供給時間の基準時からの累積値を日時と関連づけてメモリに記憶している。従って、モータの駆動量の基準時からの累積値、モータの往復回数の基準時からの累積値及びRF供給時間の基準時からの累積値は、目標位置設定部9内のメモリに記憶された内容から容易に取得することができる。基準時としては、例えばインピーダンス整合装置の運転を開始した日や、メンテナンスを行った日等を用いることができる。
上記モータの「往復回数」は、モータが一方向への回転を終了した後他方向への回転を終了するまでの動作を1往復動作としてその回数を計数したものであり、モータの回転量の如何は問わない。例えば、モータが一方向に1/1000回転した後他方向に1/1000回転する動作も、モータが一方向に10/1000回転した後他方向に20/1000回転する動作も、同じ1往復動作として扱う。また異なる日に跨って行われた往復動作、例えばある日の運転停止間際にモータが一方向に1/1000回転して停止した後、次の日の運転開始時に他方向に例えば1/1000回転した場合や、ある日の運転停止間際にモータが一方向に20/1000回転して停止した後、次の日の運転開始時に他方向に例えば10/1000回転した場合の往復動作も1往復動作と数える。
本発明に係わるインピーダンス整合装置を運用するに当たっては、製造ラインの稼働に支障を来さない範囲でラインを停止させて、可変インピーダンス素子の機構部の寿命の推定に用いるデータを随時収集する。寿命の推定に用いるデータを収集するデータ収集処理においては、まず第1及び第2の判定対象値検出手段に可変インピーダンス素子3及び4についての判定対象値を検出するための処理を行わせ、第1の可変インピーダンス素子3及び第2の可変インピーダンス素子4についてそれぞれ検出した判定対象値を第3のメモリ31及び第4のメモリ32に記憶させる。またこれらの判定対象値が検出された時点での第1及び第2の可変インピーダンス素子についての各種の可変データの値をメモリ31及び32に記憶させる。第1及び第2の可変インピーダンス素子に対して判定対象値を検出して、検出した判定対象値を各種の可変データの値とともに第3のメモリ31及び第4のメモリ32に記憶する処理は、1週間に1回、一月に1回(毎月同じ日でなくても可)というように定期的に行ってもよく、不等間隔で行ってもよい。無理にラインを止めてまで行う必要はない。
寿命の推定に用いる可変データとしては、前述の可変データのいずれを用いてもよいが、寿命を直感的に把握するためには、基準時(基準日)からの累積日数(経過日数)を可変データとして用いるのが最もわかりやすい。従って本実施形態では、各判定対象値が検出される毎に、各判定対象値が検出された時点での基準日からの累積日数を寿命の推定に用いる可変データとして、他の可変データとともに第3のメモリ31及び第4のメモリ32に記憶させる。
なお本発明においては、基準時からの累積時間(経過時間)を可変データとして用いることを何等妨げないが、寿命の推定を行う際には、累積日数を問題にすれば十分であるため、本実施形態では、基準日からの累積日数を寿命の推定に用いる可変データとする。
前述のように、本実施形態では、基準日からの累積日数を可変データとしてこの可変データにより可変インピーダンス素子の機構部の寿命を表すため、判定対象値・可変データ記憶部を構成する第3及び第4のメモリ31及び32には、基準日からの累積日数を可変データとして判定対象値とともに記憶させておけば十分であるが、本実施形態では、モータの駆動量の基準時からの累積値、モータの往復回数の基準時からの累積値及びRF供給時間の基準時からの累積値も可変データとしてメモリ31及び32に記憶させるようにしている。本実施形態では、モータの駆動量の基準時からの累積値、モータの往復回数の基準時からの累積値及びRF供給時間の基準時からの累積値を寿命の推定に用いないが、これらの可変データをメモリに記憶させて蓄積しておくと、可変インピーダンス素子の機構部の消耗の状態を分析する際に参考にすることができる。
また本発明においては、基準日からの累積日数に代えて、モータの駆動量の基準時からの累積値、モータの往復回数の基準時からの累積値及びRF供給時間の基準時からの累積値のうちのいずれかを可変インピーダンス素子の機構部の寿命を表す可変データとして用いるようにすることもできる。従って、判定対象値・可変データ記憶部は、基準時からの累積日数または累積時間、モータの駆動量の前記基準時からの累積値、モータの往復動作回数の基準時からの累積値及び電源から負荷に電力を供給する時間の前記基準時からの累積値からなる可変データ群の中から選択された少なくとも1つの可変データの値を記憶するように構成されていればよい。
カレンダー部33は、毎日の日付を出力する機能と、基準時からの累積日数を演算する機能とを有する部分で、第1の可変インピーダンス素子3の操作機構に対する判定対象値及び第2の可変インピーダンス素子4の操作機構に対する判定対象値がそれぞれ第3のメモリ31及び第4のメモリ32に書き込まれた日に、第3のメモリ31及び第4のメモリ32にその当日の日付を書き込むとともに、基準時からその当日までの累積日数を寿命の推定に用いる可変データとして書き込む。
本実施形態では、第3のメモリ31及び第4のメモリ32により、判定対象値検出手段が各判定対象値を求める毎に該判定対象値を記憶するとともに、可変インピーダンス素子の機構部の寿命を表すために用いる変数を可変データとして、各判定対象値が求められた時点での可変データの値を記憶する判定対象値・可変データ記憶部が構成されている。
第1の寿命推定部34は、第1の可変インピーダンス素子3の機構部の劣化の状態が正常な状態から外れたときの判定対象値の値を判定基準値として、判定対象値Vkaが判定基準値に達したときに可変データがとることが推定される「寿命到達時可変データ推定値」を、判定対象値Vkaが判定基準値に達する前に、第3のメモリ(判定対象値・可変データ記憶部)31に記憶されている判定対象値と可変データとの間の関係から求めるとともに、「寿命到達時可変データ推定値」から可変データの最新値を差し引くことにより、後どの程度寿命が残されているかを示す「残余寿命推定値」を求める。
また第2の寿命推定部35は、第2の可変インピーダンス素子4の機構部の劣化の状態が正常な状態から外れたときの判定対象値の値を判定基準値として、判定対象値Vkbが判定基準値に達したときに可変データがとることが推定される「寿命到達時可変データ推定値」を、判定対象値Vkbが判定基準値に達する前に、第4のメモリ(判定対象値・可変データ記憶部)32に記憶されている判定対象値と可変データ(累積日数)との間の関係から求めるとともに、「寿命到達時可変データ推定値」から可変データの最新値を差し引くことにより「残余寿命推定値」を求める。
なお本実施形態では、第1及び第2の寿命推定部が、「寿命到達時可変データ推定値」と「残余寿命推定値」との双方を出力するように構成されているが、寿命推定部は、これらのうちのいずれか一方のみを出力するように構成してもよい。
本実施形態では、判定対象値(残留偏差を許容値以下に収めるために必要な前記モータの出力トルクの最小値の情報を含む数値)の大きさを5段階に分けて、判定対象値検出手段により検出される判定対象値の大きさを1ないし5のいずれかの数値で示し、判定基準値を「5」としている。即ち可変インピーダンス素子の操作機構の摩耗が進んで寿命が近いときに、判定対象値が「5」に達するように、判定対象値の大きさのクラス分けをしている。
図8は、インピーダンス整合装置の運転を開始した日を基準日(可変データ=0)として、第1の可変コンデンサVC1の機構部の寿命の推定に用いるデータを収集した結果の一例をまとめて示したデータテーブルを示している。
図8において、「判定対象値」は、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値の大きさを1ないし5の数値で示したものである。この例では、可変インピーダンス素子の操作機構が寿命に近づいたときに判定対象値が判定基準値「5」に達するように、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値の情報を含む数値と1ないし5の数値との対応関係を定めている。出力トルクの最小値の情報を含む数値と1ないし5の数値との対応関係は比例関係でなくてもよい。
また図8に示した例では、基準時からの「累積日数」、モータの「駆動量」及び往復回数を可変データとして収集している。「駆動量」は、可変インピーダンス素子の操作軸を駆動するステップモータの駆動量で、図示のテーブルに示された駆動量は、モータに与えられたパルス数(モータ駆動のステップ数)で示されている。また「往復回数」は、モータを往復動作させた回数を示している。
図9は、図8に基づいて判定対象値と累積日数との関係をグラフで示したものである。この例では、インピーダンス整合装置の使用を開始した後初期の段階では、判定対象値が「2」であるが、基準時から150日経過すると判定対象値は「1」となり、図示のAの部分のように、初期の段階よりもかえって判定対象値が小さくなっている。これは、可変インピーダンス素子の操作軸を動かす機構部の摩耗(例えば可変コンデンサの可動電極を直線変位させるネジ機構のネジ山の摩耗)や、また操作機構に塗布されている潤滑剤(グリス)の馴染みにより、初期よりもかえって小さなトルクで可変インピーダンス素子を操作できるようになったためである。Aの部分を過ぎると、可変インピーダンス素子の機構部の劣化に伴って、Bの部分のように、残留偏差を許容範囲内に収めるために必要なトルクの最小値の情報を含む数値の大きさを評価する数値(判定対象値)が徐々に大きくなっていく。またBの部分では、判定対象値を示す数値が1だけ大きくなるのに要する期間が徐々に短くなっていく傾向が見られる。
上記のようにして多数の判定対象値と、各判定対象値が検出された時点での可変データの値(累積日数)とが収集されると、最小二乗法や、線形予測法などの予測手法を用いることにより、将来判定対象値が判定基準値に達したときにとるであろう可変データの値を寿命到達時可変データ推定値として求めることができる。またこの寿命到達時可変データ推定値から可変データ(累積日数)の最新値を差し引くことにより、後どの程度寿命が残されているかの目安となる残余寿命推定値を求めることができる。
一般に、過去のデータに基づいて将来の値を推定する手法として、最小二乗法を用いて作成した回帰直線に基づく方法がよく用いられている。本実施形態においても、複数の判定対象値と各判定対象値が検出された時の可変データ(累積日数)の値とに最小二乗法を適用して回帰直線を求め、求めた回帰直線に基づいて可変インピーダンス素子の機構部の寿命の推定を行う。
最小二乗法により回帰直線を求める演算の手法は周知であり、その演算は、マイクロプロセッサを用いれば簡単に行うことができるため、回帰直線は、過去の判定対象値のデータがあれば、簡単に求めることができる。しかし、図9から明らかなように、判定対象値(必要トルクの最小値)は、Aの部分のように累積日数の増大に伴って小さくなっていく部分もあり、Bの部分のように等間隔で値が大きくなっていかない部分もあるので、単純に過去の判定対象値のデータのすべてを用いればよいというわけではない。
例えば、図9において図示のAの範囲の例えば累積日数が300日の時点で、過去の判定対象値のデータの全て用いると、回帰直線の傾きがマイナス値となるため、現時点から寿命が尽きる日までの残り日数がマイナス値で演算されてしまい、寿命の推定を行うことができない。
また、図9のBの部分のように等間隔で値が大きくなっていかない部分もあるので、できるだけ的確に寿命を推定するためには、最新の判定対象値のデータを用いて演算することにより、現在の可変インピーダンス素子の状態を反映させた形で回帰直線を求めることが望ましい。そのため、回帰直線を求める際には工夫をする必要がある。
本発明において、最小二乗法を用いて寿命の推定を行う際に、記憶されている最新のN個の判定対象値のデータが寿命の判定に用いることができるデータであるか否かを判定するに当っては、種々の考え方を採用することができる。
例えば、N個の判定対象値が全体として、累積日数の増加に対してプラスの傾きを示していると認められる場合(例えば3→3→4→4→4→5のような変化を示している場合)には、そのN個の判定対象値のデータを寿命の推定に用いることができるとし、N個の判定対象値の中に累積日数の増加に対してマイナスの変化を変化を示しているものが1つでもある場合(例えば2→3→4→2→3→4のような変化を示している場合)には、そのN個の判定対象値のデータのすべてを寿命の推定には用いないとの考え方をとることができる。
なお、上記のように、2→3→4→2→3→4のような変化を示した場合には、4からみて一旦小さくなる2と3とを寿命の推定には用いないことにして、2→3→4→4(データ数4)と変化したものとみなしてもよいし、マイナスの変化を示していないと仮定して2→3→4→4→4→4(データ数6)と変化したものとみなしてもよい。
また記憶されている最新のN個の判定対象値のデータの一部に累積日数の増加に対してマイナスの傾きを示すものが含まれていても、該N個の判定対象値のデータを全体的に見れば累積日数の増加に対して判定対象値がプラスの傾きで変化していることが認められる場合(例えば2→3→2→3→4→5のような変化を示している場合)には、そのN個の判定対象値のデータを寿命の推定に用いるとの考え方をとることもできる。
本実施形態のように、判定対象値として、評価値(1ないし5の数値)を用いる場合、インピーダンス整合装置の運転開始後初期の段階で生じる図9のAの部分を演算に用いないようにするためには、例えば判定対象値が「3」以上の値を示すようになった後のデータを用いるようにすればよい。すべての判定対象値が2以下の場合には、回帰直線を求める演算を行わずに、等分の間は寿命に至らないと判定するようにすればよい。
また本実施形態のように、判定対象値として、評価値(1ないし5の数値)を用いる場合には、判定対象値の微小な変化が分からないため、異なる日に検出された複数の判定対象値が同じ値を示すことがあり得る。最小二乗法による場合、演算に用いるすべての判定対象値が同じ(例えば3→3→3→3→3→3のような変化を示している場合)であると回帰直線の傾きが0(ゼロ)になって寿命を推定できないため、演算エラーが生じる。従って、演算エラーが生じた場合の対処法を予め決めておく必要がある。例えば、データ数を多くすれば演算エラーが生じにくくなるため、演算エラーが生じたときに暫定的に演算に使用するデータ数を予め決めておいた数だけ増加させるようにしておけばよい。演算に使用するデータ数を増加させると、演算エラーが生じるのを回避することができるが、寿命が若干長くなる方向で演算されてしまう傾向がある。しかし寿命の推定は大まかなものでよいので、寿命が若干長めに演算されても大きな問題は生じない。
図10は、図8に示されたテーブルのような形でデータがメモリに記憶されている場合に、判定対象値が3以上の値を示すようになった2007年3月2日以降の各日付において、累積日数を推定に用いる可変データとし、最新の(直近の)6個のデータを用いて寿命の推定を行った結果を示している。図10において、「推定日」は可変インピーダンス素子が寿命を迎える日として推定された日であるが、「推定日」の欄に記載された数値は、基準日から寿命を迎える日までの累積日数、即ち、可変インピーダンス素子が寿命を迎える日に可変データがとることが推定される値(寿命到達時可変データ推定値)である。
例えば2007年3月2日に行った寿命推定では、同日までに求められているデータのうち、2007年3月2日、2007年1月11日、2006年11月22日、2006年10月3日、2006年8月14日及び2006年6月25日にそれぞれ検出された最新の6個の(判定対象値,累積日数)の値(3,700),(2,650),(2,600),(2,550),(2,500)及び(2,450)を用いて、最小二乗法により回帰直線を求める演算を行い、その結果、将来寿命を迎える日に可変データ(累積日数)がとると推定された値(寿命到達時可変データ推定値)が1,000であり、現時点から寿命に至る日までの残り日数(残余寿命推定値)は300(=1,000−700)であると推定された。他の日付においても同様に最新の6個の(判定対象値,累積日数)の値を用いて寿命の推定を行っている。推定を行った日付が新しくなるにつれて、残り日数が少なくなっており、可変インピーダンス素子の寿命の推定が、可変インピーダンス素子の劣化の進行と矛盾しない形で行われていることが分かる。
図10に示した例では、残り日数を求める際の演算(寿命到達時可変データ推定値から可変データの最新値を差し引く演算)に、図8のデータテーブルの形でメモリに記憶されている可変データのうちの最新値を用いているが、寿命の推定を行う日までの累積日数とメモリに記憶されている累積日数とが異なる場合(記憶されている累積日数の最新値が過去のデータである場合)には、残り日数を求める際の可変データの最新値として、寿命の推定を行う日にカレンダー部から新たに取得した累積日数を用いるようにするのが好ましい。
上記の実施形態では、基準時からの累積日数を寿命の推定に用いる可変データとしたが、他の可変データを用いて寿命の推定を行うこともできる。図11は、図8に示された形でデータがメモリに記憶されている場合に、判定対象値が3以上の値を示すようになった2007年3月2日以降の各日付において、モータの駆動量を推定に用いる可変データとし、最新の(直近の)6個のデータを用いて寿命の推定を行った結果を示している。図11において、「推定駆動量」は、可変インピーダンス素子の機構部が寿命を迎えた際に可変データ(モータの駆動量)がとることが予想される値(寿命到達時可変データ推定値)を示している。また「残り駆動量」は、推定駆動量から推定を行った日における最新の可変データ(駆動量)の値を差し引いて求めた値(残余寿命推定値)である。
上記の実施形態では、判定対象値として、トルク値の大きさを評価する数値を用いているが、トルク値の情報を含む数値(例えば残留偏差を許容範囲内に収めるために必要なトルクの最小値または該最小値に対応するトルク設定信号の大きさ)を判定対象値として用いてもよい。判定対象値として評価値を用いる場合、評価値間のトルクの差が等しければ各評価値とトルク値との対応関係が明確に分かるので特に問題がないが、評価値間のトルクの差が不均一である場合には、評価値とトルク値との対応関係が分からなくなるので、寿命の推定値の演算を行う際にトルクの大きさを考慮することが難しくなる。これに対し、判定対象値としてトルク値を用いれば、寿命の推定を行う際のトルク値を考慮して推定演算を行うことができるため、データの処理は面倒になるが、寿命の推定をより的確に行うことができる。
図1に示した実施形態において、目標位置設定部9、第1の出力トルク設定部12a、第2の出力トルク設定部12b、異常判定部11及びこれらを利用して判定対象値を検出する判定対象値検出手段、並びに第1の検査結果出力部15a及び第2の検査結果出力部15bの機能は、マイクロプロセッサを用いて実現される。また寿命の推定を行うための演算処理もマイクロプロセッサを用いて行われる。第1の出力トルク設定部12a、第2の出力トルク設定部12b、異常判定部11、判定対象値検出手段、第1の検査結果出力部15a及び第2の検査結果出力部15bを構成し、かつ可変インピーダンス素子の寿命の推定を行うために、マイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートを図4及び図5に示した。
図4及び図5に示したタスクは、製造ラインが停止している状態で検査指令が与えられたときに実行されるものである。まず、図示していないステップで、モータによって可変コンデンサの操作軸を予め設定した検査対象範囲の初期位置まで動かしておく。もちろん、そのときの現在位置を初期位置とする場合には、このステップは不要である。次に、このアルゴリズムによる場合には、先ずステップS101で変数k(初期値0)を1だけインクリメントし、ステップS102でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップS103で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップS104でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。このとき目標位置設定部は、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
なお、変数k=1のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちの最小値である。また、変数kが最大値(kmax)のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちの最大値である。また、変数kが1つ大きくなるに従って、読み出すトルク設定信号の電圧値も大きくなっていく。
なお、トルク設定信号の最大電圧値に対応するモータの出力トルクに達したときには、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が、正常な範囲から外れていると判定されるようにトルク設定信号の電圧値を設定しておく。
モータの駆動が完了した時点でステップS106を実行して、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を求め、この残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えている場合には、ステップS107に移行する。ステップ107では、kがkmax以上であるか否かを判定する。この判定の結果、k≧kmaxでない場合には、ステップS108に移行し、操作軸の位置を初期位置に戻した後、ステップS101に戻る。また、ステップS107で、k≧kmaxである場合には、ステップS109に移行する。ステップS109では、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。この理由は、トルク設定信号の電圧値を最大値にしたにも関わらず残留偏差が許容値を超えているので、明らかにメンテナンスが必要であると判断できるからである。
なお、ステップS108で操作軸の位置を初期位置に戻す際に、操作軸位置検出部8によって操作軸の現在位置を監視するが、もし初期位置に戻らないようであれば、一時的に、トルク設定信号の電圧値を大きくする(例えば最大値)。そして、トルク設定信号の電圧値を最大値にしたにもかかわらず初期位置に戻らない場合は、図示していないが、その時点でステップS109に移行し、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。この理由も、上記の操作軸の位置を初期位置に戻す場合と同様で、明らかにメンテナンスが必要であると判断できるからである。
ステップS106で残留偏差が許容値より大きくはないと判定されたときには、ステップS110に移行してその時のトルク設定信号の電圧値Vkを判定値として出力し、ステップS111で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクの値をデータテーブルから読み出して出力する。次いでステップS112で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクを判定基準値と比較する。その結果、モータの出力トルクが判定基準値未満であると判定された場合には、ステップS113に移行する。ステップS112でモータの出力トルクが判定基準値以上であると判定されたときには、ステップ109で、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。ステップS113で現在位置が最終目標位置(検査対象範囲の最終位置)であるか否かを判定し、ステップS113で現在位置が最終目標位置でないと判定されたときにはステップS105に戻る。
またステップS113で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、図5のステップS114以降を実行して、寿命の推定のための演算処理を行う。
なおステップS113で現在位置が最終位置であると判定されたときに、寿命の推定のための演算処理を行わないように構成してもよい。その場合は、ステップS113を実行した後にタスクを終了するようにすればよい。
ステップS114では、寿命推定の演算に用いる判定対象値のデータ数Nを初期値N1とする。N1の値は例えば6とする。次いでステップS115に進んで出力されたトルク値(本実施形態では判定対象値の評価値)、日時、基準時からの累積日数、駆動量などをメモリ31及び32に記憶させ、ステップS116で判定対象値の最新値が推定に用いることが可能な値であるか否かを判定する。ステップS116で判定対象値が推定に用いることができる値であると判定された場合(例えば図9において、Aの部分を寿命の推定に用いないとする場合には評価値3が以上であると判定された場合)には、ステップS117に進んで記憶されている判定対象値のデータ数がN以上であるか否かを判定する。その結果記憶されている判定対象値のデータ数がN以上である場合には、ステップS118で記憶されているN個の判定対象値の値が推定に用いることができる値であるか否か(推定が可能であるか否か)を判定する。その結果、N個の判定対象値の値が寿命の推定に用いることができない値(例えばすべて同じ値である)であると判定された場合には、ステップS119で推定に用いるデータ数Nを1だけインクリメントし、ステップS117に戻る。
なお、上記のように、N個の判定対象値の中に累積日数等の可変データの増加に対してマイナスの変化を示しているものが1つでもある場合(例えば2→3→4→2→3→4のような変化を示している場合)に、そのN個の判定対象値のデータのすべてを寿命の推定には用いないとの考え方をすることができる。このとき、上記の例では、2→3→4→4(データ数4)とみなす場合と、2→3→4→4→4→4(データ数6)とみなす場合があるが、どちらの場合でもステップS117で判定する判定対象値のデータ数Nの数を変更するわけではない。即ち、上記の例ではN=6のままとし、ステップS118で推定が可能であるか否かを判定する。
ステップS117において、記憶されている判定対象値のデータ数がN以上でないと判定された場合には、ステップS120に進んで現時点でメモリに記憶されている判定対象値のデータ数を推定に用いるデータ数Nとする。次いでステップS121に進んで記憶されている判定対象値のデータ数Nが2以上であるか否かを判定し、2以上である場合には、ステップS122に進んで記憶されているN個の判定対象値の値が推定に用いることができる値であるか否か(推定が可能であるか否)かを判定する。その結果、記憶されている判定対象値のデータの値が推定に用いることができる値である(推定可能である)と判定された場合には、ステップS123に進んで寿命到達時可変データ推定値を求めるための演算を行い、その結果を出力する。次いでステップS124でNの値を初期値に戻し、このタスクを終了する。ステップS118において記憶されている判定対象値のデータが推定演算に用いることができる値であると判定されたときにもステップS123に進んで寿命到達時可変データ推定値を求めるための演算を行い、その結果を出力する。ステップS116で判定対象値の最新値が寿命の推定に用いることができないと判定された場合、ステップS121で判定対象値のデータ数Nが2未満であると判定された場合、及びステップS122で記憶されている判定対象値のデータが寿命の推定に用いることができないと判定された場合(例えばすべて同じ値であると判定された場合)には、ステップS125に進んで寿命を推定できないことをモニタ36に表示させてこのタスクを終了する。
上記のアルゴリズムによる場合には、ステップ106により、異常判定部11が構成され、ステップ101ないし106とステップ110ないし113とにより、トルク設定信号の大きさを増加させながら可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を繰り返して、異常判定部が初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定を行わなかったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出する判定対象値検出手段が構成される。またステップ112及び109により、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15a,15bが構成される。
上記の実施形態では、目標位置設定部9及びモータ制御部13からなる「操作軸位置制御装置」に、モータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、初めて検査対象範囲の全範囲で異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値を判定対象値として検出するように判定対象値検出手段を構成したが、本発明は、判定対象値検出手段をこのように構成する場合に限定されない。
例えば、目標位置設定部9及びモータ制御部13によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、出力トルク設定信号Vτa,Vτbの大きさを減少させながら繰り返し行わせて、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値、または該トルク設定信号の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように第1及び第2の判定対象値検出手段を構成するようにしてもよい。この場合、第1及び第2の検査結果出力部15a及び15bは、検出された判定対象値または該判定対象値から求めたモータ7a及び7bの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータ7a及び7bの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子3及び4の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力するように構成する。
この場合、寿命の推定に用いるデータを記憶する判定対象値・可変データ記憶部は、判定対象値検出手段が各判定対象値を検出する毎に該判定対象値を記憶するとともに、可変インピーダンス素子の機構部の寿命を表すために用いる変数を可変データとして、各判定対象値が求められた時点での前記可変データの値を記憶するように構成する。
また寿命推定部は、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の状態が正常な状態から外れたときの判定対象値の値を判定基準値として、判定対象値が判定基準値に達したときに可変データがとることが推定される寿命到達時可変データ推定値及び該寿命到達時可変データ推定値から可変データの最新値を差し引くことにより求められる残余寿命推定値の少なくとも一方を判定対象値・可変データ記憶部に記憶されている判定対象値と可変データの値との間の関係から求めるように構成する。
目標位置設定部9及びモータ制御部13からなる操作軸位置制御装置によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせた場合に、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさは、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値である。
可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進行するにつれて可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていくため、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値は、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。また新品の可変コンデンサであっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変コンデンサを操作するために必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値が大きい値を示す。従って、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値の情報を含む数値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにしても、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
従って本発明で用いる判定対象値検出手段は、操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を目標位置設定部9及びモータ制御部13からなる「操作軸位置検出装置」に繰り返し行わせて、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータ7aの出力トルクを減少させながら反復することにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータ7aの出力トルクの最大値の情報を含む数値または該最大値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成されていればよく、モータ7aの出力トルクの最大値の情報を含む数値または該最大値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として求める手法は、上記の実施形態に示した手法に限定されない。
同様に、判定対象値検出手段は、操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御を目標位置設定部9及びモータ制御部13に行わせて、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータ7bの出力トルクを減少させながら反復することにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータ7bの出力トルクの最大値の情報を含む数値または該最大値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成されていればよく、モータ7bの出力トルクの最大値の情報を含む数値または該最大値の情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として求める手法は、上記の実施形態に示した手法に限定されない。
上記「最大値の情報を含む数値の大きさを評価する数値」は、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータ7bの出力トルクの最大値の情報を含む数値の大きさがどの程度の範囲にあるかを示す数値である。
上記のように、目標位置設定部9及びモータ制御部13によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさの情報を含む数値(残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値の情報を含む数値)を判定対象値として求めるように判定対象値検出手段を構成して、検出された判定対象値を用いて可変インピーダンス素子の機構部の寿命の推定を行う場合にマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートを図6及び図7に示した。
なお、変数kが最大値のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちの最大値である。また、変数kが最小値(kmin=1)のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちの最小値である。また、変数kが1つ小さくなるに従って、読み出すトルク設定信号の電圧値も小さくなっていく。また、トルク設定信号の最小電圧値に対応するモータの出力トルクのときに、予め設定された検査対象範囲の全範囲において、残留偏差が許容値を超えない場合は、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が、正常な範囲であると判定できるようにトルク設定信号の最小電圧値を設定しておく。
このアルゴリズムによる場合には、先ず図6のステップS201で変数k(初期値は最大値+1)を1だけデクリメントし、ステップS202でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップS203で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップS204でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。このとき目標位置設定部は、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
モータの駆動が完了した時点でステップS206を実行して、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を求め、この残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えていない場合には、ステップS207に移行して操作軸の現在位置が最終目標位置であるか否かを判定し、最終目標位置でない場合にはステップS205に戻る。ステップS207で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、ステップS208に移行して、kがkmin以下であるか否かを判定する。この判定の結果、k≦kminである場合にはこのタスクを終了し、k≦kminでない場合には、ステップS209に移行し、操作軸の位置を初期位置に戻した後、ステップS201に戻る。なお、ステップS208でk≦kminである場合は、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値の情報を含む数値が判定基準値未満であるので、可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力してもよい。
ステップS206で残留偏差が許容値より大きいと判定されたときには、ステップS210に移行してその時のトルク設定信号の電圧値Vkを判定値として出力し、ステップS211で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクの値をデータテーブルから読み出して出力する。次いでステップS212で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクを判定基準値と比較する。その結果、モータの出力トルクが判定基準値以上であると判定されたときには、ステップS213で、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。ステップS212でモータの出力トルクが判定基準値未満であると判定された場合には、図7のステップS214に移行して可変インピーダンス素子の機構部の寿命を推定する処理を行わせる。図7に示されたフローチャートは、各ステップに付されたステップ番号が相違する点を除き、図5に示されたフローチャートと同一であるのでその説明は省略する。
なお図6のステップS212において、トルク値が判定基準値未満であると判定された状態は、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値の情報を含む数値が判定基準値未満の状態であるので、ステップS212において、トルク値が判定基準値未満であると判定された場合には、寿命の推定を行う処理に移行する前に、可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力してもよい。
またステップS212でトルク値が判定基準値未満であると判定されたときに、寿命の推定のための演算処理を行わないように構成してもよい。この場合は、ステップS212を実行した後にタスクを終了すればよい。
本発明においてはまた、モータ7a,7bの出力トルクを一定値に固定した状態で可変インピーダンス素子3,4の操作軸の位置制御を行わせた場合に制御が完了した時点で操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさの情報を含む数値、または該残留偏差の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として用いて、可変インピーダンス素子3,4の機構部の寿命の推定を行わせることもできる。
この場合、第1及び第2の判定対象値検出手段は、可変インピーダンス素子3及び4の機構部が正常な状態で、モータ制御部13により可変インピーダンス素子3及び4の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収める制御を行う際にモータ7a及び7bの出力トルクが取り得る値の中から予め選定した値を有するトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに固定した状態で、可変インピーダンス素子3及び4の操作軸の位置制御を行わせて、該位置制御が完了した時点で操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさの情報を含む数値、または該残留偏差の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するように構成される。
またメモリ31及び32により構成される判定対象値・可変データ記憶部は、上記判定対象値検出手段が各判定対象値を検出する毎に該判定対象値を記憶するとともに、可変インピーダンス素子の機構部の寿命を表すために用いる変数を可変データとして、各判定対象値が求められた時点での可変データの値を記憶するように構成される。
更に可変インピーダンス素子3及び4の機構部の寿命を推定する第1及び第2の寿命推定部34及び35は、可変インピーダンス素子3及び4の機構部の劣化の状態が正常な状態から外れたときの判定対象値の値を判定基準値として、判定対象値が判定基準値に達したときに可変データがとることが推定される寿命到達時可変データ推定値及び該寿命到達時可変データ推定値から可変データの最新値を差し引くことにより求められる残余寿命推定値の少なくとも一方を判定対象値・可変データ記憶部に記憶されている判定対象値と可変データの値との間の関係から求めるように構成される。
モータ7a,7bの出力トルクを一定値に固定した状態で可変インピーダンス素子3,4の操作軸の位置制御を行った際に、その位置制御が完了した時点で可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさは、可変インピーダンス素子3,4の機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。従って、可変インピーダンス素子3,4の機構部が正常な状態で、モータ制御部13により可変インピーダンス素子3,4の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収める制御を行う際にモータの出力トルクが取り得る値の中から予め選定した値を有するトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクをこの検査時トルクに固定した状態で、可変インピーダンス素子3,4の操作軸の位置制御を行わせて、該位置制御が完了した時点で操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさの情報を含む数値、または該残留偏差の大きさの情報を含む数値の大きさを評価する数値を判定対象値として検出するようにすると、該判定対象値には、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の状態が反映される。従って本実施形態によった場合にも、可変インピーダンス素子3、4の機構部の寿命を推定することができる。
上記の説明では、モータの出力トルクを設定するトルク設定信号をDAコンバータを用いて発生させるとしたが、一定の直流電圧を分圧する、分圧比が異なる抵抗分圧回路を多数設けて、これらの抵抗分圧回路の出力電圧をスイッチで切り換えて選択的に出力することにより、電圧値が異なる多数のトルク設定信号を発生させるようにしてもよい。例えば、図3に示したように、一定の直流電圧Vccを出力する直流電源の正極端子に一端が接続された抵抗器R0の他端に多数の固定抵抗器R1,R2,…の一端を接続するとともに、抵抗器R1,R2,…の他端をスイッチSW1,SW2,…を通して直流電源の負極端子(図示の例では接地されている)に接続して、スイッチSW1,SW2,…を選択的にオン状態にすることにより、大きさが異なる電圧値を有するトルク設定信号Vτa,Vτbを発生させるようにした分圧回路を用いてもよい。図3に示したような分圧回路としては、IC化されたものを入手することができる。
上記の実施形態では、最小二乗法を用いて、可変インピーダンス素子の機構部の推定寿命を示す寿命到達時可変データ推定値及び残余寿命推定値求めるようにしたが、本発明はこのような方法を用いる場合に限定されるものではなく、例えば、過去に検出された複数の判定対象値の中から選択した2つの判定対象値と、各判定対象値が検出された時点での可変データの値とに比例演算を施すことにより、寿命の予測に用いる直線の傾きを求める線形予測法を用いて寿命到達時可変データ推定値を求めるようにすることもできる。
上記の実施形態では、「操作軸位置制御装置」を構成する目標位置設定部9及びモータ制御部13の機能を実現するためにマイクロプロセッサに実行させるプログラムに、判定対象値を検出するためのタスクを実行する部分を設けることにより、上記第1の判定対象値及び第2の判定対象値をそれぞれ検出する機能を実現する第1の判定対象値検出手段及び第2の判定対象値検出手段を構成するとしたが、本発明はこのように構成する場合に限定されるものではなく、可変インピーダンス素子3,4の操作機構の検査と寿命の判定とを行わせるために、検査及び寿命推定のためのデータ収集時に、データ収集のためにモータ7a及び7bを制御して操作軸の位置を制御する検査及び/または寿命推定専用の制御ブロックを特に設けて、この制御ブロックに判定対象値を検出する機能を持たせるようにしてもよい。
本実施形態において、可変インピーダンス素子3,4の検査及び寿命の推定は双方同時に行なわせてもよく、個別に行なわせてもよい。
上記の説明では、可変インピーダンス素子が可変コンデンサであるとして実施形態の説明をしたが、可変コンデンサ以外の可変インピーダンス素子の検査及び寿命の推定を行なう場合にも本発明を適用できることはもちろんである。