上記のように可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりモータにかかる負荷トルクが増大して、可変インピーダンス素子の操作を正常に行うことができなくなった場合には、電源と負荷のインピーダンス整合ができなくなるため、整合装置の修理や交換などのメンテナンス作業を行う必要があり、その作業に長い時間を要する。
整合装置の本来の役割である整合動作が機能しなくなると、半導体製造プロセス等を中断することになるが、その様な事態は極力避ける努力が必要である。そのため、従来は、可変インピーダンス素子の劣化時期を予測して、そのメンテナンス周期を短く設定したり、整合装置の交換を早めに行う等の対応を推奨していたが、使用条件によっては、過剰にメンテナンスを行うことになり、更なる改善を行う余地がある。
可変インピーダンス素子のメンテナンス周期を必要以上に短く設定したり、装置の交換を早めに行ったりすることなく、インピーダンス整合装置の性能の維持を経済的に図るためには、インピーダンス整合装置の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に検査することができるようにしておくことが好ましい。ここで、「インピーダンス整合装置の機構部の状態が正常な状態から外れている状態」とは、メンテナンス時期が近い状態、寿命が近い状態、機構部が故障している状態などである。
通常、機械的な可動部を有する装置の機構部が正常であるか否かの判定は、装置の運転時間により行っている。しかしながら、インピーダンス整合装置の場合は、可変インピーダンス素子の操作軸が操作される時間や回数が負荷の状態により大きく異なり、予測が不能であるため、装置の運転時間からその機構部が正常であるか否かを的確に判定することは困難である。
本発明の目的は、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査する機能を有するインピーダンス整合装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを、可変インピーダンス素子単体の状態で検査することができるインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を提供することにある。
本願には、上記の課題を解決するために第1ないし第14の発明が開示される。以下図9ないし図11に示したブロック図を用いて、第1ないし第14の発明の構成及びそれぞれの発明により本発明の課題が解決される理由を説明する。
図9は、本願に開示された第1の発明、第2の発明、第8の発明及び第9の発明の構成を示すブロック図であり、図10は、第3の発明、第4の発明、第10の発明及び第11の発明の構成を示すブロック図である。また図11は第5の発明、第6の発明、第7の発明、第12の発明、第13の発明及び第14の発明の構成を示すブロック図である。
(1)第1の発明
本願に開示された第1の発明は、図9に示されているように、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子3と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構7と、操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、操作軸位置検出部8により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御するモータ制御部13とを備えたインピーダンス整合装置を対象としたものである。
本発明は、以下の要素を備えたことを特徴としている。
(1.1)操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせて、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(1.2)判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が前記判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子3の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
なお図9においては、目標位置設定部9が、操作軸の目標位置を演算する目標位置演算部9Aと、操作軸位置検出部8により検出された操作軸の現在位置と目標位置演算部9Aにより演算された目標位置との間に存在する偏差を演算する偏差演算部9Bと、演算された偏差を零に近づけるために必要なモータの駆動量を演算する駆動量演算部9Cとにより構成されているが、これはあくまでも目標位置設定部9の構成の一例を示したものであり、第1の発明は、目標位置設定部9を図示のように構成する場合に限定されない。
また図9においては、モータ制御部13が、モータの出力トルクを設定する出力トルク設定部12と、モータの出力トルクを設定されたトルクとするようにモータに流す駆動電流の大きさを調整する機能を有するモータ駆動部10とにより構成されているが、第1の発明は、モータ制御部13を図示のように構成する場合に限定されない。
可変インピーダンス素子3を操作するために必要なトルクは、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進行するにつれて大きくなっていき、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むにつれて可変インピーダンス素子を操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていく。そのため、可変インピーダンス素子3の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値は、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。また新品の可変インピーダンス素子であっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変インピーダンス素子の操作に必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値は大きい値を示す。
従って、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
上記のように、インピーダンス整合装置に、可変インピーダンス素子の機構部が正常であるか否かを検査する機能を持たせておくと、可変インピーダンス素子を取り外すことなく可変インピーダンス素子の機構部の検査を行うことができるため、インピーダンス整合装置のメンテナンス時に作業工数の削減を図ることができる。またインピーダンス整合装置を出荷する際に可変インピーダンス素子の機構部が正常であるか否かを簡単にチェックできるため、仕様を満たさない製品が出荷されるのを防ぐことができる。
更に、上記のように、インピーダンス整合装置に可変インピーダンス素子の検査を行う機能を持たせておくと、可変インピーダンス素子を交換する際に、その場で新品の可変インピーダンス素子の検査を行うことができるため、機構部に欠陥がある可変インピーダンス素子を誤って取り付けるおそれを無くすことができる。
上記の構成では、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにした。しかしながら本発明は上記の構成に限定されるものではなく、以下に示す第2の発明のように、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値としても同様の目的を達成することができる。
(2)第2の発明
第2の発明は、第1の発明が対象とするインピーダンス整合装置と同様のインピーダンス整合装置を対象としたもので、第2の発明の構成も、図9のブロック図で表すことができる。第2の発明は、以下の要素を備えたことを特徴とする。
(2.1)可変インピーダンス素子3の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(2.2)判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
第2の発明の構成は、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として用いる点を除き、第1の発明の構成と同様である。
可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進行するにつれて可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていくため、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値も、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。
また新品の可変コンデンサであっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変コンデンサを操作するために必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値が大きい値を示す。
従って、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
第2の発明で用いる目標位置設定部9及びモータ制御部13も、図9に示した例に限定されない。
(3)第3の発明
第3の発明は、図10に示されているように、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子3と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構7と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、操作軸の目標位置を設定するとともに設定した目標位置と操作軸位置検出部8により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータの駆動量を演算する目標位置設定部9と、モータの出力トルクを設定するトルク設定信号を出力する出力トルク設定部12及びトルク設定信号に応じてモータに流す駆動電流の大きさを調整し得る機能を有するモータ駆動部10を備えて、モータの出力トルクをトルク設定信号により設定されたトルクに等しくした状態でモータを目標位置演算部9Aにより演算された駆動量だけ回転させるようにモータ駆動部10を制御するモータ制御部13と、操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部11とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
本発明は、以下の要素を備えたことを特徴とする。
(3.1)可変インピーダンス素子3の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部13によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(3.2)判定対象値または判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
検査対象範囲でモータ制御部13によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせた場合に、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさは、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を与えるものである。従って上記のようにして求めた判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較すると、該判定対象値または出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを検出することができる。
上記のように構成すると、インピーダンス整合装置に備わっている異常判定部を利用して、判定対象値を求めることができるため、判定対象値を求めるための処理を簡単にすることができ、検査を行うための処理を簡単にすることができる。
(4)第4の発明
第4の発明は、第3の発明が対象とするインピーダンス整合装置と同様のインピーダンス整合装置を対象としたもので、第4の発明の構成も、図10のブロック図で表すことができる。第4の発明は、以下の要素を備えたことを特徴とする。
(4.1)可変インピーダンス素子3の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部13によりモータを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(4.2)判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
検査対象範囲においてモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさは、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を与えるものである。
可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進行するにつれて可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていくため、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値も、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。
従って、上記のように、検査対象範囲においてモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせた場合に初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求めて、この判定対象値を判定基準値と比較するようにすることによっても、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
本発明のように構成する場合も、インピーダンス整合装置に備わっている異常判定部を利用して、判定対象値を求めることができるため、判定対象値を求めるための処理を簡単にして、検査を行うための処理を簡単にすることができる。
(5)第5の発明
第5の発明は、図11のブロック図に示されているように、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子3と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子3の操作軸を操作する操作機構7と、操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、モータの出力トルクを設定されたトルクに等しくした状態で操作軸位置検出部8により検出される操作軸の現在位置と位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御して操作軸の位置制御を行うモータ制御部13とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
本発明は、下記の構成を有する。
(5.1)可変インピーダンス素子3の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御を行わせるように目標位置設定部9及びモータ制御部13を制御する検査制御部30と、検査の結果を出力する検査結果出力部15とが設けられる。
(5.2)検査制御部30は、可変インピーダンス素子3の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子3の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値を検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子3の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部9及びモータ制御部13に行わせるように構成される。
(5.3)検査結果出力部15は、上記検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子3の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
本発明による場合、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲内にあるときに、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲にあると判定することができ、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲の上限を超えているときに可変にピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲を外れていると判定することができる。
また上記のように検査時トルクを一定とした場合、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むにつれて、残留偏差の大きさが大きくなるため、残留偏差の大きさに可変インピーダンス素子の機構部の劣化の状態が反映される。従って、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れたとの判定がされるまでの間に得られる残留偏差のデータを記憶させておくと、その残留偏差の値から可変インピーダンス素子の機構部の劣化の進み具合を予測することができる。
本発明によると、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で検査対象範囲に亘って一度検査時位置制御を行わせるだけで、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができ、モータの出力トルクを変更しながらモータ制御を何度も繰り返し行なう必要がないので、可変にピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲を外れているか否かを短時間で判定することができる。
第5の発明においても、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図11に示された構成に限定されない。
(6)第6の発明
第6の発明は、第5の発明が対象とするインピーダンス整合装置と同様のインピーダンス整合装置を対象としたもので、第6の発明の構成も、図11のブロック図で表すことができる。
本発明は、下記の構成を有する。
(6.1)可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御を行わせるように前記目標位置設定部及びモータ制御部を制御する検査制御部30と、検査の結果を出力する検査結果出力部15とが設けられている。
(6.2)検査制御部30は、可変インピーダンス素子3の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせるように構成される。
(6.3)検査結果出力部15は、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
第5の発明においては、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの「最小値」を検査時トルクとするのに対して、第6の発明においては、「最小値よりも大きなトルク」を検査時トルクとしている。
本発明による場合も、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲内にあるときに、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲にあると判定することができ、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲の上限を超えているときに可変にピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲を外れていると判定することができる。
本発明による場合も、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、検査対象範囲に亘って一度検査時位置制御を行わせるだけで、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができ、モータの出力トルクを変更しながらモータ制御を繰り返し行なう必要がないので、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲を外れているか否かを短時間で判定することができる。
本発明による場合には、可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値を検査時トルクとする場合よりも、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が更に進んだ状態になってから、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れたとの判定がされることになるため、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れたとの判定がされるまでの間に、第5の発明による場合よりも更に多くの残留偏差のデータを得ることができ、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の進み具合を予測するためのデータをより多く得ることができる。
第6の発明においても、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図11に示された構成に限定されない。
(7)第7の発明
第7の発明は、第5の発明及び第6の発明に適用されるもので、本発明においては、図11に示されているように、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差を出力する残留偏差出力部31が更に設けられる。
このように残留偏差出力部を設けておくと、出力された残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の操作機構部の寿命が近いか否かを判定することが可能になる。特に、本発明を第6の発明に適用した場合には、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとするため、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているとの検査結果が出されるまでの間により多くの残留偏差についてのデータを得ることができ、随時検査を行って残留偏差についてのデータを記憶させておくことにより、操作機構の劣化の状態の予測を余裕を持って行うことができる。
(8)第8の発明
第8の発明は、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を対象としたものである。本発明においては、第1の発明と同様な技術思想に基づいて、可変インピーダンス素子が正常であるか否かの検査を行う。従って、本発明の構成も図9のブロック図で表すことができる。
本発明は、以下の要素を備えたことを特徴とする。
(8.1)モータを駆動源として、検査の対象とする可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構7。
(8.2)操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9。
(8.3)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8。
(8.4)操作軸位置検出部により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御するモータ制御部13。
(8.5)操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせて操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(8.6)判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに前記可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
本発明によると、インピーダンス整合装置に組み込まれる前の可変インピーダンス素子の単品を検査対象として、その機構部の状態が正常な範囲にあるか否かを検査することができるため、インピーダンス整合装置を組立てる際に可変インピーダンス素子の機構部の性能のチェックを行うことができ、機構部に異常がある可変インピーダンス素子が装置に組み込まれるおそれを無くすことができる。また可変インピーダンス素子のメンテナンス時に、可変インピーダンス素子をインピーダンス整合装置から外した状態でその機構部の性能を確認できるため、メンテナンス作業を容易にすることができる。
第8の発明において、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図9に示された構成に限定されない。
(9)第9の発明
第9の発明は、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を対象としたもので、本発明においては、第2の発明と同様な技術思想に基づいて検査を行う。従って本発明の構成も、図9により表すことができる。
本発明は下記の要素を備えたことを特徴とする。
(9.1)モータを駆動源として前記可変インピーダンス素子3の操作軸を操作する操作機構7。
(9.2)操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9。
(9.3)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8。
(9.4)操作軸位置検出部により検出される操作軸の現在位置と前記目標位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるように前記モータを制御するモータ制御部13。
(9.5)操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて前記操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、前記モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、前記残留偏差が許容値を超える状態を招く前記モータの出力トルクの最大値を判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(9.6)判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
本発明によっても、インピーダンス整合装置に組み込まれる前の可変インピーダンス素子の単品を検査対象として、その機構部の状態が正常な範囲にあるか否かを検査することができる。また可変インピーダンス素子のメンテナンス時に、可変インピーダンス素子をインピーダンス整合装置から外した状態でその機構部の性能を確認できる。
第9の発明においても、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図9に示された構成に限定されない。
(10)第10の発明
第10の発明も、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を対象とする。本発明は、第3の発明と同様な技術思想に基づいて検査を行うものであり、その構成は、図10のブロック図により表すことができる。
本発明は、下記の要素を備えたことを特徴としている。
(10.1)モータを駆動源として前記可変インピーダンス素子3の操作軸を操作する操作機構。
(10.2)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8。
(10.3)操作軸の目標位置を設定するとともに設定した目標位置と操作軸位置検出部により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータの駆動量を演算する目標位置設定部9。
(10.4)モータの出力トルクを設定するトルク設定信号を出力する出力トルク設定部12及びトルク設定信号に応じてモータに流す駆動電流の大きさを調整し得る機能を有するモータ駆動部10を備えて、モータの出力トルクをトルク設定信号により設定されたトルクに等しくした状態でモータを目標位置演算部により演算された駆動量だけ回転させるようにモータ駆動部10を制御するモータ制御部13。
(10.5)操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部11。
(10.6)可変インピーダンス素子3の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲で前記モータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16。
(10.7)判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15。
上記のように構成すると、第3の発明と同じ原理で、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることの検査を行うことができる。
(11)第11の発明
第11の発明も、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置に係わるもので、第4の発明と同じ技術思想に基づいて検査を行うものである。第11の発明の構成も、図10のブロック図で表すことができる。
本発明は、以下の要素を備えたことを特徴とする。
(11.1)モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構。
(11.2)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部。
(11.3)操作軸の目標位置を設定して設定した目標位置と操作軸位置検出部により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータの駆動量を演算する目標位置設定部。
(11.4)モータの出力トルクを設定するトルク設定信号を出力する出力トルク設定部及びトルク設定信号に応じてモータに流す駆動電流の大きさを調整し得る機能を有するモータ駆動部を備えて、モータの出力トルクをトルク設定信号により設定されたトルクに等しくした状態でモータを目標位置演算部により演算された駆動量だけ回転させるようにモータ駆動部を制御するモータ制御部。
(11.5)操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部。
(11.6)可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲で前記モータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部。
(11.7)判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部。
上記のように構成すると、第4の発明と同じ原理で、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることの検査を行うことができる。
(12)第12の発明
第12の発明も、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を対象とする。本発明は、第5の発明と同様な技術思想に基づいて検査を行うものであり、その構成は、図11のブロック図により表すことができる。
本発明は、以下の特徴を有している。
(12.1)モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構7を備えている。
(12.2)操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9を備えている。
(12.3)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8を備えている。
(12.4)操作軸位置検出部8により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部9により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御して操作軸の位置制御を行うモータ制御部13を備えている。
(12.5)可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御を行わせるように目標位置設定部9及びモータ制御部13を制御する検査制御部30を備えている。
(12.6)検査の結果を出力する検査結果出力部を備えている。
(12.7)検査制御部30は、可変インピーダンス素子3の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値を検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して目標位置設定部及びモータ制御部に操作軸の位置制御を行わせるように構成される。
(12.8)検査結果出力部15は、検査制御部30がモータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態での操作軸の位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせているときに生じる残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
上記のように構成すると、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、モータ制御部による制御を一度行うだけで、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができるため、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を短時間で行うことができる。
第12の発明において、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図11に示された構成に限定されない。
(13)第13の発明
第13の発明も、インピーダンス整合装置用の可変インピーダンス素子が正常であるか否かを検査するインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を対象とする。本発明においては、第6の発明と同様の技術思想に基づいて検査を行う。従ってその構成は、図11のブロック図により表すことができる。
本発明は下記の点を特徴とする。
(13.1)モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構17を備えていること。
(13.2)操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9を備えていること。
(13.3)操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8を備えていること。
(13.4)操作軸位置検出部8により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部9により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御して操作軸の位置制御を行うモータ制御部13を備えていること。
(13.5)可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御を行わせるように目標位置設定部及びモータ制御部13を制御する検査制御部30を備えていること。
(13.6)検査の結果を出力する検査結果出力部15を備えていること。
(13.7)検査制御部30は、可変インピーダンス素子の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して目標位置設定部及びモータ制御部に操作軸の位置制御を行わせるように構成されること。
(13.8)検査結果出力部15は、検査制御部がモータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態での操作軸の位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせているときに生じる残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成されていること。
第13の発明においても、目標位置設定部9及びモータ制御部13の構成は、図11に示された構成に限定されない。
(14)第14の発明
第14の発明は、第12の発明または第13の発明に適用されるもので、本発明においては、検査制御部30が目標位置設定部9及びモータ制御部13を制御しているときに生じる残留偏差の大きさを出力する残留偏差出力部31が更に設けられている。
このように残留偏差出力部31を設けておくと、インピーダンス整合装置に組み込まれている可変インピーダンス素子を取り外してメンテナンスを行う際に、残留偏差の大きさから、可変インピーダンス素子の寿命予測などの解析を行うことができる。
第1の発明によれば、モータ制御部により操作軸の位置を目標位置に近づける制御を行った際に生じる残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較することにより、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを判定するようにしたので、インピーダンス整合装置に可変インピーダンス素子の機構部の状態を的確に検査する機能を持たせることができる。
また第2の発明によれば、モータ制御部により操作軸の位置を目標位置に近づける制御を行った際に生じる残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較することにより、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを判定するようにしたので、インピーダンス整合装置に可変インピーダンス素子の機構部の状態を的確に検査する機能を持たせることができる。
第3の発明においては、操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部がインピーダンス整合装置に設けられている場合に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲においてモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求め、この判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力するようにしたので、インピーダンス整合装置に備わっている異常判定部を利用して、判定対象値を求めることができ、検査を行うための処理を簡単にすることができる。
また第4の発明においては、インピーダンス整合装置に異常判定部が設けられている場合に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲においてモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求め、この判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を得るようにしたので、インピーダンス整合装置に備わっている異常判定部を利用して、判定対象値を求めることができ、判定対象値を求めるための処理を簡単にすることができる。
第5の発明においては、可変インピーダンス素子の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値を検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせる検査制御部と、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力する検査結果出力部とを設けたので、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で検査時位置制御を行わせるだけで、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができ、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を短時間で行うことができる。
また第6の発明によれば、可変インピーダンス素子の検査を行う際に、可変インピーダンス素子の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変インピーダンス素子の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせる検査制御部と、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力する検査結果出力部とを設けたため、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、検査時位置制御を行わせるだけで、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができ、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を短時間で行うことができる。
第7の発明によれば、第5の発明または第6の発明の構成に加えて更に、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差を出力する残留偏差出力部が設けられているので、出力された残留偏差の大きさから可変インピーダンス素子の操作機構部の寿命が近いか否かを判定することができる。特に、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとした場合には、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているとの検査結果が出されるまでの間により多くの残留偏差についてのデータを得ることができるため、随時検査を行って残留偏差についてのデータを得ることにより、操作機構の寿命の予測を余裕を持って行うことができる。
第1ないし第7の発明によれば、インピーダンス整合装置に、可変インピーダンス素子の機構部が正常であるか否かを検査する機能を持たせたことにより、可変インピーダンス素子の機構部の検査を可変インピーダンス素子を取り外すことなく行うことができるため、インピーダンス整合装置のメンテナンス作業の工数の削減を図ることができる。
また本発明によれば、インピーダンス整合装置を出荷する際に可変インピーダンス素子の機構部が正常であると否かを簡単にチェックできるため、仕様を満たさない製品が出荷されるのを防ぐことができる。
更に本発明によれば、インピーダンス整合装置に可変インピーダンス素子の検査を行う機能を持たせたので、可変インピーダンス素子を交換する際に、その場で新品の可変インピーダンス素子の検査を行うことができ、機構部に欠陥がある可変インピーダンス素子を誤って取り付けるおそれを無くすことができる。
また第8の発明、第9の発明、第10の発明、第11の発明、第12の発明または第13の発明によれば、インピーダンス整合装置に組み込まれる前の可変インピーダンス素子の単品を検査対象として、その機構部の状態が正常な範囲にあるか否かを検査することができるので、インピーダンス整合装置を組立てる際に可変インピーダンス素子の機構部の性能のチェックを行うことができ、機構部に異常がある可変インピーダンス素子が装置に組み込まれるおそれを無くすことができる。また可変インピーダンス素子のメンテナンス時に、可変インピーダンス素子をインピーダンス整合装置から外した状態でその機構部の性能を確認できるため、メンテナンス作業を容易にすることができる。
第14の発明によれば、検査制御部が目標位置設定部及びモータ制御部を制御しているときに生じる残留偏差の大きさを出力する残留偏差出力部が設けられているので、インピーダンス整合装置に組み込まれている可変インピーダンス素子を取り外してメンテナンスを行う際に、残留偏差の大きさから、可変インピーダンス素子の寿命予測などの解析を行うことができる。
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
(インピーダンス整合装置の構成についての説明)
先ず、本実施形態に係わるインピーダンス整合装置の全体的な構成について説明する。 図1は本発明の一実施形態に係わるインピーダンス整合装置の構成を示したもので、同図において1は高周波電源、2は半導体製造装置等のプロセスチャンバである。プロセスチャンバ2内にはプラズマ発生装置等の、高周波電源1の負荷が収容されている。
3及び4は高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2との間に設けられた第1及び第2の可変インピーダンス素子で、第1の可変インピーダンス素子3aは高周波電源1及び負荷に対して並列に接続され、第2の可変インピーダンス素子3bは、高周波電源1及びプロセスチャンバ2(負荷)に対して直列に接続されている。
本実施形態では、第1の可変インピーダンス素子3aが第1の可変コンデンサVC1からなり、第2の可変インピーダンス素子3bが第2の可変コンデンサVC2からなっている。第1の可変コンデンサVC1及び第2の可変コンデンサVC2としては真空可変コンデンサが用いられている。
図示の例では、第2の可変コンデンサVC2と負荷との間にインダクタンス5が挿入されている。また負荷に入力される電圧Vinと、電流Iinと、電圧Vinと電流Iinとの間の位相差θinとを検出する入力検出部6が、高周波電源1と第2の可変コンデンサVC2との間に設けられている。この入力検出部6による電圧Vin、電流Iinおよび位相差θinの検出方法は、周知であるので説明を省略する。
第1の可変コンデンサVC1に対しては、第1のモータ7aを駆動源として該第1の可変コンデンサVC1の操作軸を操作する第1の操作機構が設けられ、第2の可変コンデンサVC2に対しては、第2のモータ7bを駆動源として該第2の可変コンデンサVC2の操作軸を操作する第2の操作機構が設けられている。
インピーダンス整合装置の可変インピーダンス素子を操作するモータ7a、7bとしては、パルスモータやステップモータが多く用いられる。本実施形態では、モータ7a及び7bとしてステップモータを用いるものとする。各操作機構は、各モータの回転を各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により構成することができる。例えば、各モータの回転軸と各可変コンデンサの操作軸とを接続するカップリングを用いた機構により各操作機構を構成することができる。場合によっては、各モータの回転を減速して各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により各操作機構を構成することもできる。
また第1の可変コンデンサVC1の操作軸の位置を検出する第1の位置検出器8aと、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の位置を検出する第2の位置検出器8bとを備えた操作軸位置検出部8が設けられ、第1及び第2の位置検出器8a及び8bの出力信号Spa及びSpbが、入力検出部6から得られる入力電圧検出信号Sv、入力電流検出信号Si及び位相差検出信号Sθとともに目標位置設定部9に入力されている。
目標位置設定部9は、入力検出部6により検出された入力電圧Vin及び入力電流Iinを用いて、インピーダンス整合装置の入力端(入力検出部6の入力端)から負荷側を見たインピーダンスを演算により求めて、高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2とのインピーダンス整合を行なうために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置を演算し、演算した目標位置と操作軸位置検出部により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要な前記モータの駆動量を演算する。
目標位置設定部9は、図9ないし図11に示されているように、目標位置演算部9Aと、偏差演算部9Bと、駆動量演算部9Cとにより構成できる。目標位置演算部9Aは、インピーダンス整合装置の入力端から伝送線路を経由し高周波電源1側を見た電源側インピーダンス(通常は50Ω)と、インピーダンス整合装置の入力端からプロセスチャンバ(負荷)2側を見た負荷側インピーダンスとを整合させるために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置を演算する。偏差演算部9Bは、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の演算された目標位置と、第1の位置検出器8aにより検出された可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置との偏差を演算し、駆動量演算部9Cは、この偏差を零にするために必要なステップモータ7aの駆動量(ステップモータ7aに与えるパルス数)を演算し、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdaを第1のモータ駆動部10aに与える。
偏差演算部9Bはまた、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の演算された目標位置と、第2の位置検出器8bにより検出された第2の可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置との偏差を演算し、駆動量演算部9Cはこの偏差を零にするために必要なステップモータ7bの駆動量(ステップモータに与えるパルス数)を演算して、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdbを第2のモータ駆動部10bに与える。本実施形態では、第1のモータ駆動部10aと第2のモータ駆動部10bとにより、モータ駆動部10が構成されている。
可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸の目標位置の演算は、インピーダンスの整合を図るために必要な可変コンデンサVC1及びVC2のリアクタンス値を目標リアクタンス値として演算する手段と、各可変コンデンサに対して予め求めた操作軸の回転角度位置と各可変コンデンサの静電容量との間の関係を用いて、演算された各目標リアクタンス値に対応する各可変コンデンサの操作軸の回転角度位置(目標位置)を演算する手段とにより行なうことができる。
第1及び第2の位置検出器8a及び8bは、例えば、可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸が微少角度回転する毎に位置検出パルスを発生するエンコーダを用いて構成することができる。
11は異常判定部である。この異常判定部は、目標位置設定部9で演算される第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差、及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差をそれぞれ監視して、目標位置設定部9から第1のモータ駆動部10a及び第2のモータ駆動部10bにそれぞれ演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbが与えられた後、モータ7a及び7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサVC1の機構部の状態が異常である(正常な範囲から外れている)との異常判定を行う。異常判定部11はまた、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサVC2の機構部の状態が異常であるとの異常判定を行う。
なお可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との「残留偏差」は、モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点で、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差であり、この偏差は目標位置設定部9で演算される。ここで、「モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点」とは、通常は、検出の遅れを考慮して、モータが実際に駆動したと考えられる時点を示す。
可変コンデンサの操作軸の現在位置の検出には遅れが伴うことが避けられず、可変コンデンサの操作軸の目標位置のデータと、その目標位置に対応する現在位置の検出データとは、同時に発生するものではないので、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検知するためには何らかの工夫を要する。
例えば、目標位置設定部9で目標位置のデータと現在位置の検出データとから偏差を演算する際に、検出の遅れを考慮して現在位置の検出データを読み込むタイミングを遅らせる処理を行うことにより、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検出することができる。また、目標位置設定部9に目標位置のデータと現在位置の検出データとを一旦記憶するメモリを設けて、現在位置の検出データを遅れを考慮してメモリから読み出す等の処理を行うことによっても、上記の偏差を正確に検出することができる。
また、目標位置設定部9に目標位置のデータだけを一旦記憶するメモリを設けておいて、現在位置の検出遅れを考慮して、目標位置のデータと現在位置の検出データとが同期するように、目標位置のデータをメモリから読み出す処理を行うことによっても、上記の偏差を正確に検出することができる。
ところで、ステップモータ7a,7bで可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を駆動する場合、各操作軸を現在位置から最終目標位置まで移動させるために必要な数のパルスが多すぎると、そのパルスをモータ駆動部10a,10bからステップモータ7a,7bに一度に与えても、モータが応答できないため、モータ駆動部10a,10bからステップモータ7a,7bに与えるパルスの数は、モータが正常に応答し得る範囲の数に制限する必要がある。
そのため、目標位置設定部9は、実際には、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を現在位置から最終目標位置まで動かすために必要な駆動量を一度に演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号をモータ駆動部10a及び10bに与えるのではなく、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算し、この駆動量だけモータを駆動したときに到達する筈の操作軸の位置を暫定目標位置として演算する。
目標位置設定部9は、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与える。モータ駆動部10a及び10bは、与えられた目標位置設定信号Sda及びSdbに応じてモータ7a及び7bに駆動パルスを与えて、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置を暫定目標位置まで変位させる。
目標位置設定部9はまた、演算した暫定目標位置を異常判定部11に与える。異常判定部11は、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差を監視し、モータ7aの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサVC1が異常であると判定し、モータ7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサVC2が異常であると判定する。
目標位置設定部9は、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置が暫定目標位置に達したときに、新たなモータの駆動量と、その駆動量に相応した暫定目標位置とを演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a,10bに与える。目標位置設定部9は暫定目標位置までのモータの駆動が完了した時点で暫定目標位置と現在位置との残留偏差を演算し、この残留偏差を異常判定部11に与えて異常判定を行わせる。これらの動作を繰り返しながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。
すなわち、暫定目標位置をそのときの目標位置としながら、操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。なお、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々と変化する負荷の状態に対応させるため、可変コンデンサの操作軸が最終目標位置に移動していない状態でも、新たな最終目標位置が演算されることが多い。
暫定目標位置まで可変コンデンサの操作軸を変位させるようにモータ7a及び7bを駆動する過程と、異常判定部11により異常判定処理を行なう過程とを行なわせるためには、所定の処理時間を必要とする。モータ7a及び7bが可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を現在位置から暫定目標位置まで動かすために必要な時間が上記処理時間よりも長いと、モータが正常に回転していても、操作軸の現在位置と暫定目標位置との間の残留偏差が許容値を超えてしまい、異常判定部11が異常判定を行ってしまう。従って、残留偏差が許容値を超えているか否かの判定を正確に行わせるためには、目標位置設定部9が一度に演算する駆動量を、上記処理時間内にモータを駆動できるだけの大きさ以下に制限して、演算した駆動量に基づいて可変コンデンサの操作軸の暫定目標位置を演算する必要がある。
インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々と変化する負荷の状態に対応させるため、上記の所定の処理時間が短く設定されることが多い。しかし、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、負荷の状態を考慮する必要がないため、上記の所定の処理時間を長く設定することが可能である。そのため、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、所定の処理時間を長くした分、モータの駆動量を大きくできるので、暫定目標位置を設定することなく異常判定を行わせることが可能となる。この場合は、検査を行う際の操作軸の最終目標位置が唯一の目標位置になる。もちろん、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際と同様に、暫定目標位置を設定するようにしてもよい。
異常判定部11は、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサVC1の機構部が異常であるとの異常判定を行って第1の異常判定信号Saaを発生し、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサVC2の機構部が異常であるとの異常判定を行って第2の異常判定信号Sabを発生する。異常判定部11が出力する第1の異常判定信号Saa及び第2の異常判定信号Sabはそれぞれ第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bに与えられる。
第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bは、インピーダンス整合時及び可変コンデンサVC1及びVC2の検査時に、第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクを設定する部分である。インピーダンス整合時には、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bが、異常判定部11による判定結果に応じて第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクを設定し、可変コンデンサVC1及びVC2の検査時には、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bが、モータ7a及び7bの出力トルクを、その値を変化させながら段階的に変化させる。
本実施形態で用いる第1の出力トルク設定部12aは、インピーダンス整合時に、異常判定部11が第1のモータ7aについて最初の異常判定を行うまでの間、モータ7aの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部11が最初の異常判定を行った後はモータの出力トルクを上記初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
また第2の出力トルク設定部12bは、インピーダンス整合時に、異常判定部11が最初の異常判定を行うまでの間、モータ7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部11が最初の異常判定を行った後はモータ7bの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
第1及び第2の出力トルク設定部12a及び12bはまた、後記するように、インピーダンス整合装置の運転停止時に可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めるために、モータ7a及び7bの出力トルクの設定値を、大きい値から小さい値まで値を異ならせて段階的に変化させることができるようになっている。
第1のモータ駆動部10aは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第1のモータ7aに駆動パルスを与えるとともに、第1のモータ7aの出力トルクを第1の出力トルク設定部12aにより設定されたトルクに等しくするように、第1のモータに流す駆動電流を調整する。
また第2のモータ駆動部10bは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第2のモータ7bに駆動パルスを与えるとともに、第2のモータ7bの出力トルクを第2の出力トルク設定部12bにより設定されたトルクに等しくするように、第2のモータに流す駆動電流を調整する。
本実施形態では、第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクをそれぞれ第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bにより設定されたトルクに等しくするように、第1のモータ7a及び第2のモータ7bに流す駆動電流を調整するが、後記する可変インピーダンス素子の検査時には、モータ7a及び7bの出力トルクを細かく調整し得るようにしておくことが望ましい。
そのため、本実施形態では、図3に示すようにモータ駆動部10a,10bを、制御端子に与えられるトルク設定電圧Vkの大きさに応じてモータ7a,7bに流す駆動電流を調整し得る機能を有するドライバICにより構成するとともに、出力トルク設定部12a,12bの出端子とモータ駆動部10a,10bをそれぞれ構成するドライバICの制御端子との間にDAコンバータ14a,14bを設けて、出力トルク設定部12a,12bがそれぞれ出力したトルク設定信号電圧値(デジタル値)をアナログ電圧Vkに変換してモータ駆動部10a,10bに与えるようにしている。
第1及び第2の出力トルク設定部12a及び12bにはそれぞれ記憶装置20に設けられた第1のメモリ20a及び第2のメモリ20bが接続されている。メモリ20a,20bには、多数のトルク設定信号電圧(デジタル値)と、該多数のトルク設定信号電圧のアナログ変換値をそれぞれモータ駆動部10a,10bを構成するドライバICに与えたときに得られるモータの出力トルクとの間の関係を与えるデータテーブルが記憶されている。このデータテーブルは、トルク設定信号電圧の大きさが大きくなっていくに従って、設定されるモータの出力トルクが大きくなっていくようにトルク設定信号電圧の大きさとモータの出力トルクとの間の関係を定めて、各トルク設定信号電圧値と対応するモータの出力トルクとを1対1で対応させてテーブルの形にまとめたものである。
出力トルク設定部12a,12bは、可変コンデンサVC1及びVC2の検査時に、メモリ20a,20bからトルク設定信号電圧値を小さい順に読み出して、DAコンバータ14a,14bを介してモータ駆動部10a,10bに与える。
本実施形態では、第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bにより出力トルク設定部12が構成され、モータ駆動部10と出力トルク設定部12とにより、可変コンデンサ(可変インピーダンス素子)VC1及びVC2の操作軸の位置を目標位置設定部9で設定された目標位置に一致させるように(操作軸位置検出部により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部9により設定された目標位置との偏差を零に近づけるように)モータ7a,7bを制御するモータ制御部13が構成されている。
第1の可変コンデンサVC1の可動部がグリスの固化や機械的摺動部の摩耗などにより劣化すると、該第1の可変コンデンサの操作軸から第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていく。第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていき、ある限界と超えると、該モータの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になりモータを回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第1の可変コンデンサ7aの操作軸を目標位置まで回転させることができなくなり、高周波電源1と負荷2との間のインピーダンスの整合をとることができなくなって、モータ駆動部10aがモータ7aの駆動を完了した時点での可変コンデンサVC1の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が大きくなる。
同様に、第2の可変コンデンサVC2の可動部が劣化した場合には、モータ7bの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になり、該モータを正常に回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第2の可変コンデンサ7bの操作軸を目標位置まで回転させることができなくなるため、高周波電源1と負荷との間のインピーダンスの整合をとることができなくなり、モータ駆動部10bがモータ7bの駆動を完了した時点での可変コンデンサVC2の操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差が大きくなる。
従って、異常判定部11で、各可変コンデンサの操作軸の現在位置と目標位置との残留偏差を監視して、その残留偏差が許容値を超えたか否かを判定することにより、各可変コンデンサの可動部が異常であるか否かを判定することができる。
前述のように、本実施形態では、インピーダンス整合時に、異常判定部11により異常判定が行われたときに、出力トルク設定部がモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定する。この異常検出後トルクは、従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクと同等の大きさ、即ち、メンテナンスが必要な程度まで可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ状態でも、可変コンデンサの操作軸を目標位置まで回転させることができるような大きさに設定しておく。
本実施形態において、初期トルクの大きさは、異常検出後トルクよりも小さく、かつ可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化する前の状態にある間は、該可変コンデンサの操作軸を操作し得るが、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化した状態では、可変コンデンサの操作軸を操作することができなくなる程度の大きさに設定しておく。即ち、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えて異常判定部が異常判定を行うように初期トルクの大きさを設定しておく。
本実施形態のように、異常判定部11が最初の異常判定を行ったときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すようにすると、最初の異常判定が行われたこと、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り換えられたことから、可変コンデンサの機構部が一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に(メンテナンスの時期が近いといえる程度に)劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。また、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すことによって、再度、残留偏差が許容値に収まるようにモータを駆動させることが可能となる。
上記の説明では、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えて異常判定部が最初の異常判定を行うようにモータの初期トルクの大きさを設定して、異常判定部が最初の異常判定を行ったときに、メンテナンスの時期が近いことを知り得るようにしたが、モータの初期トルクを小さめに設定して、可変コンデンサの機構部が一定時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化するまでの間に異常判定が複数回行われるようにしてもよい。
即ち、モータ制御部13は、異常判定部11が最初の異常判定を行うまでの間は、モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定部が最初の異常判定を行った後は、モータの出力トルクを、初期トルクよりも大きく、かつ異常判定が行われる毎に値が増大していく異常検出後トルクに設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とすることができる。
上記のように異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの大きさを増大させていく場合、出力トルク設定部12は、異常判定部11が最初の異常判定を行った後異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの値を増大させていく際の該異常検出後トルクの増分を予め定めた値(例えば予め定めた一定値)とするように構成することができる。
また上記のように異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの大きさを増大させていく場合、出力トルク設定部12は、異常判定部が最初の異常判定を行った後異常判定が行われる毎に異常検出後トルクの値を増大させていく際の増分を、異常判定が行われた回数と設定するトルクとの間の予め定められた関係に基づいて決定するように構成することもできる。例えば、異常判定が行われる回数の増大に伴って、異常検出後トルクの値の増分を大きくしていくように、出力トルク設定部を構成することができる。
インピーダンス整合装置のメンテナンス時期を的確に予測するためには、可変コンデンサ(可変インピーダンス素子)の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を、インピーダンス整合装置が運転されていない状態でも行い得るようにしておくことが好ましい。
(第1の発明の実施形態)
そこで、本願明細書に開示する第1の発明の実施形態においては、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータ7a及び7bの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求める判定対象値検出部16と、判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設けることにより、インピーダンス整合装置に可変コンデンサVC1及びVC2(可変インピーダンス素子3)の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行う検査機能を持たせる。
可変コンデンサVC1及びVC2を操作するために必要なトルクは、可変コンデンサの機構部の劣化が進行するにつれて大きくなっていき、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて該可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていく。そのため、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせたときに可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータ7a及び7bの出力トルクの最小値は、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。
また新品の可変インピーダンス素子であっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変コンデンサを操作するために必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値が大きい値を示す。
従って、上記のように、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否か(メンテナンス時期が近いか否か、寿命が近いか否か、機構部に異常があるか、機構部が故障しているか否かなど)を的確に判定することができる。
(第2の発明の実施形態)
本願に開示する第2の発明の実施形態においては、操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて、操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求める判定対象値検出部16と、判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が前記判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設けることにより、インピーダンス整合装置に可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行う検査機能を持たせる。
可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進行するにつれて可変コンデンサを操作するために必要なモータの出力トルクが大きくなっていくため、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値も、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていく。また新品の可変コンデンサであっても、その機構部に異常があるときには、機構部が正常である場合に比べて、該可変コンデンサを操作するために必要なトルクが大きくなっているため、上記残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値が大きい値を示す。
従って、上記のように、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
(第3の発明の実施形態)
本願に開示する第3の発明の実施形態においては、可変コンデンサVC1及びVC2(可変インピーダンス素子3)の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部13によりモータ7a及び7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値Vka及びVkbとして求める判定対象値検出部16と、判定対象値検出部16が出力する判定対象値Vka及びVkb、または該判定対象値Vka及びVkbからそれぞれ求めたモータ7a及び7bの出力トルクをそれぞれ設定された判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータ7a及び7bの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する第1及び第2の検査結果出力部15a及び15bとが設けられる。
モータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号Vkの大きさを増大させながら繰り返し行なわせた場合に、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさは、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を与えるものである。
前述のように、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値には、可変コンデンサの操作機構部の状態が反映されるため、この最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否か(メンテナンス時期が近いか否か、寿命が近いか否か、機構部に異常があるか、機構部が故障しているか否かなど)を的確に判定することができる。
第3の発明の実施形態において、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を目標位置に向けて動かしていく際の動作は、インピーダンス整合時のそれと同様である。即ち、目標位置設定部9は、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算して、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与える。
モータ駆動部10a及び10bは、与えられた目標位置設定信号Sda及びSdbに応じてモータ7a及び7bに駆動パルスを与えて、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を暫定目標位置まで変位させる。
目標位置設定部9はまた、演算した駆動量だけモータを駆動したときに到達する筈の操作軸の位置を暫定目標位置として演算して、演算した暫定目標位置を異常判定部11に与え、異常判定部11に第1及び第2の可変コンデンサが異常であるか否かの判定を行なわせる。
暫定目標位置まで可変コンデンサの操作軸を変位させるようにモータ7a及び7bを駆動する過程と、異常判定部11により異常判定処理を行なう過程とからなる一連の処理過程を繰り返しながら、第1及び第2の可変コンデンサの操作軸を検査時に適した最終目標位置に向けて変位させていく。すなわち、暫定目標位置をそのときの目標位置としながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。検査時の可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の最終目標位置は、予め定めておいた一定の位置でもよく、検査を行う際に外部から入力された位置でもよい。
検査時における操作軸の初期位置は、任意の位置に設定することができる。即ち、検査時における操作軸の初期位置は、検査を開始する際の現在位置のままでもよく、予め設定した一定の位置であってもよい。検査時における操作軸の初期位置を予め設定した初期位置とする場合には、検査を開始する前にモータ7a,7bにより、可変コンデンサVC1,VC2の操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。
いずれの場合であっても、初期位置から最終目標位置までが、検査対象範囲となる。
上記のように、可変コンデンサの検査を行なう際の操作軸の初期位置を任意の位置に設定し得るようにしておくと共に、操作軸の最終目標位置を任意に設定し得るようにしておくと、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を、操作軸の任意の回転範囲に対して行うことが可能になる。例えば、操作軸の回転範囲のうち、使用頻度の高い範囲、すなわち、摩耗度合いが高いと思われる範囲について検査を行えば、検査時間を短縮できるので効率的に検査を行うことが可能となる。
図1に示した例では、判定対象値検出部16が判定対象値Vka及びVkbをそれぞれ第1の検査結果出力部15a及び15bに与えるとともに、外部にも出力するようになっている。このように、判定対象値Vka及びVkbを外部にも出力し得るようにしておくと、該判定対象値を可変インピーダンス素子のメンテナンスの管理に利用することができる。例えば、出力された判定対象値を、検査を行なった日時とともに記憶しておいて、次のメンテナンスの際に参考にすることができる。
第3の発明の実施形態において、目標位置設定部9、第1の出力トルク設定部12a、第2の出力トルク設定部12b、異常判定部11、判定対象値検出部16、第1の検査結果出力部15a及び第2の検査結果出力部15bは、マイクロプロセッサを用いて構成される。第1の出力トルク設定部12a、第2の出力トルク設定部12b、異常判定部11、判定対象値検出部16、第1の検査結果出力部15a及び第2の検査結果出力部15bを構成するために、マイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示したフローチャートを図5に示した。
図5に示したタスクは、インピーダンス整合装置の運転停止時に検査指令が与えられたときに実行されるものである。
まず、図示していないステップで、モータによって可変コンデンサの操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。もちろん、そのときの現在位置を初期位置とする場合には、このステップは不要である。次に、このアルゴリズムによる場合には、先ずステップ101で変数k(初期値0)を1だけインクリメントし、ステップ102でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップ103で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップ104でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。このとき、ステップ105に示すように、目標位置設定部は、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
なお、変数k=1のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちでの最小値である。また、変数kが最大値(kmax)のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちでの最大値である。また、変数kが1つ大きくなるに従って、読み出すトルク設定信号の電圧値も大きくなっていく。
なお、トルク設定信号の最大電圧値に対応するモータの出力トルクに達したときには、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が、正常な範囲から外れていると判定されるようにトルク設定信号の電圧値を設定しておく。
モータの駆動が完了した時点でステップ106を実行して、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を求め、この残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えている場合には、ステップ107に移行する。ステップ107では、kがkmax以上であるか否かを判定する。この判定の結果、k≧kmaxでない場合には、ステップ108に移行し、操作軸の位置を初期位置に戻した後、ステップ101に戻る。また、ステップ107で、k≧kmaxである場合には、ステップ109に移行する。ステップ109では、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。この理由は、トルク設定信号の電圧値を最大値にしたにも関わらず残留偏差が許容値を超えているので、明らかにメンテナンスが必要であると判断できるからである。
なお、ステップ108で操作軸の位置を初期位置に戻す際に、操作軸位置検出部8によって操作軸の現在位置を監視するが、もし初期位置に戻らないようであれば、一時的に、トルク設定信号の電圧値を大きくする(例えば最大値)。そして、トルク設定信号の電圧値を最大値にしたにも関わらず初期位置に戻らない場合は、図示していないが、その時点でステップ109に移行し、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。この理由も、上記の操作軸の位置を初期位置に戻す場合と同様で、明らかにメンテナンスが必要であると判断できるからである。
ステップ106で残留偏差が許容値より大きくはないと判定されたときには、ステップ110に移行してその時のトルク設定信号の電圧値Vkを判定値として出力し、ステップ111で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクの値をデータテーブルから読み出して出力する。次いでステップ112で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクを判定基準値と比較する。その結果、モータの出力トルクが判定基準値未満であると判定された場合には、ステップ113に移行する。ステップ112でモータの出力トルクが判定基準値以上であると判定されたときには、ステップ109で、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。ステップ113で現在位置が最終目標位置であるか否かを判定し、ステップ113で現在位置が最終目標位置でないと判定されたときにはステップ105に戻る。またステップ113で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。
なお、この場合は、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値が判定基準値未満であるので、可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力してもよい。
上記のアルゴリズムによる場合には、ステップ106により異常判定部11が構成され、ステップ101ないし106と、ステップ107ないし108と、ステップ110ないし113とにより、可変インピーダンス素子3の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部13によりモータを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16が構成される。
またステップ112及び109により、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15が構成される。
(第4の発明の実施形態)
本願の第4の発明の実施形態では、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16と、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めた前記モータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設けることにより、インピーダンス整合装置に可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行う検査機能を持たせる。
可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせた場合に、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさは、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を与えるものである。
可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値は、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていくため、上記のように、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に判定することができる。
上記のように、モータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求めるように判定対象値検出部を構成する場合にマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートを図6に示した。
このアルゴリズムによる場合、変数kが最大値のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちでの最大値である。また、変数kが最小値(kmin=1)のときに、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルから読み出すトルク設定信号の電圧値は、トルク設定信号電圧値対トルクテーブルに記憶されている電圧値のうちでの最小値である。
また、変数kが1つ小さくなるに従って、読み出すトルク設定信号の電圧値も小さくなっていく。また、トルク設定信号の最小電圧値に対応するモータの出力トルクのときに、予め設定された検査対象範囲の全範囲において、残留偏差が許容値を超えない場合に検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲であると判定できるように、トルク設定信号の最小電圧値を設定しておく。
図6に示したアルゴリズムによる場合には、先ずステップ201で変数k(初期値は最大値+1)を1だけデクリメントし、ステップ202でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップ203で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップ204でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。このとき目標位置設定部は、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
モータの駆動が完了した時点でステップ206を実行して、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を求め、この残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えていない場合には、ステップ207に移行して操作軸の現在位置が最終目標位置であるか否かを判定し、最終目標位置でない場合にはステップ205に戻る。ステップ207で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、ステップ208に移行して、kがkmin以下であるか否かを判定する。この判定の結果、k≦kminである場合にはこのタスクを終了し、k≦kminでない場合には、ステップ209に移行し、操作軸の位置を初期位置に戻した後、ステップ201に戻る。
なお、ステップ208でk≦kminである場合は、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値が判定基準値未満であるので、可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力してもよい。
ステップ206で残留偏差が許容値より大きいと判定されたときには、ステップ210に移行してその時のトルク設定信号の電圧値Vkを判定値として出力し、ステップ211で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクの値をデータテーブルから読み出して出力する。次いでステップ212で電圧値Vkに対応するモータの出力トルクを判定基準値と比較する。その結果、モータの出力トルクが判定基準値未満であると判定された場合には以後何もしないでこのタスクを終了する。この場合は、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値が判定基準値未満であるので、可変コンデンサの機構部の状態は正常である。従って、このとき可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力してもよい。また、ステップ212でモータの出力トルクが判定基準値以上であると判定されたときには、ステップ213で、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。
上記のアルゴリズムによる場合には、ステップ207により、異常判定部11が構成され、ステップ201ないし205とステップ208ないし211とにより、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16が構成される。
またステップ212及び213により、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15が構成される。
(第5の発明の実施形態)
本願の第5の発明では、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構と、操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部と、操作軸位置検出部により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御するモータ制御部とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
本実施形態においては、最初の段階から、モータ7a,7bの出力トルクを可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態であると判断できる最小値に設定し、予め設定された検査対象範囲で操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を行って、この過程で求められた残留偏差の大きさから、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを判定する。
このように構成する場合には、マイクロプロセッサに所定のタスクを行わせることにより、図11に示したように、可変インピーダンス素子の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御(検査時位置制御)を行わせるように目標位置設定部及びモータ制御部を制御する検査制御部30と、検査の結果を出力する検査結果出力部15とを構成する。
検査制御部30は、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態にあるときに可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値を検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく操作軸の目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせるように構成する。
また検査結果出力部15は、検査制御部がモータ7a,7bの出力トルクを検査時トルクに設定した状態での操作軸の位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部13に行わせているときに生じる残留偏差の大きさから可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成する。
上記のように構成すると、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲内にあるときに、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲にあると判定することができ、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲の上限を超えているときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲を外れていると判定することができる。
このように構成すると、モータの出力トルクを変更しながらモータ制御を繰り返し行なう必要がないので、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲を外れているか否かを短時間で判定することができる。
上記のようにインピーダンス整合装置を構成する場合にマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムを示すフローチャートを図7に示した。図7に示したタスクは、インピーダンス整合装置の運転停止時に検査指令が与えられたときに、検査制御部30が目標値設定部9及びモータ制御部13に指令を出して、目標値設定部9及びモータ制御部13にそれぞれ用意されている検査時位置制御用のプログラムを起動させることにより実行されるものである。検査制御部30を構成するためのプログラムは、例えばメインルーチンに設けておく。
図7に示したタスクでは、先ず図示していないステップで、モータにより可変コンデンサの操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。もちろん、そのときの現在位置を初期位置とする場合には、このステップは不要である。
次にステップ301で、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態で、可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値に対応する変数kを定める。
そして、ステップ302でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップ303で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップ304でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。次いでステップ305で、先ず目標位置設定部が、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
また、ステップ306で、可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えている場合には、ステップ307に移行する。ステップ307では、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。
ステップ306で残留偏差が許容値より大きくはないと判定されたときには、ステップ308で現在位置が最終目標位置であるか否かを判定する。ステップ308で現在位置が最終目標位置でないと判定されたときにはステップ305に戻る。またステップ308で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。なお、このとき可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力するようにしてもよい。またステップ305とステップ306との間またはステップ306とステップ308との間に、残留偏差を出力するステップを追加するようにしてもよい。
なお、図示の例では、変数kを定めた後、対応するトルク設定信号の電圧値Vkを読み出しているが、この構成では、トルク設定信号は1種類であるので、予め定めた電圧値Vkを直接モータ駆動部に与えるようにしてもよい。
図7のアルゴリズムによる場合、図11に示された検査制御部30は、目標位置設定部9及びモータ制御部13に指令を出して、ステップ301ないし306及びステップ308を実行させる。このアルゴリズムによる場合には、ステップ306及び307により、検査結果出力部15が構成される。
(第6の発明の実施形態)
第5の発明においては、可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの「最小値」を検査時トルクとするとしたが、本願の第6の発明においては、可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの「最小値よりも大きなトルク」を検査時トルクとする。
第6の発明の実施形態では、検査制御部30が、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態にあるときに可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して操作軸の位置を目標位置に近づける検査時位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせるように構成される。
この場合も検査結果出力部15は、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差の大きさから可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
本実施形態による場合も、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲内にあるときに、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲にあると判定することができ、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置制御が完了した時点での該操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容範囲の上限を超えているときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲を外れていると判定することができる。
上記のように、検査時トルクを、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態にあるときに検査対象範囲でモータ制御部13による制御を行った際に可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値よりも大きく設定する理由は、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化が僅かに進んだ程度では、未だ残留偏差が許容値内に収まっているようにするためである。
検査時トルクを、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値とした場合には、正常な状態から正常な状態を外れていると判定される状態になるまでの間に余裕があまりないため、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化が少し進んだだけで、残留偏差が許容値を超える可能性がある。そうなると、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化の進み具合を予測する目的で取得する残留偏差のデータ数が不足し、劣化の進み具合の解析を的確に行うことができないおそれがある。
これに対し、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとした場合には、残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値を検査時トルクとした場合よりも、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化が更に進んだ状態になってから、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れたとの判定がなされることになるが、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化の進み具合を予測するための残留偏差のデータをより多く得ることができる。
上記のように構成した場合も、モータ7a,7bの出力トルクを変更しながらモータ制御を繰り返し行なう必要がないので、正常な状態かを短時間で判定することができる。また、残留偏差の大きさから現時点における可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態の度合いを知ることができる。
上記のように構成する場合にマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートを図8に示した。図8に示したタスクは、インピーダンス整合装置の運転停止時に検査指令が与えられたときに検査制御部30が目標値設定部9及びモータ制御部13に指令を出して、目標値設定部9及びモータ制御部13にそれぞれ用意されている検査時位置制御用のプログラムを起動させることにより実行されるものである。
図8のアルゴリズムによる場合には、まず、図示してないステップで、モータにより可変コンデンサの操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。もちろん、そのときの現在位置を初期位置とする場合には、このステップは不要である。
次に、このアルゴリズムによる場合には、ステップ401で、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態で、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの最小値よりも大きなトルクに対応する変数kを定める。そして、ステップ402でトルク設定信号電圧値対トルクテーブル(データテーブル)からトルク設定信号の電圧値(デジタル値)Vkを読み出す。次いでステップ403で、読み出した電圧値Vkをモータ駆動部に与え、ステップ404でトルク設定完了信号を目標位置設定部に与える。このとき、ステップ405に示すように、目標位置設定部は、可変コンデンサの操作軸の目標位置を設定する。可変コンデンサの操作軸の目標位置が設定されると、モータ駆動部10がモータ7a,7bに駆動電流を流して、該モータを回転させ、可変コンデンサの操作軸を目標位置に向けて変位させる。
なお、図示の例では、変数kを定めた後、対応するトルク設定信号の電圧値Vkを読み出しているが、本実施形態でも、トルク設定信号は1種類であるので、予め定めた電圧値Vkを直接モータ駆動部に与えるようにしてもよい。
モータの駆動が完了した時点でステップ406を実行して、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を求め、この残留偏差を出力する。なお、後述するステップ407とステップ409との間で残留偏差を出力するように構成してもよい。
出力された残留偏差の大きさを監視することにより、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化の進み具合を予測することができる。出力された残留偏差は、外部の記憶装置に記憶させてもよいし、インピーダンス整合装置に記憶部を設けてもよい。また、出力された残留偏差をモニタで表示できるようにしてもよい。
また、ステップ407で、この残留偏差を許容値と比較する。その結果残留偏差が許容値を超えている場合には、ステップ408に移行する。ステップ408では、検査の対象とした可変コンデンサの機構部の状態が正常な範囲から外れているとして、メンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。
ステップ407で残留偏差が許容値より大きくはないと判定されたときには、ステップ409で現在位置が最終目標位置であるか否かを判定し、ステップ409で現在位置が最終目標位置でないと判定されたときにはステップ405に戻る。またステップ409で現在位置が最終目標位置であると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。このとき、可変コンデンサの機構部の状態が正常であることを示す情報を出力するようにしてもよい。
図8のアルゴリズムによる場合、図11に示された検査制御部30は、目標位置設定部9及びモータ制御部13に指令を出して、ステップ401ないし405、ステップ407及びステップ409を実行させる。このアルゴリズムによる場合には、ステップ407及び408により、検査結果出力部15が構成される。
上記の説明では、モータの出力トルクを設定するトルク設定信号をDAコンバータを用いて発生させるとしたが、一定の直流電圧を分圧する、分圧比が異なる抵抗分圧回路を多数設けて、これらの抵抗分圧回路の出力電圧をスイッチで切り換えて選択的に出力することにより、電圧値が異なる多数のトルク設定信号を発生させるようにしてもよい。例えば、図4に示したように、一定の直流電圧Vccを出力する直流電源の正極端子に一端が接続された抵抗器R0の他端に多数の固定抵抗器R1,R2,…の一端を接続するとともに、抵抗器R1,R2,…の他端をスイッチSW1,SW2,…を通して直流電源の負極端子(図示の例では接地されている)に接続して、スイッチSW1,SW2,…を選択的にオン状態にすることにより、大きさが異なる電圧値を有するトルク設定信号Vkを発生させるようにした分圧回路を用いてもよい。図4に示したような分圧回路としては、IC化されたものを入手することができる。
上記の実施形態において、可変コンデンサVC1(可変インピーダンス素子3a)及び可変コンデンサVC2(可変インピーダンス素子3b)の検査は双方同時に行なわせてもよく、個別に行なわせてもよい。
(第7の発明の実施形態)
本願の第7の発明は、第5の発明及び第6の発明に適用されるもので、本発明においては、図11に示されているように、検査時位置制御が行われた際に操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在していた残留偏差を出力する残留偏差出力部31が設けられる。
モータの出力トルクを一定とした場合、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて、可変コンデンサの操作軸の回転が妨げられるようになる。可変コンデンサの機構部の劣化の進み具合と残留偏差の大きさとは比例関係を示すとは限らないが、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて、残留偏差が大きくなる傾向があることは確かである。従って、第5の発明及び第6の発明のように、モータの出力トルクを一定値を有する検査時トルクに設定して、予め設定された検査対象範囲において、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を行い、このとき残留偏差出力部31から出力される残留偏差の大きさを監視するようにすれば、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の劣化の進み具合を予測することができる。
(第8の発明ないし第14の発明の実施形態で用いる装置の構成)
上記の各実施形態においては、インピーダンス整合装置に検査機能を持たせたが、インピーダンス整合装置とは別個にインピーダンス整合装置用可変インピーダンス素子の検査装置を構成することもできる。
図2はインピーダンス整合装置とは別個に構成される可変インピーダンス素子の検査装置に本発明を適用した例を示したものである。図2に示した検査装置の構成は、電源1及びチャンバ(負荷)2に接続される整合回路が設けられていない点及び入力検出部が設けられていない点を除き、図1に示したインピーダンス整合装置と同様である。
図2において、3及び4は検査対象としての第1及び第2の可変インピーダンス素子である。これらの可変インピーダンス素子は例えば、第1及び第2の可変コンデンサVC1及びVC2である。第1の可変コンデンサVC1に対しては、第1のモータ7aを駆動源として該第1の可変コンデンサの操作軸を操作する第1の操作機構が設けられ、第2の可変コンデンサVC2に対しては、第2のモータ7bを駆動源として該第2の可変コンデンサの操作軸を操作する第2の操作機構が設けられている。
可変コンデンサVC1,VC2を操作するモータ7a、7bとしては、パルスモータやステップモータが用いられる。各操作機構は、各モータの回転を各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により構成することができる。例えば、各モータの回転軸と各可変コンデンサの操作軸とを接続するカップリングを用いた機構により構成することができる。場合によっては、各モータの回転を減速機により減速して各可変コンデンサの操作軸に伝達する機構により構成することもできる。
また第1の可変コンデンサVC1の操作軸の位置を検出する第1の位置検出器8aと、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の位置を検出する第2の位置検出器8bとを備えた操作軸位置検出部8が設けられ、第1及び第2の位置検出器8a及び8bの出力信号Spa及びSpbが、目標位置設定部9に入力されている。第1及び第2の位置検出器8a及び8bは、例えば、可変コンデンサVC1及びVC2のそれぞれの操作軸が微少角度回転する毎に位置検出パルスを発生するエンコーダを用いて構成することができる。
目標位置設定部9は、検査を行う際の可変コンデンサの操作軸の最終目標位置(例えばそれぞれのリアクタンスを最大にする位置)を設定するとともに、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を最終目標位置まで動かすべく、モータ7a,7bの駆動量(モータ7a,7bに与えるパルス数)を示す目標位置設定信号Sda及びSdbを出力する。検査時に適した可変コンデンサの操作軸の目標位置は予め定めておいた一定の位置でもよく、検査を行う際に外部から入力された位置でもよい。
可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、ステップモータ7a,7bで可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を駆動する場合、各操作軸を現在位置から最終目標位置まで移動させるために必要な数のパルスをモータ駆動部10a,10bからモータ7a,7bに一度に与えても、モータは応答できないため、モータ駆動部10a,10bからモータ7a,7bに与えるパルスの数は、モータが正常に応答し得る範囲の数に制限する必要がある。
そのため、目標位置設定部9は、可変コンデンサの操作軸を現在位置から最終目標位置まで動かすために必要な駆動量を示す目標位置設定信号をモータ駆動部10a,10bに与えるのではなく、操作軸の1回当たりの駆動量をモータが正常に応答し得る範囲の大きさに制限して、可変コンデンサの操作軸の位置を最終目標位置に向けて段階的に近づけていくように制御する。
即ち、目標位置設定部9は、可変コンデンサの最終目標位置を演算したときに、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a,10bに与える。目標位置設定部9はまた、目標位置設定信号Sda及びSdbを異常判定部11に与えて、異常判定部11において、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置、及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置をそれぞれ監視させる。これら一連の過程は、所定の処理時間内に行われる。モータが可変コンデンサの操作軸を現在位置から暫定目標位置まで動かすために必要な時間が上記処理時間よりも長いと、モータが正常に回転していても、操作軸の現在位置と暫定目標位置との残留偏差が許容値を超えてしまい、異常判定部が異常判定を行ってしまう。そこで、残留偏差が許容値を超えているか否かの判定を正常に行わせるために、目標位置設定部9は、上記処理時間内にモータが駆動できるだけの大きさに制限して上記駆動量を演算し、その駆動量に基づいて可変コンデンサの操作軸の暫定目標位置を演算する。
目標位置設定部9は、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の位置が暫定目標位置に達したときに、新たなモータの駆動量と、その駆動量に相応した暫定目標位置とを演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a,10bに与えると共に、異常判定部11に与えて異常判定を行わせる。これらの動作を繰り返しながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。すなわち、暫定目標位置をそのときの目標位置としながら、最終目標位置に向けて移動していく。
なお、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々と変化する負荷の状態に対応させるため、上記の所定の処理時間が短く設定されることが多い。しかし、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、負荷の状態を考慮する必要がないため、上記の所定の処理時間を長く設定することが可能である。そのため、機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を行う際には、所定の処理時間を長くすることで、暫定目標位置を設定することなく異常判定を行わせることが可能となる。この場合は、最終目標位置が唯一の目標位置になる。もちろん、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際と同様に、暫定目標位置を設定するようにしてもよい。
検査時における操作軸の初期位置は、そのときの現在位置のままでもよいが、予め設定した初期位置としてもよい。検査時における操作軸の初期位置を予め設定した初期位置とする場合、検査を開始する前にモータによって操作軸を予め設定した初期位置まで動かしておく。
上記のように、初期位置を任意の位置に設定し得るようにしておくと共に、最終目標位置を任意に設定し得るようにしておくと、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態にあるか否かの検査を、操作軸の任意の回転範囲に対して行うことが可能になる。例えば、操作軸の回転範囲のうち、使用頻度の高い範囲、すなわち、摩耗度合いが高いと思われる範囲について検査を行えば、検査時間を短縮できるので効率的に検査を行うことが可能となる。
なお、いずれの場合であっても、初期位置から最終目標位置までが、検査対象範囲となる。
11は異常判定部で、この異常判定部は、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差、及び第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差をそれぞれ監視して、目標位置設定部9から第1のモータ駆動部10a及び第2のモータ駆動部10bにそれぞれ演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbを与えた後、モータ7a及び7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変コンデンサVC1の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変コンデンサの機構部の状態が異常である(正常な範囲から外れている)との異常判定を行う。また、第2の可変コンデンサVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変コンデンサの機構部の状態が異常であるとの異常判定を行う。
可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との「残留偏差」は、モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点で、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差であり、この偏差は目標位置設定部9で演算される。ここで、「モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点」とは、通常は、検出の遅れを考慮して、モータが実際に駆動したと考えられる時点を示す。
可変コンデンサの操作軸の現在位置の検出には遅れが伴うことが避けられず、可変コンデンサの操作軸の目標位置のデータと、その目標位置に対応する現在位置の検出データとは、同時に発生するものではないので、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検知するためには何らかの工夫を要する。
例えば、目標位置設定部9で目標位置のデータと現在位置の検出データとから偏差を演算する際に、検出の遅れを考慮して現在位置の検出データを読み込むタイミングを遅らせる処理を行うことにより、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検出することができる。また、目標位置設定部9に目標位置のデータと現在位置の検出データとを一旦記憶するメモリを設けて、現在位置の検出データを遅れを考慮してメモリから読み出す等の処理を行うことによっても、上記の偏差を正確に検出することができる。
異常判定部11は、第1の可変コンデンサの機構部が異常であるとの異常判定を行ったときに第1の異常判定信号Saaを第1の出力トルク設定部12aに与え、第2の可変コンデンサの機構部が異常であるとの異常判定を行ったときに第2の異常判定信号Sabを第2の出力トルク設定部12bに与える。
第1の出力トルク設定部12a及び第2の出力トルク設定部12bは、可変コンデンサの検査時に、第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクを設定する部分で、可変コンデンサの検査時に、モータ7a及び7bの出力トルクを、小さい値から大きい値まで値を異ならせて段階的に変化させる。
第1のモータ駆動部10aは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第1のモータ7aに駆動パルスを与えるとともに、第1のモータ7aの出力トルクを第1の出力トルク設定部12aにより設定されたトルクに等しくするように、該第1のモータに流す駆動電流を調整する。
また第2のモータ駆動部10bは、目標位置設定部9により設定されたパルス数だけ第2のモータ7bに駆動パルスを与えるとともに、第2のモータ7bの出力トルクを第2の出力トルク設定部12bにより設定されたトルクに等しくするように、第2のモータに流す駆動電流を調整する。
可変コンデンサの検査時には、モータ7a及び7bの出力トルクを細かく調整し得るようにしておくことが好ましい。そのため、本実施形態でも、図3に示すようにモータ駆動部10a,10bを、制御端子に与えられるトルク設定電圧Vkの大きさに応じてモータ7a,7bに流す駆動電流を調整し得る機能を有するドライバICにより構成するとともに、出力トルク設定部12a,12bの出端子とモータ駆動部10a,10bをそれぞれ構成するドライバICの制御端子との間にDAコンバータ14a,14bを設けて、出力トルク設定部12a,12bがそれぞれ出力したトルク設定信号電圧値(デジタル値)をアナログ電圧Vkに変換してモータ駆動部10a,10bに与えるようにしている。
出力トルク設定部12a,12bにそれぞれ接続されたメモリ20a,20bには、多数のトルク設定信号電圧(デジタル値)と、該多数のトルク設定信号電圧のアナログ変換値をそれぞれモータ駆動部10a,10bを構成するドライバICに与えたときに得られるモータの出力トルクとの間の関係を与えるデータテーブルを記憶させておく。このデータテーブルにおいては、トルク設定信号電圧の大きさが大きくなっていくに従って、設定されるモータの出力トルクが大きくなっていくようにトルク設定信号電圧の大きさとモータの出力トルクとの間の関係を定めて、各トルク設定信号電圧値と対応するモータの出力トルクとを1対1で対応させてテーブルの形で記憶させておく。
出力トルク設定部12a,12bは、可変コンデンサの検査を行なう際に、メモリ20a,20bからトルク設定信号電圧値を小さい順に読み出して、DAコンバータ14a,14bを介してモータ駆動部10a,10bに与える。
(第8の発明の実施形態)
本願の第8の発明の実施形態においては、操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせて操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、この判定対象値から可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行う。
即ち、本実施形態においては、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータ7a,7bの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求める判定対象値検出部16と、求められた判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設けることにより、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な範囲から外れているか否かの検査を行う。
本実施形態のように構成すると、インピーダンス整合装置に組み込まれる前の可変コンデンサVC1及びVC2の単品を検査対象として、その機構部の状態が正常な範囲にあるか否かを検査することができるため、インピーダンス整合装置を組立てる際に可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の性能のチェックを行うことができ、機構部に異常がある可変コンデンサVC1及びVC2が装置に組み込まれるおそれを無くすことができる。また可変コンデンサVC1及びVC2のメンテナンス時に、可変コンデンサVC1及びVC2をインピーダンス整合装置から外した状態でその機構部の性能を確認できるため、メンテナンス作業を容易にすることができる。
(第9の発明の実施形態)
第9の発明の実施形態においては、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部13に行わせて操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を求める過程を、モータ7a,7bの出力トルクを変更しながら繰り返し行なうことにより、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータ7a,7bの出力トルクの最大値を判定対象値として求める判定対象値検出部16と、求められた判定対象値を判定基準値と比較して、判定対象値が判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設ける。
このように構成した場合にも、インピーダンス整合装置に組み込まれる前の可変コンデンサVC1及びVC2の単品を検査対象として、その機構部の状態が正常な範囲にあるか否かを検査することができる。また可変コンデンサVC1及びVC2のメンテナンス時に、可変コンデンサVC1及びVC2をインピーダンス整合装置から外した状態でその機構部の性能を確認できる。
(第10の発明の実施形態)
本実施形態では、異常判定部11を利用して、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査する。
本実施形態では、モータ7a,7bを駆動源として、検査の対象とする可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を操作する操作機構と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、操作軸の目標位置を設定するとともに設定した目標位置と操作軸位置検出部8により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータの駆動量を演算する目標位置設定部9と、モータの出力トルクを設定するトルク設定信号を出力する出力トルク設定部及びトルク設定信号に応じてモータに流す駆動電流の大きさを調整し得る機能を有するモータ駆動部10を備えて、モータの出力トルクをトルク設定信号により設定されたトルクに等しくした状態でモータを目標位置設定部9により演算された駆動量だけ回転させるようにモータ駆動部10を制御するモータ制御部13と、操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部11と、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部13によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号の大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16と、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部15とを設けることにより、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の検査を行う。
上記のようにモータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程をトルク設定信号Vkの大きさを増大させながら繰り返し行なわせた場合に、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行なわれなくなったときのトルク設定信号の大きさは、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値である。
前述のように、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせたときに操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値は、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていくため、残留偏差を許容値以下に収めるために必要なモータの出力トルクの最小値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにすると、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否か(メンテナンス時期が近いか否か、寿命が近いか否か、機構部に異常があるか、機構部が故障しているか否かなど)を的確に判定することができる。
図2に示した例でも、判定対象値検出部16が、判定対象値Vka及びVkbをそれぞれ第1の検査結果出力部15a及び15bに与えるとともに、外部にも出力するようになっている。
(第11の発明の実施形態)
本実施形態においても、異常判定部11を利用して、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査する。
本実施形態では、モータ7a,7bを駆動源として可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を操作する操作機構と、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の目標位置を設定して設定した目標位置と操作軸位置検出部8により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータの駆動量を演算する目標位置設定部9と、モータの出力トルクを設定するトルク設定信号を出力する出力トルク設定部12及びトルク設定信号に応じてモータに流す駆動電流の大きさを調整し得る機能を有するモータ駆動部10を備えて、モータの出力トルクをトルク設定信号により設定されたトルクに等しくした状態でモータを目標位置設定部9により演算された駆動量だけ回転させるようにモータ駆動部10を制御するモータ制御部13と、操作軸の目標位置と現在位置とを監視してモータ制御部による制御が行われた時点での目標位置と現在位置との残留偏差が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部11と、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲として、該検査対象範囲でモータ制御部によりモータを制御したときに異常判定部が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号の大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行なわれたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求める判定対象値検出部16と、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクを判定基準値と比較して、判定対象値または該判定対象値から求めたモータの出力トルクが判定基準値以上であるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れていることを示す検査結果を出力する検査結果出力部とを設けることによって、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行う。
モータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせた場合に、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさは、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値である。
前述のように、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を零に近づける制御をモータ制御部に行わせた場合に操作軸の現在位置と目標位置との間に存在する残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値も、可変コンデンサの機構部の劣化が進むにつれて大きくなっていくため、上記のように、残留偏差が許容値を超える状態を招くモータの出力トルクの最大値を判定対象値として求めて、求められた判定対象値を判定基準値と比較するようにしても、可変コンデンサの機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができる。
図2に示した実施形態において、モータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを増加させながら繰り返し行なわせて、検査対象範囲の全範囲で初めて異常判定が行われなくなった時のトルク設定信号の大きさを判定対象値として求めるように判定対象値検出部16を構成する場合にマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートは図5に示したものと同様でよい。
また、モータ制御部10によりモータ7a,7bを制御したときに異常判定部11が異常判定を行なうか否かを判定する過程を、トルク設定信号Vkの大きさを減少させながら繰り返し行なわせて、初めて異常判定が行われたときのトルク設定信号の大きさを判定対象値として求めるように判定対象値検出部を構成する場合にマイクロプロセッサに実行させるプログラムのアルゴリズムを示すフローチャートは図6に示したものと同様でよい。
(第12の発明の実施形態)
本願の第12の発明の実施形態では、本発明に係わる可変インピーダンス素子の検査装置が、モータを駆動源として可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を操作する操作機構と、操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部9と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部8と、操作軸位置検出部8により検出される操作軸の現在位置と目標位置設定部により設定された目標位置との偏差を零に近づけるようにモータを制御して操作軸の位置制御を行うモータ制御部13と、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かの検査を行うための操作軸の位置制御を行わせるように目標位置設定部9及びモータ制御部13を制御する検査制御部30(図11参照)と、検査の結果を出力する検査結果出力部15とを備えた構成とされる。
この場合、検査制御部30は、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態にあるときに可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値を検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して目標位置設定部9及びモータ制御部13に操作軸の位置制御を行わせるように構成する。
また検査結果出力部15は、検査制御部がモータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態での操作軸の位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせているときに生じる残留偏差の大きさから可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
この場合、位置制御が完了した時点での操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさが前記許容範囲にあるときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲にあると判定することができ、位置制御が完了した時点で操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差の大きさが上記許容範囲の上限を超えているときに可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲から外れていると判定することができる。
このように構成した場合、現時点における可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態の度合いを知ることはできないが、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、モータ制御部による制御を一度行うだけで、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを検査することができるため、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な範囲にあるか否かの検査を短時間で行うことができる。
(第13の発明の実施形態)
第13の発明では、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの「最小値」を検査時トルクとしているが、第10の発明では、可変インピーダンス素子の機構部が正常な状態にあるときに可変インピーダンス素子の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータの出力トルクの「最小値よりも大きなトルク」を検査時トルクとする。
即ち、第13の発明の実施形態においては、検査制御部30が、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行う際に、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の予め設定された変位の範囲を検査対象範囲とし、可変コンデンサVC1及びVC2の機構部が正常な状態にあるときに可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸の実際の位置と目標位置との間に存在する残留偏差を許容範囲に収めることができるモータ7a,7bの出力トルクの最小値よりも大きなトルクを検査時トルクとして、モータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態で、可変コンデンサVC1及びVC2の操作軸を検査対象範囲の全範囲に亘って変位させるべく目標位置を設定して目標位置設定部及びモータ制御部に操作軸の位置制御を行わせるように構成される。この場合も、検査結果出力部15は、検査制御部30がモータの出力トルクを検査時トルクに設定した状態での操作軸の位置制御を目標位置設定部及びモータ制御部に行わせているときに生じる残留偏差の大きさから可変コンデンサVC1及びVC2の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを示す検査結果を出力するように構成される。
(第14の発明の実施形態)
上記第12の発明及び第13の発明のように構成する場合には、検査制御部30が目標位置設定部9及びモータ制御部13を制御しているときに生じる残留偏差の大きさを出力する残留偏差出力部31(図11参照)を設けておくことが好ましい。このような残留偏差出力部31を設けておくと、可変コンデンサVC1及びVC2の検査を行った際に得られた残留偏差の大きさから、可変コンデンサVC1及びVC2の寿命予測などの解析を行うことができる。本明細書では、第12の発明または第13の発明の構成に加えて更に残留偏差出力部31を備えた発明を第14の発明としている。
上記の説明では、可変インピーダンスが可変コンデンサであるとして実施形態の説明をしたが、可変コンデンサ以外の可変インピーダンス素子の検査を行なう場合にも本発明を適用できることはもちろんである。