可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むと、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に発生する残留偏差が大きくなっていくため、インピーダンス整合動作を高精度で行うことができなくなるという問題があった。
上記のように可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりモータにかかる負荷トルクが増大して、可変インピーダンス素子の操作を正常に行うことができなくなった場合には、電源と負荷のインピーダンス整合ができなくなるため、整合装置の修理や交換などのメンテナンス作業を行う必要があり、その作業に長い時間を要する。
整合装置の本来の役割である整合動作が機能しなくなると、半導体製造プロセス等を中断することになるが、その様な事態は極力避ける努力が必要である。そのため、従来は、可変インピーダンス素子の劣化時期を予測して、そのメンテナンス周期を短く設定したり、整合装置の交換を早めに行う等の対応を推奨していたが、使用条件によっては、過剰にメンテナンスを行うことになり、更なる改善を行う余地がある。
可変インピーダンス素子のメンテナンス周期を必要以上に短く設定したり、装置の交換を早めに行ったりすることなく、インピーダンス整合装置の性能の維持を経済的に図るためには、インピーダンス整合装置の機構部の状態が正常な状態から外れているか否かを的確に検査することができるようにしておくことが好ましい。ここで、「インピーダンス整合装置の機構部の状態が正常な状態から外れている状態」とは、メンテナンス時期が近い状態、寿命が近い状態、機構部が故障している状態などである。
通常、機械的な可動部を有する装置の機構部が正常であるか否かの判定は、装置の運転時間により行っている。しかしながら、インピーダンス整合装置の場合は、可変インピーダンス素子の操作軸が操作される時間や回数が負荷の状態により大きく異なり、予測が不能であるため、装置の運転時間からその機構部が正常であるか否かを的確に判定することは困難である。
本発明の目的は、可変インピーダンス素子の寿命が近いことを予知することができるようにして、メンテナンスを的確に行うことができるようにしたインピーダンス整合装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、可変インピーダンス素子の機構部の劣化がある程度進んだ状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に発生する残留偏差を極力小さい値に抑制してインピーダンス整合動作を行わせることができるようにしたインピーダンス整合装置を提供することにある。
本願においては、上記の課題を解決するために、以下に示すように、第1ないし第20の発明が開示される。
(1)第1の発明
第1の発明は、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構と、インピーダンスの整合を図るために必要な操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部と、可変インピーダンス素子の操作軸の位置を目標位置設定部で設定された目標位置に一致させるようにモータを制御するモータ制御部と、モータ制御部による制御が完了したと見なされる時点で目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値を設定された許容値と比較して前記残留偏差の値が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
なお本明細書において、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に生じる残留偏差は、上記のように、モータ制御部による制御が完了したと見なされる時点で目標位置と現在位置との間に存在している偏差である。本明細書において、単に「残留偏差」といったり、「目標位置と現在位置との間の残留偏差」といったりする場合の「残留偏差」も同じ意味である。
本発明は、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んでいない状態では上記残留偏差が小さく、機構部の劣化が進んで行くに従って残留偏差が大きくなっていくこと、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているといえる程度まで可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むまでの間には異常判定がある程度の回数行われること、及び可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んでいない状態では、該可変インピーダンス素子を小さいトルクで操作できることに着目して、寿命予測が可能な形で異常判定を行うとともに、可変インピーダンス素子の劣化がある程度進んだ状態でも、残留偏差を極力小さくして、高精度でインピーダンス整合動作を行わせることができるようにしたものである。
本発明においては、最初残留偏差と比較する許容値を比較的小さい初期許容値に設定するとともに、モータの出力トルクを比較的小さい初期トルクに設定して異常判定を行わせ、異常判定が何回か行われるようになって、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているといえる程度まで機構部の劣化が進んでいると判定されたときに、残留偏差と比較する許容値を初期許容値よりも大きい値を有する異常検出後許容値に切り替えて異常判定を行わせるとともに、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替える。
そのため第1の発明においては、異常判定部が異常判定を行った回数である異常判定回数から可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているか否かを判定するために異常判定回数と比較される判定値を設定するとともに、異常判定に用いる許容値として、異常判定回数が判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が判定値に達した後の許容値であって初期許容値よりも大きい値を有する異常検出後許容値とを設定しておく。またモータの出力トルクとして、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとを設定しておく。
この場合、異常判定部は、異常判定回数が判定値未満である間、残留偏差の値が初期許容値を超えたときに異常判定を行い、異常判定回数が判定値以上になった後は残留偏差の値が異常検出後許容値を超えたときに異常判定を行うように構成される。
またモータ制御部は、モータの出力トルクを設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とし、出力トルク設定部は、異常判定回数が判定値未満である間モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値以上になった後はモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
上記判定値は、異常判定回数から、可変インピーダンス素子の機構部が一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化しているか否かを判定するのに適した値に設定する。
また上記異常検出後許容値は、可変インピーダンス素子の機構部が、一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に生じる残留偏差の大きさに設定しておく。
上記異常検出後トルクは、基本的には、従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクと同等の大きさに設定する。上記初期トルクの大きさは、異常検出後トルクよりも小さく、かつ可変インピーダンス素子の機構部が近い将来メンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化するまでの間、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に生じる残留偏差を許容範囲に保つことができる大きさに設定しておく。即ち、可変インピーダンス素子の機構部が、一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に生じる残留偏差が異常検出後許容値を超えて異常判定部が異常判定を行うように、初期トルクの大きさを設定しておく。
上記のように、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えるようにすると、可変インピーダンスの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化した状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の大きさを小さくして、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御を行わせることができる。
上記第1の発明のように構成すると、異常判定回数、残留偏差の許容値、またはモータの出力トルクを監視しておけば、異常判定回数が判定値に達したこと、異常判定を行うために残留偏差と比較される許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったこと、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったことから、可変インピーダンス素子の機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に(メンテナンスの時期が近いといえる程度に)劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されている状態で異常判定部が異常判定を行ったときには、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
(2)第2の発明
第2の発明は、第1の発明に適用されるもので、本発明においては、異常判定回数が判定値に達したとき、残留偏差の許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったとき、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が更に設けられる。
上記のように、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているとの判定を行って警報信号を発生するメンテナンス予告判定部を設けておくと、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができるため、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
(3)第3の発明
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に適用される。本発明においては、残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されている状態で異常判定部が異常判定を行ったとき(残留偏差が異常検出後許容値を超えたとき)に可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が更に設けられる。
本発明のように構成しておくと、可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができるため、負荷で行われるプロセス(例えば半導体製造プロセス)の中断を未然に防ぐことができるだけでなく、過剰なメンテナンスが行われて人的資源が無駄に使われたり、負荷の稼働が不必要に中断したりするのを防ぐことができる。
なおメンテナンス要否判定部によりメンテナンスが必要であると判定された場合でも、少なくとも製造ラインで処理中の製品の処理が完了するまでの間は、許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることができるようにするため、上記異常検出後許容値は、残留偏差の許容値の上限値よりも少し小さく設定しておくことが好ましい。
異常検出後許容値を小さめに設定しておけば、メンテナンスが必要であると判定された状態でも、モータを駆動して、許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることができる可能性を高めることができる。メンテナンスが必要であると判定された状態でも許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることができれば、メンテナンスのために負荷の稼働を停止する前に、負荷で実行中の処理を完了させることができるため、負荷で処理が行われている製品が無駄になる確率を低くすることができる。
(4)第4の発明
第4の発明においては、異常判定部が異常判定を行った回数である異常判定回数から可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を判定するために異常判定回数と比較される判定値として、大きさが順次大きくなっていく第1ないし第m(mは2以上の整数)の判定値が設定されるとともに、許容値として、異常判定回数が第1の判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が第1の判定値に達した後の許容値であって初期許容値よりも大きく、かつ異常判定回数の多さの程度に応じて異なる値に切り替えられる異常検出後許容値とが設定される。またモータの出力トルクとして、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとが設定される。
この場合、異常判定部は、異常判定回数が第1の判定値未満である間は残留偏差の値が初期許容値を超えたときに異常判定を行い、異常判定回数が第1の判定値以上になった後は残留偏差の値が異常検出後許容値を超えたときに異常判定を行うように構成される。
異常判定部はまた、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後許容値の値を初期異常検出後許容値として、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていくように構成される。
この第4の発明においても、モータ制御部は、モータの出力トルクを設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とする。
上記出力トルク設定部は、異常判定回数が判定値未満である間、モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値以上になった後はモータの出力トルクを異常検出後トルクに設定するように構成される。
上記出力トルク設定部はまた、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくように構成される。
上記のように、異常判定回数に対して大きさが順次大きくなる第1ないし第mの判定値を設定し、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくようにすると、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んで、異常判定が行われる状態になっても、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を小さい値に抑えることができるため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ状態でも精度を大きく低下させることなく、インピーダンスの整合を図ることができる。
また上記のように、判定値を複数設定しておくと、異常判定回数に対して適当な値を有する第1の設定回数と設定しておけば、異常判定回数がこの第1の設定回数に達したときに、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に機構部の劣化が進んでいると判定することができる。
また上記のように、異常判定回数が第1の判定値未満である間残留偏差を初期許容値と比較して異常判定を行い、異常判定回数が第1の判定値以上になった後は、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に大きい値に切り替えられる異常検出後許容値と残留偏差とを比較して異常判定を行うようにしておくと、異常検出後許容値の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常検出後許容値に対して適当な値を有する第1の設定許容値を設定しておけば、異常検出後許容値がこの第1の設定許容値に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
また上記第4の発明のように構成すると、異常検出後トルクに対して適当な値を有する第1の設定トルクを設定しておくことにより、異常検出後トルクが該第1の設定トルクに達したことから、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
上記のように、第4の発明によると、異常判定回数、異常検出後許容値または異常検出後トルクの大きさを監視しておけば、異常判定回数が第1の設定回数に達したこと、異常検出後許容値が第1の設定許容値に達したこと、または異常検出後トルクが第1の設定トルクに達したことから、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていることを知ることができるため、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また第4の発明による場合には、異常判定回数が上記第1の設定回数よりも大きく設定された第2の設定回数に達したときに、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
更に、第4の発明のように構成すると、異常検出後許容値が前記第1の設定許容値よりも大きく設定された第2の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが前記第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
また第4の発明のように、第1ないし第mの判定値を設定して、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくように構成すると、異常判定回数及び異常検出後トルクから、メンテナンス時期が近づいていることの情報をきめ細かく得ることができるため、メンテナンスの計画を立てやすくすることができ、製品の製造計画との関係で最適のタイミングでメンテナンスを行うことができる。
(5)第5の発明
第5の発明は、第4の発明に適用される。本発明においては、異常判定回数が予め設定された第1の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が更に設けられる。
(6)第6の発明
第6の発明も第4の発明に適用されるもので、本発明においては、異常検出後許容値が予め設定された第1の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が更に設けられる。
第5の発明または第6の発明のように、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部を設けておけば、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができるため、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
(7)第7の発明
第7の発明は、第5の発明に適用されるもので、本発明においては、異常判定回数が前記第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が更に設けられる。
(8)第8の発明
第8の発明は、第6の発明に適用されるもので、本発明においては、異常検出後許容値が前記第1の設定許容値よりも大きい値に設定された第2の設定許容値に達したとき、または前記異常検出後トルクが前記第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が設けられる。
第7の発明または第8の発明のように、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であるか否かを判定するメンテナンス要否判定部を設けておくと、可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができるため、負荷で行われるプロセスの中断を未然に防ぐことができるだけでなく、過剰なメンテナンスが行われて人的資源が無駄に使われたり、負荷の稼働が不必要に中断したりする事態が生じるのを防ぐことができる。
(9)第9の発明
第9の発明は、第4ないし第8の発明に適用されるもので、本発明においては、異常判定部が、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分を予め定めた値とするように構成されている。
(10)第10の発明
第10の発明は、第4ないし第8の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、異常判定部が、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の当該異常検出後許容値の増分を、異常判定回数と許容値との間の予め定められた関係に基づいて決定するように構成される。
上記異常判定回数と許容値との間の予め定められた関係は、実験的に求めることができる。上記のように、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分を、異常判定回数と許容値との間の予め定められた関係に基づいて決定するようにすると、実際に使用している可変インピーダンス素子の特性に適合した形で、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分を決定することができるため、可変インピーダンス素子の機構部のメンテナンス時期の予告判定及びメンテナンスの要否の判定を的確に行わせることができる。
(11)第11の発明
第11の発明は、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構と、インピーダンスの整合を図るために必要な操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部と、可変インピーダンス素子の操作軸の位置を目標位置設定部で設定された目標位置に一致させるようにモータを制御するモータ制御部と、モータ制御部による制御が完了したと見なされる時点で操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値を設定された許容値と比較して残留偏差の値が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
本発明においては、異常判定部が異常判定を行った回数である異常判定回数と比較される判定値が設定され、モータの出力トルクとして、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとが設定される。
上記モータ制御部は、モータの出力トルクを設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部とを備えており、出力トルク設定部は、異常判定回数が設定された判定値未満である間モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が上記判定値以上になった後は前記モータの出力トルクを異常検出後トルクに設定するように構成される。
上記のように構成した場合も、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクが初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えられるため、可変インピーダンスの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化した状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の大きさを小さくして、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御を行わせることができる。
上記のように構成した場合には、異常判定回数が判定値に達したとき、又は異常検出後トルクが予め適当な値に設定した第1の設定トルクに達したときに、可変インピーダンス素子の機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化していることを知ることができ、またモータの出力トルクが異常検出後トルクに設定されている状態で異常判定が行われたときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。従って、可変インピーダンス素子のメンテナンスの管理を的確に行うことができ、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
(12)第12の発明
第12の発明は、第11の発明に適用される。本発明においては、異常判定回数が判定値に達したとき、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が更に設けられる。
上記のように、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているとの判定を行って警報信号を発生するメンテナンス予告判定部を設けると、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができるため、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
(13)第13の発明
第13の発明は、第12の発明に適用されるもので、本発明においては、モータの出力トルクが異常検出後トルクに設定されている状態で異常判定が行われたときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が更に設けられる。
(14)第14の発明
第14の発明は、電源と負荷との間に設けられて電源と負荷との間のインピーダンスの整合を図る際に操作される操作軸を有する可変インピーダンス素子と、モータを駆動源として可変インピーダンス素子の操作軸を操作する操作機構と、インピーダンスの整合を図るために必要な操作軸の目標位置を設定する目標位置設定部と、操作軸の現在位置を検出する操作軸位置検出部と、可変インピーダンス素子の操作軸の位置を目標位置設定部で設定された目標位置に一致させるようにモータを制御するモータ制御部と、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値を設定された許容値と比較して残留偏差の値が許容値を超えたときに異常判定を行う異常判定部とを備えたインピーダンス整合装置を対象とする。
本発明においては、異常判定部が異常判定を行った回数である異常判定回数と比較される判定値として、大きさが順次大きくなっていく第1ないし第m(mは2以上の整数)の判定値が設定され、モータの出力トルクとして。初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとが設定される。
本発明においても、モータ制御部は、モータの出力トルクを設定する出力トルク設定部と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするように前記モータを駆動するモータ駆動部とを備えた構成とする。
この場合、出力トルク設定部は、異常判定回数が第1の判定値未満である間モータの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が第1の判定値以上になった後はモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定するように構成される。
上記出力トルク設定部はまた、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくように構成されている。
上記第14の発明のように,異常判定回数に対して、順次大きさが大きくなる複数の判定値を設定しておくと、異常判定回数の値の大きさから、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常判定回数が第1の設定回数に達したときに、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に機構部の劣化が進んでいると判定することができる。
また上記のように構成すると、異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したことによっても、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
従って、本発明によれば、異常判定回数または異常検出後トルクを監視することにより、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいているか否かを判定することができ、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また本発明のように構成すると、異常判定回数が上記第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したとき、または異常検出後トルクが第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
更に上記のように、判定値を複数設定し、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えるようにしておくと、異常判定回数及び異常検出後トルクから、メンテナンス時期が近づいていることの情報をきめ細かく得ることができるため、メンテナンスの計画を立てやすくすることができ、製品の製造計画との関係で最適のタイミングでメンテナンスを行うことができる。
(15)第15の発明
本発明は、第14の発明に適用される。本発明においては、異常判定回数が第1の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が更に設けられている。
(16)第16の発明
本発明も第14の発明に適用される。本発明においては、異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が設けられている。
上記第15の発明または第16の発明のように、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生するメンテナンス予告判定部を設けておくと、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができるため、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
(17)第17の発明
本発明は、第14,15または16の発明に適用されるもので、本発明においては、異常判定回数が第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が更に設けられる。
(18)第18の発明
本発明は、第14,15または16の発明に適用されるもので、本発明においては、異常検出後トルクが前記第1の設定トルクよりも大きい値に設定された第2の設定トルクに達したときに、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が設けられる。
第17の発明または第18の発明のように、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部を設けておくと、可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができる。従って、負荷で行われるプロセスの中断を未然に防ぐことができ、また過剰なメンテナンスが行われるのを防いで、人的資源が無駄に使われたり、負荷の稼働が不必要に中断したりするのを防ぐことができる。
(19)第19の発明
本発明は、第14ないし第18の発明に適用されるもので、本発明においては、出力トルク設定部が、異常検出後設定トルクを増大させていく際の該異常検出後トルクの増分を、予め定めた値とするように構成される。
(20)第20の発明
本発明は、第14ないし第18の発明のいずれかに適用されるもので、本発明においては、異常判定部が、異常検出後トルクを増大させていく際の該異常検出後トルクの増分を、異常判定回数と出力トルクとの間の予め定められた関係に基づいて決定するように構成されている。
第1の発明または第11の発明によれば、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えるので、可変インピーダンスの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化した状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の大きさを小さくして、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御を行わせることができる。
第1の発明によればまた、異常判定回数が判定値に達したこと、異常判定を行うために残留偏差と比較される許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったこと、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り換えられたことから、可変インピーダンス素子の機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化していることを知ることができる。従って、異常判定回数、残留偏差の許容値、及び(または)モータの出力トルクを監視することにより、可変インピーダンス素子のメンテナンスの時期が近づいているか否かを知ることができ、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
第1の発明によればまた、残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されている状態で異常判定部が異常判定を行ったときに、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。従って、残留偏差の許容値及び異常判定部の動作を監視することにより、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であるか否かを知ることができ、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また第4の発明または第14の発明によれば、異常判定回数に対して大きさが順次大きくなる第1ないし第mの判定値を設定し、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくようにしたので、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んで、異常判定が行われる状態になっても、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を小さい値に抑えることができ、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ状態でも精度を大きく低下させることなく、インピーダンスの整合を図ることができる。
第4の発明によれば、異常判定回数から、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常判定回数に対して適当な値を有する第1の設定回数を設定しておけば、異常判定回数がこの第1の設定回数に達したときに、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度まで機構部の劣化が進んでいると判定することができる。
また第4の発明によれば、異常判定回数が第1の判定値未満である間は残留偏差を初期許容値と比較して異常判定を行い、異常判定回数が第1の判定回数に達した後は、残留偏差を、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に大きい値に切り替えられる異常検出後許容値と比較して異常判定を行うので、異常検出後許容値の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常検出後許容値が予め設定された第1の設定許容値に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。更に第4の発明によれば、異常検出後トルクに対して適当な値を有する第1の設定トルクを設定しておけば、異常検出後トルクがこの第1の設定トルクに達したことによっても、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。従って、本発明によれば、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また第4の発明によれば、異常判定回数が前記第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したときに、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができるため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができ、負荷で行われるプロセスが突然中断される事態が生じるのを防ぐことができる。更に、本発明によれば、異常検出後許容値が第1の設定許容値よりも大きい第2の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが前記第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
更に、第4の発明によれば、第1ないし第mの判定値を設定して、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくように構成したので、異常判定回数及び異常検出後トルクから、メンテナンス時期が近づいていることの情報をきめ細かく得ることができ、メンテナンスの計画を立てやすくして、製品の製造計画との関係で最適のタイミングでメンテナンスを行うことができる。
第11の発明によれば、異常判定回数が判定値以上になったときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えるようにしたので、モータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り換えられたことから、可変インピーダンス素子の機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
また第2の発明、第5の発明、第6の発明、第12の発明、第15の発明または第16の発明によれば、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているとの判定を行って警報信号を発生するメンテナンス予告判定部が設けられているため、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができ、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
更に第3の発明、第7の発明、第8の発明、第13の発明、第17の発明または第18の発明によれば、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するメンテナンス要否判定部が設けられているため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができる。従って、負荷で行われるプロセスの中断を未然に防ぐことができるだけでなく、過剰なメンテナンスが行われて人的資源が無駄に使われたり、負荷の稼働が不必要に中断したりするのを防ぐことができる。
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、本実施形態に係わるインピーダンス整合装置の全体的な構成について説明する。 図1は本発明の一実施形態に係わるインピーダンス整合装置の構成を示したもので、同図において1は高周波電源、2は半導体製造装置等のプロセスチャンバである。プロセスチャンバ2内にはプラズマ発生装置等の、高周波電源1の負荷が収容されている。
3a及び3bは高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2との間に設けられた第1及び第2の可変インピーダンス素子である。第1の可変インピーダンス素子3aは、高周波電源1及びプロセスチャンバ2(負荷)に対して並列に接続され、第2の可変インピーダンス素子3bは、高周波電源1及びプロセスチャンバ2(負荷)に対して直列に接続されている。
本実施形態では、第1の可変インピーダンス素子3aが第1の可変コンデンサVC1からなり、第2の可変インピーダンス素子3bが第2の可変コンデンサVC2からなっている。第1の可変コンデンサVC1及び第2の可変コンデンサVC2としては真空可変コンデンサが用いられている。
図示の例では、第2の可変インピーダンス素子3bと負荷との間にインダクタ5が挿入されている。また負荷に入力される電圧Vinと、電流Iinと、電圧Vinと電流Iinとの間の位相差θinとを検出する入力検出部6が、高周波電源1と第2の可変インピーダンス素子3bとの間に設けられている。入力検出部6による電圧Vin、電流Iinおよび位相差θinの検出方法は、周知であるので説明を省略する。
第1の可変インピーダンス素子3aに対しては、第1のモータ7aを駆動源として該第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸を操作する第1の操作機構が設けられ、第2の可変インピーダンス素子3bに対しては、第2のモータ7bを駆動源として該第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸を操作する第2の操作機構が設けられている。
インピーダンス整合装置の可変インピーダンス素子3a,3bを操作するモータ7a,7bとしては、パルスモータやステップモータが多く用いられる。本実施形態では、モータ7a及び7bとしてステップモータを用いるものとする。各操作機構は、各モータの回転を各可変インピーダンス素子の操作軸に伝達する機構により構成することができる。例えば、各モータの回転軸と各可変インピーダンス素子の操作軸とを接続するカップリングを用いた機構により各操作機構を構成することができる。場合によっては、各モータの回転を減速して各可変インピーダンス素子の操作軸に伝達する機構により各操作機構を構成することもできる。
また第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の位置を検出する第1の位置検出器8aと、第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の位置を検出する第2の位置検出器8bとを備えた操作軸位置検出部8が設けられ、第1及び第2の位置検出器8a及び8bの出力信号Spa及びSpbが、入力検出部6から得られる入力電圧検出信号Sv、入力電流検出信号Si及び位相差検出信号Sθとともに目標位置設定部9に入力されている。
目標位置設定部9は、入力検出部6により検出された入力電圧Vin及び入力電流Iinを用いて、インピーダンス整合装置の入力端(入力検出部6の入力端)から負荷側を見たインピーダンスを演算により求めて、高周波電源1とプロセスチャンバ(負荷)2とのインピーダンス整合を行なうために必要な可変インピーダンス素子3a及び3bのそれぞれの操作軸の目標位置を演算し、演算した目標位置と操作軸位置検出部により検出された操作軸の現在位置との偏差を零にするために必要なモータ7a,7bの駆動量を演算する。
図2に示されているように、目標位置設定部9は、目標位置演算部9Aと、偏差演算部9Bと、駆動量演算部9Cとにより構成することができる。
目標位置演算部9Aは、インピーダンス整合装置の入力端から伝送線路を経由し高周波電源1側を見た電源側インピーダンス(通常は50Ω)と、インピーダンス整合装置の入力端からプロセスチャンバ(負荷)2側を見た負荷側インピーダンスとを整合させるために必要な可変インピーダンス素子3a及び3bのそれぞれの操作軸の目標位置を演算する。
この目標位置演算部9Aは、例えば、インピーダンスの整合を図るために必要な可変インピーダンス素子3a及び3bのリアクタンス値を目標リアクタンス値として演算する目標リアクタンス値演算手段と、各可変コンデンサに対して予め求めた操作軸の回転角度位置と各可変コンデンサの静電容量との間の関係を与えるマップを用いて、演算された各目標リアクタンス値に対応する各可変コンデンサの操作軸の回転角度位置(目標位置)を演算する操作軸回転角度位置演算手段とにより構成することができる。
偏差演算部9Bは、第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の演算された目標位置と、第1の位置検出器8aにより検出された現在位置との間の偏差を演算する。
駆動量演算部9Cは、上記偏差を零にするために必要なステップモータ7aの駆動量(ステップモータ7aに与えるパルス数)を演算し、演算した駆動量(パルス数)を示す目標位置設定信号Sdaを第1のモータ駆動部10aに与える。
偏差演算部9Bはまた、第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の演算された目標位置と、第2の位置検出器8bにより検出された現在位置との偏差を演算する。
駆動量演算部9Cは、この偏差を零にするために必要なステップモータ7bの駆動量(ステップモータ7bに与えるパルス数)を演算して、演算した駆動量(パルス数)を示す目標位置設定信号Sdbを第2のモータ駆動部10bに与える。
第1のモータ駆動部10aにはまた、第1の出力トルク設定部11aから第1の出力トルク設定信号が与えられ、第2のモータ駆動部10bには、第2の出力トルク設定部11bから第2の出力トルク設定信号が与えられる。
第1のモータ駆動部10aは、目標位置設定部9から与えられる目標位置設定信号Sdaが示すパルス数だけステップモータ7aに駆動パルスを与えるとともに、第1の出力トルク設定部11aから与えられた第1の出力トルク設定信号により設定されたトルクをステップモータ7aから発生させるように、ステップモータ7aに与える駆動電流を調整する。
同様に、第2のモータ駆動部10bは、目標位置設定部9から与えられる目標位置設定信号Sdbが示すパルス数だけステップモータ7bに駆動パルスを与えるとともに、第2の出力トルク設定部11bから与えられた第2の出力トルク設定信号により設定されたトルクをステップモータ7bから発生させるように、ステップモータ7bに与える駆動電流を調整する。
第1のモータ7a及び第2のモータ7bの出力トルクをそれぞれ第1の出力トルク設定部11a及び第2の出力トルク設定部11bにより設定されたトルクに等しくするように、第1のモータ7a及び第2のモータ7bに流す駆動電流を調整する方法は、例えば、駆動電流の通電回路に直列に挿入した抵抗器の抵抗値を変化させる方法によることができる。抵抗値を変化させる手段としては、例えば、モータにより操作される可変抵抗器を用いてもよいし、抵抗値を変化させることが可能なICを用いてもよい。上記の方法により駆動電流を調整する場合、出力トルク設定部12からモータ駆動部10に、出力トルクを変更するように信号が出力されたときに、その信号に応じて抵抗値を変化させるようにすればよい。
第1及び第2の位置検出器8a及び8bは、例えば、可変インピーダンス素子3a及び3bのそれぞれの操作軸が微少角度回転する毎に位置検出パルスを発生するエンコーダにより構成することができる。
本実施形態では、第1の出力トルク設定部11a及び第2の出力トルク設定部11bにより出力トルク設定部11が構成され、モータ駆動部10と出力トルク設定部11とにより、可変インピーダンス素子(本実施形態では可変コンデンサ)の操作軸の位置を目標位置設定部9で設定された目標位置に一致させるように、モータ7a,7bを制御するモータ制御部18が構成されている。
第1の可変インピーダンス素子3aの可動部がグリスの固化や機械的摺動部の摩耗などにより劣化すると、該第1の可変インピーダンス素子の操作軸から第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていく。第1のモータ7aにかかる負荷トルクが大きくなっていき、ある限界を超えると、該モータ7aの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になり、モータを回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸を目標位置まで回転させることができなくなるため、高周波電源1と負荷2との間のインピーダンスの整合をとることができなくなり、モータ駆動部10aがモータ7aの駆動を完了した時点で可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が大きくなる。
同様に、第2の可変インピーダンス素子3bの可動部が劣化した場合には、モータ7bの回転が駆動パルスと同期しない状態(脱調状態)になり、該モータを正常に回転させることができなくなる。このような状態が生じると、第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸を目標位置まで回転させることができなくなるため、高周波電源1と負荷との間のインピーダンスの整合をとることができなくなり、モータ駆動部10bがモータ7bの駆動を完了した時点で可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が大きくなる。
従って、異常判定部12で、各可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を監視して、モータの駆動が完了した時点で操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差(残留偏差)が許容値を超えたか否かを判定することにより、各可変コンデンサの可動部が異常であるか否かを判定することができる。
異常判定部12は、目標位置設定部9の偏差演算部9Bで演算される第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との偏差を監視して、目標位置設定部9から第1のモータ駆動部10aに、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdaが与えられた後、モータ7aの駆動が完了したと見なされる時点(モータ制御部18による制御が完了したと見なされる時点)で目標位置設定部9の偏差演算部9Bで演算されている第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を第1の残留偏差ΔPxaとして、この第1の残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変インピーダンス素子3aの機構部の状態が異常である(正常な範囲から外れている)との異常判定を行う。
異常判定部12はまた、目標位置設定部9の偏差演算部9Bで演算される第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を監視して、目標位置設定部9から第2のモータ駆動部10bに演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sdbが与えられた後、モータ7bの駆動が完了したと見なされる時点で偏差演算部9Bで演算されている第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間の偏差を第2の残留偏差ΔPxbとして、この第2の残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変インピーダンス素子3bの機構部の状態が異常であるとの異常判定を行う。
上記のように、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する「残留偏差」は、モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動した時点で、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在している偏差であり、この偏差は、目標位置設定部9の偏差演算部9Bで演算される。ここで、「モータ駆動部10が目標位置設定部9で演算された駆動量だけモータを駆動したとみなされる時点」とは、通常は、検出の遅れを考慮して、モータが実際に駆動したと考えられる時点を示す。
可変コンデンサの操作軸の現在位置の検出には遅れが伴うことが避けられず、目標位置演算部9Aにより演算される可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置のデータと、その目標位置に対応する現在位置の検出データとは、同時に発生するものではないので、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する偏差を正確に検知するためには、何らかの工夫を要する。
例えば、目標位置設定部9で目標位置のデータと現在位置の検出データとから偏差を演算する際に、検出の遅れを考慮して現在位置の検出データを読み込むタイミングを遅らせる処理を行うことにより、可変コンデンサの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を正確に検出することができる。
また、目標位置設定部9に目標位置のデータと現在位置の検出データとを一旦記憶するメモリを設けて、現在位置の検出データを遅れを考慮してメモリから読み出す等の処理を行うことによっても、上記残留偏差を正確に検出することができる。
また、演算された目標位置のデータだけを一旦記憶するメモリを目標位置設定部9に設けておいて、現在位置の検出遅れを考慮して、目標位置のデータと現在位置の検出データとが同期するように、目標位置のデータをメモリから読み出す処理を行うことによっても、上記残留偏差を正確に検出することができる。
ところで、ステップモータ7a,7bにより可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸を駆動する場合、各操作軸を現在位置から最終目標位置まで移動させるために必要な数のパルスが多すぎると、そのパルスをモータ駆動部10a,10bからステップモータ7a,7bに一度に与えても、モータが応答することができない。従って、モータ駆動部10a,10bからステップモータ7a,7bに与えるパルスの数は、モータが正常に応答し得る範囲の数に制限する必要がある。
そのため、目標位置設定部9は、実際には、第1及び第2の可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸を現在位置から最終目標位置まで動かすために必要な駆動量(パルス数)を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与えるのではなく、モータが応答し得る範囲の駆動量を演算して、この駆動量だけモータを駆動したときに到達する筈の操作軸の位置を暫定目標位置として演算する。
目標位置設定部9は、演算した駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a及び10bに与える。モータ駆動部10a及び10bは、与えられた目標位置設定信号Sda及びSdbに応じてモータ7a及び7bに駆動パルスを与えて、第1及び第2の可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸の位置を暫定目標位置まで変位させる。
この場合、目標位置設定部9は、演算した暫定目標位置を異常判定部12に与える。異常判定部12は、第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の偏差及び第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の暫定目標位置と現在位置との間の偏差を監視し、モータ7aの駆動が完了したと見なされる時点で、第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の暫定目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が許容値を超えているときに第1の可変インピーダンス素子3aが異常であると判定し、モータ7bの駆動が完了したと見なされる時点で、第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の暫定目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差が許容値を超えているときに第2の可変インピーダンス素子3bが異常であると判定する。
目標位置設定部9は、可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸の位置が暫定目標位置に達したときに、新たなモータの駆動量と、その駆動量に相応した暫定目標位置とを演算して、その駆動量を示す目標位置設定信号Sda及びSdbをモータ駆動部10a,10bに与える。目標位置設定部9は暫定目標位置までのモータの駆動が完了した時点で暫定目標位置と現在位置との偏差を演算し、この偏差を残留偏差として異常判定部12に与えて異常判定を行わせる。これらの動作を繰り返しながら、可変コンデンサの操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。
すなわち、演算された暫定目標位置をその演算が行われた時点での目標位置としながら、操作軸を最終目標位置に向けて移動させていく。なお、インピーダンス整合装置がその本来の動作を行う際には、時々刻々変化する負荷の状態に対応させるため、可変コンデンサの操作軸が最終目標位置に移動していない状態でも、新たな最終目標位置が演算されることが多い。
暫定目標位置まで可変コンデンサの操作軸を変位させるようにモータ7a及び7bを駆動する過程と、異常判定部12により異常判定処理を行なう過程とを行なわせるためには、所定の処理時間を必要とする。モータ7a及び7bが可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸を現在位置から暫定目標位置まで動かすために必要な時間が上記処理時間よりも長いと、モータが正常に回転していても、操作軸の現在位置と暫定目標位置との間の残留偏差が許容値を超えてしまい、異常判定部12が異常判定を行ってしまう。従って、残留偏差が許容値を超えているか否かの判定を正確に行わせるためには、目標位置設定部9が一度に演算する駆動量を、上記処理時間内にモータを駆動できるだけの大きさ以下に制限して、演算した駆動量に基づいて可変インピーダンス素子の操作軸の暫定目標位置を演算する必要がある。
本発明においては、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んでいない状態では残留偏差が小さく、機構部の劣化が進んで行くに従って残留偏差が大きくなっていくこと、及び可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているといえる程度まで可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むまでの間には異常判定がある程度の回数行われることに着目して、寿命予測が可能な形で異常判定を行う。また可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているといえる程度まで可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進むまでの間はモータの出力トルクを比較的小さい初期トルクとしてインピーダンスの整合動作を行わせ、メンテナンス時期が近づいているといえる程度まで可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ後は、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定して、可変インピーダンス素子の機構部の劣化がある程度進んだ状態でも、高精度でインピーダンス整合動作を行わせる。
即ち本発明においては、最初残留偏差と比較する許容値を比較的小さい初期許容値に設定するとともに、モータの出力トルクを比較的小さい初期トルクに設定して異常判定を行わせ、異常判定が何回か行われるようになって、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているといえる程度まで機構部の劣化が進んでいると判定されたときに、残留偏差と比較する許容値を初期許容値よりも大きい値を有する異常検出後許容値に切り替えて異常判定を行わせるとともに、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えてインピーダンス整合動作を行わせる。
そのため本実施形態においては、異常判定部12が異常判定を行った回数である異常判定回数から可変インピーダンス素子3a,3bのメンテナンス時期が近づいているか否かを判定するために異常判定回数と比較する判定値を設定する。またモータ7a,7bの出力トルクとして、初期トルクと、この初期トルクよりも大きい異常検出後トルクとを設定して、異常判定回数が判定値に達する前の状態ではモータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値に達した後はモータ7a,7bの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定する。判定値の値は、可変インピーダンス素子のメンテナンスが近づいたと言える時期に異常判定回数が該判定値に達するように、適当な値に決めておく。この判定値の値は実験的に決めるか、または過去のデータに基づいて決定する。
また異常判定に用いる残留偏差の許容値として、異常判定回数が判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が判定値に達した後の許容値であって初期許容値よりも大きい値を有する異常検出後許容値とを設定する。
本実施形態で用いる異常判定部12は、異常判定回数が判定値未満である間、モータ7a,7bの動作が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子の出力軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値が初期許容値を超えたときに異常判定を行い、異常判定回数が判定値以上になった後は上記残留偏差の値が異常検出後許容値を超えたときに異常判定を行う。
また本実施形態で用いる出力トルク設定部11a,11bは、異常判定回数が判定値に達する前の状態ではモータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値に達した後はモータ7a,7bの出力トルクを異常検出トルクに設定する。初期トルク及び異常検出トルクは、記憶装置16に記憶されている。
本実施形態のように構成すると、異常判定回数が判定値に達したこと、異常判定を行うために残留偏差と比較される許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったこと、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったことから、可変インピーダンス素子3a,3bの機構部が、近い将来(一定時間後に)メンテナンスを行うことが必要になる程度に劣化していることを知ることができる。
本実施形態で用いる異常判定部12は、図2に示されているように、モータの駆動が完了したと見なされる時点で偏差演算部9Bで演算されている残留偏差を、許容値記憶手段16に記憶されている残留偏差の許容値と比較する比較判定部12aと、許容値記憶手段16から比較判定部12aに読み込む許容値(残留偏差と比較する許容値)を切り替える許容値切替え手段12bとにより構成される。比較判定部12aは、第1の可変インピーダンス素子3aに対して演算されている残留偏差が許容値を超えているときに異常判定を行って第1の異常信号Saaを発生し、第2の可変インピーダンス素子3bに対して演算されている残留偏差が許容値を超えているときに異常判定を行って第2の異常信号Sabを発生する。
本実施形態においては、第1及び第2の可変インピーダンス素子3a及び3bに対して異常判定部12が異常判定を行った回数に応じて、第1及び第2の可変インピーダンス素子3a及び3bの異常を判定する際に残留偏差と比較する許容値とモータ7a,7bの出力トルクとを切り替えるため、異常判定が行われた回数を計数する必要がある。
そのため本実施形態では、異常判定回数計数部13が設けられ、比較判定部12aから出力される異常信号Saa及びSabが異常判定回数計数部13に入力されている。また本実施形態では、異常判定回数、残留偏差と比較される許容値の大きさ、または設定されているモータの出力トルクの大きさから、近い将来可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要になるといえる状態まで可変インピーダンス素子の機構部が劣化しているか否かを判定して、近い将来メンテナンスが必要になるといえる状態まで可変インピーダンス素子の機構部が劣化していると判定されたときに警報を発生するメンテナンス時期予告判定部14と、残留偏差と比較される許容値の大きさと、異常判定の有無とからメンテナンスが必要な時期が到来しているか否かを判定するメンテナンス要否判定部15とが設けられている。
可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定される判定値は、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ行われた異常判定回数から可変インピーダンス素子3a及び3bのメンテナンス時期が近づいているか否かを判定するために当該異常判定回数と比較される判定値である。
可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定された判定値は、異常判定回数計数部13内のROMに予め記憶されるか、またはインピーダンス整合装置の電源が投入された際に、外部のメモリから異常判定回数計数部13内のRAMに読み込まれる。
また、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定される初期許容値は、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ行われた異常判定回数が、未だ可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定された判定値がに達していないときに、異常判定部12の比較判定部12aで可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値と比較される許容値である。
更に、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定される異常検出後許容値は、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ行われた異常判定回数が、可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定された判定値に達した後に、異常判定部12の比較判定部12aで可変インピーダンス素子3a及び3bのそれぞれの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の値と比較される許容値である。可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定される異常検出後許容値は、両可変インピーダンス素子に対して設定される初期許容値よりも大きい値に設定される。
可変インピーダンス素子3a及び3bのそれぞれに対して設定された初期許容値及び異常検出後許容値は、記憶装置16に記憶されている。異常判定部12は、可変インピーダンス素子3a及び3bの異常判定を行う際に、記憶装置16から可変インピーダンス素子3a及び3bに対してそれぞれ設定された初期許容値または異常検出後許容値を読み出して、モータの駆動が完了したと見なされた時点で可変インピーダンス素子3a及び3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在している残留偏差を、読み出した初期許容値または異常検出後許容値と比較する。
異常判定回数計数部13は、異常判定部12で可変インピーダンス素子3aに対して異常判定が行われて、異常判定部12から第1の異常信号Saaが与えられる毎に可変インピーダンス素子3aに対して行われた異常判定回数を計数する計数手段の計数値をインクリメントするとともに、該計数手段により計数されている計数値(可変インピーダンス素子3aに対して行われた異常判定回数)を、可変インピーダンス素子3aに対して設定された判定値と比較して、計数された計数値が判定値に達したときに、可変インピーダンス素子3aに対して行われた異常判定回数が判定値に達したことを示す判定値到達検出信号Scaを、異常判定部12の許容値切換手段12bと、メンテナンス予告判定部14と、メンテナンス要否判定部15と、出力トルク設定部11aとに与える。
異常判定回数計数部13はまた、異常判定部12で可変インピーダンス素子3bに対して異常判定が行われて、異常判定部12から第2の異常信号Sabが与えられる毎に可変インピーダンス素子3bに対して行われた異常判定回数を計数する計数手段の計数値をインクリメントするとともに、該計数手段により計数されている計数値(可変インピーダンス素子3bに対して行われた異常判定回数)を、可変インピーダンス素子3bに対して設定された判定値と比較する。その結果、計数された計数値が判定値に達したときに、可変インピーダンス素子3bに対して行われた異常判定回数が判定値に達したことを示す判定値到達検出信号Scbを、異常判定部12の許容値切替え手段12bと、出力トルク設定部11bと、メンテナンス予告判定部14と、メンテナンス要否判定部15とに与える。
許容値切替え手段12bは、判定値到達検出信号Sca,Scbが与えられる前の状態では、比較判定部12aに与える許容値を初期許容値とし、判定値到達検出信号Scbが与えられた後は、比較判定部12aに与える許容値を異常検出後許容値とするように、比較判定部12aに与える許容値を切り替える。
異常判定部12は、以下のようにして異常判定を行う。
(a)異常判定回数計数部13から第1の可変インピーダンス素子3aに対する判定値到達検出信号Scaが与えられていないとき(異常判定部12が可変インピーダンス素子3aに対して行った異常判定回数が判定値未満であるとき)には、モータ7aの動作が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差ΔPxaの値が、同可変インピーダンス素子3aに対して設定された初期許容値koaを超えたときに異常判定を行う。
(b)異常判定回数計数部13から第1の可変インピーダンス素子3aに対する判定値到達検出信号が与えられた後(可変インピーダンス素子3aに対して行われた異常判定回数が同可変インピーダンス素子3aに対して設定された判定値以上になった後)は、モータ7aの動作が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差ΔPxaの値が同可変インピーダンス素子3aに対して設定された異常検出後許容値ΔPsaを超えたときに異常判定を行う。
(c)異常判定回数計数部13から第2の可変インピーダンス素子3bに対する判定値到達検出信号が与えられていないとき(異常判定部12が可変インピーダンス素子3bに対して行った異常判定回数が判定値未満であるとき)には、モータ7bの動作が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差ΔPxbの値が、同可変インピーダンス素子3bに対して設定された初期許容値kobを超えたときに異常判定を行う。
(d)異常判定回数計数部13から第2の可変インピーダンス素子3bに対する判定値到達検出信号が与えられた後(可変インピーダンス素子3bに対して行われた異常判定回数が同可変インピーダンス素子3bに対して設定された判定値以上になった後)は、モータ7bの動作が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差ΔPxbの値が、同可変インピーダンス素子3bに対して設定された異常検出後許容値ΔPsbを超えたときに異常判定を行う。
異常判定部12は、残留偏差と比較する許容値が異常検出後許容値に切り替わっているときに、現在の異常検出後許容値ΔPsa,ΔPsbをメンテナンス予告判定部14とメンテナンス要否判定部15とに与える。
異常判定回数計数部13はまた、異常判定部12から異常判定号Saa,Sabが入力される毎に、可変インピーダンス素子3a,3bに対して異常判定部12で異常判定が行われた回数を示す信号Sa,Sbをメンテナンス予告判定部14とメンテナンス要否判定部15とに与える。
上記異常判定回数計数部13が発生する判定値到達検出信号Sca及びScbはまた第1及び第2の出力トルク設定部11a及び11bにも与えられる。第1の出力トルク設定部11a及び第2の出力トルク設定部11bは、異常判定回数が判定値未満であって、判定値到達検出信号Sca及びScbが発生する前の状態では、モータ7a及び7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値以上になって判定値到達検出信号Sca及びScbが発生した後はモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定する。
第1の出力トルク設定部11a及び第2の出力トルク設定部11bはそれぞれ、判定到達検出信号Sca及びScbが与えられる前の状態では、記憶装置16から初期トルクを読み出してモータ7a及び7bの出力トルクを該初期トルクに設定し、判定到達検出信号Sca及びScbが与えられたときに記憶装置16から異常検出後トルクを読み出してモータ7a及び7bの出力トルクを該異常検出後トルクに設定する。
異常検出後トルクは、従来のインピーダンス整合装置において設定されていたモータの出力トルクと同等の大きさ(可変インピーダンス素子の機構部が近い将来メンテナンスが必要になる程度に劣化した状態でも可変インピーダンス素子を操作することができる大きさ)に設定する。
これに対し、初期トルクの大きさは、異常検出後トルクよりも小さく、かつ可変インピーダンス素子の機構部が近い将来メンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化するまでの間、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差を許容範囲に保つことができる大きさに設定しておく。即ち、可変インピーダンス素子の機構部が、一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との残留偏差が異常検出後許容値を超えて異常判定部が異常判定を行うように初期トルクの大きさを設定しておく。
第1の出力トルク設定部11aは、第1の可変インピーダンス素子に対して行われた異常判定回数が判定値未満で、異常判定回数計数部13が判定値到達検出信号Scaを発生していないときにモータ7aの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値がに達して、異常判定回数計数部13が判定到達信号Scaを発生した後はモータ7aの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定する。
また第2の出力トルク設定部11bは、第2の可変インピーダンス素子に対して行われた異常判定回数が判定値未満で、異常判定回数計数部が判定値到達検出信号Scbを発生していない状態では、モータ7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値がに達して、異常判定回数計数部13が判定到達信号Scbを発生した後は、モータ7bの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定する。
第1及び第2の出力トルク設定部11a及び11bは、モータ7a及び7bに対して設定している出力トルクの大きさを示す出力トルク信号Sτa及びSτbを外部に出力する出力端子を有している。出力トルク信号Sτa及びSτbは、判定値到達検出信号Sca及びScbを発生する前の状態では、初期トルクの大きさを示し、判定値到達検出信号Sca及びScbを発生した後は、異常検出後トルクの大きさを示す。
上記のように、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すようにすると、モータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り換えられたことから、可変インピーダンス素子の機構部が一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。また、モータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに設定し直すことによって、再度、残留偏差が許容値に収まるようにモータを駆動させることが可能となる。
本実施形態では、異常判定部11の出力と、出力トルク設定部12が出力する出力トルク信号Sτa及びSτbとがメンテナンス予告判定部14とメンテナンス要否判定部15とに与えられている。
メンテナンス予告判定部14は、異常判定回数が判定値に達したとき、残留偏差の許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わって異常検出後許容値ΔPsa、ΔPsbが与えられたとき、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号Sm′を発生する。
なおメンテナンス予告判定部14は、異常判定回数が判定値に達したこと(条件1)、残留偏差の許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったこと(条件2)及びモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったこと(条件3)のいずれか1つが成立したときにメンテナンス時期が近づいているとの判定を行うように構成すればよく、条件1ないし3のすべての成立の有無について判定を行う必要はないが、複数の条件の成立の有無を判定して、いずれか1つの条件が成立したときにメンテナンス時期が近いとの判定を行い、すべての条件が成立していないときにメンテナンス時期が近いとの判定を行わないようにすることもできる。
メンテナンス要否判定部15は、残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されていて、異常判定部12から異常検出後許容値ΔPsa、ΔPsbが与えられている状態で異常判定部12が異常判定を行って、異常判定回数計数部13から異常判定が行われた回数を示す信号Sa,Sbが与えられたときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定してメンテナンス指令信号Smを発生する。
上記判定値は、異常判定回数から、可変インピーダンス素子の機構部が一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化しているか否かを判定するのに適した値に設定する。
また上記異常検出後許容値は、可変インピーダンス素子の機構部が、一定の時間後にはメンテナンスを必要とするといえる程度まで劣化したときに、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に生じる残留偏差の大きさに設定しておく。
メンテナンス予告判定部14及びメンテナンス要否判定部15は、メンテナンスの時期が近づいていることの判定及びメンテナンスの時期が到来していることの判定を、第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bに対して個別に行う。
即ちメンテナンス予告判定部14は、第1の可変インピーダンス素子3aに対して行われた異常判定回数が判定値に達したとき、第1の可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったとき、またはモータ7aの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、第1の可変インピーダンス素子3aのメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生する。
メンテナンス予告判定部14はまた、第2の可変インピーダンス素子3bに対して行われた異常判定回数が判定値に達したとき、第2の可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の許容値が初期許容値から異常検出後許容値に切り替わったとき、またはモータ7bの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに可変インピーダンス素子3bのメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生する。
本実施形態のように、可変インピーダンス素子3a,3bのメンテナンス時期が近づいているとの判定を行って警報信号を発生するメンテナンス予告判定部を設けておくと、装置の管理者にメンテナンス時期が近いことの情報を確実に与えることができるため、インピーダンス整合装置の性能の維持を的確に図ることができる。
またメンテナンス要否判定部15は、第1の可変インピーダンス素子3aの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されている状態で異常判定部12が異常判定を行ったとき(残留偏差が異常検出後許容値を超えたとき)に可変インピーダンス素子3aのメンテナンスが必要であると判定して、直ちに可変インピーダンス素子3aのメンテナンスを行うことを指令するメンテナンス指令を発生する。
メンテナンス要否判定部15はまた、第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の許容値が異常検出後許容値に設定されている状態で異常判定部12が異常判定を行ったときに可変インピーダンス素子3bのメンテナンスが必要であると判定して、直ちに可変インピーダンス素子3bのメンテナンスを行うことを指令するメンテナンス指令を発生する。
本実施形態のようにメンテナンス要否判定部15を設けておくと、可変インピーダンス素子3a,3bの機構部の劣化によりインピーダンス整合装置がインピーダンスの整合をとることができなくなる状態が生じる前に、可変インピーダンス素子3a,3bのメンテナンスを行う時期が到来していることを知ることができるため、負荷2で行われるプロセス、例えば半導体製造プロセスの中断を未然に防ぐことができるだけでなく、過剰なメンテナンスが行われて人的資源が無駄に使われたり、負荷の稼働が不必要に中断したりするのを防ぐことができる。
メンテナンス要否判定部によりメンテナンスが必要であると判定された場合でも、少なくとも製造ラインで処理中の製品の処理が完了するまでの間は、許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることができるようにするため、上記異常検出後許容値は、残留偏差の許容値の上限値よりも少し小さく設定しておくことが好ましい。
本実施形態において、異常検出後許容値を小さめに設定しておくと、残留偏差が異常検出後許容値を超えて異常判定が行われた状態でも、モータを駆動して、許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることを可能にすることができる。メンテナンスが必要であると判定された状態でも、許容される誤差範囲でインピーダンスの整合をとることができれば、メンテナンスのために負荷を停止する前に、負荷で実行中の処理を完了させることができるため、負荷で処理が行われている製品が無駄になる確率を低くすることができる。
また上記実施形態のように、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクを初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えるようにすると、可変インピーダンスの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化した状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の大きさを小さくして、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御を行わせることができるため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化がある程度進んだ状態でも高精度でインピーダンス整合動作を行わせることができる。
本実施形態では、異常判定部12の判定結果を示す信号Saa,Sab、異常検出後許容値の大きさを示す信号ΔPSa、ΔPSb及びモータの出力トルクを示す出力トルク信号Sτa及びSτbを外部に出力するための信号出力端子20(図1参照)を設けておくことが好ましい。
上記のような信号出力端子を設けておくと、該信号出力端子から出力される信号により得られる情報を外部のコンピュータに与えて、製造ラインの制御や管理に利用したり、外部に設置した監視装置にインピーダンス整合装置のモニタ情報を与えたりすることができる。
(第2の実施形態)
本実施形態に係わるインピーダンス整合装置の全体的な構成は図1に示されたものと同様であり、要部の構成を示すブロック図は、図2に示されたものと同様である。本実施形態が第1の実施形態と相違する点は下記の通りである。
第1の実施形態では、異常判定回数に対して判定値を1つだけ設定していたが、本実施形態においては、異常判定回数から可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を判定するために異常判定回数と比較する判定値として、大きさが順次大きくなっていく第1ないし第m(mは2以上の整数)の判定値を設定する。
本実施形態ではまた、残留偏差と比較する許容値として、異常判定回数が第1の判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が第1の判定値に達した後の許容値であって初期許容値よりも大きく、かつ異常判定回数の多さの程度に応じて異なる値に切り替えられる異常検出後許容値とが設定される。
更に本実施形態では、モータ7a,7bの出力トルクとして、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとを設定する。
本実施形態で用いる異常判定部12は、異常判定回数が第1の判定値未満である間は残留偏差の値が初期許容値を超えたときに異常判定を行い、異常判定回数が第1の判定値以上になった後は残留偏差の値が異常検出後許容値を超えたときに異常判定を行うように構成される。
異常判定部12はまた、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後許容値の値を「初期異常検出後許容値」として、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていくように構成される。
また出力トルク設定部11は、異常判定回数が判定値未満である間、モータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値以上になった後はモータ7a,7bの出力トルクを異常検出後トルクに設定するように構成される。この場合、異常検出後トルクは一定ではなく、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていく。
本実施形態のように、異常判定回数に対して大きさが順次大きくなる第1ないし第mの判定値を設定し、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくようにすると、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んで、異常判定が行われる状態になった場合でも、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を小さい値に抑えることができるため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ状態でも精度を大きく低下させることなく、インピーダンスの整合を図ることができる。
また上記のように構成すると、異常判定回数が第1の設定回数に達したときに、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んでいると判定することができる。
また上記のように、異常判定回数が第1の判定値未満である間は残留偏差を初期許容値と比較して異常判定を行い、異常判定回数が第1の判定値以上になった後は、残留偏差を、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に大きい値に切り替えられる異常検出後許容値と比較して異常判定を行うようにしておくと、異常判定を行うために残留偏差と比較される異常検出後許容値の大きさから可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常検出後許容値が予め設定された第1の設定許容値に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
更に、本実施形態のように構成すると、異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したことによっても、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
また本実施形態では、異常判定回数が上記第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したとき、異常検出後許容値が前記第1の設定許容値よりも大きい値に設定された第2の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが前記第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
本実施形態のように、判定値を複数設定する場合、メンテナンス予告判定部14は、異常判定回数が予め設定された第1の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するように構成することができる。
また本実施形態のように、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後許容値を大きい値に切り替えるようにする場合、メンテナンス予告判定部14は、異常検出後許容値が予め設定された第1の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するように構成することができる。
また本実施形態のように、判定値を複数設定する場合、メンテナンス要否判定部15は、異常判定回数が第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定してメンテナンス指令を発生するように構成することができる。
更に、本実施形態のように、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後許容値を大きい値に切り替えるようにする場合、メンテナンス要否判定部15は、残留偏差と比較される異常検出後許容値が第1の設定許容値よりも大きい値に設定された第2の設定許容値に達したとき、または異常検出後トルクが第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定してメンテナンス指令を発生するように構成することもできる。
本実施形態において、異常判定部が異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分は、予め定めた値とすることもでき、異常判定回数と許容値との間の予め定められた関係に基づいて決定することもできる。
異常判定回数と適切な許容値との間の関係は、実験的に求めることができる。異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分を、異常判定回数と許容値との間の予め定められた関係に基づいて決定するようにすると、実際に使用している可変インピーダンス素子の特性に適合した形で、異常検出後許容値をより大きい値に切り替えていく際の該異常検出後許容値の増分を決定することができるため、可変インピーダンス素子の機構部のメンテナンス時期の予告判定及びメンテナンスの要否の判定を的確に行わせることができる。
本実施形態においても、異常判定部12の判定結果を示す信号Saa,Sab、異常検出後許容値の大きさを示す信号ΔPSa、ΔPSb及び及びモータの出力トルクを示す出力トルク信号Sτa及びSτbを外部に出力するための信号出力端子20(図1参照)を設けておくことが好ましい。
第1及び第2の実施形態において、図1及び図2に示した各部は、コンピュータに所定のプログラムを実行させることにより実現することができる。図1に示された異常判定部12と、異常判定回数計数部13と、メンテナンス予告判定部14と、メンテナンス要否判定部15とをコンピュータを用いて構成する場合にコンピュータに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示すフローチャートを図3に示した。
図3に示したタスクは、第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bのそれぞれについて、モータ駆動部10a,10bによるモータ7a,7bの駆動を制御する制御ループのタイミング毎に実行される。
図3に示したタスクにおいて、nは異常判定部12が異常判定を行った回数(異常判定回数)で、その初期値は0である。異常判定回数nの値は、リセット信号が入力されない限り0に戻ることはなく、各タスク終了時のnの値は次のタスクまで保持される。同様にiの値(初期値は1)も、リセット信号が入力されない限り1に戻ることはなく、各タスク終了時のiの値は次のタスクまで保持される。ns1〜ns3はそれぞれ異常の程度を判定するために異常判定回数nに対して設定された第1ないし第3の設定回数で、ns1<ns2<ns3の関係がある。ns1の値は1以上に設定され、ns2の値は2以上に設定される。またkは残留偏差の許容値、Δkは許容値の増分であり、kの初期値が初期許容値である。
ks1ないしks3はそれぞれ異常の程度を判定するために許容値kに対して設定された第1ないし第3の設定許容値で、ks1<ks2<ks3の関係がある。ΔPはモータ7a,7bの駆動が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差、Nsi(i=1,2,…,m)は第1ないし第mの判定値である。判定値Ns1,Ns2,Ns3,…は、1,2,3,…のように連続した値をとってもよく,2,4,7,…のように飛び飛びの値をとってもよい。また1,3,4,…のように一部の数値を飛ばしてもよい。たまたま何らかの原因で異常判定が1回(または数回)行われただけで、残留偏差の許容値が増加してしまうのを防ぎたい場合には、判定値Nsiを飛び飛びの値にしておく。
τはモータの出力トルク、τs1,τs2及びτs3は出力トルクτに対して設定された第1ないし第3の設定トルクであり、τs1<τs2<τs3の関係がある。
初期許容値及び異常検出後許容値は、可変インピーダンス素子毎に設定されるが、可変インピーダンス素子3a及び3bとして構造が同じものを用いる場合等には、両可変インピーダンス素子に対して設定される初期許容値及び異常検出後許容値がそれぞれ同じ値をとることもある。
異常検出部12により異常判定が一度も行われていない状態では、各種の初期設定を行う際に、残留偏差の許容値kが初期許容値に設定される。モータ駆動部10a,10bによるモータ7a,7bの駆動が完了すると、第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bについて図3のタスクが実行される。
第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bについて図3に示したタスクが開始されると、先ずそのステップS101で第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bの操作軸の目標位置と、第1の位置検出器8a及び第2の位置検出器8bによりそれぞれ検出されている操作軸の現在位置との間の残留偏差ΔPを演算する。次いでステップS102で残留偏差ΔPが許容値k以下であるか否かを判定し、偏差ΔPが許容値k以下であると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS102で偏差ΔPが許容値k以下でない(許容値kを超えている)と判定されたときには、ステップS103に進んで異常信号を発生させ、ステップS104で異常判定回数nを1だけインクリメントする。次いで、ステップS105で異常判定回数nが第3の設定回数ns3以上であるか否か(またはモータの出力トルクτが第3の設定トルクτs3以上であるか否か、または残留偏差の許容値kが第3の設定許容値ks3以上であるか否か)を判定する。その結果、異常判定回数nが第3の設定回数ns3未満であると判定された場合(または出力トルクτが第3の設定トルク未満であると判定された場合、または許容値kが第3の設定許容値ks3未満であると判定された場合)には、ステップS106で異常判定回数nが第1ないし第mの判定値Nsi(i=1,2,…,m)の内の最小の値を有する第1の判定値Ns1に等しいか否かを判定する。
ステップS106で異常判定回数nが第1の判定値Ns1に等しいと判定されたときには、ステップS107で判定値Nsiの番号iをインクリメントすると共に、残留偏差の許容値kを増分Δkだけ増加させて異常検出後許容値とし、更に出力トルクτを増分Δτだけ増加させて、異常検出後トルクとしてステップS108に移行する。
ステップS106での判定の結果、異常判定回数nが第1の判定値Ns1に等しくないと判定されたときには、ステップS108に移行する。ステップS108では、異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上であるか否か(または許容値kが第1の設定許容値ks1以上であるか否か、または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上であるかどうか)を判定し、異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上でない場合(または許容値kが第1の設定許容値ks1以上でない場合、または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上でない場合)には、以後何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS108で異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上であると判定された場合(または許容値kが第1の設定許容値ks1以上であると判定された場合、または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上であると判定された場合)には、次いでステップS109で異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上であるか否か(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上であるか否か、または残留偏差の許容値kが第2の設定許容値ks2以上であるか否か)を判定する。その結果異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上でないと判定されたとき(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上でないと判定されたとき、または許容値kが第2の設定許容値ks2以上でないと判定されたとき)には、ステップS110に移行し、メンテナンス時期が近いことを示す警報信号を発生させてこのタスクを終了する。
ステップS109で異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上であると判定されたとき(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上であると判定されたとき、または許容値kが許容値ks2以上であると判定されたとき)には、ステップS110に移行して、メンテナンス時期が来ていることを示すメンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。
ステップS105で異常判定回数nが第3の設定回数ns3以上であると判定されたとき(またはモータの出力トルクτが第3の設定トルクτs3以上であると判定されたとき、または許容値kが第3の設定許容値ks3以上であると判定されたとき)には、ステップS112でモータの駆動を停止することを指令する停止指令を発生させてこのタスクを終了する。なお、このときに警報信号を発生させるようにしてもよい。
次にこのタスクが実行される際には、ステップS106において、異常判定回数nが第2の判定値Ns2に等しいか否かが判定され、異常判定回数nが第2の判定値Ns2に等しい場合には、ステップS107で判定値nが更新されると共に、異常検出後許容値kの値が増加させられる。このようにして、異常検出後許容値kは、判定値Nsiが増加する毎により大きい値に切り替えられる。
図3に示した処理において、ステップS105,S108及びS109では、異常判定回数nとその設定回数(ns1,ns2,ns3)との比較と、残留偏差の許容値kとその設定許容値(ks1,ks2,ks3)との比較と、出力トルクτとその設定トルク(τs1,τs2,τs3)との比較とを行うように図示されているが、これらの比較はいずれか1つのみを行えばよい。ステップS105,S108及びS109で異常判定回数nとその設定回数(ns1,ns2,ns3)との比較、残留偏差の許容値kとその設定許容値(ks1,ks2,ks3)との比較、及び出力トルクτとその設定トルク(τs1,τs2,τs3)との比較のうちの2以上を行う場合には、いずれか一つの比較結果がYesの場合に、それぞれのステップの判定結果をYesとし、すべての比較結果がNoの場合にそれぞれのステップの判定結果をNoとする。
上記のアルゴリズムによる場合、可変インピーダンス素子が異常であるとの判定が一度も行われていないときには、モータの出力トルクが、初期トルクに設定されている。異常判定が一度行われると、図3のタスクのステップS104で異常判定回数nの値が1とされ、ステップS107で残留偏差の許容値kが初期許容値より一定の増分Δkだけ大きい異常検出後許容値に切り替えられ、出力トルクが異常検出後トルクに切替えられる。
異常判定が繰り返される毎に異常判定回数nの値が大きくなっていき、ステップS106で判定の結果がYesの場合には、ステップS107で判定値が大きい値に切り替えられると共に、残留偏差の許容値が増大させられ、出力トルクτが増加させられる。n≧ns1となるとステップS109でメンテナンスが必要になる時期が近いことを示す警報信号が発生する。この警報信号は、異常判定回数nの値が第2の設定回数よりも小さい間発生し続ける。異常判定回数nの値が第2の設定回数ns2以上になると、ステップS110でメンテナンス時期が来ていることを示すメンテナンス指令が発生する。異常判定回数nの値が第2の設定回数ns2を超えた後も、該異常判定回数nの値が第3の設定回数ns3未満である間はモータの出力トルクが増大させられるが、異常判定回数nの値が第3の設定回数ns3を超えたとき(または残留偏差の許容値kが設定許容値を超えたとき)には、モータの破損を防止するためにステップS112でモータの駆動が禁止される。
可変インピーダンス素子の劣化が進むと、出力トルク設定部11により設定された駆動電流の大きさではモータを回転させることができなくなる。モータを回転させることができない状態でモータに駆動電流を流し続けるとモータが破損する。このような状態を生じさせることがないように、異常判定回数の上限値を与える設定回数及び異常検出後許容値の上限値(上記の例ではns3及びks3)を設定する。
上記のアルゴリズムによる場合には、図3のステップS101により偏差演算部9Bが構成される。また、ステップS102により比較判定部12aが構成され、ステップS107により許容値切替え手段12bが構成される。更にステップS104により判定回数計数部が構成され、ステップS109及びS110によりメンテナンス予告判定部14が構成され、ステップS109及びS111によりメンテナンス要否判定部15が構成される。ステップS109はメンテナンス予告判定部14及びメンテナンス要否判定部15の双方に属することになる。
図3に示したフローチャートは、本発明の第2の実施形態に係わるインピーダンス整合装置の要部を構成するためにコンピュータに実行させるタスクを示したものであるが、第1の実施形態に係わるインピーダンス整合装置の要部を構成するためにコンピュータに実行させるタスクを示すフローチャートは、例えば図3において、Nsi=ns1(一定値)とし、ステップS107において、iをインクリメントする過程を省略したものに相当する。
(第3の実施形態)
本実施形態は、前記第1の実施形態を変形したものである。本実施形態に係わるインピーダンス整合装置の全体的な構成は図1に示されたものと同様であり、要部の構成を示すブロック図は、図2に示されたものと同様である。本実施形態が第1の実施形態と相違する点は下記の通りである。
第1の実施形態では、異常判定部が異常判定を行った回数である異常判定回数から可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいているか否かを判定するために異常判定回数と比較する判定値を設定するとともに、残留偏差の許容値として、異常判定回数が判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が前記判定値に達した後の許容値であって前記初期許容値よりも大きい値を有する異常検出後許容値とを設定していたが、本実施形態では、異常判定回数と比較する判定値のみを設定し、残留偏差に対する許容値は一定とする。
本実施形態においても、モータ7a,7bの出力トルクに対しては、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとを設定する。
本実施形態においても、モータ制御部18が、モータ7a,7bの出力トルクを設定する出力トルク設定部11と、モータ7a,7bの出力トルクを出力トルク設定部11により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部10とを備えており、出力トルク設定部11は、異常判定回数が判定値未満である間、モータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が判定値以上になった後はモータ7a,7bの出力トルクを異常検出後トルクに設定するように構成されるが、異常判定部12は、残留偏差の許容値の切換を行わない。
即ち、第3の実施形態に係わるインピーダンス整合装置は、異常判定回数の増大に伴って残留偏差の許容値の切換を行わない点を除き、第1の実施形態と同様の構成を有する。
本実施形態のように構成した場合も、異常判定回数が判定値に達したときにモータの出力トルクが初期トルクよりも大きい異常検出後トルクに切り替えられるため、可変インピーダンス3a,3bの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化した状態でも、可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差の大きさを小さくして、可変インピーダンス素子の操作軸の位置制御を行わせることができる。
また本実施形態のように構成した場合には、異常判定回数が判定値に達したとき、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、可変インピーダンス素子3a,3bの機構部が、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に劣化していることを知ることができる。従って、メンテナンスが必要であることを看過して運転が継続されて、製造ラインを止める必要がある事態が突然生じるのを防ぐことができる。
第3の実施形態で用いるメンテナンス予告判定部14は、異常判定回数が判定値に達したとき、またはモータの出力トルクが初期トルクから異常検出後トルクに切り替わったときに、可変インピーダンス素子のメンテナンス時期が近づいていると判定してメンテナンス時期が近づいていることを示す警報信号を発生するように構成される。
またメンテナンス要否判定部15は、モータの出力トルクが異常検出後トルクに設定されている状態で異常判定が行われたときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するように構成される。
本実施形態においては、異常判定部12の判定結果を示す信号Saa,Sab及びモータ7a,7bの出力トルクを示す出力トルク信号Sτa,Sτbを外部に出力するための信号出力端子20を設けておくのが好ましい。
上記のような信号出力端子を設けておくと、信号出力端子から出力される信号により得られる各種の情報を外部のコンピュータに与えて、製造ラインの制御や管理に利用したり、外部に設置した監視装置にインピーダンス整合装置のモニタ情報を与えたりすることができる。
第3の実施形態に係わるインピーダンス整合装置のその他の構成は、第1の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
本実施形態は、前記第2の実施形態を変形したものである。本実施形態に係わるインピーダンス整合装置の全体的な構成も、図1に示されたものと同様であり、要部の構成を示すブロック図も、図2に示されたものと同様である。本実施形態が第2の実施形態と相違する点は下記の通りである。
第2の実施形態では、異常判定回数と比較する判定値として、大きさが順次大きくなっていく第1ないし第m(mは2以上の整数)の判定値を設定するとともに、残留偏差の許容値として、異常判定回数が第1の判定値未満であるときの許容値である初期許容値と、異常判定回数が第1の判定値に達した後の許容値であって初期許容値よりも大きく、かつ異常判定回数の多さの程度に応じて異なる値に切り替えられる異常検出後許容値とを設定したが、第4の実施形態では、初期許容値及び異常検出後許容値の設定は行わない。異常判定回数と比較される判定値として、大きさが順次大きくなっていく第1ないし第m(mは2以上の整数)の判定値を設定する点、及びモータの出力トルクとして、初期トルクと、該初期トルクよりも大きい値を有する異常検出後トルクとを設定する点は、第2の実施形態と同様である。
第4の実施形態においても、モータ制御部18は、モータ7a,7bの出力トルクを設定する出力トルク設定部11と、モータの出力トルクを出力トルク設定部により設定されたトルクとするようにモータを駆動するモータ駆動部10とを備え、出力トルク設定部11は、異常判定回数が第1の判定値未満である間モータ7a,7bの出力トルクを初期トルクに設定し、異常判定回数が第1の判定値以上になった後はモータ7a,7bの出力トルクを異常検出後トルクに設定するように構成される。出力トルク設定部はまた、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくように構成される。
本実施形態のように、異常判定回数に対して大きさが順次大きくなる第1ないし第mの判定値を設定し、異常判定回数が第1の判定値に達したときの異常検出後トルクの値を初期異常検出後トルクとして、以後異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えていくようにすると、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んで、異常判定が行われる状態になっても、操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差を小さい値に抑えることができるため、可変インピーダンス素子の機構部の劣化が進んだ状態でも精度を大きく低下させることなく、インピーダンスの整合を図ることができる。
また本実施形態のように、異常判定回数に対して、順次大きさが大きくなる複数の判定値を設定しておくと、異常判定回数の値の大きさから、可変インピーダンス素子の機構部の劣化の程度を推測することができ、異常判定回数に対して適当な値を有する第1の設定回数を設定しておけば、異常判定回数がこの第1の設定回数に達したときに、一定時間後にメンテナンスを行うことが必要な程度に機構部の劣化が進んでいると判定することができる。また異常検出後トルクに対して、適当な値を有する第1の設定トルクを設定しておけば、異常検出後トルクがこの第1の設定トルクに達したことによっても、可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定することができる。
更に本実施形態のように構成しておくと、異常判定回数が上記第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したとき、または異常検出後トルクが上記第1の設定トルクよりも大きい値に設定された第2の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定することができる。
更に上記のように、判定値を複数設定し、異常判定回数がより大きい判定値に達する毎に異常検出後トルクをより大きい値に切り替えるようにしておくと、異常判定回数及び異常検出後トルクから、メンテナンス時期が近づいていることの情報をきめ細かく得ることができるため、メンテナンスの計画を立てやすくすることができ、製品の製造計画との関係で最適のタイミングでメンテナンスを行うことができる。
本実施形態においても、メンテナンス予告判定部14とメンテナンス要否判定部15とが設けられる。
メンテナンス予告判定部14は、異常判定回数が第1の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するように構成されるか、または異常検出後トルクが予め設定された第1の設定トルクに達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスを行う時期が近づいていると判定してメンテナンスを行う時期が近づいていることを示す警報信号を発生するように構成される。
またメンテナンス要否判定部15は、異常判定回数が第1の設定回数よりも大きい値に設定された第2の設定回数に達したときに可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するように構成されるか、または異常検出後トルクが第1の設定トルクよりも大きく設定された第2の設定トルクに達したときに、可変インピーダンス素子のメンテナンスが必要であると判定するように構成される。
本実施形態においても、異常判定部12の判定結果を示す信号Saa,Sab及びモータ7a,7bの出力トルクを示す出力トルク信号Sτa,Sτbを外部に出力するための信号出力端子20を設けておくのが好ましい。
第3及び第4の実施形態において、図1及び図2に示した各部は、コンピュータに所定のプログラムを実行させることにより実現することができる。第3及び第4の実施形態において、図1に示された異常判定部12と、異常判定回数計数部13と、メンテナンス予告判定部14と、メンテナンス要否判定部15とをコンピュータを用いて構成する場合にコンピュータに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を示すフローチャートを図4に示した。
図4に示したタスクも、第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bのそれぞれについて、モータ駆動部10a,10bによるモータ7a,7bの駆動を制御する制御ループのタイミング毎に実行される。
図4に示したタスクにおいて、nは異常判定回数で、その初期値は0である。ns1〜ns3はそれぞれ異常の程度を判定するために異常判定回数nに対して設定された第1ないし第3の設定回数で、ns1<ns2<ns3の関係がある。ns1の値は1以上に設定され、ns2の値は2以上に設定される。またkは残留偏差の許容値(一定)である。
ΔPはモータ7a,7bの駆動が完了したと見なされる時点で可変インピーダンス素子の操作軸の目標位置と現在位置との間に存在する残留偏差、Nsi(i=1,2,…,m)は第1ないし第mの判定値である。判定値Ns1,Ns2,Ns3,…は、1,2,3,…のように連続した値をとってもよく,2,4,7,…のように飛び飛びの値をとってもよい。また1,3,4,…のように一部の数値を飛ばしてもよい。たまたま何らかの原因で異常判定が1回(または数回)行われただけで、残留偏差の許容値が増加してしまうのを防ぎたい場合には、判定値Nsiを飛び飛びの値にしておく。
τはモータの出力トルク、τs1,τs2及びτs3は出力トルクに対して設定された第1ないし第3の設定トルクであり、τs1<τs2<τs3の関係がある。これらの設定トルクは、出力トルク設定部から出力される設定トルク信号Sτa及びSτbにより与えられる。
モータ駆動部10a,10bによるモータ7a,7bの駆動が完了したときに第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bについて図4のタスクが実行される。
第1及び第2の可変インピーダンス素子3a及び3bについて図4に示したタスクが開始されると、先ずそのステップS101で第1の可変インピーダンス素子3a及び第2の可変インピーダンス素子3bのそれぞれの操作軸の目標位置と、第1及び第2の位置検出器8a及び8bにより検出されている操作軸の現在位置との間の残留偏差ΔPを演算する。次いでステップS102で残留偏差ΔPが許容値k以下であるか否かを判定し、偏差ΔPが許容値k以下であると判定されたときには、以後何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS102で偏差ΔPが許容値k以下でない(許容値kを超えている)と判定されたときには、ステップS103に進んで異常信号を発生させ、ステップS104で異常判定回数nを1だけインクリメントする。次いで、ステップS105で異常判定回数nが第3の設定回数ns3以上であるか否か(またはモータの出力トルクτが第3の設定トルクτs3以上であるか否か)を判定する。その結果、異常判定回数nが第3の設定回数ns3未満であると判定された場合(または出力トルクτが第3の設定トルク未満であると判定された場合)には、ステップS106で異常判定回数nが第1ないし第mの判定値Nsi(i=1,2,…,m)の内の最小の値を有する第1の判定値Ns1に等しいか否かを判定する。
ステップS106で異常判定回数nが第1の判定値Ns1に等しいと判定されたときには、ステップS107で判定値Nsiの番号iをインクリメントすると共に、出力トルクτを増分Δτだけ増加させて異常検出後トルクとしてステップS108に移行する。
ステップS106での判定の結果、異常判定回数nが第1の判定値Ns1に等しくないと判定されたときには、ステップS108に移行する。ステップS108では、異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上であるか否か(または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上であるかどうか)を判定し、異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上でない場合(または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上でない場合)には、以後何もしないでこのタスクを終了する。
ステップS108で異常判定回数nが第1の設定回数ns1以上であると判定された場合(または出力トルクが第1の設定トルクτs1以上であると判定された場合)には、次いでステップS109で異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上であるか否か(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上であるか否か)を判定する。その結果異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上でないと判定されたとき(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上でないと判定されたとき)には、ステップS110に移行し、メンテナンス時期が近いことを示す警報信号を発生させてこのタスクを終了する。
ステップS109で異常判定回数nが第2の設定回数ns2以上であると判定されたとき(または出力トルクτが第2の設定トルクτs2以上であると判定されたとき)には、ステップS110に移行して、メンテナンス時期が到来していることを示すメンテナンス指令を発生させてこのタスクを終了する。
ステップS105で異常判定回数nが第3の設定回数ns3以上であると判定されたとき(またはモータの出力トルクτが第3の設定トルクτs3以上であると判定されたとき)には、ステップS112でモータの駆動を停止することを指令する停止指令を発生させてこのタスクを終了する。このときに警報信号を発生させるようにしてもよい。
次にこのタスクが実行される際には、ステップS106において、異常判定回数nが第2の判定値Ns2に等しいか否かが判定され、異常判定回数nが第2の判定値Ns2に等しい場合には、ステップS107で判定値nが更新されると共に、設定トルクの値が増加させられる。従って、設定トルクは、判定値Nsiが増加する毎により大きい値に切り替えられる。
図4に示した処理において、ステップS105,S108及びS109では、異常判定回数nとその設定回数(ns1,ns2,ns3)との比較と、出力トルクτとその設定トルク(τs1,τs2,τs3)との比較とを行うように図示されているが、これらの比較はいずれか一方のみを行えばよい。ステップS105,S108及びS109で異常判定回数nとその設定回数(ns1,ns2,ns3)との比較及び出力トルクτとその設定トルク(τs1,τs2,τs3)との比較の双方を行う場合には、いずれか一方の比較結果がYesの場合に、ステップS105,S108及びS109の判定結果をYesとし、すべての比較結果がNoの場合にステップS105,S108及びS109の判定結果をNoとする。
上記のアルゴリズムによる場合、可変インピーダンス素子が異常であるとの判定が一度も行われていないときには、モータの出力トルクが、初期トルクに設定されている。異常判定が一度行われると、図4のタスクのステップS104で異常判定回数nの値が1とされ、ステップS107で出力トルクが初期トルクから該初期トルクよりもΔτだけ大きい異常検出後トルクに切り替えられる。
異常判定が繰り返される毎に異常判定回数nの値が大きくなっていき、ステップS107で判定値が大きい値に切り替えられると共に、出力トルクτが増加させられる。n≧ns1となるとステップS109でメンテナンスが必要になる時期が近いことを示す警報信号が発生する。この警報信号は、異常判定回数nの値が第2の設定回数よりも小さい間発生し続ける。異常判定回数nの値が第2の設定回数ns2以上になると、ステップS110でメンテナンス時期が来ていることを示すメンテナンス指令が発生する。異常判定回数nの値が第2の設定回数ns2を超えた後も、該異常判定回数nの値が第3の設定回数ns3未満である間はモータの出力トルクが増大させられるが、異常判定回数nの値が第3の設定回数ns3を超えたとき(または残留偏差の許容値kが設定許容値を超えたとき)には、モータの破損を防止するためにステップS112でモータの駆動が禁止される。
可変インピーダンス素子の劣化が進むと、出力トルク設定部11により設定された駆動電流の大きさではモータを回転させることができなくなる。モータを回転させることができない状態でモータに駆動電流を流し続けるとモータが破損する。このような状態を生じさせることがないように、異常判定回数の上限値を与える設定回数(上記の例ではns3)を設定する。
上記のアルゴリズムによる場合には、図4のステップS101により偏差演算部9Bが構成される。また、ステップS102により比較判定部12aが構成される。更にステップS104により判定回数計数部が構成され、ステップS109及びS10によりメンテナンス予告判定部14が構成され、ステップS109及びS111によりメンテナンス要否判定部15が構成される。
図3に示したフローチャートは、本発明の第4の実施形態に係わるインピーダンス整合装置の要部を構成するためにコンピュータに実行させるタスクを示したものであるが、第3の実施形態に係わるインピーダンス整合装置の要部を構成するためにコンピュータに実行させるタスクを示すフローチャートは、例えば図4において、Nsi=ns1(一定値)とし、ステップS107において、iをインクリメントする過程を省略したものに相当する。