以下に、本発明にかかる土間床の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる土間床の実施の形態を示す平面概念図、図2は、図1におけるA−A線断面図である。ここで例示する建造物10は、地盤改良工事を実施していない軟弱地盤に建造される杭基礎構造の工場であり、図1および図2に示すように、上部構造である柱11の下端部を、それぞれ基礎部12に支持させてある。建造物10の基礎部12は、それぞれ柱11の下端部から下方に延在する部分である。
また、建造物10は、図2に示すように、複数の支持杭13によってそれぞれの基礎部12を支持させてある。この支持杭13は、それぞれ基礎部12の下端部から下方に延在する柱状の部材であり、図2に示すように、軟弱地盤Xおよび中位地盤Yを貫通した後、その先端部が支持地盤Zにまで達している。ここで、軟弱地盤Xとは、例えば、N値が3未満の粘土質土、N値が10未満の砂質土、および腐食土のいずれかからなる地盤である。また、中位地盤Yとは、圧密沈下や液状化の虞のない地盤であり、例えば、N値が3以上の粘土質土、またはN値が10以上の砂質土からなる地盤である。また、支持地盤Zとは、建造物10の荷重を十分に支持することのできる地盤であり、例えば、N値が50以上の地盤である。
建造物10の基礎部12には、図1および図2に示すように、それぞれの側面を囲繞する態様で縁切り体20が設けてある。本実施の形態では、押出法ポリスチレンフォームから成る縁切り体20を適用している。
さらに、建造物10には、図1および図2に示すように、下方から上方に向けて、砕石層30、レベルコンクリート体40、土間床50が順に設けてある。砕石層30は、建造物10において床面を構成すべき部位の地表面に砕石を敷き詰めて形成した部分である。この砕石層30は、縁切り体20の上面よりも下方に形成してある。レベルコンクリート体40は、砕石層30が形成された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設して構築したものである(いわゆる捨てコンクリート)。このレベルコンクリート体40は、上面が縁切り体20の上面よりも下方となるように構成してある。
土間床50は、建造物10の床面を構成するもので、図2に示すように、土間スラブ51を備えている。土間スラブ51は、建造物10において床面を構築すべき部位の軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設して構築したものである。この土間スラブ51は、下面がレベルコンクリート体40と一体化している。また、土間スラブ51の内部には、略水平に沿って鉄筋52(図3参照)が配筋してある。これにより、土間スラブ51には、床面上に設置される工場機器などを支持するために必要な強度が確保されている。
ここで、図2に示すように、砕石層30、レベルコンクリート体40、および土間床50は、縁切り体20と接しているが、建造物10の基礎部12とは構造的に切り離されることになる。すなわち、砕石層30、レベルコンクリート体40、および土間床50の荷重は、建造物10の基礎部12に支持されるのではなく、軟弱地盤Xに支持されることになる。
また、土間床50には、図1および図2に示すように、仕切壁60が設けてある。仕切壁60は、平面視で格子状(図1参照)となるように、土間スラブ51の下面から鉛直下方に延在するもので、図2に示すように、その先端部が軟弱地盤Xにまで達している。この仕切壁60は、上端部が土間スラブ51と一体化している。また、この仕切壁60は、コンクリートまたはモルタルによって構築してある。
図2に示すように、仕切壁60は、平面視で格子状(図1参照)を成すことによって、土間スラブ51の下方の軟弱地盤Xを複数の分割領域Sに区画する態様で設けられることになる。この複数の分割領域Sは、図1において上下方向および左右方向に整列して配置されている。以下の説明において、図1において左上方となる縁切り体20を囲むように設けられる分割領域Sを「S11」と称する。さらに、分割領域S11から図1において下方に向けて順に分割領域Sを「S21」、「S31」、「S41」と称する。また、分割領域S11から図1において右側に向けて順に分割領域Sを「S12」、「S13」、「S14」、「S15」、「S16」、「S17」と称する。また、分割領域S21から図1において右側に向けて順に分割領域Sを「S22」、「S23」、「S24」、「S25」、「S26」、「S27」と称する。また、分割領域S31から図1において右側に向けて順に分割領域Sを「S32」、「S33」、「S34」、「S35」、「S36」、「S37」と称する。また、分割領域S41から図1に向けて右側に向けて順に分割領域Sを「S42」、「S43」、「S44」、「S45」、「S46」、「S47」と称する。
また、仕切壁60の上下方向長さは、建造物10が建造される地盤について実施する標準貫入試験や圧密試験などの地盤調査の結果と、想定する土間スラブ51の荷重とから予め推定される地盤の沈下量よりも大きくなるように構成してある。すなわち、このようにすることで、地盤沈下が生じた場合にも、少なくとも仕切壁60の下端部が地中に配置されることになる。
図3は、図1に示した土間床の施工工程を示す要部拡大断面図である。上述した土間床50を構築する場合には、まず、建造物10において床面を構成すべき部位の軟弱地盤Xを、平面視で格子状となるように掘削して枠溝XGを形成する。この枠溝XGは、一定の幅(図3において左右方向長さ)で形成した溝である。
次に、枠溝XGの開口縁部に沿って縁取るように型枠部材Fを配置する。この型枠部材Fは、四角柱状の部材であり、外表面が枠溝XGの内壁面と連続するように配置してある(いわゆるバタ角)。
そして、この状態で、枠溝XGに開口縁部を越えるまでコンクリートまたはモルタルを打設し、その上面を型枠部材Fの上面と合致させることにより、仕切壁60を構築する。
しかる後、打設したコンクリートまたはモルタルが固化した段階で型枠部材Fを取り除き、建造物10において床面を構成すべき部位の地表面に砕石を敷き詰めて砕石層30を形成する。この砕石層30が形成された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設してレベルコンクリート体40を構築する。このとき、レベルコンクリート体40の上面を、仕切壁60の上面と略同一平面上に位置させる。
最後に、レベルコンクリート体40上に略水平に沿って鉄筋52を配置し、この状態で、レベルコンクリート体40および仕切壁60が構築された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設して土間スラブ51を構築する。このようにすれば、建造物10に土間床50を設けることができる。この状態においては、土間スラブ51の下面がレベルコンクリート体40の上面と接して一体化することになる。また、この状態においては、仕切壁60の上部が、レベルコンクリート体40と接するとともに、土間スラブ51と接して該土間スラブ51と一体化することになる。
上記のように構成した土間床50では、建造物10において床面を構成すべき部位の軟弱地盤Xに、コンクリートを打設して構築した土間スラブ51を備え、この土間スラブ51によって建造物10の床面を構築してある。本実施の形態では、土間床50は、建造物10の基礎部12から切り離した状態となるため、該土間床50の荷重を軟弱地盤Xのみに支持させることができることになり、建造物10の基礎部12を大型化しなくとも良く、これによるコスト増大を招来することがない。しかしながら、この土間床50では、建造物10が建造される地盤の影響を強く受けることになる。すなわち、不同沈下が生じた場合には、これに伴い土間スラブ51も不均一に沈下することになり、図4に示すように、建造物10の床面が沈下前の高さよりも低くなる事態を招来することになる。
こうした問題を解決する場合には、まず、図5に示すように、土間スラブ51において分割領域S35の上方域となる修復すべき部位に、レベルコンクリート体40の下面まで上下方向に貫通する注入孔70を形成する。そして、この注入孔70に挿入した注入管Pを介して、モルタルやソイルセメントなどの液体状の固定液をレベルコンクリート体40と地表面との間に注入する。このように固定液をレベルコンクリート体40と地表面との間に注入すると、該固定液が不同沈下によって分割領域S35に生じた空隙SGに充填されることになる。この結果、やがて固定液の注入圧力がレベルコンクリート体40の下面に作用することになり、該固定液の注入圧力によって地表面からレベルコンクリート体40および土間スラブ51が押上げられることになる。したがって、土間スラブ51を沈下前の高さまで押上げた状態で固定液が固化して固化層80となれば、建造物10において修復すべき部位の床面を沈下前の高さに復帰させることができる。
ここで、分割領域S35は、図1に示すように、平面視で格子状を成す仕切壁60によって隣接する8つの分割領域S24、S25、S26、S34、S36、S44、S45、S46と分断されている。また、図4に示すように、不同沈下によって分割領域S35に生じた空隙SGも、仕切壁60によって隣接する8つの分割領域S24、S25、S26、S34、S36、S44、S45、S46と分断されている。したがって、上述したように空隙SGに固定液を注入した場合にも、この固定液が隣接する8つの分割領域S24、S25、S26、S34、S36、S44、S45、S46に注入されることがなく、該固定液の圧力が隣接する8つの分割領域S24、S25、S26、S34、S36、S44、S45、S46に伝達されることもない。
また、土間スラブ51において修復すべき部位が他の分割領域S、例えば分割領域S36の上方域であっても、上記と同様に注入孔70を形成し、この注入孔70に挿入した注入管Pを介して固定液をレベルコンクリート体40と地表面との間に注入すれば、固定液の注入圧力によって地表面からレベルコンクリート体40および土間スラブ51を押上げることができる。したがって、土間スラブ51を沈下前の高さまで押上げた状態で固定液が固化すれば、建造物10において修正すべき部位の床面を沈下前の高さに復帰させることができる。
この場合においても、分割領域S36は、図1に示すように、いずれも平面視で格子状を成す仕切壁60によって隣接する8つの分割領域S25、S26、S27、S35、S37、S45、S46、S47と分断されている。したがって、上記と同様に固定液を注入した場合にも、この固定液が隣接する8つの分割領域S25、S26、S27、S35、S37、S45、S46、S47に注入されることがなく、該固定液の圧力が隣接する8つの分割領域S25、S26、S27、S35、S37、S45、S46、S47に伝達されることもない。
上記のように構成した土間床50によれば、土間スラブ51の下方の軟弱地盤Xを複数の分割領域Sに区画する態様で該土間スラブ51の下面から下方に延在する仕切壁60を設けて構成してある。このため、土間スラブ51において修復すべき部位と地表面との間に固定液を注入すると、該土間スラブ51の下方の軟弱地盤Xが仕切壁60によって区画されていれば、固定液が特定の分割領域内のみに注入されることになり、隣接する他の分割領域内に注入されることがない。したがって、土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに押上げても、修復不要な部位を押上げる事態を招来することがない。
しかも、特定の分割領域毎に固定液を個別に注入することができれば、固定液の注入量、固定液の注入速度、固定液の種類なども分割領域毎に変更することができる。したがって、土間スラブ51において修復すべき部位をより正確に沈下前の高さに復帰させることができる。
また、上記のように構成した土間床50によれば、仕切壁60の上端部を土間スラブ51と一体化しているため、従来のように仕切壁60を設けない土間スラブと比較して、土間スラブ51の曲げ剛性を高めることができる。したがって、不同沈下が生じた場合に、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制することができる。
さらに、上記のように構成した土間床50によれば、土間スラブ51において修復すべき部位に対応する分割領域に固定液を注入できれば、該分割領域の上方域のいかなる位置に注入孔70を形成しても良い。したがって、例えば、床面上に工場機器が設置されている状況にあってもこれを避けて注入孔70が形成できれば、床面上の工場機器を移動することなく土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに復帰させることが可能となり、施工性に優れている。
また、上記のように構成した土間床50によれば、予め床面上の死荷重や活荷重が推定できる場合に、これらの荷重に応じて仕切壁60を設けることにより、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制することができる。すなわち、床面上の荷重が大きい部位の下方の軟弱地盤Xをより細分化した分割領域に区画する態様で仕切壁60を設ければ、土間スラブ51において荷重が大きい部分の曲げ剛性を集中して高めることができる。したがって、不同沈下が生じた場合に、土間スラブ51が不均一に沈下する事態をより抑制することができる。
さらに、予め床面上の死荷重や活荷重が推定できる場合には、床面上の荷重が大きい部位の下方の軟弱地盤Xを、図1において平面視の面積をより小さくした分割領域に区画する一方、床面上の荷重が小さい部位の下方の軟弱地盤Xを、図1において平面視の面積をより大きくした分割領域に区画する態様で仕切壁60を設ければ、土間スラブ51の修復の微調整することができる。すなわち、床面上の荷重が大きい場合であっても、分割領域を小さくすれば、固定液の注入圧力を小さくしても土間スラブ51を押上げることが可能となる。一方、床面上の荷重が小さい場合には、分割領域を大きくしても、固定液の注入圧力を大きくすることなく土間スラブ51を押上げることが可能となる。したがって、より小さな固定液の注入圧力で土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに復帰させることが可能となり、土間スラブ51の修復の微調整することができる。
なお、本実施の形態では、枠溝XGにコンクリートまたはモルタルを打設することにより、仕切壁60を構築しているが、該枠溝XGの内部に鉄筋や鉄骨を配置した状態でコンクリートを打設することにより、RC構造(Reinforced Concrete)やSRC構造(Steel Reinforced Concrete)の仕切壁としても良い。
例えば、図6に示すように、枠溝XGの内部に鉄筋161を配置した状態で、該枠溝XGに開口縁部を越えるまでコンクリートを打設し、その上面を型枠部材Fの上面と合致させることにより、仕切壁160を構築する。図6からも明らかなように、鉄筋161は、一端部にシェアコネクタ部162を有し、枠溝XGの内部に配置した状態で型枠部材Fの上面を超える位置にシェアコネクタ部162の先端部が配置されている。
しかる後、打設したコンクリートが固化した段階で型枠部材Fを取り除き、建造物10において床面を構成すべき部位の地表面に砕石を敷き詰めて砕石層30を形成する。この砕石層30が形成された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設してレベルコンクリート体40を構築する。このとき、レベルコンクリート体40の上面を、仕切壁160の上面と略同一平面上に位置させる。
最後に、レベルコンクリート体40上に略水平に沿って鉄筋52を配置し、この状態で、レベルコンクリート体40および仕切壁160が構築された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設して土間スラブ151を構築する。このようにすれば、建造物10に土間床150を設けることができる。この状態においては、土間スラブ151の下面がレベルコンクリート体40の上面と接して一体化することになる。また、この状態においては、仕切壁160の上部が、レベルコンクリート体40と接するとともに、土間スラブ151と接して該土間スラブ151と一体化することになる。さらに、この状態においては、鉄筋161のシェアコネクタ部162の先端部が、土間スラブ151の内部に配置されることになる。
このような土間床150においても、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、この土間床150においては、鉄筋161のシェアコネクタ部162の先端部を、土間スラブ151の内部に配置したため、仕切壁160と土間スラブ151との一体性を高めることができる。しかも、仕切壁160の内部に鉄筋161を配筋したため、該仕切壁160の剛性を高めることができる。これにより、土間スラブ151の曲げ剛性をより高めることができる。したがって、不同沈下が生じた場合に、土間スラブ151が不均一に沈下する事態をより抑制することができる。
また、本実施の形態では、仕切壁60、土間スラブ51、およびレベルコンクリート体40をそれぞれ個別に構築しているが、これらを土間スラブとして一体に構築しても良い。
例えば、図7に示すように、建造物10において床面を構成すべき部位の軟弱地盤Xを、平面視で格子状となるように掘削して枠溝XGを形成する。この枠溝XGは、一定の幅(図7において左右方向長さ)で形成した溝である。
次に、建造物10において床面を構成すべき部位の地表面に砕石を敷き詰めて砕石層30を形成する。但し、枠溝XGの内部には、砕石層30を形成しない。
最後に、砕石層30上に略水平に沿って鉄筋52を配置し、この状態で、枠溝XGおよび砕石層30が形成された軟弱地盤Xに、上面が水平となるようにコンクリートを打設して土間スラブ251を構築する。このようにすれば、建造物10に土間床250を設けることができる。この状態においては、レベルコンクリート体および仕切壁が、土間スラブ251に一体に設けられることになる。
このような土間床250においても、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、この土間床250においては、レベルコンクリート体および仕切壁を土間スラブ251と一体に構築したため、これらをそれぞれ個別に構築する場合と比較して、施工工程を簡略化することができる。
図8は、図1に示した土間床の変形例を示す平面概念図、図9は、図8におけるB−B線断面図である。この変形例に示した土間床350は、上述した実施の形態と同様に、建造物10の床面を構成するもので、第1沈下防止部材および第2沈下防止部材を備える点のみが異なっている。なお、変形例において上述した実施の形態と同様の構成に関しては同一の符号を付してそれぞれの詳細説明を省略する。
第1沈下防止部材(支持部材)391は、土間スラブ51を支持するもので、複数の分割領域Sにおいて分割領域S12、S13、S21、S22、S23、S24、S32、S33にそれぞれ複数設けてある。この第1沈下防止部材391は、それぞれ土間スラブ51の下面から鉛直下方に延在する円柱状の部材であり、図9に示すように、軟弱地盤Xを貫通した後、その先端部が中位地盤Yにまで達している。この変形例では、第1沈下防止部材391に既製コンクリート杭を適用している。
また、第1沈下防止部材391は、建造物10が建造される地盤について実施する標準貫入試験や圧密試験などの地盤調査の結果と、想定する土間スラブ51の荷重とから予め推定される該土間スラブ51の沈下量を小さくするように配置してある。すなわち、不同沈下が生じた場合にも、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制するように第1沈下防止部材391を配置してある。本実施の形態では、図8に示すように、第1沈下防止部材391は、分割領域S12、S13、S31、S32にそれぞれ6本配置してある一方、分割領域S21、S22、S23、S24にそれぞれ12本配置してある。具体的には、分割領域S12、S13、S31、S32においては、図8において上下方向に互いに等間隔に配置した3本を1列とし、これを図8において左右方向に2列整列して配置してある。また、分割領域S21、S22、S23、S24においては、図8において上下方向に互いに等間隔に配置した6本を1列とし、これを図8において左右方向に2列整列して配置してある。
第2沈下防止部材(支持部材)392は、第1沈下防止部材391とともに土間スラブ51を支持するもので、複数の分割領域Sにおいて分割領域S15、S16、S25、S26、S27、S35、S36にそれぞれ複数設けてある。この第2沈下防止部材392は、それぞれ土間スラブ51の下面から鉛直下方に延在する四角柱状の部材であり、図9に示すように、軟弱地盤Xを貫通した後、その先端部が中位地盤Yにまで達している。この変形例では、第2沈下防止部材392に、土砂にセメント系固化材を加えて混合したセメント系地盤改良体を適用している。
また、第2沈下防止部材392は、建造物10が建造される地盤について実施する標準貫入試験や圧密試験などの地盤調査の結果と、想定する土間スラブ51の荷重とから予め推定される該土間スラブ51の沈下量を小さくするように配置してある。すなわち、不同沈下が生じた場合にも、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制するように第2沈下防止部材392を配置してある。本実施の形態では、図8に示すように、第2沈下防止部材392は、分割領域S15、S16、S35、S36にそれぞれ6本配置してある一方、分割領域S25、S26、S27にそれぞれ12本配置してある。具体的には、分割領域S15、S16、S35、S36においては、図8において上下方向に互いに等間隔に配置した3本を1列とし、これを図8において左右方向に2列整列して配置してある。また、分割領域S25、S26、S27においては、図8において上下方向に互いに等間隔に配置した6本を1列とし、これを図8において左右方向に2列整列して配置してある。
ここで、図10からも明らかなように、第1沈下防止部材391は、それぞれ上端面が土間スラブ51の下面と当接しているが、該土間スラブ51とは構造的に切り離してある。同様に、第2沈下防止部材392も、それぞれ上端面が土間スラブ51の下面と当接しているが、該土間スラブ51とは構造的に切り離してある。
この変形例の土間床350においても、建造物10において床面を構成すべき部位の軟弱地盤Xに、コンクリートを打設して構築した土間スラブ51を備え、この土間スラブ51によって建造物10の床面を構築してある。この変形例でも、土間床50は、建造物10の基礎部12から切り離した状態となるため、該土間床350の荷重を軟弱地盤Xのみに支持させることができることになり、建造物10の基礎部12を大型化しなくとも良く、これによるコスト増大を招来することがない。しかしながら、この土間床350では、建造物10が建造される地盤の影響を強く受けることになる。すなわち、不同沈下が生じた場合には、これに伴い土間スラブ51も不均一に沈下することになり、図11に示すように、建造物10の床面が沈下前の高さよりも低くなる事態を招来することになる。ここで、この変形例においては、土間スラブ51を第1沈下防止部材391および第2沈下防止部材392にもそれぞれ支持させている。これら第1沈下防止部材391および第2沈下防止部材392は、それぞれ下端部を中位地盤Yに支持させているため、地盤沈下が生じた場合であっても沈下する虞が少ない。したがって、土間スラブ51において第1沈下防止部材391および第2沈下防止部材392に支持されている部位が沈下する事態を防止することができる。さらに、第1沈下防止部材391および第2沈下防止部材392は、施工が容易であり、上述した効果を低コストで、かつ簡便に得ることができる。
仮に、土間スラブ51において第1沈下防止部材391および第2沈下防止部材392に支持されていない部位が沈下することによって、建造物10の床面が沈下前の高さよりも低くなる事態を招来した場合にも、上述した実施の形態と同様に、建造物10において修復すべき部位の床面を沈下前の高さに復帰させることができる。すなわち、まず、図12に示すように、土間スラブ51において分割領域S32の上方域となる修復すべき部位に、レベルコンクリート体40の下面まで上下方向に貫通する注入孔70を形成する。そして、この注入孔70に挿入した注入管Pを介して、モルタルやソイルセメントなどの液体状の固定液をレベルコンクリート体40と地表面との間に注入する。このように固定液をレベルコンクリート体40と地表面との間に注入すると、該固定液が不同沈下によって分割領域S32に生じた空隙SGに充填されることになる。この結果、やがて固定液の注入圧力がレベルコンクリート体40の下面に作用することになり、該固定液の注入圧力によって地表面からレベルコンクリート体40および土間スラブ51が押上げられることになる。したがって、土間スラブ51を沈下前の高さまで押上げた状態で固定液が固化して固化層80となれば、建造物10において修復すべき部位の床面を沈下前の高さに復帰させることができる。
ここで、分割領域S35は、図8に示すように、平面視で格子状を成す仕切壁60によって隣接する8つの分割領域S21、S22、S23、S31、S33、S41、S42、S43と分断されている。また、図12に示すように、不同沈下によって分割領域S35に生じた空隙SGも、仕切壁60によって隣接する8つの分割領域S21、S22、S23、S31、S33、S41、S42、S43と分断されている。したがって、上述したように空隙SGに固定液を注入した場合にも、この固定液が隣接する8つの分割領域S21、S22、S23、S31、S33、S41、S42、S43に注入されることがなく、該固定液の圧力が隣接する8つの分割領域S21、S22、S23、S31、S33、S41、S42、S43に伝達されることもない。
この変形例の土間床350においても、土間スラブ51の下方の軟弱地盤Xを複数の分割領域Sに区画する態様で該土間スラブ51の下面から下方に延在する仕切壁60が設けてある。このため、土間スラブ51において修復すべき部位と地表面との間に固定液を注入すると、該土間スラブ51の下方の軟弱地盤Xが仕切壁60によって区画されていれば、固定液が特定の分割領域内のみに注入されることになり、隣接する他の分割領域内に注入されることがない。したがって、土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに押上げても、修復不要な部位を押上げる事態を招来することがない。
しかも、特定の分割領域毎に固定液を個別に注入することができれば、固定液の注入量、固定液の注入速度、固定液の種類なども分割領域毎に変更することができる。したがって、土間スラブ51において修復すべき部位をより正確に沈下前の高さに復帰させることができる。
また、この変形例の土間床350においても、仕切壁60の上端部を土間スラブ51と一体化しているため、従来のように仕切壁60を設けない土間スラブと比較して、土間スラブ51の曲げ剛性を高めることができる。したがって、不同沈下が生じた場合に、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制することができる。
さらに、この変形例の土間床350においても、土間スラブ51において修復すべき部位に対応する分割領域に固定液を注入できれば、該分割領域の上方域のいかなる位置に注入孔70を形成しても良い。したがって、例えば、床面上に工場機器が設置されている状況にあってもこれを避けて注入孔70が形成できれば、床面上の工場機器を移動することなく土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに復帰させることが可能となり、施工性に優れている。
また、この変形例の土間床350においても、予め床面上の死荷重や活荷重が推定できる場合に、これらの荷重に応じて仕切壁60を設けることにより、土間スラブ51が不均一に沈下する事態を抑制することができる。すなわち、床面上の荷重が大きい部位の下方の軟弱地盤Xをより細分化した分割領域に区画する態様で仕切壁60を設ければ、土間スラブ51において荷重が大きい部分の曲げ剛性を集中して高めることができる。したがって、不同沈下が生じた場合に、土間スラブ51が不均一に沈下する事態をより抑制することができる。
さらに、予め床面上の死荷重や活荷重が推定できる場合には、床面上の荷重が大きい部位の下方の軟弱地盤Xを、図8において平面視の面積をより小さくした分割領域に区画する一方、床面上の荷重が小さい部位の下方の軟弱地盤Xを、図8において平面視の面積をより大きくした分割領域に区画する態様で仕切壁60を設ければ、土間スラブ51の修復の微調整することができる。すなわち、床面上の荷重が大きい場合であっても、分割領域を小さくすれば、固定液の注入圧力を小さくしても土間スラブ51を押上げることが可能となる。一方、床面上の荷重が小さい場合には、分割領域を大きくしても、固定液の注入圧力を大きくすることなく土間スラブ51を押上げることが可能となる。したがって、より小さな固定液の注入圧力で土間スラブ51において修復すべき部位を沈下前の高さに復帰させることが可能となり、土間スラブ51の修復の微調整することができる。
なお、上述した変形例では、第1沈下防止部材391に既製コンクリート杭を適用しているが、木杭、鋼管杭、場所打ちコンクリート杭、形鋼、およびセメント系地盤改良体を第1沈下防止部材391に適用しても良い。また、第2沈下防止部材392についても、セメント系地盤改良体を適用しているが、既製コンクリート杭、木杭、鋼管杭、場所打ちコンクリート杭、および形鋼を第2沈下防止部材392に適用しても良い。
また、上述した変形例では、第1沈下防止部材391を複数の分割領域Sにおいて分割領域S12、S13、S21、S22、S23、S24、S32、S33にそれぞれ特定本数整列して配置しているが、必ずしも第1沈下防止部材391を整列して配置する必要はなく、本数もこれに限らない。特に、予め床面上の死加重や活荷重が推定できる場合には、これらの荷重が大きい部位を集中して支持することが好適である。また、第2沈下防止部材392についても、複数の分割領域Sにおいて分割領域S15、S16、S25、S26、S27、S35、S36にそれぞれ特定本数整列して配置しているが、必ずしも第2沈下防止部材392を整列して配置する必要はなく、本数もこれに限らない。特に、予め床面上の死加重や活荷重が推定できる場合には、これらの荷重が大きい部位を集中して支持することが好適である。
さらに、上述した変形例では、第1沈下防止部材391の上端面をそれぞれ土間スラブ51の下面に当接させているが、必ずしも土間スラブ51の下面に当接させなくとも良い。例えば、図13に示すように、第1沈下防止部材391の上端面をそれぞれレベルコンクリート体40の下面に当接させても同様の作用効果を奏することができる。また、図14に示すように、第1沈下防止部材391の上端面をそれぞれ砕石層30の下面に接するようにしても同様の作用効果を奏することができる。さらに、図15に示すように、第1沈下防止部材391の上端面と、土間スラブ51の下面との間に伝達体393を介在させても同様の作用効果を奏することができる。この場合、伝達体393は、土間スラブ51の荷重を第1沈下防止部材391に伝達できれば良く、例えば、砂、砕石、コンクリート、発泡スチロール、ゴム、ソイルセメント、土嚢、鉄板、および形鋼を適用することができる。また、第2沈下防止部材392についても、上端面をそれぞれ土間スラブ51の下面に当接させているが、必ずしも土間スラブ51の下面に当接させなくとも良い。例えば、第2沈下防止部材392の上端面をそれぞれレベルコンクリート体40の下面に当接させても同様の作用効果を奏することができる。また、第2沈下防止部材392の上端面をそれぞれ砕石層30の下面に接するようにしても同様の作用効果を奏することができる。さらに、第2沈下防止部材392の上端面と土間スラブ51の下面との間に伝達体を介在させても同様の作用効果を奏することができる。この場合、伝達体は、土間スラブ51の荷重を第2沈下防止部材392に伝達できれば良く、例えば、砂、砕石、コンクリート、発泡スチロール、ゴム、ソイルセメント、土嚢、鉄板、および形鋼を適用することができる。