JP2010195719A - 感音難聴を予防又は改善するための液体組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】感音難聴を予防又は改善するための液体組成物を提供する。
【解決手段】精製水に0.1〜5ppmの水素分子を溶解した水溶液を含む液体組成物。該液体組成物は、精製水に溶解した水素分子が過飽和の状態にあることが好ましい。該精製水としては、逆浸透膜(RO膜)、イオン交換膜及び/又は限外ろ過膜(UF膜)を用いて精製された精製水であることが好ましい。該液体組成物中の溶存酸素量は12ppm以下であることが好ましい。該液体組成物は、特に健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品及び医薬品として使用される。
【選択図】なし

Description

本発明は、感音難聴を予防又は改善するための、特に健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品及び医薬品に関するものである。
感音難聴は、音を感知する感覚器である耳のうち、空気の振動である音刺激を電気信号に変換する装置である内耳あるいは、さらに中枢側の神経系の障害により生じるが、多くは内耳の蝸牛が障害されて起こることが多い。感音難聴はヒトで最も多い身体障害であり、我が国では高度難聴・聾の患者は36万人、補聴器などを自己使用している潜在患者数を含めると600万人の内耳性難聴の患者がいると言われている。働き盛りの世代に多い突発性難聴に限っても、年間4万人近くの新規患者の発生がある。
感音難聴の原因としては、音響外傷、耳毒性薬物、遺伝子異常、老化などがある。また、メニエール病などの内リンパ水腫に関連する難治性疾患も感音難聴を引き起こす。聾もしくは高度難聴は新生児の1000−2000人に1人認められ、2000人に1人は成人するまでに高度難聴を発症する。75歳を超えた人口の4人に1人は、補聴器が必要なレベルの難聴が存在する。
感音難聴の発生機序はまだ完全に解明されてはいない。しかしながら、活性酸素(フリーラジカル)とそれによる内耳損傷の関与がいくつかの文献で示唆されている(例えば、Choi, C. H.; Chen, K.; Vasquez-Weldon, A.; Jackson, R. L.; Floyd, R. A.; Kopke, R. D. Effectiveness of 4-hydroxy phenyl N-tert-butylnitrone (4-OHPBN) alone and in combination with other antioxidant drugs in the treatment of acute acoustic trauma in chinchilla. Free Radic. Biol. Med. 44:1772-1784; 2008など参照)。活性酸素分子自身は外来病原体に対する生体の防御反応と考えられるが、同時にDNA損傷や脂質・タンパク質の酸化、生体膜の透過性の変化や膜上のイオン輸送体や酵素・受容体の変化を起こす(例えば、Linseman, D. A. Targeting oxidative stress for neuroprotection. Antioxid. Redox Signal.; 2008など参照)。活性酸素種にはスーパーオキサイド(O2-)やヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素(H22)などがあり、嫌気的代謝によって産生される。これらの多くは蝸牛細胞の損傷をひきおこすと考えられる。活性酸素がどのようなメカニズムで蝸牛損傷をひきおこすかについては不明な点が残されている。
一方、抗酸化剤の内耳障害治療への応用については、近年急速に研究が進んでいる。例として、Ohinataらはグルタチオンが騒音難聴から蝸牛を保護することを報告している(非特許文献1)。また、R−フェニルイソプロピルアデノシン(R−PIA、アデノシンアナログ)やグルタチオンの前駆体であるN−アセチルL−システイン(NAC)、ミトコンドリア生合成基剤となるアセチル−L−カルニチン(ALCAR)などについての報告が相次いでいる(非特許文献2〜5参照)。これらの薬剤は、部分的には有毛細胞死を防ぎ難聴を防止する効果をしめしているが、完全に成功したものはない。そのためビタミンA、C、Eなどを加えたいくつかの薬剤の同時投与などの試みが行われている(非特許文献6及び7参照)。
感音難聴の根本的治療手段は現在、急性期のステロイド投与しかなく、有効率は45−57%程度と決して満足できるレベルのものではない(非特許文献8参照)。
Ohinata, Y.; Miller, J. M.; Altschuler, R. A.; Schacht, J. Intense noise induces formation of vasoactive lipid peroxidation products in the cochlea. Brain Res. 878:163-173; 2000 Hu, B. H.; Zheng, X. Y.; McFadden, S. L.; Kopke, R. D.; Henderson, D. R-phenylisopropyladenosine attenuates noise-induced hearing loss in the chinchilla. Hear. Res. 113:198-206; 1997 Kopke, R. D.; Jackson, R. L.; Coleman, J. K.; Liu, J.; Bielefeld, E. C.; Balough, B. J. NAC for noise: from the bench top to the clinic. Hear. Res. 226:114-125; 2007 Kopke, R. D.; Weisskopf, P. A.; Boone, J. L.; Jackson, R. L.; Wester, D. C.; Hoffer, M. E.; Lambert, D. C.; Charon, C. C.; Ding, D. L.; McBride, D. Reduction of noise-induced hearing loss using L-NAC and salicylate in the chinchilla. Hear. Res. 149:138-146; 2000. Hagen, T. M.; Ingersoll, R. T.; Wehr, C. M.; Lykkesfeldt, J.; Vinarsky, V.; Bartholomew, J. C.; Song, M. H.; Ames, B. N. Acetyl-L-carnitine fed to old rats partially restores mitochondrial function and ambulatory activity. Proc. Natl Acad. Sci. USA 95:9562-9566; 1998. Le Prell, C. G.; Hughes, L. F.; Miller, J. M. Free radical scavengers vitamins A, C, and E plus magnesium reduce noise trauma. Free Radic Biol Med 42:1454-1463; 2007. Choi, C. H.; Chen, K.; Vasquez-Weldon, A.; Jackson, R. L.; Floyd, R. A.; Kopke, R. D. Effectiveness of 4-hydroxy phenyl N-tert-butylnitrone (4-OHPBN) alone and in combination with other antioxidant drugs in the treatment of acute acoustic trauma in chinchilla. Free Radic. Biol. Med. 44:1772-1784; 2008. 暁 清文.虚血性内耳病変の発症機序と臨床.2007年日本耳鼻咽喉科学会宿題報告
本発明は、感音難聴を予防又は改善するための液体組成物を提供することを目的とする。
本発明は、精製水に0.1〜5ppmの水素分子を溶解した水溶液を含む感音難聴を予防又は改善するための液体組成物を提供する。
本発明の液体組成物を摂取することにより、感音難聴を予防又は改善することができる。したがって、本発明は、感音難聴を予防剤又は改善剤として、日常生活において継続的に摂取することが容易で安全性に優れた液体組成物を提供することができる。
老化モデルマウス実験における、16週齢(12週経過後)の実施例1の液体組成物(H2O)あるいは純水(H2)を摂取させた群の聴力の関係を示すグラフである。エラーバーは標準誤差を示す。
本発明において、感音難聴とは、音響外傷による感音難聴(騒音性感音難聴)、耳毒性薬物による感音難聴、遺伝子異常による感音難聴、老化性感音難聴などを含む。
本発明の液体組成物は、精製水に水素分子を溶解した水溶液を含む。
精製水は、技術的に公知の方法を用いて調製することができる。公知の精製方法の中でも、逆浸透膜(RO膜)、イオン交換膜、限外ろ過膜(UF膜)などを用いる精製方法が好ましい。これらの精製方法は、単独で、又は2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
RO膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホンなどが挙げられる。RO膜の構造としては、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜などが挙げられる。好ましくは、芳香族ポリアミド系のスパイラル膜である。
イオン交換膜としては、薬品再生式、電気再生式、非再生式カートリッジなどが挙げられる。好ましくは、電気再生式である。
UF膜の材質としては、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セラミックなどが挙げられる。UF膜の構造としては、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、平膜などが挙げられる。好ましくは、ポリスルホンの中空糸膜である。
精製水は、液体組成物100mL中のナトリウム含有量が5mg/l以下であり、好ましくは0.5mg以下であり、より好ましくは0.01mg以下である。また、精製水は、液体組成物100mL中のカリウム含有量が5mg以下であり、好ましくは0.1mg以下であり、より好ましくは0.01mg以下である。また、精製水は、液体組成物100mL中のマグネシウム含有量が13mg以下であり、好ましくは0.1mg以下であり、より好ましくは0.005mg以下である。また、精製水は、液体組成物100mL中のカルシウム含有量が35mg以下であり、好ましくは1mg以下であり、より好ましくは0.01mg以下である。精製水中のナトリウム含有量、カリウム含有量、マグネシウム含有量、カルシウム含有量は、食品衛生法に準じて測定することができる(ナトリウム[原子吸光光度法]、カリウム[原子吸光光度法]、マグネシウム[ICP発光分析法]、カルシウム[ICP発光分析法])。
精製水への水素分子の溶解は、技術的に公知の方法を用いて行なうことができる。例えば、特開平8−56632号公報、特開2002−172317号公報に開示された方法に基づき、加圧、バブリング等を行い精製水に混合する。この場合、水素ガスをミキサーやフィルター等を用い物理的に微小化を行なうことでより効率的に添加することができる。精製水に溶解した水素分子の量は、好ましくは0.1〜5ppmであり、より好ましくは0.8〜1.5ppmである。また、精製水に溶解した水素分子は過飽和の状態にあるのが好ましい。
本発明の液体組成物における、溶存酸素量は、好ましくは12ppm以下であり、より好ましくは3ppm以下である。
本発明の液体組成物には、さらにアスコルビン酸、フェノール化合物(トコフェノール)、オキシ酢酸(クエン酸、酒石酸、リンゴ酸)、フラボノイドなどを添加することが出来る。また、本発明の液体組成物には、特定保健用食品として、食物繊維(難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物)、オリゴ糖(大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖)、豆鼓エキスなどを添加することも出来る。また、本発明の液体組成物には、健康食品として、βーグルカンなどを添加することが出来る。
本発明の液体組成物は、経口により摂取される。その摂取量は、疾患の種類、症状の程度、年齢、体重などに応じて決定されるが、一般的には、成人に対して1日当たり、300mL〜1500mLであり、好ましくは300〜900mLである。本発明の液体組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品及び医薬品からなる群より選ばれるものとして利用できる。
(実施例1)
原水を、RO装置(芳香族ポリアミド系のスパイラル膜)、イオン交換装置(電気再生式)及びUF装置(ポリスルホンの中空糸膜)に順次供した。得られた精製水のナトリウム含有量、カリウム含有量、マグネシウム含有量及びカルシウム含有量は検出限界以下(食品衛生法に準じて測定。ナトリウム[原子吸光光度法]、カリウム[原子吸光光度法]、マグネシウム[ICP発光分析法]、カルシウム[ICP発光分析法])であった。この精製水を、ポリプロピレン製の中空糸膜フィルターを用いて脱気を行なった後、1.5〜2気圧をかけ、水素ガスは約4気圧にしたものをラインミキサー上で混合し水素分子を0.8〜1.5ppm溶解させて液体組成物を調製した。
(老化モデルマウス実験)
DBA/2Jマウス(4週齢、雄)を、老化性感音難聴に対する実施例1の液体組成物の影響を評価するために使用した。
12時間明/暗サイクルに制御された飼育室に入れ、普通食(株式会社船橋農場製F−2)と実施例1の液体組成物(n=7)又は純水(n=9)を12週間自由摂取させた。
聴力検査は聴性脳幹反応(ABR)にて行った。麻酔下の動物にPowerLab/4spソフトウェア(AD Instruments社, オーストラリア)を用いて片耳スピーカ(ES1spc; バイオリサーチ社)から刺激音を聞かせ、皮下に設置した3針電極から生体電位反応を測定した。刺激音として8キロヘルツ、16キロヘルツ、及び32キロヘルツのトーンバースト音を使用した。計測した波形はデジタル・アンプリファイア(MA2; Tucker-Davis Technologies社、アメリカ)にて増幅し、1024回の加算平均を行い5dB間隔で反応閾値を測定した。
図1のグラフから明らかなように、実施例1の液体組成物を12週飲んだ群と純水を12週飲んだ群で高音域の聴力に有意差があり、実施例1の液体組成物を飲んだ群で聴力悪化が抑制されていた。
(騒音性難聴モデル)
CBAマウス(4〜10週齢、雄)を、騒音性感音難聴に対する実施例1の液体組成物の影響を評価するために使用した。
12時間明/暗サイクルに制御された飼育室に入れ、普通食(株式会社船橋農場製F−2)と実施例1の液体組成物(n=4)又は純水(n=4)を14日間自由摂取させた。
聴力検査は聴性脳幹反応(ABR)にて行った。麻酔下の動物にPowerLab/4spソフトウェア(AD Instruments社, オーストラリア)を用いて片耳スピーカ(ES1spc; バイオリサーチ社)から刺激音を聞かせ、皮下に設置した3針電極から生体電位反応を測定した。刺激音として10キロヘルツ、20キロヘルツ、40キロヘルツのトーンバースト音を使用した、計測した波形はデジタル・アンプリファイア(MA2; Tucker-Davis Technologies社、アメリカ)にて増幅し、1024回の加算平均を行い5dB間隔で反応閾値を測定した。
100デシベル30分の音響曝露を行ったところ、実施例1の液体組成物を飲んだ群では聴力悪化が抑制された。

Claims (4)

  1. 精製水に0.1〜5ppmの水素分子を溶解した水溶液を含む感音難聴を予防又は改善するための液体組成物。
  2. 精製水に溶解した水素分子が過飽和の状態にある、請求項1記載の液体組成物。
  3. 前記精製水が逆浸透膜(RO膜)、イオン交換膜及び/又は限外ろ過膜(UF膜)を用いて精製された精製水である、請求項1又は2記載の液体組成物。
  4. 溶存酸素量が12ppm以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の液体組成物。
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