JP6993480B2 - 聴覚機能改善用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、聴覚機能改善作用を有する組成物に関する。
内耳の有毛細胞や聴神経に障害が起こることで発症する聴力の低下を感音性難聴といい、加齢性難聴や騒音性難聴が該当する。加齢や、強大音に長期間曝されることで、聴覚の受容器である蝸牛内の有毛細胞や聴神経が損傷を受け、死滅することが聴力の低下を引き起こすが、これらの細胞は増殖性がなく、一度死滅すると再生しない。そのため、進行し、慢性化した聴力低下は不可逆的で回復が難しいと考えられている。
感音性難聴の治療、緩和には、発症した直後であれば、血流促進剤や代謝改善剤が有効である場合があるが、加齢性難聴の大半は加齢に伴いゆっくりと進行し、本人が気づかないうちに聞こえが悪くなっているケースである。現状、そのような慢性化した感音性難聴に対しては、有効な薬剤もない。聴力の改善が見込める有効な手段としては補聴器の装着だが、日本での補聴器普及率は低い。
還元型コエンザイムQ10の投与(非特許文献1)等により酸化ストレスを抑制することが、加齢性難聴に対する予防的な効果をもたらすという報告はあるものの、一度低下した聴力の回復が見込める報告はこれまでになかった。
しかし、近年の研究の進歩により、非特許文献2で、難聴モデルマウスの蝸牛内細胞に神経栄養因子の一種であるNeurotrophin-3(NT3)を過剰発現させたところ、音刺激の受容細胞である有毛細胞と聴神経間のリボンシナプスが再生し、聴力が改善したことが報告された。さらに非特許文献3には、騒音障害によって消失したモルモット内耳のリボンシナプスがNT3の投与によって再生したことが記載されている。さらに、非特許文献4、非特許文献5では、リボンシナプスの減少が耳鳴りを引き起こす可能性が記載されている。
これらの先行技術を含め、内耳における神経栄養因子の役割の重要性が注目されている。
現在では、内耳蝸牛においてNT3の発現が増強されることで、難聴や難聴に伴う耳鳴りの予防や改善効果をもたらす可能性があると考えられているが、内耳の細胞を利用した薬物スクリーニングは効率的な方法がないこともあり、このような薬剤は未だ提供されていない。
一方、ニガキ科に属する植物の一種であるトンカットアリ(和名:ニガキ科ナガエカサ、学名:Eurycoma longifolia)の抽出物は、マレーシアなどの東南アジアでは古来より解熱剤、マラリア治療および胃病等の民間薬として用いられてきた。近年この抽出物に男性更年期障害の改善作用が見出された(特許文献1)。特許文献2には、トンカットアリの男性機能に対する活性は、クアシノイド類、クマリン類などの配糖体にあり、極性有機溶媒で抽出できることが記載されている。また、トンカットアリに含まれるユーリペプチドがコレステロールを出発点とする男性ホルモンの生合成に関与していることがわかり、生合成されたテストステロンが男性生殖器や脳、皮膚、筋肉、骨、腎臓、肝臓などの様々な標的部位で活性を示すことが報告されている。さらに、特許文献3には、トンカットアリの根から水抽出した後、ゲル濾過法によって分画することによってテストステロン作用を有する物質を単離できることが記載されている。また、男女問わずトンカットアリ抽出物の摂取により、免疫力が向上したことを示す報告がある。このように、トンカットアリはヒトへの様々な生理作用が報告されている摂取経験の多い植物であるが、聴覚への作用はこれまでに知られていない。
特開2009-051765号公報 国際公開第2008/018785号 米国特許第7132117号公報
Acta Oto-Laryngologica. 2010 Oct;130(10):1154-1162 Elife. 2014 Oct 20;3. Sci Rep. 2016 Apr 25;6:24907 PLoS One. 2013;8(3):e57247. J Neurosci Res. 2007 May 15;85(7):1489-98.
本発明は、トンカットアリ抽出物を有効成分として含有する、NT3の発現を増強し、聴覚機能を改善する組成物を提供することを課題とする。ここでいう聴覚機能の改善とは、聴力の改善、耳鳴りの軽減を含む聴覚機能全般の改善を指す。
本発明者らは、まず内耳における神経栄養因子NT3の発現増強物質のスクリーニング方法を検討した。内耳細胞は一般的に実験使用が困難であるため、内耳でNT3を発現する支持細胞と性質として類似点があると考えられたミュラー細胞を代替細胞として用いることとした。ミュラー細胞でのスクリーニング手法を検討し、そして確立した一次スクリーニング系によって多数の物質を評価したところ、トンカットアリの抽出物が、ミュラー細胞に対して作用し、神経栄養因子NT3の発現を増強する現象を見出した。そして動物の内耳組織を用いて研究を進めた結果、内耳組織においてトンカットアリ抽出物が、聴覚機能の低下の抑制又は改善に繋がる神経栄養因子NT3の発現増強作用を有することを見出し、本発明をなした。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)トンカットアリの抽出物を有効成分として含有する、NT3の発現増強用組成物。
(2)トンカットアリの抽出物を有効成分として含有する、聴覚機能低下予防及び/又は改善用組成物。
(3)トンカットアリの抽出物が水及び/又は有機溶剤抽出物である(1)または(2)に記載の組成物。
(4)トンカットアリの抽出物が、ユーリコマノン及び/又は13α-21-エポキシユーリコマノンを含有する抽出物である(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)ユーリコマノン及び/又は13α-21-エポキシユーリコマノンを有効成分とする聴覚機能低下予防及び/又は改善用組成物。
(6)トンカットアリの抽出物を有効成分として含有する、加齢性難聴の予防及び/又は改善用組成物。
本発明により、トンカットアリの抽出物を有効成分とする、NT3の発現を増強し、さらに聴覚機能低下予防及び/又は聴覚機能改善用組成物が提供される。また、本発明によりユーリコマノン及び/又は13α-21-エポキシユーリコマノンを有効成分とする、NT3の発現を増強し、聴覚機能の低下予防及び/又は聴覚機能改善用組成物が提供される。また本発明の組成物は加齢性難聴の予防及び/又は改善剤として有用である。
トンカットアリの抽出物がNT3の発現を増強することを示すグラフである。 トンカットアリの抽出物中に含まれるユーリコマノン、13α-21-エポキシユーリコマノンがNT3の発現を増強することを示すグラフである。 トンカットアリの抽出物中に含まれるクアシンは、NT3の発現増強作用に寄与しないことを示すグラフである。 in vivo試験において、中耳腔に局所投与したトンカットアリの抽出物が、内耳組織のNT3の発現を増強することを示すグラフである。 加齢性難聴モデルマウスへのトンカットアリ抽出物投与による、16kHzの周波数の刺激音に対する聴力閾値改善効果を示すグラフである。 加齢性難聴モデルマウスへのトンカットアリ抽出物投与による、24kHzの周波数の刺激音に対する聴力閾値改善効果を示すグラフである。 加齢性難聴モデルマウスへのトンカットアリ抽出物投与による、32kHzの周波数の刺激音に対する聴力閾値改善効果を示すグラフである。
本発明について具体的に説明する。
なお、本発明でいう「組成物」とは、トンカットアリの抽出物を含有し、NT3の発現を増強するものをいう。「組成物」には飲食品、医薬品、健康食品、動物用飼料を包含する。
また本発明でいう聴覚機能低下予防、或いは改善とは、感音性難聴による聴力の低下の予防及び/又は改善をいう。感音性難聴の種類は特に限定しないが、加齢性難聴、騒音性難聴、アミノグリコシド系抗生物質の副作用等による薬剤性難聴、音響性難聴(音響外傷)等がある。
本発明に用いられるトンカットアリ抽出物としては、特に限定されるものではないが、東南アジアに生育する樹木の幹または根の抽出物が好ましく用いられる。中でも、トンカットアリの根の水性溶媒抽出物が好ましく用いられる。
トンカットアリの抽出物は、特許文献3に開示されている還流冷却器を付した熱水抽出法によって抽出することが好ましい。またアルコール或いは水とアルコールの混合溶液による抽出でも良い。抽出液は、凍結乾燥等の乾燥手段によって溶媒を除去し、抽出エキスとしても良い。なお、このような抽出エキスは、トンカットアリ乾燥エキスとして市販されており、これを本発明に用いても良い。このような市販されているものとして「トンカットアリ(Physta:登録商標)フィスタ:アスク薬品株式会社」を例示できる。
さらにトンカットアリの抽出物は、公知の分離精製方法を適宜組み合わせて活性を高めることもできる。
トンカットアリの抽出物は、蝸牛有毛細胞と聴神経間のリボンシナプスの保護および再生を促進して、感音性難聴による聴力の低下を予防及び/又は改善する。したがって当該症状若しくは疾患を予防、改善又は治療するための食品・飲料、医薬部外品、医薬品等として使用可能である。
トンカットアリの抽出物を食品・飲料として使用する場合、例えば、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、乳飲料、アルコール飲料、清涼飲料等の飲料、ゼリー状食品や各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、スープ類等、あらゆる食品・飲料形態とすることができる。
また、トンカットアリの抽出物を含有する組成物をサプリメントや医薬品として使用する場合、例えば、錠剤、顆粒剤等の経口用固形成形剤、内服液剤、シロップ剤等の経口用液体製剤として利用することができる。その他、外用剤として使用することができる。
トンカットアリの抽出物を医薬品やサプリメントの製剤とする場合は、トンカットアリの抽出物を一般的な製造法により、直接又は製剤上許容し得る担体とともに混合、分散した後、所望の形態に加工することによって、容易に得ることができる。この場合、本発明に用いられる抽出物の他に、かかる形態に一般的に用いられる植物油、動物油等の油性基剤、鎮痛消炎剤、鎮痛剤、殺菌消毒剤、収斂剤、ホルモン剤、ビタミン類、保湿剤、紫外線吸収剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を本発明の効果を妨害しない範囲で適宜配合することができる。
本発明のトンカットアリの抽出物を含有する組成物は、特に限定されるものではないが、好ましくは抽出物の乾燥物として通常全組成の0.00001~99.5質量%の範囲で含有される組成物とする。
実施例、試験例を示し、本発明についてさらに説明する。
<実施例1.初代ミュラー細胞を用いた一次スクリーニング>
内耳細胞は一般的に実験使用が困難である。ミュラー細胞は網膜中に存在するグリア系の細胞で、内耳でNT3を発現する支持細胞と性質として類似点があることから、スクリーニングはミュラー細胞を代替細胞として用いて実施した。
(1)初代ミュラー細胞の調製
初代ミュラー細胞は次の方法で調製した。
7日齢のSDラット10匹から網膜を単離した。単離した網膜は、PBS(-)で5倍希釈したトリプシン-EDTA(Sigma T3924)にDNaseI(Roche)を終濃度100μg/mlで添加した溶液10mL中で、37℃で30分間静置した。ピペッティング操作により網膜組織を分散させ、2,400rpm、室温で5分間遠心した。上清を吸引除去した後、10% FBS(biosera)、1% ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM-F12培地(Gibco)25mLに懸濁した。懸濁液を70μMのセルストレーナー(FALCON)に通した後、細胞数を計測し、4.2x10cells/mlの濃度になるよう希釈した。T-75細胞培養用フラスコ(住友ベークライト)に10mLずつ播種し、37℃、5%CO下で培養した(培養0日目)。培養3日目に、培地を吸引除去し、新しい培地20mLに交換し、再び37℃、5%CO下で培養した。培養7日目に、Wei-Tao Songらの方法(Ophthalmol 2013;6(6):778-784)に準じて、ミュラー細胞を純化した。培養8日目に、ミュラー細胞を剥がし、4x105cells/mlの濃度になるよう懸濁し、96well cell culture plate(FALCON)に100μLずつ播種し、37℃、5%CO下で培養した。
(2)スクリーニング方法
培養9日目の初代ミュラー細胞の培地を全量除去し、1%FBSを含むDMEM-F12培地100μLに交換し、37℃、5%COで90分間培養することで血清飢餓状態に置いた。
ライブラリとして所有する約2000種の流通原料をそれぞれ終濃度10μg/mlになるように添加し、90分間培養後に上清を除去し、RNeasy 96 kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを調製した。RNA調製の際、DNaseIKit(QIAGEN)を用い、ゲノムDNAの除去を行った。約40ngの調製したRNAは、PrimeScript RT reagent kit(Takara)を用いて添付の説明書に従いcDNAを作製した。
NT3の発現量はApplied Biosystems TaqMan Gene Expression Assayを用い、内在性コントロールにはラットGapdh Taqman probeを用いて、次の方法で定量した。1μLのcDNAとラットGapdh Taqman probe、ラットNT3 Taqman probe、Taqman Multiplex MasterMixを所定の割合で混合し、計10μLとなるようにPCR grade water(Invitrogen)を添加し、混合したものを反応液とした。
調製した反応液は、Quant Studio 5(Applied Biosystems)を用い、[(95℃、20秒)→(95℃、1秒)→(60℃、20秒)]x45サイクルの反応条件で測定を行った。
測定により得られたCt値からGapdhを内部標準としてΔΔCt法により、各サンプルの相対的遺伝子発現量を求めた。
使用したTaqman probeの製品情報、仕様は以下のとおりである。
Gapdh:Appilied biosystems Assay ID:Rn01462662_g1(Dye:VIC,Quencher:MGB)NT3:Applied biosystems Assay ID:Rn00579280m1(Dye:FAM,Quencher:MGB)
上記の方法によるスクリーニングの結果、トンカットアリ抽出エキスにラット初代ミ
ュラー細胞におけるNT3の発現増強作用が認められた。
<実施例2.トンカットアリ抽出物によるNT3の発現増強作用>
トンカットアリ抽出物のNT3発現増強作用について、以下の方法で試験した。
(1)試験方法
1)試験試料
トンカットアリ抽出物は、アスク薬品株式会社より入手した(製品番号012.105「トンカットアリ乾燥エキス Physta:登録商標」)を試験に用いた。
本試験試料は、原料としてEurycoma longifolia Jackの乾燥根を用い、抽出溶媒として水を用いて抽出したエキスである。この乾燥エキスは、規格成分として、ユーリコマノン(Eurycomanone)を0.8~1.5質量%、グリコサポニンを35%以上、総多糖類を30%以上、総蛋白を22%以上含有する。このエキスをDMSOで溶解し使用した。
2)NT3発現増強
実施例1に記載の方法で調製した培養9日目の初代ミュラー細胞の培地を全量除去し、1%FBSを含むDMEM-F12培地100μLに交換し、37℃、5%COで90分間培養することで血清飢餓状態に置いた。
上記のトンカットアリ抽出物を、0、50、100μg/mLの濃度になるように添加し、90分間培養後に上清を除去し、RNeasy 96 kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを調製した。次いで、実施例1に記載の方法で、NT3の相対的遺伝子発現量を定量した。
(2)結果
測定結果を図1に示した。
図1に示すように、ラット初代ミュラー細胞において、トンカットアリ抽出物は、添加濃度依存的にNT3の発現を増強した。
<実施例3.ユーリコマノン、13α-21-エポキシユーリコマノンによるNT3の発現増強作用>
トンカットアリ抽出物中に含有される成分であるユーリコマノン及び13α-21-エポキシユーリコマノン、クアシンのNT3発現増強作用について、以下の方法で試験した。
(1)試験方法
1)試験試料
ユーリコマノンは富士フイルム和光純薬株式会社より購入し、試験に用いた。13α―21-エポキシユーリコマノンはMed Chem Express社より購入し、試験に用いた。クアシンはToronto Research Chemicals 社より購入し、試験に用いた。試験にあたってDMSOで溶解し使用した。
2)NT3発現増強
実施例1に記載の方法で調製した培養9日目の初代ミュラー細胞の培地を全量除去し、1%FBSを含むDMEM-F12培地100μLに交換し、37℃、5%COで90分間培養することで血清飢餓状態に置いた。
上記のユーリコマノンおよび13α―21-エポキシユーリコマノンを、0、3、10μMの濃度になるように、クアシンを0、1、3、10、30μMの濃度になるように添加し、90分間培養後に上清を除去し、RNeasy 96 kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを調製した。次いで、実施例1に記載の方法で、NT3の相対的遺伝子発現量を定量した。
(2)結果
測定結果を図2、図3に示した。
図2に示すように、ラット初代ミュラー細胞において、ユーリコマノン、13α-21-エポキシユーリコマノンは、添加濃度依存的にNT3の発現を増強した。したがって、ユーリコマノンおよび13α-21-エポキシユーリコマノンは、トンカットアリの示すNT3発現増強作用の有効成分の1つであることが明らかになった。
一方、図3に示すように、ユーリコマノンや13α-21-エポキシユーリコマノンの基本骨格であるクアシンにはNT3の発現増強作用は見られなかった。
<実施例4.トンカットアリ抽出物を用いたin vivo試験>
トンカットアリ抽出物のNT3発現増強作用について動物試験を行い、内耳組織での有効性を確認した。中耳腔(鼓室内)に局所投与した薬剤や物質が内耳へ移行することは良く知られている。トンカットアリ抽出物の内耳組織における作用を、トンカットアリ抽出物の中耳への局所投与を用いた次の方法で検証した。
(1)試験方法
1)7週齢Wistarラット雄(日本エスエルシー)を1週間飼育部屋で順化飼育後、試験に供した。
2)試験動物は、1群6匹を使用した。
イソフルラン吸入麻酔後、鼓膜を目視できるまで外耳を切開し、マイクロシリンジを用いて、片側の中耳内にコントロールとして生理食塩水(大塚製薬)40μLを投与し、切開部を縫合した。その後、同様の方法により、逆側の中耳内に10mg/mLおよび50mg/mlの濃度で生理食塩水に溶解させたトンカットアリ抽出物(実施例2で用いたものと同様の試料)を40μL投与した。
3)投与後、麻酔下で10分静置し、飼育ケージに戻した。投与4時間後に頸椎脱臼により安楽死させた後、蝸牛組織を単離し、氷冷したTRIzol Reagent(Thermo Fisher Scientific;15596018)500μLに直ちに浸しホモジナイザーで組織を破砕し、これを蝸牛組織のRNA発現解析試料として、-80℃で保存した。
4)-80℃で一時凍結保存したサンプルを、室温で解凍した。解凍後、室温で5分静置し、次いで各サンプルにクロロホルム100μLを添加し、15秒間ボルテックスミキサーで混合した後、室温で3分静置した。その後各サンプルを4℃、12,000Gで15分間遠心し、水相を新しいチューブに回収した。
5)その後、RNeasy Micro Kit(QIAGEN)を用い添付の説明書に従ってRNAを精製した。RNA精製の際、DNaseIKit(QIAGEN)を用い、ゲノムDNAの除去を行った。精製したRNAはPrimeScript RT reagent kit(Takara)を用いて添付の説明書に従いcDNAを作製した。
6)実施例1に記載の方法で、NT3の相対的遺伝子発現量を定量した。
(2)結果
試験結果を図4に示す。
図4に示すように、ラット中耳に投与したトンカットアリ抽出物は、内耳組織のNT3の発現を増強した。
以上の試験結果から、トンカットアリ抽出物は、内耳組織においても、NT3の発現を増強することによって聴覚機能を改善する作用を有することが明らかである。
<実施例5.トンカットアリ抽出物を用いたin vivo難聴改善試験>
脳波によって聴力を測定する検査手法である聴性脳幹反応(Auditory Brainstem Response,以下「ABR」)検査によって、トンカットアリ抽出物による加齢性難聴改善作用を評価した。
(1)試験方法
1)試験動物
試験には、加齢性難聴モデルとしてC57BL/6Jマウスを用いた。10週齢のC57BL/6Jマウス雄20匹を導入後、2週間予備飼育をした後、以下の試験に用いた。なおC57BL/6Jマウスは、10週齢頃から自然な老化現象として加齢性難聴を発症することが一般的に知られている。
2)試験試料
実施例2で用いたトンカットアリ抽出物と同じく、水抽出物である「トンカットアリ乾燥エキス Physta:登録商標」)を試験試料として用いた。トンカットアリ乾燥エキスは、あらかじめカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に80mg/mLの濃度で懸濁したものを用いた。
3)試験群
トンカットアリ投与群、対照群の2群として、予備飼育終了後のマウスを無作為に割り付けし、1群10匹、として群分けを行った。
トンカットアリ投与群は、上記の懸濁液を用いて、トンカットアリ抽出物800mg/10mL/体重kgを、1日1回、3か月(84日間)ゾンデを用いて強制経口投与した。
対照群は、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を、10mL/体重kgで同様に投与した。
4)ABR検査
ABR検査は、予備飼育期間終了日(Pre)、投与5週目(飼育6週経過後)及び12週目(飼育13週経過後)に行った。なお、飼育6週経過後及び13週経過後のマウスの聴力は、マウスを麻酔後、関電極を検耳(右耳)の外耳付近、不関電極を頭頂部皮下、アース電極を頸背部皮下にそれぞれ装着して、脳波出力データを得た。
脳波出力データは、データ収録・解析システム(PowerLab、Sampling soft:LabChart ver.8、ADInstruments)により記録した。(記録条件:Sampling time:10ms、Sampling rate:40kHz、Bandpass filter:1-3000Hz、加算回数500回)。(記録条件:Sampling time:10ms、Sampling rate:40kHz、Bandpass filter:1-3000Hz、加算回数500回)。
マウスへの音刺激は、Coupler type speaker(Model:ES1spc、バイオリサーチセンター株式会社)を右外耳道に挿入し、TDT音響システム(ZBus for system3、Tucker-Davis Technologies Inc.)より発生させた、16、24、32kHzの3音域で行った。音刺激の音圧範囲は、10-90dBとし、音電極からABRの電位を生体電位アンプ(Model:ER-1、Cygnus Technology Inc.)に誘導し、データ収録・解析システム(PowerLab、Sampling soft:LabChart ver.8、ADInstruments)に記録した。
聴力試験は、3段階の周波数とも、最初に90dBの音刺激を与えて行い、ABRを記録した。
その後、音圧を適宜変更し、ABRの出力波形が消失する最大音圧とABRの波形が検出される最小音圧を5dB刻みで確認した。ABRの波形が検出された最小音圧を、本試験における音圧閾値(ABR thresholds;音圧レベル(SPL dB))とした。
5)解析
試験試料の投与前(Pre)、飼育6週目(6W)、飼育13週目(13W)に測定した各試験周波数の音圧閾値(dB)の記録に基づき、試験動物10匹の平均音圧閾値を求めた。
(2)試験結果
図5に16kHzの音圧閾値の測定結果(Pre、6W、13W)をグラフとして示した。同じく図6に24kHzの音圧閾値の測定結果(Pre、6W、13W)のグラフ、図7に32kHzの音圧閾値の測定結果(Pre、6W、13W)のグラフをそれぞれ示した。
図5~7のグラフを対比することで以下の点が明らかとなった。
1.試験に用いたマウスは飼育期間が進むにつれて、すべての測定周波数においてABR閾値が上昇し、特に高周波域である32kHzにおいて閾値上昇の程度が強くなった。このことから、試験に用いたマウスは典型的な加齢に伴う聴力低下を発症し、加齢性難聴のモデルとして機能したことが確認された。
2.この加齢に伴う聴力の低下(加齢性難聴)は、各周波数ともトンカットアリ抽出物の投与によって明らかに抑制され、加齢性難聴の発症が有意に抑制又は改善された。
3.16kHzの周波数の刺激音に対して、対照群(トンカットアリ抽出物非投与群)は、音圧閾値が10dB以上上昇し、ゆるやかな聴力の低下が確認された。一方、トンカットアリ抽出物投与群は投与12週目も、音圧閾値の上昇がほとんど認められず、聴力の低下が抑制された。
4.また、24kHz及び32kHzの周波数では、対照群の投与12週目音圧閾値が、試験開始前に比べて15~20dB増加するのに対して、トンカットアリ抽出物投与群は、その増加が5~10dBに抑制されていた。
以上の通り、トンカットアリ抽出物は加齢に伴って発生し、進行する聴力の低下を顕著に抑制し改善することが明らかとなった。すなわちトンカットアリ抽出物は、加齢性難聴の予防改善用組成物として有効であった。

Claims (5)

  1. トンカットアリの、水、アルコール、又は、水とアルコールの混合溶媒による抽出物を有効成分として含有する、NT3の発現増強用組成物。
  2. トンカットアリの、水、アルコール、又は、水とアルコールの混合溶媒による抽出物を有効成分として含有する、聴覚機能低下予防及び/又は改善用組成物。
  3. トンカットアリの抽出物が、ユーリコマノン及び/又は13α―21-エポキシユーリコマノンを含有する抽出物である請求項1または2に記載の組成物。
  4. ユーリコマノン及び/又は13α―21-エポキシユーリコマノンを有効成分とする聴覚機能低下予防及び/又は改善用組成物。
  5. トンカットアリの、水、アルコール、又は、水とアルコールの混合溶媒による抽出物を有効成分として含有する、加齢性難聴の予防及び/又は改善用組成物。
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IJPSR,2019年06月01日,Vol.10, No.6,pp.2947-2950

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