JP2010188821A - 車両用操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】伝達比可変機構の差動機構は、操舵部材に連なる第1のサンギヤと、転舵輪側部材としての第2のシャフトに連なる第2のサンギヤと、各サンギヤに噛み合う遊星ギヤと、遊星ギヤを保持するキャリアと、キャリアをロック可能なロック機構とを含む。ECUの第1の異常検出部が伝達比可変機構の出力の異常を検出した場合(ステップS1でYES)において、ECUの第2の異常検出部が遊星ギヤ機構の異常を検出したとき(ステップS2でYES)、ロック機構によるキャリアのロックを禁止する(ステップS3)。一方、第2の異常検出部によって遊星ギヤ機構の異常が検出されないとき(ステップS2でNO)、ロック機構によってキャリアがロックされる(ステップS3)。
【選択図】図9
Description
特許文献1の伝達比可変機構は、入力軸に固定されたサンギヤと、サンギヤの周囲に配置された複数のプラネタリギヤと、プラネタリギヤを取り囲むリングギヤと、プラネタリギヤを保持し出力軸に固定されたキャリアと、を含んでいる。伝達比を可変にするためのモータが、リングギヤに連結されている。モータに異常が生じたフェール時には、プラネタリギヤとサンギヤとの噛み合い部や、プラネタリギヤとリングギヤとの噛み合い部に粉体が吹き付けられるようになっている。これにより、プラネタリギヤとサンギヤ、およびプラネタリギヤとリングギヤをそれぞれロックし、これらのギヤが同行回転する。これにより、入力軸と出力軸とが直結され、ステアリングホイールのトルクを転舵機構に伝達できる。このとき、キャリアはロックされていない。
この場合、伝達比可変機構の異常が検出されたとき、操舵部材と転舵輪側部材とがトルク伝達可能に連結されつつ、伝達比可変機構用モータが停止される。したがって、操舵部材の操作によって転舵輪を操向できる状態を維持しつつ、伝達比可変機構用モータを停止することができる。
この場合、入力要素および出力要素の少なくとも一方と、遊星要素との間で、異物の噛み込み等に起因する、駆動抵抗の増大またはロックが生じていることを検出でき、その結果、差動機構の異常を確実に検出することができる。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる車両用操舵装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に付与された操舵トルクを、操舵軸としてのステアリングシャフト3等を介して左右の転舵輪4L,4Rのそれぞれに与えて転舵を行うものである。車両用操舵装置1は、操舵部材2の操舵角θ1(回転角)に対する転舵輪側部材としての第2のシャフト6の転舵角θ2(回転角)の比である伝達比θ2/θ1を変更する機能を有している。
第1のシャフト5は、操舵部材2に連結される入力軸5aと、入力軸5aとトーションバー7を介して相対回転可能に連結される出力軸5bとを有している。トーションバー7を介した入力軸5aと出力軸5bとの相対回転の許容値は、僅かな値とされており、入力軸5aと出力軸5bとは実質的に同行回転すると考えることができる。
上記の構成により、操舵部材2からの操舵トルクは、第1のシャフト5、遊星ギヤ機構17、第2のシャフト6等を介して舵取り機構12に伝達される。舵取り機構12では、ピニオン13aの回転がラック軸14の軸方向の運動に変換され、各タイロッド15R,15Lを介して対応するナックルアーム16R,16Lがそれぞれ回動する。これにより、各ナックルアーム16R,16Lに連結された対応する転舵輪4R,4Lが、それぞれ操向する。
遊星ギヤ機構17は、第1のシャフト5の出力軸5bと同一の軸線上に並んで同行回転可能な入力要素としての第1のサンギヤ19と、第1のサンギヤ19の軸線と一致する軸線上に配置され、第2のシャフト6と同行回転可能な出力要素としての第2のサンギヤ20と、第1および第2のサンギヤ19,20の双方に噛み合う遊星要素としての遊星ギヤ21と、遊星ギヤ21を自転可能且つ第1および第2のサンギヤ19,20の軸線回りに同行回転可能に支持する環状の所定の要素としてのキャリア22と、を有している。
遊星ギヤ21は、第1および第2のサンギヤ19,20を互いに関連付けるためのものであり、ステアリングシャフト3の周方向に複数(本実施の形態において、2つ)配置されている。各遊星ギヤ21は、ステアリングシャフト3の軸線と平行に延びて第1および第2のサンギヤ19,20の双方と噛み合っている。
第1のサンギヤ19の歯数と、第2のサンギヤ20の歯数とは、相異なっており、第1のサンギヤ19、および第2のサンギヤ20の少なくとも1つ(例えば、第2のサンギヤ20)が、転位歯車を用いて形成されている。この転位歯車は、ピッチ円の直径が小さくなる方向に転位された負転位歯車か、またはピッチ円の直径が大きくなる方向に転位された正転位歯車である。
この遊星ギヤ機構用モータ18は、例えば、ステアリングシャフト3と同軸に配置されたブラシレスモータからなり、キャリア22に固定されたロータ18aと、このロータ18aを取り囲みハウジング36に固定されたステータ18bとを含んでいる。
また、ECU24には、操舵角センサ26、トルクセンサ27、遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33、転舵角センサ28、車速センサ29およびヨーレートセンサ30がそれぞれ接続されている。
車両用操舵装置1は、遊星ギヤ機構17のキャリア22をロック可能なロック機構としてのソレノイド32を含んでいる。
ソレノイド32は、規制部材31を含んでいる。規制部材31は、キャリア22と同行回転する環状部材としてのリング部材60に係合することにより、キャリア22の回転を規制する。
ソレノイド32は、ECU24によって駆動制御される。ECU24は、後述する第1の異常を検出したときに、ソレノイド32を動作させ、規制部材31を係合位置D1に変位させる。これにより、リング部材60およびキャリア22の回転が規制され、遊星ギヤ21の公転が規制される。
図2は、図1の要部の断面図である。図2を参照して、遊星ギヤ機構17は、ハウジング36内に収容されている。ハウジング36は、例えばアルミニウム合金製の筒状の部材であり、車体37に支持されている。
出力軸5bの中間部の外周面に、反力補償用モータ23のロータ23aが固定されている。反力補償用モータ23のステータ23bは、ハウジング36に固定されている。
遊星ギヤ機構17の第1のサンギヤ19は、第1のシャフト5の出力軸5bと単一の部材を用いて一体に形成されており、出力軸5bの一端に位置している。第2のサンギヤ20は、第2のシャフト6と単一の部材を用いて一体に形成されており、第2のシャフト6の一端に位置している。
図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。図2および図3を参照して、キャリア22は、各遊星ギヤ21の一方の支軸21bを支持する一端部41と、各遊星ギヤ21の他方の支軸21cを支持する他端部42と、一端部41および他端部42間を接続する中間部43とを有している。
図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。図2および図4を参照して、キャリア22の他端部42は、ころ軸受等の転がり軸受からなる第7の軸受48を介して、第2のシャフト6を回転可能に支持している。この他端部42には、ステアリングシャフト3の軸方向に沿って延びる環状の鍔部49が形成されている。鍔部49は、単列アンギュラ玉軸受等からなる第8の軸受50を介して、ハウジング36に回転可能に支持されている。
遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aに隣接するように、遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33が配置されている。遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33のロータ33aは、リング部材60に同行回転可能に連結されており、遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aと同行回転する。遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33のステータ33bは、ハウジング36に内嵌されて固定されている。
図5を参照して、ソレノイド32は、キャリア22の径方向Rの外方に配置されている。ソレノイド32は、ソレノイドハウジング52と、固定子34と、可動子54と、規制部材31と、付勢部材としてのコイルばね59と、を含んでいる。
ソレノイドハウジング52には、固定子34および可動子54が収容されている。固定子34を励磁することにより、可動子54に、ソレノイドハウジング52の軸線方向に沿った駆動力が付与される。可動子54は、ソレノイドハウジング52の軸線Aに沿う可動方向Bに移動可能に案内されている。
規制部材31の他端31bおよび中間部31cは、ソレノイドハウジング52から突出して、遊星ギヤ機構17のキャリア22側に延びている。規制部材31の他端31bは、ハウジング36のうち、キャリア22が収容されている空間63と保持孔53とを連通する挿通孔55に挿通されており、キャリア22の鍔部49と径方向Rに相対向している。
通常時、ソレノイド32への通電によって、可動子54に、可動方向Bの一方B1側への駆動力が付与されている。これにより、規制部材31は、コイルばね59の付勢力に抗してコイルばね59を圧縮し、鍔部56がカップ部材57に受けられる。このとき、規制部材31は、係合解除位置D2に位置している。
リング部材60の外周面60aには、規制部材31の他端31bと係合可能な係合凹部61が形成されている。係合凹部61は、外周面60aの周方向Cに等間隔に複数(本実施の形態において、例えば8つ)設けられている。
そして、図7に示すように、規制部材31の他端31bが係合凹部61に係合し、リング部材60およびキャリア22の回転が規制される。
第1の異常検出部71は、伝達比可変機構8の出力の異常を検出するものである。第1の異常検出部71は、転舵角センサ28および遊星ギヤ機構用モータ制御部73に接続されており、転舵角θ2に関する信号と、第2のシャフト6の後述する目標回転数dθ2t/dtに関する信号がそれぞれ入力される。
ロック制御部74は、ソレノイド32の動作を制御するものである。ロック制御部74は、第1の異常検出部71および第2の異常検出部72に接続されており、第1の異常検出部71の異常検出信号および第2の異常検出部72の異常検出信号のそれぞれが入力される。
図9は、車両用操舵装置1の異常に関する制御の一例のフローチャートである。図9を参照して、まず、ECU24の第1の異常検出部71によって、第1の異常が生じているか否かが判定される(ステップS1)。第1の異常とは、伝達比可変機構8の出力の異常をいい、例えば、遊星ギヤ機構用モータ18が暴走することにより、第2のシャフト6の回転数dθ2/dt(回転速度)が、目標回転数dθ2t/dtから大きく外れることをいう。
第1の異常が検出されると(ステップS1でYES)、第2の異常が生じているか否かが第2の異常検出部72で判定される(ステップS2)。
検出された伝達比θ2/θ1(実伝達比)が、略1であり、この伝達比θ2/θ1に対して、遊星ギヤ機構用モータ制御部73で設定された目標伝達比θ2t/θ1tの偏差|θ2/θ1−θ2t/θ1t|が、所定値α2(例えば、0.2)以上(|θ2/θ1−θ2t/θ1t|≧α2)である場合、第2の異常検出部72は、第2の異常を検出する(ステップS2でYES)。
第2の異常が検出されると、ロック制御部74は、ソレノイド32の規制部材31によるキャリア22のロックを禁止する(ステップS3)。すなわち、ソレノイド32の可動子54および規制部材31が係合解除位置D2から変位することを禁止する。これにより、キャリア22は、回転可能な状態を維持される。
具体的には、第1の異常検出部71によって伝達比可変機構8の出力の異常が検出された場合において、第2の異常検出部72によって遊星ギヤ機構17の異常が検出されることを条件として、キャリア22のロックが禁止される。このとき、キャリア22がロックされていなくても、遊星ギヤ21と第1のサンギヤ19および第2のサンギヤ20とは、ロックされているか、またはロックに近い状態でトルク伝達可能である。したがって、略一定の伝達比θ2/θ1で第1のサンギヤ19と第2のサンギヤ20とがトルク伝達可能であり、操舵部材2と第2のシャフト6とがトルク伝達可能である。このとき、キャリア22はロックされていないので、比較的小さなトルクで操舵部材2を操作できる。
また、第1の異常が検出されたとき、操舵部材2と第2のシャフト6とがトルク伝達可能に連結されつつ、伝達比可変機構用モータ18が停止される。したがって、操舵部材2の操作によって転舵輪4L,4Rを操向できる状態を維持しつつ、遊星ギヤ機構用モータ18を停止することができる。
例えば、ロック機構として、ソレノイド32に代えて、油圧シリンダやカム機構等の他の機構を用いてもよい。また、遊星伝達機構として、遊星ギヤ機構17の各歯車に代えてローラを用いた、トラクションドライブ機構を用いてもよい。
さらに、第2の異常を検出する構成は、上記したものに限らない。要は、遊星ギヤ21と第1および第2のサンギヤ19,20の少なくとも一方との間において、噛み合いの抵抗が増大したか、または、ロック状態が生じたことを検出できる構成であればよい。
Claims (3)
- 操舵部材に連なる入力要素、転舵輪側部材に連なる出力要素、入力要素と出力要素との間に介在する遊星要素、および遊星要素を支持するキャリアを含む差動機構、ならびに伝達比可変機構用モータを含み、操舵部材の回転角に対する転舵輪側部材の回転角の比である伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、
上記キャリアをロック可能なロック機構と、
上記伝達比可変機構の出力の異常を検出する第1の異常検出手段と、
上記差動機構の異常を検出する第2の異常検出手段と、
上記ロック機構の動作を制御するロック制御手段と、を備え、
上記ロック制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出された場合に、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されることを条件として、上記ロック機構による上記キャリアのロックを禁止し、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されないことを条件として、上記ロック機構によって上記キャリアをロックさせることを特徴とする車両用操舵装置。 - 請求項1において、目標伝達比に基づいて上記伝達比可変機構用モータを制御するモータ制御手段を備え、
上記モータ制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出されたときに上記伝達比可変機構用モータの駆動を停止することを特徴とする車両用操舵装置。 - 請求項2において、上記第2の異常検出手段は、上記目標伝達比と実伝達比との偏差が所定値以上のときに、上記差動機構の異常を検出することを特徴とする車両用操舵装置。
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