JP2010188821A - 車両用操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】フェール時における操舵フィーリングをより良くすることのできる車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】伝達比可変機構の差動機構は、操舵部材に連なる第1のサンギヤと、転舵輪側部材としての第2のシャフトに連なる第2のサンギヤと、各サンギヤに噛み合う遊星ギヤと、遊星ギヤを保持するキャリアと、キャリアをロック可能なロック機構とを含む。ECUの第1の異常検出部が伝達比可変機構の出力の異常を検出した場合(ステップS1でYES)において、ECUの第2の異常検出部が遊星ギヤ機構の異常を検出したとき(ステップS2でYES)、ロック機構によるキャリアのロックを禁止する(ステップS3)。一方、第2の異常検出部によって遊星ギヤ機構の異常が検出されないとき(ステップS2でNO)、ロック機構によってキャリアがロックされる(ステップS3)。
【選択図】図9

Description

本発明は、車両用操舵装置に関する。
車両用操舵装置には、ステアリングホイールに連結された入力軸と、転舵機構に連結された出力軸と、入力軸と出力軸とを差動回転可能に連結する伝達比可変機構とを備えるものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1の伝達比可変機構は、入力軸に固定されたサンギヤと、サンギヤの周囲に配置された複数のプラネタリギヤと、プラネタリギヤを取り囲むリングギヤと、プラネタリギヤを保持し出力軸に固定されたキャリアと、を含んでいる。伝達比を可変にするためのモータが、リングギヤに連結されている。モータに異常が生じたフェール時には、プラネタリギヤとサンギヤとの噛み合い部や、プラネタリギヤとリングギヤとの噛み合い部に粉体が吹き付けられるようになっている。これにより、プラネタリギヤとサンギヤ、およびプラネタリギヤとリングギヤをそれぞれロックし、これらのギヤが同行回転する。これにより、入力軸と出力軸とが直結され、ステアリングホイールのトルクを転舵機構に伝達できる。このとき、キャリアはロックされていない。
特許文献2の伝達比可変機構は、入力軸に固定された第1のサンギヤと、出力軸に固定され第1のサンギヤとは同軸に配置された第2のサンギヤと、第1および第2のサンギヤの双方に噛み合う遊星ギヤと、遊星ギヤを保持するキャリアと、を含んでいる。伝達比を可変にするためのモータが、キャリアに連結されている。また、モータに異常が生じたフェール時には、キャリアの回転がロックされる。これにより、遊星ギヤを介した第1のサンギヤと第2のサンギヤの変速比が一定になり、入力軸と出力軸とが機械的に連結され、ステアリングホイールのトルクを転舵機構に伝達できる。
特開2003−267242号公報(図5) 特開2008−74367号公報
特許文献2において、遊星ギヤと第1および第2のサンギヤとの間に鉄粉等の異物が噛み込まれることや、各ギヤの歯が変形すること等により、各ギヤ同士がロック(ギヤロック)することが考えられる。例えば、キャリアをロックしているときにステアリングホイールを操作してギヤロックを解除するためには、ステアリングホイールに大きなトルクを与える必要があり、操舵フィーリングに欠ける。一方で、この場合には、第1のサンギヤ、遊星ギヤおよび第2のサンギヤが同行回転するようになっているので、キャリアをロックしなくても、入力軸と出力軸とをトルク伝達可能に連結できる。
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、フェール時における操舵フィーリングをより良くすることのできる車両用操舵装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(2)に連なる入力要素(19)、転舵輪側部材(6)に連なる出力要素(20)、入力要素と出力要素との間に介在する遊星要素(21)、および遊星要素を支持するキャリア(22)を含む差動機構、ならびに伝達比可変機構用モータ(18)を含み、操舵部材の回転角(θ1)に対する転舵輪側部材の回転角(θ2)の比である伝達比(θ2/θ1)を変更可能な伝達比可変機構(8)と、上記キャリアをロック可能なロック機構(32)と、上記伝達比可変機構の出力の異常を検出する第1の異常検出手段(71)と、上記差動機構の異常を検出する第2の異常検出手段(72)と、上記ロック機構の動作を制御するロック制御手段(74)と、を備え、上記ロック制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出された場合に、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されることを条件として、上記ロック機構による上記キャリアのロックを禁止し、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されないことを条件として、上記ロック機構によって上記キャリアをロックさせることを特徴とする車両用操舵装置(1)を提供する(請求項1)。
本発明において、伝達比可変機構の出力の異常とは、例えば、伝達比可変機構用モータの暴走により、出力要素の回転速度が所望の回転速度から大きく外れていることをいう。また、差動機構の異常とは、例えば、遊星要素と入力要素および出力要素の少なくとも一方との間に鉄粉等の異物が入ること等により、両者間の駆動抵抗が増すかまたは3つの要素がロックすることをいう。
本発明によれば、第1の異常検出手段によって伝達比可変機構の出力の異常が検出された場合、操舵フィーリングを損なうことなく、操舵部材と転舵輪側部材とをトルク伝達可能に連結することができる。具体的には、第1の異常検出手段によって伝達比可変機構の出力の異常が検出された場合において、第2の異常検出手段によって差動機構の異常が検出されることを条件として、キャリアのロックが禁止される。このとき、キャリアがロックされていなくても、遊星要素と入力要素および出力要素とは、ロックされているか、またはロックされているに近い状態でトルク伝達可能である。したがって、略一定の伝達比で入力要素と出力要素がトルク伝達可能であり、操舵部材と転舵輪側部材とがトルク伝達可能である。このとき、キャリアはロックされていないので、比較的小さなトルクで操舵部材を操作できる。また、第2の異常検出手段によって差動機構の異常が検出されないことを条件として、キャリアがロックされる。このとき、遊星要素と入力要素および出力要素との間の駆動抵抗は小さいままなので、各要素は、滑らかに係合することができる。この状態でキャリアがロックされることにより、一定の伝達比で入力要素と出力要素とがトルク伝達可能となり、その結果、比較的小さなトルクで操舵部材を操作できる。このように、伝達比可変機構の出力の異常が生じたときでも、比較的小さなトルクで操舵部材を操作できるので、フェール時の操舵フィーリングをより良くすることができる。
また、本発明において、目標伝達比(θ2/θ1)に基づいて上記伝達比可変機構用モータを制御するモータ制御手段(73)を備え、上記モータ制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出されたときに上記伝達比可変機構用モータの駆動を停止する場合がある(請求項2)。
この場合、伝達比可変機構の異常が検出されたとき、操舵部材と転舵輪側部材とがトルク伝達可能に連結されつつ、伝達比可変機構用モータが停止される。したがって、操舵部材の操作によって転舵輪を操向できる状態を維持しつつ、伝達比可変機構用モータを停止することができる。
また、本発明において、上記第2の異常検出手段は、上記目標伝達比と実伝達比(θ2/θ1)との偏差(|θ2/θ1−θ2/θ1|)が所定値(α2)以上のときに、上記差動機構の異常を検出する場合がある(請求項3)。
この場合、入力要素および出力要素の少なくとも一方と、遊星要素との間で、異物の噛み込み等に起因する、駆動抵抗の増大またはロックが生じていることを検出でき、その結果、差動機構の異常を確実に検出することができる。
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施の形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
本発明の一実施の形態にかかる車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。 図1の要部の断面図である。 図2のIII−III線に沿う断面図である。 図2のIV−IV線に沿う断面図である。 図2のソレノイドの周辺の要部の拡大図である。 図2のVI−VI線に沿う要部の断面図である。 キャリアの回転を規制する動作について説明するための要部の断面図である。 車両用操舵装置の電気的な構成の要部を示すブロック図である。 車両用操舵装置の異常に関する制御の一例のフローチャートである。
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態にかかる車両用操舵装置1の概略構成を示す模式図である。図1を参照して、車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に付与された操舵トルクを、操舵軸としてのステアリングシャフト3等を介して左右の転舵輪4L,4Rのそれぞれに与えて転舵を行うものである。車両用操舵装置1は、操舵部材2の操舵角θ1(回転角)に対する転舵輪側部材としての第2のシャフト6の転舵角θ2(回転角)の比である伝達比θ2/θ1を変更する機能を有している。
この車両用操舵装置1は、操舵部材2と、操舵部材2に連なるステアリングシャフト3とを有している。ステアリングシャフト3は、第1の部分としての第1のシャフト5と、第1のシャフト5と同軸に配置された第2の部分としての第2のシャフト6とを有している。
第1のシャフト5は、操舵部材2に連結される入力軸5aと、入力軸5aとトーションバー7を介して相対回転可能に連結される出力軸5bとを有している。トーションバー7を介した入力軸5aと出力軸5bとの相対回転の許容値は、僅かな値とされており、入力軸5aと出力軸5bとは実質的に同行回転すると考えることができる。
第1のシャフト5の出力軸5bと第2のシャフト6との間には、伝達比可変機構8が設けられている。伝達比可変機構8は、差動機構としての遊星ギヤ機構17と、伝達比可変機構用モータとしての遊星ギヤ機構用モータ18と、を含んでいる。伝達比可変機構8によって、出力軸5bと第2のシャフト6との間における変速比としての伝達比θ2/θ1が変更可能となっている。第2のシャフト6は、自在継手9、中間軸10、自在継手11および舵取り機構12を介して転舵輪4L,4Rと連なっている。
舵取り機構12は、自在継手11に連なるピニオン軸13と、ピニオン軸13の先端のピニオン13aに噛み合うラック14aを有し車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸14と、ラック軸14の一対の端部のそれぞれにタイロッド15R,15Lを介して連結されるナックルアーム16R,16Lとを有している。
上記の構成により、操舵部材2からの操舵トルクは、第1のシャフト5、遊星ギヤ機構17、第2のシャフト6等を介して舵取り機構12に伝達される。舵取り機構12では、ピニオン13aの回転がラック軸14の軸方向の運動に変換され、各タイロッド15R,15Lを介して対応するナックルアーム16R,16Lがそれぞれ回動する。これにより、各ナックルアーム16R,16Lに連結された対応する転舵輪4R,4Lが、それぞれ操向する。
遊星ギヤ機構17は、第1のシャフト5の出力軸5bおよび第2のシャフト6を差動回転可能に連結しており、遊星ギヤ機構用モータ18によって駆動されることにより、伝達比θ2/θ1が変更される。
遊星ギヤ機構17は、第1のシャフト5の出力軸5bと同一の軸線上に並んで同行回転可能な入力要素としての第1のサンギヤ19と、第1のサンギヤ19の軸線と一致する軸線上に配置され、第2のシャフト6と同行回転可能な出力要素としての第2のサンギヤ20と、第1および第2のサンギヤ19,20の双方に噛み合う遊星要素としての遊星ギヤ21と、遊星ギヤ21を自転可能且つ第1および第2のサンギヤ19,20の軸線回りに同行回転可能に支持する環状の所定の要素としてのキャリア22と、を有している。
第1および第2のサンギヤ19,20ならびに遊星ギヤ21は、それぞれ、回転伝達要素として設けられており、例えば、はすば歯車を用いて形成されている。なお、はすば歯車に代えて、平歯車等の他の平行軸歯車を用いてもよい。
遊星ギヤ21は、第1および第2のサンギヤ19,20を互いに関連付けるためのものであり、ステアリングシャフト3の周方向に複数(本実施の形態において、2つ)配置されている。各遊星ギヤ21は、ステアリングシャフト3の軸線と平行に延びて第1および第2のサンギヤ19,20の双方と噛み合っている。
遊星ギヤ21は、第1のサンギヤ19に噛み合う部分の歯数と、第2のサンギヤ20に噛み合う部分の歯数とが同一である。
第1のサンギヤ19の歯数と、第2のサンギヤ20の歯数とは、相異なっており、第1のサンギヤ19、および第2のサンギヤ20の少なくとも1つ(例えば、第2のサンギヤ20)が、転位歯車を用いて形成されている。この転位歯車は、ピッチ円の直径が小さくなる方向に転位された負転位歯車か、またはピッチ円の直径が大きくなる方向に転位された正転位歯車である。
遊星ギヤ機構用モータ18は、キャリア22を回転駆動するためのものである。キャリア22の回転数を変更することで、第1のサンギヤ19と第2のサンギヤ20との変速比を変え、伝達比θ2/θ1を変更する。
この遊星ギヤ機構用モータ18は、例えば、ステアリングシャフト3と同軸に配置されたブラシレスモータからなり、キャリア22に固定されたロータ18aと、このロータ18aを取り囲みハウジング36に固定されたステータ18bとを含んでいる。
車両用操舵装置1には、操舵部材2の操舵反力を補償するための反力補償用モータ23が備えられている。反力補償用モータ23は、例えば、ステアリングシャフト3と同軸に配置されたブラシレスモータからなり、第1のシャフト5の出力軸5bに固定されたロータ23aと、このロータ23aを取り囲みハウジング36に固定されたステータ23bとを含んでいる。
上記遊星ギヤ機構用モータ18および反力補償用モータ23は、それぞれ、CPU、RAMおよびROMを含むECU24(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)によって制御される。ECU24は、駆動回路25aを介して遊星ギヤ機構用モータ18と接続され、駆動回路25bを介して反力補償用モータ23と接続されている。
また、ECU24には、操舵角センサ26、トルクセンサ27、遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33、転舵角センサ28、車速センサ29およびヨーレートセンサ30がそれぞれ接続されている。
操舵角センサ26からは、操舵部材2の操舵中立位置からの操作量である操舵角θ1に対応する値として、第1のシャフト5の入力軸5aの回転角についての信号が入力される。トルクセンサ27からは、操舵部材2の操舵トルクTに対応する値として、第1のシャフト5に作用するトルクについての信号が入力される。遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33からは、遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aの回転角θmについての信号が入力される。転舵角センサ28からは、転舵角θ2に対応する値として、第2のシャフト6の回転角についての信号が入力される。車速センサ29からは、車速Vについての信号が入力される。ヨーレートセンサ30からは、車両のヨーレートγについての信号が入力される。
ECU24は、上記各センサ26〜30,33からの入力信号等に基づいて、遊星ギヤ機構用モータ18および反力補償用モータ23の駆動を制御する。
車両用操舵装置1は、遊星ギヤ機構17のキャリア22をロック可能なロック機構としてのソレノイド32を含んでいる。
ソレノイド32は、規制部材31を含んでいる。規制部材31は、キャリア22と同行回転する環状部材としてのリング部材60に係合することにより、キャリア22の回転を規制する。
規制部材31は、係合解除位置D2と係合位置D1とに変位される。係合位置D1とは、規制部材31がリング部材60に係合してリング部材60の回転が規制される位置をいい、係合解除位置D2とは、規制部材31がリング部材60に係合せず、リング部材60の回転が規制されない位置をいう。
ソレノイド32は、ECU24によって駆動制御される。ECU24は、後述する第1の異常を検出したときに、ソレノイド32を動作させ、規制部材31を係合位置D1に変位させる。これにより、リング部材60およびキャリア22の回転が規制され、遊星ギヤ21の公転が規制される。
遊星ギヤ21の公転が規制されることにより、第1および第2のサンギヤ19,20間の変速比、すなわち、伝達比θ2/θ1が固定される。なお、異常時でない通常時において、規制部材31は、係合解除位置D2に位置している。
図2は、図1の要部の断面図である。図2を参照して、遊星ギヤ機構17は、ハウジング36内に収容されている。ハウジング36は、例えばアルミニウム合金製の筒状の部材であり、車体37に支持されている。
第1のシャフト5の入力軸5aは、ころ軸受等からなる第1の軸受38を介してハウジング36に回転可能に支持されている。出力軸5bは、単列アンギュラ玉軸受等の転がり軸受からなる第2の軸受39を介して、ハウジング36に回転可能に支持されている。
出力軸5bの中間部の外周面に、反力補償用モータ23のロータ23aが固定されている。反力補償用モータ23のステータ23bは、ハウジング36に固定されている。
第2のシャフト6の中間部は、単列アンギュラ玉軸受等の転がり軸受からなる第3の軸受40を介して、ハウジング36に回転可能に支持されている。
遊星ギヤ機構17の第1のサンギヤ19は、第1のシャフト5の出力軸5bと単一の部材を用いて一体に形成されており、出力軸5bの一端に位置している。第2のサンギヤ20は、第2のシャフト6と単一の部材を用いて一体に形成されており、第2のシャフト6の一端に位置している。
各遊星ギヤ21は、第1および第2のサンギヤ19,20の双方に噛み合う歯部21aと、歯部21aの一対の端部のそれぞれから延びる支軸21b,21cとを有している。
図3は、図2のIII−III線に沿う断面図である。図2および図3を参照して、キャリア22は、各遊星ギヤ21の一方の支軸21bを支持する一端部41と、各遊星ギヤ21の他方の支軸21cを支持する他端部42と、一端部41および他端部42間を接続する中間部43とを有している。
キャリア22の一端部41は、ころ軸受等の転がり軸受からなる第4の軸受44を介して、出力軸5bを回転可能に支持している。この一端部41には、ステアリングシャフト3の軸方向に沿って延びる環状の鍔部45が形成されている。この鍔部45は、単列アンギュラ玉軸受等の転がり軸受からなる第5の軸受46を介して、ハウジング36に回転可能に支持されている。
また、キャリア22の一端部41は、対応する第6の軸受47を介して、各遊星ギヤ21の一方の支軸21bを回転可能に支持している。各第6の軸受47は、例えばころ軸受からなる。
図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。図2および図4を参照して、キャリア22の他端部42は、ころ軸受等の転がり軸受からなる第7の軸受48を介して、第2のシャフト6を回転可能に支持している。この他端部42には、ステアリングシャフト3の軸方向に沿って延びる環状の鍔部49が形成されている。鍔部49は、単列アンギュラ玉軸受等からなる第8の軸受50を介して、ハウジング36に回転可能に支持されている。
また、キャリア22の他端部42は、対応する第9の軸受51を介して、各遊星ギヤ21の他方の支軸21cを回転可能に支持している。各第9の軸受51は、例えばころ軸受からなる。キャリア22の中間部43は、各遊星ギヤ21の歯部21aとステアリングシャフト3の周方向に並んでおり、一端部41と他端部42とを、キャリア22の中心軸線回りに同行回転可能に繋いでいる。
キャリア22の他端部42の外周面に、上記遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aが固定されている。遊星ギヤ機構用モータ18のステータ18bは、ハウジング36に内嵌されて固定されている。
遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aに隣接するように、遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33が配置されている。遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33のロータ33aは、リング部材60に同行回転可能に連結されており、遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aと同行回転する。遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33のステータ33bは、ハウジング36に内嵌されて固定されている。
図5は、図2のソレノイド32の周辺の要部の拡大図である。図6は、図2のVI−VI線に沿う要部の断面図である。
図5を参照して、ソレノイド32は、キャリア22の径方向Rの外方に配置されている。ソレノイド32は、ソレノイドハウジング52と、固定子34と、可動子54と、規制部材31と、付勢部材としてのコイルばね59と、を含んでいる。
ソレノイドハウジング52は、有底筒状をなしている。このソレノイドハウジング52の一端に形成された中空のねじ軸52aが、ハウジング36の保持孔53のねじ孔53aに螺合して固定されている。ソレノイドハウジング52の軸線Aは、キャリア22の径方向Rに対して傾斜している。
ソレノイドハウジング52には、固定子34および可動子54が収容されている。固定子34を励磁することにより、可動子54に、ソレノイドハウジング52の軸線方向に沿った駆動力が付与される。可動子54は、ソレノイドハウジング52の軸線Aに沿う可動方向Bに移動可能に案内されている。
規制部材31は、例えば、金属を用いて棒状に形成されている。なお、規制部材31は、合成樹脂を用いて形成されていてもよい。規制部材31の一端31aは、ソレノイド32の可動子54の一端54aに固定されている。可動子54と規制部材31とは、可動方向Bに同行移動可能である。
規制部材31の他端31bおよび中間部31cは、ソレノイドハウジング52から突出して、遊星ギヤ機構17のキャリア22側に延びている。規制部材31の他端31bは、ハウジング36のうち、キャリア22が収容されている空間63と保持孔53とを連通する挿通孔55に挿通されており、キャリア22の鍔部49と径方向Rに相対向している。
規制部材31の中間部31cには、この中間部31cの径方向に突出する鍔部56が形成されている。鍔部56は、例えば環状をなしており、中間部31cに嵌め合わされた有底筒状のカップ部材57の一端面に受けられている。カップ部材57の他端面は、ワッシャ58を介してソレノイドハウジング52の一端面52bに受けられている。カップ部材57が鍔部56を受けることによって、規制部材31が可動方向Bの一方B1に移動することを規制する。
規制部材31の中間部31cには、コイルばね59が遊嵌されている。このコイルばね59は、カップ部材57の他端と規制部材31の鍔部56との間に配置されており、規制部材31を可動方向Bの他方B2側、すなわち規制部材31を係合位置D1側へ付勢している。
通常時、ソレノイド32への通電によって、可動子54に、可動方向Bの一方B1側への駆動力が付与されている。これにより、規制部材31は、コイルばね59の付勢力に抗してコイルばね59を圧縮し、鍔部56がカップ部材57に受けられる。このとき、規制部材31は、係合解除位置D2に位置している。
図5および図6を参照して、リング部材60は、第8の軸受50に隣接して配置されており、キャリア22の環状の鍔部49の外周面に例えば圧入により固定されている。なお、キャリア22とリング部材60とは、単一の部材を用いて一体に形成されていてもよい。
リング部材60の外周面60aには、規制部材31の他端31bと係合可能な係合凹部61が形成されている。係合凹部61は、外周面60aの周方向Cに等間隔に複数(本実施の形態において、例えば8つ)設けられている。
キャリア22の回転を規制するとき、ECU24は、ソレノイド32への電力の供給を遮断する。これにより、ソレノイド32の可動子54と固定子34との磁気的な結合が解かれ、その結果、規制部材31は、コイルばね59の付勢力によって、可動方向Bの他方B2側(係合位置D1側)に移動される。
そして、図7に示すように、規制部材31の他端31bが係合凹部61に係合し、リング部材60およびキャリア22の回転が規制される。
図8は、車両用操舵装置1の電気的な構成の要部を示すブロック図である。図8を参照して、ECU24は、第1の異常検出手段としての第1の異常検出部71と、第2の異常検出手段としての第2の異常検出部72と、モータ制御手段としての遊星ギヤ機構用モータ制御部73と、ロック制御手段としてのロック制御部74と、を含んでいる。
第1の異常検出部71は、伝達比可変機構8の出力の異常を検出するものである。第1の異常検出部71は、転舵角センサ28および遊星ギヤ機構用モータ制御部73に接続されており、転舵角θ2に関する信号と、第2のシャフト6の後述する目標回転数dθ2/dtに関する信号がそれぞれ入力される。
第2の異常検出部72は、遊星ギヤ機構17の異常を検出するものである。第2の異常検出部72は、操舵角センサ26、転舵角センサ28、および遊星ギヤ機構用モータ制御部73のそれぞれに接続されており、操舵角θ1、転舵角θ2、および後述する目標伝達比θ2/θ1に関する信号がそれぞれ入力される。また、第2の異常検出部72は、第1の異常検出部71に接続されており、第1の異常検出部71の異常検出信号が入力される。
遊星ギヤ機構用モータ制御部73は、遊星ギヤ機構用モータ18の駆動を制御するものである。遊星ギヤ機構用モータ制御部73は、操舵角センサ26、転舵角センサ28、遊星ギヤ機構用モータレゾルバ33、トルクセンサ27、車速センサ29およびヨーレートセンサ30のそれぞれに接続されている。遊星ギヤ機構用モータ制御部73には、操舵角θ1、転舵角θ2、遊星ギヤ機構用モータ18のロータ18aの回転角θm、操舵トルクT、車速Vおよびヨーレートγに関する信号がそれぞれ入力されるようになっている。
遊星ギヤ機構用モータ制御部73は、これらの信号に基づいて、第1のシャフト5の出力軸5bの目標回転数dθ1/dtや、第2のシャフト6の目標回転数dθ2/dtや、伝達比θ2/θ1の目標値としての目標伝達比θ2/θ1を設定する。遊星ギヤ機構用モータ制御部73は、この目標伝達比θ2/θ1に基づいて遊星ギヤ機構用モータ18の駆動を制御する。
また、遊星ギヤ機構用モータ制御部73は、第1の異常検出部71およびロック制御部74のそれぞれに接続されており、第1の異常検出部71の異常検出信号、およびロック制御部74の動作状態に関する信号がそれぞれ入力される。
ロック制御部74は、ソレノイド32の動作を制御するものである。ロック制御部74は、第1の異常検出部71および第2の異常検出部72に接続されており、第1の異常検出部71の異常検出信号および第2の異常検出部72の異常検出信号のそれぞれが入力される。
本実施の形態の特徴の1つは、車両用操舵装置1に異常(フェール)が生じたとき、ECU24の制御によって、操舵フィーリングを損なうことなく、操舵部材2と第2のシャフト6とをトルク伝達可能に連結する点にある。
図9は、車両用操舵装置1の異常に関する制御の一例のフローチャートである。図9を参照して、まず、ECU24の第1の異常検出部71によって、第1の異常が生じているか否かが判定される(ステップS1)。第1の異常とは、伝達比可変機構8の出力の異常をいい、例えば、遊星ギヤ機構用モータ18が暴走することにより、第2のシャフト6の回転数dθ2/dt(回転速度)が、目標回転数dθ2/dtから大きく外れることをいう。
遊星ギヤ機構用モータ制御部73で求められた、第2のシャフト6の目標回転数dθ2/dtに対する、第2のシャフト6の回転数dθ2/dtの偏差が所定値α1以上である場合(|dθ2/dt−dθ2/dt|≧α1)に、第1の異常検出部71は、第1の異常を検出する。
第1の異常が検出されると(ステップS1でYES)、第2の異常が生じているか否かが第2の異常検出部72で判定される(ステップS2)。
第2の異常とは、遊星ギヤ機構17の異常をいう。具体的には、遊星ギヤ21と第1のサンギヤ19との噛み合い部、および遊星ギヤ21と第2のサンギヤ20との噛み合い部の少なくとも一方において、鉄粉等の異物の混入等により、噛み合い抵抗が大きくなることや、異物の混入や焼き付きや歯の変形により、各ギヤ19,20,21がロックすることをいう。
第2の異常が生じている場合、各ギヤ19,20,21は、互いにロックしているか、ロックしているに近い状態となる。したがって、第1のシャフト5の出力軸5bと、第2のシャフト6とは、直結または略直結となっており、伝達比θ2/θ1は、略1になっている。
検出された伝達比θ2/θ1(実伝達比)が、略1であり、この伝達比θ2/θ1に対して、遊星ギヤ機構用モータ制御部73で設定された目標伝達比θ2/θ1の偏差|θ2/θ1−θ2/θ1|が、所定値α2(例えば、0.2)以上(|θ2/θ1−θ2/θ1|≧α2)である場合、第2の異常検出部72は、第2の異常を検出する(ステップS2でYES)。
一例として、伝達比θ2/θ1が1であるのに対して、目標伝達比θ2/θ1が1.5である場合、上記偏差が0.5であるとして、第2の異常検出部72が第2の異常を検出する。なお、目標伝達比θ2/θ1に関わらず、伝達比θ2/θ1が略1である場合に第2の異常を検出してもよい。
第2の異常が検出されると、ロック制御部74は、ソレノイド32の規制部材31によるキャリア22のロックを禁止する(ステップS3)。すなわち、ソレノイド32の可動子54および規制部材31が係合解除位置D2から変位することを禁止する。これにより、キャリア22は、回転可能な状態を維持される。
一方、第2の異常検出部72によって第2の異常が検出されない場合(ステップS2でNO)、遊星ギヤ21と第1および第2のサンギヤ19,20との噛み合い状態に異常がなく、遊星ギヤ機構17に異常は生じていない。このときには、キャリア22がロックされる(ステップS4)。具体的には、ロック制御部74がソレノイド32への通電を停止する。これにより、ソレノイド32の固定子34と可動子54との磁気的な結合が解除される。これにより、コイルばね59が伸び、規制部材31を係合解除位置D1から係合位置D2に変位させる。係合位置D2に変位した規制部材31は、リング部材60の係合凹部61に係合し、リング部材60およびキャリア22の回転を規制する。
ソレノイド32によるキャリア22のロックが禁止されるか(ステップS3)、またはソレノイド32によってキャリア22がロックされた(ステップS4)後、遊星ギヤ機構用モータ制御部73によって、遊星ギヤ機構用モータ18の駆動がオフされる(ステップS5)。具体的には、遊星ギヤ機構用モータ18への通電が、図示しないリレーをオフにすることにより停止される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、第1の異常検出部71によって伝達比可変機構8の出力の異常が検出された場合、操舵フィーリングを損なうことなく、操舵部材2と第2のシャフト6とをトルク伝達可能に連結することができる。
具体的には、第1の異常検出部71によって伝達比可変機構8の出力の異常が検出された場合において、第2の異常検出部72によって遊星ギヤ機構17の異常が検出されることを条件として、キャリア22のロックが禁止される。このとき、キャリア22がロックされていなくても、遊星ギヤ21と第1のサンギヤ19および第2のサンギヤ20とは、ロックされているか、またはロックに近い状態でトルク伝達可能である。したがって、略一定の伝達比θ2/θ1で第1のサンギヤ19と第2のサンギヤ20とがトルク伝達可能であり、操舵部材2と第2のシャフト6とがトルク伝達可能である。このとき、キャリア22はロックされていないので、比較的小さなトルクで操舵部材2を操作できる。
また、第2の異常検出部72によって遊星ギヤ機構17の異常が検出されないことを条件として、キャリア22がロックされる。このとき、遊星ギヤ21と第1のサンギヤ19および第2のサンギヤ20との間のそれぞれの駆動抵抗は小さいままなので、各ギヤ19,20,21は滑らかに噛み合うことができる。この状態でキャリア22がロックされることにより、一定の伝達比θ2/θ1で第1のサンギヤ19と第2のサンギヤ20とがトルク伝達可能となる。その結果、比較的小さなトルクで操舵部材2を操作できる。
このように、第1の異常(伝達比可変機構8の異常)が生じたときでも、比較的小さなトルクで操舵部材2を操作できるので、フェール時の操舵フィーリングをより良くできる。
また、第1の異常が検出されたとき、操舵部材2と第2のシャフト6とがトルク伝達可能に連結されつつ、伝達比可変機構用モータ18が停止される。したがって、操舵部材2の操作によって転舵輪4L,4Rを操向できる状態を維持しつつ、遊星ギヤ機構用モータ18を停止することができる。
また、第2の異常検出部72は、目標伝達比θ2/θ1と伝達比θ2/θ1との偏差|θ2/θ1−θ2/θ1|が所定値α2以上のときに、遊星ギヤ機構17の異常を検出するようになっている。このような異常検出方法により、第1のサンギヤ19および第2のサンギヤ20の少なくとも一方と、遊星ギヤ21との間で、異物の噛み込み等に起因する駆動抵抗の増大、またはロックが生じていることを検出でき、その結果、遊星ギヤ機構17の異常を確実に検出することができる。
本発明は、以上の実施の形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、ロック機構として、ソレノイド32に代えて、油圧シリンダやカム機構等の他の機構を用いてもよい。また、遊星伝達機構として、遊星ギヤ機構17の各歯車に代えてローラを用いた、トラクションドライブ機構を用いてもよい。
また、第1の異常が検出されたときに警告灯を点灯することにより、運転者に修理を促すようにしてもよい。
さらに、第2の異常を検出する構成は、上記したものに限らない。要は、遊星ギヤ21と第1および第2のサンギヤ19,20の少なくとも一方との間において、噛み合いの抵抗が増大したか、または、ロック状態が生じたことを検出できる構成であればよい。
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、6…第2のシャフト(転舵輪側部材)、8…伝達比可変機構、17…遊星ギヤ機構(差動機構)、18…遊星ギヤ機構用モータ(伝達比可変機構用モータ)、19…第1のサンギヤ(入力要素)、20…第2のサンギヤ(出力要素)、21…遊星ギヤ(遊星要素)、22…キャリア、32…ソレノイド(ロック機構)、71…第1の異常検出部(第1の異常検出手段)、72…第2の異常検出部(第2の異常検出手段)、73…遊星ギヤ機構用モータ制御部(モータ制御手段)、74…ロック制御部(ロック制御手段)、θ1…操舵角(操舵部材の回転角)、θ2…転舵角(転舵輪側部材の回転角)、θ2/θ1…伝達比(実伝達比)、θ2/θ1…目標伝達比、|θ2/θ1−θ2/θ1|…偏差、α2…所定値。

Claims (3)

  1. 操舵部材に連なる入力要素、転舵輪側部材に連なる出力要素、入力要素と出力要素との間に介在する遊星要素、および遊星要素を支持するキャリアを含む差動機構、ならびに伝達比可変機構用モータを含み、操舵部材の回転角に対する転舵輪側部材の回転角の比である伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、
    上記キャリアをロック可能なロック機構と、
    上記伝達比可変機構の出力の異常を検出する第1の異常検出手段と、
    上記差動機構の異常を検出する第2の異常検出手段と、
    上記ロック機構の動作を制御するロック制御手段と、を備え、
    上記ロック制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出された場合に、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されることを条件として、上記ロック機構による上記キャリアのロックを禁止し、上記第2の異常検出手段によって上記差動機構の異常が検出されないことを条件として、上記ロック機構によって上記キャリアをロックさせることを特徴とする車両用操舵装置。
  2. 請求項1において、目標伝達比に基づいて上記伝達比可変機構用モータを制御するモータ制御手段を備え、
    上記モータ制御手段は、上記第1の異常検出手段によって上記伝達比可変機構の出力の異常が検出されたときに上記伝達比可変機構用モータの駆動を停止することを特徴とする車両用操舵装置。
  3. 請求項2において、上記第2の異常検出手段は、上記目標伝達比と実伝達比との偏差が所定値以上のときに、上記差動機構の異常を検出することを特徴とする車両用操舵装置。
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