JP2010188642A - 炭素質立体造形物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 単環式または多環式の芳香環に2個以上のグリシジルオキシ基が直接結合している構造部を分子中に有するポリグリシジルオキシ化合物(A)および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物を、不活性雰囲気中で加熱炭化して炭素質立体造形物を製造する。
【選択図】 なし
Description
光学的立体造形法の代表的な例としては、(a)容器に入れた液状光硬化性樹脂の液面に、所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーなどの光ビームを選択的に照射して所定厚みの光硬化層を形成し、更に当該光硬化層の上に1層分の液状樹脂を供給し、同様に光ビームを選択的に照射して光硬化層を形成する積層操作を繰り返して立体造形物を製造する方法(例えば特許文献1、2など多数)、(b)容器に入れた液状光硬化性樹脂の液面に、コンピューターによる制御下に露光マスクを介して光を照射して所望の形状パターンを有する光硬化層を所定厚みで形成させ、更に当該光硬化層の上に1層分の液状樹脂を供給した後、前記と同様に露光マスクを介して光を照射して光硬化層を形成させる積層操作を繰り返して立体造形物を製造する方法(特許文献3など)、(c)コンピューターによる制御下に光硬化性樹脂組成物に2光子吸収を行わせて光硬化部を順次形成して微小な立体造形物を製造する2光子マイクロ光造形方法(特許文献4等)、(d)型内に光硬化性樹脂組成物を充填し、光を照射して樹脂組成物を硬化させて立体造形物(成形品)を製造する方法などを挙げることができる。
しかしながら、光硬化性樹脂組成物を用いる上記した光学的立体造形方法によって得られる立体造形物は、いずれも、光硬化した有機樹脂からなる樹脂製立体造形物であるため、その耐熱温度は高くても100℃前後であり、耐熱性が十分であるとは言えない。また、樹脂製立体造形物は、用途などによっては、力学的特性、耐薬品性、生体適合性、電気特性、表面積、表面の平滑性などが十分に満足するものであるとは言えない。
しかしながら、炭素繊維は、その基本形状があくまで繊維状であるため、三次元構造をなす成形品や立体造形物の用途にそのまま用いることは難しく、炭素繊維から三次元構造をなす成形品や立体造形物を製造しようとすれば、炭素繊維にバインダーを加えて成形しり、炭素繊維を用いて製編織などを更に行う必要があり、しかもそれにより得られる三次元構造体は必ずしも立体成形品や立体造形物として有効であるとは限らない。
しかしながら、前記した特許文5〜7などに記載されている従来の方法は、炭素質部材間への充填、押し出し、圧縮、エンボス加工、打ち抜きなどの所定の成形加工を経て得られる三次元構造体を加熱炭化して炭素質成形品を製造するため、それぞれの成形加工に応じた形状、構造、寸法の炭素質成形品しか製造できず、複雑な形状や構造を有する炭素質成形品や、ミクロンサイズやナノメータサイズの微小な炭素質成形品を得ることは困難である。
更に、本発明の目的は、微小なサイズの炭素質立体造形物、例えば、ミクロンサイズやナノメータサイズの微小なサイズを有し、マイクロマシンなどとして使用可能な炭素質立体造形物をも、円滑に且つ簡単に製造することのできる方法を提供することである。
そして、本発明の目的は、炭素質立体造形物、特に複雑な形状や構造を有する炭素質立体造形物、微小なサイズの炭素質立体造形物を提供することである。
また、本発明は、本発明者らが見出した前記した方法による場合は、一般にマイクロマシンと称される微小な炭素質立体造形物をも円滑に製造できることを見出した。
(1) 単環式または多環式の芳香環に2個以上のグリシジルオキシ基が直接結合している構造部を分子中に有するポリグリシジルオキシ化合物(A)および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物を、不活性雰囲気中で加熱炭化することを特徴とする炭素質立体造形物の製造方法である。
(2) 樹脂製立体造形物の形成に用いる光硬化性樹脂組成物におけるポリグリシジルオキシ化合物(A)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて、50質量%以上である前記した(1)の炭素質立体造形物の製造方法;
(3) 樹脂製立体造形物の形成に用いる前記光硬化性樹脂組成物が、オキセタン化合物を、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて5〜40質量%の割合で更に含有する前記した(1)または(2)の炭素質立体造形物の製造方法;
(4) 樹脂製立体造形物の形成に用いる前記光硬化性樹脂組成物が、ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を更に含有し、ラジカル重合性した(1)〜(3)のいずれかの炭素質立体造形物の製造方法;および、
(5) 光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物が、2光子吸収を利用して立体造形物を製造する2光子マイクロ光造形方法、光ビームで造形面上に光硬化層を一層ずつ形成し積層して立体造形物を形成する光造形方法、露光マスクを介して造形面に光を照射して光硬化層を一層ずつ形成し積層して立体造形物を形成する光造形方法または光硬化性樹脂組成物を型内に充填し光硬化させて立体造形物を形成する方法で得られる樹脂製立体造形物である前記した(1)〜(4)のいずれかの炭素質立体造形物の製造方法;
である。
(6) 前記した(1)〜(5)のいずれかの製造方法で得られる炭素質立体造形物;および、
(7) 炭素質立体造形物が、マイクロマシン、微小電極、微細電極、光ナノインプリンティングパターン、微小フィルター、触媒担体、マイクロリアクター、高性能電極、高性能電池または放電加工用電極である前記した(6)の炭素質立体造形物;
である。
本発明による場合は、大きなサイズの炭素質立体造形物から、小さなサイズ(特にミクロンサイズやナノメータサイズ)の炭素質立体造形物、更には構造の複雑な炭素質立体造形物まで極めて円滑に製造することができる。
特に、本発明により得られる微細なサイズの炭素質立体造形物は、マイクロマシンやその他の種々の用途、例えば、人工心臓やその他の人工臓器で用いる医療用機器、電気化学センサー、小型エネルギー貯蔵・変換素子、微小電極、微細電極、光ナノインプリンティングパターン、微小フィルター、触媒担体、マイクロリアクターなどに有効に使用することができ、またセンチオーダーの炭素質立体造形物は、例えば、高性能電極、高性能電池、放電加工用電極などに有効に使用することができる。
本発明の炭素質立体造形物を製造するための前駆体である立体造形物として、単環式または多環式の芳香環に2個以上のグリシジルオキシ基が直接結合している構造部を分子中に有するポリグリシジルオキシ化合物(A)および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物を用いる。
光硬化性樹脂組成物中に含有させる「単環式または多環式の芳香環に2個以上のグリシジルオキシ基が直接結合している構造部を分子中に有するポリグリシジルオキシ化合物(A)」[以下単に「ポリグリシジルオキシ化合物(A)」ということがある]は、カチオン重合性の有機化合物であり、一般に、下記の式(I)で表される構造部を分子中に少なくとも1個有するポリグリシジルオキシ化合物である。
(式中、R1は単環式または多環式の芳香環を示し、kは2以上の整数を示す。)
ここで、多環式の芳香環とは、ベンゼン環などの1つの芳香環が2個以上共有結合して多環構造(多環式の芳香環)を形成していることを意味する。
上記の式(I)において、単環式または多環式の芳香環R1は、芳香環の環形成に炭素のみが関与している芳香環(窒素、酸素、硫黄などの炭素以外の原子が環形成に関与していない芳香環)であることが好ましい。そのような芳香環の具体例としては、ベンゼン環などの単環式の芳香環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ピセン環、ペリレン環などの多環式の芳香環を挙げることができる。
R1が多環式の芳香族環(上記したナフタレン環以降の芳香環)である場合は、2個以上のグリシジルオキシ基は、多環式の芳香族環中の同じ環に結合していてもよいしまたは異なる環にそれぞれ結合していてもよい。
本発明で好ましく用いられるポリグリシジルオキシ化合物(A)の具体例としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,2,4−トリヒドロキシベンゼントリグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、レゾルシノールジグリシジルエーテルが、入手が容易で、光硬化感度が高く、粘度が低くて取り扱いが容易で、しかも光硬化性樹脂組成物から形成された樹脂製立体造形物を炭化した際の質量減少が少ない点から好ましく用いられる。
光硬化性樹脂組成物におけるポリグリシジルオキシ化合物(A)の含有量が少なすぎると、光硬化性樹脂組成物から形成される樹脂製立体造形物を炭化したときに、質量減少や形状変化などが大きくなって、目的とする炭素質立体造形物が得られにくくなり、また炭素質立体造形物の力学的特性、外観、表面の平滑性などが劣ったものになり易い。
光硬化性樹脂組成物におけるポリグリシジルオキシ化合物(A)の含有量が多いほど、光硬化性樹脂組成物から形成される樹脂製立体造形物を炭化した際の質量減少が少なくなり、力学的特性、外観、表面の平滑性などに優れる炭素質立体造形物が得られるが、その一方で光硬化性樹脂組成物の光硬化感度が低下し、樹脂製立体造形物を形成するための光造形に時間がかかるようになり、また場合によっては十分に硬化した樹脂製立体造形物が得られにくくなったり、寸法精度や外観などが不良になることがある。
本発明では、上記したようなカチオン重合開始剤のうちの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、本発明では芳香族スルホニウム塩がより好ましく用いられる。
また、本発明では、反応速度を向上させる目的で、カチオン重合開始剤と共に必要に応じて光増感剤、例えばベンゾフェノン、アルコキシアントラセン、ジアルコキシアントラセン、チオキサントンなどを用いてもよい。
光硬化性樹脂組成物中にオキセタン化合物を含有させることにより、光硬化性樹脂組成物の粘度が低くなって光造形作業が行い易くなり、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度が高くなって樹脂製立体造形物を形成するための光造形時間が短縮でき、また光硬化性樹脂組成物の高い光硬化感度を長期にわたって高く維持すると共に、光硬化性樹脂組成物から形成される樹脂製立体造形物の耐熱性を向上させることができる。
そのような、モノオキセタンモノアルコール化合物のうちでも、下記の一般式(II−a)で表されるモノオキセタンモノアルコール化合物(II−a)および下記の一般式(II−b)で表されるモノオキセタンモノアルコール化合物(II−b)のうちの少なくとも1種が、入手の容易性、高反応性、粘度が低いなどの点から、モノオキセタン化合物としてより好ましく用いられる。
モノオキセタンアルコール(II−a)の具体例としては、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−ノルマルブチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−プロピルオキセタンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、入手の容易性、反応性などの点から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンがより好ましく用いられる。
また、上記の一般式(II−b)において、R4は炭素数2〜10のアルキレン基であれば、鎖状のアルキレン基または分岐したアルキレン基のいずれであってもよく、或いはアルキレン基(アルキレン鎖)の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する炭素数2〜10の鎖状または分岐状のアルキレン基であってもよい。R4の具体例としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、3−オキシペンチレン基などを挙げることができる。そのうちでも、R4はトリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基またはヘプタメチレン基であることが、合成の容易性、化合物が常温で液体である取り扱い易いなどの点から好ましい。
(式中、2個のR5は互いに同じかまたは異なる炭素数1〜5のアルキル基、R6は芳香環を有しているかまたは有していない2価の有機基、mは0または1を示す。)
で表されるジオキセタン化合物(III)が、入手性、反応性、低吸湿性、硬化物の力学的特性などの点から好ましく用いられる。
上記の一般式(III)において、R5の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルを挙げることができる。また、R6の例としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、フェニレン基、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基などを挙げることができる。
また、上記の式(III−b)で表されるジオキセタン化合物の具体例としては、上記の式(III−b)において2個のR5が共にメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチル基で、R6がエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n−ペンタメチレン基、n−ヘキサメチレン基など)、フェニレン基、式:−CH2−Ph−CH2−または−CH2−Ph−Ph−CH2−で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基であるジオキセタン化合物を挙げることができる。
オキセタン化合物の含有量が多くなり過ぎると、光硬化性樹脂組成物の硬化感度は通常向上するが、樹脂製立体造形物を加熱炭化したときに質量減少が大きくなり易く、また場合によっては反応速度がかえって低下することがあり、また樹脂製立体造形物の弾性率、強度などが低下して形状保持性を失うことがある。
その際の他のカチオン重合性有機化合物としては、ポリグリシジルオキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物以外の環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では他のカチオン重合性有機化合物として、前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。
そのうちでも、他のカチオン重合性有機化合物としては、ポリグリシジルオキシ化合物(A)以外のエポキシ化合物が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリグリシジルオキシ化合物(A)以外のポリエポキシ化合物がより好ましく用いられる。
光硬化性樹脂組成物中にポリグリシジルオキシ化合物(A)およびオキセタン化合物以外の他のカチオン重合性有機化合物を含有させる場合は、他のカチオン重合性有機化合物の含有量は、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
そのうちでも、ラジカル重合性有機化合物としては、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましく用いられ、具体例としては、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
より具体的には、例えば、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートやその他のジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、前記したジオール、トリオール、テトラオール、ヘキサオールなどの多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレートなどを挙げることができる。
そのうちでも、アルコール類の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸との反応により得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート、例えばジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートなどが好ましく用いられる。
また、前記した(メタ)アクリレート化合物のうちで、メタクリレート化合物よりも、アクリレート化合物が重合速度の点から好ましく用いられる。
また、上記したポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、水酸基含有ポリエーテルとアクリル酸との反応により得られるポリエーテルアクリレートを挙げることができる。
ラジカル重合性有機化合物の含有量が多すぎると、樹脂製立体造形物に硬化収縮による反りが発生したり、樹脂製立体造形物を加熱炭化したときの質量減少が大きくなったり、表面の平滑性が低下し易くなる。
フェニルケトン系化合物としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
また、アセトフェノン系化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシメチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4′−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−アジドベンザルアセトフェノンなどを挙げることができる。
また、ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノンなどを挙げることができる。
チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンなどを挙げることができる。
2光子マイクロ光造形方法により樹脂製立体造形物を形成するに当たっては、従来から2光子マイクロ光造形方法において採用されている方法および装置のいずれもが採用でき、特に制限されない。
2光子マイクロ光造形方法によって樹脂製立体造形物を製造する際の光ビームの種類、光ビームの波長、光ビームのエネルギー強度、光ビームの焦点の径、光造形時の走査速度、パルス幅などは、光硬化性樹脂の種類、光硬化性樹脂組成物の組成、製造しようとする樹脂製立体造形物の形状や寸法、使用する2光子マイクロ光造形装置の内容などに応じて調整することができる。限定されるものではないが、2光子マイクロ光造形法によって樹脂製立体造形物を製造するに当っては、例えば、光ビームとして波長が750nmのフェムト秒パルスレーザビームなどを使用し、光ビームのエネルギー強度10〜100mW、光ビームの焦点のスポット径100〜2000nm、造形時の走査速度5〜100μm/secの条件下で2光子マイクロ光造形を行うことができる。
上記(2)および(3)の光造形方法では、光硬化性樹脂組成物を硬化させる光線のいずれも使用でき、そのうちでも、300〜400nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられ、その際の光源としては、紫外線レーザー(例えば半導体励起固体レーザー、Arレーザー、He−Cdレーザーなど)、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線LED(発光ダイオード)、紫外線蛍光灯などを使用することができる。
上記(3)の光造形方法では、露光マスクとして、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを線状に配置した線状露光マスクや当該微小光シャッターを複数面状に配列して面状描画マスクなどを使用することができる。
その際の型としては、樹脂型(例えばアクリル樹脂型、エポキシ樹脂型、メタルエポキシ樹脂型など)、ゴム型(例えばシリコーンゴム型など)などが好ましく使用され、特に透明な樹脂型やゴム型がより好ましく使用される。光硬化を行う際の光としては、上記(2)および(3)の光造形方法におけるのと同様の光線を使用することができる。
樹脂製立体造形物の加熱炭化は、不活性ガス雰囲気中で、樹脂製立体造形物が炭化される温度で加熱することによって行う。樹脂製立体造形物の加熱炭化の際に用いる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガスなどを挙げることができ、そのうちでも窒素ガスが入手容易性、取り扱いの容易さ、コストなどの点から好ましく用いられる。
また、樹脂製立体造形物を加熱炭化するに際して、樹脂製立体造形物を空気中などの酸素雰囲気中で所定の時間炭化温度よりも低い温度(一般的には80〜400℃程度)で所定時間加熱して安定化した後に、炭化温度まで加熱して炭化を行って炭素質立体造形物を製造してもよい。
さらに、上記で得られた炭素質立体造形物にフェノール樹脂、ポリフルフリルアルコールなどの有機物を含浸またはコーティングし、必要であれば光硬化または熱硬化させた後、再度加熱炭化処理を行ってもよい。
また、以下の例中、光硬化性樹脂組成物の粘度、硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)の測定、光造形して得られた樹脂製立体造形物の力学的特性[引張り特性(引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率)、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)]および熱変形温度並びに樹脂製立体造形物を加熱炭化して炭素質立体造形物を製造した際の質量残存率の測定は、次のようにして行なった。
光硬化性樹脂組成物を25℃の恒温槽に入れて、光硬化性樹脂組成物の温度を25℃に調節した後、B型粘度計(株式会社東機産業製)を使用して回転速度20rpmで測定した。
非特許文献3に記載されている理論にしたがって測定した。具体的には、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面(液面)に、半導体励起固体レーザのレーザ光(波長355nmの紫外光、液面レーザ強度100mW)を、照射スピードを6段階変化(照射エネルギー量を6段階変化)させて照射して光硬化膜を形成させた。生成した光硬化膜を光硬化性樹脂組成物液から取り出して、未硬化樹脂を取り除き、6段階のエネルギーに対応する部分の硬化膜の厚さを定圧のノギスで測定した。光硬化膜の厚さをY軸、照射エネルギー量をX軸(対数軸)としてプロットし、プロットして得られた直線の傾きから硬化深度[Dp(mm)]を求めると共に、X軸の切片を臨界硬化エネルギー[Ec(mJ/cm2)]とし、0.25mmの厚さに硬化させるのに必要な露光エネルギー量を作業硬化エネルギー[(E10/(mJ/cm2)]とした。
以下の実施例または比較例で作製した樹脂製立体造形物(JIS K−7113に準拠したダンベル形状の試験片)を紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度3.0mW/cm2)を20分間照射して後硬化したものを用いて、JIS K−7113にしたがって、試験片の引張破断強度(引張強度)、引張破断伸度(引張伸度)および引張弾性率を測定した。
以下の実施例または比較例で作製した樹脂製立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)を紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度3.0mW/cm2)を20分間照射して後硬化したものを用いて、JIS K−7171にしたがって、試験片の曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
以下の実施例または比較例で作製した樹脂製立体造形物(JIS K−7171に準拠したバー形状の試験片)を紫外線(高圧水銀灯)(波長365nm;強度3.0mW/cm2)を20分間照射して後硬化したものを用い、東洋精機社製「HDTテスタ6M−2」を使用して、試験片に1.81MPaの荷重を加えるJIS K−7207(A法)および試験片に0.45MPaの荷重を加えるJIS K−7207(A法)に準拠して、試験片の熱変形温度を測定した。
加熱炭化する前の樹脂製立体造形物の質量(W0)と、当該樹脂製立体造形物を加熱炭化して得られた炭素質立体造形物の質量(W1)から、下記の数式(i)により炭素質立体造形物の製造時の質量残存率を求めた。
炭素質立体造形物の製造時の質量残存率(%)=(W1/W0)×100 (i)
樹脂製立体造形物を加熱炭化して得られた炭素質立体造形物の形状および外観を、目視により観察して、下記に示す評価基準に従って評価した。
○:加熱炭化する前の樹脂製立体造形物と同じかまたはほぼ同じ形状を有し(相似形)、表面が滑らかで、亀裂なども生じていない。
△:加熱炭化する前の樹脂製立体造形物と比べてかなりの変形が生じており、表面の滑らかさがない。
×:加熱炭化する前の樹脂製立体造形物と比べて、変形が大きいかおよび/または表面に亀裂、大きな凹凸、皺などが生じている。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル(ナガセケムテック社製「EX−201」;以下同じ)90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エトキシオキセタン(東亞合成社製「OXT−101」;以下同じ)10質量部およびジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(サンアプロ社製「CPI−110P」;以下同じ)1.5質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を、内径5mm、深さ3mmのシリコーンゴム製の型(有底円筒形の型)に、1.5mmの深さまで充填した後、紫外線ハンドランプ(波長365nm)(アズワン社製「LUV−6」)を使用して15分間露光して光硬化させて、円盤状の樹脂製立体造形物を形成した。
(3) 上記(2)で形成した樹脂製立体造形物をシリコーン型から取り出して、電気炉中で、窒素ガス雰囲気下に、昇温速度10℃/分で、室温から800℃まで加熱して炭化した後、通電を停止し、電気炉に入れたままの状態で放置して室温まで冷却して(冷却時間約10時間)、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(4) 上記(3)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めた。
その結果を下記の表1に示す。
図1の(a)に、この実施例1で得られた炭素質立体造形物を上方から撮影した写真を示し、また図1の(b)に、この実施例1で得られた炭素質立体造形物の表面の走査型電子顕微鏡による写真(SEM写真:倍率3000倍)を示す。
(1) 3−ヒドロキシメチル−3−エトキシオキセタン10質量部の代りに、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ベンゼン(東亞合成社製「OXT−121」)10質量部を使用するか(実施例2)または1,3−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ベンゼン10質量部を使用した(実施例3)以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エトキシオキセタン10質量部、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部、エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製「ATM−4E」;以下同じ)10質量部およびベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカル社製「Irgacure651」;以下同じ)0.5質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート10質量の代りに、同じテトラアクリレートを20質量部(実施例5)または30質量部(実施例6)の量で用い、更にベンジルジメチルケタール0.5質量部の代りに同じベンジルジメチルケタールを1質量部(実施例5)または1.5質量部(実施例6)の量で用いた以外は、実施例4の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、実施例5で得られた炭素質立体造形物を上方から撮影した写真を図2に示す。
(1) エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート20質量の代りに、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業社製「A−9550」)を20質量部の量で用いるか(実施例7)、またはビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート(昭和高分子社製「VR−77」)を20質量部の量で用いた(実施例8)以外は、実施例5の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部の代りに、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(ADEKA社製「EP−4100S」;以下同じ)90質量部を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
この比較例1で得られた炭素質立体造形物を上方から撮影した写真を図3に示す。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部の代りに、ジグリシジルフタレート(ナガセケムテック社製「EX−721;以下同じ)90質量部を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造しようとしたところ、15分間の露光では光硬化しなかったので、上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を、同じシリコーン型に500μmに厚さに充填して同じ紫外線ハンドランプを使用して約2時間露光した。しかし、内側はある程度固まっているようであったが、表面は未だ粘着性のままであったので、次の加熱炭化処理を行わなかった。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部の代りに、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルオキシメチルクロヘキシル)プロパン(水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル)(新日本理化社製「HBE−100」)90質量部を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行ったところ、完全に消失してしまい、炭素質立体造形物が得られなかった。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部の代りに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ダウケミカル社製「UVR−6105」)90質量部を用い、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部の代りに、ジ(4−フオロフェニル)(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニルチオ)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(ADEKA社製「SP−172」)2質量部を用いた以外は、実施例1の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行ったところ、下記の表2に示すように殆どが消失してしまって、僅かな炭素滓が残留しただけであった。
(1) ビスフェノールAジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エトキシオキセタン10質量部、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部、エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート20質量部およびベンジルジメチルケタール(Irgacure651)1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
この比較例5で得られた炭素質立体造形物を上方から撮影した写真を図4に示す。
(1) ビスフェノールAジグリシジルエーテル90質量部の代りに、ジグリシジルフタレート90質量部を用いた以外は比較例5の(1)と同様にして光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って、円盤状の炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
この比較例6で得られた炭素質立体造形物を上方から撮影した写真を図5に示す。
(1) ジペンタエリスリトールポリアクリレート20質量部およびベンジルジメチルケタール1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って炭素質立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
(1) 化薬マイクロケム製「SU−8−3005」[ビスフェノールAのホルムアルデヒド縮合物4量体のエピクロロヒドリン反応物(8官能エポキシ)を含むホトレジスト樹脂]を使用して、実施例1の(2)と同様にして円盤状の樹脂製立体造形物を製造した後、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化を行って炭素質立体造形物を製造した。
(2) 上記(2)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
特に、実施例2および3では、ポリグリシジルオキシ化合物(A)と共に、分子中に芳香環を有するオキセタン化合物を用いたことにより、樹脂製立体造形物を加熱炭化した際の質量残存率が高い。
それに対して、上記の表2の結果にみるように、比較例1〜8では、複数個のグリシジルオキシ基が1つの芳香環に直接結合した構造部を持たないポリエポキシ化合物を主体とする光硬化性樹脂組成物を調製して、当該光硬化性樹脂組成物から樹脂製立体造形物を形成し、その樹脂製立体造形物を加熱炭化したことにより、炭素質立体造形物を製造する際の質量残存率が実施例1〜8に比べて低く、しかも炭素質立体造形物の形状および外観が劣っているか(比較例1、5〜8)、光硬化性樹脂組成物の光硬化感度が低くて光硬化物(樹脂製立体造形物)を円滑に形成できないか(比較例2)、樹脂製立体造形物を加熱炭化した際に完全に焼失するか、ほぼ焼失してしまった(比較例2と3)。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン10質量部、ジ(4−フルオロフェニル)(2−クロロー4−ベンゾイルフェニルチオ)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート2.6質量部、エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート16質量部およびベンジルジメチルケタール0.8質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
この光造形用樹脂組成物の粘度を上記した方法で測定したところ200mPa・s(25℃)であった。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物の硬化深度(Dp)、臨界硬化エネルギー(Ec)および作業硬化エネルギー(E10)を上記した方法で測定したところ、硬化深度(Dp)は0.11mm、臨界硬化エネルギー(Ec)は39mJ/cm2および作業硬化エネルギー(E10)は438mJ/cm2であった。
(5) 上記(4)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン10質量部、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部、エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート20質量部およびベンジルジメチルケタール1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例9の(3)におけるのと同じ超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、実施例9の(3)と同じように光造形を行って、直径5mm×厚さ1.5mmの円盤状の樹脂製立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた樹脂製立体造形物を、実施例9の(4)と同様にして加熱炭化して、炭素質立体造形物を製造した。
(4) 上記(3)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
この実施例10で得られた炭素質立体造形物を、加熱炭化の際に使用した容器に入ったままの状態で上方から撮影した写真を図6に示す。
(1) レゾルシノールジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン10質量部、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート20質量部およびベンジルジメチルケタール1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例9の(3)におけるのと同じ超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、実施例9の(3)と同じように光造形を行って、直径5mm×厚さ1.5mmの円盤状の樹脂製立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた樹脂製立体造形物を、実施例9の(4)と同様にして加熱炭化して、炭素質立体造形物を製造した。
(4) 上記(3)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
(1) ビスフェノールAジグリシジルエーテル90質量部、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン10質量部、ジフェニル(4−フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート1.5質量部、エトキシル化(4モル)ペンタエリスリトールテトラアクリレート20質量部およびベンジルジメチルケタール1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例9の(3)におけるのと同じ超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、実施例9の(3)と同じように光造形を行って、直径5mm×厚さ1.5mmの円盤状の樹脂製立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた樹脂製立体造形物を、実施例9の(4)と同様にして加熱炭化して、炭素質立体造形物を製造した。
(4) 上記(3)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
(1) ジペンタエリスリトールポリアクリレート(A−9550)20質量部およびベンジルジメチルケタール1質量部を混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
(2) 上記(1)で得られた光硬化性樹脂組成物を用いて、実施例9の(3)におけるのと同じ超高速光造形システム(ナブテスコ株式会社製「SOLIFORM500B」)を使用して、実施例9の(3)と同じように光造形を行って、直径5mm×厚さ1.5mmの円盤状の樹脂製立体造形物を製造した。
(3) 上記(2)で得られた樹脂製立体造形物を、実施例9の(4)と同様にして加熱炭化して、炭素質立体造形物を製造した。
(4) 上記(3)で得られた炭素質立体造形物の形状および外観を上記した方法で評価すると共に、その質量を測定して、上記の数式(i)から質量残存率を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
この比較例10で得られた炭素質立体造形物を、加熱炭化に使用した容器に入ったままの状態で上方から撮影した写真を図7に示す。
それに対して、比較例9および10では、複数個のグリシジルオキシ基が1つの芳香環に直接結合した構造部を持たないポリエポキシ化合物を主体とする光硬化性樹脂組成物を調製して、当該光硬化性樹脂組成物から樹脂製立体造形物を形成し、その樹脂製立体造形物を加熱炭化するか(比較例9)、またはラジカル重合性有機化合物とラジカル重合開始剤のみを含有する光硬化性樹脂組成物を用いて光学的立体造形によって樹脂製立体造形物を形成し、その樹脂製立体造形物を加熱炭化した(比較例10)ことにより、炭素質立体造形物を製造する際の質量残存率が実施例9〜11に比べて低く、しかも炭素質立体造形物の形状および外観が劣っている。
(1) 2光子マイクロ光造形によって製造した立体造形物を母型として用いて作製した、ウサギの形をした微小な型キャビティを有するシリコーンゴム製の型に、実施例1の(1)で調製したのと同じ光硬化性樹脂組成物を充填した後、実施例1の(2)と同様にして光硬化させて、ウサギの形をした微小な樹脂製立体造形物形物(ウサギ)を製造した。これにより得られた樹脂製立体造形物の写真を、図8の(a)に示す。
(2) 上記(1)で得られた樹脂製立体造形物を、実施例1の(3)と同様にして加熱炭化して炭素質立体造形物を製造した。
これにより得られた炭素質立体造形物は、図8の(b)に示すように、加熱炭化する前の立体造形物(ウサギ)と同じ形を維持していた。
Claims (7)
- 単環式または多環式の芳香環に2個以上のグリシジルオキシ基が直接結合している構造部を分子中に有するポリグリシジルオキシ化合物(A)および光感受性カチオン重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物を、不活性雰囲気中で加熱炭化することを特徴とする炭素質立体造形物の製造方法。
- 樹脂製立体造形物の形成に用いる光硬化性樹脂組成物におけるポリグリシジルオキシ化合物(A)の含有量が、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて、50質量%以上である請求項1に記載の炭素質立体造形物の製造方法。
- 樹脂製立体造形物の形成に用いる前記光硬化性樹脂組成物が、オキセタン化合物を、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて5〜40質量%の割合で更に含有する請求項1または2に記載の炭素質立体造形物の製造方法。
- 樹脂製立体造形物の形成に用いる前記光硬化性樹脂組成物が、ラジカル重合性有機化合物および光感受性ラジカル重合開始剤を更に含有し、ラジカル重合性有機化合物の含有量が、光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて5〜30質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の炭素質立体造形物の製造方法。
- 光硬化性樹脂組成物を光硬化させて形成される樹脂製立体造形物が、2光子吸収を利用して立体造形物を製造する2光子マイクロ光造形方法、光ビームで造形面上に光硬化層を一層ずつ形成し積層して立体造形物を形成する光造形方法、露光マスクを介して造形面に光を照射して光硬化層を一層ずつ形成し積層して立体造形物を形成する光造形方法または光硬化性樹脂組成物を型内に充填し光硬化させて立体造形物を形成する方法で得られる樹脂製立体造形物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の炭素質立体造形物の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項の製造方法で得られる炭素質立体造形物。
- 炭素質立体造形物が、マイクロマシン、微小電極、微細電極、光ナノインプリンティングパターン、微小フィルター、触媒担体、マイクロリアクター、高性能電極、高性能電池または放電加工用電極である請求項6に記載の炭素質立体造形物。
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