JP2010188243A - 触媒材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒活性を有する金属粒子を金属酸化物の表面に高密度で担持させ、且つ、担持した上記金属粒子を酸化物表面に強く固定し、耐久性を向上させた触媒材料を提供する。
【解決手段】金属酸化物と触媒金属とを含み、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させる。
【選択図】図1
【解決手段】金属酸化物と触媒金属とを含み、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、触媒材料及びその製造方法に関する。
最近の電子技術の進歩によって、情報量が増加し、その増加した情報を、より高速に、より高機能に処理する必要があるため、高出力密度で高エネルギー密度の電源、すなわち、連続駆動時間の長い電源が必要となっている。
充電を必要としない小型発電機、すなわち、容易に燃料補給ができるマイクロ発電機の必要性が高まっている。こうした背景から、燃料電池が有力候補として検討されている。
燃料電池は、少なくとも固体又は液体の電解質及び所望の電気化学反応を誘起する二個の電極(アノード及びカソード)を含み、その燃料が有する化学エネルギーを直接電気エネルギーに高効率で変換する発電機である。
電解質に固体高分子電解質膜を用い、水素を燃料とする燃料電池は、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)と呼ばれ、メタノールを燃料とする燃料電池は、直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)と呼ばれる。
PEFCやDMFCにおいては、その耐久性の向上が課題のひとつであるが、中でも、電極に用いられる触媒材料の耐久性向上が必要である。
PEFCやDMFCの触媒は、一般に、白金などの貴金属の粒子が用いられ、必要に応じてカーボン担体に担持して用いられる。しかし、カーボン担体に直接、触媒金属を担持した場合、その触媒作用によりカーボン担体が腐食して消失してしまう。そのため、担体を失った触媒金属粒子が凝集し、有効表面積が小さくなってしまう。
特許文献1には、触媒金属微粒子を担持した耐食性金属酸化物が、導電性担体表面に分散担持されている固体高分子型燃料電池用触媒担持電極が開示されている。
特許文献2には、触媒担持基材の周りに金属酸化物層を形成させ、その周りに白金属層を担持させる構成となっており、前記金属酸化物層を熱分解法により形成させこれを、白金層の塩化物溶液中に浸漬させることにより、触媒比表面積の大きな白金属触媒の担持構造を形成する技術が開示されている。
しかしながら、従来の製造方法では、金属酸化物表面への触媒金属錯体の吸着力が弱く、吸着量が少ないため、金属酸化物の単位表面積当たりの触媒金属担持量が少なくなってしまう。
そのため、燃料電池の電極中に所望の触媒金属量を含ませようとした場合に、多くの触媒材料を用いる必要があることから、電極が厚くなり、反応物質である燃料の拡散が妨げられて出力低下を引き起こしてしまう。また、触媒材料を製造した後も、金属酸化物と触媒金属粒子の吸着力が強くないため、触媒金属粒子が動き、凝集・粗大化してしまう。この場合、触媒金属の有効表面積が減少するため、やはり出力低下を引き起こしてしまう。
本発明の目的は、触媒活性を有する金属粒子を金属酸化物表面に高密度で担持させ、且つ、担持した上記金属粒子を酸化物表面に強く固定し、耐久性を向上させた触媒材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、この触媒材料を燃料電池に用いることにより、出力密度が高く、且つ、耐久性に優れた燃料電池を提供することにある。
本発明の触媒材料は、金属酸化物と触媒金属とを含む触媒材料であって、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させたことを特徴とする。
本発明によれば、金属酸化物上に触媒金属粒子を高密度で、且つ、安定的に担持することができ、出力密度が高く、耐久性に優れた燃料電池を提供することができる。
燃料電池は、アノード、電解質膜、カソード及び拡散層を含む膜/電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を有するものであり、アノードで燃料が酸化され、カソードで酸素が還元されるものである。本発明の触媒材料は、このような燃料電池に用いられる触媒材料に関するものである。
なお、燃料電池の燃料には、水素やメタノールが用いられているが、アルカリハイドライド、ヒドラジン、又は加圧液化ガスであるジメチルエーテルが検討されている。また、酸化剤ガスには、空気や酸素が用いられる。
燃料はアノードにおいて電気化学的に酸化され、カソードでは酸素が還元され、両電極間には電気的なポテンシャルの差が生じる。このときに外部回路として負荷が両電極間にかけられると、電解質中にイオンの移動が生起し、外部負荷には電気エネルギーが取り出される。
このため、各種の燃料電池は、大型発電システム、小型分散型コージェネレーションシステム、電気自動車電源システム等への適用が期待され、実用化開発が活発に展開されている。
本発明の触媒材料は、金属酸化物と触媒金属とを含む触媒材料であって、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させたことを特徴とする。ここで、触媒金属は、上記の官能基を介して金属酸化物に担持されていると言い換えることもできる。
また、本発明の触媒材料は、前記金属酸化物を炭素系基材の表面に担持したことを特徴とする。ここで、炭素系基材は、カーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭などを含み、比表面積が大きいものが望ましい。
なお、金属酸化物は、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、シリコン、ゲルマニウム及びスズの群から選ばれる少なくとも1つの金属の酸化物であることが好ましい。
また、触媒金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金の群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
本発明の触媒材料は、前記官能基を有する化合物が、シラン化合物であることを特徴とする。これはシランカップリング反応等を利用してシリコンを含むシラン化合物を結合させることで可能となる。
そして、上記の触媒材料を、燃料を酸化するアノード、及び/又は酸素を還元するカソード、或いはプロトン伝導性を有する電解質膜を含む膜/電極接合体のアノード部及び/又はカソード部に適用することもできる。
また、本発明の膜/電極接合体は、上記のアノードと、上記のカソードと、プロトン伝導性を有する電解質膜と、を含み、この電解質膜が前記アノードと前記カソードとの間に配置されていることを特徴とする。
また、上記の膜/電極接合体を、燃料を供給するための構成部材、空気(酸素)を供給するための構成部材、及び発生した電気を出力するための集電用部材等と組み合わせて、燃料電池や燃料電池発電システムとすることも可能である。
また、本発明の触媒材料の製造方法は、窒素を含む化合物と硫黄を含む化合物の少なくとも1つを金属酸化物表面に結合させる工程と、触媒金属錯体を前記窒素あるいは硫黄に結合させた後に、前記触媒金属錯体を金属に還元する工程と、を含むものとしてもよい。
なお、窒素を含む化合物はアミノ基として窒素を含むことが好ましく、硫黄を含む化合物はチオール基として硫黄を含むことが好ましい。
以下、本発明の触媒材料の構成について図を用いて説明する。
図1は、本発明による触媒材料の一構成例を示す模式断面図である。
本図において、触媒金属12は、金属酸化物11の上に担持され、金属酸化物11はカーボン13(炭素系基材)の上に担持されている。なお、触媒金属は、カーボン13の上にも担持されていても良いが、できるだけ金属酸化物11の上に担持されていることが好ましく、少なくとも半分以上が金属酸化物11の上に担持されていることが好ましい。これは、カーボン13の上に触媒金属12が担持されていると、触媒金属12の触媒作用により、カーボン13が腐食、消滅してしまうためである。また、カーボン13は、必ずしも必要ないが、金属酸化物11は電子伝導性が低いため、燃料電池の電極の電子伝導性を向上させるためには、カーボン13を用いることが好ましい。
図2は、本発明による触媒材料の他の構成例を示す模式断面図である。
本図において、金属酸化物21は、カーボン23を被覆した構成としてあり、金属酸化物21の上に触媒金属22が担持されている。このような構成とすることで、カーボン23の上に触媒金属22が担持されることが防げ、触媒金属22の触媒作用によるカーボン23の腐食、消滅を防ぐことが可能となる。
図3は、本発明の触媒材料の微視的な構造を示す模式断面図である。
本図において、金属酸化物31の上には、触媒金属32との結合力が強い、窒素33(又は硫黄)が付着している。このような構成により、触媒金属32粒子は、金属酸化物31の上に固定され、触媒金属32の凝集を防止することができる。
金属酸化物31の上に窒素33(又は硫黄)を付着させる手段としては、窒素又は硫黄を含む化合物による金属酸化物31の表面の修飾がある。ここで、窒素又は硫黄は、化合物の末端に存在することが好ましい。
末端に窒素を含む化合物としては、例えば、アミノ基やニトロ基を有するものが挙げられるが、アミノ基を有するものを用いることが、触媒金属32との結合性の観点から好ましい。
また、末端に硫黄を含む化合物としては、例えば、チオール基、スルフォン基を有するものが挙げられるが、チオール基を有するものを用いることが、触媒金属32との結合性の観点から好ましい。
また、金属酸化物31の表面を上記の化合物で修飾する手段としては、金属酸化物31の表面に非常に多く存在するヒドロキシル基(水酸基)を用いることが有効であり、このヒドロキシル基と結合可能な化合物を用いることが好ましい。例えば、アミノ基を有するものでは、3−ブロモプロピルアミンなどを用いることができる。また、チオール基を有するものでは、3−クロロ−1−プロパンチオールなどを用いることができる。ここで、アルキル鎖の長さは、特に限定されるものではないが、炭素数3個程度が好ましい。
図4は、本発明による実施例を示す金属酸化物の表面における分子構造図である。
本図は、アミノ基を有する3−ブロモプロピルアミンを用いた場合のものであり、金属酸化物41の表面に存在するヒドロキシル基と臭素とを反応させることにより、金属酸化物41の表面を、アミノ基を有する化合物を修飾したものである。
また、アミノ基やチオール基を有するシランカップリング剤を用いることで、より簡単に修飾することができる。これは、金属酸化物41の表面のヒドロキシル基と、シランカップリング剤の加水分解で生じるシラノール基とが容易に結合するためである。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどがあり、チオール基を有するシランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメトキシシランなどがある。シランカップリング剤を用いた場合には、金属酸化物41の表面にシリコンが存在することになる。
ここで、シリコンを介した結合の方が、窒素又は硫黄を含む修飾基を安定的に結合しておくことができるため、耐久性の観点から好ましい。
図5は、本発明による他の実施例を示す金属酸化物の表面における分子構造図である。
本図は、チオール基を有する3−メルカプトプロピルメトキシシランを用いた場合のものであり、金属酸化物51の表面に存在するヒドロキシル基と、3−メルカプトプロピルメトキシシランの加水分解で生じたシラノール基とを反応させることで、金属酸化物51の表面を、チオール基を有する化合物で修飾したものである。
ここで、本発明による金属酸化物51は、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、シリコン、ゲルマニウム及びスズの群から選ばれる少なくとも1種類の金属の酸化物を用いることが好ましい。これらの金属は、燃料電池に酸性電解質を用いた場合にも、溶出が少ないため好適である。
金属の溶出が起こると、電解質中のイオン交換基に、溶出した金属カチオンが結合してしまい、プロトンの移動を阻害し、燃料電池の出力を低下させてしまうため、好ましくない。
また、本発明における触媒金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金の群から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。特に、DMFCのアノード触媒材料や一酸化炭素を含む水素を燃料とするPEFCのアノード触媒材料として用いる場合は、触媒金属として白金とルテニウムとの合金を用いることが、触媒活性の観点から、一層好ましい。また、DMFC及びPEFCのカソード触媒材料や一酸化炭素を含まない水素を燃料とするPEFCのアノード触媒材料として用いる場合は、触媒金属として白金を用いることが、一層好ましい。
金属酸化物51の上に触媒金属を固定するためには、窒素又は硫黄が金属酸化物51の表面に存在する必要があり、金属酸化物51の内部に窒素又は硫黄が存在していても、本発明が意図する効果は得られない。
窒素又は硫黄が金属酸化物51の表面に存在している量は、触媒材料の全体の組成と表面の組成とを比較することにより測定することができる。例えば、蛍光X線分析による触媒材料全体の組成と、X線光電子分光分析による触媒材料の表面組成とを比較する方法がある。
同様に、シリコンを介して窒素又は硫黄を含む修飾基を結合させる場合に、シリコンが金属酸化物51の内部に存在していても、本発明が意図する効果が得られない。
なお、金属酸化物51としてシリコンの酸化物を用いた場合は、金属酸化物51の内部のシリコンとシランカップリング剤に由来するシリコンとの区別をすることは困難であるが、この場合は、いずれにしても、本発明の意図する窒素又は硫黄を含む修飾基と結合させることができるため、問題は生じない。
つぎに、本発明の触媒材料の製造方法について述べる。
本発明の触媒材料の製造方法は、次の2通りの方法に分けられる。
1つは、始めに金属酸化物の上(表面)に触媒金属を担持した後、これらをカーボンに担持する方法である。
もう1つは、始めに金属酸化物をカーボンの上(表面)に担持した後、金属酸化物の上(表面)に触媒金属を担持する方法である。
前者は、触媒金属を始めに金属酸化物上に担持しているため、カーボン上に触媒金属が担持されることがなく、触媒金属によるカーボンの腐食を、より効果的に防ぐことが可能である。
また、後者は、始めに金属酸化物をカーボン上に担持するため、金属酸化物をカーボン上に高分散させることができる。
金属酸化物は、カーボンに比べて電子伝導性が低いため、触媒金属上の反応で生成した電子が移動する際にエネルギーの損失が生じやすい。そのため、金属酸化物はできるだけ小さく、あるいは薄くカーボン上に担持して、電子が金属酸化物を移動する距離を短くする必要がある。後者の方法は、金属酸化物をできるだけ小さく、あるいは薄くカーボン上に担持できる点で前者の方法よりも利点がある。
金属酸化物上に触媒金属を担持した後、これらをカーボンに担持する方法について、より具体的に示す。
始めに金属酸化物を製造するが、ここで金属酸化物はできるだけ比表面積が大きくなるように製造することが好ましい。これは、単位重量当たりの金属酸化物により多くの触媒金属を担持するためであり、所望の量の触媒金属を燃料電池の電極に含ませる際に、電極をできるだけ薄くし、物質移動に伴うエネルギーの損失を最小限にするためである。そのため、金属酸化物は、比表面積の大きい微粒子や多孔質構造とすることが好ましい。金属酸化物の微粒子は、例えば、金属アルコキシドをアルコール溶媒中に分散させた後に、攪拌しながら水を加えて、これを加水分解し、溶液をろ過して除去した後、大気中で焼成することで得ることができる。
つぎに、窒素や硫黄を含む化合物を酸化物粒子の表面に結合させる。
窒素の場合を例に取ると、金属酸化物粒子をアルコール水溶液に分散させ、ここに3−ブロモプロピルアミンを添加し、金属酸化物上のヒドロキシル基と結合させる。ここで、3−ブロモプロピルアミンの添加量は、金属酸化物表面のヒドロキシル基量の1〜3倍程度が好適である。
なお、金属酸化物上のヒドロキシル基の量は、大気中での焼成温度が高い場合には少なくなることがある。その場合には、数%程度の過酸化水素水に分散させることで、増加させることができる。このようにして、金属酸化物表面にアミノ基を導入した後、水溶液中で触媒金属錯体と混合し、金属酸化物表面のアミノ基に結合させる。
触媒金属錯体の種類は、特に限定されるものではないが、白金の場合には、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸カリウム、ヘキサクロロ白金酸ナトリウム、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸ナトリウム、テトラアンミン白金塩化物、ジニトロジアミン白金などを用いることができるが、ヘキサクロロ白金酸、ヘキサクロロ白金酸ナトリウム、ヘキサクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸ナトリウムなどの塩化物を用いることが、金属表面酸化物表面に導入した窒素や硫黄と結合しやすいため好ましく、より好ましくは、テトラクロロ白金酸、テトラクロロ白金酸カリウム、テトラクロロ白金酸ナトリウムなどの二価の白金塩化物を用いることが良い。
金属酸化物表面のアミノ基に、触媒金属錯体を結合させた後に、過剰分の触媒金属錯体をろ過などにより除去する。本発明のように、金属酸化物表面に窒素や硫黄が存在する場合には、多くの触媒金属錯体を金属酸化物表面に結合させることができる。
つぎに、金属酸化物表面に結合した触媒金属錯体を、金属状態に還元する。還元する方法としては、例えば、水素化ほう素ナトリウム、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を用いる方法や、水素雰囲気下で熱処理する方法が選ばれる。
このようにして、窒素を含む金属酸化物粒子の表面に触媒金属が担持されたものが得られ、これをカーボンと混合することにより、本発明の触媒材料が得られる。ここで、カーボンは、カーボンブラックやカーボンファイバーを用いることができ、好ましくは、比表面積が10〜2000m2/gのものが良い。
このようにして、製造した触媒材料は、触媒金属が全て、金属酸化物上に担持されている。そのため、触媒金属によるカーボンの腐食を最小限に抑えることができる。
つぎに、始めに金属酸化物をカーボン上に担持した後、金属酸化物上に触媒金属を担持する方法について示す。
カーボン上に金属酸化物を担持させる際には、前述の場合と同様に、触媒材料の比表面積をできるだけ大きくするような、微粒子や多孔質の構造が好ましい。カーボン上に金属酸化物を担持させる方法としては、例えば、カーボンと金属アルコキシドをアルコール溶媒中に分散させた後、攪拌しながら水を加えて、金属アルコキシドを加水分解させる。その後、溶媒をろ過して除去し、大気中で焼成することにより、カーボンに担持された金属酸化物を得ることができる。
また、金属塩を含むアルコール水溶液を、カーボンに含浸させた後、大気中で乾燥・焼成することによっても、カーボンに担持された金属酸化物を得ることができる。予め、カーボンに金属酸化物を担持させる方法は、微細な金属酸化物粒子を高密度に分散させることができる。このため、金属酸化物上に担持した触媒金属へ電子の授受を行う際に、電子伝導性の低い金属酸化物中を電子が移動する距離が短くなるため、好ましい。
つぎに、カーボン上に担持した金属酸化物の表面に窒素や硫黄を導入する方法について述べる。
硫黄の場合を例にとり、且つ、シリコンを介してその硫黄を結合させる場合を例にとって説明する。
金属酸化物が担持されたカーボンをアルコール水溶液に分散させ、これに3−メルカプトプロピルメトキシシランを添加し、シランカップリング反応により金属酸化物上のヒドロキシル基と結合させことで、金属酸化物の表面にチオール基を導入する。ここで、3−メルカプトプロピルメトキシシランの添加量は、金属酸化物表面のヒドロキシル基量の1〜3倍程度が好適である。
なお、上記の場合に、3−メルカプトプロピルメトキシシランは、金属酸化物表面のヒドロキシル基のみならず、カーボン表面のヒドロキシル基とも結合するが、カーボンの表面にあるヒドロキシル基の密度は、金属酸化物の表面にあるヒドロキシル基の密度に比べると1桁程度少ないため、ここで導入したチオール基の大部分が、金属酸化物の表面に付着する。このようにして、金属酸化物の表面にチオール基を導入した後、水溶液中で触媒金属錯体と混合し、金属酸化物の表面のチオール基に触媒金属錯体を結合させる。
その後、過剰な触媒金属錯体をろ過除去し、金属酸化物表面に結合した触媒金属錯体を、金属状態に還元する。このようにして、硫黄とシリコンとを含む金属酸化物粒子がカーボン上に担持され、尚且つ、金属酸化物上に触媒金属が担持された、本発明の触媒材料を得ることができる。
本発明の触媒材料における金属酸化物とカーボンとの比率は、特に限定されるものではないが、体積比で1:99〜1:1程度が好ましい。金属酸化物が少なすぎると、結果として、その表面に担持される触媒金属の触媒材料全体に対する割合が少なくなるし、金属酸化物が多すぎると、燃料電池の電極中の電子伝導性が低くなるためである。
本発明の触媒材料の製造方法を、以下に具体的に示す。
比表面積が125m2/gのチタニア(TiO2)3.0gを、95vol%の2−プロパノール水溶液、300mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これに3−メルカプトプロピルメトキシシランを1.9g添加した後、50℃で2時間攪拌した。
その後、ろ過、2−プロパノールで洗浄し、大気中、100℃で12時間乾燥させることで、チタニア上にシリコンを介してチオール基を修飾したものを得た。
これをエネルギー分散型蛍光X線分析法(EDX、EDAX社製Genesis)及びX線光電子分光分析法(XPS、島津/KRATOS製AXIS−HS)を用いてそれぞれの組成を分析した。その結果を表1に示す。なお、分析結果の組成は、チタン、シリコン及び硫黄を足した値を100原子%として示したものである。
表1に示す通り、全体分析よりも表面分析の方が、シリコン及び硫黄の濃度が高く、これらがチタニアの表面に存在していることが分かる。
つぎに、ここで得られたチオール基を有するチタニア0.5gを、イオン交換水50mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これに、テトラクロロ白金酸カリウム0.47gを含むイオン交換水50mlを添加し、70℃で2時間攪拌し、チオール基に白金を結合させた。その後、ろ過及びイオン交換水での洗浄を行い、チオール基に結合しなかった白金の錯体を除去した。
得られた物質を真空乾燥させた後に、管状炉を用いて3%の水素を含むアルゴンガスを流通させながら、150℃で3時間、還元処理を行い、チオール基に結合している白金の錯体を金属状態に還元した。
得られた物質を走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope:STEM、日立製HD−2000)で観察した画像を図6に示す。本図はZコントラスト像(ZC像)である。
本図から、直径1.0〜1.5nmの白金粒子61がチタニア62の上に非常に高密度で担持されていることがわかる。
また、高周波誘導結合プラズマ分析装置(Inductive Coupled Plasma−Atomic Emission Spectrometer:ICP発光分析装置、堀場製作所製ULTIMA−2)で白金の担持量を分析した結果、9.2重量%であった。チタニアの比表面積が125m2/gであることから、チタニアの表面積に対する白金の担持密度は、811μg/m2である。
上記のようにして得られた物質をカーボンブラックと混合することにより、本発明の触媒材料を得た。
なお、表2にカーボンブラックと混合する前の物質をXPSにより組成分析した結果を示す。上記の物質には、金属酸化物の構成元素であるチタン及び酸素、触媒金属である白金、並びにシリコン及び硫黄が含まれていることが分かる。
比表面積が125m2/gのチタニア3.0gを、95vol%の2−プロパノール水溶液、300mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これに、3−アミノプロピルトリメトキシシランを1.7g添加した後、50℃で2時間攪拌した。その後、ろ過して2−プロパノールで洗浄し、大気中において100℃で12時間乾燥させることにより、チタニア上にシリコンを介してアミノ基を修飾した物質を得た。
この物質をXPSを用いて組成分析した。その結果を表3に示す。なお、分析結果の組成は、チタン、シリコン及び窒素を足した値を100原子%として示したものである。
表3に示す通り、実施例1の表1に示した硫黄の場合と同程度の窒素及びシリコンが付着していることが分かる。
また、これをICPで分析し、シリコンの組成を調べた結果、2.0重量%であった。チタニアの比表面積が125m2/gであることから、チタニアの表面積に対するシリコンの密度は、160μg/m2であった。
つぎに、ここで得られたアミノ基を有するチタニア0.5gを、イオン交換水50mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これにテトラクロロ白金酸カリウム0.47gをイオン交換水50mlに溶解させておいたものを添加し、70℃で2時間攪拌し、アミノ基に白金錯体を結合させた。その後、ろ過及びイオン交換水での洗浄を行い、アミノ基に結合しなかった白金錯体を除去した。
得られた物質を真空乾燥させた後に、管状炉を用いて3%の水素を含むアルゴンガスを流通させながら、150℃で3時間、還元処理を行い、アミノ基に結合している白金錯体を金属状態に還元した。
得られた物質をSTEMで観察した画像を図7に示す。
直径2.0〜2.5nmの白金粒子71がチタニア72の上に非常に高密度で担持されていた。また、ICPで白金の担持量を分析した結果、6.8重量%であった。チタニアの比表面積が125m2/gであることから、チタニアの表面積に対する白金の担持密度は、580μg/m2である。
上記のようにして得られた物質をカーボンブラックと混合することで、本発明の触媒材料を得た。
なお、カーボンブラックと混合する前の物質をXPSにより組成分析した結果は、表4の通りであり、金属酸化物の構成元素であるチタン及び酸素、触媒金属である白金、並びにシリコン及び窒素が含まれていることが分かる。
(比較例1)
比表面積が125m2/gのチタニア0.5gを、イオン交換水50mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これにテトラクロロ白金酸カリウム0.47gをイオン交換水50mlに溶解させておいたものを添加し、70℃で2時間攪拌し、白金錯体をチタニアに吸着させた。その後、ろ過してイオン交換水での洗浄を行い、チタニアに吸着しなかった白金錯体を除去した。得られた物質を真空乾燥させた後に、管状炉を用いて3%の水素を含むアルゴンガスを流通させながら、150℃で3時間、還元処理を行い、チタニアに吸着している白金錯体を金属状態に還元した。
比表面積が125m2/gのチタニア0.5gを、イオン交換水50mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これにテトラクロロ白金酸カリウム0.47gをイオン交換水50mlに溶解させておいたものを添加し、70℃で2時間攪拌し、白金錯体をチタニアに吸着させた。その後、ろ過してイオン交換水での洗浄を行い、チタニアに吸着しなかった白金錯体を除去した。得られた物質を真空乾燥させた後に、管状炉を用いて3%の水素を含むアルゴンガスを流通させながら、150℃で3時間、還元処理を行い、チタニアに吸着している白金錯体を金属状態に還元した。
得られた物質を、STEMで観察した画像を図8に示す。
直径2.5〜3.0nmの白金粒子81が、チタニア82の上に担持されていたが、その密度は低かった。また、ICPで、白金の担持量を分析した結果、1.0重量%であった。
本比較例の場合、チタニアの比表面積が125m2/gであることから、チタニアの表面積に対する白金の担持密度は80μg/m2であり、実施例1及び2と比較して少ない。このようにして得られた物質をカーボンブラックと混合しても、触媒材料全体に対する触媒金属の量が少なくなり、燃料電池に用いたとしても高い出力を得ることができない。
なお、カーボンブラックと混合する前の物質をXPSにより組成分析した結果は、表5の通りである。この表から、上記の物質には、金属酸化物の構成元素であるチタン及び酸素、並びに触媒金属である白金が含まれることがわかる。一方、シリコン、窒素及び硫黄は含まれていないことがわかる。
(比較例2)
比表面積が800m2/gのカーボンブラック1.0gを95vol%の2−プロパノール水溶液600mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これに3−アミノプロピルトリメトキシシランを3.7g添加した後、50℃で2時間攪拌した。その後、ろ過して2−プロパノールで洗浄し、大気中において100℃で12時間乾燥させることにより、カーボンブラック上にシリコンを介してアミノ基を修飾した物質を得た。
比表面積が800m2/gのカーボンブラック1.0gを95vol%の2−プロパノール水溶液600mlに添加し、室温で10分間攪拌した。これに3−アミノプロピルトリメトキシシランを3.7g添加した後、50℃で2時間攪拌した。その後、ろ過して2−プロパノールで洗浄し、大気中において100℃で12時間乾燥させることにより、カーボンブラック上にシリコンを介してアミノ基を修飾した物質を得た。
これをICPで分析し、シリコンの組成を調べた結果、2.0重量%であった。カーボンブラックの比表面積が800m2/gであることから、カーボンブラックの表面積に対するシリコンの密度は、25μg/m2と実施例2の場合に比べて少なかった。したがって、付着したアミノ基も少ないと考えられる。そのため、金属酸化物をカーボンブラックに担持した後、アミノ基を付着させたとしても、アミノ基の大部分は金属酸化物の表面に付着することになり、結果として、触媒金属も大半が金属酸化物上に担持されることになる。
図9は、本発明による実施例を示す燃料電池の模式断面図である。
この燃料電池は、本発明の触媒材料と、プロトン伝導性を有する電解質バインダーとを含むアノード91、本発明の触媒材料と、プロトン伝導性を有する電解質バインダーとを含むカソード93、及びそれらの間に設置された固体高分子電解質膜92を有する膜/電極接合体151が容器90に収納された構成となっている。
アノード91及びカソード93には、図示していないカーボンペーパーやカーボンクロスなどの拡散層を配置することが望ましい。
燃料電池の稼動に際しては、アノード91側に水素又はメタノール等の燃料95を供給し、カソード93側に酸素、空気等の酸化剤97を供給する。そして、アノード91側の反応で発生した二酸化炭素、未反応の水素又はメタノール、及び廃液等を含む排ガス96、並びにカソード93側の反応で発生した水及び未反応気体を含む排ガス98を排出する。また、アノード91及びカソード93に接続された外部回路94に発生した電力を供給する。
ここで、アノード91及びカソード93に用いる電解質バインダー並びに電解質膜92には、酸性の水素イオン導電性材料を用いると、発生する二酸化炭素の影響を受けることなく、燃料電池を安定的に稼動することができる。
この水素イオン導電性材料としては、ポリパーフルオロスチレンスルフォン酸、パーフルオロカーボン系スルフォン酸などに代表されるスルフォン化したフッ素系ポリマー、ポリスチレンスルフォン酸類、ポリエーテルスルフォン類、スルフォン化ポリエーテルエーテルケトン類などの炭化水素系ポリマーをスルフォン化した材料、或いは、炭化水素系ポリマーをアルキルスルフォン化した材料を用いることができる。
上記の材料を電解質膜として用いれば、一般に、燃料電池を80℃以下の温度で稼動することができる。
また、酸化タングステン水和物、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物などの水素イオン伝導性(プロトン伝導性)を有する無機物を耐熱性樹脂若しくはスルフォン化樹脂にミクロ分散した複合電解質膜等を用いることによって、一層高い温度領域まで稼動する燃料電池を提供することもできる。
また、DMFCの場合には、メタノール透過性の低い電解質膜を用いると、燃料の発電利用率が高くなるため好ましい。
同様に、バインダーにも固体高分子電解質を用いることができ、電解質膜と同様の材質のものが使用できる。
また、膜/電極接合体の作製方法としては、本発明の触媒材料とバインダーとを溶媒に分散させ、これを電解質膜に、直接スプレー法、インクジェット法などで塗布する方法や、ポリテトラフルオロエチレンシート(PTFEシート)などに塗布し、熱転写によって電解質膜に貼り付ける方法、或いは、拡散層に塗布した後に電解質膜に貼り付ける方法がある。
このようにして得られる膜/電極接合体又は燃料電池は、高い耐久性及び高い出力密度を有する。
図10は、本発明の燃料電池を実装した携帯用情報端末(燃料電池発電システムの例)を示したものである。
この携帯用情報端末は、折たたみ式の構造を有し、折りたたまれる2つの部分は、燃料カートリッジ106のホルダーを兼ねたヒンジ107で連結されている。
1つの部分は、タッチパネル式入力装置が一体化された表示装置101、アンテナ102などを内蔵した部分である。
もう1つの部分は、燃料電池103、並びにプロセッサ、揮発メモリ、不揮発メモリ、電力制御部、燃料電池/二次電池ハイブリッド制御部、燃料モニタなどの電子機器及び電子回路などを実装したメインボード104、リチウムイオン二次電池105などを内蔵した部分である。
上記の携帯用情報端末は、燃料電池の出力密度が高いため、燃料電池103を小さくでき、軽量でコンパクトな構成とすることができる。また、燃料電池の耐久性が高いため、長期間にわたって使用することができる。
また、本発明の触媒材料は、金属酸化物を触媒金属の担体とする(すなわち、カーボン担体を用いない)他の用途に用いることもできる。例えば、自動車用の排ガス浄化触媒材料が挙げられる。
本発明は、燃料電池で使用される触媒材料に関するものであり、この触媒材料を固体高分子形燃料電池や直接メタノール形燃料電池に利用できる。
11:金属酸化物、12:触媒金属、13:カーボン、21:金属酸化物、22:触媒金属、23:カーボン、31:金属酸化物、32:触媒金属、33:窒素、41:金属酸化物、51:金属酸化物、61:白金粒子、62:チタニア、71:白金粒子、72:チタニア、81:白金粒子、82:チタニア、91:アノード、92:固体高分子電解質、93:カソード、94:外部回路、95:燃料、96:排ガス、97:酸化剤、98:排ガス、101:表示装置、102:アンテナ、103:DMFC、104:メインボード、105:リチウムイオン二次電池、106:燃料カートリッジ、107:ヒンジ。
Claims (11)
- 金属酸化物と触媒金属とを含む触媒材料であって、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させたことを特徴とする触媒材料。
- 前記金属酸化物を炭素系基材の表面に担持したことを特徴とする請求項1記載の触媒材料。
- 前記金属酸化物が、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、シリコン、ゲルマニウム及びスズの群から選ばれる少なくとも1つの金属の酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒材料。
- 前記触媒金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金及び金の群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料。
- 前記官能基を有する化合物が、シラン化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の触媒材料を含むことを特徴とするアノード。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の触媒材料を含むことを特徴とするカソード。
- 請求項6記載のアノードと、請求項7記載のカソードと、プロトン伝導性を有する電解質膜と、を含み、この電解質膜が前記アノードと前記カソードとの間に配置されていることを特徴とする膜/電極接合体。
- 請求項8記載の膜/電極接合体と、燃料及び酸素を供給するための構成部材と、発生した電気を出力するための集電用部材と、を含むことを特徴とする燃料電池。
- 請求項9記載の燃料電池を用いたことを特徴とする燃料電池発電システム。
- 金属酸化物と触媒金属とを含み、前記金属酸化物の表面にアミノ基又はチオール基を含む官能基を有する化合物を結合させ、この官能基に前記触媒金属を結合させた触媒材料の製造方法であって、前記官能基を有する化合物を前記金属酸化物の表面に結合させる工程と、触媒金属錯体を前記官能基に結合させた後、前記触媒金属錯体を金属に還元する工程と、を含むことを特徴とする触媒材料の製造方法。
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