以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
図1(a)は、本実施の形態による電力線搬送通信システム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、電力線搬送通信システム1は、親機C0と、それぞれ親機C0に接続する電力線B1〜B3とを備え、各電力線B1〜B3には、それぞれリピータ機能を内蔵する子機C11〜C37がバス接続されている。親機C0及び各子機C11〜C37はいずれも電力線搬送通信装置であり、相互に、上述したOFDM通信又は位相変調通信による電力線搬送通信を行う。そして、図示しない端末装置(パソコン、電気メータなど)と接続されて端末装置間での通信を実現する。
電力線B1〜B3は親機C0の近辺に設けられた接続点N(例えば分電盤)で互いに接続されており、一の電力線に流れる信号は、他の電力線にも流れる。したがって、電力線B1〜B3に、同一周波数の信号を互いに独立して同時に流すことは原則としてできないが、接続点Nとの距離がある程度以上離れている子機が送信した信号は、接続点Nに到達する前に減衰してしまうため他の電力線に流れこむことはない。したがって、このような信号に限れば、電力線B1〜B3に、同一周波数の信号を互いに独立して同時に流すことが可能である。
この電力線搬送通信システム1は、具体的には、例えば図14に示した背景技術の例と同様、3階建てで各階に7つずつの部屋を有する集合住宅Aに設置され、各戸のメーター検針を行うために用いられる。以下の説明では、親機C0に接続される端末装置はパソコンであり、各子機に接続される端末装置は電気メータであるとし、パソコンから各電気メータの検針データの取得を行う例を取り上げる。なお、本発明が電気メータの検針データを取得する電力線搬送通信システムに限定されないのはもちろんである。
ここで、親機C0及び各子機C11〜C37の詳細について説明するに先立ち、低周波数帯域を分割してなる第1及び第2の周波数帯について説明しておく。
電力線搬送通信システム1では、OFDM通信を行う際、低周波数帯域(10kHz〜450kHz)を第1の周波数帯F1と第2の周波数帯F2に分割して用いる。すなわち、親機C0及び各子機C11〜C37は、いずれか一方の周波数帯に属するサブキャリアのみを用いて、OFDM信号(OFDM変調方式によって変調された搬送波信号)を生成する。
図2は、第1及び第2の周波数帯の説明図である。同図に示すように、第1の周波数帯F1は10kHz〜220kHzの周波数帯域であり、第2の周波数帯F2は240kHz〜450kHzの周波数帯域である。低周波数帯域は10kHz〜450kHzであるので、第1の周波数帯F1は概ね低周波数帯域の下半分を占め、第2の周波数帯F2は概ね上半分を占めていることになる。
図3の各図は、OFDM信号の周波数スペクトラムイメージを示している。図3(a)は低周波数帯域全体を用いてOFDM通信を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは10kHz〜450kHzの低周波数帯域の全域にわたって存在する。図3(b)は第1の周波数帯F1のみを用いるOFDM通信(以下、第1のOFDM通信という。)を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは10kHz〜220kHzの範囲のみに存在する。図3(c)は第2の周波数帯F2のみを用いるOFDM通信(以下、第2のOFDM通信という。)を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは240kHz〜450kHzの範囲のみに存在する。図3(d)は第1のOFDM通信によるOFDM信号と第2のOFDM通信によるOFDM信号とが混在している状態を示しており、この場合のOFDM信号のサブキャリアは、220kHz〜240kHzの範囲を除き、低周波数帯域の全域にわたって存在する。
さて、図4(a)は、親機C0の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、親機C0は、それぞれ電力線に接続するF1モデム11及び同期信号生成器12と、制御部13と、バッファ14と、端末装置としてのパソコンに接続するインターフェイス15とを有している。
F1モデム11は、上記第1のOFDM通信を行うとともに、第1の周波数帯F1に属する周波数(具体的には115kHz又は132kHz)を用いて位相変調通信を行うモデムである。ただし、指示データ及び検針データの送受信にはOFDM通信のみを用いる。具体的には、制御部13の指示に従い、バッファ14に記憶されるデータ又はインターフェイス15を介してパソコンから入力されるデータに基づいて第1の周波数帯F1の搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加した上で電力線に送出する。また、電力線を流れる第1の周波数帯F1の変調搬送波信号を受信して復調し、得られたデータを、制御部13の指示に従ってバッファ14又はインターフェイス15に出力する。
なお、OFDM信号は各サブキャリアの出力の合計が100mWとなるように出力調整されて送出される。一方、位相変調信号は350mWの出力で送出される。このような出力としているのは、上掲の表1に示した法規制に従うためである。
また、F1モデム11は、搬送波信号の変復調にOFDM変調方式又は位相変調方式を用いる。OFDM変調方式を用いる場合、搬送波信号は、第1の周波数帯F1に属するサブキャリアのみによって構成される広帯域信号となる。位相変調方式を用いる場合には、搬送波信号は単一周波数信号であり、その周波数は115kHz又は132kHzとなる。
また、F1モデム11が付加する同期信号は、搬送波信号の変調にOFDM変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数帯に属するサブキャリアのみによって構成される広帯域信号である。一方、搬送波信号の変調に位相変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数の単一周波数信号である。
他に、F1モデム11は、信号を送信する際、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式を用いるよう構成されている。すなわち、F1モデム11は、送信を開始する前に一度受信を試み(キャリアセンス)、他の装置の送信信号が検知されなければ、送信データの送信を行う。他の装置の送信信号が検知された場合には、その送信信号の送信終了を監視し、送信終了が検知された場合に所定時間待機してから送信データの送信を行う。なお、この所定時間は待機回数の増加に応じて短くなるよう決定される。通信開始時のネゴシエーションは行われない。
同期信号生成器12は、電力線を流れる信号に既知の同期信号が含まれているか否かを監視する。含まれていることが検出された場合、その同期信号を用いて同期を確立し、同期を確立したことを示す情報を制御部13に通知する。この通知を受けた制御部13は、F1モデム11に復調処理を開始させる。
制御部13は、ここまでに挙げた処理の他、親機C0の各部を制御する処理を行う。また、制御部13は、パソコンからの指示に従って検針データの送信を指示するための指示データを生成し、F1モデム11を用いて各子機に向けて送信するとともに、指示データに応じて各子機から返送されてきた検針データをF1モデム11を介して受信する。
なお、親機C0が指示データを送信する順序は、予めプログラミングされる。このプログラミングの詳細については後述する。また、制御部13は機能的に、判定部16(判定手段)、選択部17(選択手段)、切替部18(切替手段)を含んでいるが、これらの処理についても後述する。
バッファ14は、制御部13の指示に従い、F1モデム11から入力されるデータを記憶する記憶手段である。インターフェイス15はパソコンとの間でデータの入出力を行う。
図4(b)は、子機C11〜C37の機能ブロックを示す図である。なお、本実施の形態では、いずれの子機も同様の機能ブロックを有している。図4(b)に示すように、子機C11〜C37は、それぞれ電力線に接続するモデム21及び同期信号生成器23と、制御部24と、バッファ25と、端末装置としての電気メータに接続するインターフェイス26とを有している。
モデム21は、上記第1及び第2のOFDM通信を行うとともに、第1の周波数帯F1に属する周波数(具体的には115kHz又は132kHz)を用いて位相変調通信を行う機能を備えたモデムである。親機C0との通信の際には第1のOFDM通信又は位相変調通信を用い、他の子機との通信の際には第2のOFDM通信を用いる。また、指示データ及び検針データの送受信にはOFDM通信のみを用いる。
モデム21の基本的な機能は、第2の周波数帯F2も用いる点を除き、上述したF1モデム11の機能と同様である。すなわち、モデム21は、制御部24の指示に従い、バッファ25に記憶されるデータ又はインターフェイス26を介して図示しない端末装置から入力されるデータに基づいて第1の周波数帯F1又は第2の周波数帯F2の搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加した上で電力線に送出する。また、電力線を流れる第1の周波数帯F1又は第2の周波数帯F2の変調搬送波信号を受信して復調し、得られたデータを、制御部24の指示に従ってバッファ25又はインターフェイス26に出力する。なお、信号の送信にはCSMA/CA方式を用いる。
モデム21が付加する同期信号は、搬送波信号の変調にOFDM変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数帯に属するサブキャリアのみによって構成される広帯域信号である。一方、搬送波信号の変調に位相変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数の単一周波数信号である。
モデム21について、より詳細に説明する。図5は、モデム21の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、モデム21は、制御部31、インタフェース(I/F)32、通信部33、変調部34、送信部35、マルチプレクサ36、受信部37、復調部38の各機能部を有している。
制御部31は、制御部24から信号の送信先情報を含む各種の情報を取得し、取得した情報に基づいてモデム21の各部を制御する。
インタフェース32は、制御部24やバッファ25などの上位装置とのインタフェースであり、上位装置から上位レイヤデータを受け取り、通信部33に出力する。また、通信部33から上位レイヤデータの入力を受け、上位装置に出力する。通信部33はヘッダーを含む送受信信号の処理を行う機能部であり、例えばDSP(Digital Signal Processor)によって構成される。具体的な処理としては、インタフェース32から送信すべき上位レイヤデータの供給を受け、パイロットデータや宛先MACアドレスなどを含むヘッダーと誤り訂正のための冗長データとを付加し、送信データとして変調部34に送出する。また、復調部38からヘッダーと上位レイヤデータとを含む受信データの入力を受け、その中のヘッダーに応じた処理及び誤り訂正処理を行うとともに、上位レイヤデータのインタフェース32への出力を行う。
なお、ヘッダーに応じた処理には、受信データに対する所定の応答データ(Acknowledge)を、上記送信データのひとつとして送信する処理が含まれる。すなわち、通信部33は、他の電力線搬送通信装置から信号を受信したら、その都度応答データを返送するよう構成されている。なお、応答データを含む信号を応答信号という。したがって、通信部33は、応答データ以外の送信データを送信したにも関わらず送信してから所定時間内に応答データを受信しない場合には、正常に受信されなかったものとして、送信データの再送を行う。
変調部34は、制御部31の指示に従い、OFDM変調方式並びに位相変調方式の中から一の変調方式を選択する。そして、選択した一の変調方式を用い、送信データに基づいて搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加するとともに、表1に示した電波法施行規則の規定(搬送波出力)に則り変調処理に用いた通信方式に応じて信号の振幅を制御した後、送信部35に出力する。
ここで、制御部31は、信号の送信先に応じて、変調部34がOFDM変調の際に用いるサブキャリアを制御する。すなわち、信号の送信先が親機C0である場合には、第1の周波数帯F1に属するサブキャリアのみを用いてOFDM変調を行うよう変調部34を制御し、信号の送信先が他の子機である場合には、第2の周波数帯F2に属するサブキャリアのみを用いてOFDM変調を行うよう変調部34を制御する。これにより、送信に関しては、親機C0との通信の際には第1のOFDM通信を用い、他の子機との通信の際には第2のOFDM通信を用いることが実現される。
送信部35は、変調部34から入力された信号を電力線に送出可能な信号に変換してから、電力線に送出する機能を有する。具体的には、変調部34から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するとともに、バンドパスフィルタを用いて不要な周波数帯の成分を取り除き、さらに所定の増幅率で増幅して、マルチプレクサ36を介して電力線に送出する。
受信部37は、電力線に到来した信号を受信してデジタル信号に変換し、復調部38に出力する機能を有する。具体的には、マルチプレクサ36を介して受信された信号からバンドパスフィルタを用いて不要な高低周波成分を取り除き、さらに所定の増幅率で増幅した後、サンプリングしてデジタル信号に変換し、復調部38に出力する。
加えて、受信部37は、3つの通信モードを切り替えながら、復調部38への信号出力を行う機能を有する。3つの通信モードは、バンドパスフィルタの出力信号のうち第2の周波数帯F2の信号を遮断するF1モード、バンドパスフィルタの出力信号のうち第1の周波数帯F1の信号を遮断するF2モード、バンドパスフィルタの出力信号を遮断せずに通過させるスルーモードの3つである。各通信モードのさらなる詳細については後述することにする。
復調部38は、受信部37から入力されるデジタル信号を、OFDM変調方式及び位相変調方式を用いて復調する機能を有する。復調部38は、復調によって得た信号を通信部33に出力する。
ここで、復調部38は同期検出部39を有している。同期検出部39は受信部37から入力された信号から既知の同期信号を検出する機能を有する。ここで検出される同期信号は、OFDM変調方式の同期信号又は位相変調方式の同期信号であり、同期検出部39は、検出した同期信号から復調部38が復調に用いる変調方式を決定する。
尚、同期検出部39の機能は同期信号生成器23によって代替可能であるから、同期検出部39を省略して同期信号生成器23の出力を利用しても構わない。
図4(b)に戻る。同期信号生成器23の機能は、上述した同期信号生成器12の機能と同様である。なお、同期信号生成器23から同期を確立したことを示す情報の通知を受けた制御部24は、モデム21に復調処理を開始させる。
制御部24は、ここまでに挙げた処理の他、子機の各部を制御する処理を行う。また、制御部24は、親機C0又は他の子機から自機宛の上記指示データ(検針データを送信するよう指示するための指示データ)が受信された場合、インターフェイス26を介して電気メータにアクセスして検針データを取得し、取得した検針データを、指示データを受信したモデムを用いて返送する。
さらに、制御部24は、自機を、親機C0と他の子機との間の通信を中継するリピータとして機能させるか否かを記憶している。リピータとして機能させる場合には、さらに配下の子機を示す情報も記憶しており、親機C0から配下の子機宛の上記指示データが受信された場合、宛先の子機に対して指示データを転送する。そして、この転送に応じて配下の子機から返送されてきた検針データを、親機C0に転送する。
バッファ25は、制御部24の指示に従い、モデム21から入力されるデータを記憶する記憶手段である。インターフェイス26は電気メータとの間でデータの入出力を行う。
次に、親機C0と子機C11〜C37の間で行われる指示データ及び検針データの送受信について、詳しく説明する。
初めに、以下の説明の前提を説明しておく。以下では、電力線搬送通信システム1内の各子機と親機C0との通信状態は、図6に示す通りであると仮定する。すなわち、図6に示すように、親機C0は、子機C11〜C14、C21〜C23、C31〜C32との間で、OFDM信号と位相変調信号(位相変調方式により変調された搬送波信号)の両方を送受信できる。また、子機C15〜C17、C24〜C26、C33〜C35との間では、OFDM信号は送受信できないが、位相変調信号の送受信はできる。その他の子機C27、C36〜C37との間では、OFDM信号・位相変調信号ともに送受信できないものとする。
さて、図1(b)は、電力線搬送通信システム1のネットワークトポロジを示す図である。同図に示すように、本実施の形態では、同図に示すように、本実施の形態では、論理的に親機C0と直接接続しているのは子機C11〜C14,C21〜C23,C31〜C32(以下、直接通信子機と総称する。)のみである。このうち、子機C14,C23,C32はリピータ(以下、リピータ子機と総称する。)として用い、各電力線上で親機C0との距離がリピータ子機よりも離れている子機C15〜C17,C24〜C27,C33〜C37(以下、リピータ経由通信子機と総称する。)は、リピータとしての子機C14,C23,C32を介して、親機C0と接続されている。
このようなネットワークトポロジを採用しているのは、図6に示したように、リピータ経由通信子機は、距離が離れ過ぎていて親機C0とOFDM通信による直接通信ができないためである。具体的に各子機を直接通信子機、リピータ経由通信子機のいずれとするか、またどの子機をリピータ子機として用いるかについては、親機C0の処理によってシステム立ち上げ時に自動決定される。この処理の詳細については、後にまとめて説明する。
図1(a)(b)に示すように、親機C0と各直接通信子機との通信には、第1の周波数帯F1を用いる。つまり、各直接通信子機は、第1のOFDM通信により、親機C0と指示データ及び検針データの送受信を行う。一方、リピータ子機とリピータ経由通信子機との通信には、第2の周波数帯F2を用いる。つまり、これらの子機は、第2のOFDM通信により、相互に指示データ及び検針データの送受信を行う。
図7の各図は、親機C0と各子機との間若しくは子機間で送受信される信号のフォーマットを示す図である。なお、これらの図に示しているのはネットワークレイヤより上位のレイヤに係る部分のみであって、同期信号など、ネットワークレイヤより低いレイヤに係る部分については示していない。以下、これらの図を参照しながら、親機C0と各子機との間及び子機間での信号の送受信について説明する。
まず、図7(a)は、親機C0が直接通信子機(リピータ子機を除く)に指示データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。パソコンから検針データ取得の指示を受けた親機C0は、指示データと、宛先アドレスとしての直接通信子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第1のOFDM通信により電力線B1〜B3上に送出する。各子機は電力線上を流れる信号のヘッダを監視しており、自機のアドレスが付加された信号が流れてきた場合に、その信号を受信する。
図7(b)は、直接通信子機(リピータ子機を除く)が親機C0に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(a)の信号を受信した各直接通信子機は、まず電気メータから検針データを取得する。そして、検針データと、宛先アドレスとしての親機C0のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第1のOFDM通信により電力線上に送出する。親機C0は電力線B1〜B3上を流れる信号のヘッダを監視しており、自機のアドレスが付加された信号が流れてきた場合に、その信号を受信する。以上の処理により、直接通信子機(リピータ子機を除く)からの検針データの取得が完了する。
次に、図7(c)は、親機C0がリピータ子機及びリピータ経由通信子機に指示データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。親機C0は、指示データと、宛先アドレスとしてのリピータ子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第1のOFDM通信により電力線B1〜B3上に送出する。
図7(d)は、リピータ子機が配下のリピータ経由通信子機に指示データを転送する際に用いる信号のフォーマットである。リピータ子機は、親機C0から受信した信号の宛先アドレス及び送信元アドレスを、それぞれリピータ経由通信子機のアドレス及び自機のアドレスで書き換え、第2のOFDM通信により電力線上に送出する。
図7(e)は、リピータ経由通信子機がリピータ子機に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(d)の信号を受信した各リピータ経由通信子機は、まず電気メータから検針データを取得する。また、受信した信号の送信元アドレスから、検針データの宛先アドレス(すなわち、リピータ子機のアドレス)を取得する。そして、検針データと、宛先アドレスとしてのリピータ子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第2のOFDM通信により電力線上に送出する。
図7(f)は、リピータ子機が親機C0に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(b)の信号を受信したリピータ子機は、自機に接続されている電気メータから検針データを取得し、バッファ25(図4(b))に蓄積する。また、図7(e)に示した信号により、配下のリピータ経由通信子機からも検針データを取得し、バッファ25(図4(b))に蓄積する。そして、リピータ子機は、すべての検針データの取得が完了したら、蓄積された検針データと、宛先アドレスとしての親機C0のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第1のOFDM通信により電力線上に送出する。親機C0は、この信号を受信することにより、リピータ子機及びリピータ経由通信子機からの検針データの取得を完了する。
以上、親機C0と各子機との間及び子機間で行われる信号の送受信について説明した。次に、この信号送受信の具体的な手順について説明する。
図8は、親機C0と各子機との間及び子機間での通信ステップを示す模式図である。同図中の矢印は信号a〜fの送受信を示している。なお、信号a〜fは、図7(a)〜(f)に対応している。また、以下の説明で親機C0が信号を送信する順序は、子機の数などを考慮して、総通信ステップ数が最も少なくなるように予めプログラミングされたものである。
まず初めに、信号の同時送受信について説明しておく。信号a〜c,fの送受信には第1のOFDM通信が用いられ、信号d,eの送受信には第2のOFDM通信が用いられることから、信号a〜c,fと信号d,eとは、電力線B1〜B3上で同時に送受信することができる。また、各リピータ子機及びその配下のリピータ経由通信子機の間で送受信される信号は、機器間の距離が十分に離れているため、他のリピータ子機及びその配下のリピータ経由通信子機の間で送受信される信号とは干渉しない。したがって、各リピータ子機及びその配下のリピータ経由通信子機の間での信号の送受信は、各電力線上で互いに独立して同時に行うことが可能である。親機C0における上記プログラミングは、これらを考慮して行われる。
さて、図8に示すように、親機C0は、まず3つのリピータ子機C32,C23,C14を順次宛先として、信号c(指示データを含む信号)を送信する(ステップ1〜3)。この送信は第1のOFDM通信により行われる。
各リピータ子機C32,C23,C14は、親機C0から信号cを受信すると直ちに、配下のリピータ経由通信子機のうちのひとつを宛先として、信号d(指示データを含む信号)を第2のOFDM通信により送信する(ステップ2〜4)。信号dを受信したリピータ経由通信子機は直ちに検針データを取得し、リピータ子機に向けて信号e(検針データを含む信号)を第2のOFDM通信により返送する(ステップ3〜5)。各リピータ子機C32,C23,C14は、こうして受信した信号eに含まれる検針データをバッファ25に蓄積する。各リピータ子機C32,C23,C14は、以上の処理を配下のリピータ経由通信子機すべてについて繰り返す(リピータ子機C32についてはステップ2〜11。リピータ子機C23についてはステップ3〜10。リピータ子機C14についてはステップ4〜9。)。そして、すべての配下のリピータ経由通信子機の検針データが蓄積されたら、自機の検針データも含む信号fを生成し、親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する(ステップ10〜12)。
本実施の形態では各リピータ子機C32,C23,C14の配下にそれぞれ5つ,4つ,3つのリピータ経由通信子機があるので、親機C0がリピータ子機C14に向けて信号cを送信したステップ3の7ステップ後であるステップ10で、まずリピータ子機C14が信号fを親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する。次に、ステップ11,12で、リピータ子機C23,C32が順次、信号fを親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する。
ステップ4〜9でリピータ子機が上記処理を行っている間、親機C0は直接通信子機C11〜C13との間で第1のOFDM通信により信号a,bの送受信を行い、これらの子機から検針データを取得する。また、親機C0は、ステップ13以降で、残りの直接通信子機C21,C22,C31との間で第1のOFDM通信により信号a,bの送受信を行い、これらの子機から検針データを取得する。最終的に、ステップ18が完了した時点で、すべての子機からの検針データの取得が完了する。
以上説明したように、電力線搬送通信システム1では、第1及び第2の周波数帯という重複しない2つの周波数帯を用いているので、リピータ子機がリピータ経由通信子機とOFDM通信している間、親機は他の子機とOFDM通信することができる。したがって、図16や図17に示した背景技術に比べ、総通信ステップ数が低減される。
ここから、リピータ子機が、1つのOFDMモデムにより第1及び第2のOFDM通信の両方を行えるようにするための具体的な構成について説明する。
上述したように、モデム21内の受信部37は、F1モード、F2モード、スルーモードという3つの通信モードを有している。電力線搬送通信システム1内の各子機では、これらの通信モードを切り替えることにより、モデム21により第1及び第2のOFDM通信の両方を行えるようにしている。以下では、初めに受信部37の構成について詳細に説明し、その後、制御部31による通信モード実現のための制御について説明する。
図9は、受信部37の内部構成を示す図である。同図に示すように、受信部37はバンドパスフィルタ40、第1乃至第3の信号通路41〜43、ローノイズアンプ(LNA)49、自動ゲイン制御部(AGC)50とを有している。なお、同図ではアナログ信号をデジタル信号に変換するための変換部は省略している。
バンドパスフィルタ40は、マルチプレクサ36より入力される信号から、上述した低周波数帯域(10kHz〜450kHz)以外の周波数帯に属する信号を遮断し、第1乃至第3の信号通路41〜43に出力する入力信号通路を構成する。バンドパスフィルタ40は、低周波数帯域以外の周波数帯に属する信号による干渉などを防止するために設けているものである。
第1の信号通路41は、電力線と復調部38との間に設置され、第2の周波数帯F2の信号を遮断する機能部である。具体的には、バンドパスフィルタ40より入力された信号から、第1の周波数帯F1に属する周波数成分のみを取り出して通過させるローパスフィルタ45を有している。また、第1の信号通路41には、第1のスイッチ手段44が設けられている。第1のスイッチ手段44は、制御部31の制御によって開閉する。
第2の信号通路42は、電力線と復調部38との間に設置され、第1の周波数帯F1の信号を遮断する機能部である。具体的には、バンドパスフィルタ40より入力された信号から、第2の周波数帯F2に属する周波数成分のみを取り出して通過させるハイパスフィルタ47を有している。また、第2の信号通路42には、第2のスイッチ手段46が設けられている。第2のスイッチ手段46も、制御部31の制御によって開閉する。
第3の信号通路43は、電力線と復調部38との間に設置され、第1の周波数帯F1の信号及び第2の周波数帯F2の信号をともに通過させる。つまり、第3の信号通路43には第1及び第2の信号通路41,42に設けたようなフィルタは設けられておらず、バンドパスフィルタ40より入力された信号がそのまま通過する。ただし、第3の信号通路43には、第3のスイッチ手段48が設けられている。第3のスイッチ手段48も、制御部31の制御によって開閉する。
ローノイズアンプ49は、第1乃至第3の信号通路41〜43から出力された信号を所定の増幅率で増幅し、自動ゲイン制御部50に出力する。自動ゲイン制御部50は増幅回路を内蔵しており、復調部38からのフィードバック信号に基づき、復調部38に入力される信号の振幅が一定値となるよう、増幅回路の増幅率を制御する。
さて、制御部31による受信部37の通信モード制御について説明する。制御部31は、下記の表2に従って、第1乃至第3のスイッチ手段44〜48を制御することにより、F
1モード、F
2モード、スルーモードという3つの通信モードを実現する。
待ち受け時には、制御部31は、第3のスイッチ手段48をオン、第1及び第2のスイッチ手段44,46をオフとすることで、受信部37の通信モードをスルーモードとする。スルーモードでは低周波数帯域の信号成分がすべて復調部38に入力されることになるので、第1及び第2のOFDM通信のいずれによっても通信を行えることになり、親機C0又は他の子機からの呼び出しを好適に受信できることになる。
親機C0との通信を行う場合、制御部31は、第1のスイッチ手段44をオン、第2及び第3のスイッチ手段46,48をオフとすることで、受信部37の通信モードをF1モードとする。F1モードでは第1の周波数帯F1に属する周波数成分のみが復調部38に入力されることになるので、第1のOFDM通信による親機C0との通信を好適に行えることになる。
リピータ経由通信子機との通信を行う場合には、制御部31は、第2のスイッチ手段46をオン、第1及び第3のスイッチ手段44,48をオフとすることで、受信部37の通信モードをF2モードとする。F2モードでは第2の周波数帯F2に属する周波数成分のみが復調部38に入力されることになるので、第2のOFDM通信によるリピータ経由通信子機との通信を好適に行えることになる。
次に、親機C0、子機C21(直接通信子機)、子機C32(リピータ子機)、子機C37(リピータ経由通信子機)の間で行われる通信のシーケンスを例として参照しながら、制御部31の処理についてさらに詳しく説明する。
図10(a)は、上記シーケンスを示す図である。同図は、親機C0が子機C21及びC37から検針データを取得する場合のシーケンスを示している。なお、同図には、ネットワークレイヤより下位のレイヤのシーケンスを表示している。したがって、図8とは異なり、上述した応答信号(図10では「ACK」と表記している。)についても図の中に現れている。
図10(b)は、図10(a)に示す各信号の周波数帯と、リピータ子機C32の受信部37の通信モード設定(同図では「リピータ設定」と記す。)とを示している。図10(b)の横軸は時間軸である。
初めに、図10(a)に示したシーケンスについて説明する。同図に示すように、親機C0は、リピータに対して呼び出し信号を送信する(ステップS1)。呼び出し信号を受信した子機C32は、親機C0に対してACKを送信する(ステップS2)。
親機C0は、ACKを受信したら、子機C37のデータを要求するための信号c(図7)を子機C32に対して送信する(ステップS3)。子機C32は、この信号cについても、親機C0に対するACKの送信を行う(ステップS4)。子機C32は、受信した信号cに基づいて信号dを生成し、子機C37に送信する(ステップS5)。子機C37は検針データを含む信号eを返信し(ステップS6)、子機C32は受信した信号eに基づいて信号fを生成して親機C0に送信する(ステップS7)。親機C0は、信号fを受信したら、子機C32に対してACKを送信する(ステップS8)。
次に、図10(b)を参照して、リピータ子機C32の受信部37の通信モード設定について説明する。同図に示すように、ステップS2でACKの送信を行うまでの間、リピータ子機C32の制御部31は受信部37をスルーモードに設定する。これは、親機C0及び他の子機の両方からの呼び出しを待機するためである。一方、ステップS2でACKの送信を行った後には、制御部31は受信部37をF1モードに設定し、第1の周波数帯F1を用いる第1のOFDM通信によりステップS3〜S4の通信を行う。ステップS5で信号dの送信を行う際には、制御部31は受信部37をF2モードに設定し、第2の周波数帯F2を用いる第2のOFDM通信によりステップS5〜S6の通信を行う。そして、ステップS7の信号fの送信を行う際には、制御部31は受信部37をF1モードに戻し、第1の周波数帯F1を用いる第1のOFDM通信によりステップS7〜S8の通信を行う。ステップS8のACKの受信が完了したら、制御部31は受信部37をスルーモードに戻し、呼び出し信号の待機を再開する。
なお、図10(a)(b)にも示しているように、子機C32と子機C37とが通信を行っている間、親機C0は、第1の周波数帯F1を用いる第1のOFDM通信により、子機C21から検針データの取得を行う(ステップS9〜S10)。このように、リピータ子機がリピータ経由通信子機と通信している間、親機C0が直接通信子機と通信を行うのは、上述したように総通信ステップ数を低減するためである。
また、呼び出し信号をOFDM変調する際に用いる一次変調方式には、16QAM(16値直交振幅変調方式)などの比較的高速なものは用いず、DPSK(差動位変移変調方式)やBPSK(二位相変位変調方式)などの低速なものを用いることが好ましい。
すなわち、リピータ子機の受信部37は呼び出し待機時にはスルーモードとなっており、復調部38には低周波数帯域全体にわたる信号が入力される。そのため、例えば第1の周波数帯で呼び出し信号が受信されるときに、第2の周波数帯で他の信号が受信される場合があり得るが、両信号は同期していないので、後者の信号は呼び出し信号を復調する際の干渉ノイズとなる。したがって、呼び出し信号の一次変調には、できるだけ干渉ノイズに強い一次変調方式、すなわち低速な一次変調方式を用いておくことが好ましいのである。
以上説明したように、電力線搬送通信システム1によれば、リピータ子機は、受信部37と復調部38とにより構成されるOFDMモデムが1つだけであっても、第1の周波数帯F1の信号を用いる親機とのOFDM通信と、第2の周波数帯F2の信号を用いる他の子機とのOFDM通信との両方を行える。また、子機自身をリピータとして用いるので、子機とは別にリピータを設ける必要がなくなる。
さらに、第1の周波数帯の信号を用いてなされる親機からの呼び出しと、第2の周波数帯の信号を用いてなされる他の子機からの呼び出しとの両方を待ち受けることが可能になる。また、第3の信号通路は特定周波数帯の信号を遮断することがないので、遮断の際の信号レベル低下を避けることが可能になる。
最後に、各子機を直接通信子機、リピータ経由通信子機のいずれとするか、またどの子機をリピータ子機として用いるかを決定するための親機の処理について説明しておくことにする。以下では、図1に示した電力線搬送通信システム1を前提として説明する。なお、この処理は電力線搬送通信システム1の立ち上げ時に行うことが好適である。また、親機C0には、子機C11〜C37のアドレス情報が事前に設定される。
図4(a)に示したように、親機C0は、判定部16、選択部17、切替部18を含んでいる。このうち、まず判定部16が、OFDM通信により直接通信できるか否かを子機ごとに判定する。次に、選択部17は、判定部16がOFDM通信により直接通信できると判定した子機の中から、リピータとして機能させる子機を選択し、選択した子機をリピータ子機として記憶する。そして、切替部18は、判定部16がOFDM通信により直接通信できないと判定した子機との通信を、リピータ子機を介する通信に切り替える。すなわち、これらの子機をリピータ経由通信子機として記憶するとともに、リピータ子機に対してリピータとして機能するよう命令する。この命令を受けたリピータ子機は、配下のリピータ経由通信子機との通信を第2のOFDM通信に切り替える。
以下、親機C0の具体的な処理手順について詳しく説明する。
図11は、電力線B2に接続している各子機C21〜C27に関する処理の手順を示している。以下、この図11を参照しながら親機C0の処理について詳しく説明していくが、電力線B1,B3に接続している各子機に関しても、同様な手順で処理が行われる。
図11に示すように、まず判定部16が、子機C21に向けて通信品質確認用の信号gをユニキャスト送信する(ステップ1)。
図12は、上記信号gのフォーマットを示す図である。同図に示すように、通信品質確認用の信号gは、第1のOFDM通信により伝送される部分、115kHzの位相変調通信により伝送される部分、132kHzの位相変調通信により伝送される部分の3つの部分信号から構成されている。各部分信号は、それぞれプリアンブルとユニキャストデータとを含んで構成され、それぞれ対応する変調方式により搬送波信号を変調するために用いられる。なお、プリアンブルには宛先の子機のアドレスが含まれ、ユニキャストデータには当該信号が通信品質確認用の信号であることを示す所定のデータが含まれる。
親機C0は、信号gの上記各部分信号を、順次電力線B1〜B3に送出する。図13は、こうして送出される信号gの周波数の時間変化を示す図である。同図に示すように、信号gの送出を周波数の時間変化で見ると、第1の周波数帯F1全体に広がる広帯域信号がまず送出され、続いて115kHzのみを用いる単一周波数信号が送出され、最後に132kHzのみを用いる単一周波数信号が送出されることになる。
図11に戻る。子機C21は、信号gの少なくとも一部が受信されると、部分信号ごとに、その受信品質を測定する。なお、受信品質には、受信レベル、信号対ノイズ比(SNR)、ビットエラー数、フレームエラー数などが含まれる。
子機C21は、図6に示したように、親機C0との間でOFDM信号と位相変調信号の両方を送受信できる。したがって、子機C21は、信号gの3つの部分信号すべてを受信し、全部分信号が受信されたことを示す情報と、各部分信号の受信品質を示す情報を含む信号hを生成し、親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する(ステップ2)。
次に、判定部16は、子機C22に向けて通信品質確認用の信号gを送信する(ステップ3)。子機C22も、子機C21と同様に信号hを生成し、親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する(ステップ4)。子機C23についても同様である(ステップ5〜6)。
次に、判定部16は、子機C24に向けて通信品質確認用の信号gを送信する(ステップ7)。子機C24は、図6に示したように、親機C0との間で位相変調信号のみを送受信でき、OFDM信号は送受信できない。したがって、子機C24は、信号gの3つの部分信号のうち位相変調通信により伝送される部分信号のみを受信し、位相変調通信により伝送される部分信号のみが受信されたことを示す情報と、これらの部分信号の受信品質を示す情報を含む信号h'を生成し、親機C0に向けて位相変調通信により送信する(ステップ8)。子機C25〜C26についても同様である(ステップ9〜12)。
次に、判定部16は、子機C27に向けて通信品質確認用の信号gを送信する(ステップ13)。子機C27は、図6に示したように、親機C0との間でOFDM信号・位相変調信号のいずれも送受信できない。したがって、子機C27は信号gを受信できず、親機C0に向けて何も送信しない(ステップ14)。判定部16は、所定のタイミングで子機C27からの信号が受信されないことにより、OFDM通信では子機C27との直接通信ができないと判定する。
以上の処理により、判定部16は、子機C21〜C23をOFDM通信により直接通信できる子機であると判定し、子機C24〜C27をOFDM通信では直接通信できない子機であると判定する。
以上説明した判定部16の処理が完了し、OFDM通信で直接通信できない子機が1つでも存在していた場合、次に選択部17が、まずリピータ子機候補を選択する。具体的には、判定部16によりOFDM通信により直接通信できると判定された子機C21〜C23の中から、通信品質の低い順に所定個の子機をリピータ子機候補として選択する。通信品質の低い順とするのは、親機C0との通信品質が低いほど、直接通信できない子機に近いと考えられるからである。ここでは、所定個を2個とすることにすると、子機C22,C23がリピータ子機候補として選択される。
選択部17は、選択したリピータ子機候補のうちのひとつである子機C22に対して、子機C24〜C27の存在確認を行うよう命令するための命令信号iを送信する(ステップ15)。子機C22の制御部24(図4(b))は、この命令信号iを受信すると、上述した判定部16の処理と同様に、子機C24〜C27に向けて通信品質確認用の信号gを順次第2のOFDM通信により送信し、各子機からの応答信号(信号h又は信号h')をバッファ25に蓄積する(ステップ16〜23)。そして、すべての子機に対する処理が完了したら、バッファ25に蓄積した各応答信号を含む信号jを生成し、親機C0に向けて第1のOFDM通信により送信する(ステップ24)。
選択部17は、選択したリピータ子機候補のうちの他のひとつである子機C23に対しても、子機C22と同様に、子機C24〜C27の存在確認を行わせる(ステップ25〜34)。
選択部17は、各リピータ子機候補C22,C23から受信した信号jに基づき、どちらの子機が、子機C24〜C27との通信状態がより良好であるかを判定する。そして、より良好であると判定した子機を、リピータ子機として選択する。なお、図1の例では、子機C23の方が子機C24〜C27との距離が近いので、子機C23がリピータ子機として選択される。
選択部17がリピータ子機を選択したら、次に切替部18が、リピータ子機C23に対して、リピータとして機能するよう命令するための命令信号kを第1のOFDM通信により送信する(ステップ35)。この命令信号kには、配下のリピータ経由通信子機となる子機C24〜C27を示す情報が含まれる。
リピータ子機C23の制御部24(図4(b))は、この命令信号kを受信すると、自機がリピータ子機となることを記憶し、リピータとしての動作を開始するとともに、配下のリピータ経由通信子機C24〜C27に対して、次からは第2のOFDM通信により通信を行うよう命令するための命令信号lを送信する。各リピータ経由通信子機C24〜C27の制御部24は、この命令信号lを受信すると、受信部37をF2モードとして子機C23からの信号の待機を開始するとともに、所定の応答信号mをリピータ子機C23に対して第2のOFDM通信により返送する(ステップ36〜43)。
リピータ子機C23は、子機C24〜C27のすべてについて応答信号mの受信を完了すると、親機C0に対してネットワーク構築完了通知のための信号nを第1のOFDM通信により送信する(ステップ44)。親機C0は、この信号nを受信することにより子機C23がリピータとして機能し始めたことを認識し、子機C23をリピータとして用いる運用モードを開始する。具体的には、検針データの取得の際、子機C24〜C27には指示データを送らないこととし、子機C24〜C27の検針データはリピータ子機C23から受信する。なお、子機C23は、信号nを送信した後、受信部37をスルーモードとして待ち受け状態に入る。
以上説明したように、電力線搬送通信システム1によれば、リピータ子機を介して通信を行うリピータ経由通信子機と直接通信する直接通信子機とを、システム構築後に人手を介さずに分類することが可能になる。また、親機C0は、リピータ子機を適切に選択できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
例えば、上記実施の形態では親機C0と子機との通信に第1のOFDM通信を用い、子機同士の通信に第2のOFDM通信を用いているが、これを逆にしてもよい。つまり、親機C0と子機との通信に第2のOFDM通信を用い、子機同士の通信に第1のOFDM通信を用いてもよい。