以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい第1及び第2の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態による電力線搬送通信システム1について説明する。以下の説明では、初めにネットワークの構築が完了した段階における電力線搬送通信システム1の構成について詳しく説明し、その後、自動化された手順により簡便に電力線搬送通信システムのネットワーク構築を行うための具体的な構成について説明する。
図1(a)は、第1の実施の形態による電力線搬送通信システム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、電力線搬送通信システム1は、親機C0と、それぞれ親機C0に接続する電力線B1〜B3とを備え、各電力線B1〜B3には、それぞれリピータ機能を内蔵する子機C11〜C37がバス接続されている。親機C0及び各子機C11〜C37はいずれも電力線搬送通信装置であり、相互に、上述したOFDM通信又は位相変調通信による電力線搬送通信を行う。そして、図示しない端末装置(パソコン、電気メータなど)と接続されて端末装置間での通信を実現する。
電力線B1〜B3は親機C0の近辺に設けられた接続点N(例えば分電盤)で互いに接続されており、一の電力線に流れる信号は、他の電力線にも流れる。したがって、電力線B1〜B3に、同一周波数の信号を互いに独立して同時に流すことは原則としてできないが、接続点Nとの距離がある程度以上離れている子機が送信した信号は、接続点Nに到達する前に減衰してしまうため他の電力線に流れこむことはない。したがって、このような信号に限れば、電力線B1〜B3に、同一周波数の信号を互いに独立して同時に流すことが可能である。
この電力線搬送通信システム1は、具体的には、例えば図25に示した背景技術の例と同様、3階建てで各階に7つずつの部屋を有する集合住宅Aに設置され、各戸のメータ検針を行うために用いられる。以下の説明では、親機C0に接続される端末装置はパソコンであり、各子機に接続される端末装置は電気メータであるとし、パソコンから各電気メータの検針データの取得を行う例を取り上げる。なお、本発明が電気メータの検針データを取得する電力線搬送通信システムに限定されないのはもちろんである。
ここで、親機C0及び各子機C11〜C37の詳細について説明するに先立ち、低周波数帯域を分割してなる第1及び第2の周波数帯について説明しておく。
電力線搬送通信システム1では、OFDM通信を行う際、低周波数帯域(10kHz〜450kHz)を第1の周波数帯F1と第2の周波数帯F2に分割して用いる。すなわち、親機C0及び各子機C11〜C37は、いずれか一方の周波数帯に属するサブキャリアのみを用いて、OFDM信号(OFDM変調方式によって変調された搬送波信号)を生成する。
図2は、第1及び第2の周波数帯の説明図である。同図に示すように、第1の周波数帯F1は10kHz〜220kHzの周波数帯域であり、第2の周波数帯F2は240kHz〜450kHzの周波数帯域である。低周波数帯域は10kHz〜450kHzであるので、第1の周波数帯F1は概ね低周波数帯域の下半分を占め、第2の周波数帯F2は概ね上半分を占めていることになる。
図3の各図は、OFDM信号の周波数スペクトラムイメージを示している。図3(a)は低周波数帯域全体を用いてOFDM通信を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは10kHz〜450kHzの低周波数帯域の全域にわたって存在する。図3(b)は第1の周波数帯F1のみを用いるOFDM通信(以下、第1のOFDM通信という。)を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは10kHz〜220kHzの範囲のみに存在する。図3(c)は第2の周波数帯F2のみを用いるOFDM通信(以下、第2のOFDM通信という。)を行う場合のOFDM信号の周波数スペクトラムイメージであり、同図に示すように、この場合のOFDM信号のサブキャリアは240kHz〜450kHzの範囲のみに存在する。図3(d)は第1のOFDM通信によるOFDM信号と第2のOFDM通信によるOFDM信号とが混在している状態を示しており、この場合のOFDM信号のサブキャリアは、220kHz〜240kHzの範囲を除き、低周波数帯域の全域にわたって存在する。
ここで、以下の説明の前提を説明しておく。以下では、電力線搬送通信システム1内の各子機と親機C0との通信状態は、図4に示す通りであると仮定する。すなわち、図4に示すように、親機C0は、子機C11〜C14、C21〜C23、C31〜C32との間で、OFDM信号と位相変調信号(位相変調方式により変調された搬送波信号)の両方を送受信できる。また、子機C15〜C17、C24〜C26、C33〜C35との間では、OFDM信号は送受信できないが、位相変調信号の送受信はできる。その他の子機C27、C36〜C37との間では、OFDM信号・位相変調信号ともに送受信できないものとする。
図1(b)は、電力線搬送通信システム1のネットワークトポロジを示す図である。同図に示すように、本実施の形態では、同図に示すように、本実施の形態では、論理的に親機C0と直接接続している直接通信子機は子機C11〜C14,C21〜C23,C31〜C32のみである。このうち、子機C14,C23,C32はリピータ子機として用い、各電力線上で親機C0との距離がリピータ子機よりも離れている子機C15〜C17,C24〜C27,C33〜C37は、リピータ子機C14,C23,C32を介して、親機C0と接続されるリピータ配下子機となっている。
さて、図5(a)は、親機C0の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、親機C0は、それぞれ電力線に接続するモデム11及び同期信号生成器12と、制御部13と、バッファ14と、端末装置としてのパソコンに接続するインタフェース15とを有している。
モデム11は、上記第2のOFDM通信を行うとともに、第1の周波数帯F1に属する周波数(具体的には115kHz又は132kHz)を用いて位相変調通信を行うモデムである。指示データ及び検針データの送受信にはOFDM通信を用い、リピータ子機への呼び出し信号の送信には位相変調通信を用いる。具体的には、制御部13の指示に従い、バッファ14に記憶されるデータ又はインタフェース15を介してパソコンから入力されるデータに基づいて第1の周波数帯F1の搬送波周波数で位相変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加した上で電力線に送出する。また、モデム11が付加する同期信号は、搬送波信号の変調にOFDM変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数帯に属するサブキャリアのみによって構成される広帯域信号である。一方、搬送波信号の変調に位相変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数の単一周波数信号である。電力線を流れる第1の周波数帯F1の位相変調搬送波信号を受信して復調し、得られたデータを、制御部13の指示に従ってバッファ14又はインタフェース15に出力する。
なお、OFDM信号は各サブキャリアの出力の合計が100mWとなるように出力調整されて送出される。一方、位相変調信号は350mWの出力で送出される。このような出力としているのは、上掲の表1に示した法規制に従うためである。
他に、モデム11は、信号を送信する際、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式を用いるよう構成されている。すなわち、モデム11は、送信を開始する前に一度受信を試み(キャリアセンス)、他の装置の送信信号が検知されなければ、送信データの送信を行う。他の装置の送信信号が検知された場合には、その送信信号の送信終了を監視し、送信終了が検知された場合に所定時間待機してから送信データの送信を行う。なお、この所定時間は待機回数の増加に応じて短くなるよう決定される。通信開始時のネゴシエーションは行われない。
同期信号生成器12は、電力線を流れる信号に既知の同期信号が含まれているか否かを監視する。含まれていることが検出された場合、その同期信号を用いて同期を確立し、同期を確立したことを示す情報を制御部13に通知する。この通知を受けた制御部13は、モデム11に復調処理を開始させる。
制御部13は、ここまでに挙げた処理の他、親機C0の各部を制御する処理を行う。また、制御部13は、パソコンからの指示に従って検針データの送信を指示するための指示データを生成し、モデム11を用いて各子機に向けて送信するとともに、指示データに応じて各子機から返送されてきた検針データをモデム11を介して受信する。
なお、親機C0が指示データを送信する順序は、予めプログラミングされる。このプログラミングの詳細については後述する。
また、制御部13は機能的に、登録部16(登録手段)、選択部17(選択手段)、子機設定部18(リピータ子機設定手段)、及びデータベース19を含んでいる。これらはネットワーク構築を担う機能部であり、概要を説明すると、登録部16は、配下の子機からネットワークへの加入リクエストを受け付け、リピータ子機、リピータ子機でない直接通信子機(非リピータ子機)、又はリピータ配下子機のいずれかに分類してデータベース19に登録する機能を有する。選択部17は、直接通信子機の中からリピータ子機を選択する機能を有する。子機設定部18は、新たに加入した子機が直接通信子機である場合に、直接通信子機として機能するよう指示するための指示信号を送信する機能を有する。その直接通信子機がリピータ子機として選択されたものである場合には、指示信号にはリピータ子機として機能するよう指示するための情報も含まれる。後ほど、これらの各部のより具体的な処理の内容について詳細に説明する。
バッファ14は、制御部13の指示に従い、モデム11から入力されるデータを記憶する記憶手段である。インタフェース15はパソコンとの間でデータの入出力を行う。
図5(b)は、子機C11〜C37の機能ブロックを示す図である。なお、本実施の形態では、いずれの子機も同様の機能ブロックを有している。図5(b)に示すように、子機C11〜C37は、それぞれ電力線に接続するモデム21及び同期信号生成器22と、制御部23と、バッファ24と、端末装置としての電気メータに接続するインタフェース25とを有している。
モデム21は、上記第1及び第2のOFDM通信を行うとともに、第1の周波数帯F1に属する周波数(具体的には115kHz又は132kHz)を用いて位相変調通信を行う機能を備えたモデムである。リピータ子機の場合、親機C0からの呼び出し信号の受信の際には位相変調通信を用い、リピータ子機配下の子機からの信号を受信する際には第1のOFDM通信を用いる。また、親機C0とリピータ子機もしくは非リピータ子機の間で指示データ及び検針データを送受信する際には第2のOFDM通信を用い、リピータ子機と配下の子機との間で指示データ及び検針データを送受信する際には第1のOFDM通信を用いる。
モデム21の基本的な機能は、第1の周波数帯F1も用いる点を除き、上述したモデム11の機能と同様である。すなわち、モデム21は、制御部23の指示に従い、バッファ24に記憶されるデータ又はインタフェース25を介して図示しない端末装置から入力されるデータに基づいて第1の周波数帯F1又は第2の周波数帯F2の搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加した上で電力線に送出する。また、電力線を流れる第1の周波数帯F1又は第2の周波数帯F2の変調搬送波信号を受信して復調し、得られたデータを、制御部23の指示に従ってバッファ24又はインタフェース25に出力する。なお、信号の送信にはCSMA/CA方式を用いる。
モデム21が付加する同期信号は、搬送波信号の変調にOFDM変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数帯に属するサブキャリアのみによって構成される広帯域信号である。一方、搬送波信号の変調に位相変調方式を用いる場合には、搬送波信号と同じ周波数の単一周波数信号である。
モデム21について、より詳細に説明する。図6は、モデム21の機能ブロックを示す図である。同図に示すように、モデム21は、制御部31、インタフェース(I/F)32、通信部33、変調部34、送信部35、マルチプレクサ36、受信部37、復調部38の各機能部を有している。
制御部31は、制御部23から信号の送信先情報を含む各種の情報を取得し、取得した情報に基づいてモデム21の各部を制御する。
インタフェース32は、制御部23やバッファ24などの上位装置とのインタフェースであり、上位装置から上位レイヤデータを受け取り、通信部33に出力する。また、通信部33から上位レイヤデータの入力を受け、上位装置に出力する。通信部33はヘッダを含む送受信信号の処理を行う機能部であり、例えばDSP(Digital Signal Processor)によって構成される。具体的な処理としては、インタフェース32から送信すべき上位レイヤデータの供給を受け、パイロットデータや宛先MACアドレスなどを含むヘッダと誤り訂正のための冗長データとを付加し、送信データとして変調部34に送出する。また、復調部38からヘッダと上位レイヤデータとを含む受信データの入力を受け、その中のヘッダに応じた処理及び誤り訂正処理を行うとともに、上位レイヤデータのインタフェース32への出力を行う。
なお、ヘッダに応じた処理には、受信データに対する所定の応答データ(Acknowledge)を、上記送信データのひとつとして送信する処理が含まれる。すなわち、通信部33は、他の電力線搬送通信装置から信号を受信したら、その都度応答データを返送するよう構成されている。なお、応答データを含む信号を応答信号という。したがって、通信部33は、応答データ以外の送信データを送信したにも関わらず送信してから所定時間内に応答データを受信しない場合には、正常に受信されなかったものとして、送信データの再送を行う。
変調部34は、制御部31の指示に従い、OFDM変調方式並びに位相変調方式の中から一の変調方式を選択する。そして、選択した一の変調方式を用い、送信データに基づいて搬送波信号を変調し、変調方式に応じた既知の同期信号を含む所定のプリアンブルを付加するとともに、表1に示した電波法施行規則の規定(搬送波出力)に則り変調処理に用いた通信方式に応じて信号の振幅を制御した後、送信部35に出力する。
ここで、制御部31は、送信信号の送信先及び内容に応じて、変調部34が用いる変調方式及び周波数(サブキャリア)を制御する。すなわち、リピータ子機で送信信号の送信先が親機C0であり、かつ送信信号が呼び出し信号又はその応答信号である場合には、115kHz又は132kHzの単一サブキャリアを用いて位相変調を行うよう変調部34を制御する。また、送信信号の送信先が親機C0であり、かつ送信信号が指示データや検針データを含む信号である場合には、第2の周波数帯F2に属するサブキャリアのみを用いてOFDM変調を行うよう変調部34を制御する。また、リピータ子機と配下の子機間では、送信信号の内容にかかわらず、第1の周波数帯F1に属するサブキャリアのみを用いてOFDM変調を行うよう変調部34を制御する。
送信部35は、変調部34から入力された信号を電力線に送出可能な信号に変換してから、電力線に送出する機能を有する。具体的には、変調部34から入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換するとともに、バンドパスフィルタを用いて不要な周波数帯成分を取り除き、さらに所定の増幅率で増幅して、マルチプレクサ36を介して電力線に送出する。
受信部37は、電力線に到来した信号を受信してデジタル信号に変換し、復調部38に出力する機能を有する。具体的には、マルチプレクサ36を介して受信された信号を所定の増幅率で増幅した後、サンプリングしてデジタル信号に変換し、復調部38に出力する。
加えて、受信部37は、2つの通信モードを切り替えながら、復調部38への信号出力を行う機能を有する。2つの通信モードは、受信信号のうち第1の周波数帯F1以外の周波数の信号を遮断するF1モード、受信信号のうち第2の周波数帯F2以外の信号を遮断するF2モードの2つである。各通信モードのさらなる詳細については後述することにする。
復調部38は、受信部37から入力されるデジタル信号を、OFDM変調方式及び位相変調方式を用いて復調する機能を有する。復調部38は、復調によって得た信号を通信部33に出力する。復調部38の詳細についても後述することにする。
図5(b)に戻る。同期信号生成器22の機能は、上述した同期信号生成器12の機能と同様である。なお、同期信号生成器22から同期を確立したことを示す情報の通知を受けた制御部23は、モデム21に復調処理を開始させる。
制御部23は、ここまでに挙げた処理の他、子機の各部を制御する処理を行う。また、制御部23は、親機C0又はリピータ子機から自機宛の上記指示データ(検針データを送信するよう指示するための指示データ)が受信された場合、インタフェース25を介して電気メータにアクセスして検針データを取得し、取得した検針データを、指示データを受信したモデムを用いて返送する。
さらに、制御部23は、自機を、親機C0と他の子機との間の通信を中継するリピータとして機能させるか否かを記憶している。リピータとして機能させる場合には、さらに配下の子機を示す情報も記憶しており、親機C0から配下の子機宛の上記指示データが受信された場合、宛先の子機に対して指示データを転送する。そして、この転送に応じて配下の子機から返送されてきた検針データを、親機C0に転送する。
また、制御部23は機能的に、加入リクエスト送信部26−1(第1の加入リクエスト送信手段)、加入リクエスト送信部26−2(第2の加入リクエスト送信手段)、通知信号送信部27(通知信号送信手段)、連絡信号送信部28(連絡信号送信手段)、及びデータベース29を含んでいる。これらもネットワーク構築を担う機能部であり、概要を説明すると、加入リクエスト送信部26−1は、親機C0に対し、ネットワークへの加入リクエストを示す加入リクエスト信号を送信する機能を有する。加入リクエスト送信部26−2は、加入リクエスト送信部26−1が送信した加入リクエスト信号に対して親機C0から返信がない場合に、リピータ子機に対して加入リクエスト信号を送信する機能を有する。通知信号送信部27は、加入リクエスト送信部26−2が送信した加入リクエスト信号に対して複数のリピータ子機から返信があった場合に、その中から1つを選択し、選択したリピータ子機に対してその配下となることを通知するための通知信号をを送信する機能を有する。連絡信号送信部28は、他の子機(リピータ配下子機)から加入リクエスト信号を受信した場合に返信する機能とともに、上記通知信号を受信した場合に、親機C0に対して、通知信号が受信された子機が自機の配下に入ったことを連絡するための連絡信号を送信する機能を有する。データベース29は、通信相手のアドレス情報(直接通信子機の場合には親機C0のアドレス情報。リピータ配下子機の場合にはリピータ子機のアドレス情報。)を記憶する他、自機がリピータ子機であるか否かを示すフラグ情報も記憶する。自機がリピータ子機である場合には、配下の子機のアドレス情報も記憶する。これらの各部のより具体的な処理の内容についても、後ほど詳細に説明する。
バッファ24は、制御部23の指示に従い、モデム21から入力されるデータを記憶する記憶手段である。インタフェース25は電気メータとの間でデータの入出力を行う。
次に、親機C0と子機C11〜C37の間で行われる指示データ及び検針データの送受信について、詳しく説明する。
図1(a)(b)に示すように、親機C0と各直接通信子機との通信には、第2の周波数帯F2を用いる。つまり、各直接通信子機は、第2のOFDM通信により、親機C0と指示データ及び検針データの送受信を行う。一方、リピータ子機とリピータ配下子機との通信には、第1の周波数帯F1を用いる。つまり、これらの子機は、第1のOFDM通信により、相互に指示データ及び検針データの送受信を行う。
図7の各図は、親機C0と各子機との間若しくは子機間で送受信される信号のフォーマットを示す図である。なお、これらの図に示しているのはネットワークレイヤより上位のレイヤに係る部分のみであって、同期信号など、ネットワークレイヤより低いレイヤに係る部分については示していない。以下、これらの図を参照しながら、親機C0と各子機との間及び子機間での信号の送受信について説明する。
まず、図7(a)は、親機C0が直接通信子機(リピータ子機を除く)に指示データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。パソコンから検針データ取得の指示を受けた親機C0は、指示データと、宛先アドレスとしての直接通信子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第2のOFDM通信により電力線B1〜B3上に送出する。各子機は電力線上を流れる信号のヘッダを監視しており、自機のアドレスが付加された信号が流れてきた場合に、その信号を受信する。
図7(b)は、直接通信子機(リピータ子機を除く)が親機C0に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(a)の信号を受信した各直接通信子機は、まず電気メータから検針データを取得する。そして、検針データと、宛先アドレスとしての親機C0のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第2のOFDM通信により電力線上に送出する。親機C0は電力線B1〜B3上を流れる信号のヘッダを監視しており、自機のアドレスが付加された信号が流れてきた場合に、その信号を受信する。以上の処理により、直接通信子機(リピータ子機を除く)からの検針データの取得が完了する。
次に、図7(c)は、親機C0がリピータ子機及びリピータ配下子機に指示データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。親機C0は、指示データと、宛先アドレスとしてのリピータ子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第2のOFDM通信により電力線B1〜B3上に送出する。
図7(d)は、リピータ子機が配下のリピータ配下子機に指示データを転送する際に用いる信号のフォーマットである。リピータ子機は、親機C0から受信した信号の宛先アドレス及び送信元アドレスを、それぞれリピータ配下子機のアドレス及び自機のアドレスで書き換え、第1のOFDM通信により電力線上に送出する。
図7(e)は、リピータ配下子機がリピータ子機に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(d)の信号を受信した各リピータ配下子機は、まず電気メータから検針データを取得する。また、受信した信号の送信元アドレスから、検針データの宛先アドレス(すなわち、リピータ子機のアドレス)を取得する。そして、検針データと、宛先アドレスとしてのリピータ子機のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第1のOFDM通信により電力線上に送出する。
図7(f)は、リピータ子機が親機C0に検針データを送信する際に用いる信号のフォーマットである。図7(c)の信号を受信したリピータ子機は、自機に接続されている電気メータから検針データを取得し、バッファ24(図5(b))に蓄積する。また、図7(e)に示した信号により、配下のリピータ配下子機からも検針データを取得し、バッファ24(図5(b))に蓄積する。そして、リピータ子機は、すべての検針データの取得が完了したら、蓄積された検針データと、宛先アドレスとしての親機C0のアドレスと、送信元としての自機のアドレスとを含む信号を生成し、第2のOFDM通信により電力線上に送出する。親機C0は、この信号を受信することにより、リピータ子機及びリピータ配下子機からの検針データの取得を完了する。
以上、親機C0と各子機との間及び子機間で行われる信号の送受信について説明した。次に、この信号送受信の具体的な手順について説明する。
図8は、親機C0と各子機との間及び子機間での通信ステップを示す模式図である。同図中の矢印は信号a〜fの送受信を示している。なお、信号a〜fは、図7(a)〜(f)に対応している。また、以下の説明で親機C0が信号を送信する順序は、子機の数などを考慮して、総通信ステップ数が最も少なくなるように予めプログラミングされたものである。
まず初めに、信号の同時送受信について説明しておく。信号a〜c,fの送受信には第2のOFDM通信が用いられ、信号d,eの送受信には第1のOFDM通信が用いられることから、信号a〜c,fと信号d,eとは、電力線B1〜B3上で同時に送受信することができる。また、各リピータ子機及びその配下のリピータ配下子機の間で送受信される信号は、機器間の距離が十分に離れているため、他のリピータ子機及びその配下のリピータ配下子機の間で送受信される信号とは干渉しない。したがって、各リピータ子機及びその配下のリピータ配下子機の間での信号の送受信は、各電力線上で互いに独立して同時に行うことが可能である。親機C0における上記プログラミングは、これらを考慮して行われる。
さて、図8に示すように、親機C0は、まず3つのリピータ子機C32,C23,C14を順次宛先として、信号c(指示データを含む信号)を送信する(ステップ1〜3)。この送信は第2のOFDM通信により行われる。
各リピータ子機C32,C23,C14は、親機C0から信号cを受信すると直ちに、配下のリピータ配下子機のうちのひとつを宛先として、信号d(指示データを含む信号)を第1のOFDM通信により送信する(ステップ2〜4)。信号dを受信したリピータ配下子機は直ちに検針データを取得し、リピータ子機に向けて信号e(検針データを含む信号)を第1のOFDM通信により返送する(ステップ3〜5)。各リピータ子機C32,C23,C14は、こうして受信した信号eに含まれる検針データをバッファ24に蓄積する。各リピータ子機C32,C23,C14は、以上の処理を配下のリピータ配下子機すべてについて繰り返す(リピータ子機C32についてはステップ2〜11。リピータ子機C23についてはステップ3〜10。リピータ子機C14についてはステップ4〜9。)。そして、すべての配下のリピータ配下子機の検針データが蓄積されたら、自機の検針データも含む信号fを生成し、親機C0に向けて第2のOFDM通信により送信する(ステップ10〜12)。
本実施の形態では各リピータ子機C32,C23,C14の配下にそれぞれ5つ,4つ,3つのリピータ配下子機があるので、親機C0がリピータ子機C14に向けて信号cを送信したステップ3の7ステップ後であるステップ10で、まずリピータ子機C14が信号fを親機C0に向けて第2のOFDM通信により送信する。次に、ステップ11,12で、リピータ子機C23,C32が順次、信号fを親機C0に向けて第2のOFDM通信により送信する。
ステップ4〜9でリピータ子機が上記処理を行っている間、親機C0は直接通信子機C11〜C13との間で第2のOFDM通信により信号a,bの送受信を行い、これらの子機から検針データを取得する。また、親機C0は、ステップ13以降で、残りの直接通信子機C21,C22,C31との間で第2のOFDM通信により信号a,bの送受信を行い、これらの子機から検針データを取得する。最終的に、ステップ18が完了した時点で、すべての子機からの検針データの取得が完了する。
次に、モデム21内の復調部38及び受信部37の具体的な構成について説明する。
まず、モデム21内の復調部38の内部構成について説明する。
図9は、復調部38の内部構成を示す図である。同図に示すように、復調部38の機能は同期検出部39と復調処理部40とに分けられ、同期検出部39は、第1の周波数帯F1のOFDM信号に対応するF1同期検出部70、第2の周波数帯F2のOFDM信号に対応するF2同期検出部71、115kHzの位相変調信号に対応する115kHz同期検出部72、及び132kHzの位相変調信号に対応する132kHz同期検出部73を有して構成される。
また、復調処理部40は、F1同期検出部70に直列接続されたスイッチ80及びF1復調処理部81と、F2同期検出部71に直列接続されたスイッチ82及びF2復調処理部83と、115kHz同期検出部72に直列接続されたスイッチ84及び115kHz復調処理部85と、132kHz同期検出部73に直列接続されたスイッチ86及び132kHz復調処理部87とを有して構成される。なお、F1復調処理部81は第1の周波数帯F1のOFDM信号を復調する機能を有し、F2復調処理部83は第2の周波数帯F2のOFDM信号を復調する機能を有し、115kHz復調処理部85は115kHzの位相変調信号を復調する機能を有し、132kHz復調処理部87は132kHzの位相変調信号を復調する機能を有する。
同期検出部39内の各同期検出部は、それぞれ対応する信号用の同期パターンを保持している。各同期検出部は、受信部37から入力される受信信号と、保持している同期パターンとの相関値を常時算出しており、算出された相関値が所定値を上回った場合に、対応する信号との同期を検出し、同期確立処理を行う。
制御部31は、いずれかの同期検出部で同期が検出されると、そのことに応じて、同期を検出した同期検出部に接続されているスイッチをオンとし、対応する復調部に復調を開始させる。つまり、F1同期検出部70が同期を検出した場合には、スイッチ80をオンとし、F1復調処理部81にOFDM変調方式による復調を開始させる。また、F2同期検出部71が同期を検出した場合には、スイッチ82をオンとし、F2復調処理部83にOFDM変調方式による復調を開始させる。また、115kHz同期検出部72が同期を検出した場合には、スイッチ84をオンとし、115kHz復調処理部85に位相変調方式による復調を開始させる。また、132kHz同期検出部73が同期を検出した場合には、スイッチ86をオンとし、132kHz復調処理部87に位相変調方式による復調を開始させる。
復調処理部40内の各復調処理部は、復調によって得られた信号を通信部33に出力する。
次に、受信部37について説明する。上述したように、受信部37は、F1モード及びF2モードという2つの通信モードを有している。電力線搬送通信システム1内の各子機では、これらの通信モードを切り替えることにより、第1及び第2の周波数帯F1,F2のうちの一方の周波数帯を用いて通信を行う際、干渉ノイズとなる他方の周波数帯を遮断している。以下では、初めに受信部37の内部構成について説明し、その後、制御部31による通信モード実現のための制御について説明する。
図10は、受信部37の内部構成を示す図である。同図に示すように、受信部37は第1及び第2の信号通路41,42、ローノイズアンプ(LNA)49、自動ゲイン制御部(AGC)50とを有している。なお、同図ではアナログ信号をデジタル信号に変換するための変換部は省略している。
第1の信号通路41は、電力線と復調部38との間に設置され、第1の周波数帯F1以外の周波数の信号を遮断する機能部である。具体的には、マルチプレクサ36より入力された信号から、第1の周波数帯F1に属する周波数成分のみを取り出して通過させるバンドパスフィルタ45を有している。また、第1の信号通路41には、第1のスイッチ手段44が設けられている。第1のスイッチ手段44は、制御部31の制御によって開閉する。
第2の信号通路42は、電力線と復調部38との間に設置され、第2の周波数帯F2以外の周波数の信号を遮断する機能部である。具体的には、マルチプレクサ36より入力された信号から、第2の周波数帯F2に属する周波数成分のみを取り出して通過させるバンドパスフィルタ47を有している。また、第2の信号通路42には、第2のスイッチ手段46が設けられている。第2のスイッチ手段46も、制御部31の制御によって開閉する。
ローノイズアンプ49は、第1及び第2の信号通路41,42から出力された信号を所定の増幅率で増幅し、自動ゲイン制御部50に出力する。自動ゲイン制御部50は増幅回路を内蔵しており、復調部38からのフィードバック信号に基づいて、復調部38に入力される信号の振幅が一定値となるよう、増幅回路の増幅率を制御する。
さて、制御部31による受信部37の通信モード制御について説明する。制御部31は、下記の表2に従って、第1及び第2のスイッチ手段44,46を制御することにより、F
1モード、F
2モードという2つの通信モードを実現する。
リピータ子機が呼び出し信号を待ち受ける場合、制御部31は、第1のスイッチ手段44をオン、第2のスイッチ手段46をオフとすることで、受信部37の通信モードをF1モードとする。F1モードでは第1の周波数帯F1に属する周波数成分のみが復調部38に入力されることになるので、第1の周波数帯F1の呼び出し信号はもちろん、115kHz又は132kHzの位相変調信号である呼び出し信号も好適に受信できるようになる。
リピータ子機や直接通信子機が親機C0との間で指示データや検針データの送受信を行う場合には、制御部31は、第1のスイッチ手段44をオフ、第2のスイッチ手段46をオンとすることで、受信部37の通信モードをF2モードとする。F2モードでは第2の周波数帯F2に属する周波数成分のみが復調部38に入力されることになるので、第2のOFDM通信による親機C0との通信を好適に行えることになる。
リピータ子機とリピータ配下子機との間で指示データや検針データの送受信を行う場合には、制御部31は、第1のスイッチ手段44をオン、第2のスイッチ手段46をオフとすることで、受信部37の通信モードをF1モードとする。F1モードでは第1の周波数帯F1に属する周波数成分のみが復調部38に入力されることになるので、第1のOFDM通信による他の子機との通信を好適に行えることになる。
次に、親機C0、子機C21(非リピータ子機)、子機C32(リピータ子機)、子機C37(リピータ配下子機)の間で行われる通信のシーケンスを例として参照しながら、制御部31の処理についてさらに詳しく説明する。
図11(a)は、上記シーケンスを示す図である。同図は、親機C0が子機C21及びC37から検針データを取得する場合のシーケンスを示している。なお、同図には、ネットワークレイヤより下位のレイヤのシーケンスを表示している。したがって、図8とは異なり、上述した応答信号(図11では「ACK」と表記している。)についても図の中に現れている。
図11(b)は、図11(a)に示す各信号の周波数帯と、リピータ子機C32の受信部37の通信モード設定(同図では「リピータ設定」と記す。)を示している。図11(b)の横軸は時間軸である。
初めに、図11(a)に示したシーケンスについて説明する。同図に示すように、親機C0は、リピータに対して呼び出し信号を送信する(ステップS1)。呼び出し信号を受信した子機C32は、親機C0に対してACKを送信する(ステップS2)。
親機C0は、ACKを受信したら、子機C37のデータを要求するための信号c(図7)を子機C32に対して送信する(ステップS3)。子機C32は、この信号cについても、親機C0に対するACKの送信を行う(ステップS4)。子機C32は、受信した信号cに基づいて信号dを生成し、子機C37に送信する(ステップS5)。子機C37は検針データを含む信号eを返信し(ステップS6)、子機C32は受信した信号eに基づいて信号fを生成して親機C0に送信する(ステップS7)。親機C0は、信号fを受信したら、子機C32に対してACKを送信する(ステップS8)。
次に、図11(b)を参照して、リピータ子機C32の受信部37の通信モード設定について説明する。同図に示すように、ステップS2でACKの送信を行うまでの間、リピータ子機C32の制御部31は受信部37をF1モードに設定する。これは、親機C0及び他の子機の両方からの呼び出しを待機するためである。一方、ステップS2でACKの送信を行った後には、制御部31は受信部37をF2モードに設定し、第2の周波数帯F2を用いる第2のOFDM通信によりステップS3〜S4の通信を行う。ステップS5で信号dの送信を行う際には、制御部31は受信部37をF1モードに設定し、第1の周波数帯F1を用いる第1のOFDM通信によりステップS5〜S6の通信を行う。そして、ステップS7の信号fの送信を行う際には、制御部31は受信部37をF2モードに戻し、第2の周波数帯F2を用いる第2のOFDM通信によりステップS7〜S8の通信を行う。ステップS8のACKの受信が完了したら、制御部31は受信部37をF1モードに戻し、呼び出し信号の待機を再開する。
なお、図11(a)(b)にも示しているように、子機C32と子機C37とが通信を行っている間、親機C0は、第2の周波数帯F2を用いる第1のOFDM通信により、子機C21から検針データの取得を行う(ステップS9〜S10)。このように、リピータ子機がリピータ配下子機と通信している間、親機C0が非リピータ子機と通信を行うのは、上述したように総通信ステップ数を低減するためである。
以上が、ネットワークの構築が完了した段階における電力線搬送通信システム1の構成及び動作である。ここから、このような電力線搬送通信システム1において、自動化された手順により簡便にネットワークの構築を行えるようにするための構成について、図5に示した制御部13及び制御部23内の各機能部の具体的な処理を明らかにしつつ、詳しく説明する。
初めに、図12は、非リピータ子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、子機C21を例として用いる。また、図13は、図12に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図12に示すように、まず初めに、子機C21の加入リクエスト送信部26−1が、加入リクエスト信号を送信する(ステップS10)。初期状態では子機C21の受信部37(図6)はF2モードとなっており、加入リクエスト信号は、図13に示すように第2のOFDM通信を用いて送信される。子機C21が加入リクエスト信号を送信するタイミングは、電源が投入されたときでもよいし、ネットワークに接続されたときでもよい。また、ユーザの指示により加入リクエスト信号を送信するようにしてもよい。
子機C21は親機C0との直接通信が可能な位置にある(図4参照)ため、加入リクエスト信号は親機C0によって受信される。加入リクエスト信号を受信した親機C0の登録部16は、第2のOFDM通信により、伝送路の状況を確認するための既知信号である確認信号の要求信号(第1の返信信号)を送信する(ステップS11)。
要求信号を受け取った子機C21の制御部23は、第2のOFDM通信により確認信号を送信する(ステップS12)。確認信号を受信した親機C0の制御部13は、確認信号の受信品質(データエラーの数や信号対ノイズ比(SNR)など)を解析して取得し(ステップS13)、一時的に記憶する。
次に、今度は親機C0の制御部13が、第2のOFDM通信により確認信号を送信する(ステップS14)。確認信号を受信した子機C21の制御部23は、確認信号の受信品質を解析して取得する(ステップS15)。そして、取得した受信結果を示す受信結果信号を、第2のOFDM通信により返送する(ステップS16)。
親機C0の選択部17は、ステップS13及びS16で取得した受信品質に応じて、子機C21をリピータ子機として選択するか否かを決定する。具体的には、取得した受信品質が所定の品質を下回っている場合にはリピータ子機として選択し、そうでない場合には選択しない。この選択基準は、親機C0からある程度以上距離が離れている子機(言い換えれば、親機C0と直接通信できない子機からの距離が比較的近い子機)のみを、リピータ子機として選択するために設けたものである。ここでは、子機C21に関して取得した受信品質が上記所定の品質を下回っていなかったとすると、親機C0の選択部17は、子機C21をリピータ子機として選択しないことを決定する。この決定を受け、登録部16は、子機C21を(リピータ子機でない)直接通信子機として、データベース19に登録する(ステップS17)。
ステップS17の処理が完了すると、子機設定部18は、子機C21に対して(リピータ子機でない)直接通信子機として機能するよう指示するための指示信号を送信する(ステップS18)。これを受けた子機C21の加入リクエスト送信部26−1は、データベース29に親機C0のアドレス情報を記憶する。これ以降、子機C21は、このアドレス情報を利用して親機C0との間で第2のOFDM通信による通信を行う。最後に、子機C21が親機C0に対して設定完了報告を行い(ステップS19)、子機C21をネットワークに組み込むための一連の処理が終了する。
なお、ステップS11〜S16の処理では、双方向の受信品質を取得するようにしている。これは、電力線搬送通信システムには家電製品などのノイズ源が存在することによるもので、リピータ子機として相応しくない子機(ノイズ源の存在により受信品質が劣化している子機)を誤ってリピータ子機として選択してしまわないようにするためである。
次に、図14は、リピータ子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、子機C32を例として用いる。また、図15は、図14に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図14に示すように、ステップS10からS16までの処理は、図12で説明したリピータ子機でない直接通信子機の場合と同じである。異なる点は、ステップS13及びS16で取得される受信品質が比較的良くない点である。これに伴い、ステップS20以降の処理も異なっている。
上述したように、親機C0の選択部17は、取得した受信品質が所定の品質を下回っている子機はリピータ子機として選択し、そうでない子機はリピータ子機として選択しない。ここでは、子機C32に関して取得した受信品質が上記所定の品質を下回っていたとすると、親機C0の選択部17は、子機C32をリピータ子機として選択することを決定する。この決定を受け、登録部16は、子機C32をリピータ子機として、データベース19に登録する(ステップS20)。
ステップS20の処理が完了すると、子機設定部18は、子機C32に対してリピータ子機として機能するよう指示するための指示信号を送信する(ステップS21)。これを受けた子機C32の加入リクエスト送信部26−1は、データベース29に親機C0のアドレス情報を記憶するとともに、リピータ子機であることを示すフラグを立てる。これ以降、子機C32は、リピータ子機として機能する。最後に、子機C32が親機C0に対して設定完了報告を行い(ステップS21)、子機C32をネットワークに組み込むための一連の処理が終了する。
次に、図16は、リピータ配下子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、子機C34を例として用いる。また、図17は、図16に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図16に示すように、まず初めに、子機C34の加入リクエスト送信部26−1が、加入リクエスト信号を第2のOFDM通信により送信する(ステップS30)。送信すること自体は図12や図14のステップS10と同様であるが、子機C34は親機C0との間でOFDM通信ができない位置にある(図4参照)ため、加入リクエスト信号は親機C0によって受信されず、子機C34は、親機C0からの要求信号(第1の返信信号)を受信できない。加入リクエスト送信部26−1は、予め決められた回数(例えば2回)にわたって加入リクエスト信号を送信した後、所定時間待っても要求信号(第1の返信信号)を受信できない場合、加入リクエスト信号の送信権を加入リクエスト送信部26−2に渡す。
送信権を受け取った加入リクエスト送信部26−2は、図17に示すように、位相変調通信を用いて加入リクエスト信号を送信する(ステップS32)とともに、受信部37(図6)のモードをF1モードに切り替える。上述したように、リピータ子機は待ち受け時にはF1モードとなっているので、ステップS32で送信された加入リクエスト信号はリピータ子機によって受信される。ここでは、リピータ子機としての子機C23及びC32によって受信されたとすると、子機C23及びC32それぞれの連絡信号送信部27が、伝送路の状況を確認するための既知信号である確認信号の要求信号(第2の返信信号)を、第1のOFDM通信により送信する(ステップS33,S38)。
要求信号を受信した子機C34の制御部23は、確認信号の受信品質を解析して取得し(ステップS34,S39)、一時的に記憶する。さらに、子機C34の制御部23は、第1のOFDM通信により確認信号を返送する(ステップS35,S40)。確認信号を受信した子機C23及びC32の制御部23は、確認信号の受信品質を解析して取得し(ステップS36,S41)、取得した受信結果を示す受信結果信号を、第1のOFDM通信により返送する(ステップS37,S42)。
子機C34の通知信号送信部27は、ステップS34,S36,S39,S41で取得した受信品質に応じて、1又は複数のリピータ子機(ここでは子機C23及びC32)の中から1つを選択し、そのリピータ子機の配下に入ることを決定する(ステップS43)。具体的には、受信品質を取得できた1又は複数のリピータ子機のうち、最も良い受信品質が得られるリピータ子機を選択する。そして、選択したリピータ子機(ここでは子機C32)に対して、配下となることを通知するための通知信号を第1のOFDM通信により送信する(ステップS44)。
通知信号を受信した子機C32の連絡信号送信部28は、データベース29に子機C34のアドレス情報を登録するとともに、子機C34に対しては許可信号を送信し(ステップS45)、親機C0に対しては子機C34を示す連絡信号を送信する(ステップS46)。この連絡信号を受信した親機C0の登録部16は、子機C34を子機C32の配下のリピータ配下子機としてデータベース19に登録する。また、許可信号を受信した子機C34の制御部23は、子機C32のアドレス情報をデータベース29に登録する。以上で、子機C34をネットワークに組み込むための一連の処理が終了し、以降、子機C34と親機C0との間の通信は、子機C32を介して行われる。
以上説明したように、本実施の形態による電力線搬送通信システム1によれば、子機の側から加入リクエスト信号を送信するので、親機C0にアドレス情報を予め登録しなくとも、ネットワークの構築が可能になる。したがって、自動化された手順により、簡便にネットワークの構築を行える。
次に、本発明の第2の実施の形態による電力線搬送通信システム1について説明する。第2の実施の形態による電力線搬送通信システム1は、ネットワーク構築を行う際に子機と親機との間でやり取りされる信号が一部異なる点で、第1の実施の形態による電力線搬送通信システム1と相違する。以下では、第1の実施の形態による電力線搬送通信システム1との相違点を中心に説明する。
図18(a)は、本実施の形態による親機C0の機能ブロックを示す図である。また、図18(b)は、本実施の形態による子機C11〜C37の機能ブロックを示す図である。これらの図に示すように、第2の実施の形態では、親機C0の制御部13内にブロードキャスト(BC)信号送信部60が追加されている。ブロードキャスト信号送信部60は、所定のブロードキャスト信号を定期送信する機能を有しており、各子機の加入リクエスト送信部26−1は、このブロードキャスト信号の受信又は未受信に応じた処理を行う。
また、本実施の形態では、各子機の受信部37(図6)は、上述したF1モード及びF2モードに加え、第1の周波数帯F1及び第2の周波数帯F2のいずれも遮断しない非遮断モードを有する。非遮断モードは、図10に示した第1及び第2のスイッチ手段44,46をともにオンとすることにより実現される。本実施の形態においては、初期状態での各子機の受信部37のモードは、この非遮断モードとなっている。
図19は、非リピータ子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、図12と同様、子機C21を例として用いる。また、図20は、図19に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図12のシーケンス図との違いは、親機C0のブロードキャスト信号送信部60が所定のブロードキャスト信号(ここではポーリング信号)を定期送信しており(ステップS50)、子機C21の加入リクエスト送信部26−1は、ブロードキャスト信号を受信した場合に加入リクエスト信号を送信する(ステップS10)点にある。加入リクエスト信号送信後には子機C21の受信部37のモードがF2モードに切り替えられ、その後、図12と同一のシーケンスにより処理が行われる。
ブロードキャスト信号は、図20に示すように、115kHzを用いる位相変調通信、132kHzを用いる位相変調通信、及び第2のOFDM通信の3通りの通信方法で送信される。この段階での子機C21は上述したように非遮断モードとなっているため、いずれの通信方法で送信されたブロードキャスト信号でも受信可能となっている。
ブロードキャスト信号の内容は、図12に示すようにポーリング信号であってもよいし、親機C0が送信したものであることを示す情報(親機C0のアドレス情報など)が含まれれば、特にポーリング信号でなくてもよい。例えば、親機C0が特定の子機(直接通信子機)に対して送信すべきデータを有している場合、そのデータを送信するためのデータ信号を、ブロードキャスト信号のうち第2のOFDM通信で送信する部分に充当してもよい。こうすることで、第2の周波数帯F2の効率的な使用が可能になる。
なお、ブロードキャスト信号の送信先アドレスは、必ずしもブロードキャストアドレスになっている必要はない。すなわち、上記のようにブロードキャスト信号のうち第2のOFDM通信で送信する部分をデータ信号で代用した場合、その送信先アドレスはデータ信号の送信先の子機となるが、このような信号も上記ブロードキャスト信号として取り扱うこととしてよい。
図21は、リピータ子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、図14と同様、子機C32を例として用いる。同図には、非リピータ子機C21も記載している。また、図22は、図21に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図14のシーケンス図との違いは、図19の場合と同様、親機C0のブロードキャスト信号送信部60が所定のブロードキャスト信号を定期送信しており(ステップS50,S51)、子機C32の加入リクエスト送信部26−1は、ブロードキャスト信号を受信した場合に加入リクエスト信号を送信する(ステップS10)点にある。加入リクエスト信号送信後には子機C32の受信部37のモードがF2モードに切り替えられ、その後、図14と同一のシーケンスにより処理が行われる。
図21及び図22には、ブロードキャスト信号の一部にデータ信号を充当する例を具体的に示している。この例では、ステップS41において親機C0のブロードキャスト信号送信部60が送信するブロードキャスト信号は、子機C21に宛てたデータ信号(第2のOFDM通信で送信される信号)のヘッダに所定の位相変調信号(ポーリング信号)を付加したものとなっている。
図23は、リピータ配下子機の加入手順を示すシーケンス図である。同図では、図16とは異なり、子機C36を例として用いる。子機C36は、図4に示したように、親機C0との間でOFDM通信も位相変調通信もできない場所に位置している子機である。同図には、非リピータ子機C21,C11、リピータ子機C23,C32も記載している。また、図24は、図23に示す各信号の周波数帯を示す図である。
図23の例でも、親機C0のブロードキャスト信号送信部60は所定のブロードキャスト信号を定期送信している(ステップS50,S51)。しかしながら、子機C36は、親機C0との間でOFDM通信も位相変調通信もできない場所に位置しているため、このブロードキャスト信号を受信できない。
子機C36の加入リクエスト送信部26−1は、ネットワークに接続した後、所定時間待っても親機C0からのブロードキャスト信号を受信できない場合、加入リクエスト信号の送信権を加入リクエスト送信部26−2に渡す。送信権を受け取った加入リクエスト送信部26−2は、図24に示すように、位相変調通信を用いて加入リクエスト信号を送信する(ステップS32)とともに、子機C36の受信部37のモードをF1モードに切り替える。その後は、図16と同一のシーケンスにより処理が行われる。
図23及び図24には、子機C36がリピータ子機との間で確認信号の送受信等を行っている間、親機C0と直接通信子機C21,C11とがデータ通信を行っている例を示している。図24にも示すように、親機C0と直接通信子機C21,C11の間の通信(ステップS53,S54)は第2の周波数帯F2を用いて行われ、子機C36とリピータ子機との間の通信(ステップS32〜S45)は第1の周波数帯F1を用いて行われる。したがって、これらは互いに干渉しないので、並行して行うことができる。
なお、図23では、ブロードキャスト信号を全く受信できない子機C36を例に挙げて説明したが、例えば子機C34のようにブロードキャスト信号のうち位相変調通信により送信された部分のみ受信できる子機(図4参照)がネットワークに加入しようとする場合もある。この場合、そのような子機の加入リクエスト送信部26−1は、位相変調通信で送信された部分を受信した後、所定時間にわたって第2のOFDM通信で送信された部分が受信されるのを待機するようにすればよい。その上で、第2のOFDM通信で送信された部分が受信されない場合に、加入リクエスト信号の送信権を加入リクエスト送信部26−2に渡すこととすればよい。
以上説明したように、本実施の形態による電力線搬送通信システム1によっても、子機の側から加入リクエスト信号を送信するので、親機C0にアドレス情報を予め登録しなくとも、ネットワークの構築が可能になる。したがって、自動化された手順により、簡便にネットワークの構築を行える。
ることを防止できる。
また、本実施の形態による電力線搬送通信システム1によれば、親機と通信できない位置にある子機が、受信され得ないにも関わらず親機に対して加入リクエスト信号を送信することを防止できる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。