本発明は、通信路として電力線を用いる通信端末装置及び通信方法に関する。
無線通信の分野では、基地局から発射されるビーコンを受信することにより、移動端末は基地局と通信できる範囲に入ったことを検知する。無線通信の分野でのビーコンは、基地局が用いる複数の変調方式の中で一番低速の変調方式で変調される。これは、一番低速の変調方式で変調することにより、基地局と通信できる範囲が最大限に拡大するからである。無線通信の場合、移動端末は移動することが前提であるため、移動により基地局と通信できる範囲から外れる確率が高い。基地局を用いた通信では、ビーコンを受信した全ての移動端末は必ず基地局を中継して通信を行うため、基地局と通信できる範囲から外れると通信不能となる。そのため、基地局は一番低速の変調方式でビーコンを変調し、基地局と通信できる範囲を最大限に拡大し、移動端末が移動により基地局と通信できる範囲から外れる確率を減らしている。
また、無線ネットワークにおいて、端末が中継を行うことにより、基地局を用いずに中継端末の特定範囲に存在する他の端末と中継端末との間でデータの通信を可能とするアドホックな無線ネットワークも存在する。このアドホックな無線ネットワークにおいては、端末同士が中継を行うことにより、基地局1つの場合に比べて広範囲な通信が可能となる。ただし、アドホックな無線ネットワークにおいては基地局を用いる通信と異なり、中継を行う端末が特定されない。そのため、ある2端末間でデータ通信をしようとした場合には、中継端末の特定範囲に存在する全ての他の端末に中継するのに適した端末を中継端末として特定する必要がある。
中継端末を特定するための制御情報の交換方式は、制御情報を周期的に交換するプロアクティブ方式(例えば、非特許文献1及び2を参照)と、制御情報の交換をデータ通信開始時に行うリアクティブ方式(例えば、非特許文献3及び4を参照)とに分類される。一般に、端末の移動速度が遅い場合にはプロアクティブ方式が有効であり、端末の移動速度が速い場合にはリアクティブ方式が有効であると言われている。
リクエスト・フォー・コメント3626:オプティマイズド・リンク・ステート・ルーティング・プロトコル(OLSR)「REQUEST FOR COMMENT 3626:Optimized Link State Routing Protocol(OLSR)」
リクエスト・フォー・コメント3684:トポロジー・ディセミネーション・ベースド・オン・リバース−パス・フォワーディング(TBRPF)「REQUEST FOR COMMENT 3684:Topology Dissemination Based on Reverse−Path Forwarding(TBRPF)」
リクエスト・フォー・コメント3561:アド・ホック・オン−デマンド・ディスタンス・ヴェクター(AODV)・ルーティング「REQUEST FOR COMMENT 3561:Ad hoc On−Demand Distance Vector (AODV) Routing」
リクエスト・フォー・コメント4728:ザ・ダイナミック・ソース・ルーティング・プロトコル(DSR)・フォー・モバイル・アド・ホック・ネットワーク・フォー・アイピーヴイ4「REQUEST FOR COMMENT 4728:The Dynamic Source Routing(DSR) Protocol for Mobile Ad Hoc Networks for IPv4」
しかし、上記の従来技術を通信路として電力線を用いる電力線通信に適用した場合、以下のような問題が生ずる。
上記の従来技術は無線通信で用いられることを前提としているため、基地局を用いた通信のビーコンと同じく一番低速の変調方式で中継端末からビーコンを送信している。これは、端末が移動した時に通信不能とならないためである。しかし、通信路として電力線を用いるPLC(Power Line Communication)端末は移動しない端末である。そのため、電力線通信のネットワークに存在する中継機が子機に対して送信する制御パケットは、中継機と通信できる範囲を最大限に拡大するために、中継機が用いる複数の変調方式の中で一番低速の変調方式で変調する必要性はない。むしろ、一番低速の変調方式で変調した制御パケットを送信すると、アドホックなネットワークでは制御パケットを出力する中継機が複数存在するので、制御パケットを送信するために消費される帯域がネットワーク全体として見れば増大し、本来送信したいデータを送信するための帯域が減少するという問題がある。
それ故に、本発明は、上記課題に鑑みて、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減して、本来送信したいデータの送信を確保できる通信端末装置及び通信方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットを依頼する依頼パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
第1の態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワークと接続された通信部と、ネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調して、ネットワークに送信する制御部とを備えたものである。
本態様によると、ネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調して、ネットワークに送信する。これにより、通信路の状態が変化したためにネットワーク上の端末と通信できる範囲から外れた等の場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を再開できる。
第2の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合には、起動時が含まれるものである。本態様によると、制御部は、起動時に依頼パケットを送信する。これにより、通信端末装置を新規にネットワークに取り付けた場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を開始できる。
第3の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部が、依頼パケットに応答した第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットを第1端末から受信するものである。
本態様によると、依頼パケットが届いた第1端末との間では、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットを受信することにより、第1端末を中心とした通信可能な範囲を必要最小限まで小さくできるので、他の端末の通信可能な範囲との重複部分を最小限にして、第1端末から制御パケットが届く範囲を最小限にできる。その結果、ネットワーク全体において制御パケットが重複する確率が減少し、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。
第4の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、第1端末から制御パケットを受信する期間に、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式と比較して通信速度が異なる変調方式で変調された制御パケットを第2端末から受信した場合、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替えるものである。
本態様によると、制御部は、第1端末から制御パケットを受信する期間に、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式と比較して通信速度が異なる変調方式で変調された制御パケットを第2端末から受信した場合、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える。これにより、通信速度がより遅い変調方式で制御パケットを変調する第2端末が存在する場合、第2端末の通信範囲は第1端末の通信範囲より広くなる。そのため、第2端末から制御パケットを受信できる端末が多くなり、より多くの端末が受信する制御パケットの送信元である第2端末を選択すれば、制御パケットの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、通信速度がより遅い変調方式で制御パケットを変調する第2端末が存在する場合、第2端末からの制御パケットの通信範囲の方が第1端末の制御パケットの通信範囲より狭くなる。そのため、より制御パケットの通信範囲が狭い第2端末を選択すれば、制御パケットの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
第5の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える際、第1端末に対して制御パケットの送信元の切替えを通知するものである。本態様によると、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える際、第1端末に対して制御パケットの送信元の切替えを通知することにより、制御パケットの送信元である第1端末は通知に基づいて制御パケットの送信を停止する等の処理を行うことができる。これにより、制御パケットの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
第6の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在する場合、この他の端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で制御パケットを変調して他の端末に送信するものである。
本態様によると、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在する場合、この他の端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で制御パケットを変調して他の端末に送信する。これにより、第1端末の通信範囲を他の端末を含む最小限の範囲に狭めることができるので、第2端末の通信範囲との重複を最小限に抑えて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
第7の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在しない場合、制御パケットの送信を停止するものである。
本態様によると、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在しない場合、制御パケットの送信を停止する。これにより、第1端末による制御パケットの通信範囲が消失するので、第2端末の通信範囲との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
第8の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、第2端末から制御パケットを受信してから所定期間制御パケットを受信しなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
本態様によると、第2端末から制御パケットを受信してから所定期間制御パケットを受信しなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調してネットワークに送信する。これにより、通信路の状態が変化したためにそれまで通信していた第2端末から制御パケットを受信できなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調するので、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を再開して、第2端末との通信が途絶えた通信端末装置をネットワークの中に再度組み入れることができる。
第9の態様の通信端末装置は、上記態様において、ネットワーク上の端末との通信経路に関する情報は、中継機を示す情報、中継機を介してどの経路を介して親機と接続できるかを示した経路情報、及び中継機を介してどの経路を介してネットワーク上の他の端末と接続できるかを示した経路情報の中の少なくともいずれか一つを含むものである。
第10の態様の通信端末装置は、上記態様において、ネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットであるものである。
本態様によると、通信速度が一番低い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットとして送信する。一方、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットとして送信する。これにより、ブロードキャストパケットについては、ネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調されることになり、通信速度を上げることができないシステムにおいても、制御パケットの通信速度を上げることができる。その結果、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を現在通信している端末との間で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第11の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットは、ブロードキャストパケットであるものである。
本態様により、制御パケットとしてブロードキャストパケットを用いた場合でも、このブロードキャストパケットを通信速度が一番低い変調方式で変調するのではなく、第1端末から送信される制御パケットの通信速度と第2端末から送信される制御パケットの通信速度とを変えるので、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を第2端末の通信範囲との関係で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第12の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットは、ブロードキャストパケットであるものである。
本態様によると、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調される制御パケットについてはユニキャストパケットとする。一方、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットについてはブロードキャストパケットとする。これにより、ブロードキャストパケットについてはネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調されることになり、通信速度を上げることができないシステムにおいても、第1端末から送信される制御パケットの通信速度を第2端末から送信される制御パケットの通信速度より速くできる。その結果、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を第2端末の通信範囲との関係で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第13の態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワークと接続された端末に対して端末との通信経路の設定に用いる制御パケットを送信する通信部と、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信する制御部とを備えたものである。
本態様によると、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信する。これにより、制御パケットの送信端末の方で受信端末が制御パケットを受信できない状態にあると判断し、制御パケットの通信可能な範囲を拡大して受信端末が制御パケットを受信できる態様で制御パケットを送信し直すので、制御パケットは受信端末に届き、受信端末との間での通信を再開できる。
第14の態様の通信端末装置は、上記態様において、通信部は、端末に対して制御パケットをユニキャストで送信し、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ブロードキャストで制御パケットを送信することで、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信するものである。
本態様によると、端末に対して制御パケットをユニキャストで送信し、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ブロードキャストで制御パケットを送信することにより、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを送信する。これにより、制御パケットの通信可能な範囲を拡大するので、制御パケットは受信端末に届き、受信端末との間での通信を再開できる。
第15の態様の通信端末装置は、上記態様において、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合は、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定回数受信しない場合を含むものである。本態様によると、端末から制御パケットに対応する応答を所定回数受信しない場合にも適用できる。
第16の態様の通信方法は、電力線通信のネットワークと接続された端末との間で通信経路の設定に用いる制御パケットネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
本態様によると、通信路の状態が変化したためにネットワーク上の端末と通信できる範囲から外れた等の場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を開始又は再開できる。
上記態様の通信端末装置によって、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減して、本来送信したいデータの送信を確保できる。
第1の実施形態に係る通信端末装置及び通信方法が用いられるネットワーク構成図である。
第1の実施形態で用いられる端末の詳細な構成を示す図である。
第1の実施形態に用いるパケットフォーマットを示す図である。
第1の実施形態におけるCPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図である。
第1の実施形態において新規端末参入前の状態を表すネットワーク構成図である。
第1の実施形態において新規端末参入前のビーコンツリーを表す図である。
第1の実施形態において新規端末参入後の状態を表すネットワーク構成図である。
第1の実施形態において新規端末参入後のビーコンツリーを表す図である。
第1の実施形態において変調方式変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第1の実施形態において変調方式変更後のビーコンツリーを表す図である。
第1の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第1の実施形態において中継端末変更後のビーコンツリーを表す図である。
第1の実施形態において図5から図12へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。
第1の実施形態における帯域利用効率を表した図である。
第1の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャートである。
第1の実施形態におけるビーコンの送信処理を示すフローチャートである。
第2の実施形態において雑音源参入前の状態を表すネットワーク構成図である。
第2の実施形態において雑音源参入前のビーコンツリーを表す図である。
第2の実施形態において雑音源参入後の状態を表すネットワーク構成図である。
第2の実施形態において雑音源参入後のビーコンツリーを表す図である。
第2の実施形態において変調方式変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第2の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第2の実施形態において中継端末変更後のビーコンツリーを表す図である。
第2の実施形態において中継端末離脱後の状態を表すネットワーク構成図である。
第2の実施形態において図17から図24へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。
第2の実施形態における帯域利用効率を表した図である。
第2の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャートである。
第2の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャートである。
第3の実施形態におけるCPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図である。
第3の実施形態において雑音源参入前の状態を表すネットワーク構成図である。
第3の実施形態において雑音源参入後の状態を表すネットワーク構成図である。
第3の実施形態において宛先アドレス変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第3の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図である。
第3の実施形態において図29から図32へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。
第3の実施形態における帯域利用効率を表した図である。
第3の実施形態におけるビーコンの送信処理を示すフローチャートである。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信端末装置及び通信方法が用いられるネットワーク構成を示す図である。このネットワークは、PLCのネットワークである。このネットワークのサービスエリア101は、ネットワーク内に存在する各端末のカバーエリアよりも大きいため、中継端末103〜107を介して相互の通信を行うアドホックネットワークを構成している。サービスエリア101内の全ての端末(受信端末108〜110を含む)は、送信端末102から周期的に送信される経路情報パケットを、中継端末103〜107を介して受信することにより、各端末間でどの端末を中継端末として選択し、通信を行えばよいかがわかる。なお、経路情報パケットは、ネットワーク上の端末間で通信経路の設定に用いる制御パケットであり、無線通信の分野でのビーコンに類似したものである。また、経路情報パケットには、各端末間でどの速度で通信可能かを示す情報が含まれているものとする。
図2は、各端末の詳細な構成を示した図である。図2において、各端末は、各種の制御プログラムやワークエリアを含むメモリ201、端末全体を制御するCPU202、及び電力線と接続され、かつ電力線を介して各種データを通信するネットワークインタフェース203から構成されている。各端末は、メモリ201に格納されているプログラムをCPU202で実行し、ネットワークインタフェース203を介してデータの送信を行い、ネットワークインタフェース203を介して受信したデータをCPU202で解読する。なお、CPU202は端末全体を制御するため制御部と、ネットワークインタフェース203は端末全体の通信を担当するため通信部と記すことができる。
図3は、本発明が適用されるアドホックネットワークにおいて用いられるパケットフォーマットを表している。このパケットフォーマットは、PHYヘッダ301、MACヘッダ302、及びペイロード303からなる。ペイロード303には、上位レイヤのヘッダも含まれる。PHYヘッダ301には、そのパケットの変調方式が記されているフィールド304がある。各端末は、PHYヘッダ301を読み取ることによって自身が受信可能なパケットか否かの判定を行う。MACヘッダ302には、送信元、宛先、中継元、及び中継先のアドレスを表すフィールドがある。この例では、送信端末102から送信される経路情報パケットには、送信元アドレス305として送信端末102のアドレスが設定され、宛先アドレス306としては全端末を示すff:ff:ff:ff:ff:ffが設定される。中継端末103〜107が経路情報パケットを中継する場合には、送信元アドレス305と宛先アドレス306とはそのままに、中継元アドレス307に中継端末103〜107のアドレスを設定し、中継先アドレス308にff:ff:ff:ff:ff:ffを設定する。
受信端末108〜110を含む各端末は、宛先アドレス306と中継先アドレス308とを見て、自端末と一致する又は自端末が含まれるアドレスであった場合に、ペイロード303の受信処理を開始する。ただし、変調方式が自身の受信可能な変調方式であった場合には、アドレスによらず受信することは可能である。本実施形態における経路情報パケットでは、中継先アドレス308をff:ff:ff:ff:ff:ffとし全端末が受信できるようにするが、変調方式としては特定の端末に合わせた変調方式を用いることとする。
図4は、CPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図である。図4において、受信処理部401は、変調方式が自端末の変調方式に適合した受信可能な全てのパケットを受信し、宛先アドレスから全ての端末に対して送信されたパケット(以下、「フラッディングパケット」という)か否かを識別し、受信したパケットがフラッディングパケットでない場合は中継すべきパケットとして変調方式決定部402に渡す。また、受信処理部401は、本発明で用いる各種制御パケットを受信し、必要なデータを利用効率判定部403又は制御パケット送信部404に出力する。
変調方式決定部402は、利用効率判定部403から入手した情報に基づいて、中継すべきパケットの変調方式を決定する。本実施形態では、経路情報などのデータの入った周期的に全端末に送信される経路情報パケット(以下、「ビーコン」という)の変調方式を、無線通信の分野でのビーコンと異なって、最低速度以外の変調で行う場合について説明する。最低速度以外の変調で行うことにより、ビーコンが消費する帯域を大幅に削減することが可能となる。
利用効率判定部403では、各中継端末103〜107がどの端末に向けてビーコンを送信しているか、どの端末が自端末からのビーコンの受信が可能かを記録し、アドホックネットワークの利用効率が最適になる変調方式及び中継端末を判定する。例えば、利用効率判定部403は、自端末から送信しているビーコンの変調方式を変更した方がよい場合には、変調方式決定部402へ最適な変調方式の変更を要請する。自端末より送信しているビーコンを停止した方がよい場合には、送信処理部405に送信の停止を要請する。自端末が受信しているビーコンの中継端末を変更した方がよい場合には、制御パケット送信部404に中継端末の変更を要請する。
制御パケット送信部404では、受信処理部401又は利用効率判定部403の要請に応じて各種制御パケットの送信を行う。例えば、制御パケット送信部404は、受信処理部401の要請に応じてビーコン要求パケット又はビーコン応答パケットを送信する。また、例えば、制御パケット送信部404は、利用効率判定部403の要請に応じて、確定パケット又は登録情報更新パケットを送信する。なお、ビーコン要求パケット、ビーコン応答パケット、確定パケット又は登録情報更新パケットの各々については、後述する。
送信処理部405では、制御パケット送信部404から渡された各種制御パケットの送信とビーコンパケットの送信とを行う。また、一般データの送信も送信処理部405にて行う。
以下、上記のように構成された本発明の通信端末装置について、図5〜図14を用いてその動作を説明する。
図5は、通信速度が最低速度の変調方式を用いて中継端末B502がビーコンを中継しており、通信速度が最低速度ではない変調方式を用いて中継端末C503がビーコンを中継している場合のネットワーク図である。一般に、ビーコンは通信速度が最低速度の変調方式を用いて広範囲に届くように中継されるが、本実施形態では状況に応じて、ビーコンは高速な変調方式を用いて中継される。これにより、アドホックネットワーク全体としてビーコンをフラッディングするのに消費する帯域を減らすことが可能となる。
図5において、端末A501は、ビーコンの送信端末であり、通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンを送信している。端末A501のカバーエリア506に存在する端末B502及び端末C503は、ビーコンの中継を行っている。端末B502は、端末D504に向けて中継しており、端末B−D間の距離が離れているため通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。端末C503は、端末E505に向けてビーコンを中継しており、端末C−E間の距離は近いため通信速度が高速な変調方式を用いている。具体的には、端末E505が端末C503のカバーエリア508に入る変調方式のうち最高速度のものを用いている。
このように、端末C503と端末E505との間では、その端末間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調されたビーコンを通信する。これにより、端末C503を中心とした通信可能なカバーエリア508を必要最小限まで小さくできる。そのため、端末B502の通信可能なカバーエリア507との重複部分を最小限にして、端末C503からビーコンが届く範囲を最小限にできる。その結果、ネットワーク全体においてビーコンが重複する確率が減少し、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。
図6は、図5の状態におけるビーコンツリーを表した図である。なお、本実施形態では、自端末がどの端末に向けてビーコンを送信しているか、自端末がどの端末にビーコンを中継してもらっているかを登録しているものとする。各端末は、この情報(以下、受信端末情報と記す)を更新することにより、ビーコンの送受信先を切り替える。ビーコンツリーとは、この受信端末情報に従った、ビーコンの送受信経路を表すツリー構造のことである。図6においては、端末B502及び端末C503は、端末A501からビーコンを受信する。端末D504は端末B502から、端末E505は端末C503からビーコンを受信する。
図7は、図5の状態に新たな端末F701が参入した時のネットワーク図である。端末F701は、端末A501,B502,及びC503のカバーエリアのいずれにも入っていないため、ネットワークに参入することが出来ない。その場合には、いずれかの端末にビーコンを中継をしてもらう必要がある。本実施形態では、端末F701は、ネットワークからビーコンを所定期間受信していないと端末F701内部の制御パケット送信部404が判断した場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。
これにより、端末F701がネットワーク上の他の端末と通信できるカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、端末F701は、その端末との間で通信を開始することが可能となる。
図8は、図7の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図8を参照して、端末F701は、ネットワークに新規参入したばかりなので、ビーコンツリーに入っておらず、ビーコンを受信できない。
図9は、端末F701が受信可能なように、端末C503が変調速度を低下させた場合のネットワーク図である。本実施形態では、端末F701から送信されたビーコン要求パケットを端末C503が受信する。図5及び図7で示すように、端末C503は、端末E505に対して通信速度が最低速度より高速の変調方式でビーコンを送信している。そこで、端末C503は、端末F701がビーコンを受信できるように、ビーコンを送信する変調方式を通信速度が低い変調方式に変更する。ビーコンを送信する変調方式をより通信速度が低い変調方式に変更した場合、端末C503のカバーエリア508は、カバーエリア901へと広くなる。そのため、端末C503は、端末F701をカバーエリア901内に入れることが出来る。
図10は、図9の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図10を参照して、端末F701がビーコンツリーに格納され、全ての端末がビーコンを受信できる状態となっている。
図11は、端末D504がビーコンの中継元を端末B502から端末C503に切り換えた場合のネットワーク図である。上述したように、端末D504は、端末C503がカバーエリア901を広げたことにより、端末B502及び端末C503の双方のカバーエリア507及び901に入っている(図9参照)。すなわち、端末D504は、端末B502及び端末C503の双方からビーコンを受信することになる。ここで、端末B502が端末D504へのビーコンの中継を中止すれば全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本実施形態では、端末D504は、端末B502からビーコンを受信する期間に、端末B502との間で用いられる通信速度より速い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末C503から受信した場合、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える。
これにより、通信速度がより速い変調方式によりビーコンを変調する端末C503が存在する場合、端末C503からのビーコンの通信範囲の方が狭いので、よりビーコンの通信範囲が狭い端末C503を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末D504の制御パケット送信部404は、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する(図11参照)。
このように、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末B502では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止することにより、端末B502によるビーコンの通信範囲(すなわち、カバーエリア507)が消失する。そのため、端末C503の通信範囲(すなわち、カバーエリア901)との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図12は、図11の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図12を参照して、端末D504が端末C503に接続し、端末B502は中継端末ではなく受信端末となっている。
図13は、図5から図12へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図13を参照して、端末B502は、ビーコン1301を端末D504へ中継している。ビーコンを受信できなかった端末F701は、ビーコン要求1304を周囲の端末へブロードキャストする。ここで、ブロードキャストとは、通信速度が最低速度の変調方式を用いて、且つ宛先アドレスとしてff:ff:ff:ff:ff:ffを用いて送信することを意味する。なお、端末F701がビーコン要求1304を送るタイミングは所定期間ビーコンを受信できなかった時でもよいし、端末起動時でもよい。
ビーコン要求1304を受信した端末C503は、CE(CHANNEL ESTIMATION)要求1305を端末F701に送信し、CE要求1305の応答として端末F701からCE応答1306を受信する。これにより、端末C503は、端末F701と通信可能な変調方式のうち最高速度ものを推定する。最高速度の変調方式が判明すると、端末C503内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して端末F701に対してその変調方式を用いてビーコン応答1307を返す。
ビーコン応答を受信した端末F701は、ビーコンの中継端末を端末C503に確定し、端末F701内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して端末C503に対してビーコンを中継してもらうための確定応答1308を送信する。ここでは、端末C503は、端末E505との間すでに通信をしているので(図7を参照)、端末E505と端末F701との間で共通して使用できる最高速度の変調方式を決定する。確定応答を受信した端末C503は、端末E505に加えて、端末F701をビーコン受信端末として登録し、双方が受信可能な最適変調方式でビーコン1302を送信する。
このように、端末F701は、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。これにより、端末F701がネットワーク上の他の端末と通信できるカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、端末F701は、その端末との間で通信を開始することが可能となる。
端末C503からのビーコン1302は低速な変調方式となったため、端末D504では、端末B502からのビーコン1302と端末C503からのビーコン1302との双方を受信可能となる。ここで、端末D504は、より高速な通信が可能な端末に中継元を切り替える。無線通信の分野のビーコンと異なって、どちらと高速な通信が可能であるかの情報は、ビーコンに経路情報として格納されているものとする。受信端末がある中継元からの中継を不要とした場合に、その中継元がビーコンの中継を停止してもよい。本実施形態では、より高速な変調方式で送信可能となるので、その中継元である端末B502からのビーコン中継を停止し、新しい中継元である端末C503からのビーコン中継を開始する。端末B502は、端末D504への中継を停止すると、他にビーコンを中継する端末が存在しないので、ビーコン中継を停止することが可能である。
このように、本第1の実施形態では、端末D504は、端末B502からビーコンを受信する期間に、端末B502との間で用いられる通信速度より速い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末C503から受信した場合、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える。通信速度がより速い変調方式によりビーコンを変調する端末C503が存在する場合、端末C503からのビーコンの通信範囲の方が狭いので、よりビーコンの通信範囲が狭い端末C503を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末D504内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して、端末B502へ登録情報更新パケット1309を送信して中継停止を要請し、端末C503へ登録情報更新パケット1310を送信して中継開始を要請する。その結果、ビーコン1303は、端末C503から端末D504及び端末F701の双方へ送信されることになる。なお、端末C503からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末D504に届いている。端末D504が端末C503へ登録情報更新パケット1310を送信して中継開始を要請するのは、端末D504が端末C503からのビーコンを受信している端末であることを端末C503に知らせるためである。
このように、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末D504の制御パケット送信部404は、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えのために登録情報更新パケット1309を送信する。端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しないので、ビーコンの送信を停止する。
また、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末B502は、登録情報更新パケット1309に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
さらに、端末B502がビーコンの送信を停止した場合、端末B502によるビーコンのカバーエリア507が消失する。これにより、端末C503のカバーエリア901との重複が無くなり(図11を参照)、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図14は、第1の実施形態において、各種状態における全ネットワークでのビーコンの消費する帯域を時間で表した図である。全ての送信に通信速度が最低速度の変調方式を用いた場合には、非常に多くの時間がかかり、本来のデータ通信が可能な時間を圧迫する(図14(a))。高速通信が可能な端末に対しては、高速な変調方式を用いることで(図5を参照)、ある程度の消費帯域削減効果が得られる(図14(b))。さらに、中継端末を選択する動作を組み合わせることにより(図11を参照)、消費帯域のさらなる削減を実現することが可能となる(図14(c))。
図15は、各端末におけるビーコンの受信処理を説明するフローチャートである。図15を参照して、各端末は、一定時間ビーコン受信がなかった場合又は端末起動時に(ステップS1501)、通信速度が最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを、ネットワークを介して周囲の端末に送信する(ステップS1502)。各端末は、いずれかの端末からビーコン応答パケットを受信した場合には、その端末に向けて確定応答パケットを送信する(ステップS1503)。ビーコン応答パケットを受信できかなかった場合には、ビーコン要求パケットを再送信する。ビーコン応答パケットを複数の端末から受信した場合(ステップS1504)には、それらの端末の中から最も高速な変調方式で通信可能な端末を選択し(ステップS1505)、その端末に確定応答パケットを送信する(ステップS1506)。
これにより、各端末がネットワーク上の他の端末のカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、各端末は、その端末との間で通信を再開又は開始することが可能となる。
一方、各端末は、ビーコンを受信した場合には(ステップS1511)、変調方式が自端末に適合してペイロードを受信できるか否かを確認する(ステップS1512)。ペイロードの受信ができない場合は、ステップS1501の処理に戻る。ペイロードの受信が可能な場合は、ビーコンの送信元が、現在の中継端末と一致したら通常のビーコン受信処理に戻る。ビーコンの送信元が、現在の中継端末と不一致の場合には(ステップS1513)、現在の中継端末と、ビーコンの送信元の端末とのどちらが全体の消費帯域が少ないかを判断する(ステップS1514)。
具体的には、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度と、現在の中継端末が用いる通信速度とを比較して、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度が、現在の中継端末が用いる通信速度より速い変調方式によりビーコンを変調する場合、ビーコンの送信元の端末によるビーコンの通信範囲の方が狭くなる。このような場合、現在の中継端末の代わりに、ビーコンの送信元の端末を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共に、ネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。この場合には、現在の中継端末より、ビーコンの送信元の端末に中継してもらった方が全体の消費帯域が少ないと判断できるので、現在の中継端末に、登録情報更新パケットを送信し、中継停止を要請する(ステップS1515)。それと同時に、ビーコンの送信元の端末に新しい中継端末になってもらうように、登録情報更新パケットを送信し、中継開始を要請する(ステップS1516)。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。なお、上記判断は、ビーコンに含まれる経路情報に基づいて行ってもよい。
図16は、各端末におけるビーコン送信処理を説明するフローチャートである。図16を参照して、各端末は、ビーコン要求パケットを受信した場合には(ステップS1601)、ビーコン要求パケットの送信元に対する最適な変調方式を選択する(ステップS1602)。経路情報又は過去の通信履歴から最適な変調方式がわかっていた場合には、その変調方式を用いてビーコン応答パケットを送信する(ステップS1603)。最適な変調方式がわからなかった場合には、CE要求とCE応答とを用いて最適な変調方式を調べるものとする。各端末は、ビーコン応答パケットを送信した端末から確定応答パケットを受信した場合には(ステップS1604)、受信端末情報を更新する(ステップS1605)。受信端末情報から全ての端末が受信可能な変調方式のうち、最高速なものを最適な変調方式として選択する。その後、ビーコンの中継処理を開始する(ステップS1607)。
登録情報更新パケットのうち中継開始を指示するものを受信した場合には(ステップS1611)、受信端末情報を更新し(ステップS1612)、受信端末情報から全ての端末が受信可能な変調方式のうち、最高速なものを最適な変調方式として選択する(ステップS1613)。その後、ビーコンの中継処理を開始する(ステップS1607)。
登録情報更新パケットのうち中継停止を指示するものを受信した場合には(ステップS1621)、受信端末情報を更新したのち(ステップS1622)、中継停止の指示を送信した端末の他に、ビーコンを送信する端末の数を判定する(ステップS1623)。端末数がゼロになった場合には、ビーコンの中継処理を停止する(ステップS1625)。これにより、本端末によるビーコンの通信範囲が消失する。そのため、ビーコンの送信主体の数を削減して他の端末の通信範囲との重複を無くすことができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止でき、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。一方、他の受信端末が残っている場合には、登録された受信端末情報より最適な変調方式を選択し、ビーコン中継処理を継続する(ステップS1624)。
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、ネットワークへの端末の新規参入時の動作について説明した。端末が移動しないPLCネットワークにおいて、状態の変化が発生するのはPLC端末を新たにPLCネットワークに接続した場合又はPLC端末をPLCネットワークから外した場合の他には、掃除機等の家電機器をPLCネットワークに接続した場合又はPLCネットワークに接続された電子レンジ等の家電機器をON/OFFした場合に雑音源が発生することによって、ネットワークの状況が変化する場合がある。本第2の実施態様では、家電機器の接続等により雑音源が発生した場合における動作について説明する。
図17は、雑音源が発生する前のネットワーク図である。図17を参照して、端末A1701は、ビーコンの送信端末であり、通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンを送信している。端末A1701の通信可能なカバーエリア1707に存在する端末B1702及び端末C1703は、ビーコンの中継を行っている。端末B1702は、端末D1704及び端末F1706に向けてビーコンを中継しており、端末D1704及び端末F1706の双方が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。端末C1703は、端末E1705に向けて中継しており、端末E1705が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコン中継を行っている。
図18は、図17の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図18を参照して、端末B1702及び端末C1703は、端末A1701からビーコンを受信する。端末D1704及び端末F1706は、端末B1702からビーコンを受信する。また、端末E1705は、端末C1703からビーコンを受信する。
図19は、図17の状態に雑音源1901が参入してきた場合のネットワーク図である。雑音源1901が参入した場合とは、例えば掃除機等の家電機器をPLCネットワークに接続した場合又はPLCネットワークに接続された電子レンジ等の家電機器をON/OFFした場合等をいう。雑音源1901が参入してきた場合には、その周囲のエリアのパケットロス率が飛躍的に上がる。そのロスエリア1902は、通信速度が高速な変調方式を用いている端末に対しては広く、通信速度が低速な変調方式を用いている端末に対しては狭くなる。そのため、通信速度が高速な変調方式を用いている端末B1702に対してロスエリア1902は広くなり、端末F1706はロスエリア1902に含まれる。すなわち、端末F1706は、端末B1702のカバーエリア1708に含まれているにもかかわらず、ビーコンを受信できないという状態が発生する。
本第2の実施形態では、端末F1706は、ネットワークからビーコンを所定期間受信しないので、今までビーコンを送信していた端末B1702に対して、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。これにより、端末F1706が端末B1702のカバーエリア1708内に存在する場合であっても、端末B1702からビーコンを受信できない場合に、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットが端末B1702に届き、端末F1706は、端末B1702との間で通信を再開することが可能となる。
図20は、図19の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図20を参照して、端末F1706は、端末B1702のカバーエリア1708から見れば端末B1702からビーコンを受信することになっているが、実際には受信できないという状況が発生する。
図21は、雑音源1901の参入により端末B1702が低速な変調方式に切替えてビーコンの送信を始めた場合のネットワーク図である。本第2の実施形態では、端末F1706から送信されたビーコン要求パケットを端末B1702が受信する。そこで、端末B1702は、端末F1706がビーコンを受信できるように、ビーコンを送信する変調方式を通信速度が低い変調方式に変更する。ビーコンを送信する変調方式をより通信速度が低い変調方式に変更した場合、端末B1702のカバーエリア1708はカバーエリア2101へと広くなる。
このように、通信速度が低速な変調方式を用いた場合には、パケットロスの発生するエリアが狭くなる。その結果、端末B1702は、端末F1706をカバーエリア2101内に入れることが出来き、端末F1706が端末B1702からのビーコンを受信することができるようになる。ビーコンツリーとしては図20から図18の状態に戻る。
図22は、端末B1702が低速な変調方式に切替えて送信を始めたことにより、端末E1705がビーコンの中継元を端末C1703から端末B1702に切替えた場合のネットワーク図である。
すなわち、端末E1705は、端末B1702がカバーエリア2101を広げたことにより、端末B1702及び端末C1703の双方のカバーエリア2101及び1709に属する。そのため、端末E1705は、端末B1702及び端末C1703の双方からビーコンを受信することになる。ここで、端末C1703が端末E1705へのビーコンの中継を中止すれば全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本第2の実施形態では、端末E1705は、端末C1703からビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコンを変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア2101は、端末C1703のカバーエリア1709より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア1709が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア2101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図23は、図22の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図23を参照して、端末C1703は、受信のみを行う端末となり、端末B1702は、端末D1704、端末E1705、及び端末F1706に向けてビーコンを送信している。
図24は、図22の状態から雑音源1901が離脱した場合のネットワーク図である。図24を参照して、雑音源1901が離脱した場合でも、端末E1705及び端末F1706は、端末B1702からビーコンを継続して受信する。なお、端末E1705がビーコンの送信元を端末B1702から端末C1703に切替えれば、端末E1705においては変調方式を高速なものに切替えることが可能となる。この場合、ビーコンに、端末E1705−端末C1703間の経路情報及び端末E1705−端末B1702間の経路情報を含ませ、端末E1705がこの経路情報に基づいて判断するようにしてもよい。
図25は、図17から図24へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図25を参照して、端末E1705は、端末C1703からビーコン2501を受信しており、端末F1706は、端末B1702からビーコン2501を受信している。雑音源が参入したことにより、端末F1702は、端末B1702から送信されているビーコン2502を受信できない。端末F1706は、所定期間ビーコンを受信しないので、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求2511を送信する。これにより、端末F1706が端末B1702のカバーエリア1708内に存在する場合であっても、端末B1702からビーコンを受信できない場合に、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求2511の通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求2511は端末B1702に届き、端末F1706は、端末B1702との間で通信を再開することが可能となる。
ビーコン要求2511を受信した端末B1702は、CE要求2512を端末F1706に送信し、その応答としてCE応答2513を端末F1706から受信することにより、雑音源があった場合での最適な変調方式を選択する。端末B1702は、最適な変調方式にてビーコン応答2514を返す。端末F1706は、ビーコン応答2514が受信できた場合、確定応答2515を返信する。ここでは、端末B1702は、端末D1704との間すでに通信をしているので(図19を参照)、端末D1704及び端末F1706との間で共通して使用できる最高速度を決定する。確定応答を受信した端末B1702は、端末F1706をビーコン受信端末として再登録し、端末D1704をも含めて双方が受信可能な最適変調方式でビーコン1302を送信する。
なお、ビーコン応答以下の動作は省略し、ビーコン自体の変調方式を変更してもよい。その場合に、ビーコンがロスするとビーコン要求を再び送信することになる。
変調方式を変更した端末B1702からのビーコンは、端末F1706にロスせず届くようになる。この場合、端末E1705は、端末B1702及び端末C1703の双方からビーコン2503を受信するようになる。本第2の実施形態では、端末E1705が端末C1703からビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコンを変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア2101は、端末C1703のカバーエリア1709より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末E1705は、端末B1702を選択するために、端末C1703に向けて登録情報更新パケット2516を送信し、ビーコン中継の停止を要求する。端末C1703では、更新パケット2516を受信した場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末B502によるビーコンのカバーエリア1709が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア2101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
端末E1705は、端末B1702に向けて登録情報の更新パケット2517を送信し、ビーコン中継の開始を要求する。これにより、端末E1705は、ビーコン2504を端末B1702からのみ受信するようになる。なお、端末B1702からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末E1705に届いている。端末E1705が端末B1702へ登録情報更新パケット2517を送信して中継開始を要請するのは、端末E1705が端末B1702からのビーコンを受信している端末であることを端末B1702に知らせるためである。
図26は、第2の実施形態における、各種状態におけるネットワーク全体でのビーコンパケットの消費する帯域を時間で表した図である。雑音が無い場合においては、高速な変調を用いることによって、消費する帯域をおさえることが可能となっている(図26(a))。雑音が発生した場合には低速な変調を用いざるを得ないため、一時的に帯域消費が多くなっている(図26(b))。低速な変調を用いた場合には受信できる可能性のある端末数が増加するが、第2の実施形態のように、中継先の端末を選ぶことによって高速な変調を用いた場合と同様な効果を得られる(図26(c))。
図27Aは、第2の実施態様における各端末のビーコンの受信処理を説明したフローチャートである。なお、本第2の実施形態における各端末におけるビーコン送信処理は、図16で説明した第1の実施形態の処理と同様であるので、省略する。
図27Aを参照して、雑音によるパケットロスが発生していることを検知した各端末は、最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを送信する(ステップS2701、S2702)。ここでは各端末は、所定期間ビーコンを受信しなくなったことにより、雑音によるパケットロスが発生したと判断する。なお、中継端末が最低速度でない変調方式でビーコン中継を行っていた場合には、中継端末のアドレスを宛先としてビーコン要求パケットをユニキャスト送信すればよい。それに対して中継端末からビーコン応答パケットを受信できた場合には(ステップS2703)、受信可能になったとして、確定応答パケットを中継端末に対して送り(ステップS2704)、引き続きその中継端末にビーコンを中継してもらえばよい。ビーコン応答パケットを受信できなかった場合でも、中継端末から次のビーコンが受信可能となった場合には、その中継端末からのビーコンの中継を継続する。中継端末から次のビーコンを受信できない場合は、ビーコン要求パケットを再送信する。
一方、各端末は、ビーコンを受信した場合には(ステップS2711)、変調方式が自端末に適合してペイロードを受信できるか否かを確認する(ステップS2712)。ペイロードの受信ができない場合は、ステップS2701の処理に戻る。ペイロードの受信が可能な場合は、ビーコンの送信元が、現在の中継端末と一致したら通常のビーコン受信処理に戻る。ビーコンの送信元が、現在の中継端末と不一致の場合には(ステップS2713)、現在の中継端末と、ビーコンの送信元の端末とのどちらが全体の消費帯域が少ないかを判断する(ステップS2714)。
ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度と、現在の中継端末が用いる通信速度とを比較して、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度が、現在の中継端末が用いる通信速度より速い変調方式によりビーコンを変調する場合、ビーコンの送信元の端末によるビーコンの通信範囲の方が狭くなる。このような場合、現在の中継端末の代わりにビーコンの送信元の端末を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共に、ネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。この場合には、現在の中継端末より、ビーコンの送信元の端末に中継してもらった方が全体の消費帯域が少ないと判断できるので、現在の中継端末に、登録情報更新パケットを送信し、中継停止を要請する(ステップS2715)。それと同時に、ビーコンの送信元の端末に新しい中継端末になってもらうように、登録情報更新パケットを送信し、中継開始を要請する(ステップS2716)。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。なお、上記判断は、ビーコンに含まれる経路情報に基づいて行ってもよい。
また、第2の実施形態における各端末のビーコン受信処理は、図27Aに示す以外にも、図27Bに示す動作を行うことも可能である。図27Bは、第2の実施態様における各端末のビーコンの受信処理を説明したフローチャートである。なお、本第2の実施形態における各端末におけるビーコン送信処理は、図16で説明した第1の実施形態の処理と同様であるので、省略する。
図27Bを参照して、各端末は、雑音によるパケットロスが発生しているか否かを判定する(ステップS2701)。各端末は、雑音によるパケットロスが発生していると判定した場合は、他の端末からビーコンを受信したか否かを判定する(ステップS2711)。他の端末からビーコンを受信していないことを検知した各端末は、最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを送信する(ステップS2702)。以降の動作は、図27Aを用いて説明したものと同様であるので、説明を省略する。
(第3の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、中継先アドレスをff:ff:ff:ff:ff:ffとし、変調方式としては特定の端末に合わせた変調方式を用いる場合について説明した。この方式は、変調方式として低速から高速まで数段階にわかれており、自分の受信可能な変調より低速な変調方式は、全て受信できる場合に有効である。しかし、適応変調方式(OFDMにおけるサブキャリア毎に変調方式を変更するような方式)を用いた場合には、特定の2端末間に特化された変調方式となるため、非常に高速な通信が可能となる。従って、複数の端末に受信可能な変調方式で通信するよりも、特定の2端末間に特化する方がより帯域消費が少ない可能性がある。
そこで、本第3の実施形態では、中継先アドレスをff:ff:ff:ff:ff:ffとし、変調方式としては通信速度が一番低い変調方式を用いる送信方法と(以下、「ブロードキャスト」という)と、中継先アドレスを特定端末のアドレスとし、変調方式としては中継元と中継先間で通信速度が一番高い変調方式を用いる送信方法(以下、「ユニキャスト」という)と、を併用して帯域消費を下げる場合の動作について説明する。なお、ユニキャストは受信端末より送信端末へデータが正常に受信完了したことを通知する肯定応答(Acknowledgement:以下、「ACK」という)が返されるものとし、再送を繰り返してもACKが返ってこない場合にパケットロスが発生したことがわかる。
図28は、本第3の実施形態における各機能を説明する機能ブロック図である。基本的には、第1の実施形態の図4と同じである。第1の実施形態と異なる点は、図4では変調方式決定部402を備えていたが、図28ではその代わりに中継先アドレス決定部2802を設けた点である。図28において、中継先アドレス決定部2802は、利用効率判定部403から出力されたデータをもとに、中継先アドレスを決定する。変調方式は、中継先のアドレスが決定されると自動的に決定されるものとする。なお、中継先アドレス決定部2802は、第1の実施形態の変調方式決定部402と組み合わせて使用してもよい。
図29は、雑音源が発生する前のネットワーク図である。図29を参照して、端末A1701は、ビーコンの送信端末であり、ブロードキャストを用いてビーコンを送信している。端末A1701の通信可能なカバーエリア2901に存在する端末B1702及び端末C1703は、ユニキャストを用いてビーコンの中継を行っている。端末B1702は、端末D1704及び端末F1706に向けてビーコンを中継している。端末B1702は、端末D1704には、端末D1704が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。また、端末F1706に対しても同様である。端末C1703は、端末E1705に向けてビーコンを中継しており、端末E1705が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。
図30は、第2の実施形態における図19と同様に、図29の状態に雑音源1901が参入してきた場合のネットワーク図である。図30を参照して、端末B1702がビーコンをユニキャストで端末F1706に送信した場合であって、端末F1706からACKが返ってこなかった場合に、端末B1702による端末F1706へのビーコンの再送が行われる。さらに、ユニキャスト送信が送信先の端末に到達しない(複数回の送信を行ったがACKが返ってこない)場合には、端末B1702は、CE要求とCE応答とにより最適な変調速度を再決定する。端末D1704及び端末F1706に送信するためのユニキャストの帯域消費の合計がブロードキャストの帯域消費より大きい場合には、端末B1702は、端末D1704及び端末F1706へのビーコンの送信方式をブロードキャストに変更する。
なお、本第3の実施形態では、ユニキャストによるビーコンの送信を複数回行ったがACKが返ってこない場合には、CE要求とCE応答とにより最適な変調速度を再決定するが、これに限られるものではなく、ユニキャストによるビーコンの送信に対するACKが所定期間返ってこない場合に上記再決定を行ってもよい。また、新規端末が参入した場合も同様の処理を行うことができる。すなわち、端末B1702が、端末D1704、端末F1706、及び新規端末を含めた3つの端末にビーコンをユニキャストで送信するよりもブロードキャストで送信した場合の方が、帯域消費が少ない場合も同様である。
図31は、端末B1702がビーコン送信方式をブロードキャストに変更した場合のネットワーク図である。図31を参照して、端末B1702がブロードキャストにビーコンの送信方式を変更すると、変調方式としては通信速度が一番低い変調方式を用いるため、端末B1702のカバーエリア2902は、カバーエリア3101へと広くなる。
このように、端末B1702は、端末F1706に対しビーコンをユニキャストで送信し、端末F1706からビーコンに対応するACKを所定回数又は所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でブロードキャストによりビーコンを端末F1706に対して送信する。これにより、ビーコンの送信端末B1702の方で受信端末F1706がビーコンを受信できない状態にあると判断し、ビーコンの通信可能な範囲を拡大して受信端末F1706がビーコンを受信できる態様でビーコンを送信し直す。そのため、ビーコンは受信端末F1706に届き、端末B1702は、受信端末F1706との間での通信を再開できる。
図32は、端末B1702がブロードキャストに切替えて送信を始めたことにより、端末E1705がビーコンの中継元を端末C1703から端末B1702に切替えた場合のネットワーク図である。図32を参照して、端末B1702のカバーエリア2902がカバーエリア3101へと拡大したことにより、端末E1705は、端末B1702のカバーエリア3101及び端末C1703のカバーエリア2903の双方に含まれる。そのため、端末E1705は、端末B1702からブロードキャストでビーコンを受信すると共に、端末C1703からユニキャストでビーコンを受信することになる。ここで、端末C1703が端末E1705へのユニキャストによるビーコンの中継を中止すれば、全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本第3の実施形態では、端末E1705は、端末C1703からユニキャストにてビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式により、例えばブロードキャストでビーコンを送信する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア3101は端末C1703のカバーエリア2903より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がユニキャストによるビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア2903が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア3101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
なお、この処理は実施の形態2と同様である。
図33は、図29から図32へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図33を参照して、ビーコン3301は、端末B1702から端末D1704及び端末F1706へとユニキャストで送信され、また、端末C1703から端末E1705へとユニキャストで送信されている。ユニキャストで送信されたパケット3311、3313、及び3351に対してはそれぞれACK3312、3314、及び3352が返ってきており、正常に送信が完了されている。
次に、ビーコン3302も端末B1702から端末D1704及び端末F1706へとユニキャストで送信され、また、端末C1703から端末E1705へとユニキャストで送信されている。ここで、パケット3315とパケット3353とに対しては、ACK3316とACK3354とが返信されており、正常に送信が完了されている。しかし、パケット3317に対しては、ACKが返信されていない。そのため、パケット3318及びパケット3319が再送されている。それでもACKパケットを受信できない場合、端末B1702は、その変調方式でパケットを伝達できないと判断する。
本第3の実施形態では、雑音源1901が発生している。ネットワークの状態の変化を検知した端末B1702は、CE要求3320とCE応答3321とを端末F1706との間でやり取りして、その状態で伝達可能な最も速度の速い変調方式を調査する。端末B1702は、その結果を用いて、ユニキャストを複数用いてビーコンを送信した方がよいのか、ブロードキャストを用いてビーコンを送信した方が良いのかを判定する。ブロードキャストを用いてビーコンを送信した方が良いと判断した端末B1702は、ビーコン3303をブロードキャストで送信する。なお、ビーコン3302は、端末C1703から端末E1705へとユニキャストを用いてパケット3353により送信される。これに対して、端末E1705から端末C1703へとACKパケット3354が返信されている。
次に、ビーコン3303を端末B1702がブロードキャスト送信したパケット3322は、端末D1704及び端末F1706だけではなく、端末E1705でも受信される。また、端末E1705は、端末C1703からビーコン3303をユニキャストしたパケット3355も受信している。端末E1705は、第2の実施形態と同様の方法によって、端末B1702からの受信に切り換える。すなわち、端末E1705は、端末C1703からビーコン3303のパケット3355をユニキャストで受信し、端末C1703へACKパケット3356を返信している期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコン3303のパケット3322を、例えばブロードキャストで端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコン3303のパケット3322を変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア3101は、端末C1703のカバーエリア2903より広い。そのため、端末B1702からビーコン3303のパケット3322を受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコン3303のパケット3322の送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末E1705は、端末C1703に向けて登録情報更新パケット3358を送信し、ビーコン中継の開始を要求する。これにより、端末E1705は、ビーコン3304のパケット3323及びビーコン3305のパケット3324を端末B1702からのみ受信するようになる。なお、端末B1702からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末E1705に届いている。端末E1705が端末B1702へ登録情報更新パケット3358を送信して中継開始を要請するのは、端末E1705が端末B1702からのビーコンを受信している端末であることを端末B1702に知らせるためである。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを登録情報更新パケット3357にて通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコン3303の送信を停止する。
その後、端末B1702からブロードキャストにて送信されるビーコン3304のパケット3323及びビーコン3305のパケット3324は、端末D1704、端末E1705、及び端末F1705に届くことになる。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア2903が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア3101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図34は、第3の実施形態における各種状態における全ネットワークでのビーコンパケットの消費する帯域を時間で表した図である。雑音が無い場合においては、各端末間で最高速な変調を用いてユニキャストすることにより、消費する帯域をおさえることが可能となっている(図34(a))。雑音が発生した場合には低速な変調を用いてユニキャストを行うことも可能であるが(図34(b))、本第3の実施形態では、ブロードキャストを用いて受信可能な端末数を増やす方が効率がよくなる(図34(c))。
図35は、第3の実施形態における各端末のビーコンの送信処理を説明したフローチャートである。なお、本第3の実施形態における各端末におけるビーコン受信処理は、図27で説明した第2の実施形態の処理と同様であるので、省略する。具体的には、端末B1702のカバーエリアが拡大したことにより、端末B1702のカバーエリア3101及び端末C1703のカバーエリア2903の双方に端末E1705が含まれるようになった場合における端末E1705の処理は、図27A、BのステップS2711〜S2716に示す処理と同様である。
まず、中継端末は、受信端末との間でビーコンをユニキャストで送信している。所定回数又は所定期間ビーコンに対するACKを受信できなかった中継端末は、現在の変調方式ではビーコンを中継できないと判断する(ステップS3501)。次に、中継端末は、ビーコン送信先に対する最適変調方式をCE要求及びCE応答を用いて調査する(ステップS3502)。中継端末は、調査結果を踏まえて、全体の帯域消費が最も小さくなるのがユニキャストか、ブロードキャストなのかを判定する(ステップS3503)。判定した結果をもとにビーコン中継を開始する(ステップS3504)。
このように、中継端末は、受信端末に対しビーコンをユニキャストで送信し、受信端末からビーコンに対応するACKを所定回数又は所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコンを受信端末に対して送信する。これにより、ビーコンの中継端末の方で受信端末がビーコンを受信できない状態にあると判断し、ビーコンの通信可能な範囲を拡大して受信端末がビーコンを受信できる態様でビーコンを送信し直す。その結果、ビーコンは受信端末に届き、中継端末は受信端末との間での通信を再開できる。
本発明によれば、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減等して、本来送信したいデータの送信を確保できる通信端末装置及び通信方法等を提供できる。
101 サービスエリア
102〜110、501〜505、701、1701〜1706 端末
201 メモリ
202 CPU
203 ネットワークインタフェース
301 PHYヘッダ
302 MACヘッダ
303 ペイロード
401 受信処理部
402 変調方式決定部
403 利用効率判定部
404 制御パケット送信部
405 送信処理部
506〜508、901、1707〜1709、2101、2901〜2903、3101 カバーエリア
1301〜1303、2501〜2504、3301〜3305 ビーコン
1304〜1310、2511〜2517、3311〜3324、3351〜3358 パケット
1901 雑音源
1902、2102 ロスエリア
2802 中継先アドレス決定部
本発明は、通信路として電力線を用いる通信端末装置及び通信方法に関する。
無線通信の分野では、基地局から発射されるビーコンを受信することにより、移動端末は基地局と通信できる範囲に入ったことを検知する。無線通信の分野でのビーコンは、基地局が用いる複数の変調方式の中で一番低速の変調方式で変調される。これは、一番低速の変調方式で変調することにより、基地局と通信できる範囲が最大限に拡大するからである。無線通信の場合、移動端末は移動することが前提であるため、移動により基地局と通信できる範囲から外れる確率が高い。基地局を用いた通信では、ビーコンを受信した全ての移動端末は必ず基地局を中継して通信を行うため、基地局と通信できる範囲から外れると通信不能となる。そのため、基地局は一番低速の変調方式でビーコンを変調し、基地局と通信できる範囲を最大限に拡大し、移動端末が移動により基地局と通信できる範囲から外れる確率を減らしている。
また、無線ネットワークにおいて、端末が中継を行うことにより、基地局を用いずに中継端末の特定範囲に存在する他の端末と中継端末との間でデータの通信を可能とするアドホックな無線ネットワークも存在する。このアドホックな無線ネットワークにおいては、端末同士が中継を行うことにより、基地局1つの場合に比べて広範囲な通信が可能となる。ただし、アドホックな無線ネットワークにおいては基地局を用いる通信と異なり、中継を行う端末が特定されない。そのため、ある2端末間でデータ通信をしようとした場合には、中継端末の特定範囲に存在する全ての他の端末に中継するのに適した端末を中継端末として特定する必要がある。
中継端末を特定するための制御情報の交換方式は、制御情報を周期的に交換するプロアクティブ方式(例えば、非特許文献1及び2を参照)と、制御情報の交換をデータ通信開始時に行うリアクティブ方式(例えば、非特許文献3及び4を参照)とに分類される。一般に、端末の移動速度が遅い場合にはプロアクティブ方式が有効であり、端末の移動速度が速い場合にはリアクティブ方式が有効であると言われている。
リクエスト・フォー・コメント3626:オプティマイズド・リンク・ステート・ルーティング・プロトコル(OLSR)「REQUEST FOR COMMENT 3626:Optimized Link State Routing Protocol(OLSR)」
リクエスト・フォー・コメント3684:トポロジー・ディセミネーション・ベースド・オン・リバース−パス・フォワーディング(TBRPF)「REQUEST FOR COMMENT 3684:Topology Dissemination Based on Reverse−Path Forwarding(TBRPF)」
リクエスト・フォー・コメント3561:アド・ホック・オン−デマンド・ディスタンス・ヴェクター(AODV)・ルーティング「REQUEST FOR COMMENT 3561:Ad hoc On−Demand Distance Vector (AODV) Routing」
リクエスト・フォー・コメント4728:ザ・ダイナミック・ソース・ルーティング・プロトコル(DSR)・フォー・モバイル・アド・ホック・ネットワーク・フォー・アイピーヴイ4「REQUEST FOR COMMENT 4728:The Dynamic Source Routing(DSR) Protocol for Mobile Ad Hoc Networks for IPv4」
しかし、上記の従来技術を通信路として電力線を用いる電力線通信に適用した場合、以下のような問題が生ずる。
上記の従来技術は無線通信で用いられることを前提としているため、基地局を用いた通信のビーコンと同じく一番低速の変調方式で中継端末からビーコンを送信している。これは、端末が移動した時に通信不能とならないためである。しかし、通信路として電力線を用いるPLC(Power Line Communication)端末は移動しない端末である。そのため、電力線通信のネットワークに存在する中継機が子機に対して送信する制御パケットは、中継機と通信できる範囲を最大限に拡大するために、中継機が用いる複数の変調方式の中で一番低速の変調方式で変調する必要性はない。むしろ、一番低速の変調方式で変調した制御パケットを送信すると、アドホックなネットワークでは制御パケットを出力する中継機が複数存在するので、制御パケットを送信するために消費される帯域がネットワーク全体として見れば増大し、本来送信したいデータを送信するための帯域が減少するという問題がある。
それ故に、本発明は、上記課題に鑑みて、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減して、本来送信したいデータの送信を確保できる通信端末装置及び通信方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットを依頼する依頼パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
第1の態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワークと接続された通信部と、ネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変
調方式で制御パケットの依頼パケットを変調して、ネットワークに送信する制御部とを備えたものである。
本態様によると、ネットワーク上の端末との通信経路の設定に用いる制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調して、ネットワークに送信する。これにより、通信路の状態が変化したためにネットワーク上の端末と通信できる範囲から外れた等の場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を再開できる。
第2の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御パケットをネットワークから所定期間受信しない場合には、起動時が含まれるものである。本態様によると、制御部は、起動時に依頼パケットを送信する。これにより、通信端末装置を新規にネットワークに取り付けた場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を開始できる。
第3の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部が、依頼パケットに応答した第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットを第1端末から受信するものである。
本態様によると、依頼パケットが届いた第1端末との間では、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットを受信することにより、第1端末を中心とした通信可能な範囲を必要最小限まで小さくできるので、他の端末の通信可能な範囲との重複部分を最小限にして、第1端末から制御パケットが届く範囲を最小限にできる。その結果、ネットワーク全体において制御パケットが重複する確率が減少し、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。
第4の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、第1端末から制御パケットを受信する期間に、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式と比較して通信速度が異なる変調方式で変調された制御パケットを第2端末から受信した場合、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替えるものである。
本態様によると、制御部は、第1端末から制御パケットを受信する期間に、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式と比較して通信速度が異なる変調方式で変調された制御パケットを第2端末から受信した場合、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える。これにより、通信速度がより遅い変調方式で制御パケットを変調する第2端末が存在する場合、第2端末の通信範囲は第1端末の通信範囲より広くなる。そのため、第2端末から制御パケットを受信できる端末が多くなり、より多くの端末が受信する制御パケットの送信元である第2端末を選択すれば、制御パケットの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、通信速度がより遅い変調方式で制御パケットを変調する第2端末が存在する場合、第2端末からの制御パケットの通信範囲の方が第1端末の制御パケットの通信範囲より狭くなる。そのため、より制御パケットの通信範囲が狭い第2端末を選択すれば、制御パ
ケットの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
第5の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える際、第1端末に対して制御パケットの送信元の切替えを通知するものである。本態様によると、制御パケットの送信元を第1端末から第2端末に切替える際、第1端末に対して制御パケットの送信元の切替えを通知することにより、制御パケットの送信元である第1端末は通知に基づいて制御パケットの送信を停止する等の処理を行うことができる。これにより、制御パケットの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
第6の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在する場合、この他の端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で制御パケットを変調して他の端末に送信するものである。
本態様によると、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在する場合、この他の端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で制御パケットを変調して他の端末に送信する。これにより、第1端末の通信範囲を他の端末を含む最小限の範囲に狭めることができるので、第2端末の通信範囲との重複を最小限に抑えて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
第7の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在しない場合、制御パケットの送信を停止するものである。
本態様によると、第1端末は、制御パケットの送信元の切替えを通知された場合、制御パケットの送信先が他に存在しない場合、制御パケットの送信を停止する。これにより、第1端末による制御パケットの通信範囲が消失するので、第2端末の通信範囲との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
第8の態様の通信端末装置は、上記態様において、制御部は、第2端末から制御パケットを受信してから所定期間制御パケットを受信しなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
本態様によると、第2端末から制御パケットを受信してから所定期間制御パケットを受信しなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調してネットワークに送信する。これにより、通信路の状態が変化したためにそれまで通信していた第2端末から制御パケットを受信できなくなった場合に、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調するので、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を再開して、第2端末との通信が途絶えた通信端末装置をネットワークの中に再度組
み入れることができる。
第9の態様の通信端末装置は、上記態様において、ネットワーク上の端末との通信経路に関する情報は、中継機を示す情報、中継機を介してどの経路を介して親機と接続できるかを示した経路情報、及び中継機を介してどの経路を介してネットワーク上の他の端末と接続できるかを示した経路情報の中の少なくともいずれか一つを含むものである。
第10の態様の通信端末装置は、上記態様において、ネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットであるものである。
本態様によると、通信速度が一番低い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットとして送信する。一方、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットとして送信する。これにより、ブロードキャストパケットについては、ネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調されることになり、通信速度を上げることができないシステムにおいても、制御パケットの通信速度を上げることができる。その結果、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を現在通信している端末との間で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第11の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ブロードキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットは、ブロードキャストパケットであるものである。
本態様により、制御パケットとしてブロードキャストパケットを用いた場合でも、このブロードキャストパケットを通信速度が一番低い変調方式で変調するのではなく、第1端末から送信される制御パケットの通信速度と第2端末から送信される制御パケットの通信速度とを変えるので、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を第2端末の通信範囲との関係で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第12の態様の通信端末装置は、上記態様において、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調された制御パケットは、ユニキャストパケットであり、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットは、ブロードキャストパケットであるものである。
本態様によると、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調される制御パケットについてはユニキャストパケットとする。一方、第1端末との間で用いられる通信速度が一番高い変調方式より通信速度が遅い変調方式で変調され、第2端末から受信する制御パケットについてはブロードキャストパケットとする。これにより、ブロードキャストパケットについてはネットワークの中で用いられる変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で変調されることになり、通信速度を上げることができないシステムにおいても、第1端末から送信される制御パケットの通信速度を第2端末から送信される制御パケットの通信速度より速くできる。その結果、第1端末から送信される制御パケットが届く範囲を第2端末の通信範囲との関係で必要最小限の範囲に狭めることができる。
第13の態様の通信端末装置は、電力線通信のネットワークと接続された端末に対して
端末との通信経路の設定に用いる制御パケットを送信する通信部と、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信する制御部とを備えたものである。
本態様によると、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信する。これにより、制御パケットの送信端末の方で受信端末が制御パケットを受信できない状態にあると判断し、制御パケットの通信可能な範囲を拡大して受信端末が制御パケットを受信できる態様で制御パケットを送信し直すので、制御パケットは受信端末に届き、受信端末との間での通信を再開できる。
第14の態様の通信端末装置は、上記態様において、通信部は、端末に対して制御パケットをユニキャストで送信し、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ブロードキャストで制御パケットを送信することで、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを変調して、端末に対して送信するものである。
本態様によると、端末に対して制御パケットをユニキャストで送信し、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合、ブロードキャストで制御パケットを送信することにより、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットを送信する。これにより、制御パケットの通信可能な範囲を拡大するので、制御パケットは受信端末に届き、受信端末との間での通信を再開できる。
第15の態様の通信端末装置は、上記態様において、端末から制御パケットに対応する応答を所定期間受信しない場合は、制御部は、端末から制御パケットに対応する応答を所定回数受信しない場合を含むものである。本態様によると、端末から制御パケットに対応する応答を所定回数受信しない場合にも適用できる。
第16の態様の通信方法は、電力線通信のネットワークと接続された端末との間で通信経路の設定に用いる制御パケットネットワークから所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で制御パケットの依頼パケットを変調してネットワークに送信するものである。
本態様によると、通信路の状態が変化したためにネットワーク上の端末と通信できる範囲から外れた等の場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式で依頼パケットを変調すれば、依頼パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できるので、依頼パケットはネットワーク上のいずれかの端末に届き、その端末との間で通信を開始又は再開できる。
上記態様の通信端末装置によって、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減して、本来送信したいデータの送信を確保できる。
第1の実施形態に係る通信端末装置及び通信方法が用いられるネットワーク構成図
第1の実施形態で用いられる端末の詳細な構成を示す図
第1の実施形態に用いるパケットフォーマットを示す図
第1の実施形態におけるCPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図
第1の実施形態において新規端末参入前の状態を表すネットワーク構成図
第1の実施形態において新規端末参入前のビーコンツリーを表す図
第1の実施形態において新規端末参入後の状態を表すネットワーク構成図
第1の実施形態において新規端末参入後のビーコンツリーを表す図
第1の実施形態において変調方式変更後の状態を表すネットワーク構成図
第1の実施形態において変調方式変更後のビーコンツリーを表す図
第1の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図
第1の実施形態において中継端末変更後のビーコンツリーを表す図
第1の実施形態において図5から図12へ状態遷移していく過程のシーケンス図
第1の実施形態における帯域利用効率を表した図
第1の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャート
第1の実施形態におけるビーコンの送信処理を示すフローチャート
第2の実施形態において雑音源参入前の状態を表すネットワーク構成図
第2の実施形態において雑音源参入前のビーコンツリーを表す図
第2の実施形態において雑音源参入後の状態を表すネットワーク構成図
第2の実施形態において雑音源参入後のビーコンツリーを表す図
第2の実施形態において変調方式変更後の状態を表すネットワーク構成図
第2の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図
第2の実施形態において中継端末変更後のビーコンツリーを表す図
第2の実施形態において雑音源離脱後の状態を表すネットワーク構成図
第2の実施形態において図17から図24へ状態遷移していく過程のシーケンス図
第2の実施形態における帯域利用効率を表した図
第2の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャート
第2の実施形態におけるビーコンの受信処理を示すフローチャート
第3の実施形態におけるCPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図
第3の実施形態において雑音源参入前の状態を表すネットワーク構成図
第3の実施形態において雑音源参入後の状態を表すネットワーク構成図
第3の実施形態において宛先アドレス変更後の状態を表すネットワーク構成図
第3の実施形態において中継端末変更後の状態を表すネットワーク構成図
第3の実施形態において図29から図32へ状態遷移していく過程のシーケンス図
第3の実施形態における帯域利用効率を表した図
第3の実施形態におけるビーコンの送信処理を示すフローチャート
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信端末装置及び通信方法が用いられるネットワーク構成を示す図である。このネットワークは、PLCのネットワークである。このネットワークのサービスエリア101は、ネットワーク内に存在する各端末のカバーエリアよりも大きいため、中継端末103〜107を介して相互の通信を行うアドホックネットワークを構成している。サービスエリア101内の全ての端末(受信端末108〜110を含む)は、送信端末102から周期的に送信される経路情報パケットを、中継端末103〜107を介して受信することにより、各端末間でどの端末を中継端末として選択し、
通信を行えばよいかがわかる。なお、経路情報パケットは、ネットワーク上の端末間で通信経路の設定に用いる制御パケットであり、無線通信の分野でのビーコンに類似したものである。また、経路情報パケットには、各端末間でどの速度で通信可能かを示す情報が含まれているものとする。
図2は、各端末の詳細な構成を示した図である。図2において、各端末は、各種の制御プログラムやワークエリアを含むメモリ201、端末全体を制御するCPU202、及び電力線と接続され、かつ電力線を介して各種データを通信するネットワークインタフェース203から構成されている。各端末は、メモリ201に格納されているプログラムをCPU202で実行し、ネットワークインタフェース203を介してデータの送信を行い、ネットワークインタフェース203を介して受信したデータをCPU202で解読する。なお、CPU202は端末全体を制御するため制御部と、ネットワークインタフェース203は端末全体の通信を担当するため通信部と記すことができる。
図3は、本発明が適用されるアドホックネットワークにおいて用いられるパケットフォーマットを表している。このパケットフォーマットは、PHYヘッダ301、MACヘッダ302、及びペイロード303からなる。ペイロード303には、上位レイヤのヘッダも含まれる。PHYヘッダ301には、そのパケットの変調方式が記されているフィールド304がある。各端末は、PHYヘッダ301を読み取ることによって自身が受信可能なパケットか否かの判定を行う。MACヘッダ302には、送信元、宛先、中継元、及び中継先のアドレスを表すフィールドがある。この例では、送信端末102から送信される経路情報パケットには、送信元アドレス305として送信端末102のアドレスが設定され、宛先アドレス306としては全端末を示すff:ff:ff:ff:ff:ffが設定される。中継端末103〜107が経路情報パケットを中継する場合には、送信元アドレス305と宛先アドレス306とはそのままに、中継元アドレス307に中継端末103〜107のアドレスを設定し、中継先アドレス308にff:ff:ff:ff:ff:ffを設定する。
受信端末108〜110を含む各端末は、宛先アドレス306と中継先アドレス308とを見て、自端末と一致する又は自端末が含まれるアドレスであった場合に、ペイロード303の受信処理を開始する。ただし、変調方式が自身の受信可能な変調方式であった場合には、アドレスによらず受信することは可能である。本実施形態における経路情報パケットでは、中継先アドレス308をff:ff:ff:ff:ff:ffとし全端末が受信できるようにするが、変調方式としては特定の端末に合わせた変調方式を用いることとする。
図4は、CPU202が実行する各機能を説明する機能ブロック図である。図4において、受信処理部401は、変調方式が自端末の変調方式に適合した受信可能な全てのパケットを受信し、宛先アドレスから全ての端末に対して送信されたパケット(以下、「フラッディングパケット」という)か否かを識別し、受信したパケットがフラッディングパケットでない場合は中継すべきパケットとして変調方式決定部402に渡す。また、受信処理部401は、本発明で用いる各種制御パケットを受信し、必要なデータを利用効率判定部403又は制御パケット送信部404に出力する。
変調方式決定部402は、利用効率判定部403から入手した情報に基づいて、中継すべきパケットの変調方式を決定する。本実施形態では、経路情報などのデータの入った周期的に全端末に送信される経路情報パケット(以下、「ビーコン」という)の変調方式を、無線通信の分野でのビーコンと異なって、最低速度以外の変調で行う場合について説明する。最低速度以外の変調で行うことにより、ビーコンが消費する帯域を大幅に削減することが可能となる。
利用効率判定部403では、各中継端末103〜107がどの端末に向けてビーコンを送信しているか、どの端末が自端末からのビーコンの受信が可能かを記録し、アドホックネットワークの利用効率が最適になる変調方式及び中継端末を判定する。例えば、利用効率判定部403は、自端末から送信しているビーコンの変調方式を変更した方がよい場合には、変調方式決定部402へ最適な変調方式の変更を要請する。自端末より送信しているビーコンを停止した方がよい場合には、送信処理部405に送信の停止を要請する。自端末が受信しているビーコンの中継端末を変更した方がよい場合には、制御パケット送信部404に中継端末の変更を要請する。
制御パケット送信部404では、受信処理部401又は利用効率判定部403の要請に応じて各種制御パケットの送信を行う。例えば、制御パケット送信部404は、受信処理部401の要請に応じてビーコン要求パケット又はビーコン応答パケットを送信する。また、例えば、制御パケット送信部404は、利用効率判定部403の要請に応じて、確定パケット又は登録情報更新パケットを送信する。なお、ビーコン要求パケット、ビーコン応答パケット、確定パケット又は登録情報更新パケットの各々については、後述する。
送信処理部405では、制御パケット送信部404から渡された各種制御パケットの送信とビーコンパケットの送信とを行う。また、一般データの送信も送信処理部405にて行う。
以下、上記のように構成された本発明の通信端末装置について、図5〜図14を用いてその動作を説明する。
図5は、通信速度が最低速度の変調方式を用いて中継端末B502がビーコンを中継しており、通信速度が最低速度ではない変調方式を用いて中継端末C503がビーコンを中継している場合のネットワーク図である。一般に、ビーコンは通信速度が最低速度の変調方式を用いて広範囲に届くように中継されるが、本実施形態では状況に応じて、ビーコンは高速な変調方式を用いて中継される。これにより、アドホックネットワーク全体としてビーコンをフラッディングするのに消費する帯域を減らすことが可能となる。
図5において、端末A501は、ビーコンの送信端末であり、通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンを送信している。端末A501のカバーエリア506に存在する端末B502及び端末C503は、ビーコンの中継を行っている。端末B502は、端末D504に向けて中継しており、端末B−D間の距離が離れているため通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。端末C503は、端末E505に向けてビーコンを中継しており、端末C−E間の距離は近いため通信速度が高速な変調方式を用いている。具体的には、端末E505が端末C503のカバーエリア508に入る変調方式のうち最高速度のものを用いている。
このように、端末C503と端末E505との間では、その端末間で用いられる通信速度が一番高い変調方式で変調されたビーコンを通信する。これにより、端末C503を中心とした通信可能なカバーエリア508を必要最小限まで小さくできる。そのため、端末B502の通信可能なカバーエリア507との重複部分を最小限にして、端末C503からビーコンが届く範囲を最小限にできる。その結果、ネットワーク全体においてビーコンが重複する確率が減少し、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。
図6は、図5の状態におけるビーコンツリーを表した図である。なお、本実施形態では、自端末がどの端末に向けてビーコンを送信しているか、自端末がどの端末にビーコンを
中継してもらっているかを登録しているものとする。各端末は、この情報(以下、受信端末情報と記す)を更新することにより、ビーコンの送受信先を切り替える。ビーコンツリーとは、この受信端末情報に従った、ビーコンの送受信経路を表すツリー構造のことである。図6においては、端末B502及び端末C503は、端末A501からビーコンを受信する。端末D504は端末B502から、端末E505は端末C503からビーコンを受信する。
図7は、図5の状態に新たな端末F701が参入した時のネットワーク図である。端末F701は、端末A501,B502,及びC503のカバーエリアのいずれにも入っていないため、ネットワークに参入することが出来ない。その場合には、いずれかの端末にビーコンを中継をしてもらう必要がある。本実施形態では、端末F701は、ネットワークからビーコンを所定期間受信していないと端末F701内部の制御パケット送信部404が判断した場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。
これにより、端末F701がネットワーク上の他の端末と通信できるカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、端末F701は、その端末との間で通信を開始することが可能となる。
図8は、図7の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図8を参照して、端末F701は、ネットワークに新規参入したばかりなので、ビーコンツリーに入っておらず、ビーコンを受信できない。
図9は、端末F701が受信可能なように、端末C503が変調速度を低下させた場合のネットワーク図である。本実施形態では、端末F701から送信されたビーコン要求パケットを端末C503が受信する。図5及び図7で示すように、端末C503は、端末E505に対して通信速度が最低速度より高速の変調方式でビーコンを送信している。そこで、端末C503は、端末F701がビーコンを受信できるように、ビーコンを送信する変調方式を通信速度が低い変調方式に変更する。ビーコンを送信する変調方式をより通信速度が低い変調方式に変更した場合、端末C503のカバーエリア508は、カバーエリア901へと広くなる。そのため、端末C503は、端末F701をカバーエリア901内に入れることが出来る。
図10は、図9の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図10を参照して、端末F701がビーコンツリーに格納され、全ての端末がビーコンを受信できる状態となっている。
図11は、端末D504がビーコンの中継元を端末B502から端末C503に切り換えた場合のネットワーク図である。上述したように、端末D504は、端末C503がカバーエリア901を広げたことにより、端末B502及び端末C503の双方のカバーエリア507及び901に入っている(図9参照)。すなわち、端末D504は、端末B502及び端末C503の双方からビーコンを受信することになる。ここで、端末B502が端末D504へのビーコンの中継を中止すれば全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本実施形態では、端末D504は、端末B502からビーコンを受信する期間に、端末B502との間で用いられる通信速度より速い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末C503から受信した場合、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える。
これにより、通信速度がより速い変調方式によりビーコンを変調する端末C503が存在する場合、端末C503からのビーコンの通信範囲の方が狭いので、よりビーコンの通信範囲が狭い端末C503を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末D504の制御パケット送信部404は、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する(図11参照)。
このように、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末B502では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止することにより、端末B502によるビーコンの通信範囲(すなわち、カバーエリア507)が消失する。そのため、端末C503の通信範囲(すなわち、カバーエリア901)との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図12は、図11の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図12を参照して、端末D504が端末C503に接続し、端末B502は中継端末ではなく受信端末となっている。
図13は、図5から図12へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図13を参照して、端末B502は、ビーコン1301を端末D504へ中継している。ビーコンを受信できなかった端末F701は、ビーコン要求1304を周囲の端末へブロードキャストする。ここで、ブロードキャストとは、通信速度が最低速度の変調方式を用いて、且つ宛先アドレスとしてff:ff:ff:ff:ff:ffを用いて送信することを意味する。なお、端末F701がビーコン要求1304を送るタイミングは所定期間ビーコンを受信できなかった時でもよいし、端末起動時でもよい。
ビーコン要求1304を受信した端末C503は、CE(CHANNEL ESTIMATION)要求1305を端末F701に送信し、CE要求1305の応答として端末F701からCE応答1306を受信する。これにより、端末C503は、端末F701と通信可能な変調方式のうち最高速度ものを推定する。最高速度の変調方式が判明すると、端末C503内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して端末F701に対してその変調方式を用いてビーコン応答1307を返す。
ビーコン応答を受信した端末F701は、ビーコンの中継端末を端末C503に確定し、端末F701内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して端末C503に対してビーコンを中継してもらうための確定応答1308を送信する。ここでは、端末C503は、端末E505との間すでに通信をしているので(図7を参照)、端末E5
05と端末F701との間で共通して使用できる最高速度の変調方式を決定する。確定応答を受信した端末C503は、端末E505に加えて、端末F701をビーコン受信端末として登録し、双方が受信可能な最適変調方式でビーコン1302を送信する。
このように、端末F701は、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。これにより、端末F701がネットワーク上の他の端末と通信できるカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、端末F701は、その端末との間で通信を開始することが可能となる。
端末C503からのビーコン1302は低速な変調方式となったため、端末D504では、端末B502からのビーコン1302と端末C503からのビーコン1302との双方を受信可能となる。ここで、端末D504は、より高速な通信が可能な端末に中継元を切り替える。無線通信の分野のビーコンと異なって、どちらと高速な通信が可能であるかの情報は、ビーコンに経路情報として格納されているものとする。受信端末がある中継元からの中継を不要とした場合に、その中継元がビーコンの中継を停止してもよい。本実施形態では、より高速な変調方式で送信可能となるので、その中継元である端末B502からのビーコン中継を停止し、新しい中継元である端末C503からのビーコン中継を開始する。端末B502は、端末D504への中継を停止すると、他にビーコンを中継する端末が存在しないので、ビーコン中継を停止することが可能である。
このように、本第1の実施形態では、端末D504は、端末B502からビーコンを受信する期間に、端末B502との間で用いられる通信速度より速い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末C503から受信した場合、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える。通信速度がより速い変調方式によりビーコンを変調する端末C503が存在する場合、端末C503からのビーコンの通信範囲の方が狭いので、よりビーコンの通信範囲が狭い端末C503を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共にネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末D504内の制御パケット送信部404は、送信処理部405を介して、端末B502へ登録情報更新パケット1309を送信して中継停止を要請し、端末C503へ登録情報更新パケット1310を送信して中継開始を要請する。その結果、ビーコン1303は、端末C503から端末D504及び端末F701の双方へ送信されることになる。なお、端末C503からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末D504に届いている。端末D504が端末C503へ登録情報更新パケット1310を送信して中継開始を要請するのは、端末D504が端末C503からのビーコンを受信している端末であることを端末C503に知らせるためである。
このように、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末D504の制御パケット送信部404は、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えのために登録情報更新パケット1309を送信する。端末B502は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合、ビーコンの送信先が端末D504以外に存在しないので、ビーコンの送信を停止する。
また、ビーコンの送信元を端末B502から端末C503に切替える際、端末B502に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末B502
は、登録情報更新パケット1309に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
さらに、端末B502がビーコンの送信を停止した場合、端末B502によるビーコンのカバーエリア507が消失する。これにより、端末C503のカバーエリア901との重複が無くなり(図11を参照)、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図14は、第1の実施形態において、各種状態における全ネットワークでのビーコンの消費する帯域を時間で表した図である。全ての送信に通信速度が最低速度の変調方式を用いた場合には、非常に多くの時間がかかり、本来のデータ通信が可能な時間を圧迫する(図14(a))。高速通信が可能な端末に対しては、高速な変調方式を用いることで(図5を参照)、ある程度の消費帯域削減効果が得られる(図14(b))。さらに、中継端末を選択する動作を組み合わせることにより(図11を参照)、消費帯域のさらなる削減を実現することが可能となる(図14(c))。
図15は、各端末におけるビーコンの受信処理を説明するフローチャートである。図15を参照して、各端末は、一定時間ビーコン受信がなかった場合又は端末起動時に(ステップS1501)、通信速度が最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを、ネットワークを介して周囲の端末に送信する(ステップS1502)。各端末は、いずれかの端末からビーコン応答パケットを受信した場合には、その端末に向けて確定応答パケットを送信する(ステップS1503)。ビーコン応答パケットを受信できかなかった場合には、ビーコン要求パケットを再送信する。ビーコン応答パケットを複数の端末から受信した場合(ステップS1504)には、それらの端末の中から最も高速な変調方式で通信可能な端末を選択し(ステップS1505)、その端末に確定応答パケットを送信する(ステップS1506)。
これにより、各端末がネットワーク上の他の端末のカバーエリアの外に存在する場合でも、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットがネットワーク上のいずれかの端末に届き、各端末は、その端末との間で通信を再開又は開始することが可能となる。
一方、各端末は、ビーコンを受信した場合には(ステップS1511)、変調方式が自端末に適合してペイロードを受信できるか否かを確認する(ステップS1512)。ペイロードの受信ができない場合は、ステップS1501の処理に戻る。ペイロードの受信が可能な場合は、ビーコンの送信元が、現在の中継端末と一致したら通常のビーコン受信処理に戻る。ビーコンの送信元が、現在の中継端末と不一致の場合には(ステップS1513)、現在の中継端末と、ビーコンの送信元の端末とのどちらが全体の消費帯域が少ないかを判断する(ステップS1514)。
具体的には、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度と、現在の中継端末が用いる通信速度とを比較して、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度が、現在の中継端末が用いる通信速度より速い変調方式によりビーコンを変調する場合、ビーコンの送信元の端末によるビーコンの通信範囲の方が狭くなる。このような場合、現在の中継端末の代わりに、ビーコンの送信元の端末を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共に、ネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。この場合には、現在の中継端末より、ビーコンの送信元の端末に中継してもらった方が全体の消費
帯域が少ないと判断できるので、現在の中継端末に、登録情報更新パケットを送信し、中継停止を要請する(ステップS1515)。それと同時に、ビーコンの送信元の端末に新しい中継端末になってもらうように、登録情報更新パケットを送信し、中継開始を要請する(ステップS1516)。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。なお、上記判断は、ビーコンに含まれる経路情報に基づいて行ってもよい。
図16は、各端末におけるビーコン送信処理を説明するフローチャートである。図16を参照して、各端末は、ビーコン要求パケットを受信した場合には(ステップS1601)、ビーコン要求パケットの送信元に対する最適な変調方式を選択する(ステップS1602)。経路情報又は過去の通信履歴から最適な変調方式がわかっていた場合には、その変調方式を用いてビーコン応答パケットを送信する(ステップS1603)。最適な変調方式がわからなかった場合には、CE要求とCE応答とを用いて最適な変調方式を調べるものとする。各端末は、ビーコン応答パケットを送信した端末から確定応答パケットを受信した場合には(ステップS1604)、受信端末情報を更新する(ステップS1605)。受信端末情報から全ての端末が受信可能な変調方式のうち、最高速なものを最適な変調方式として選択する。その後、ビーコンの中継処理を開始する(ステップS1607)。
登録情報更新パケットのうち中継開始を指示するものを受信した場合には(ステップS1611)、受信端末情報を更新し(ステップS1612)、受信端末情報から全ての端末が受信可能な変調方式のうち、最高速なものを最適な変調方式として選択する(ステップS1613)。その後、ビーコンの中継処理を開始する(ステップS1614)。
登録情報更新パケットのうち中継停止を指示するものを受信した場合には(ステップS1621)、受信端末情報を更新したのち(ステップS1622)、中継停止の指示を送信した端末の他に、ビーコンを送信する端末の数を判定する(ステップS1623)。端末数がゼロになった場合には、ビーコンの中継処理を停止する(ステップS1625)。これにより、本端末によるビーコンの通信範囲が消失する。そのため、ビーコンの送信主体の数を削減して他の端末の通信範囲との重複を無くすことができる。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止でき、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。一方、他の受信端末が残っている場合には、登録された受信端末情報より最適な変調方式を選択し、ビーコン中継処理を継続する(ステップS1624)。
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、ネットワークへの端末の新規参入時の動作について説明した。端末が移動しないPLCネットワークにおいて、状態の変化が発生するのはPLC端末を新たにPLCネットワークに接続した場合又はPLC端末をPLCネットワークから外した場合の他には、掃除機等の家電機器をPLCネットワークに接続した場合又はPLCネットワークに接続された電子レンジ等の家電機器をON/OFFした場合に雑音源が発生することによって、ネットワークの状況が変化する場合がある。本第2の実施態様では、家電機器の接続等により雑音源が発生した場合における動作について説明する。
図17は、雑音源が発生する前のネットワーク図である。図17を参照して、端末A1701は、ビーコンの送信端末であり、通信速度が最低速度の変調方式を用いてビーコンを送信している。端末A1701の通信可能なカバーエリア1707に存在する端末B1702及び端末C1703は、ビーコンの中継を行っている。端末B1702は、端末D1704及び端末F1706に向けてビーコンを中継しており、端末D1704及び端末F1706の双方が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中
継を行っている。端末C1703は、端末E1705に向けて中継しており、端末E1705が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコン中継を行っている。
図18は、図17の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図18を参照して、端末B1702及び端末C1703は、端末A1701からビーコンを受信する。端末D1704及び端末F1706は、端末B1702からビーコンを受信する。また、端末E1705は、端末C1703からビーコンを受信する。
図19は、図17の状態に雑音源1901が参入してきた場合のネットワーク図である。雑音源1901が参入した場合とは、例えば掃除機等の家電機器をPLCネットワークに接続した場合又はPLCネットワークに接続された電子レンジ等の家電機器をON/OFFした場合等をいう。雑音源1901が参入してきた場合には、その周囲のエリアのパケットロス率が飛躍的に上がる。そのロスエリア1902は、通信速度が高速な変調方式を用いている端末に対しては広く、通信速度が低速な変調方式を用いている端末に対しては狭くなる。そのため、通信速度が高速な変調方式を用いている端末B1702に対してロスエリア1902は広くなり、端末F1706はロスエリア1902に含まれる。すなわち、端末F1706は、端末B1702のカバーエリア1708に含まれているにもかかわらず、ビーコンを受信できないという状態が発生する。
本第2の実施形態では、端末F1706は、ネットワークからビーコンを所定期間受信しないので、今までビーコンを送信していた端末B1702に対して、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求パケットを送信する。これにより、端末F1706が端末B1702のカバーエリア1708内に存在する場合であっても、端末B1702からビーコンを受信できない場合に、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求パケットの通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求パケットが端末B1702に届き、端末F1706は、端末B1702との間で通信を再開することが可能となる。
図20は、図19の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図20を参照して、端末F1706は、端末B1702のカバーエリア1708から見れば端末B1702からビーコンを受信することになっているが、実際には受信できないという状況が発生する。
図21は、雑音源1901の参入により端末B1702が低速な変調方式に切替えてビーコンの送信を始めた場合のネットワーク図である。本第2の実施形態では、端末F1706から送信されたビーコン要求パケットを端末B1702が受信する。そこで、端末B1702は、端末F1706がビーコンを受信できるように、ビーコンを送信する変調方式を通信速度が低い変調方式に変更する。ビーコンを送信する変調方式をより通信速度が低い変調方式に変更した場合、端末B1702のカバーエリア1708はカバーエリア2101へと広くなる。
このように、通信速度が低速な変調方式を用いた場合には、パケットロスの発生するエリアが狭くなる。その結果、端末B1702は、端末F1706をカバーエリア2101内に入れることが出来き、端末F1706が端末B1702からのビーコンを受信することができるようになる。ビーコンツリーとしては図20から図18の状態に戻る。
図22は、端末B1702が低速な変調方式に切替えて送信を始めたことにより、端末E1705がビーコンの中継元を端末C1703から端末B1702に切替えた場合のネ
ットワーク図である。
すなわち、端末E1705は、端末B1702がカバーエリア2101を広げたことにより、端末B1702及び端末C1703の双方のカバーエリア2101及び1709に属する。そのため、端末E1705は、端末B1702及び端末C1703の双方からビーコンを受信することになる。ここで、端末C1703が端末E1705へのビーコンの中継を中止すれば全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本第2の実施形態では、端末E1705は、端末C1703からビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコンを変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア2101は、端末C1703のカバーエリア1709より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア1709が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア2101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図23は、図22の状態におけるビーコンツリーを表した図である。図23を参照して、端末C1703は、受信のみを行う端末となり、端末B1702は、端末D1704、端末E1705、及び端末F1706に向けてビーコンを送信している。
図24は、図22の状態から雑音源1901が離脱した場合のネットワーク図である。図24を参照して、雑音源1901が離脱した場合でも、端末E1705及び端末F1706は、端末B1702からビーコンを継続して受信する。なお、端末E1705がビーコンの送信元を端末B1702から端末C1703に切替えれば、端末E1705においては変調方式を高速なものに切替えることが可能となる。この場合、ビーコンに、端末E1705−端末C1703間の経路情報及び端末E1705−端末B1702間の経路情報を含ませ、端末E1705がこの経路情報に基づいて判断するようにしてもよい。
図25は、図17から図24へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図25を
参照して、端末E1705は、端末C1703からビーコン2501を受信しており、端末F1706は、端末B1702からビーコン2501を受信している。雑音源が参入したことにより、端末F1706は、端末B1702から送信されているビーコン2502を受信できない。端末F1706は、所定期間ビーコンを受信しないので、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式を用いてビーコン要求2511を送信する。これにより、端末F1706が端末B1702のカバーエリア1708内に存在する場合であっても、端末B1702からビーコンを受信できない場合に、端末B1702との間で用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコン要求パケットを送信すれば、ビーコン要求2511の通信可能な範囲を最大限に拡大できる。その結果、ビーコン要求2511は端末B1702に届き、端末F1706は、端末B1702との間で通信を再開することが可能となる。
ビーコン要求2511を受信した端末B1702は、CE要求2512を端末F1706に送信し、その応答としてCE応答2513を端末F1706から受信することにより、雑音源があった場合での最適な変調方式を選択する。端末B1702は、最適な変調方式にてビーコン応答2514を返す。端末F1706は、ビーコン応答2514が受信できた場合、確定応答2515を返信する。ここでは、端末B1702は、端末D1704との間すでに通信をしているので(図19を参照)、端末D1704及び端末F1706との間で共通して使用できる最高速度を決定する。確定応答を受信した端末B1702は、端末F1706をビーコン受信端末として再登録し、端末D1704をも含めて双方が受信可能な最適変調方式でビーコン2503を送信する。
なお、ビーコン応答以下の動作は省略し、ビーコン自体の変調方式を変更してもよい。その場合に、ビーコンがロスするとビーコン要求を再び送信することになる。
変調方式を変更した端末B1702からのビーコンは、端末F1706にロスせず届くようになる。この場合、端末E1705は、端末B1702及び端末C1703の双方からビーコン2503を受信するようになる。本第2の実施形態では、端末E1705が端末C1703からビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコンを変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア2101は、端末C1703のカバーエリア1709より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末E1705は、端末B1702を選択するために、端末C1703に向けて登録情報更新パケット2516を送信し、ビーコン中継の停止を要求する。端末C1703では、更新パケット2516を受信した場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア1709が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア2101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
端末E1705は、端末B1702に向けて登録情報の更新パケット2517を送信し、ビーコン中継の開始を要求する。これにより、端末E1705は、ビーコン2504を端末B1702からのみ受信するようになる。なお、端末B1702からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末E1705に届いている。端末E1705が端末B1702へ登録情報更新パケット2517を送信して中継開始を要請するのは、端末E1705が端末B1702からのビーコンを受信している端末であることを端末B1702に知らせるためである。
図26は、第2の実施形態における、各種状態におけるネットワーク全体でのビーコンパケットの消費する帯域を時間で表した図である。雑音が無い場合においては、高速な変調を用いることによって、消費する帯域をおさえることが可能となっている(図26(a))。雑音が発生した場合には低速な変調を用いざるを得ないため、一時的に帯域消費が多くなっている(図26(b))。低速な変調を用いた場合には受信できる可能性のある端末数が増加するが、第2の実施形態のように、中継先の端末を選ぶことによって高速な変調を用いた場合と同様な効果を得られる(図26(c))。
図27Aは、第2の実施態様における各端末のビーコンの受信処理を説明したフローチャートである。なお、本第2の実施形態における各端末におけるビーコン送信処理は、図16で説明した第1の実施形態の処理と同様であるので、省略する。
図27Aを参照して、雑音によるパケットロスが発生していることを検知した各端末は、最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを送信する(ステップS2701、S2702)。ここでは各端末は、所定期間ビーコンを受信しなくなったことにより、雑音によるパケットロスが発生したと判断する。なお、中継端末が最低速度でない変調方式でビーコン中継を行っていた場合には、中継端末のアドレスを宛先としてビーコン要求パケットをユニキャスト送信すればよい。それに対して中継端末からビーコン応答パケットを受信できた場合には(ステップS2703)、受信可能になったとして、確定応答パケットを中継端末に対して送り(ステップS2704)、引き続きその中継端末にビーコンを中継してもらえばよい。ビーコン応答パケットを受信できなかった場合でも、中継端末から次のビーコンが受信可能となった場合には、その中継端末からのビーコンの中継を継続する。中継端末から次のビーコンを受信できない場合は、ビーコン要求パケットを再送信する。
一方、各端末は、ビーコンを受信した場合には(ステップS2711)、変調方式が自端末に適合してペイロードを受信できるか否かを確認する(ステップS2712)。ペイロードの受信ができない場合は、ステップS2701の処理に戻る。ペイロードの受信が可能な場合は、ビーコンの送信元が、現在の中継端末と一致したら通常のビーコン受信処理に戻る。ビーコンの送信元が、現在の中継端末と不一致の場合には(ステップS2713)、現在の中継端末と、ビーコンの送信元の端末とのどちらが全体の消費帯域が少ないかを判断する(ステップS2714)。
ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度と、現在の中継端末が用いる通信速度とを比較して、ビーコンの送信元の端末が用いている通信速度が、現在の中継端末が用いる通信速度より速い変調方式によりビーコンを変調する場合、ビーコンの送信元の端末によるビーコンの通信範囲の方が狭くなる。このような場合、現在の中継端末の代わりにビーコンの送信元の端末を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できると共に、ネットワーク全体に占めるビーコンの通信範囲を狭めることができる。この場合には、現在の中継端末より、ビーコンの送信元の端末に中継してもらった方が全体の消費帯域が少ないと判断できるので、現在の中継端末に、登録情報更新パケットを送信し、中継停止を要請する(ステップS2715)。それと同時に、ビーコンの送信元の端末に新しい中継端末に
なってもらうように、登録情報更新パケットを送信し、中継開始を要請する(ステップS2716)。その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。なお、上記判断は、ビーコンに含まれる経路情報に基づいて行ってもよい。
また、第2の実施形態における各端末のビーコン受信処理は、図27Aに示す以外にも、図27Bに示す動作を行うことも可能である。図27Bは、第2の実施態様における各端末のビーコンの受信処理を説明したフローチャートである。なお、本第2の実施形態における各端末におけるビーコン送信処理は、図16で説明した第1の実施形態の処理と同様であるので、省略する。
図27Bを参照して、各端末は、雑音によるパケットロスが発生しているか否かを判定する(ステップS2701)。各端末は、雑音によるパケットロスが発生していると判定した場合は、他の端末からビーコンを受信したか否かを判定する(ステップS2711)。他の端末からビーコンを受信していないことを検知した各端末は、最低速度の変調方式でビーコン要求パケットを送信する(ステップS2702)。以降の動作は、図27Aを用いて説明したものと同様であるので、説明を省略する。
(第3の実施形態)
上記第1及び第2の実施形態では、中継先アドレスをff:ff:ff:ff:ff:ffとし、変調方式としては特定の端末に合わせた変調方式を用いる場合について説明した。この方式は、変調方式として低速から高速まで数段階にわかれており、自分の受信可能な変調より低速な変調方式は、全て受信できる場合に有効である。しかし、適応変調方式(OFDMにおけるサブキャリア毎に変調方式を変更するような方式)を用いた場合には、特定の2端末間に特化された変調方式となるため、非常に高速な通信が可能となる。従って、複数の端末に受信可能な変調方式で通信するよりも、特定の2端末間に特化する方がより帯域消費が少ない可能性がある。
そこで、本第3の実施形態では、中継先アドレスをff:ff:ff:ff:ff:ffとし、変調方式としては通信速度が一番低い変調方式を用いる送信方法と(以下、「ブロードキャスト」という)と、中継先アドレスを特定端末のアドレスとし、変調方式としては中継元と中継先間で通信速度が一番高い変調方式を用いる送信方法(以下、「ユニキャスト」という)と、を併用して帯域消費を下げる場合の動作について説明する。なお、ユニキャストは受信端末より送信端末へデータが正常に受信完了したことを通知する肯定応答(Acknowledgement:以下、「ACK」という)が返されるものとし、再送を繰り返してもACKが返ってこない場合にパケットロスが発生したことがわかる。
図28は、本第3の実施形態における各機能を説明する機能ブロック図である。基本的には、第1の実施形態の図4と同じである。第1の実施形態と異なる点は、図4では変調方式決定部402を備えていたが、図28ではその代わりに中継先アドレス決定部2802を設けた点である。図28において、中継先アドレス決定部2802は、利用効率判定部403から出力されたデータをもとに、中継先アドレスを決定する。変調方式は、中継先のアドレスが決定されると自動的に決定されるものとする。なお、中継先アドレス決定部2802は、第1の実施形態の変調方式決定部402と組み合わせて使用してもよい。
図29は、雑音源が発生する前のネットワーク図である。図29を参照して、端末A1701は、ビーコンの送信端末であり、ブロードキャストを用いてビーコンを送信している。端末A1701の通信可能なカバーエリア2901に存在する端末B1702及び端末C1703は、ユニキャストを用いてビーコンの中継を行っている。端末B1702は
、端末D1704及び端末F1706に向けてビーコンを中継している。端末B1702は、端末D1704には、端末D1704が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。また、端末F1706に対しても同様である。端末C1703は、端末E1705に向けてビーコンを中継しており、端末E1705が受信可能な変調方式のうち最高速度の変調方式を用いてビーコンの中継を行っている。
図30は、第2の実施形態における図19と同様に、図29の状態に雑音源1901が参入してきた場合のネットワーク図である。図30を参照して、端末B1702がビーコンをユニキャストで端末F1706に送信した場合であって、端末F1706からACKが返ってこなかった場合に、端末B1702による端末F1706へのビーコンの再送が行われる。さらに、ユニキャスト送信が送信先の端末に到達しない(複数回の送信を行ったがACKが返ってこない)場合には、端末B1702は、CE要求とCE応答とにより最適な変調速度を再決定する。端末D1704及び端末F1706に送信するためのユニキャストの帯域消費の合計がブロードキャストの帯域消費より大きい場合には、端末B1702は、端末D1704及び端末F1706へのビーコンの送信方式をブロードキャストに変更する。
なお、本第3の実施形態では、ユニキャストによるビーコンの送信を複数回行ったがACKが返ってこない場合には、CE要求とCE応答とにより最適な変調速度を再決定するが、これに限られるものではなく、ユニキャストによるビーコンの送信に対するACKが所定期間返ってこない場合に上記再決定を行ってもよい。また、新規端末が参入した場合も同様の処理を行うことができる。すなわち、端末B1702が、端末D1704、端末F1706、及び新規端末を含めた3つの端末にビーコンをユニキャストで送信するよりもブロードキャストで送信した場合の方が、帯域消費が少ない場合も同様である。
図31は、端末B1702がビーコン送信方式をブロードキャストに変更した場合のネットワーク図である。図31を参照して、端末B1702がブロードキャストにビーコンの送信方式を変更すると、変調方式としては通信速度が一番低い変調方式を用いるため、端末B1702のカバーエリア2902は、カバーエリア3101へと広くなる。
このように、端末B1702は、端末F1706に対しビーコンをユニキャストで送信し、端末F1706からビーコンに対応するACKを所定回数又は所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でブロードキャストによりビーコンを端末F1706に対して送信する。これにより、ビーコンの送信端末B1702の方で受信端末F1706がビーコンを受信できない状態にあると判断し、ビーコンの通信可能な範囲を拡大して受信端末F1706がビーコンを受信できる態様でビーコンを送信し直す。そのため、ビーコンは受信端末F1706に届き、端末B1702は、受信端末F1706との間での通信を再開できる。
図32は、端末B1702がブロードキャストに切替えて送信を始めたことにより、端末E1705がビーコンの中継元を端末C1703から端末B1702に切替えた場合のネットワーク図である。図32を参照して、端末B1702のカバーエリア2902がカバーエリア3101へと拡大したことにより、端末E1705は、端末B1702のカバーエリア3101及び端末C1703のカバーエリア2903の双方に含まれる。そのため、端末E1705は、端末B1702からブロードキャストでビーコンを受信すると共に、端末C1703からユニキャストでビーコンを受信することになる。ここで、端末C1703が端末E1705へのユニキャストによるビーコンの中継を中止すれば、全体としての帯域消費を抑えることができる。そのため、本第3の実施形態では、端末E1705は、端末C1703からユニキャストにてビーコンを受信する期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコンを端
末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式により、例えばブロードキャストでビーコンを送信する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア3101は端末C1703のカバーエリア2903より広い。そのため、端末B1702からビーコンを受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコンの送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコンの送信を停止する。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がユニキャストによるビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコンのカバーエリア2903が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア3101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
なお、この処理は実施の形態2と同様である。
図33は、図29から図32へ状態遷移していく過程のシーケンス図である。図33を参照して、ビーコン3301は、端末B1702から端末D1704及び端末F1706へとユニキャストで送信され、また、端末C1703から端末E1705へとユニキャストで送信されている。ユニキャストで送信されたパケット3311、3313、及び3351に対してはそれぞれACK3312、3314、及び3352が返ってきており、正常に送信が完了されている。
次に、ビーコン3302も端末B1702から端末D1704及び端末F1706へとユニキャストで送信され、また、端末C1703から端末E1705へとユニキャストで送信されている。ここで、パケット3315とパケット3353とに対しては、ACK3316とACK3354とが返信されており、正常に送信が完了されている。しかし、パケット3317に対しては、ACKが返信されていない。そのため、パケット3318及びパケット3319が再送されている。それでもACKパケットを受信できない場合、端末B1702は、その変調方式でパケットを伝達できないと判断する。
本第3の実施形態では、雑音源1901が発生している。ネットワークの状態の変化を検知した端末B1702は、CE要求3320とCE応答3321とを端末F1706との間でやり取りして、その状態で伝達可能な最も速度の速い変調方式を調査する。端末B1702は、その結果を用いて、ユニキャストを複数用いてビーコンを送信した方がよいのか、ブロードキャストを用いてビーコンを送信した方が良いのかを判定する。ブロードキャストを用いてビーコンを送信した方が良いと判断した端末B1702は、ビーコン3
303をブロードキャストで送信する。なお、ビーコン3302は、端末C1703から端末E1705へとユニキャストを用いてパケット3353により送信される。これに対して、端末E1705から端末C1703へとACKパケット3354が返信されている。
次に、ビーコン3303を端末B1702がブロードキャスト送信したパケット3322は、端末D1704及び端末F1706だけではなく、端末E1705でも受信される。また、端末E1705は、端末C1703からビーコン3303をユニキャストしたパケット3355も受信している。端末E1705は、第2の実施形態と同様の方法によって、端末B1702からの受信に切り換える。すなわち、端末E1705は、端末C1703からビーコン3303のパケット3355をユニキャストで受信し、端末C1703へACKパケット3356を返信している期間に、端末C1703との間で用いられる通信速度より遅い通信速度の変調方式により変調されたビーコン3303のパケット3322を、例えばブロードキャストで端末B1702から受信した場合、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える。
通信速度がより遅い変調方式によりビーコン3303のパケット3322を変調する端末B1702が存在する場合、端末B1702のカバーエリア3101は、端末C1703のカバーエリア2903より広い。そのため、端末B1702からビーコン3303のパケット3322を受信できる端末も多いことから、より多くの端末が受信するビーコン3303のパケット3322の送信元である端末B1702を選択すれば、ビーコンの送信主体の数を削減できる。その結果、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
端末E1705は、端末C1703に向けて登録情報更新パケット3358を送信し、ビーコン中継の開始を要求する。これにより、端末E1705は、ビーコン3304のパケット3323及びビーコン3305のパケット3324を端末B1702からのみ受信するようになる。なお、端末B1702からのビーコンは、ブロードキャストで送信されているため、端末E1705に届いている。端末E1705が端末B1702へ登録情報更新パケット3358を送信して中継開始を要請するのは、端末E1705が端末B1702からのビーコンを受信している端末であることを端末B1702に知らせるためである。
また、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末E1705内の制御パケット送信部404は、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを登録情報更新パケット3357にて通知する。端末C1703は、ビーコンの送信元の切替えを通知された場合であって、ビーコンの送信先が端末E1705以外に存在しない場合、ビーコン3303の送信を停止する。
その後、端末B1702からブロードキャストにて送信されるビーコン3304のパケット3323及びビーコン3305のパケット3324は、端末D1704、端末E1705、及び端末F1706に届くことになる。
このように、ビーコンの送信元を端末C1703から端末B1702に切替える際、端末C1703に対してビーコンの送信元の切替えを通知すると、ビーコンの送信元である端末C1703では通知に基づいてビーコンの送信を停止することができる。これにより、ビーコンの送信主体の数を削減でき、その結果、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合を効果的に削減できる。
また、端末C1703がビーコンの送信を停止した場合、端末C1703によるビーコ
ンのカバーエリア2903が消失する。これにより、端末B1702のカバーエリア3101との重複が無くなり、全通信に消費される帯域の中でビーコンの送信に消費される帯域が占める割合が無駄に増大するのを防止できる。その結果、本来送信すべきデータに消費される帯域を効果的に確保できる。
図34は、第3の実施形態における各種状態における全ネットワークでのビーコンパケットの消費する帯域を時間で表した図である。雑音が無い場合においては、各端末間で最高速な変調を用いてユニキャストすることにより、消費する帯域をおさえることが可能となっている(図34(a))。雑音が発生した場合には低速な変調を用いてユニキャストを行うことも可能であるが(図34(b))、本第3の実施形態では、ブロードキャストを用いて受信可能な端末数を増やす方が効率がよくなる(図34(c))。
図35は、第3の実施形態における各端末のビーコンの送信処理を説明したフローチャートである。なお、本第3の実施形態における各端末におけるビーコン受信処理は、図27で説明した第2の実施形態の処理と同様であるので、省略する。具体的には、端末B1702のカバーエリアが拡大したことにより、端末B1702のカバーエリア3101及び端末C1703のカバーエリア2903の双方に端末E1705が含まれるようになった場合における端末E1705の処理は、図27A、BのステップS2711〜S2716に示す処理と同様である。
まず、中継端末は、受信端末との間でビーコンをユニキャストで送信している。所定回数又は所定期間ビーコンに対するACKを受信できなかった中継端末は、現在の変調方式ではビーコンを中継できないと判断する(ステップS3501)。次に、中継端末は、ビーコン送信先に対する最適変調方式をCE要求及びCE応答を用いて調査する(ステップS3502)。中継端末は、調査結果を踏まえて、全体の帯域消費が最も小さくなるのがユニキャストか、ブロードキャストなのかを判定する(ステップS3503)。判定した結果をもとにビーコン中継を開始する(ステップS3504)。
このように、中継端末は、受信端末に対しビーコンをユニキャストで送信し、受信端末からビーコンに対応するACKを所定回数又は所定期間受信しない場合、ネットワークで用いられる複数の変調方式の中で通信速度が一番低い変調方式でビーコンを受信端末に対して送信する。これにより、ビーコンの中継端末の方で受信端末がビーコンを受信できない状態にあると判断し、ビーコンの通信可能な範囲を拡大して受信端末がビーコンを受信できる態様でビーコンを送信し直す。その結果、ビーコンは受信端末に届き、中継端末は受信端末との間での通信を再開できる。
本発明によれば、電力線を用いたアドホックなネットワークにおいて、全通信に消費される帯域の中で制御パケットの送信に消費される帯域が占める割合を大幅に削減等して、本来送信したいデータの送信を確保できる通信端末装置及び通信方法等を提供できる。
101 サービスエリア
102〜110、501〜505、701、1701〜1706 端末
201 メモリ
202 CPU
203 ネットワークインタフェース
301 PHYヘッダ
302 MACヘッダ
303 ペイロード
401 受信処理部
402 変調方式決定部
403 利用効率判定部
404 制御パケット送信部
405 送信処理部
506〜508、901、1707〜1709、2101、2901〜2903、3101 カバーエリア
1301〜1303、2501〜2504、3301〜3305 ビーコン
1304〜1310、2511〜2517、3311〜3324、3351〜3358 パケット
1901 雑音源
1902、2102 ロスエリア
2802 中継先アドレス決定部