JP2010185037A - 粘着シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い平滑性と保管安定性、及び加工性に優れた粘着シートやその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の粘着シート1は、剥離フィルム2の少なくとも一方の面に架橋してなる粘着層3を備え、架橋後の粘着層3の周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、光ディスクなどの保護膜などを積層するのに好適な粘着シート、及びその製造方法に関する。
粘着シートは、一般的に、長尺状に形成され、これをロール状の巻取体とした後、所望の形状に加工して用いられるものである。しかし、このような粘着シート巻取体は、巻圧によって粘着層に微小変形が生じたり、巻取り時に層間に噛み込んだ異物等による押し痕や傷等が生じたりするなどの不具合が発生することがあった。ディスプレイやDVD、ブルーレイディスクなどの光ディスクなどの保護膜等に用いる場合は、光学的に高い平滑性が求められるものであり、このような用途に用いた場合、製品の性能を大きく低下させるという問題があった。
そこで、例えば、特許文献1には、長尺の剥離シート上に接着剤層と剥離シートからなる基材とをこの順に積層し、さらに基材上に接着剤層の主使用部以外の部分に対応する部分に保護材を備えてなる積層シートが開示されており、この積層シートによれば、巻取体としたときにも、保護材に巻圧が集まるため、接着剤層表面の平滑性を保持することができるものである。
特開2008−150613号公報
上記特許文献1では、接着剤層の主使用部以外の部分の対応する部分に保護材を設けることで巻取体の保管安定性を改善する策が提案されているが、保護材を接着剤層上に形成するため、保護材に巻圧がかかった場合、その真下やその周囲の接着剤層の変形は避けられないという問題があった。
そこで、本発明の目的は、高い平滑性と保管安定性、及び加工性に優れた粘着シート及びその製造方法を提供するものである。
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、粘着シートを構成する粘着層について、貯蔵せん断弾性率を所定の範囲に収めることにより、高温下等の環境変化に曝された場合に粘着層の変形が起こりにくく、また保管や取回し時に押痕等変形が発生した場合、変形が回復されやすいことを見出した。また、粘着シートに用いられる剥離フィルムの長尺方向の両端部に賦型を施し、該粘着層にかかる巻圧を緩和させることにより、高い平滑性と保管安定性、加工性により優れた巻取体を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の粘着シートは、剥離フィルムの少なくとも一方の面に粘着層を備え、該粘着層を架橋してなり、架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲にあることを特徴とするものである。
また、本発明の粘着シートの製造方法は、第1の剥離フィルム上に、架橋後の周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲にある粘着層を介して基材フィルム及び/又は第2の剥離フィルムをこの順に積層して積層体を形成した後、該積層体の幅方向両端部側に、賦型加工して保護部を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
本発明の粘着シートは、粘着層の引張貯蔵弾性率を上記範囲にしたため、高い平滑性と保管安定性、及び加工性に優れるという利点があり、ディスプレイやブルーレイディスクなどの光ディスク保護膜用途等、粘着シートに対して光学的に高い平滑性が求められる用途に好適に用いることができ、また、巻取体としても平滑性が損なわれることなく用いることができる。
本発明の粘着シートの製造方法は、粘着層の引張貯蔵弾性率を上記範囲にしたため、剥離フィルム、基材フィルム、粘着層などを積層してから賦型加工して保護部を形成しても、保護部の周囲の粘着層を変形させることなく粘着シートを製造することができる。
本発明の一実施形態の粘着シートを模式的に表した断面図である。 本発明の一実施形態の粘着シートに対し保護部を設けた一例を示した斜視図である。 実施例及び比較例における、架橋後の粘着層の引張貯蔵弾性率を示したグラフであり、縦軸は引張貯蔵弾性率E’(Pa)を示し、横軸は温度(℃)を示す。
(粘着シート)
本発明の一実施形態の粘着シート1は、図1に示すように、剥離フィルム2の少なくとも一方の面に架橋してなる粘着層3を備えたものであり、架橋後の粘着層3は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上、好ましくは8万Pa以上、及び100万Pa以下、好ましくは70万Pa以下の範囲である物性を備えるものである。
本発明は、粘着層の引張貯蔵弾性率を上記範囲に調整することによって、高温下等の環境変化に曝された場合に粘着層の変形が起こりにくく、また保管や取回し時に押痕等変形が発生した場合、変形が回復されやすいという性質を付与させることができる。
本発明においては、架橋後の粘着層の周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲となるように架橋度を調整することにより、高温下等での環境変化にさらされた場合に粘着剤の変形が起こりにくく、また保管や取回し時に押痕等変形が発生した場合、変形が回復されやすいという性質を付与させることができ、加えて、剥離フィルムの粘着層からの剥離強度を所定の範囲内に効果的に調整することが可能となる。
なお、引張貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定器(アイティー計測制御社製、DVA225)を用いて、4mm幅×40mm長さ(チャック間距離)の試料片を用いて、引っ張り式により、測定周波数1Hzにて測定温度を0℃〜125℃まで変化させて測定することができる。
(剥離フィルム2)
剥離フィルム2としては、いかなる材質のものも使用でき、ポリエステル系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系のキャストフィルムや延伸フィルムにシリコーン離型処理したものや、離型紙から選択でき、特に制限されるものではない。剥離フィルムの厚みとしては、25μm〜250μm、特に50μm〜100μmとすることが好ましい。
(粘着層3)
粘着層3としては、主剤(主成分となる材料、ベースポリマーとも称する。)として、アクリル系、シリコーン系、ポリウレタン系、スチレン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、エポキシ系などのポリマーを挙げることができ、その性状(形態)は、液状体、高粘性体、エラストマー状体などの各種性状のものを用いればよい。このようなベースポリマー(主剤)を適宜選択し、それぞれに適した架橋方法を用いて所望の粘弾性特性を有する粘着層をそれぞれ形成することができる。
(ベースポリマー)
上記主剤の中でも、アクリル系、特に(メタ)アクリル酸エステル重合体(共重合体を含む)をベースポリマー(主剤)として用い、これを架橋して粘着層を形成するのが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体を合成するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーとしては、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。これら主モノマーに、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、イタコン酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチロールアクリルアミド、無水マレイン酸等の架橋性モノマーや、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、スチレン、フッ素アクリレート、シリコーンアクリレートなどの高凝集モノマーや官能基含有モノマーを適宜添加することができる。
これらのモノマーを用いた重合処理としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合方法が採用可能であり、その際に重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いることによりアクリル酸エステル共重合体を得ることができる。
(架橋剤)
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等を挙げることができ、これらを1種又は2種以上用いることができる。
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマー及びこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらには公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。
エポキシ系架橋剤としては、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリジル−m−キシリレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリンなどを挙げることができる。アジリジン系架橋剤の例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカーボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリス−1−(2−メチルアジリジン)フォスフィン、トリメチロールプロパントリ−β−(2メチルアジリジン)プロピオネートなどを挙げることができる。
これら架橋剤の含有量は、引張貯蔵弾性率が上述した範囲内に入るよう適宜調整すればよいが、ベースポリマーの架橋性基導入量に対して、0.5〜2等量の範囲であることが好ましい。
架橋剤が0.5等量以下であれば、粘着層の凝集力が不十分となったり、変形が起こり易く保管安定性に劣ったりすることがなく、裁断等2次加工時に時端面に粘着層のはみ出しが起こりにくく好ましい。また2.0等量以内であれば、粘着剤が硬くなりすぎて接着力が低下したり、応力緩和性が損なわれて積層シートにカールが発生したり、相溶性の低下による白化等の不具合が起こったりするなどの問題がなく好ましい。
(架橋モノマー)
上記架橋剤の代わりに架橋モノマーを使用することもでき、架橋モノマーとしては、アクリル系架橋モノマーを用いるのが好ましく、中でも、単官能(メタ)アクリレートよりは、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、若しくは、単官能〜4官能(メタ)アクリレートの2種以上が混合してなる混合物が好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸、メタタクリル酸及びクロトン酸等の(メタ)アクリル酸類、ラウリルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、2−ヒドロキシプオピルアクリレート、テトラヒドロフルフリールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートおよびジシクロペンタンジエンアクリレート等を挙げることができる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレート等を挙げることができる。
3官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート等のトリアクリレート及びその誘導体や、それらのトリメタクリレートなどを挙げることができる。
4官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を挙げることができる。
なお、架橋モノマーは、以上例示した(メタ)アクリレートに限定されるものではなく、例えば有機官能基を含有した(メタ)アクリレートモノマー等も好適に用いることが可能である。
架橋モノマーの含有量は、上記引張貯蔵弾性率が所定範囲内に入るように調整すればよいが、ベースポリマー100質量部に対して、0.5〜25質量部の範囲で、ベースポリマーの分子量が低ければ多く、高ければ少なくなるように適宜調整すれば良い。
(架橋開始剤)
上記架橋モノマーを使用した場合において、各種架橋開始剤として、光開始剤あるいは熱重合開始剤を用いることが可能であり、特に光開始剤が好ましい。光開始剤としては、開裂型の光開始剤及び水素引抜型の光開始剤のいずれを用いることもでき、中でも水素引抜型光開始剤が好ましい。水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、イソブチルチオキサンソンなどのいずれかもしくはその誘導体、或いはこれらの二種類以上の組み合わせからなる混合成分を用いることができる。但し、水素引抜型の光開始剤として前記に挙げた物質に限定するものではない。また、水素引抜型と開裂型とを種々の割合で併用してもよい。
光開始剤の添加量は、特に制限されるものではなく、一般的にはベースポリマー100質量部に対し0.1〜5質量部の割合の範囲内で調整するのがよい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
(他の添加剤)
上記成分のほか、必要に応じて、近赤外線吸収特性を有する顔料や染料などの色素、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズなどの各種の添加剤を適宜配合することもできる。
(粘着層3の物性調整)
粘着層3の物性調整としては、例えば、粘着層3を構成するベースポリマーと、架橋剤とを適宜選択し、これらを含有する粘着剤組成物を所望の引張貯蔵弾性率となるように架橋度を調整する方法を挙げることができる。
(積層構成)
粘着シート1は、剥離フィルム2と粘着層3以外にも、その他の層を備えることができる。例えば、剥離フィルム上に粘着層を介して基材フィルムを積層させたり、さらにこの基材フィルム上に他の粘着層を介して他の剥離フィルム等を積層させたりすることもできる。この際の基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリイミド、PMMA、ウレタンアクリレートを主成分とするUV硬化樹脂などからなる樹脂フィルム又はこれらの積層体を挙げることができる。なお、前記基材フィルムには、さらにハードコート層を積層させたりすることもできる。
(製造方法)
粘着シート1は、例えば、剥離フィルム2上に、上記成分を含む粘着層成分を塗布し、架橋させて粘着層3を形成して製造することができる。
粘着層3は、他に、重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いて、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの重合方法により、各種(メタ)アクリル酸エステル重合体を得て、該重合体を架橋・製膜することで製造する方法などで製造することができる。これらの中でも溶液重合により、各種(メタ)アクリル酸エステル共重合体を得て、該重合体を含有する上記粘着剤組成物を、剥離フィルム上に目的の厚さになるように製膜し、溶剤を乾燥させて架橋することで製造する方法が好ましい。
(保護部)
本発明の粘着シートは、さらに、剥離フィルムの表面又は裏面の幅方向両端部側に保護部を形成することが好ましい。
例えば、図2に示すように、保護部8とは、剥離フィルム5、粘着層6、樹脂フィルム7を順に積層した粘着シート4とした場合、粘着層及び樹脂フィルムの厚みよりも高く形成するものであり、保護部を形成することにより、粘着層にかかる巻圧を緩和させることができ、痕や傷などが付くのを効果的に防止でき、高い平滑性と保管安定性を付与させることができ、巻取体として用いることも可能となる。
保護部は、他の樹脂フィルムを積層したり、剥離フィルムを折り返したり、ハーフカットしたりなどして形成することができる。
また、賦型加工により保護部を形成することもでき、経済的に有利であり、かつ別材料を使用することもないので、再利用の観点から極めて有利となる。
賦型加工する方法としては、プレス装置や超音波溶着装置などで賦型加工する方法を挙げることができる。中でも、超音波溶着装置を用いるのが好ましく、これにより、剥離フィルム上に適宜高さの賦型(凹凸の連続する凹凸構造)を容易に施すことができる。なお、超音波溶着装置とは、剥離フィルムに超音波を発して溶融させ、ローラーにより賦型加工できるものであり、別名超音波ミシンとも呼ばれているものである。適宜ローラーを選択することにより、様々な形状の賦型加工することができる。具体的には、株式会社プロコ製PUS−2150などがある。
賦型加工する場合の粘着シートの製造方法としては、例えば、第1の剥離フィルム上に、架橋後の周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上、特に好ましくは8万Pa以上及び、100万Pa以下、特に好ましくは70万Pa以下の範囲にある粘着層を形成し、さらにその上に基材フィルム及び/又は第2の剥離フィルムをこの順に積層して積層体を形成した後、該積層体の幅方向両端部側に、賦型加工して保護部を形成することができる。
この製造方法は、粘着層の引張貯蔵弾性率を上記範囲にしたため、剥離フィルム、基材フィルム、粘着層などを積層してから賦型加工して保護部を形成しても、保護部の周囲の粘着層を変形させることなく粘着シートを形成することができるという利点がある。
保護部の高さは、適宜調整することができるが、剥離フィルムの表面から100μm〜200μm、特に120μm〜150μmの高さに形成することが可能となる。また、保護部の幅は、8mm〜4mm、特に約6mmとするのが好ましい。
(粘着シート巻取体)
本発明の粘着シートは、巻芯などに巻き回して粘着シート巻取体とすることができる。
粘着シート巻取体としては、上述した粘着シートを環状体に巻き取ってなるものであれば、特に制限されるものではない。このようにすることにより、粘着シートが環状体に連続して巻き取られるため、シート状の積層体に比較して製造装置の小型化が可能になるとともに、保管スペースも小さくできる。
(用途)
本発明の粘着シートは、ディスプレイや光ディスクなどの光学部材等に保護膜を貼付するのに好適に用いることができ、特に、高い平滑性の求められるブルーレイディスクにおいて、保護膜を積層するために用いるのが好適である。
(用語の説明)
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば、厚さに関して言えば、狭義では100μm未満のものをフィルムと称することがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かではなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明では、「モノマー」と記載した場合でも「オリゴマー」を包含するものとする。「オリゴマー」とは、JIS−K6900による定義では「1種又はそれ以上の種類の原子または原子団(構成単位)の少数が互いに繰り返し連結されたものを含む分子からなる物質」とされ、また、高分子大辞典によれば「この定義は、必ずしも絶対的な重合度や分子量でポリマーとオリゴマーを区別するものではない」とされている。一般的にモノマーとオリゴマーの区別は不明確であり、分子中に構成単位の繰り返しがあってもモノマーと呼称する場合もあるから、本発明では、モノマーとオリゴマーとは区別せず、モノマーにオリゴマーを包含するものとする。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
アクリル酸ブチル73質量部、アクリル酸メチル7質量部、メタクリル酸メチル18質量部及びアクリル酸2質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加え粘着主剤溶液を調整した。
この前記粘着主剤溶液1kgに対して、架橋剤として熱硬化型架橋剤であるポリイソシアネート化合物(成分、ポリイソシアネート、旭化成、デュラネートMHG−80B)を0.3g加え粘着層溶液とした。続いて剥離フィルムとしてシリコーンにて離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイヤホイルMRA−75 巾1000mm、厚み75μm)の離型処理面に、前記粘着層溶液を、塗工巾960mm乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布、乾燥させて粘着層を形成した後、その粘着層上に、シリコーンにて剥離処理し、ポリエチレンテレフタレートからなる別の剥離フィルム(ダイヤホイルMRF−38 巾1000mm、厚み38μm)の離型処理面を積層して粘着シートを形成し、その粘着シートを、直径6インチのプラスチック製巻芯に巻取り、粘着シート巻取体を形成した。この巻取体の状態で温度23℃湿度60%環境下1週間養生して粘着剤を架橋させ、粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において620000Pa、120℃において90000Paであった。
(実施例2)
実施例1で用いたポリイソシアネート化合物の代わりに、粘着主剤溶液1kgに対してエポキシ樹脂系硬化剤(綜研化学社製E−AX)3gとした以外は実施例1と同様にして粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において510000Pa、120℃において127000Paであった。
(実施例3)
実施例1で用いた粘着層溶液の代わりに、アクリル酸ブチル63質量部、アクリル酸メチル35質量部及びアクリル酸2質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加えた粘着主剤溶液1kgに対し熱硬化型架橋剤であるポリイソシアネート化合物(旭化成製デュラネートMHG−80B)0.6gを添加したものとした以外は、実施例1と同様にして粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において440000Pa、120℃において160000Paであった。
(実施例4)
実施例1で用いた粘着層溶液の代わりに、アクリル酸ブチル90質量部、メタクリル酸メチル6質量部及びアクリル酸4質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加えた粘着主剤溶液1kgに対し、熱硬化型架橋剤であるイソシアネート化合物(旭化成製デュラネートMFA−80B)0.6gを添加したものとした以外は、実施例1と同様にして粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において330000Pa、120℃において240000Paであった。
(実施例5)
実施例1で用いた粘着層溶液を、剥離フィルムとしてシリコーンにて離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイヤホイルMRF−75 巾1000mm、厚み75μm)の離型処理面に、前記粘着層溶液を、塗工巾960mm乾燥後の厚みが30μmとなるよう塗布、乾燥させて粘着層を形成した後、その粘着層上に、シリコーンにて剥離処理し、ポリエチレンテレフタレートからなる別の剥離フィルム(ニッパ株式会社製 PET38−A3 巾1000mm、厚み38μm)の離型処理面を積層して粘着シートを形成し、該粘着シート両端の粘着層未塗工部に、超音波ミシン(株式会社プロコ製PUS−2150)にて、巾6mm、賦型高さ120μと成るように凹凸賦型を施した後、直径6インチのプラスチック製巻芯に巻取り、粘着シート巻取体を形成した。
(比較例1)
粘着層溶液として、ウレタンアクリレート系粘着剤(日本合成化学製UV3610ID80)1kgに対して光重合開始剤(Lanberti社製ESACURE TZT)20g混合した後、酢酸エチルで固形分濃度50%に希釈したものを用いた以外は実施例2と同様にして粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において1290000Pa、120℃において1360000Paであった。
(比較例2)
実施例1で用いたポリイソシアネート化合物の添加量を0.1gとする以外は、実施例1と同様にして粘着シート巻取体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において516000Pa、120℃においては試験片が流動して形状を保持出来ず、測定不能であった。
(比較例3)
実施例1で用いた粘着層溶液の代わりに、2−エチルヘキシルアクリレート75質量部、酢酸ビニル20質量部及びアクリル酸5質量部の共重合体に、酢酸エチルを固形分30%となるよう加えた粘着主剤溶液1kgに対し、熱硬化剤であるイソシアネート化合物(旭化成製デュラネートMHG−80B)1gを添加したものとした以外は、実施例1と同様にして粘着シート巻取り体を作成した。
架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定したところ、図3に示すように、25℃において170000Pa、120℃においては試験片が120℃付近で切れてしまい測定不能であった。
[評価]
(保管安定性)
実施例及び比較例で作成した粘着シート巻取体を1週間保管した後、レーザー干渉計(フジノン製F601)にて粘着シートに650nm単波長レーザーを透過させ、透過光より観察される干渉縞から平滑性を目視確認した。
比較例2及び比較例3で作成した粘着シート巻取体は、柚子肌状の微小ムラの発生が確認されたが、他は、良好であった。
(加工性)
実施例及び比較例で作成した粘着シート巻取体について、トムソン刃による裁断加工を10枚行い、裁断時の状況を確認した。
比較例1で作成した粘着シート巻取体は、裁断端面の粘着層と剥離フィルム界面で浮き・剥離が起こった。また比較例2及び比較例3で作成した粘着シート巻取体では、裁断端面の粘着層の変形、はみ出しが発生した。他は、良好であった。
(結果)
実施例は、保管安定性及び加工性の両評価とも好適な結果となった。比較例1は、加工性の点で劣っており、比較例2及び比較例3は、両評価の点で劣っていた。
比較例1で示すように、引張貯蔵弾性率が高すぎると、剥離フィルムを剥離して、粘着層を所望の被着体に貼合して使用する際、粘着層が硬くなりすぎて貼合に十分なタックが得られず、被着体への貼合直後の接着力が得られにくくなる。そのため、引張貯蔵弾性率は、100万Pa以下、好ましくは70万Pa以下とするのがよいと思われる。
また、比較例2及び比較例3で示すように、引張貯蔵弾性率が低すぎると、長期保管された場合や高温下等の環境変化に曝された場合に粘着層の変形が起こりやすく、また保管や取回し時に押痕等変形が発生した場合、変形が塑性変形したまま回復されにくくなる。そのため、引張貯蔵弾性率は、5万Pa以上、好ましくは8万Pa以上とするのがよいものと思われる。
1粘着シート 2剥離フィルム 3粘着層 4粘着シート 5剥離フィルム 6粘着層 7樹脂フィルム 8保護部

Claims (8)

  1. 剥離フィルムの少なくとも一方の面に粘着層を備え、該粘着層を架橋してなる粘着シートであって、
    前記架橋後の粘着層は、周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲にあることを特徴とする粘着シート。
  2. 前記粘着層が、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含むベースポリマーと架橋剤とを含有する粘着剤組成物からなることを特徴とする請求項1記載の粘着シート。
  3. 剥離フィルムの表面又は裏面の幅方向両端部側に、保護部を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
  4. 保護部が、超音波溶着装置により形成されたことを特徴とする請求項3記載の粘着シート。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シートからなる光学部材用粘着シート。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の粘着シートからなる光ディスク用粘着シート。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の粘着シートを巻き取りしてなる粘着シート巻取体。
  8. 第1の剥離フィルム上に、架橋後の周波数1Hzにおける引張貯蔵弾性率の温度分散挙動を測定した時に、25℃〜120℃の温度範囲におけるいずれにおいても5万Pa以上100万Pa以下の範囲にある粘着層を介して基材フィルム及び/又は第2の剥離フィルムをこの順に積層して積層体を形成した後、該積層体の幅方向両端部側に、賦型加工して保護部を形成する工程を含む粘着シートの製造方法。
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