JP2010184966A - 熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】植物由来材料および生分解性樹脂を含有し、剛性に優れ、更に、耐熱特性に優れた熱可塑性重合体組成物を提供する。
【解決手段】特定の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と特定のスチレン系樹脂(B)と以下の(CI)及び(CII)から選択される1種以上の無機充填剤(C)とを含有して成り、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の配合比率は15〜85質量%、スチレン系樹脂(B)の配合比率は15〜85質量%(但し成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%とする)、無機充填剤(C)の配合比率は成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して3〜100質量部である熱可塑性樹脂組成物。
上記の(CI)は、体積平均粒子径0.5〜30μmの無機充填剤であり、上記の(CII)は繊維状無機充填剤である。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品に関し、詳しくは、脂肪族ポリエステルと無機充填剤を含有する熱可塑性樹脂組成物および当該熱可塑性樹脂組成物から成る樹脂成形品に関する。
化石由来資源を原料とするプラスチックは、地球温暖化や廃棄物処理の観点から環境汚染の元凶とまで言われるようになって来ている。そのような背景から生分解ポリマーや植物由来原料を使用したポリマーへの期待が高まり、研究、開発が活発に行われている。脂肪族ポリエステルは、生分解性を有する材料として注目を集めており、また、植物由来原料を使用した材料が生産されるようになり、環境負荷低減効果が見込まれることから、各種分野への展開が期待されている。しかしながら、脂肪族ポリエステルは、加水分解性が強く、高温高湿下での性能保持に課題があり、しかも、一般的に衝撃性が低い。従って、脂肪族ポリエステル単独ではその使用分野に大きな制限がある。
耐衝撃性を向上させる方法として、脂肪族ポリエステルとABS樹脂を含む各種のスチレン系樹脂との組成物が提案されている(特許文献1〜3)。しかしながら、本発明者らの検討によると、何れの樹脂組成物も耐衝撃性の向上効果は少なく、また、耐衝撃性と剛性が共に高い値を示すものを得ることは出来なかった。また、耐衝撃性および剛性の改良に関する提案として、ポリ乳酸樹脂と特定のゴム強化樹脂との組成物が提案されている(特許文献4、5)。しかしながら、斯かる組成物は、曲げ弾性率などの機械的特性や、耐熱性が不十分であり、使用される分野が限定されている。
特開2005−171205号公報 特開2006−45485号公報 特開2006−45486号公報 特開2006−137908号公報 特開2008−285512号公報
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、植物由来材料および生分解性樹脂を含有し、剛性に優れ、更に、耐熱特性に優れた熱可塑性重合体組成物、および、当該熱可塑性樹脂組成物から成る樹脂成形品を提供することにある。
すなわち、本発明の第1の要旨は、以下の(AI)と(AII)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と以下の(BI)〜(BIII)から選択される1種以上のスチレン系樹脂(B)と以下の(CI)及び(CII)から選択される1種以上の無機充填剤(C)とを含有して成り、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の配合比率は15〜85質量%、スチレン系樹脂(B)の配合比率は15〜85質量%(但し成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%とする)、無機充填剤(C)の配合比率は成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して3〜100質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
上記の(AI)は、繰り返し単位として脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/又は脂環式ジカルボン酸(その誘導体を含む)から形成される単位とを有する脂肪族ポリエステル系樹脂であり、上記の(AII)は、乳酸単位の含有量が70モル%以上であるポリ乳酸系脂肪族ポリエステル樹脂である。
上記のスチレン系樹脂(BI)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に芳香族ビニル化合物および共重合可能な他のビニル化合物を含有するビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BII)はビニル系単量体(b2)の重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BIII)は、スチレン系樹脂(BI)と(BII)の混合物である。
上記の(CI)は、体積平均粒子径0.5〜30μmの無機充填剤であり、上記の(CII)は繊維状無機充填剤である。
そして、本発明の第2の要旨は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形して成ることを特徴とする樹脂成形体に存する。
本発明によれば、植物由来材料および生分解性樹脂を含有し、剛性に優れ、更に、耐熱特性に優れた熱可塑性重合体組成物、および、当該熱可塑性樹脂組成物から成る樹脂成形品が提供される。
以下、本発明を説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とはアクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
本発明においては、必須成分として、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)及び無機充填剤(C)を使用する。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)>
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)は、繰り返し単位として、脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/又は脂環式ジカルボン酸(その誘導体を含む)から形成される単位とを有する。
上記のジオールは以下の一般式(1)で表すことが出来る。
Figure 2010184966
一般式(1)中、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数としては、通常2〜11、好ましくは2〜6である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。Rは、好ましくは「−(CH−」であり、ここで、nは2〜11の整数、好ましくは2〜6の整数を示す。
上記のジオールの具体例としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、1,4−ブタンジオールが好ましい。上記のジオールは2種以上を併用してもよい。
上記のジカルボン酸は以下の一般式(2)で表すことが出来る。
Figure 2010184966
一般式(2)中、Rは直接結合または2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数は、通常2〜11、好ましくは2〜6である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。Rは、好ましくは「−(CH−」であり、ここで、mは0又は1〜11の整数、好ましくは0又は1〜6の整数を示す。
ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スバリン酸、ドデカン二酸などが挙げられ、その誘導体としては、これらの低級アルキルエステル及び酸無水物が挙げられる。誘導体としては、2個のカルボキシル基の双方が例えばエステル基などに変換されている化合物が好ましい。これらの中では、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸またはアジピン酸が好ましく、特にコハク酸が好ましい。上記のジカルボン酸は2種以上を併用してもよい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)には、2官能脂肪族オキシカルボン酸および3官能性脂肪族オキシカルボン酸を共重合することが出来る。
2官能脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基と1個のカルボン酸基を有するものであれば、特に制限されないが、以下の一般式(3)で表される脂肪族オキシカルボン酸が好適である。
Figure 2010184966
一般式(3)中、Rは2価の脂肪族炭化水素基を表す。Rの炭素数は、通常1〜11、好ましくは1〜16である。Rはシクロアルキレン基を包含し、また、分岐鎖を有していてもよい。
2官能脂肪族オキシカルボン酸は、好ましくは、1つの炭素原子に水酸基とカルボキシル基を持つ化合物であり、特に、以下の一般式(4)で表される化合物を使用すると重合速度が増大するので好ましい。
Figure 2010184966
一般式(4)中、zは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜10、更に好ましくは0又は1〜5である。
2官能脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸、これらの混合物などが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、ラセミ体の何れでもよく、形状としては、固体、液体、水溶液の何れであってもよい。特に、使用時の重合速度の増大が顕著であり且つ入手が容易である、乳酸またはグリコール酸およびこれらの水溶液が好ましい。乳酸やグリコール酸は、50%、70%、90%の水溶液が一般に市販されており、入手が容易である。
3官能脂肪族オキシカルボン酸としては、水酸基とカルボキシル基の両方を合わせて3個有する化合物、すなわち、(a)分子中にカルボキシル基2個と水酸基1個を有する化合物、(b)分子中にカルボキシル基1個と水酸基2個を有する化合物がある。市場からの入手性が容易であり且つ低コストである点から、上記の(a)が好ましい。また、比較的低分子量のものが好ましく、具体的にはリンゴ酸が好適である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)は、前記の成分を使用し、ポリエステル生成条件下に反応させて得ることが出来る。ここで、ポリエステル生成条件とは、(a)単純な脱水反応によるエステル結合生成、(b)他の縮合である脱アルコール(即ちエステル交換)、(c)酸無水物を使用した場合は付加を生じさせる条件を意味する。脱水または脱アルコール促進のために共沸剤を使用してもよく、減圧条件を採用してもよい。更に、触媒を使用してもよい。
ジオール成分の使用割合は、ジカルボン成分(誘導体を含む)に対して実質的に等モルであるが、実際の製造過程においてはエステル化反応中に留出することがあることから、ジカルボン成分に対して通常1〜20モル%過剰に使用する。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常60モル以下、好ましくは0.04〜20モル、更に好ましくは3〜10モルである。斯かる使用量により、より高分子量の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を得ることが出来る。2官能脂肪族オキシカルボン酸の使用量は、ジカルボン成分100モルに対し、通常5モル以下、好ましくは1モル以下である。使用量が5モルを超えると反応中ゲル化の危険性が大きくなる。
2官能脂肪族オキシカルボン酸の添加時期は、ポリエステル生成反応以前であれば特に限定されないが、(a)予め脂肪族オキシカルボン酸溶液に触媒を溶解させた状態で原料仕込時またはエステル化反応中に添加する方法、または(b)原料仕込時に触媒を添加すると同時に添加する方法が好ましい。
エステル化反応に使用される触媒としては、ゲルマニウム、チタン、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの反応系に可溶の金属化合物が挙げられる。これらの中では、ゲルマニウム化合物が好ましく、その具体例としては、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易性から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム又はテトラブチキシゲルマニウムが特に好ましい。
触媒の使用量は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.005〜1.5質量%である。触媒の添加時期は、ポリエステル生成以前であれば特に制限されないが、原料仕込み時に添加してもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に2官能脂肪族オキシカルボン酸と同時に添加するか、または2官能性脂肪族オキシカルボン酸およびその水溶液に触媒を溶解して添加するのが特に好ましい。
エステル化反応の温度、時間、圧力などの条件は、目的物である脂肪族ポリエステルが得られる条件でれば特に限定されないが、反応温度は、通常150〜260℃、好ましくは180〜230℃、反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2〜15時間、反応圧力は、通常10mmHg以下、好ましくは2mmHg以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)の数平均分子量(Mn)は、本発明の目的である耐衝撃性の面から、通常1〜20万、好ましくは3〜20万である。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比、Mw/Mnは、通常3以上、好ましくは4以上である。
本発明においては、本発明の目的の1つである環境負荷低減をより向上させる観点から、脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)を構成するジオール成分およびジカルボン成分(誘導体を含む)の少なくとも何れかが植物由来であることが好ましく、両原料とも植物由来であることが更に好ましい。
脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)には、本発明の効果を損なわない限り、他の共重合成分を導入することが出来る。他の共重合成分としては、ヒドロキシ安息香酸などの芳香族オキシカルボン酸;ビスフェノールA等の芳香族ジオール類;テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;3官能以上の脂肪族ポリオール、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸;4官能以上のオキシカルボン酸などが挙げられる。これらの成分の使用割合は、使用するモノマー量の合計量に対し、通常50モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
<脂肪族ポリエステル系樹脂(AII)>
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(AII)は、乳酸単位の含有量が70モル%以上であるポリ乳酸系脂肪族ポリエステル樹脂である。ポリ乳酸系脂肪族ポリエステル樹脂の数平均分子量は、十分な強度を有する観点から、通常3万以上、好ましくは10万以上であり、その上限は通常90万である。乳酸のL体とD体のモル比(L/D)は制限されず、100/0〜0/100の全ての組成が使用できる。弾性率の高いものが好ましい場合は、L体が95%以上であることが好ましい。ポリ乳酸系脂肪族ポリエステル樹脂における乳酸単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは95モル%以上である。ポリ乳酸の製造法は、特に限定されず、例えば、ラクチドを経由する開環重合法、乳酸の直接重縮合法が挙げられる。
なお、乳酸以外の単量体単位としては、前述の脂肪族ポリエステルポリエーテル共重合体(AI)における脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位および脂肪族オキシカルボン酸単位のうち任意のものを使用することが出来る。
<スチレン系樹脂(B)>
本発明で使用するスチレン系樹脂(B)は次の(BI)〜(BIII)から選択される1種以上のスチレン系樹脂である。すなわち、上記のスチレン系樹脂(BI)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に芳香族ビニル化合物および共重合可能な他のビニル化合物を含有するビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BII)はビニル系単量体(b2)の重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BIII)は、スチレン系樹脂(BI)と(BII)の混合物である。
<スチレン系樹脂(BI)>
ゴム質重合体(b1)としては、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、シリコーン・アクリル系IPNゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン−イソプレン系ブロック共重合体、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエン系ブロック共重合体の水素添加物などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリルゴム、シリコーンゴム、天然ゴムが好ましい。
ゴム質重合体(b1)のゲル含率は、特に限定されないが、乳化重合でゴム質重合体(b1)を得る場合、通常98質量%以下、好ましくは40〜98質量%である。この範囲において、特に、耐衝撃性に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得ることが出来る。ゲル含率は、ゴム質重合体(b1)の製造時に、分子量調節剤の種類および量、重合時間、重合温度、重合転化率などを適宜設定することにより調整される。また、上記ゲル含率は、以下に示す方法により求めることが出来る。
すなわち、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュの金網(質量をW1グラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量し(質量W2グラムとする)、以下の式(I)により算出する。
Figure 2010184966
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。また、これらの中では、スチレン又はα−メチルスチレンが好ましい。
スチレン系樹脂(BI)中のゴム質重合体(b1)の含有量は、スチレン系樹脂(BI)を基準として(100質量%として)、通常20〜80質量%、好ましくは3〜75質量%、更に好ましくは40〜70質量%である。
芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、ビニルシアン化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、および、その他の各種官能基含有不飽和化合物などが挙げられる。
本発明の好ましい態様においては、芳香族ビニル化合物を必須単量体成分とし、これに必要に応じ、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物およびマレイミド化合物からなる群より選ばれる1種または2種以上が単量体成分として使用され、更に必要に応じ、その他の各種官能基含有不飽和化合物の少なくとも1種が単量体成分として併用される。その他の各種官能基含有不飽和化合物としては、不飽和酸化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、オキサドリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
シアン化ビニル合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。シアン化ビニル化合物を使用すると耐薬品性が付与される。シアン化ビニル化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用すると、表面硬度が向上し、また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の相溶性が向上する場合がある。(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜80質量%、好ましくは5〜80質量%である。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。また、マレイミド単位を導入するために、無水マレイン酸を共重合させ、後イミド化してもよい。マレイミド化合物を使用すると耐熱性が付与される。マレイミド化合物の使用量は、全単量体成分中の割合として、通常1〜60質量%、好ましくは5〜50質量%である。
不飽和酸化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、p−アミノスチレン等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
その他の各種官能基含有不飽和化合物を使用した場合、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とをブレンドした際、両者の相溶性が向上する場合がある。斯かる効果を達成するために好ましい単量体は、エポキシ基含有不飽和化合、不飽和酸化合物および水酸基含有不飽和化合物である。その他の各種官能基含有不飽和化合物の使用量は、スチレン系樹脂(BI)中に使用される当該官能基含有不飽和化合物の合計量として、スチレン系樹脂(BI)に対し、通常0.1〜25質量%、好ましくは0.1〜15質量%であり、スチレン系樹脂(BIII)に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である
全ビニル単量体中の芳香族ビニル化合物以外の単量体の使用量は、全ビニル単量体を基準として(100質量%とし)、通常80質量%以下、好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
ビニル単量体の好ましい組み合わせは、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/メタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル/グリシジルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/2−ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン/アクリロニトリル/(メタ)アクリル酸、スチレン/N−フェニルマレイミド、スチレン/メタクリル酸メチル/シクロヘキシルマレイミド等であり、特に好ましい組み合わせは、スチレン/アクリロニトリル=65/45〜90/10(質量比)、スチレン/メタクリル酸メチル=80/20〜20/80(質量比)、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル=スチレン量20〜80質量%/アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルの合計量20〜80質量%である。
スチレン系樹脂(BI)は、公知の重合法、例えば、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合およびこれらを組み合わせた重合法で製造することが出来る。これらのうち、ゴム質重合体(b1)の存在下にビニル系単量体を(共)重合する好ましい方法は、乳化重合および溶液重合である。
乳化重合で製造する場合、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などが使用されるが、これらは公知のものを使用できる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、重合開始助剤として、各種還元剤、含糖ピロリン酸鉄処方、スルホキシレート処方などのレドックス系を使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、ターピノーレン類などが挙げられる。乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、ラウリル酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、パルミチン酸カリウム等の高級脂肪酸塩、ロジン酸カリウム等のロジン酸塩などが挙げられる。
なお、乳化重合において、ゴム質重合体およびビニル系単量体の使用方法は、ゴム質重合体の全量の存在下にビニル系単量体を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、ゴム質重合体の一部を重合途中で添加してもよい。
乳化重合の後、得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、水洗、乾燥することにより、スチレン系樹脂(BI)の粉末を得る。この際、乳化重合で得た2種以上のスチレン系樹脂(BI)のラテックスを適宜ブレンドした後、凝固してもよい。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、または硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの酸を使用することが出来る。凝固剤として酸を使用した場合は、凝固後、アルカリ性水溶液で中和処理をすることが好ましく、斯かる中和処理により、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や耐加水分解性が向上する場合がある。中和処理に使用するアルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
溶液重合によりスチレン系樹脂(BI)を製造する場合に使用することの出来る溶剤は、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒であり、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
重合温度は、通常80〜140℃、好ましくは85〜120℃の範囲である。重合に際し、重合開始剤を使用してもよいし、重合開始剤を使用せずに、熱重合で重合してもよい。重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物などが好適に使用される。また、連鎖移動剤を使用する場合、例えば、メルカプタン類、ターピノレン類、α−メチルスチレンダイマー等を使用することが出来る。また、塊状重合、懸濁重合で製造する場合、溶液重合において説明した重合開始剤、連鎖移動剤などを使用することが出来る。上記の各重合法によって得たスチレン系樹脂(BI)中に残存する単量体の量は、通常10,000ppm以下、好ましくは5,000ppm以下である。
また、ゴム質重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られるスチレン系樹脂(BI)には、通常、ビニル系単量体がゴム質重合体にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分が含まれる。スチレン系樹脂(BI)のグラフト率は、通常20〜200質量%、好ましくは30〜150質量%、更に好ましくは40〜120質量%であり、グラフト率は、以下の式(II)により求めることが出来る。
Figure 2010184966
式(II)中、Tはスチレン系樹脂(BI)1gをアセトン20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sはスチレン系樹脂(B)1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
また、スチレン系樹脂(BI)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、通常0.2〜1.2dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/g、更に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。更に、スチレン系樹脂(BI)中に分散するグラフト化ゴム質重合体粒子の平均粒径は、通常50〜3,000nm、好ましくは100〜2,000nm、更に好ましくは150〜800nmのである。平均粒径は電子顕微鏡を使用する公知の方法で測定することが出来る。
<スチレン系樹脂(BII)>
スチレン系樹脂(BII)は前述のビニル系単量体(b2)の重合体である。すなわち、スチレン系樹脂(BI)と異なり、ゴム質重合体(b1)の非存在下にビニル系単量体(b2)を(共)重合して得られる重合体である。従って、スチレン系樹脂(BII)に関する説明は、前述のスチレン系樹脂(BI)の説明において、ゴム質重合体(b1)を使用しない点を除いて同じであり、「その他の各種官能基含有不飽和化合物」等の種類や使用量についても同様である。ただし、ゴム質重合体(b1)の非存在下にビニル系単量体を(共)重合する好ましい方法は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合である。塊状重合および懸濁重合は公知の方法を採用することが出来、溶液重合および乳化重合は、前述のスチレン系樹脂(BI)において説明したのと同様である。
<スチレン系樹脂(BIII)>
スチレン系樹脂(BII)は前述のスチレン系樹脂(BI)と(BII)の混合物である。スチレン系樹脂(BI)と(BII)との混合割合(質量比)は、通常1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.1〜1:5、更に好ましくは1:0.1〜1:2である。
スチレン系樹脂(BIII)中のゴム質重合体(b1)の含有量は、スチレン系樹脂(BIII)を基準として(100質量%として)、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは7〜30質量%である。
スチレン系樹脂(BIII)中の、不飽和酸化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、オキサドリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物、置換または非置換のアミノ基含有不飽和化合物の群から選択される1種以上の官能基含有不飽和化合物の使用量は、スチレン系樹脂(BIII)に対し、通常0.1〜30質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。
<無機充填剤(C)>
本発明で使用する無機充填剤(C)は、次の(CI)、(CII)から選択される1種以上の無機充填剤である。
<粒状無機充填剤(CI)>
本発明で使用する粒状無機充填剤(CI)の体積平均粒子径は0.5〜30μmであるが、好ましくは1〜15μm、更に好ましくは1.3〜13μmである。ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折法などにより測定された体積累積粒径の中心粒径、即ち、50%平均粒子径(以下「D50」ともいう)を意味する。体積平均粒子径が0.5μm未満である場合は、混練時に凝集を起こし、成形品の外観が劣り、剛性、耐熱特性の向上効果が充分ではなく、30μmを越える場合は、耐衝撃性などの物性や外観を損なう。
粒状無機充填剤(CI)としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、カオリン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタンホワイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ガラスビーズ、中空ガラス、ガラスフレーク、ワラストナイト、アタパルジャイト等が挙げられ、これらは2種類以上を併用してもよい。これらの中ではタルクが好ましい。タルクは、一般に、含水ケイ酸マグネシウム(4SiO・3MgO・HO)として知られており、約60質量%のSiOと約30質量%のMgOとを主成分とする鉱物である。なお、タルクは、シランカップリング剤などで表面処理して使用してもよい。
<繊維状無機充填剤(CII)>
本発明で使用する無機充填剤(CII)は繊維状無機充填剤である。繊維状無機充填剤(CII)の種類は、特に制限されないが、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、アラミド繊維、フッ素樹脂繊維、天然繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。これらの中では、無機繊維、特にガラス繊維が好適である。
本発明で使用するガラス繊維の種類は、特に制限されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、S−2ガラス等が挙げられる。これらの中では、アルカリ分が少なく、電気的特性が良好なEガラスが特に好適である。
本発明で使用する繊維状無機充填剤(CII)の平均繊維径は、特に制限されないが、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm、更に好ましくは3〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。平均繊維径が1μm未満の場合は、製造が容易でなく、コスト高である。また、平均繊維径が100μmを超える場合は、引張強度が低下する恐れがある。
本発明で使用する繊維状無機充填剤(CII)の平均繊維長は、特に制限されないが、通常0.1〜20mm、好ましくは1〜10mmである。平均繊維長が0.1mm未満の場合は、補強効果が十分に発現しない恐れがある。また、平均繊維長が20mmを超える場合は、樹脂との溶融混練や樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。
本発明で使用する繊維状無機充填剤(CII)、特にガラス繊維は、表面処理剤による処理がなされたものであることが好ましい。表面処理剤でガラス繊維の表面を処理することにより、樹脂とガラス繊維との界面に強固な接着または結合が生じ、樹脂からガラス繊維に応力が伝達され、ガラス繊維による一層高い補強効果が発現する。使用する表面処理剤は、特に制限されないが、例えば、ビニルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン等のクロロシラン系化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン系化合物、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系化合物の他、アミノシラン系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、エポキシ系化合物などが挙げられる。
本発明で使用する繊維状無機充填剤(CII)、特にガラス繊維は、収束剤による処理がなされたものであることが好ましい。収束剤でガラス繊維を処理することにより、ガラス繊維の取り扱い作業性を向上し、ガラス繊維の損傷を防ぐことが出来る。使用する収束剤は、特に制限されないが、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの樹脂エマルジョンが挙げられる。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物における上記の各成分の配合比率は次の通りである。すなわち、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)((AI)及び(AII)の合計量)は15〜85質量%、スチレン系樹脂(B)は15〜85質量%である(但し成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%とする)。そして、無機充填剤(C)は、成分(A)と成分(B)の合計量を100質量部に対して3〜100質量部である。
成分(A)と成分(B)の配合比率は、上記の通りであるが、成分(A)25〜80質量%で成分(B)20〜75質量%が好ましく、成分(A)30〜70質量%で成分(B)30〜70質量%が更に好ましく、成分(A)40〜60質量%で成分(B)40〜60質量%が特に好ましい。スチレン系樹脂(B)の配合比率が15質量%未満の場合は、衝撃性と剛性のバランスが劣り、破壊形態が延性破壊とならず、85質量%を超える場合は、剛性が劣り、耐衝撃性と剛性のバランスが劣る。
無機充填剤(C)の配合比率は、上記の通りであるが、成分(A)と成分(B)の合計量を100質量部に対して5〜90質量部が好ましく、10〜70質量部が更に好ましい。無機充填剤(C)の配合比率3質量部未満の場合は、補強効果が十分に発現せず、100質量部を超える場合は、溶融混練や樹脂組成物の成形が困難となる。
<脂肪族ポリエステル系樹脂における成分(AI)と成分(AII)の比率>
脂肪族ポリエステル(AI)と(AII)との合計100質量部中の成分(AI)の含有量は、通常2〜50質量部であるが、熱可塑性樹脂組成物の衝撃性を保持しながら、剛性を向上させる場合は、好ましくは2〜40質量部、更に好ましくは2〜30質量部、特に好ましくは2〜20質量部である。成分(AI)の質量部が上記の範囲未満の場合は耐衝撃性が低下し、上記の範囲より過剰の場合は剛性が低下する傾向がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール樹脂の群から選ばれた少なくとも一種の熱可塑性樹脂(D)を含有することが出来る。更に、相溶化剤や官能基などにより変性された前記の熱可塑性樹脂(D)を配合してもよい。特に、芳香族ポリカーボネート樹脂の配合により、耐熱性が向上する場合がある。熱可塑性樹脂(D)の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の合計100質量部に対し、通常2〜200質量部、好ましくは5〜150質量部である。
<その他の成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、目的、用途に応じ、上記の脂肪族系ポリエステル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)及び必要に応じて配合される熱可塑性樹脂(C)の他に、更に、各種の添加剤やその他樹脂を配合することが出来る。この場合、各種添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、安定剤、離型剤、帯電防止剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、防染剤、着色剤(顔料、染料など)、蛍光増白剤、蛍光染料、難燃剤(ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン化合物など)、ドリップ防止剤、シリコーンオイル、カップリング剤などの1種または2種以上が挙げられる。また、その他の樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられ、これらは2種以上をブレンドして使用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により、上記の各成分を溶融混練することにより製造される。混練処理に際し、各成分は、混練機に一括して供給するか、または、順次に供給することが出来る。更には、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合しておくことも出来る。ガラス繊維などの繊維状無機充填材は、押出機の途中から樹脂が溶融した後に添加することにより、破砕を避け、高い特性を発揮させることが出来る。溶融混練時の加熱温度は、通常200〜280℃である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に前記の添加剤やその他樹脂を配合する方法は、特に限定されず、上記の混練時、脂肪族系ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)とに添加する方法、両樹脂の混合後の樹脂組成物に更に溶融混合する方法、脂肪族系ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)の何れか又は両方の樹脂の重合時に添加する方法、両樹脂の混合前に何れかの一方または両方の樹脂に予め添加する方法などが挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形などの公知の成形法により樹脂成形品とされる。樹脂成形品としては、射出成形品、シート成形品(多層シートを含む)、フィルム成形品(多層フィルムを含む)、異形押出成形品、真空成形品などがある。
上記のようにして得られた樹脂成形品は耐衝撃性、剛性、耐加水分解性、耐薬品性に優れ、家電分野、建材分野、サニタリー分野などにおいて、各種の部品、ハウジング等として好適に使用することが出来る。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
<評価方法>
(1)ゴム質重合体のゲル含率:前記の方法に従った。
(2)ゴム質重合体ラテックスの平均粒子径:
スチレン系樹脂(B)の製造に使用するゴム質重合体ラテックスの平均粒子径は、光散乱法で測定した。測定機は大塚電子社製「LPA−3100型」を使用し、70回積算でキミュムラント法で測定した。なお、スチレン系樹脂(B)中の分散グラフト化ゴム質重合体粒子の粒子径は、ラテックス粒子径と略同じであることを電子顕微鏡で確認した。
(3)スチレン系樹脂(B)のグラフト率:前記の方法に従った。
(4)スチレン系樹脂(B)のアセトン可溶分の極限粘度〔η〕:前記の方法に従った。
(5)機械的特性:
引張り降伏強さ:ISO527に準拠して測定した。
引張り破断伸び:ISO527に準拠して測定した。
シャルピー衝撃強さ:ISO179に準拠して測定した。
曲げモジュラス:ISO178に準拠して測定した。
(6)荷重たわみ温度:
ISO75に準拠して測定した。荷重は0.45MPa及び1.8MPaである。
(7)メルトフローレート(MFR):
ISO1133に準拠して測定した。測定温度は200℃、荷重は98Nとした。
<熱可塑性樹脂組成物の成分>
(1)脂肪族ポリエステル(AI):
三菱化学社製の「GSPla」(AZ91T):コハク酸/1,4−ブタンジオールを主体とする脂肪族ポリエステルを使用した。
(2)脂肪族ポリエステル(AII):
ユニチカ製「テラマック」(TP−4000)を使用した。
(3)スチレン系樹脂(B):
B1:ポリブタジエンラテックス(平均粒子径;350nm、ゲル含率;85%)40部(固形分)の存在下、スチレン43部、アクリロニトリル17部の乳化グラフト重合を行い、グラフト率58%、アセトン可溶分の極限粘度[η]0.45dl/gのゴム強化スチレン系樹脂(B1)を製造した。
B2:懸濁重合法により、スチレン、アクリロニトリルから成る、スチレン系樹脂(B2)を製造した。GPC法による重量平均分子量は11万であり、アクリロニトリル含量は40%であった。
(4)無機充填剤(C):
C1(ガラス繊維):日本電気硝子社製、「T−187」(商品名)、平均繊維径13μm、平均繊維長3mm
C2(ガラス繊維):日本電気硝子社製、「T−351」(商品名)、平均繊維径13μm、平均繊維長3mm
C3(タルク):日本タルク社製、「MICRO ACE P3RC5」(商品名)、レーザー回折法による体積平均粒子径(D50)5μm。
実施例1〜6及び比較例1〜4:
表1及び表2に記載の配合比率に従い、そして、安定剤として成分(A)〜(C)100質量部当りチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製「IRGANOX1010」(商品名)を0.2質量部、旭電化工業社製「アデカスタブ2112」(商品名)0.2質量部を配合し、ヘンシエルミキサーにより混合した後、日本製鋼所製の二軸押出機「TEX44αII」(シリンダー設定温度220−240℃)を使用して溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを十分に乾燥した後、東芝機械製の射出成形「IS−100GN」(シリンダー設定度190℃)により、各評価に使用する各々の試験片を得た。評価結果を表1及び表2に示した。
Figure 2010184966
Figure 2010184966
表1及び表2に記載された結果から、以下のことが明らかである。
実施例1〜6は、耐衝撃性、剛性、耐熱性に優れる。
比較例1と2は、成分(C)が配合されていないため、剛性と耐熱性が劣る。
比較例3は、成分(AI)を配合せず、成分(AII)、スチレン系樹脂(B)、無機充填剤(C)を配合した例であり、剛性、耐熱性は高いが、耐衝撃性が劣っている。
比較例4は、成分(AII)を配合せず、成分(AI)、スチレン系樹脂(B)、無機充填剤(C)を配合した例であり、耐衝撃性は高いが、剛性、耐熱性が劣っている。

Claims (6)

  1. 以下の(AI)と(AII)を含む脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と以下の(BI)〜(BIII)から選択される1種以上のスチレン系樹脂(B)と以下の(CI)及び(CII)から選択される1種以上の無機充填剤(C)とを含有して成り、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の配合比率は15〜85質量%、スチレン系樹脂(B)の配合比率は15〜85質量%(但し成分(A)と成分(B)の合計量を100質量%とする)、無機充填剤(C)の配合比率は成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して3〜100質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
    上記の(AI)は、繰り返し単位として脂肪族ジオール及び/又は脂環式ジオールから形成される単位と脂肪族ジカルボン酸(その誘導体を含む)及び/又は脂環式ジカルボン酸(その誘導体を含む)から形成される単位とを有する脂肪族ポリエステル系樹脂であり、上記の(AII)は、乳酸単位の含有量が70モル%以上であるポリ乳酸系脂肪族ポリエステル樹脂である。
    上記のスチレン系樹脂(BI)は、ゴム質重合体(b1)の存在下に芳香族ビニル化合物および共重合可能な他のビニル化合物を含有するビニル系単量体(b2)を重合して得られるグラフト共重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BII)はビニル系単量体(b2)の重合体であり、上記のスチレン系樹脂(BIII)は、スチレン系樹脂(BI)と(BII)の混合物である。
    上記の(CI)は、体積平均粒子径0.5〜30μmの無機充填剤であり、上記の(CII)は繊維状無機充填剤である。
  2. 上記の脂肪族ポリエステル系樹脂における(AI)と(AII)の配合比率(質量)が(AI)/(AII)=2〜50/98〜50である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)のガラス転移温度(Tg)が0℃以下で且つ融点(Tm)が130℃以下である請求項1又は2の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)の脂肪族ジオールが1,4−ブタンジオールである請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 脂肪族ポリエステル系樹脂(AI)の脂肪族ジカルボン酸がコハク酸および/またはアジピン酸である請求項1〜4の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して成ることを特徴とする樹脂成形体。
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