JP2010183910A - 核酸固定用磁性粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁性粒子表面に多くの官能基を導入することによって、単位磁性粒子量当たりの固定化核酸量が向上すると共に、導入した官能基の親水性により水溶液中での分散状態にも優れ、高感度で操作性の良い核酸検出が可能な核酸固定用磁性粒子の提供。
【解決手段】表面にアミノ基を有する磁性粒子にポリ酸性アミノ酸が結合してなる核酸固定化用磁性粒子。
【選択図】なし

Description

本発明は、表面の官能基量を増加させることにより多量の核酸を固定化することができる、核酸の分離精製や検出に利用される核酸固定用磁性粒子に関する。
核酸、蛋白質などの生体内物質を特異的に検出又は精製するには、目的とする生体内物質を特異的に標識又は分離する手段が必要であるが、そのひとつとして固相に目的生体内物質と特異的に結合する性質の物質を固定化し、溶液中の目的物質を特異的に捕獲する方法が広く用いられている(非特許文献1)。特に、核酸の検出又は精製の場合は相補的な核酸が特異的に結合(ハイブリダイゼーション)する性質を利用することによって目的とする核酸を特異的に捕獲することができ、この相補的な核酸を固定化するための固相として、液相中で細かく分散させることにより液相-固相間の高い反応性が得られ、磁石に吸着させることにより簡便に液相と分離できる磁性粒子が用いられるようになっている。
それには、まず目的とする核酸をハイブリダイゼーションによって捕獲するための相補的な核酸を磁性粒子へ固定化する必要がある。核酸を固定化する方法としては、粒子の表面へ物理吸着させる方法と、粒子表面のアミノ基、カルボキシル基などの官能基へ共有結合させる方法が知られている(非特許文献2)。また、ビオチンアビジン系を用いた固定化法も利用されている(非特許文献3)。
物理吸着法は簡便な手法であるが、結合力が弱く、ある種の界面活性剤などを用いた強い条件で洗浄すると核酸が剥離する可能性がある。また、共有結合法は、固定化すべき核酸に官能基を導入する必要があり物理吸着法に比べて操作は煩雑であるが、粒子と核酸とを強く結合させることが可能である(非特許文献2)。共有結合法における粒子表面の官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基などが知られている(非特許文献2)。粒子表面のカルボキシル基は、1-(3-ジエチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)などの活性化試験薬で活性化し、核酸にあらかじめ導入したアミノアルキル基と結合させることができる。粒子表面のアミノ基は、2価反応性の架橋試薬を用いてカルボキシル基に変換し、核酸にあらかじめ導入したアミノアルキル基と結合させる(非特許文献4)か、又は末端に付加したリン酸と結合させることができる(非特許文献2)。また、粒子表面の水酸基は、トシル基で活性化して核酸に付加したアミノアルキル基と結合させることができる(非特許文献5)。
これらのうち、粒子表面にカルボキシル基を有する磁性粒子を利用する方法は、反応性も高く、効率よく核酸を導入することが可能であるが、核酸に導入したアミノアルキル基との反応の選択性に問題があり、実際にハイブリダイゼーションに有効な状態で結合している核酸は少ない(非特許文献2)。一方、粒子表面にアミノ基を有する磁性粒子を利用して2価反応性架橋試薬を用いる方法は、副反応が少なく核酸に付加したアミノアルキル基と特異的に反応するため核酸を有効に結合させることが可能である。しかし、一般的にアミノ基の付加した磁性粒子を利用した場合、カルボキシル基の付加したものに比べて導入できる核酸の量が少ないという問題がある。特に、磁性粒子法と化学発光検出法(非特許文献6)を組合せて用いる場合は、磁性粒子による溶液の濁りが発光検出を阻害するため、使用粒子量をできうる限り少なくする必要があり、十分量の固定化核酸を利用するためには単位粒子量当たりの核酸の固定量を上げる必要がある。
一方、磁性粒子としては、ポリスチレンなどの疎水性の素材をベースとして用いたものが知られているが(非特許文献2)、それらのものは水溶液中で疎水的に凝集を起こしやすく、また容器の壁に吸着し、水溶液中への分散及び磁石への集合が阻害される。また、蛋白質、核酸などを非特異的に吸着しやすいために、生体内物質の検出に使用する場合はバックグラウンドの上昇の原因となることが考えられる。
千葉仁志,ニッポン臨床53巻9号(9, 1995) Vera Land, Ruth Schmid, David Rickwood, Erik Hornes(1988). Nucleic Acids Res. 16(22), 10861 Shao-Ochie Huang, Harold Swerclow, and Karin D. Caldwell(1994). Analytical Biochemistry 222, 441-119 Running, J. A., Urdea, N. S.,(1990) Bio Techniques 8,(3), 276 Yu-An Chang, Adrian Gee, Alan Smith, William Lake(1992) Bioconjugate Chem. 3, 200-202 Debbie J. Berry, Penelope M. S. Clark, and Christopher P. Price(1998) Clin. Chem. 34(10), 2087-2090
そこで、本発明は、磁性粒子表面に多くの官能基を導入することによって、単位磁性粒子量当たりの固定化核酸量が向上すると共に、導入した官能基の親水性により水溶液中での分散状態にも優れ、高感度で操作性の良い核酸検出が可能な核酸固定用磁性粒子を提供することを目的とする。
かかる実情において本発明者らは、多官能基を持つポリマー、特にポリアミノ酸中に核酸を結合させるために有用なアミノ基又はカルボキシル基が多量に存在し、かつ親水性も高いことに注目し、これらのポリマーを磁性粒子表面に結合又は被覆することによって核酸固定化量を増やすことができると共に、ポリマー分子の親水性によって磁性粒子の水溶液中での分散状態が改善されることを見出した。また、特に表面にカルボキシル基を有する磁性粒子にポリ塩基性アミノ酸を結合させれば、導入核酸量が少ないというアミノ基を有する磁性粒子の欠点及び直接核酸を固定化すると副反応を起こす可能性が高いというカルボキシル基を有する磁性粒子の欠点の双方を補い、核酸を効果的かつ効率的に導入することが可能となることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、表面にアミド結合を介してポリ酸性アミノ酸又はポリ塩基性アミノ酸が結合してなる核酸固定用磁性粒子を提供するものである。
本発明の核酸固定用磁性粒子は、以下のような効果を有する。
(1) 本発明によれば、従来の方法に比べて磁性粒子に格段に多量の核酸を効果的に固定化することが可能である。従って、目的とする核酸を効率的に捕獲することが可能であり、核酸検出の測定感度が向上する。
(2) 本発明によれば、単位磁性粒子量当たりの有効な核酸の固定化量を格段に増やすことができるため、同一の測定当たりに使用する磁性粒子の量を減らすことができる。従って、磁性粒子による溶液の濁度を減らすことができるため、特に検出システムとして化学発光を採用している場合、検出光量が増加し、感度が向上する。
(3) 本発明によれば、疎水性材質で被覆された磁性粒子が水溶性のポリマーで被覆されるため、水溶液中での磁性粒子の分散性が向上する。
(4) 本発明によれば、疎水性材質で被覆された磁性粒子が水溶性のポリマーで被覆されるため、検出目的とする核酸以外の生体内物質などの磁性粒子への非特異的な吸着が防止され、測定時のノイズレベルが減少する。
(5) 本発明によれば、従来の磁性粒子の疎水性固相表面と固定化核酸の間に、ポリマー分子又は複数連結を繰り返したポリマー分子を介しているため、検出対象とする核酸と磁性粒子上の固定化核酸分子との接近が容易になり、ハイブリダイゼーション反応の効率が向上し、検出感度を高くすることが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。まず、磁性粒子に多官能基を有するポリマーを結合させる方法について説明する。
本発明に使用される磁性粒子としては、ローヌプーラン社のエスタポール、セラダイン社のCM-MP、パーセプティブ社のバイオマグ、日本ペイント社のフェリスフェアなど、磁性粒子表面にアミノ基又はカルボキシル基を有するものが好ましい。また、ダイナテック社のダイナビーズなど、磁性粒子表面の官能基が水酸基のものも、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等の試薬を利用してアミノアルキル基を導入して用いることができる。
表面にカルボキシル基を有する磁性粒子と反応させる場合に用いられる、カルボキシル基と反応する官能基を3個以上有する多官能基性ポリマーとしては、ポリ塩基性アミノ酸、例えばポリD-リジン、ポリL-リジン、ポリDL-リジン;ポリD-オルニチン、ポリL-オルニチン、ポリDL-オルニチン;ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)等のポリアルキルイミン;又はそれらの塩酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、コハク酸塩などが挙げられ、なかでもポリリジン及びポリオルニチン、更にポリD-リジン及びポリD-オルニチン、特にポリD-リジンが好ましい。またこれらのポリマーをN-サクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート等の試薬と反応させることにより、アミノ基をチオール基に変換させたものを用いることも可能である。一方、表面にアミノ基を有する磁性粒子と反応させる場合に用いられる、アミノ基と反応する官能基を3個以上有する多官能基性ポリマーとしては、ポリ酸性アミノ酸、例えばポリD-グルタミン酸、ポリL-グルタミン酸、ポリDL-グルタミン酸;ポリD-アスパラギン酸、ポリL-アスパラギン酸、ポリDL-アスパラギン酸;又はそれらのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、なかでもポリD-グルタミン酸及びポリD-アスパラギン酸が好ましい。更に、ポリ(リジン-アラニン)、ポリ(グルタミン酸-アラニン)等のリジン、グルタミン酸、アスパラギン酸を含むアミノ酸のポリマー又はその塩でもよい。
表面にカルボキシル基を有する磁性粒子に多官能基性ポリマーを反応させるには、まず磁性粒子のカルボキシル基を活性化する必要がある。磁性粒子のカルボキシル基の活性化は、磁性粒子を分散させた弱酸性又は中性付近の水溶液又は緩衝液中に活性化剤を加え、室温で30分程度振盪した後、磁石で磁性粒子を分離し、水又は緩衝液で洗浄して過剰の試薬を取り除くことにより行われる。活性化剤としては、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド及び1-(3-ジエチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩が好ましいものとして挙げられる。活性化磁性粒子と多官能基性ポリマーとの反応は、活性化磁性粒子に、そのカルボキシル基に対して大過剰の多官能基性ポリマー(ポリ塩基性アミノ酸)を緩衝液に溶解したものを加え、適当な条件で振盪することにより行われる。反応後、磁石で磁性粒子を分離して溶液を取り除き、未反応のポリマーを塩化ナトリウム水溶液及び緩衝液で洗浄して、アミノ基を多数有するポリ塩基性アミノ酸結合磁性粒子を得ることができる。
更に、上記の表面にカルボキシル基を有する磁性粒子として、表面にアミノ基を有する磁性粒子の懸濁溶液に、環状酸無水物、好ましくは無水コハク酸を反応させることによりカルボキシル基を導入した磁性粒子を用い、このものに対して上記と同様にポリ塩基性アミノ酸を結合させることも可能である。また以上のようにして得られたアミノ基を多数有するポリ塩基性アミノ酸結合磁性粒子の懸濁溶液に、環状酸無水物、好ましくは無水コハク酸を反応させることにより、カルボキシル基を導入することもできる。このものに対して上記と同様にポリ塩基性アミノ酸を結合させることによって更に官能基数の増幅を図ることが可能である。
また、表面にアミノ基を有する磁性粒子に多官能基性ポリマーを反応させるには、まず多官能基性ポリマー(ポリ酸性アミノ酸)のカルボキシル基を活性化する必要がある。ポリ酸性アミノ酸のカルボキシル基の活性化は、ポリ酸性アミノ酸をDMF、DMSO、アセトニトリル等の無水の有機溶媒に懸濁し、前記と同様の活性化剤を加えて室温で30分程度振盪することにより行われる。これを表面にアミノ基を有する磁性粒子の懸濁溶液に加えて反応させることにより、カルボキシル基を多数有するポリ酸性アミノ酸結合磁性粒子を得ることができる。
また、上記のようにして得られたカルボキシル基を多数有するポリ酸性アミノ酸結合磁性粒子に、更にポリ塩基性アミノ酸を結合することによって、官能基の数をより増幅することも可能である。この場合の磁性粒子の活性化及びポリ塩基性アミノ酸との反応は前記と同様にして行うことができる。
また、ポリ塩基性アミノ酸を結合させた磁性粒子に、更にポリ酸性アミノ酸を活性化し、結合することによって、官能基の数を増幅することも可能である。
なお、最終的に磁性粒子表面の官能基をカルボキシル基とし、これを核酸の検出や精製に使用する場合、この磁性粒子は、それに結合している多数のカルボキシル基を活性化することによって、アミノアルキル基を有する核酸、又はその他の生理活性物質を結合させることを目的としているが、このとき粒子表面にアミノ基が残存していると、これが活性化されたカルボキシル基と反応して、目的物との反応を阻害する。そこで、この磁性粒子の懸濁溶液に無水酢酸、無水コハク酸、スルホサクシンイミジルアセテート等のキャッピング剤を加え、残存アミノ基を塞ぐことにより、不活性化することが好ましく、これにより、活性化したカルボキシル基に目的とする核酸等の生理活性物質を効率よく結合させることができる。
以上の操作を組合せて繰り返し行えば、磁性粒子表面に、親水性の多官能基を持つポリマーの層を積み重ねることができる。
以上説明した方法により得られる多官能基性磁性粒子のうち、本発明の核酸検出法に使用する上で最も好ましいものは、最終的に磁性粒子表面の官能基をアミノ基としたものであり、このような磁性粒子を用いることにより、導入核酸量が少ないというアミノ基を有する磁性粒子の欠点及び直接核酸を固定化すると副反応を起こす可能性が高いというカルボキシル基を有する磁性粒子の欠点の双方を補い、核酸を効果的かつ効率的に導入することが可能である。
本発明の核酸検出法に用いられる磁性粒子は、上記のようにして得られた多官能基性磁性粒子に、核酸を結合させることによって得ることができる。核酸には、結合に利用するための官能基をあらかじめ導入しておいてもよい(Vera Land, Ruth Schmid, David Rickwood, Erik Hornes(1988). Nucleic Acids Res. 16(22),10861)。導入する官能基は、アミノアルキル基、カルボキシル基、リン酸基など、磁性粒子に導入した官能基と直接反応するもの、又は2価反応性の架橋試薬を利用して間接的に結合させることができるものでもよく、合成的に、又は酵素反応を利用して導入することができる。多官能基性磁性粒子と核酸との結合法としては、ペプチド合成法に用いられるカルボジイミド法、活性エステル法、混酸無水物法等を用いることができる。また間接法の例を挙げれば、合成アミノアルキル化DNAプローブに2価反応性の活性エステルであるジサクシンイミジルスベレートを反応させて活性化DNAプローブとし、これを多数のアミノ基を有するポリマーを結合させた磁性粒子と反応させることにより核酸固定化磁性粒子を得ることができる。更に、その他の結合法としてグルタルアルデヒド法、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン法等を用いることもできる。
本発明の核酸検出法においては、標識として、放射性物質、蛍光もしくは発光物質、又は酵素を用いることができる。すなわち、ハイブリダイゼーション法を用い、又は組合せて、磁性粒子に固定化した核酸プローブに目的とする核酸を固定化し、更に標識のついた核酸をハイブリダイゼーションさせ、磁石で磁性粒子を分離することによって、磁性粒子上の標識を特異的に検出することができる。
本発明の核酸検出法に用いるハイブリダイゼーション法は、溶液温度を30℃から99℃、好ましくは45℃から70℃まで上昇させた後冷却し、好ましくは25℃付近まで下げることによって、行うことができる。
また、標識に使う酵素としては、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられる。
また、基質としては、それぞれの酵素に適合した基質を採用することができる。例えば、アルカリフォスファターゼにはp-ニトロフェニルフォスフェート、3-(2′-ピロ-トリサイクロ[3.3.1.1]デカン)-4-メトキシ-4-(3″-フォスフォリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン二ナトリウム塩など、パーオキシダーゼには2,2′-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)、ルミノール-過酸化水素など、β-ガラクトシダーゼにはp-ニトロフェニル-β-o-ガラクトース、3-(2′-スピロアダマンタン)-4-(3-β-D-ガラクトピラノシル)フェニル-1,2-ジオキセタンなどを用いることができる。
検出は、酵素反応が阻害されない温度で行い、生じる発色又は発光量を測定する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 バイオマグアミンへポリグルタミン酸を結合した磁性粒子BM-Eの作製:
ポリ-D-グルタミン酸のナトリウム塩2mgを無水DMF 0.1mlに懸濁し、1-(3-ジエチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)1.2mgを加え、30分室温で撹拌した。これを、反応容器に磁性粒子バイオマグアミン(官能基はアミノ基,パーセプティブ社製)2mgを100mMリン酸バッファー(pH7.8)1mlに懸濁したものに加えて室温で2時間撹拌した。磁性粒子を1M塩化ナトリウム水と水で洗浄し、100mMリン酸バッファー(pH7.8)1mlに懸濁した後、無水コハク酸2mgを無水DMF 0.1mlに溶解したものを加えて2時間室温で撹拌し、水で磁性粒子を洗浄した。(0.1%SDS,0.15M塩化ナトリウム,15mMクエン酸バッファー)0.2mlに懸濁し、4℃で保存した。
実施例2 磁性粒子BM-Eへポリリジンを結合した磁性粒子BM-EKの作製:
反応容器に実施例1で作製したポリグルタミン酸結合磁性粒子BM-Eの20mgを100mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸バッファー(pH6.1,MESバッファー)10mlに懸濁し、磁石で分離した後、液相を除去する操作を繰り返すことによって洗浄した。この操作を2回繰り返した後、100mM N-ヒドロキシサクシンイミドバッファー(pH6.1,HOSuバッファー)10mMに懸濁して、EDC 400mgを加え、室温で30分振盪して、磁性粒子を水で洗浄した。これにポリ-D-リジン臭化水素塩10mgを100mMトリエチルアミン酢酸バッファー(pH7.8)に溶解したものを加え、室温で2時間振盪した。その後、磁性粒子を1M塩化ナトリウム水及び水で洗浄し、(0.1%SDS,0.15M塩化ナトリウム,15mMクエン酸バッファー)1mlに懸濁し、4℃で保存した。
試験例1 磁性粒子バイオマグアミンと磁性粒子BM-EK(実施例2)に結合しているアミノ基の量のニンヒドリン発色による比較:
磁性粒子バイオマグアミンと実施例2で作製したポリグルタミン酸−ポリリジン結合磁性粒子BM-EKをそれぞれ水及びメタノールで洗浄し、減圧乾燥した。0.0002Mシアン化カリウムのピリジン溶液200μl、76%フェノールのエタノール溶液100μl及び0.28Mニンヒドリンエタノール溶液100μlを加えて100℃で5分間放置し、60%エタノール3mlを加えて反応を止めた。磁性粒子を分離し、溶液の570nmの吸収を測定したところ、それぞれ0.188,0.363であった。別にコントロールとして磁性粒子を入れずに同様の操作をしたものについて570nmの吸光度を測定したところ、0.016であった。残った磁性粒子をメタノールで洗浄し、乾燥させて重量を測定したところ、それぞれ9.1mg,8.7mgであった。各磁性粒子の1mg当たりのニンヒドリン発色を計算した結果を表1に示す。
Figure 2010183910
表1から、ポリリジンを結合させることによってアミノ酸の量が増加していることが確認された。
実施例3 磁性粒子BM-EKへDNAプローブを固定化した磁性粒子BM-EK-DNAの作製:
5′末端にアミノアルキル基を結合した20鎖長のDNAプローブA、0.625ODを100mMトリエチルアミン酢酸バッファー(pH7.8)50μlに溶解し、DMF 50μlを加えてジサクシンイミジルスベレート1mgをDMF 50μlに溶解したものを加え、10分間室温で撹拌した。これに水0.4mlを加えて、酢酸エチル0.4mlで洗浄し、有機溶媒層を取り除く操作を2回繰り返した。これをイソブタノール0.4mlで2回洗浄し、水0.2mlを加えて、100mMリン酸バッファー(pH7.8)3mlに懸濁した実施例2で作製した磁性粒子BM-EK 10mgに加えて4時間室温で撹拌した。磁性粒子を1N塩化ナトリウム水及び水で洗浄して、100mMリン酸バッファー(pH7.8)3mlに懸濁し、スルホサクシンイミジルアセテート8mgを加えて室温で4時間反応させた。1N塩化ナトリウム水及び水で洗浄して(0.1%SDS,0.15M塩化ナトリウム,15mMクエン酸バッファー)0.2mlに懸濁し、4℃で保存した。
比較例1 磁性粒子バイオマグアミンヘDNAプローブを固相化した磁性粒子BM-DNAの作製:
実施例3において、磁性粒子BM-EKの代わりにバイオマグアミンを用いる以外は同様に操作して、DNAプローブ固相化磁性粒子BM-DNAを得た。
試験例2 磁性粒子BM-EK-DNA(実施例3)と磁性粒子BM-DNA(比較例1)の核酸捕獲能力の比較:
実施例3及び比較例1で磁性粒子に固定化したDNAプローブAに相補的でかつその5′末端にアルカリフォスファターゼを結合させたAP-プローブBをハイブリダイゼーションバッファー〔0.5%ブロッキング試薬(ベーリンガー社製),0.05%アジ化ナトリウム,0.48M塩化ナトリウム,0.048Mクエン酸三ナトリウム〕に0.05μg/mlになるように調整した。実施例3及び比較例1で作製した磁性粒子のそれぞれ10μgに溶液0.1mlを加え、53℃で15分間インキュベーションし、室温で10分間冷却した。磁性粒子を(0.1%SDS,0.015M塩化ナトリウム,0.0015Mクエン酸三ナトリウム)で2回、(0.015M塩化ナトリウム,0.0015Mクエン酸三ナトリウム)で2回洗浄した後、基質溶液(10mMパラニトロフェニルリン酸ナトリウム,25mM塩化マグネシウム,1Mジエタノールアミン−塩酸バッファーpH9.8)を0.2ml加えて37℃で30分間インキュベーションした。その後、磁性粒子を磁石で分離し、上清の100μlをマイクロタイタープレートウエルに移して、イムノリーダーで405nmの波長の吸光度を測定した。この結果を表2に示す。
Figure 2010183910
表2より、実施例3の磁性粒子は比較例1の磁性粒子よりも多くのDNAプローブAが固定化されており、核酸の捕獲能力に優れていることが確認された。
実施例4 磁性粒子M450ヘアミノ基を導入した磁性粒子M450Aの作製:
ダイナビーズ磁性粒子M450(Uncoated,官能基は水酸基,ダイナテック社製)0.5mgをメタノール2.7mlに懸濁し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン0.3mlを加えて65℃で2時間反応させることによりアミノ基を導入した。磁性粒子を水及び0.1%SDSで洗浄し、(0.1%SDS,0.15M塩化ナトリウム,15mMクエン酸バッファー)0.2mlに懸濁し、4℃で保存した。
実施例5 磁性粒子M450Aヘポリグルタミン酸を結合させた磁性粒子M450A-Eの作製:
実施例1において、バイオマグアミンの代わりに実施例4で作製した磁性粒子M450Aを用いる以外は同様に操作してポリグルタミン酸を結合させ、ポリグルタミン酸結合磁性粒子M450A-Eを得た。
実施例6 磁性粒子M450A-Eヘポリリジンを結合させた磁性粒子M450A-EKの作製:
実施例2において、磁性粒子BM-Eの代わりに実施例5で作製したポリグルタミン酸結合磁性粒子M450A-Eを用いる以外は同様に操作してポリリジンを結合させ、ポリグルタミン酸−ポリリジン結合磁性粒子M450A-EKを得た。
実施例7 磁性粒子M450A-EKへポリリジンを結合させた磁性粒子M450A-EKKの作製:
実施例6で作製した磁性粒子M450A-EK 5mgを100mMリン酸バッファー(pH7.8)1.5mlに懸濁し、無水コハク酸15mlを無水DMF 0.1mlに溶解したものを加えて室温で2時間撹拌した。磁性粒子を1M塩化ナトリウム水及び水で洗浄した。この磁性粒子に実施例2と同様の操作を行って更にポリリジンを結合させ、ポリグルタミン酸−ポリリジン−ポリリジン結合磁性粒子M450A-EKKを得た。
実施例8 磁性粒子M450A-EKKへDNAプローブを固相化した磁性粒子M450A-EKK-DNAの作製:
実施例3において、磁性粒子BM-EKの代わりに実施例7で作製した磁性粒子M450A-EKKを用いる以外は同様に操作し、DNAプローブ固相化磁性粒子M450A-EKK-DNAを得た。
比較例2 磁性粒子M450AへDNAプローブを固相化した磁性粒子M450A-DNAの作製:
実施例3において、磁性粒子BM-EKの代わりに実施例4で作製した磁性粒子M450Aを用いる以外は同様に操作し、DNAプローブ固相化磁性粒子M450A-DNAを得た。
試験例3 M450A-DNA(比較例2)と磁性粒子M450A-EKK-DNA(実施例8)の核酸捕獲能力の比較:
実施例8で作製した磁性粒子M450A-EKK-DNAと比較例2で作製した磁性粒子M450A-DNAを試験例2と同様にして比較した。この結果を表3に示す。
Figure 2010183910
表3より、実施例8の磁性粒子は比較例2の磁性粒子よりも格段に多くのDNAプローブが固定化され、核酸捕獲能力に優れていることが確認された。
実施例9 磁性粒子CM-MPヘポリリジンを結合した磁性粒子CMMP-Kの作製:
実施例2において、磁性粒子BM-Eの代わりに磁性粒子CM-MP(官能基はカルボキシル基,セラダイン社製)を用いる以外は同様に操作してポリリジンを結合させ、ポリリジン結合磁性粒子CMMP-Kを得た。
実施例10 磁性粒子CMMP-Kヘポリグルタミン酸を結合した磁性粒子CMMP-KEの作製:
実施例1において、バイオマグアミンの代わりに実施例9で作製したポリリジン結合磁性粒子CMMP-Kを用いる以外は同様に操作してポリグルタミン酸を結合させ、ポリリジン−ポリグルタミン酸結合磁性粒子CMMP-KEを得た。
実施例11 磁性粒子CMMP-KEヘポリリジンを結合した磁性粒子CMMP-KEKの作製:
実施例2において、磁性粒子BM-Eの代わりに実施例10で作製したポリリジン−ポリグルタミン酸結合磁性粒子CMMP-KEを用いる以外は同様に操作してポリリジンを結合させ、ポリリジン−ポリグルタミン酸−ポリリジン結合磁性粒子CMMP-KEKを得た。
実施例12 磁性粒子CMMP-KEKへDNAプローブを固相化した磁性粒子CMMP-KEK-DNAの作製:
実施例3において、磁性粒子BM-EKの代わりに実施例11で作製した磁性粒子CMMP-KEKを用いる以外は同様に操作し、DNAプローブ固相化磁性粒子CMMP-KEK-DNAを得た。
比較例3 磁性粒子CM-MPへDNAプローブを固相化した磁性粒子CMMP-DNAの作製:
反応容器に磁性粒子CM-MP(セラダイン社製)10mgを100mM 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸バッファー(pH6.1,MESバッファー)5mlに懸濁し、磁石で分離した後、液相を除去することによって洗浄した。この操作を2回繰り返した後、100mM N-ヒドロキシサクシンイミドバッファー(pH6.1,HOSuバッファー)10mlに懸濁して、EDC 400mgを加え、室温で30分振盪して、磁性粒子を水で洗浄した。更に、100mMリン酸バッファー(pH7.8)5mlに懸濁し、これに実施例3で用いたDNAプローブA、0.625ODを加えて4時間振盪した。磁性粒子を1M塩化ナトリウム水及び水で洗浄し、(0.1%SDS,0.15M塩化ナトリウム,15Mクエン酸バッファー)0.5mlに懸濁し、4℃で保存した。
試験例4 磁性粒子CMMP-DNA(比較例3)及び磁性粒子CMMP-KEK-DNA(実施例12)を用いたWT1mRNAの測定結果の比較:
比較例3の磁性粒子CMMP-DNAを用いて癌抑制遺伝子WT1mRNAの測定を行った。測定方法は、クオンティプレックスHCV-RNA測定キット(カイロン社製)の手法に従って行った。WT1mRNAはRnessy Total RNA Kit(QIAVEN社製)を用いてヒト白血病細胞株(K562)から抽出し、PBSで希釈して検体とした。抽出緩衝液、増幅プローブ希釈液、標識プローブ希釈液、増幅プローブ、標識プローブ、基質液、Wash A及びWash BはクオンティプレックスHCV-RNA測定キットのものを用いた。また、キット中の特異プローブA及び特異プローブBは、WT1mRNAの一部に相補的なものを合成して調製した。反応用容器として、ダイナテックラボラトリーズ社のマイクロライン1を用いた。抽出緩衝液4.6ml、酵素液350μl、特異プローブA 2.8μl及び特異プローブB 2.8μlを混合し、100μlを4μg/10μlのWT1mRNAに加え、53℃で16時間インキュベーションした。更に、比較例3の磁性粒子20μgを抽出緩衝液20μlに懸濁したものを加え、53℃で4.5時間インキュベーションした。更に室温で10分間放置し、磁気分離を行い、上清を除いた。Wash Bで2回洗浄した後、増幅プローブ希釈液5.6mlと増幅プローブ40μlを混合したものを100μl加えて53℃で30分インキュベーションした。室温で10分間冷却した後、磁気分離を行い、Wash A 200μlで洗浄した後、標識プローブ希釈液5.6mlと標識プローブ32μlを混合したもの100μlを加えて53℃で15分間インキュベーションして、室温で10分間放置した。磁気分離を行い、Wash A及びWash Bでそれぞれ3回ずつ洗浄した後、基質液100μlを加え、ルミノメーターQ-1000で発光量を測定した。
また、試験する磁性粒子を実施例12のもの10μgに変えて、同様の試験を行った。発光量の測定結果を表4に示す。
Figure 2010183910
この結果から、表面官能基のカルボキシル基に直接DNA固定化した比較例3の磁性粒子よりも、ポリアミノ酸をコーティングし、磁性粒子の官能基をアミノ基に変換した実施例12の磁性粒子を使用した方が感度が向上していることが確認された。

Claims (8)

  1. 表面にアミノ基を有する磁性粒子にポリ酸性アミノ酸が結合してなる核酸固定化用磁性粒子。
  2. ポリ酸性アミノ酸が、ポリD-グルタミン酸、ポリL-グルタミン酸、ポリDL-グルタミン酸、ポリD-アスパラギン酸、ポリL-アスパラギン酸及びポリDL-アスパラギン酸から選ばれるものである請求項1記載の核酸固定化用磁性粒子。
  3. 表面にアミド結合を介してポリ酸性アミノ酸又はポリ塩基性アミノ酸が結合してなる核酸固定化用磁性粒子に、当該ポリ酸性アミノ酸若しくはポリ塩基性アミノ酸の官能基と直接反応する官能基又は2価反応性の架橋反応を利用して間接的に結合させることができる官能基を導入した核酸が結合してなる核酸固定化磁性粒子。
  4. 核酸固定化用磁性粒子が、表面にカルボキシル基を有する磁性粒子にポリ塩基性アミノ酸が結合したものである請求項3記載の核酸固定化磁性粒子。
  5. ポリ塩基性アミノ酸が、ポリD-リジン、ポリL-リジン、ポリDL-リジン、ポリD-オルニチン、ポリL-オルニチン及びポリDL-オルニチンから選ばれるものである請求項3又は4記載の核酸固定化磁性粒子。
  6. ポリ酸性アミノ酸が、ポリD-グルタミン酸、ポリL-グルタミン酸、ポリDL-グルタミン酸、ポリD-アスパラギン酸、ポリL-アスパラギン酸及びポリDL-アスパラギン酸から選ばれるものである請求項3〜5のいずれかに記載の核酸固定化磁性粒子。
  7. 核酸に導入する官能基が、アミノアルキル基、カルボキシル基又はリン酸基である請求項3〜6のいずれかに記載の核酸固定化磁性粒子。
  8. 核酸が、DNAプローブである請求項3〜7のいずれかに記載の核酸固定化磁性粒子。
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