JP2010182933A - 描画装置および描画方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の微小なミラーを用いて、光源からの光をマルチビーム化する技術において、マルチビーム化された各ビームの位相を簡易な構造で制御する。
【解決手段】パターンを描画する描画装置1に、複数の微小ミラーを備えた空間光変調デバイス2、各微小ミラーに与える開始信号によって各微小ミラーの偏向動作の開始タイミングを制御するミラー制御部、および、位相を反転させる平行平面板44を設ける。レーザ光を所定の周期Tで照射しつつ、各微小ミラーが偏向を開始するタイミングを個々のミラーごとにミラー制御部によって制御する。これにより各微小ミラーによって形成される各ビームの進行方向を制御して、正位相とするビームをアパーチャ45に導くとともに、逆位相とするビームのみをアパーチャ46および平行平面板44に導いて位相を反転させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、複数の微小なミラーを用いて、光源からの光をマルチビーム化する技術において、マルチビーム化された各ビームの位相および光量を制御する技術に関する。
精密な微細パターンをフォトマスクを用いずに設計データに基づきダイレクトに描画する技術(ダイレクト露光)において、高精度に、かつ、高速に描画を行うために、アレイ状に配置された複数の微小なミラーによって光源からの光をマルチビーム化して描画する技術が知られている。例えば、このようなミラーデバイス(空間光変調デバイス)を用いてパターンを描画する描画装置が特許文献1に記載されている。
一方で、微細化が進んだ半導体のパターン露光においては、位相差マスクによって光の位相を反転(180度シフト)させることにより、レンズの回折限界を超える微細パターンを露光する技術が実用化されている(位相シフト法)。このように、回折限界を超えた超解像で露光が行われる技術が半導体リソグラフィの分野で開発されており、パターンのマスクに光の位相をシフトさせる機能を組み込んだ現像装置(ステッパー)が実用化されている。
また、ダイレクト露光においても空間光変調デバイスによってマルチビーム化された光の位相を制御する技術も提案されている。例えば、空間光変調デバイスの各ミラーの裏面にスプリングを設け、このスプリングを各ミラーごとに伸縮・伸長させることにより、各ミラーの反射面の位置を光軸に対して進退させる技術が提案されている。これにより、各ミラーによって反射される光の光学系における光路長を変更することが可能となるため、各ミラーによって形成されるビームの位相が制御される。例えば、2本のビーム光路長差がビームの波長の1/2となるように制御すれば、これら2本のビームの位相は互いに反転したものとなる。
特開2003−332221号公報
ところが、従来のように、位相シフトマスクを用いてパターンを描画(露光)する場合、位相シフトマスクは取り扱いが容易でない上に、非常に高価であり、また、製作にも時間を要するという問題があった。また、位相シフトマスクはパターンごとに製作しなければならず、パターンの変更(設計変更)に柔軟に対応できないという問題もある。
一方、ダイレクト露光においては、上記のような技術が提案されてはいるものの、ミラーデバイスは微小かつ複雑な構造物であり、構造の設計、製造が極めて困難であるという問題があった。すなわち、空間光変調デバイスに位相制御を行う機能を組み込むためには、個々の微小ミラーを偏向させる機能に加えて、光の進行方向にそれぞれの微小ミラーの位置を平行に移動させる機構が必要となる。また、このときの微小ミラーの移動量も光の波長に対して正確に1/4であることが要求される。したがって、現状では実用化に至っていないという問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、空間光変調デバイスを用いて、光源からの光をマルチビーム化する技術において、マルチビーム化された各ビームの位相を簡易な構造で制御することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、照射するビームによってパターンを描画する描画装置であって、光を照射する光源と、反射面の配置角度が第1角度となる状態と前記反射面の配置角度が第2角度となる状態との間で状態の切り替えが可能であるとともに、前記状態の切り替えが行われたときに、前記反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で変位する複数のミラーによって、前記光源からの光を複数のビームに変調する空間光変調デバイスと、前記複数のビームのうちの対象となるビームの位相を変換する位相変換手段と、前記空間光変調デバイスの前記複数のミラーについて前記反射面の配置角度を各ミラーごとに制御し、前記光源から照射される光の反射方向を各ミラーごとに制御して、前記複数のビームのうちの対象となるビームを前記位相変換手段に導くミラー制御手段とを備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る描画装置であって、前記ミラー制御手段は、反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で連続的に変位中の状態において、前記反射面が前記光源からの光を反射するように、前記反射面を有するミラーの状態の切り替えタイミングを決定することを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明に係る描画装置であって、前記複数のビームの光量を制御する光量制御手段をさらに備えることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る描画装置であって、前記光量制御手段は、前記光源から照射される光の反射方向を、前記複数のミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされる光の光量に応じて決定することを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3の発明に係る描画装置であって、前記光量制御手段は、ビームの光量を変更する光学フィルタであることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明に係る描画装置であって、前記位相変換手段は、nλ±(1/m)λを満たす光学素子(但し、n,mは整数、1/mは予め定めた位相差)であることを特徴とする。
また、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明に係る描画装置であって、複数の前記位相変換手段を備えることを特徴とする。
また、請求項8の発明は、 ビームを照射することによってパターンを描画する描画方法であって、(a)反射面の配置角度が第1角度となる状態と前記反射面の配置角度が第2角度となる状態との間で状態の切り替えが可能であるとともに、前記状態の切り替えが行われたときに、前記反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で変位する複数のミラーを備える空間光変調デバイスの前記複数のミラーについて前記反射面の配置角度を各ミラーごとに制御する工程と、(b)光源から光を照射する工程と、(c)前記光源から照射される光の反射方向が前記反射面の配置角度により制御されている前記空間光変調デバイスの各ミラーによって、前記光源からの光を複数のビームに変調するとともに、前記複数のビームのうちの対象となるビームを位相変換手段に導く工程と、(d)前記位相変換手段によって前記複数のビームのうちの対象となるビームの位相を変換する工程とを有することを特徴とする。
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る描画方法であって、前記(a)工程は、反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で連続的に変位中の状態において、前記反射面が前記光源からの光を反射するように、前記反射面を有するミラーの状態の切り替えタイミングを決定することを特徴とする。
また、請求項10の発明は、請求項8または9の発明に係る描画方法であって、(e)前記複数のビームの光量を制御する工程をさらに有することを特徴とする。
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係る描画方法であって、前記(a)工程における前記反射面の配置角度は、前記複数のミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされる光の光量に応じて制御されることを特徴とする。
請求項1ないし11に記載の発明は、空間光変調デバイスの前記複数のミラーについて前記反射面の配置角度を各ミラーごとに制御し、光源から照射される光の反射方向を各ミラーごとに制御して、複数のビームのうちの対象となるビームを位相変換手段に導いて当該ビームの位相を変換することにより、ダイレクトデジタル露光において、空間光変調デバイスに特別な構造を設けることなく、各ビームの位相制御を実現できる。
請求項3に記載の発明は、複数のビームの光量を制御する光量制御手段をさらに備えることにより、位相変換と光量調節とを組み合わせて光学系の回折限界を超えた超解像をダイレクトデジタル露光においても容易に実現できる。
請求項4に記載の発明は、光源から照射される光の反射方向を、複数のミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされる光の光量に応じて決定することにより、特別な構造を必要とせずに、光量を連続的に制御できる。
請求項5に記載の発明は、ビームの光量を変更する光学フィルタによって光量を制御することにより、容易に実現できる。
請求項7に記載の発明は、複数の位相変換手段を備えることにより、多種のビームを形成できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における描画装置1を示す図である。なお、図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義する。ただし、これらの方向は位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。
描画装置1は、可動ステージ10、描画ヘッド11および制御部12を備え、可動ステージ10に支持された基板9に微細なパターン(像)を描画する装置として構成されている。
なお、パターンを描画する対象物は基板9に限定されるものではなく、紙や立体的な物体であってもよい。また、本発明における描画装置は、描画される像が視認できるものに限定されるものではなく、例えば、露光装置をも含む概念である。また、描画装置1の1回の描画動作によって描画される画像はn個の画素から形成されており(nは1以上の整数)、以下の説明では、n番目の画素に対応する構成について「n」の添え字を付すものとする。
可動ステージ10の上面は水平面に加工されており、基板9を水平姿勢で保持する機能を有している。可動ステージ10は、図示しない吸着口から吸引を行うことにより、載置された基板9の裏面を吸着して当該基板9を所定の位置に保持する。
また、可動ステージ10は、制御部12からの制御信号に応じて、X軸方向およびY軸方向に直線的に移動することが可能とされている。詳細は省略するが、可動ステージ10は、基板9をY軸方向に移動させる主走査駆動機構と、基板9をX軸方向に移動させる副走査駆動機構とを備えている。このような機構としては、例えば、リニアモータを用いた直動機構を採用することができる。
これにより、描画装置1は、描画ヘッド11から照射される光を基板9の表面の任意の位置に照射することが可能とされている。このように、描画装置1から照射されるレーザ光は基板9の表面を像面として結像される。
描画ヘッド11は、レーザ光を照射する光源としてのレーザ発振器13、レーザ発振器13から照射されたレーザ光を所定の方向に導く照明光学系14、照明光学系14によって導かれたレーザ光を変調する空間光変調デバイス2、ミラー制御部3、および、変調されたレーザ光を基板9に結像させる結像光学系15を備えている。
詳細は図示しないが、制御部12は、主にデータを演算するCPUと、画素データ等のデータを記憶するメモリと、各種信号を生成する回路(駆動回路)とから構成されている。制御部12は、描画装置1の各構成を制御する機能を有し、例えば、可動ステージ10の水平位置を制御したり、レーザ発振器13にリセット信号を伝達することにより周期Tでレーザ光を照射させる。また、制御部12は、必要に応じて、リセット信号や画素データをミラー制御部3に伝達する機能も有している。
レーザ発振器13は、制御部12から周期Tで伝達されるリセット信号に応じて、所定のパルス幅のレーザ光を断続的に点灯させる(パルスレーザとなる)。これにより、本実施の形態におけるレーザ発振器13は、周期T(所定の周期)でレーザ光を照射する光源として機能する。なお、本実施の形態におけるレーザ発振器13が照射するレーザ光は、平面波のコヒーレント光である。
一般に露光間隔が短い場合、その間に可動ステージ10の移動を完了しなければならないため、可動ステージ10を比較的高速で移動させることが必要となる。一方、露光間隔が長いと、可動ステージ10の移動を完了するための許容時間が長くなるため、可動ステージ10を低速で移動させることが可能となる。しかしながら、可動ステージ10を低速で移動させると、パターン全体の露光を完了するために要する時間が長くなり処理自体が遅延する。
本実施の形態におけるレーザ発振器13は、先述のように、一定の露光時間(パルス幅)および一定の露光間隔(周期T)でレーザ光を照射するため、可動ステージ10の移動速度は一定でよい。したがって、駆動制御が容易になるとともに、速度変更によって可動ステージ10の移動が不安定になることを防止することができる。
なお、本実施の形態における描画装置1では、パルスレーザを照射するレーザ発振器13としてエキシマレーザを採用する。また、パルス幅は、10[nsec]ないし数十[nsec]程度である。ただし、描画装置1において用いられるレーザ光は、このようなレーザ光に限定されるものではない。
照明光学系14は、ミラー140、レンズ141およびミラー142,143を備えている。
レーザ発振器13から照射され、照明光学系14に入射したレーザ光は、ミラー140およびレンズ141によりミラー142へと導かれる。また、ミラー142はレンズ141によって導かれたレーザ光をミラー143に向けて反射し、ミラー143は入射したレーザ光を空間光変調デバイス2に向けて反射する。すなわち、ミラー142およびミラー143によって、レーザ光は所定の角度(入射角)で空間光変調デバイス2に入射するように調整される。
このように、照明光学系14は、レーザ発振器13から照射されたレーザ光の光路を適宜調整して空間光変調デバイス2に導く機能を有している。なお、照明光学系14が備える構成は本実施の形態に示すものに限定されるものではなく、レーザ光の光路上に適宜、別のレンズやミラー等の光学素子が配置されてもよい。
照明光学系14によって導かれたレーザ光が入射される空間光変調デバイス2は、シリコン基板の上に、微少なミラーが格子状に多数配列した構造を有している。以下、空間光変調デバイス2が備える微小ミラーを「マイクロミラー」と称し、他のミラー(例えばミラー142)と区別する。
空間光変調デバイス2の各マイクロミラーは、描画装置1によって描画される画像の各画素に対応している。したがって、空間光変調デバイス2はn個のマイクロミラーを有している。
本実施の形態における描画装置1では、空間光変調デバイス2としてマイクロミラーデバイスを採用する。
空間光変調デバイス2の各マイクロミラーは、ミラー制御部3から各マイクロミラーに対して伝達される開始信号に応じて、所定の角度だけ傾くことが可能なように設計されている。具体的には、空間光変調デバイス2における複数のマイクロミラーの反射面の配置角度θ(反射面とXZ平面との成す角)は、ミラー制御部3からの開始信号に応じて、θS(第1角度)からθE(第2角度)へと変位する。以下、マイクロミラーの配置角度θについて、「θS≦θ≦θE」とする。
すなわち、本実施の形態では、通常時において各マイクロミラーの反射面の配置角度θはθSとなっている。この状態で、開始信号が与えられたマイクロミラーは、反射面の配置角度θをθSからθEへと変位させる動作を開始する。すなわち、開始信号とは、反射面の配置角度θがθSとなっている状態のマイクロミラーに対して、配置角度θがθEとなる状態へと状態の切り替えを行うタイミングを示す信号として定義する。また、本実施の形態においてマイクロミラーの反射面の配置角度θにおけるθS(あるいはθE)とは、当該マイクロミラーにON信号(あるいはOFF信号)を与え続けたときに、最終的に変位が停止するときの反射面の配置角度θとして定義する。
図2は、マイクロミラーに開始信号が与えられたときの経過時間tと配置角度θとの関係を例示する図である。
図2に示す例では、開始信号が与えられることによって配置角度θの変位が開始され、時間t1経過後において配置角度θが「θE」となり、配置角度θが「θE」の状態が時間(t2−t1)だけ経過するまで維持された後、配置角度θが再び「θS」へと変位している。一般的なミラーデバイスにおいて、マイクロミラーの反射面の配置角度θが「θS」から「θE」まで傾くのに要する時間t1は、数μsecから数十μsec程度である。
このように、空間光変調デバイス2の複数のマイクロミラーのそれぞれは、開始信号により、反射面の配置角度θが「θS」から「θE」へと連続的に変位する。なお、図2に示す例では、時間t1が経過するまでの間、配置角度θが等速で連続的に変位している様子を示している。しかし、配置角度θが、連続的、かつ、再現性があるように変位するのであれば、その変位速度は必ずしも「等速」に限定されるものではない。すなわち、n番目の画素に対応するマイクロミラーに開始信号が与えられてからの経過時間を「tn」、当該マイクロミラーの反射面の配置角度θを「θn」、連続関数fnを用いて次の式1と表すことができればよい。
θn=fn(tn)・・・式1
そして、本実施の形態における関数fnは、図2に示すような関数となるが、一般的なミラーデバイスは式1を満足する。また、関数fnが連続関数であることから、関数fnには逆関数Fnが存在し、この逆関数Fnを用いると式2が成立する。
n=Fn(θn)・・・式2
すなわち、n番目の画素に対応するマイクロミラーについて、所望する配置角度θnが決まれば、式2によって、当該マイクロミラーに開始信号を与えるタイミングを決定することができる。
図3は、ミラー制御部3の構成を示すブロック図である。図3に示すように、ミラー制御部3は、開始信号生成部30、メモリ31および演算部32を備えている。
開始信号生成部30は、制御部12から周期Tで伝達されるリセット信号を遅延させる複数の遅延回路から構成されている。
開始信号生成部30における各遅延回路には、空間光変調デバイス2の各マイクロミラーがそれぞれ一対一で対応しており、対応する遅延回路とマイクロミラーとが独立した信号線で互いに接続されている。すなわち、各遅延回路も描画されるパターンの各画素に対応しており、開始信号生成部30はn個の遅延回路を備えている。
開始信号生成部30の各遅延回路には、制御部12から先述のリセット信号が同時に入力される。そして、各遅延回路によってそれぞれ遅延されたリセット信号は、各遅延回路に対応するマイクロミラーにおける開始信号として、それぞれのマイクロミラーに個別に、先述の信号線によって伝達される。
すなわち、本実施の形態における開始信号生成部30は、レーザ発振器13においてパルスレーザを点灯させるタイミングを決定するためのリセット信号を基準として、各マイクロミラーに与える開始信号を生成する機能を有している。
なお、各遅延回路における遅延時間は、後述する演算部32によって演算され、各遅延回路に伝達される。また、与えられた遅延時間だけ入力信号(本実施の形態ではリセット信号)を遅延させて出力する遅延回路は、既知の技術を用いてアナログ回路あるいはデジタル回路によって容易に実現できる。
メモリ31は、それぞれが「0」または「1」の値を記憶することが可能な複数のメモリセルを備えている。また、メモリ31が備える複数のメモリセルは、所定数(1以上の整数)のメモリセルからなるn個のメモリセル群に区分されている。メモリ31の各メモリセル群は、描画するパターンを構成する各画素にそれぞれ対応している。例えば、1つの画素に対応したメモリセル群が8個のメモリセルによって構成されている場合、各メモリセル群は、対応する画素について−127ないし127の範囲の画素値を画素データとして記憶することができる。
なお、本実施の形態における画素データにおいて、画素値が「正」である画素は「正位相」のビームによって描画される画素を示し、画素値が「負」である画素は「逆位相(正位相のビームの位相を180°シフトさせた位相)」のビームによって描画される画素を示す。また、描画するパターンを構成する各画素において中間階調(連続階調)を表現する必要がない場合には各メモリセル群が備えるメモリセルは2個のメモリセルで足りるが、中間階調を表現する必要がある場合には階調数に応じた複数個のメモリセルが必要となる。また、以下の説明では、メモリセル群に記憶される画素値を「Q」とし、例えば、n番目の画素の画素値を「Qn」と称する。
メモリ31の各メモリセル群に制御部12によって格納された各画素データは、演算部32によって参照され、後述する演算に用いられる。
演算部32は、メモリ31の各メモリセル群に記憶されている画素データに基づいて、開始信号生成部30の各遅延回路における遅延時間を求めて各遅延回路に伝達する機能を有する。演算部32が演算により遅延時間を求める原理については後述する。
図1に戻って、結像光学系15は、調整部4、ミラー151および結像レンズ152を備えている。
図4は、第1の実施の形態における空間光変調デバイス2および調整部4を示す概略図である。図4に示すように、調整部4は、レンズ40,41、アパーチャ42、焦点面43、平行平面板44およびアパーチャ45,46を備えている。
なお、図4では、空間光変調デバイス2が備える複数のマイクロミラーのうち、代表して3つのマイクロミラーMRn-2,MRn-1,MRnのみを図示している。また、図4において、実線で示す光軸(アパーチャ45を通過する光軸)はマイクロミラーMRn-2,MRn-1,MRnの配置角度θが「θS」のときの光軸を示し、破線で示す光軸(アパーチャ46を通過する光軸)はマイクロミラーMRn-2,MRn-1,MRnの配置角度θが「θE」のときの光軸を示す。
レンズ40の焦点距離は「fA」であり、レンズ41の焦点距離は「fB」である。そして、図4に示すように、空間光変調デバイス2と焦点面43はレンズ40からそれぞれ焦点距離fAだけ離れた位置に配置され、焦点面43とアパーチャ42はレンズ41からそれぞれ焦点距離fBだけ離れた位置に配置されている。
アパーチャ42は、先述のように、レンズ41から焦点距離fBだけ離れた位置に配置されており、レンズ41の像面を形成している。アパーチャ42は、レンズ41から入射する光を平行光としつつ、各光の光軸方向を(+Y)方向に調整し、調整部4から出射させる機能を有している。
図5は、第1の実施の形態における焦点面43を示す図である。焦点面43の大部分(図5において網掛けで示す部分)は、光を遮蔽する部材で形成されており、所定の位置に平行平面板44およびアパーチャ45,46が取り付けられている。言い換えると、焦点面43は、アパーチャ45,46以外の位置に入射した光を遮断する機能を有している。
平行平面板44は、アパーチャ46の(+Y)側に配置され、アパーチャ46を通過したビームの全てが平行平面板44を通過するように配置されている。平行平面板44は、通過するビームの位相を180°シフトさせる(反転させる)。すなわち、平行平面板44は、空間光変調デバイス2から出射される複数のビームのうちのアパーチャ46を通過したビームの位相を180°変換する機能を有している。
アパーチャ45とアパーチャ46とは、互いに焦点面43の中心Oから等距離に配置されている。したがって、空間光変調デバイス2の任意のマイクロミラーからアパーチャ45までの距離は、当該マイクロミラーからアパーチャ46までの距離と等しい。
図6および図7は、アパーチャ45の拡大図である。なお、アパーチャ45の後方には平行平面板44に相当する構成は設けられていないため、アパーチャ45を通過したビームの位相は変換されない。本実施の形態では、アパーチャ45を通過したビームの位相を「正位相」と定義する。
図6に示す円形領域80は、マイクロミラーMRnの反射面の配置角度θが「θS」のときに、マイクロミラーMRnによって反射されたビームが入射する領域を示すものである。図4では、幾何光学により各マイクロミラーからのビームが全てアパーチャ45の一点に集光されるように示している。しかし、波動光学では、焦点面43においてもビームは図6に示すように一定の広がりを持っている。
また、マイクロミラーMRnと異なる位置に配置されているマイクロミラーMRn-1によって形成されたビームであっても、マイクロミラーMRnと同じ配置角度θSで反射されたビームは、図4に示すように、焦点面43(アパーチャ45)の同一位置を通過する。したがって、上記において、円形領域80はマイクロミラーMRnによって反射されたビームが入射する領域と説明したが、配置角度θが「θS」のマイクロミラーによって反射されたビームは全て円形領域80に入射する。すなわち、配置角度θが「θS」のときのマイクロミラーによって反射されたビームの全光束はアパーチャ45に入射する。このとき当該ビームの全光量が、対応する画素を描画するために照射されるビームの光量となる。
図6に示す円形領域81は、配置角度θが「θS+ΔθS」となっているマイクロミラーによって反射されたビームが入射する領域を示すものである。円形領域81はアパーチャ45と重ならない領域となっている。すなわち、マイクロミラーの配置角度θが「θS」から「θE」へと変位している状態において、「θS+ΔθS≦θ」となると、当該マイクロミラーによって反射されたビームの全光束はアパーチャ45に入射しない状態となる。
演算部32は、正位相のビーム(正の画素値に対応した画素を描画するビーム)については、当該ビームを形成するマイクロミラーの配置角度θを「θS≦θ≦θS+ΔθS」の範囲で制御するものとする。これにより、正位相となるべきビームが入射しうる領域は、結局、図6に示す領域82となる。
図7に示す円形領域83は、配置角度θが「θS<θ<θS+ΔθS」のときのマイクロミラーによって反射されたビームが入射する領域を示す。このような場合には、反射されたビームの一部だけがアパーチャ45に入射し、その他の部分は焦点面43によって遮蔽される。すなわち、円形領域83とアパーチャ45との重なる領域84(図7において黒色で示す領域)に入射したビームのみがアパーチャ45を透過し、そのビームの光量は、反射されたビームの全光束がアパーチャ45に入射する場合に比べて、遮蔽された分だけ減少する。
すなわち、アパーチャ45を透過するビームの光量は、領域84の面積に依存し、当該面積は、配置角度θに依存する。逆に言えば、n番目の画素を描画するために照射すべき正位相のビームの光量を「Ωn」とし、ビームの位相の「正」「逆」をビームの光量の「正」「負」で表すとすると、当該光量Ωnを得るための配置角度θnは、連続関数Snを用いて式3と表すことができる。
θn=Sn(Ωn) (Ωn>0)・・・式3
図8および図9は、アパーチャ46の拡大図である。なお、アパーチャ46の後方には平行平面板44が設けられている、アパーチャ46を通過したビームの位相は平行平面板44によって変換される。本実施の形態では、アパーチャ46を通過したビームの位相は、アパーチャ45を通過したビーム(正位相)に対して「逆位相」となる。
図8に示す円形領域85は、配置角度θが「θE,」となっているマイクロミラーによって反射されたビームが入射する領域を示すものである。すなわち、配置角度θが「θE」のときのマイクロミラーによって反射されたビームの全光束はアパーチャ46に入射する。したがって、このとき当該ビームの全光量が、対応する画素を描画するために照射されるビームの光量となる。
また、図8に示す円形領域86は、配置角度θが「θE−ΔθE」となっているマイクロミラーによって反射されたビームが入射する領域を示すものである。すなわち、マイクロミラーの配置角度θが「θS」から「θE」へと変位している状態において、「θE−ΔθE<θ」となると、当該マイクロミラーによって反射されたビームはアパーチャ46に入射する状態となる。
演算部32は、逆位相のビーム(負の画素値に対応した画素を描画するビーム)については、当該ビームを形成するマイクロミラーの配置角度θを「θE−ΔθE≦θ≦θE」の範囲で制御するものとする。これにより、逆位相のビームが入射しうる領域は、結局、図8に示す領域87となる。
図9に示す円形領域88は、配置角度θが「θE−ΔθE<θ<θE」となっているマイクロミラーによって反射されたビームが入射する領域を示す。このような場合には、反射されたビームの一部だけがアパーチャ46に入射し、その他の部分は焦点面43によって遮蔽される。すなわち、円形領域88とアパーチャ46との重なる領域89(図9において黒色で示す領域)に入射したビームのみがアパーチャ46を透過し、そのビームの光量は、反射されたビームの全光束がアパーチャ46に入射する場合に比べて、遮蔽された分だけ減少する。
すなわち、アパーチャ46を通過するビームの光量は領域89の面積に依存し、当該面積は、配置角度θに依存する。逆に言えば、逆位相のビームの光量を「Ωn」とすると、当該光量Ωnを得るための配置角度θnは、連続関数Enを用いて式4と表すことができる。
θn=En(Ωn) (Ωn<0)・・・式4
このように、アパーチャ45,46は、通過するレーザ光の位置によって光量が変化する光学素子として構成されている。なお、図4から明らかなように、描画装置1では、焦点面43において、アパーチャ45とアパーチャ46との間にビームが照射されると、当該ビームは焦点面43に遮蔽されるため、当該ビームが基板9に照射されることはない。すなわち、マイクロミラーの配置角度θが「θS+ΔθS<θ<θE−ΔθE」である場合に、当該マイクロミラーによって形成されるビームの光量は「0」となる。
本実施の形態では、光量が「0」である場合の配置角度θnを、図4に太い矢印で示す角度とする。すなわち、式5が成立する。
θn=(θS+θE)/2 (Ωn=0)・・・式5
なお、式3ないし式5を便宜上の関数Pnを用いて式6と表すこととする。
θn=Pn(Ωn)・・・式6
図1に戻って、アパーチャ42を通過して調整部4から出射されたビームはミラー151に向けて出射される。
調整部4からミラー151に向けて出射されたビームは、ミラー151によって反射され、結像レンズ152を介して像面たる基板9の表面に照射される。これにより、当該ビームに対応する画素の位置に当該ビームが照射され、所望の画素が描画される。
ここで、演算部32が遅延時間を求める原理を説明する。
本実施の形態における描画装置1では周期Tのリセット信号ごとにレーザ光が照射される。したがって、m回目のレーザ光が照射されるタイミングは「mT」である。また、n番目の画素に対応するマイクロミラーにm回目の描画のための開始信号が与えられてからの経過時間を「tn,m」とすると、m回目の描画のためのレーザ光は当該開始信号が与えられてから「tn,m」経過したときに照射されるので、m回目の開始信号が与えられるタイミングτn,mは、式7で表される。
τn,m=mT−tn,m・・・式7
また、(m−1)回目の描画からm回目の開始信号が与えられるまでの時間(n番目の画素に対応する遅延回路のm回目の描画に対する遅延時間dn,m)は、次の式8で表される。
n,m=τn,m−(m−1)T・・・式8
したがって、式7を式8に代入すると、式9が成立する。
n,m=T−tn,m・・・式9
また、式6は式10と表すことができ、式2は式11と表すことができる。
θn,m=Pn(Ωn,m)・・・式10
n,m=Fn(θn,m)・・・式11
ここで、関数Fnおよび関数Pnの合成関数を関数Xnとすると、式10および式11から式12が成立する。
n,m=Xn(Ωn,m)・・・式12
なお、関数Xnは、再現性のある関数であるため、実験等により予め求めて特性データとして記憶しておくことができる。
さらに、式12を式9に代入することによって式13が成立する。
n,m=T−Xn(Ωn,m)・・・式13
m回目の描画において、n番目の画素を描画するために必要なレーザ光の光量Ωn,mは、n番目の画素に対応したメモリセル群にm回目の画素データとして記憶される画素値Qn,mによって求まる。また、そのときのビームが正位相であるか逆位相であるかは、画素値Qn,mが「正」「負」のいずれであるかによって決定できる。したがって、演算部32は、制御部12から与えられるm回目の画素データに基づいて式13を演算することにより、各遅延回路における遅延時間dn,mを求めることができる。
以上が描画装置1の構成および機能の説明である。次に、このような描画装置1において光学系の回折限界を超えた解像度が実現される原理を説明する。
まず、ビームの位相を制御する機能がない場合(正位相のビームのみ照射可能な場合)について説明する。
図10は、正位相の1本のビームで1つの画素を描画する際の画素の配列例を示す図である。図10では、一次元的に配列した7つの画素P0ないしP6のうちの中央の画素P3を描画する例を示している。したがって、この例では、画素P3に対応したマイクロミラーによって形成されるビームのみが照射される。なお、各画素P0ないしP6のサイズは、縦横の長さサイズがいずれもビームピッチBPとする。
図11は、図10に例示するパターンを描画するための理想的なビームの振幅の分布を示す図である。これによれば、画素P3に対応する位置のみに、ビームが照射されることが好ましいことがわかる。
図12は、画素P3に1本のビームを照射した場合の結像面における光の強度分布を示す図である。
図12を図11と比較すると、光の強度分布はビームピッチに比べて広くなり、ビームが照射される領域は画素P3のサイズよりも大きくなることがわかる。この広がりは、ビームの波長と光学系のレンズの開口数とで決まる回折限界により、装置の光学系によって一定となり、これ以上狭くする(絞る)ことができない。
図13は、図12に示す例において、光のエネルギーの分布を示す図である。なお、図13に示す閾値Vは、感光材料の感度を示す値である。図13に示すように、位相を反転させずに描画する場合、ビームの描画領域の最小サイズはVP0となる。
次に、画素ごとに位相を反転させたビームを照射することが可能な場合について説明する。
図14は、位相を反転したビームを複数の画素に照射しつつ、1つの画素を描画する際の画素の配列例を示す図である。図14では、図10と同様に一次元的に配列した7つの画素P0ないしP6のうちの中央の画素P3を描画する例を示している。ただし、画素P1,P5に位相を反転させたビームを照射する。すなわち、画素P3には正の画素値が、そして画素P1,P5には負の画素値が記憶されている。
図15は、図14に示すパターンを描画する際に、画素P1,P3,P5に与えるビームの振幅を示す図である。図15では、正位相のビームの振幅を正の値で示し、逆位相のビームの振幅を負の値で示す。ここに示す例では、逆位相のビームの振幅は、正位相のビームの振幅よりも小さい。
図16は、図15に示す例において、結像面における光の強度分布を各ビームごとに示す図である。各ビームの強度分布の広がりは、先述のように、光学系の回折限界で決まるため、各ビームの振幅によらず、ほぼ一定である。
図17は、図15に示す例において、結像面における光の強度分布を示す図である。正位相のビームが照射される領域と、逆位相のビームが照射される領域とが重なる領域では、ビームの強度は互いに引き算される。
図18は、図17に示す例において、光のエネルギーの分布を示す図である。3つの画素P1,P3,P5に対応するマイクロミラーからビームが照射されることにより、ビームが照射される領域は、図13に示す例に比べて拡大する。しかしながら、周辺部の成分は、図13に示す場合に比べて抑制されており、この大きさ(周辺部のピーク)を感光材料の感度以下にする(このような感光材料を選択する)ことにより、ビームの描画領域の最小サイズはVP1となる。図13のVP0と図18のVP1とを比較すれば、明らかにVP1のサイズの方が小さい。すなわち、正位相のビームの位相を反転した逆位相のビームを照射することにより、回折限界を超えた解像度が実現できることがわかる。
このように、描画装置1が各画素ごと(各マイクロミラーごと)に位相および光量を制御することにより、高価な位相シフトマスクを用いることなく、回折限界を超えた高解像度を実現できる。
なお、ここに示す原理は簡略化した一例であり、描画するパターン形状や、用いるビームのプロファイル(強度分布)等に応じて、正位相または逆位相のビームを照射すべき画素および光量は様々に変化する。本実施の形態における画素データは、CADデータから生成されたビットマップデータに解像度改善処理(例えば、Optical Proximity Correction等)を実行することによって作成される。先述のように、本実施の形態における画素データにおいて、画素値の絶対値は光量を示し、符号は位相を示す(「正符号」は正位相、「負符号」は逆位相)。また、解像度改善処理は、外部の装置で実行されてもよいし、制御部12において実行されてもよい。
次に、描画装置1を用いてパターンを描画する描画方法について説明する。
図19および図20は、本発明に係る描画方法を示す流れ図である。なお、図19に示すステップS11の処理が開始されるまでに、可動ステージ10に基板9が載置され、可動ステージ10(基板9)の描画ヘッド11に対する相対位置が決定されているものとする。
まず、リセット信号の回数をカウントするカウンタjの値を「0」にリセットする(ステップS11)。なお、以下の説明では、レーザ光をJ回照射するとパターンの描画が終了するものとする。すなわち、パターンをJ個に分割して描画する例について説明する。
次に、制御部12は、ミラー制御部3のメモリ31に1回目の描画に係る画素データを書き込む(ステップS12)。これによってミラー制御部3の演算部32は、書き込まれた1回目の画素データに基づいて遅延時間を演算する(ステップS13)。
次に、制御部12はリセット信号の周期Tによる送出を開始し(ステップS14)、周期Tが経過したか否か(ステップS15)を監視する状態に移行する。なお、この監視状態において、ミラー制御部3は空間光変調デバイス2の各マイクロミラーの制御を行う(ステップS28)が、ステップS28については後述する。
周期Tが経過すると、描画装置1は、ステップS15においてYesと判定し、カウンタjの値がJより小さいか否かをさらに判定する(ステップS16)。
カウンタjの値がJより小さい場合(ステップS16においてYes)、制御部12はリセット信号を開始信号生成部30に伝達し、演算部32は求めた遅延時間を開始信号生成部30に伝達する。これにより、開始信号生成部30が各遅延回路にリセット信号と、当該リセット信号を遅延させる時間を示す遅延時間とをセットする(ステップS17)。これによって、空間光変調デバイス2の各マイクロミラーに開始信号が伝達されるタイミングが決定される。
すなわち、ステップS17が実行されるたびに、それ以後は、開始信号生成部30の各遅延回路において、時間の経過により遅延時間が「0」となった遅延回路から順次、対応するマイクロミラーに開始信号が伝達される。これにより、ミラー制御部3は、複数のマイクロミラーについて状態の切り替えを行うタイミングを各マイクロミラーごとに制御する(ステップS28)。
なお、本実施の形態では、状態を変更する必要のないマイクロミラー(レーザ光が入射するときの配置角度θが「θS」でよいマイクロミラー)については、開始信号を伝達する必要がない。したがって、演算部32は、このようなマイクロミラーに対応する遅延回路には、遅延時間として「U」をセットする(たたし、U>T)。これにより、「U」がセットされた遅延回路では遅延時間Uが経過する前に周期Tが経過してレーザ光が照射されるため、当該遅延回路に対応したマイクロミラーには開始信号が伝達される前にレーザ光が照射される。すなわち、当該マイクロミラーは、配置角度θが「θS」の状態でレーザ光を反射することになり、形成されたビームはアパーチャ45を通過する。
ステップS17が実行されると、制御部12は(j+1)回目の描画(次回の描画)に係る画素データをメモリ31に書き込み(ステップS18)、これに応じて演算部32が遅延時間の演算を開始する(ステップS19)。すなわち、ステップS17ないしS19の処理は、次回の描画に備えるために実行する処理である。
一方、ステップS16において、カウンタjの値がJ以上である場合とは、今回の描画で全てのパターンの描画が終了することを意味する。すなわち、次回の描画は行われないので、次回の画素データは存在しない。したがって、描画装置1は、次回の描画の準備のための処理(ステップS17ないしS19の処理)をスキップする。
ステップS16においてNoと判定されるか、あるいはステップS19が実行されると、次に制御部12はカウンタjの値が1以上であるか否かを判定する(ステップS21)。カウンタjの値が「0」の場合、今回の描画は行わないので、ステップS22ないしS26の処理をスキップし、カウンタjの値をインクリメントする(ステップS27)。
ステップS21においてカウンタjの値が1以上である場合は、今回の描画(j回目の描画)が必要であることを意味する。したがって、制御部12はリセット信号をレーザ発振器13に伝達し、レーザ発振器13がレーザ光を照射する(ステップS22)。このとき制御部12からレーザ発振器13に伝達されるリセット信号は、ステップS17において開始信号生成部30に伝達されたリセット信号である。
ステップS22において照射されたレーザ光は照明光学系14に導かれて、空間光変調デバイス2に入射する。空間光変調デバイス2に入射したレーザ光は、空間光変調デバイス2の各マイクロミラーによってそれぞれの方向に反射されることにより複数のビームに変調され(ステップS23)、結像光学系15(調整部4)に入射する(ステップS24)。
結像光学系15の調整部4に入射した各ビームは、各マイクロミラーの反射方向(反射時の配置角度θ)に応じて、正位相のビームとして照射されるべきビームはアパーチャ45に、画素値「0」の画素に対応したビームは焦点面43の中央部に、逆位相のビームとして照射されるべきビームはアパーチャ46に、それぞれ導かれる。そして、アパーチャ45に導かれたビームはそのままアパーチャ45を通過し、焦点面43の中央部に導かれたビームは遮蔽され、アパーチャ46に導かれたビームはアパーチャ46を通過した後平行平面板44を通過する。
すなわち、ステップS23,S24は、レーザ発振器13から照射されるレーザ光の反射方向が開始信号の与えられるタイミングにより制御されている空間光変調デバイス2の各マイクロミラーによって、レーザ発振器13からのレーザ光を複数のビームに変調するとともに、複数のビームのうちの対象となるビーム(逆位相に変換されるべきビーム)を平行平面板44に導く工程である。また、ステップS24は、平行平面板44によって、調整部4に入射した複数のビームのうち、平行平面板44を通過したビームの位相を反転させることにより位相を変換する工程でもある。
調整部4から出射した複数のビーム(遮蔽されなかったビーム)は、ミラー151および結像レンズ152によって所定の方向に導かれ、基板9の表面の所定の位置にそれぞれ照射される。これにより、1回の照射によって描画されるパターンの各画素が描画される(ステップS25)。
1回の描画が終了すると、描画装置1は、カウンタjの値が「J」であるか否かを判定することにより、全ての描画が終了したか否かを確認し(ステップS26)、未だ描画していない画素が残っている場合には、可動ステージ10を所定の位置に移動させた後、カウンタjの値をインクリメントする(ステップS27)。そして、マイクロミラーの制御を行いつつ(ステップS28)、ステップS15からの処理を繰り返す。一方、全ての画素の描画を終了した場合(ステップS26においてYes)、処理を終了する。
以上のように、第1の実施の形態における描画装置1は、複数のビームのうちの対象となるビームの位相を変換する平行平面板44と、空間光変調デバイス2の複数のマイクロミラーについて偏向を行うタイミングを各マイクロミラーごとに制御し、レーザ発振器13から照射されるレーザ光の反射方向を各マイクロミラーごとに制御して、複数のビームのうちの対象となるビームを平行平面板44に導くミラー制御部3とを備える。これにより、ダイレクトデジタル露光において、空間光変調デバイス2に特別な構造を設けることなく、各ビームの位相制御を実現できる。すなわち、既に実用化されている空間光変調デバイス2によってビームの位相制御が行える。
また、描画装置1は、複数のビームの光量を制御することにより、位相制御と光量制御とを組み合わせて光学系の回折限界を超えた超解像をダイレクトデジタル露光においても容易に実現できる。
また、レーザ発振器13から照射されるレーザ光の反射方向を、複数のマイクロミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされるビームの光量に応じて決定することにより、特別な構造を必要とせずに、光量を連続的に制御できる。また、位相制御と光量制御とを1つのパラメータ(配置角度)で制御できる。
ビームの位相の変換を、一般式、nλ±(1/m)λを満たす光学素子(但し、n,mは整数、1/mは予め定めた位相差)、本実施の形態では例えば平行平面板44を用いて位相をシフトさせることにより、これを行う。すなわち、アパーチャ45を透過する光路とアパーチャ46を透過する光路は同じ光路長となっているが、この平行平面板44をアパーチャ46に設けることにより両光路長の差が予め定めた量(例えば、nλ+(1/2)λ、nは整数)になる。
なお、平行平面板44がシフトさせる位相は逆位相(1/2)に限定されるものではない。例えば、位相を1/4シフトさせるものでもよい。
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、正位相のビームと、正位相のビームに対して位相を反転させた逆位相のビームのいずれかしか形成することができなかった。しかし、位相の異なる多種のビームを形成するように構成することも可能である。
図21は、第2の実施の形態における描画装置1aの空間光変調デバイス2および調整部4を示す概略図である。
第2の実施の形態における描画装置1aの焦点面43は、アパーチャ47および位相シフト板48をさらに備えている点が、第1の実施の形態における描画装置1の焦点面43と異なっている。なお、描画装置1aにおいて、描画装置1と同様の構成については同符号を付し、説明を適宜省略する。
焦点面43の中心Oとアパーチャ46との間に配置されているアパーチャ47は、アパーチャ45,46と同様の構造を有する部材である。また、アパーチャ47の後方に配置される平行平面板48は、通過するビームの位相を1/4だけシフトさせることにより変換する機能を有している。
ミラー制御部3は、第1の実施の形態と同様に、空間光変調デバイス2の各マイクロミラーの配置角度θを「θS」から「θE」まで連続的に変位させることが可能である。したがって、ミラー制御部3は、開始信号を与えるタイミングを制御することにより、マイクロミラーから出射されるビームを、アパーチャ45,46だけでなく、アパーチャ47(平行平面板48)にも導くことが可能である。
以上のように、第2の実施の形態における描画装置1aにおいても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、位相シフト量の異なる複数の平行平面板44,48を設けることにより、描画装置1aは、第1の実施の形態と同様に開始信号を与えるタイミングを制御することにより、各ビームの光軸方向を切り替えることによって、ビームを3種類の位相のビームとすることができ、描画パターンに応じた柔軟な描画が可能となる。
なお、平行平面板の数および種類は2つに限定されるものではなく、さらに多くの位相シフト板を設けてもよい。また、平行平面板44,48がシフトさせる位相はここに示す例に限定されるものではない。
<3. 第3の実施の形態>
上記実施の形態では、開始信号をマイクロミラーに与えるタイミングを制御することによってビームの光量を連続的に制御する例について説明した。しかし、光量を制御する手法はこれに限定されるものではない。
図22は、第3の実施の形態における描画装置1bの空間光変調デバイス2および調整部4を示す概略図である。
第3の実施の形態における描画装置1bの焦点面43は、平行平面板44の後方に光学フィルタ49を備えている点が、第1の実施の形態における描画装置1の焦点面43と異なっている。なお、描画装置1bにおいて、描画装置1と同様の構成については同符号を付し、説明を適宜省略する。
光学フィルタ49は、通過するビームの光量を50%に半減させる機能を有しており、一定の透過率を有する光学素子である。すなわち、描画装置1bでは、逆位相のビームの光量は、正位相のビームの光量の50%に固定される。
これにより、各マイクロミラーの配置角度θは、正位相のビームを形成する場合は「θS」、OFFのビームを形成する場合は「(θS−θE)/2」、逆位相のビームを形成する場合は「θE」となる。すなわち、画素データは2ビットでよい。このような構成によっても、図15のような強度分布のビームを照射することができる。
この場合、「θS」および「θE」は、いずれも各マイクロミラーが静止する配置角度であるから変位中の配置角度に比べて安定的に使用できる配置角度である。そして、「(θS−θE)/2」は変位中の配置角度であるものの、実際には、「θS+ΔθS<θ<θE−ΔθE」の範囲であればビームはOFFとなる。
すなわち、描画装置1bは光量制御を光学フィルタ49で行うことにより、パターンに対する柔軟性は低下するものの、安定性は向上する。なお、第2の実施の形態のように光軸方向の選択候補を増加させ、各光軸上に様々な光学素子を配置することによって、より多種のビームを形成することができ、柔軟性を向上させることができる。
なお、光学フィルタ49の機能をアパーチャ46あるいは平行平面板44に組み込んでもよい。
<4. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
例えば、開始信号生成部30をミラー制御部3に設けると説明したが、空間光変調デバイス2に設けてもよい。
また、上記実施の形態では、正位相のビームを形成するマイクロミラーの配置角度θを「θS」とし、逆位相のビームを形成するマイクロミラーの配置角度θを「θE」としたが、このような配置関係に限定されるものではない。すなわち、焦点面43におけるアパーチャ45,46,47の配置順序はどのような配置順序でもよい。
また、アパーチャ45,46,47に代えて、通過する光の位置によって光量が変化する光学素子、例えば、連続濃度可変フィルタなどを用いてもよい。
また、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、同様の効果が得られるならば、各工程の内容および順序が適宜変更されてもよい。
また、上記実施の形態では、式13を演算部32が演算すると説明したが、例えば、ビームの光量(画素値)と遅延回路における遅延時間とを対応付けたルックアップテーブル(変換テーブル)をミラー制御部3に設けるように構成してもよい。あるいは、ビームの光量とマイクロミラーの配置角度とを対応付けたルックアップテーブルを設け、取得された配置角度に基づいて演算部32が式11および式9を演算するように構成してもよい。すなわち、プログラム(ソフトウェア)で実現されると説明した機能の一部または全部を論理回路(ハードウェア)で実現してもよいし、論理回路で実現されると説明した機能の一部または全部をソフトウェアで実現してもよい。
さらにまた、上述の実施の形態では、遅延回路を用いて空間光変調素子デバイスの複数のミラーの各反射面の切り替えタイミングを制御することによって、各反射面の配置角度の変位を制御したが、これに限定しない。例えば、SPIE−The International Society for Optical Engineering "MOEMS Display and Imaging SystemsII" Volume 5348、pp.119-121に記載されているような、所定の角度で各ミラーを静止させることにより各反射面の配置角度を直接制御する方式を採用してもよい。
第1の実施の形態における描画装置を示す図である。 マイクロミラーに開始信号が与えられたときの経過時間tと配置角度θとの関係を例示する図である。 ミラー制御部の構成を示すブロック図である。 第1の実施の形態における空間光変調デバイスおよび調整部を示す概略図である。 第1の実施の形態における焦点面を示す図である。 アパーチャの拡大図である。 アパーチャの拡大図である。 アパーチャの拡大図である。 アパーチャの拡大図である。 正位相の1本のビームで1つの画素を描画する際の画素の配列例を示す図である。 図10に例示するパターンを描画するための理想的なビームの振幅の分布を示す図である。 画素P3に1本のビームを照射した場合の結像面における光の強度分布を示す図である。 図12に示す例において、光のエネルギーの分布を示す図である。 位相を反転したビームを複数の画素に照射しつつ、1つの画素を描画する際の画素の配列例を示す図である。 図14に示すパターンを描画する際に、画素P1,P3,P5に与えるビームの振幅を示す図である。 図15に示す例において、結像面における光の強度分布を各ビームごとに示す図である。 図15に示す例において、結像面における光の強度分布を示す図である。 図17に示す例において、光のエネルギーの分布を示す図である。 本発明に係る描画方法を示す流れ図である。 本発明に係る描画方法を示す流れ図である。 第2の実施の形態における描画装置の空間光変調デバイスおよび調整部を示す概略図である。 第3の実施の形態における描画装置の空間光変調デバイスおよび調整部を示す概略図である。
1,1a,1b 描画装置
10 可動ステージ
11 描画ヘッド
12 制御部
13 レーザ発振器
14 照明光学系
15 結像光学系
2 空間光変調デバイス
3 ミラー制御部
4 調整部
44,48 平行平面板
45,46,47 アパーチャ
49 光学フィルタ

Claims (11)

  1. 照射するビームによってパターンを描画する描画装置であって、
    光を照射する光源と、
    反射面の配置角度が第1角度となる状態と前記反射面の配置角度が第2角度となる状態との間で状態の切り替えが可能であるとともに、前記状態の切り替えが行われたときに、前記反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で変位する複数のミラーによって、前記光源からの光を複数のビームに変調する空間光変調デバイスと、
    前記複数のビームのうちの対象となるビームの位相を変換する位相変換手段と、
    前記空間光変調デバイスの前記複数のミラーについて前記反射面の配置角度を各ミラーごとに制御し、前記光源から照射される光の反射方向を各ミラーごとに制御して、前記複数のビームのうちの対象となるビームを前記位相変換手段に導くミラー制御手段と、
    を備えることを特徴とする描画装置。
  2. 請求項1に記載の描画装置であって、
    前記ミラー制御手段は、反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で連続的に変位中の状態において、前記反射面が前記光源からの光を反射するように、前記反射面を有するミラーの状態の切り替えタイミングを決定することを特徴とする描画装置。
  3. 請求項1または2に記載の描画装置であって、
    前記複数のビームの光量を制御する光量制御手段をさらに備えることを特徴とする描画装置。
  4. 請求項3に記載の描画装置であって、
    前記光量制御手段は、前記光源から照射される光の反射方向を、前記複数のミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされる光の光量に応じて決定することを特徴とする描画装置。
  5. 請求項3に記載の描画装置であって、
    前記光量制御手段は、ビームの光量を変更する光学フィルタであることを特徴とする描画装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の描画装置であって、
    前記位相変換手段は、nλ±(1/m)λを満たす光学素子(但し、n,mは整数、1/mは予め定めた位相差)であることを特徴とする描画装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の描画装置であって、
    複数の前記位相変換手段を備えることを特徴とする描画装置。
  8. ビームを照射することによってパターンを描画する描画方法であって、
    (a) 反射面の配置角度が第1角度となる状態と前記反射面の配置角度が第2角度となる状態との間で状態の切り替えが可能であるとともに、前記状態の切り替えが行われたときに、前記反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で変位する複数のミラーを備える空間光変調デバイスの前記複数のミラーについて前記反射面の配置角度を各ミラーごとに制御する工程と、
    (b) 光源から光を照射する工程と、
    (c) 前記光源から照射される光の反射方向が前記反射面の配置角度により制御されている前記空間光変調デバイスの各ミラーによって、前記光源からの光を複数のビームに変調するとともに、前記複数のビームのうちの対象となるビームを位相変換手段に導く工程と、
    (d) 前記位相変換手段によって前記複数のビームのうちの対象となるビームの位相を変換する工程と、
    を有することを特徴とする描画方法。
  9. 請求項8に記載の描画方法であって、
    前記(a)工程は、反射面の配置角度が前記第1角度と前記第2角度との間で連続的に変位中の状態において、前記反射面が前記光源からの光を反射するように、前記反射面を有するミラーの状態の切り替えタイミングを決定することを特徴とする描画方法。
  10. 請求項8または9に記載の描画方法であって、
    (e) 前記複数のビームの光量を制御する工程をさらに有することを特徴とする描画方法。
  11. 請求項10に記載の描画方法であって、
    前記(a)工程における前記反射面の配置角度は、前記複数のミラーのそれぞれに対応した画素を描画するために必要とされる光の光量に応じて制御されることを特徴とする描画方法。
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