JP2010180431A - 蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法 - Google Patents

蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法 Download PDF

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篤士 三浦
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Abstract

【課題】従来の中屈折率の蒸着材料や光学薄膜が有していた、水分や二酸化炭素との化学反応性、組成ズレ、光吸収及び溶融性における問題点がすべて解消された、蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】GdTaxy〔10/90≦x≦90/10の実数、(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2の実数〕で表わされることを特徴とする蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基材上に1.8〜2.1の屈折率を有する光学薄膜を形成するための蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法に関する。
光学薄膜とは、光の波長程度の厚みをもつ膜において発生する光の干渉現象を応用し、反射防止や増反射等の光学的機能を付与させるよう形成した薄膜のことをいう。
このような光学薄膜は、所望の光学的機能を発現させるべく予め設計された膜構成に基づき、ガラスやプラスチック等の基材上に単層膜、あるいは二〜百層程度の積層膜を設けることにより形成される。これにより、レンズやプリズム等の光学部材に、反射防止、増反射、あるいは偏光制御等の光学的機能を付与することができる。
このような光学薄膜の形成方法には、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相法を挙げることができるが、成膜速度やコストの点で優れた真空蒸着法が用いられることが多い。真空蒸着法では、ボートやるつぼ等の容器に装填された蒸着材料を真空中で抵抗加熱や電子ビーム加熱等の加熱手段により蒸発させることで、基材上に膜を形成する。
蒸着材料のうち、屈折率が1.6〜2.0程度の光学薄膜を形成させることができる材料は、中屈折率材料と呼ばれる。屈折率が1.6程度の材料ではAlが公知である。
また、Alより屈折率の高い材料として、単成分系では、MgO、Y、Laが公知である。しかしながら、これらの材料には、以下に掲げる2つの問題点がある。
MgOとLaは、塩基性が強く、それらの膜は大気中の水分や二酸化炭素と化学反応して白濁してしまうため、光学部品に利用することが非常に困難である。さらに、Laの場合は、前記の化学反応性が特に高く、大気中に放置していると成形体としての蒸着材料自体が膨張し崩れて粉状になってしまうため、大気と遮断された状態で保管しなければならず、設備や管理の面で多大な労力を要する。
蒸着材料の熱的性質として、融点が蒸発温度よりも十分に低いこと、すなわち完全な溶融状態を経て蒸発する(溶融性を有する)ものであれば、蒸発速度の制御が格段にし易くなる。しかしながら、MgOとYでは、その性質が無く、均質な薄膜を形成することが難しい。
一方、多成分系の蒸着材料がいくつか開示されている。しかしながら、多成分系を真空蒸着に用いた場合、各成分の蒸気圧差に起因するためか、蒸気の組成が材料の組成と一致せず、使用時間や使用回数とともに膜の組成も変化、すなわち組成ズレを起こし、ひいては光学特性も再現されない結果となることがほとんどである。開示されているAl−La系やAl−Y系も、例に漏れず組成ズレを起こすという問題点がある(例えば特許文献1〜2)。
また、多成分系ではAl−Sm系も開示されており、これは組成ズレを起こさないとされている。ただし、紫外域においては光吸収を生じるため、紫外域用の光学部品には適さないという、別の課題がある(例えば特許文献3)。
特開平6−184730 特開2004−287272 特開2000−171609
本発明者らは、従来の中屈折率材料が有する課題が解決された蒸着材料を開発するにあたり鋭意検討したところ、まず、単成分系である酸化ガドリニウム(Gd)に注目するに至った。
Gdは、これまで蒸着材料としてはほとんど使用されていなかった物質であるが、上掲した四点の課題のうち、水分や二酸化炭素との化学反応性、組成ズレ、及び光吸収の三点においては何ら問題のないことが、本発明者らによって明らかとなった。しかしながら、もう一点の溶融性においては不十分であった。
本発明の課題は、従来の中屈折率の蒸着材料や光学薄膜が有していた問題点がすべて解消され、かつ、前記のGdの有する問題点も解決された、蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法を提供することにある。
本発明は、以下に掲げるものである。
1.GdTaxy〔10/90≦x(Ta/Gdのモル比)≦90/10の実数、(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2の実数〕で表わされることを特徴とする蒸着材料。
2.y=(3+5x)/2である上記1に記載の蒸着材料。
3.20/80≦x≦40/60である上記1又は2に記載の蒸着材料。
4.上記1に記載の蒸着材料を製造する方法であって、(1)酸化ガドリニウム及び/または金属ガドリニウムと、(2)酸化タンタル、亜酸化タンタル、金属タンタルからなる群から選ばれる1または2以上とを、ガドリニウムとタンタルのモル比が90:10〜10:90、かつ、yが(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2となるように混合することを特徴とする方法。
5.上記2に記載の蒸着材料を製造する方法であって、酸化ガドリニウムと酸化タンタルを、ガドリニウムとタンタルのモル比が90:10〜10:90となるように混合することを特徴とする方法。
6.上記3に記載の蒸着材料を製造する方法であって、(1)酸化ガドリニウム及び/または金属ガドリニウムと、(2)酸化タンタル、亜酸化タンタル、金属タンタルからなる群から選ばれる1または2以上とを、ガドリニウムとタンタルのモル比が80:20〜60:40となるように混合することを特徴とする方法。
7.GdTaxy〔10/90≦x≦90/10の実数、y=(3+5x)/2の実数〕で表わされることを特徴とする光学薄膜。
8.上記1〜3のいずれかに記載の蒸着材料を真空蒸着することにより光学薄膜を得ることを特徴とする光学薄膜の製造方法。
9.上記4〜6のいずれかに記載の方法より得られる蒸着材料を真空蒸着することにより光学薄膜を得ることを特徴とする光学薄膜の製造方法。
10.上記8の方法により得られる光学薄膜。
11.上記9の方法により得られる光学薄膜。
本発明者らは、ガドリニウムとタンタルを所定割合で配合した二成分系の酸化物蒸着材料により、前記した課題の全てが解消されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、以下の特徴を有する蒸着材料、光学薄膜及びそれらの製造方法を提供することができる。
(1)n=1.8〜2.1の光学薄膜を形成することができる。
(2)大気中の水分や二酸化炭素と化学反応しないので、蒸着材料は、特別な設備や管理手段を用いなくとも大気中に長期間保管することができる。また、光学薄膜は、白濁化しないので、何ら問題なく光学部品に利用することができる。
(3)溶融性の蒸着材料であるため、均質な薄膜を容易に得ることができる。
(4)繰り返し使用しても蒸着材料の組成ズレが起こらず、ひいては得られる光学薄膜の組成ズレも生じない。
(5)近赤外域や可視域のみならず、近紫外域(波長280nmまで)においても光吸収が無い。即ち、近紫外域用の光学部品にも利用することができる。
本発明の第1の態様である蒸着材料は、GdTaxy〔10/90≦x(Ta/Gdのモル比)≦90/10の実数、(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2の実数〕で表わされる組成を有することを特徴としている。GdTaxyとは、ガドリニウム、タンタル、及び酸素から成る物質群をいい、具体的には、GdとTaの混合物、GdTaOやGdTaO等の複合酸化物、これら複合酸化物2種以上からなる混合物、Gdと上記複合酸化物の混合物、Taと上記複合酸化物の混合物、等の化学量論の酸化状態〔y=(3+5x)/2〕の物質群を指す。また、GdとTaと金属Taの混合物、GdとTaと金属Gdの混合物、GdとTa(=TaO)の混合物、Gdと金属Taの混合物、金属GdとTaOの混合物、GdTaOと金属Taとの混合物、GdTaOとTaOの混合物、等の亜酸化状態〔y<(3+5x)/2〕であってもよい。あるいは逆に少しなら過酸化状態でも問題はない。なお、このような混合及び複合状態は、X線回折測定によって特定することができる。
GdとTaの組成比(モル比)を示すx(Ta/Gd)は、10/90≦x≦90/10の実数を満足する必要があり、当該範囲からから外れた場合には以下に示すように、前述した発明の効果が損なわれる。すなわちx<10/90の場合には、溶融性が低く、均質な薄膜を得ることが難しく、x>90/10の場合には、可視域に吸収が発生してしまう。また、蒸着材料の酸化状態を示すy(酸素数)は、(3+3x)/2が下限値であり、当該値を下回る場合にも、可視域に吸収が発生してしまう。
yは、連続使用での組成ズレがさらに小さくなり、より長期に亘る使用が可能となる点で、化学量論数である(3+5x)/2が好ましい。また、xも、同じ点から、10/90≦x≦60/40が好ましく、20/80≦x≦40/60がさらに好ましい。
また、繰り返して成膜を行う際には、その時点までの成膜に用いて減った分だけ蒸着材料を継ぎ足し、溶融固化させて再度成膜を行う、という工程がよく行われる。よって、一度になるべく多量の蒸着材料を継ぎ足すことができれば継ぎ足しの頻度が低くなり、作業性を向上させることができる。そのためには、第一に、できるだけ高密度の蒸着材料を用いればよく、蒸着材料の形態として、粉体よりは、その粉体を造粒や圧縮等することで得られる成形体や、焼成あるいは溶融固化することで得られる焼結体や溶融体が好ましい。さらに、前記の成形体を焼成あるいは溶融固化して得られる焼結体や溶融体であれば、なお好ましい。第二に、かさ密度もなるべく高くなるように、蒸着材料の形状は粒状であり、その粒径は0.1〜10mmの範囲に収めることが好ましい。0.5〜5mmであるとさらに好ましい。なお、粉体であり、あるいは、粒径が0.1mm未満であると、溶融や蒸着の時にスプラッシュが発生しやすく、その点からも好ましくない。
本発明の蒸着材料は次のようにして製造することができる。化学量論のy=(3+5x)/2の場合は、酸化ガドリニウム(Gd)と酸化タンタル(Ta)の原料をガドリニウムとタンタル(Gd:Ta)のモル比が90:10〜10:90となるように混合すればよい。一方、亜酸化状態とする場合は、原料は、酸化ガドリニウム(Gd)及び/または金属ガドリニウム(Gd)と、酸化タンタル(Ta)、亜酸化タンタル(TaO、TaO等)、金属タンタル(Ta)からなる群から選ばれる1または2以上とを、原料全体で、ガドリニウムとタンタルのモル比が90:10〜10:90、かつ、yが(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2となるように適宜選択し、混合すればよい。例えば、GdとTaと金属Taを混合した構成、GdとTaとTaOを混合した構成、GdとTaOを混合した構成、金属GdとTaを混合した構成、金属GdとTaOを混合した構成、Gdと金属GdとTaを混合した構成、等を挙げることができる。
このようにして得られる原料混合物は、そのまま蒸着に用いることも可能であるが、さらに成形あるいは焼成することが好ましく、成形を経た上で焼成することがなお好ましい。また、0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmの粒状に成形することが好ましい。前述のとおり、蒸着材料の継ぎ足しの頻度を低くし、また、スプラッシュの発生を低減することができるためである。なお、原料混合物あるいはその成形体を溶融固化して溶融体を得ることは、後述するように、製造における手間や生産性の点から、好ましくない。
原料は、特に限定されるものではないが、造粒や圧縮のし易さ(加工性)、焼結の進み易さ、等を勘案すれば、粉体状であることが好ましい。また、粉体の扱い易さ(流動性)の点で、GdやTaの原料では、それらの粒径は、0.1〜10μmであることが好ましい。
成形は、造粒や圧縮等の公知の加工手段を用いてすることができる。
焼成において、焼成温度は1200〜2000℃の範囲であることが好ましい。1200℃未満の場合、焼結がほとんど進まず、蒸着材料の高密度化がほとんど起こらない。一方、2000℃を超える場合には、焼結体同士が融着し所望の粒径より粗大な焼結体が得られてしまうため、焼成後に粉砕する必要が生じ、仕上げに手間がかかる。さらに、焼結体の反応容器への貼り付きも生じ、生産性が低下する。ゆえに、2000℃を超える高温が当然に必要である溶融固化は、上述したとおり、製造上は好ましくない。また、焼成工程は様々な雰囲気下で行うことができる。例えば、真空雰囲気、大気中、あるいはAr等の不活性ガス雰囲気等をあげることができる。なお、酸化物を真空雰囲気で焼成した場合は、一般に酸素の脱離がしばしば見られる。本発明の蒸着材料ではその脱離はほとんど起こらないので、焼成の前後で酸素数yは変化しないといえる。焼成前後での酸素数の変化(脱離の有無)は、真空雰囲気で焼成した後の蒸着材料の重量と、それを大気中や酸素雰囲気で焼成した後の重量とを比較することによって評価することができる。
また、本発明の第2の態様である光学薄膜は、GdTaxy〔10/90≦x≦90/10の実数、y=(3+5x)/2の実数〕で表わされる組成を有することを特徴とする。なお、yは光吸収が著しく大きくなる等の実用上の不都合が生じない限り、厳密に化学量論数〔y=(3+5x)/2〕である必要はない。
本発明の光学薄膜は、本発明の蒸着材料を用い、公知の基材上に真空蒸着することによって形成することができる。真空蒸着法は、抵抗加熱蒸着法と電子ビーム蒸着法のどちらでもよいが、電子ビーム蒸着法の方が蒸着速度の制御もし易く、好適である。なお、この真空蒸着法には、この方法に成膜加工上の補助手段が追加されたイオンプレーティング法やイオンアシスト法も含まれる。
本発明の光学薄膜の製造方法によれば、屈折率が1.8〜2.1であり、白濁化が起こらず、組成ズレがなく、均質であり、さらに近赤外域や可視域のみならず近紫外域の光をも吸収しない光学薄膜を形成することができる。
以下に本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が70:30となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1800℃で4時間焼成し、GdTa3/718/7〔x=30/70、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を銅製のハースライナー(45mmφ×15mmt)に装填し、そのハースライナーを市販の真空蒸着装置内にセットし、装置内を1.0×10−3Paになるまで排気した後、蒸着材料を電子ビーム加熱により溶融し、溶融固化物を形成した。次いで、全圧が1.0×10−2Paになるように酸素を導入し、再度、電子ビームを前記溶融固化物に照射し、蒸着材料の蒸気を発生させ、予め装置内にセットし300℃に加熱していた石英ガラス基材上に膜厚が250nmになるまで成膜した。この成膜を基材のみを交換しつつ蒸着材料は一切継ぎ足すことなく3回行った。なお、成膜時の電子ビームは、加速電圧が−6kV、エミッション電流値が430mAの条件で照射した。
得られた膜について、分光光度計により波長250nm〜3000nmにおける透過率(T%)および絶対反射率(R%)を測定し、波長550nmにおける屈折率を求めた。また、膜の光吸収率A〔100−(R+T)〕%を評価した。さらに、成膜後の蒸着材料(溶融面)の形状を目視で観察し形状が平坦な場合、材料の溶融性が優れるとした。
結果を表1に示すが、膜組成が極めて安定していることにより、その屈折率はいずれも1.96と一定の値であった。また、280nm〜3000nmの波長において光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が80:20となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1800℃で4時間焼成し、GdTa1/417/8〔x=20/80、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率は一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が60:40となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1750℃で4時間焼成し、GdTa2/319/6〔x=40/60、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率は一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が90:10となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1850℃で4時間焼成し、GdTa1/916/9〔x=10/90、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率はほぼ一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が40:60となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1650℃で4時間焼成し、GdTa3/221/4〔x=60/40、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率はほぼ一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が10:90となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1650℃で4時間焼成し、GdTa24〔x=90/10、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率はほぼ一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体と、純度99.9%、粒度−325meshの金属Ta粉体を、モル比がGd:Ta:Ta=70:18:12〔Gd:Taのモル比は、70:(18+12)=70:30〕となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1700℃で4時間焼成し、GdTa3/715/7〔x=30/70、y=(3+3x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。
表1に示すように、得られた膜の屈折率はほぼ一定であり、光吸収も認められず、溶融面の形状も平坦であった。
比較例1
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が95:5となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1850℃で4時間焼成し、GdTa1/1931/19〔x=5/95、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜しようとしたが、溶融性が低く、成膜時間と共に材料が凸凹を呈し、成膜速度を一定に保てなくなったため、成膜を中止した。
比較例2
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体とをGd:Taのモル比が5:95となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1700℃で4時間焼成し、GdTa1949〔x=95/5、y=(3+5x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。成膜の工程は問題なく行うことができるが、形成された薄膜は可視域において光吸収があった。
比較例3
純度99.99%、粒径約2.0μmのGd粉体と純度99.99%、粒径約2.0μmのTa5粉体と、純度99.9%、粒度−325meshの金属Ta粉体を、モル比がGd:Ta:Ta=70:12:18〔Gd:Taのモル比は、70:(12+18)=70:30〕となるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1700℃で4時間焼成し、GdTa3/727/14〔x=30/70、y=(3+2x)/2〕で表わされる組成の蒸着材料を作製した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。成膜の工程は問題なく行うことができるが、形成された薄膜は可視域において光吸収があった。
比較例4
酸化アルミニウムと酸化ランタンを組成がLaAlOとなるように混合し、0.5〜5mmの粒状に造粒し、真空雰囲気下にて1600℃で4時間焼成した。
この蒸着材料を用い、実施例1と同じ条件にて成膜を行った。成膜の工程、光吸収には問題は無かったが、表1に示すように成膜を繰り返す度に屈折率が低くなることが確認された。これは成膜回数と共に、膜の組成がAlリッチになっていくことに起因している。
Figure 2010180431
Figure 2010180431
本発明の光学薄膜は、レンズやプリズム等の光学部材に、反射防止、増反射、あるいは偏光制御等の光学的機能を付与することができる。

Claims (11)

  1. GdTaxy〔10/90≦x≦90/10の実数、(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2の実数〕で表わされることを特徴とする蒸着材料。
  2. y=(3+5x)/2である請求項1に記載の蒸着材料。
  3. 20/80≦x≦40/60である請求項1又は2に記載の蒸着材料。
  4. 請求項1に記載の蒸着材料を製造する方法であって、(1)酸化ガドリニウム及び/または金属ガドリニウムと、(2)酸化タンタル、亜酸化タンタル、金属タンタルからなる群から選ばれる1または2以上とを、ガドリニウムとタンタルのモル比が90:10〜10:90、かつ、yが(3+3x)/2≦y≦(3+5x)/2となるように混合することを特徴とする方法。
  5. 請求項2に記載の蒸着材料を製造する方法であって、酸化ガドリニウムと酸化タンタルを、ガドリニウムとタンタルのモル比が90:10〜10:90となるように混合することを特徴とする方法。
  6. 請求項3に記載の蒸着材料を製造する方法であって、(1)酸化ガドリニウム及び/または金属ガドリニウムと、(2)酸化タンタル、亜酸化タンタル、金属タンタルからなる群から選ばれる1または2以上とを、ガドリニウムとタンタルのモル比が80:20〜60:40となるように混合することを特徴とする方法。
  7. GdTaxy〔10/90≦x≦90/10の実数、y=(3+5x)/2の実数〕で表わされることを特徴とする光学薄膜。
  8. 請求項1〜3のいずれかに記載の蒸着材料を真空蒸着することにより光学薄膜を得ることを特徴とする光学薄膜の製造方法。
  9. 請求項4〜6のいずれかに記載の方法より得られる蒸着材料を真空蒸着することにより光学薄膜を得ることを特徴とする光学薄膜の製造方法。
  10. 請求項8の方法により得られる光学薄膜。
  11. 請求項9の方法により得られる光学薄膜。
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