JP2010179379A - 穴あけ加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】CFRP材やチタン合金、アルミ合金等に対して、バリ、毛羽立ち、層間剥離などが抑制された高品位の穴を形成できるようにすることを課題としている。
【解決手段】切削工具1として、ボールエンドミルもしくは先端に設けられる切れ刃の外周コーナ部が凸曲線をなす工具を使用し、その切削工具1を、その工具の軸心Cを中心にして回転させながら加工穴の中心と同心の円軌道8上を周回させ、さらに、この切削工具1に軸方向の送りをかけることで、工具の直径dよりも直径Dの大きい穴を形成するようにした。
【選択図】図4
【解決手段】切削工具1として、ボールエンドミルもしくは先端に設けられる切れ刃の外周コーナ部が凸曲線をなす工具を使用し、その切削工具1を、その工具の軸心Cを中心にして回転させながら加工穴の中心と同心の円軌道8上を周回させ、さらに、この切削工具1に軸方向の送りをかけることで、工具の直径dよりも直径Dの大きい穴を形成するようにした。
【選択図】図4
Description
本発明は、炭素繊維等を用いた繊維強化プラスチック(FRP)材やチタン合金、アルミ合金等に穴を形成するのに有効な穴あけ加工方法に関する。
FRP(繊維強化プラスチックス)、特に、CFRP(炭素繊維強化プラスチックス)は、比強度、比弾性率が大きいことから、航空機や車両の構造体などに使用するケースが近年増えてきている。このようなFRP材を用いた構造体は、FRP材に穴を開け、締結用のボルトやリベットを用いて必要箇所に接続、固定する方法が通常採られており、その固定方法を、例えば航空機部品のような構造体に適用してFRP材を利用しようとすると、FRP材に対して多数の穴を加工することが必要になる。
FRP材の穴あけにおいては、図1に示すように、穴の出口部分において繊維の毛羽立ちが生じやすい。また、FRP積層材の場合、層間で剥離が生じやすく、加工品位上の問題が起こりやすい。
その一方で、用途が航空機等の構造体である場合は高い加工品位が求められる。従って、上記の問題の回避が極めて重要になる。上記毛羽立ちや層間剥離などの加工品位上の問題は、特に、工具摩耗の進展による加工抵抗の増大に伴って生じやすくなるが、高強度のCFRP材などでは工具摩耗の進行が特に速く、結果として加工品位を維持するために工具交換を早めることとなり、工具費の上昇、製品のコストアップを招いているのが実情である。
また、航空機分野などでは、CFRP材とアルミ合金やチタン合金などの金属材料を重ねた複合積層材に穴をあけるケースが多い。このような場合、単層材と違って適切な加工条件が異なる材料が組み合わされているため、すべての材料で加工品位を維持することが難しい。また、アルミ合金は、切削油を使用すれば加工は難しくないが、CFRP材を包含した複合積層材の場合、CFRP材の特性劣化を防止するためにドライ加工を強いられるため、アルミ合金の加工性が低下する問題もある。
CFRP材については、加工品位を維持するための改善策がこれまでにいくつか提案されている。例えば、下記特許文献1は、ドリルのねじれ溝を従来と逆方向に形成し、ドリル先端の切れ刃を内周側と外周側とがそれらの中間部で交叉するV字状に形成することを提案している。これは、逆ねじれとすることですくい角を負にしてFRP中の繊維を押し切るような状況を作り、V字状の切れ刃形状によって加工中の振動を抑制しながら加工を行うものであって、穴縁のバリやむしれなどを抑制できるとしている。しかし、同文献に開示された手法では、先端に形成される切れ刃の外周部に加工時の負荷が集中するため、同部において摩耗やチッピングが生じやすい。さらに、同部において一挙に穴縁が形成されるため、刃先に損傷がある場合には発生したバリ、毛羽立ちをそれ以上除去することができず、結果として良好な加工品位を維持することが難しい。
そこで発明者等は、ボールエンドミル又はラジアスエンドミルを使用し、通常のドリルなどと同じように軸心を中心にした回転と軸方向の送り運動により穴あけを行う加工方法を先に提案した(特願2007−206517号)。この方法は、FRP材の穴周りのバリや剥離の抑制が可能であり、比較的穴径の小さい穴の加工には非常に有効で、良好な加工品位が得られる。しかし、穴の直径が10mmを越えるような加工では、工具が被削材に与える軸方向の力(スラスト力)が大きくなりやすく、ボールエンドミルを用いてもバリ等の抑制が十分にできなくなることが分かった。穴径が大きい場合には、さらなる対応が必要である。
ここで、穴径が大きい場合の対応として、下記特許文献2に開示されるようないわゆるヘリカル加工の適用が考えられる。ヘリカル加工による穴あけでは、切削工具を、その工具の軸心を中心にして回転させながら加工穴の中心と同心の円軌道上を周回させ、さらに、この切削工具に軸方向の送りをかけることで、工具径よりも大径の穴を形成する。この方法は、穴径が大きいときにも小径の工具を使用できるため、穴径に対応した大径の工具を用いるときに比べて被削材に加わる力を抑制することができ、加工品位の向上が期待できる。また、切削工具が円軌道上を周回することで加工が断続切削となるため、切削温度の上昇なども抑えることができ、チタン合金等の金属材料に対する穴あけでも適用可能な切削条件の範囲拡大が期待できる。
ヘリカル加工に使用される工具は、一般的に外周コーナ部が鋭利な工具(例えば、スクエアエンドミル)が用いられる。前掲の特許文献2もそのような工具を開示している。通常の金属材料ではこのような工具を用いなければ加工品位を維持することができないが、CFRP材に適用した結果、この種の工具では逆効果となって穴出口の加工品位を十分に改善できないことを見出した。
本発明は、CFRP材やチタン合金、アルミ合金等に対して、バリ、むしれ、毛羽立ち、層間剥離などが抑制された高品位の穴を形成できるようにし、高品位の穴を長期間維持するため工具損傷を抑制することを課題としている。
上記の課題を解決するため、本発明においては、切削工具として、ボールエンドミルもしくは先端に設けられる切れ刃の外周コーナ部が凸曲線をなす工具を使用し、その切削工具を、その工具の軸心を中心にして回転させながら加工穴の中心と同心の円軌道上を周回させ、さらに、この切削工具に軸方向の送りをかけることで、工具径よりも大径の穴を形成するようにした。この方法では、使用する切削工具のコーナ部の内接円の半径寸法を、前記円軌道を1周する間の軸方向工具送り量よりも大きくすることが特に有効である。また、使用する切削工具は、その工具の切れ刃に被削材の加工面に対して平行になる直線切れ刃部が含まれていないものが望ましい。
本方法は、穴あけの対象がCFRP材の場合、直径が10mm以上の穴を形成するときに適用すると特に大きな効果が望める。また、本方法では、刃数が4枚以上の切削工具を用いること、その切削工具として基部を超硬合金で形成し、その基部の表面にダイヤモンド膜をコーティングしたものを用いることも効果的である。
また、チタン合金もしくはチタン合金とCFRP材を重ねた複合積層材を加工対象とする場合には、切削工具の外周における回転速度(切削速度)を、50m/min以上、100m/min以下とすることが望ましい。さらに、アルミ合金もしくはアルミ合金とCFRP材とを重ねた複合積層材を加工対象とする場合には、切削工具として、その工具の基部を超硬合金で形成し、その基部の表面に非晶質炭素(ダイヤモンドライクカーボン:DLC)膜をコーティングした工具を用いるのが望ましい。
本発明によれば、まず、径方向内端側の刃で小さめの穴を加工し、その後、軸方向の送りが進むことで径方向外端側の刃(外周刃)が穴を広げながら仕上げる形となる。これにより、通常のドリル加工や、スクエアエンドミルを用いたヘリカル穴あけ方法に比べて加工品位を向上させることが可能になる。また、穴あけ加工における軸方向の切削力(スラスト力)を低減することができ、そのスラスト力の低減によってCFRP材を押す力が小さくなるため、同材料の層間剥離が小さくなり、これによる加工品位の向上も期待できるようになる。
さらに、穴あけ加工でのスラスト力は、通常の加工方法では加工径が大きくなるほど上昇しやすく、加工穴の直径が10mmを越える場合に特に顕著であるが、本発明によれば、そのような大径穴の加工でも加工品位を良好に保つことが可能である。これに加え、CFRP材の場合、切屑が粉状となること、ヘリカル加工の場合、通常のドリル加工に比べて工具径が小さくて穴内の空間が広いことから、工具の溝幅が狭くても切りくず排出への影響は小さく、刃数を増やして1刃当たりの負荷を下げることができる。この対応は、切削工具の寿命を延長するのに有効である。
また、被削材の加工面に対して平行となる直線切れ刃部を有している工具を用いると、軸方向の送り運動により同切れ刃部は常に切屑を生成する状態となって同切れ刃部から非常に薄い切屑が連続的に生成することとなる。このような場合、例えば、金属材料の切削では切屑排出性が悪化することもあるので、その直線切れ刃部を有していない切削工具を使用することは加工品位の向上に有利に作用する。
また、スラスト力を低減することで切削工具自体への負荷が低減される。CFRP材の加工では特に工具摩耗が発生しやすいため、耐摩耗性の高いダイヤモンドの被膜を表面に施した切削工具を用いることも多いが、一般に同膜は密着力が弱く、膜剥離が生じやすい。この問題に対し、本発明の穴加工方法によれば、切削工具に対する負荷、つまりは、被膜に対する負荷を低減できるため、ダイヤモンド膜の剥離を抑制することも可能になり、切削工具を長寿命化することができる。
また、チタン合金の穴あけに本方法を適用する場合には、切削速度を上昇させて加工能率を改善することが可能である。通常のドリル加工では、被削材がチタン合金の場合、工具の損傷抑制のために切削速度は30m/min以下に設定される。ところが、CFRP材の加工では、切削速度が50m/minを下回ると加工品位が低下する。よって、本方法のようにヘリカル加工にして切削速度を上昇可能となすことは、特にチタン合金とCFRP材が積層された複合材の加工で加工品位を維持するのに有効である。
さらに、アルミ合金の穴あけに本方法を適用する場合は、非晶質炭素膜を施した切削工具を用い、ドライ加工において顕著になるアルミニウムの切削工具への溶着を、非晶質炭素膜を利用して抑制することが有効である。非晶質炭素膜による耐溶着性向上の効果は、連続切削時よりも断続切削時に高まるため、ヘリカル加工との組み合わせは特に好適である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の穴あけ加工方法で使用する切削工具の一例を図2及び図3に示す。図2の切削工具1は、工具先端部が半円形状を呈したボールエンドミルである。このボールエンドミルは、本体部2の先端にボール刃3を有しており、また、本体部2の外周部に外周刃4とねじれ溝5を有し、さらに、本体部2の後部に工作機械に把持されるシャンク部6を有している。
図3の切削工具1は、切れ刃7の外周コーナ部7aが凸曲線(図のそれは凸形円弧)をなすラジアスエンドミルである。切れ刃7の外周コーナ部7aは、内接円9の半径寸法(コーナR寸法)を、切削工具1が加工穴10(図4参照)の中心と同心の円軌道8を1周する間の軸方向工具送り量よりも大きくしている。そのようなコーナ部を有する切削工具が好ましい。図2のボールエンドミルについても同じことが言える。
また、これ等の切削工具1は、好ましい例として、刃数が4枚以上のものや、基部を超硬合金で形成し、その基部の表面にダイヤモンド膜や非晶質炭素(ダイヤモンドライクカーボン:DLC)膜を施したものを挙げることができる。
この発明の穴あけ加工方法では、このような切削工具1を使用し、その切削工具1を、図4に示すように、その工具の軸心Cを中心にして回転させながら加工穴10の中心と同心の円軌道8上を周回させ、さらに、この切削工具1に軸方向の送りをかけて穴の直径Dが工具の直径dよりも大きい穴を形成する。
以下、本発明の実施例を挙げる。
図2に示すボールエンドミル(住友電工ハードメタル(株)製SSB2030〜2120)を用いて穴を加工した。ボールエンドミルは、基部の材質にJIS Z20種の超硬合金を採用したものである。
一方、加工対象とした材料(被削材)は、CFRPの板材であり、その板材の面内方向に炭素繊維を有する単位層(プリプレグ)を8層接合し、厚みを2.78mmとしている。板材の板厚方向断面を観察したところ、断面に、厚みが50〜700μmの範囲の繊維束層が含まれていた。この板材に、厚み方向に貫通した穴をあけた。
一方、加工対象とした材料(被削材)は、CFRPの板材であり、その板材の面内方向に炭素繊維を有する単位層(プリプレグ)を8層接合し、厚みを2.78mmとしている。板材の板厚方向断面を観察したところ、断面に、厚みが50〜700μmの範囲の繊維束層が含まれていた。この板材に、厚み方向に貫通した穴をあけた。
まず、同ボールエンドミルを用いて、通常の穴あけを実施した。加工条件は、切削速度100m/min、送り0.05mm/rev、乾式での貫通穴の加工である。その際のスラスト力の推移を図5に示す。この図5から分かるように、加工穴の穴径が大きくなるほどスラスト力が増大しており、Φ10mm以上になると比較的穴数が少ない段階ながら100N程度もしくはそれ以上の値を示す。この程度のスラスト力がかかると加工品位が低下しやすくなり、例えば、Φ6mmのボールエンドミルでは問題なかった加工品位{図6(a)参照}が、Φ12mmのボールエンドミルでは図6(b)のように大幅に悪化し、チッピングやバリが発生している(バリの大きさは約1mm)。
次に、上記で問題となったΦ12mmの穴あけにおいて、本発明のヘリカル穴あけによる加工方法を実施した。使用した切削工具は、加工穴の穴径よりも小径のΦ6mmのボールエンドミルであり、工具外周での回転速度(切削速度)は100m/min、軸心部での回転速度は200mm/min、工具先端中心の円軌道に沿った移動軌跡が被削材の面となす角度を3°(切削工具が加工穴の中心と同心の円軌道を1周する間の軸方向送り量:0.99mm)とした。
図7に、1穴目加工後の穴出口の状態を示す。これから分かるように、ボールエンドミルを用いた本発明のヘリカル穴あけではバリなどは見られず、極めて良好な加工状態が得られた。この加工でのスラスト力の推移を図8に示す。そのスラスト力は、加工穴数の増加とともに増加するが、それでも、同径の穴を従来の穴あけ方法であけた場合(図5のΦ6mmのボールエンドミルによるデータ)と比べると、格段にスラスト力は低下している。
また、ボールエンドミルを用いて通常の穴あけを行った場合、穴の内壁面に斜めにびびり模様が形成されるという問題があるが、本発明による加工方法ではこのような模様は見られなかった。
次に、外周コーナ部が円弧形状であるラジアスエンドミルを用いた実施例を挙げる。実験に用いた切削工具(ラジアスエンドミル)は、同じくJISZ20種超硬合金製で、直径6mm、ねじれ角45°であり、コーナRを0.5mmと1.5mmにした2種を用意した。刃数は2枚とし、R1.5mmのエンドミルについてのみ4枚刃も用意した。実施例1と同様にφ12mmの穴あけを行い、ヘリカル穴あけの条件も同一とした。使用した被削材も同一のCFRP材である。
表1に、加工後の穴出口における初期の最大バリの寸法を示す。これから分かるようにコーナ部がR0.5mmの切削工具(ラジアスエンドミル)を用いた例ではバリが大きくなっている。本条件では切削工具が円軌道を1周する間の軸方向工具送り量が0.99mmとなるが、これよりも小さいコーナRの切削工具を用いた場合、穴出口形成時に一部では回転中心寄りの切れ刃が作用せずに最初から外周側の切れ刃のみで仕上げる形となるため、十分な品位が得られなかったと考えられる。
表1に、50穴加工後の切削工具の逃げ面摩耗量(コーナRと外周のつなぎ部の摩耗量)を併せて示した。コーナ部がR1.5mmの切削工具については、刃数が多いものの方が摩耗量は少なく、多刃の効果が確認できる。また、単層CFRP材に関しては、刃数を多くしても加工品位への影響が小さいことも分かる。
次に、ダイヤモンドコーティング切削工具を用いて穴あけを行った。その切削工具は、基部をJISK01種の超硬合金で形成したボールエンドミルであり、基部の表面に気相合成法で合成したダイヤモンドのコーティング膜を施した。
この切削工具を使用して実施例1と同様の条件で穴あけを行ったところ、従来の穴あけ法(Φ12mmエンドミルを使用)では5穴加工時点でダイヤモンド膜の剥離が発生したのに対し、本発明の加工方法(Φ6mmエンドミルを使用)では40穴までの加工でも、同膜の剥離が一切見られなかった。このことから、本発明の加工方法では、ダイヤモンドのコーティング膜が本来持つ高い耐摩耗性をより効果的に発揮させることが可能と言える。
次に、Ti合金とCFRP材を重ねた複合積層材を被削材にした場合の実施例を示す。工具はφ6mmボールエンドミル(住友電工ハードメタル(株)製SSB2060)を用い、軸心部での回転速度は600mm/min、工具先端中心の円軌道に沿った移動軌跡が被削材の面となす角度を3°とし、工具の回転速度(切削速度)を変化させた。被削材は、前記のCFRP材とTi−6Al−4V合金の3mm厚の板材を重ねたものを用い(CFRP材を上側とする)、ドライ条件で貫通穴の加工を行った。また、比較のために、φ12mmのドリル(住友電工ハードメタル(株)製MDS120MG)を用いた通常のドリル加工も実施した。通常ドリル加工での軸方向送り量は0.05mm/revとした。
表2に、5穴加工後の工具逃げ面の摩耗幅(コーナRもしくは底刃と外周のつなぎ部での値)を示す。これから分かるように、ドリル加工では切削速度の上昇とともに損傷が非常に大きくなっているのに対し、ヘリカル加工では、速度100m/min程度までは損傷が比較的小さい。また、ヘリカル加工ではスラスト力も小さくなっている。
さらに、CFRP材の内壁面を確認したところ、ヘリカル加工での切削速度30m/minの条件では繊維層の断面が不明確になっており、樹脂のむしれが見られるなど品位の低下が確認された。このことから、切削速度は、50〜100m/min程度が好適と考えられる。
次に、被削材がアルミ合金での実施例について示す。切削工具として、φ6mmボールエンドミル(ねじれ角30°、2枚刃、JISK01種超硬合金)を用い、ノンコート品と、表面にアーク法による水素フリーDLCコーティング膜(膜厚0.1μm)を施したものを比較した。同じく、DLCコーティングを施したスクエアエンドミルも比較対象とした。被削材のアルミ合金は、厚さ3mmのA1050材を用い、いずれもヘリカル加工で穴を形成した。このときの加工条件は、切削工具の外周部での回転速度(切削速度)が100m/min、軸心部での回転速度が600mm/min、工具先端中心の円軌道に沿った移動軌跡が被削材の面となす角度を3°(切削工具が加工穴の中心と同心の円軌道を1周する間の軸方向送り量:0.99mm)とし、加工形態はドライ切削とした。
この評価試験における加工後の穴の入り口側の状態を図9に示す。この図9から分かるように、アルミ合金の加工ではDLCコーティングは極めて有効である。また、穴入り口の周縁部や穴内壁の状態を確認すると、スクエアエンドミルよりもボールエンドミルの方が良好な結果が得られている。
また、図10に、DLCコーティングを施したボールエンドミル、スクエアエンドミルでの切屑排出の様子を高速ビデオカメラで撮影した映像を示す。ボールエンドミルでは扇型の切屑のみが周期的に生成され、順に排出されている。一方、スクエアエンドミルでは底刃が被削材の加工面に対しておおむね平行な直線刃であるため、底刃によって幅が広くて非常に薄い切屑が連続的に生成している。このため、穴深さが大きくなると切屑排出性が低下することが懸念される。同図には、参考としてラジアスエンドミルでの結果も示しているが、こちらも、スクエアエンドミルと同様に底刃が被削材の加工面に対しておおむね平行な直線刃であるため、似たような切屑が生成している。よって、ボールエンドミルなどのように、被削材の加工面に対して平行な直線刃部を有していない工具が切屑排出の面では有利であると考えられる。
次に、CFRP材、チタン合金、アルミ合金を積層させた場合の結果について示す。
被削材は実施例1と同様のCFRP材(2.78mm厚)、および、アルミ合金A5052(3mm厚)、Ti−6Al−4V材(3.6mm厚)を順に積層した材料とした。
使用した切削工具は、φ6mm超硬合金製ノンコートボールエンドミル(住友電工ハードメタル(株)製SSB2060)および同工具にアーク法により水素フリーDLCコーティング膜(膜厚0.1μm)を施したものの2種である。加工条件は、工具外周での回転速度(切削速度)は100m/min、軸心部での回転速度は2400mm/min、工具先端中心の円軌道に沿った移動軌跡が被削材の面となす角度を0.76°(切削工具が加工穴の中心と同心の円軌道を1周する間の軸方向送り量:0.25mm)とし、φ12mmの穴あけをヘリカル加工で行った。
被削材は実施例1と同様のCFRP材(2.78mm厚)、および、アルミ合金A5052(3mm厚)、Ti−6Al−4V材(3.6mm厚)を順に積層した材料とした。
使用した切削工具は、φ6mm超硬合金製ノンコートボールエンドミル(住友電工ハードメタル(株)製SSB2060)および同工具にアーク法により水素フリーDLCコーティング膜(膜厚0.1μm)を施したものの2種である。加工条件は、工具外周での回転速度(切削速度)は100m/min、軸心部での回転速度は2400mm/min、工具先端中心の円軌道に沿った移動軌跡が被削材の面となす角度を0.76°(切削工具が加工穴の中心と同心の円軌道を1周する間の軸方向送り量:0.25mm)とし、φ12mmの穴あけをヘリカル加工で行った。
図11に、1穴目での加工穴の状態、および、加工後の切削工具の先端側の写真を示す。なお、ノンコート工具は3穴、DLCコーティング工具は5穴加工後である。この写真から明らかなように、DLCコーティングを施したボールエンドミルによる加工で加工品位が良好であり、かつ、工具損傷も抑制されている。ノンコート工具ではアルミを加工した際に工具への凝着が激しく発生するため、悪影響が大きい。
また、この実験では、アルミ合金の後にチタン合金が加工されることになるが、ノンコート工具使用時に被削材の積層順序をCFRP/チタン合金/アルミ合金の順にすると、図12に示すように、アルミの凝着は極めて多く、わずか1穴で完全に溝が埋まってしまう結果となった。アルミ合金の加工後にチタン合金を加工する場合は、先行した加工で凝着したアルミがチタン合金を加工する際に脱落するため、チタン合金を先に加工する場合よりは良好な結果になったと考えられる。
1 切削工具
2 本体部
3 ボール刃
4 外周刃
5 ねじれ溝
6 シャンク部
7 切れ刃
7a 外周コーナ部
8 円軌道
9 内接円
10 加工穴
C 工具の軸心
D 加工穴の直径
d 工具の直径
2 本体部
3 ボール刃
4 外周刃
5 ねじれ溝
6 シャンク部
7 切れ刃
7a 外周コーナ部
8 円軌道
9 内接円
10 加工穴
C 工具の軸心
D 加工穴の直径
d 工具の直径
Claims (11)
- 被削材を加工する切削工具(1)として、ボールエンドミル、もしくは、先端に設けられる切れ刃(7)の外周コーナ部(7a)が凸曲線をなす工具を使用し、その切削工具(1)を、その工具の軸心(C)を中心にして回転させながら加工穴(10)の中心と同心の円軌道(8)上を周回させ、さらに、この切削工具(1)に軸方向の送りをかけることで、工具径(d)よりも直径(D)の大きい穴を形成する穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)は、切れ刃(7)に被削材の加工面に対して平行となる直線切れ刃部を含んでおらず、その切削工具(1)を使用して穴を形成することを特徴とする請求項1に記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)の切れ刃(4,7)の外周コーナ部は、内接円(9)の半径寸法が前記円軌道(8)を1周する間の軸方向工具送り量よりも大きく、その切削工具(1)を使用して穴を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の穴あけ加工方法。
- 炭素繊維強化プラスチックス材を加工対象にして穴を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)で、直径が10mm以上ある穴を形成することを特徴とする請求項4に記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)の刃数を4枚以上とし、その切削工具(1)を使用して穴を形成することを特徴とする請求項4又は5に記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)として、基部が超硬合金で形成され、その基部の表面にダイヤモンド膜がコーティングされたものを使用して穴を形成することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の穴あけ加工方法。
- チタン合金もしくはチタン合金と炭素繊維強化プラスチックス材を重ねた積層材を加工対象にして穴を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)を、工具外周における回転速度が50m/min以上100m/min以下となる速度で回転させて穴を形成することを特徴とする請求項8に記載の穴あけ加工方法。
- アルミ合金もしくはアルミ合金と炭素繊維強化プラスチックス材を重ねた積層材、もしくは、アルミ合金とチタン合金と炭素繊維強化プラスチックス材を重ねた積層材を加工対象にして穴を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穴あけ加工方法。
- 前記切削工具(1)として、基部が超硬合金で形成され、その基部の表面に非晶質炭素膜がコーティングされたものを使用して穴を形成することを特徴とする請求項10に記載の穴あけ加工方法。
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