JP2010169111A - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】自動変速機20の変速制御を行う変速制御装置30を、車両の加速度を演算する加速度演算手段33,34と、加速度演算手段によって演算された加速度に基づいて変速判定値を演算する変速判定値演算手段36と、変速判定値演算手段によって演算された変速判定値を微分する変速判定値微分手段37と、変速判定値の微分値が閾値を超えた場合に自動変速機のダウンシフトを許可するとともに、変速判定値の微分値が閾値未満である場合にダウンシフトを禁止する変速制御手段39とを備える構成とする。
【選択図】図1
Description
また、変速制御装置は、例えば加減速等のドライバの意図に応じて変速を行ういわゆるアダプティブ制御を行う。アダプティブ制御には、例えば、カーブ路の進入等でドライバがブレーキング操作を行った場合、車両の減速度に応じてダウンシフトを行い、エンジンブレーキの効きを高めるとともに、再加速時の駆動力を確保するブレーキング時制御等がある。
例えば、ドライバのブレーキ操作にムラがあり、減速Gの変動が大きい結果、ピーク値が閾値を超えた場合にはダウンシフト許可判定が行われるが、ドライバのブレーキ操作にムラが少ないため減速Gのピーク値が閾値に至らなかった場合には、所定時間内における減速量は同等であるにも関わらずダウンシフト許可判定が成立しない場合があり得る。具体的には、ドライバによる初期のブレーキ踏込みが弱く、減速不足を感じて強く踏み増した場合にはダウンシフトが行われるが、同様の減速量を得る場合にドライバが初期から適切なブレーキ操作を行った場合にはダウンシフトされない場合がある。
本発明の課題は、ドライバの操作にばらつきがある場合であっても適切なダウンシフトを行う自動変速機の変速制御装置を提供することである。
請求項1の発明は、自動変速機の変速制御を行う変速制御装置であって、車両の加速度を演算する加速度演算手段と、前記加速度演算手段によって演算された加速度に基づいて変速判定値を演算する変速判定値演算手段と、前記変速判定値演算手段によって演算された変速判定値を微分する変速判定値微分手段と、前記変速判定値微分手段が求めた前記変速判定値の微分値が閾値を超えた場合に前記自動変速機のダウンシフトを許可するとともに、前記変速判定値の微分値が前記閾値未満である場合に前記ダウンシフトを禁止する変速制御手段とを備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置である。
請求項4の発明は、前記変速判定値演算手段は、前記前後加速度演算手段によって演算された前記前後方向加速度、及び、前記横方向加速度演算手段によって演算された前記横方向加速度を合成したベクトルに基づいて前記変速判定値を演算することを特徴とする請求項3に記載の自動変速機の変速制御装置である。
請求項6の発明は、前記補正手段は、前記閾値を前記ベクトルの方向が前後方向から横方向に遷移するのに応じて増加するように補正することを特徴とする請求項4に記載の自動変速機の変速制御装置である。
(1)車両の加速度に基づいて演算される変速判定値の微分値が閾値を超えた場合にダウンシフトを許可することによって、変速判定値が対応する閾値を超えない場合であっても、例えば減速G等の立ち上がりが速い場合にはダウンシフトを実行させることができ、適切な変速制御を行うことができる。これによって、変速ムラの発生を抑制し、自然なドライブフィーリングを得ることができる。
(2)車両の加速度に基づいて演算される変速判定値の積分値が閾値を超えた場合にダウンシフトを許可することによって、変速判定値が対応する閾値を超えない場合であっても、例えば所定期間内における減速量の総和が大きい場合にはダウンシフトを実行させることができ、適切な変速制御を行うことができる。これによっても、変速ムラの発生を抑制し、自然なドライブフィーリングを得ることができる。
(3)横方向加速度の増加に応じてダウンシフトの許可が成立し難くなるように変速判定値と閾値との少なくとも一方を補正することによって、コーナリングによる横方向加速度が大きく、タイヤが摩擦円限界値の範囲内で発生可能な前後力の余力が乏しい場合には、ダウンシフトを抑制してタイヤのスリップによる車両挙動の乱れを防止し、操縦安定性を向上できる。
(4)前後方向加速度及び横方向加速度を合成したベクトルに基づいて変速判定値を演算することによって、摩擦円限界値に対するタイヤの前後力及び横力を適切に評価可能な変速判定値を得ることができ、適切な変速制御を行うことができる。
(5)ベクトルのスカラ量に基づいて演算される変速判定値を、ベクトルの方向が前後方向から横方向へ遷移するのに応じて減少するように補正することによって、簡単な処理により上記(4)項の効果を得ることができる。
(6)閾値をベクトルの方向が前後方向から横方向に遷移するのに応じて増加するよう補正することによっても、簡単な処理により上記(4)項の効果を得ることができる。
実施例1の自動変速機は、例えば乗用車等の自動車に搭載されるものである。
図1は、実施例1の自動変速機のシステム構成を示す模式図である。
車両は、エンジン10、自動変速機20、トランスミッション制御ユニット(TCU)30、路面μ推定装置40、路面勾配推定装置50等を備えて構成されている。
エンジン10は、エアクリーナ11、エアフローメータ12、インテークダクト13、スロットルボディ14、インテークマニホールド15等からなるインテークシステムを備え、スロットルボディ14にはスロットル開度センサ16が設けられている。
エアフローメータ12は、エアクリーナ11から出る新気の流量を測定し、図示しないエンジン制御ユニット(ECU)に伝達する。
インテークダクト13は、エアフローメータ12を出た新気をスロットルボディ14に導入する吸気管路である。
インテークマニホールド15は、スロットルボディ14から出た新気を、エンジン10本体のシリンダヘッドに設けられた各気筒のインテークポートに配分する分岐管路である。
スロットル開度センサ16は、スロットルボディ14内のスロットルバルブの開度を検出し、開度に関する信号をTCU30に伝達するものである。TCU30は、自動変速機20の変速制御に用いられるスロットル開度を、スロットル開度センサ16の出力信号に基づいて演算する。
トルクコンバータ21は、エンジン10のフライホイールと変速機構部22の入力軸部との間に設けられたロックアップ機構付きの流体継手である。
変速機構部22は、例えば3列等の複数列のプラネタリギアセット、及び、複数のブレーキ、クラッチ等の締結要素を有し、例えば前進5段、後進1段等の変速を行うものである。
プロペラシャフト23は、自動変速機20から図示しないリアディファレンシャルに動力を伝達する回転軸である。
ソレノイドバルブ25は、油圧回路部24に複数設けられ、TCU30からの制御信号に基づいて油圧回路の切換を行うものである。
車速センサ26は、例えばホール素子タイプのセンサを備え、プロペラシャフト23の周速に応じたパルス信号を発生するものである。TCU30は、このパルス信号に基づいて、変速制御に用いる車両の走行速度(車速)を演算する。
インヒビタスイッチ27は、変速機構部22のレンジポジションを検出し、TCU30に伝達するものである。
TCU30には、前後加速度センサ31、横加速度センサ32が接続されている。
前後加速度センサ31及び横加速度センサ32は、車両に作用する各方向の加速度に応じた出力信号を発する例えばMEMSベースの加速度ピックアップを備えている。
なお、これらの各手段は、それぞれ独立したハードウェアを有する構成としてもよく、また共通したハードウェアを用いてソフトウェア的に実現してもよい。
なお、前後加速度センサ31の出力値には、車両の加減速だけでなく、路面の前後方向勾配の影響も含まれるため、前後加速度演算手段33は、路面勾配推定装置50が推定する路面勾配の影響を排除する補正演算を行う。
スカラ量Veは、以下の式1によって求められる。
Ve=(Gx2+Gy2)1/2 ・・・(式1)
また、角度θvは、以下の式2によって求められる。
θv=arctan(Gx/Gy) ・・・(式2)
この補正は、例えば、角度θvの増大(横加速度Gy成分の増大)に応じて減少するよう設定されたゲインG(θv)を、スカラ量Veに乗じるものである。すなわち、変速判定値Csは、以下の式3によって求められる。
Cs=G(θv)・Ve ・・・(式3)
これによって、横加速度Gyが大きい場合には、車両に作用する加速度の大きさであるスカラ量Veが同じ場合であっても、変速判定値Csは小さくなり、後述するダウンシフト判定が成立しにくくなっている。
すなわち、実施例1における変速判定値演算手段36は、横加速度Gyの増大に応じてダウンシフト判定が成立し難くなるように変速判定値を補正する補正手段としても機能する。
変速判定値積分手段38は、変速判定値演算手段36が過去の所定期間内に演算した変速判定値Csの履歴を保持しており、この所定期間における変速判定値Csの積分値を演算するものである。
路面μ推定装置40は、車両が走行中の路面の摩擦係数(μ)を推定するものである。路面μ推定装置40は、例えば、車速、ステアリング角、実ヨーレート等の各種走行パラメータを用いて、車両の横運動の運動方程式に基づき、前後輪のコーナリングパワー(CP)を非線形域に拡張して推定する。そして、路面μ推定装置40は、前後輪の高μ路での等価CPに対する推定CPの比に基づいて路面μを推定する。このような路面μの推定は、例えば、本出願人の過去の特許出願に係る特開平8−2274号公報等に開示されている。
路面勾配検出手段50は、車速センサ26の出力推移に基づいて求められる車速変化に基づいて車両の推定前後加速度を算出し、この推定前後加速度を、前後加速度センサ31の出力に基づいて求められる実前後加速度と比較することによって、車両が走行中の路面の前後方向における勾配を検出するものである。
先ず、車両に作用する前後加速度や横加速度が比較的小さい通常走行時においては、変速制御は予め設定された変速マップに基づいて実行される。
図2は、実施例1における変速マップの一例である。図2において、横軸は車速を示し、縦軸はスロットル開度を示している。また、図2において、アップシフト側の変速線図を実線で示し、ダウンシフト側の変速線図を点線で示している。
図2に示すように、変速マップは、例えば車両の走行速度(車速)とスロットル開度に応じて選択すべき変速段が規定されている。変速マップにおいては、アップシフト側の変速線図を、ダウンシフト側の変速線図よりも高速側に配置することによって、いわゆるヒステリシス制御を行うようになっている。
通常、このような変速マップは複数種類のものが準備され、車両の走行状態やドライバからの選択操作に応じて切り換えられる。
図3は、ブレーキング時制御を行う際のTCU30の動作を示すフローチャートである。以下、ステップ毎に順を追って説明する。
前後加速度演算手段33は、前後加速度センサ31の出力信号に基づいて、前後加速度Gxを演算する。
その後、ステップS02に進む。
横加速度演算手段34は、横加速度センサ32の出力信号に基づいて、横加速度Gyを演算する。
その後、ステップS03に進む。
ベクトル演算手段35は、上述した式1及び式2を用いて、加速度ベクトルCvecのスカラ量Ve及び角度θvを演算する。
その後、ステップS04に進む。
変速判定値演算手段36は、上述した式3を用い、ベクトル演算手段35が演算した加速度ベクトルCvecのスカラ量Veを、角度θvに応じて変化するゲインによって補正し、変速判定値Csを演算する。
その後、ステップS05に進む。
変速判定値微分手段37は、変速判定値演算手段36が演算した変速判定値Csを時間で微分した微分値ΔCsを算出する。
その後、ステップS06に進む。
変速判定値積分手段38は、変速判定値演算手段36が演算した変速判定値Csを、過去の所定期間にわたって積分した積分値ICsを算出する。
その後、ステップS07に進む。
変速制御手段39は、変速判定値Csが予め設定された変速判定値のダウンシフト判定閾値以上であるか判断する。そして、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値以上である場合にはステップS11に進む。一方、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値未満である場合にはステップS10に進む。
変速制御手段39は、変速判定値微分値ΔCsが予め設定された変速判定値微分値のダウンシフト判定閾値(ダウンシフト微分値判定閾値)以上であるか判断する。そして、変速判定値微分値ΔCsがダウンシフト微分値判定閾値以上である場合にはステップS11に進む。一方、変速判定値微分値ΔCsがダウンシフト微分値判定閾値未満である場合にはステップS10に進む。
変速制御手段39は、変速判定値積分値ICsが予め設定された変速判定値積分値のダウンシフト判定閾値(ダウンシフト積分値判定閾値)以上であるか判断する。そして、変速判定値積分値ICsがダウンシフト積分値判定閾値以上である場合にはステップS11に進む。一方、変速判定値積分値ICsがダウンシフト積分値判定閾値未満である場合にはステップS10に進む。
なお、上述したダウンシフト判定閾値、ダウンシフト微分値判定閾値、ダウンシフト積分値判定閾値は、路面μ推定装置40によって推定された路面μに応じて補正され、例えば、路面μが低い場合には、各閾値を増加させてダウンシフト判定を成立させにくくし、エンジンブレーキ制動力の増加によるタイヤのロックを防止するようにしてもよい。
変速制御手段39は、ダウンシフトを行わず、現在の変速段を保持(シフトホールド)することを決定し、一連の処理を終了(リターン)する。
変速制御手段39は、ダウンシフトを行うことを決定し、自動変速機20のソレノイドバルブ25を制御して、変速機構部22にダウンシフトを実行させる。
その後、一連の処理を終了(リターン)する。
図4は、実施例1の変速制御装置における変速判定値Csの推移の2つの例を示すグラフである。図4において、横軸は時間を示し、縦軸は変速判定値Csを示している。(図6、図8において同じ)
図4に示すデータD1では、ブレーキング開始後、主に減速Gの増加によって変速判定値Csが徐々に増加し、ピーク値に達したのち、徐々に減少して最終的にゼロとなる。このデータD1では、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値を超えているため、図中に示す制御作動点T1においてダウンシフト制御が行われる。
ここで、データD1のハッチング部分(右下がりのハッチ)と、データD2のハッチング部分(左下がりのハッチ)との面積、すなわちブレーキング開始から終了までの減速量はほぼ同じとなっている。
データD2の場合には、ブレーキング期間中における減速量の総和がデータD1と同等以上の場合であっても、仮に他の条件によるダウンシフト判定を行わなければ、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値を超えないことからダウンシフトが行われず、ドライバにとっては制御ムラとして認識されることになる。
データD2は、上述したように変速判定値Csはダウンシフト判定閾値を超えないが、微分値ΔCsの場合には、ブレーキング初期の変速判定値Csの立ち上がりが速いことから、ダウンシフト微分値判定閾値を超えることになり、図中に示す制御作動点T2においてダウンシフト制御が行われ、上述した制御ムラの発生を防止できる。
図6に示すデータD3では、変速判定値Csは、データD2に対して小さい増加率(傾き)で立ち上がり、さらに、増加の途中で変化率が段階的に減少する。その後、変速判定値Csは、ダウンシフト判定閾値よりも小さいほぼ一定値をとり、さらにその後変速判定値Csは減少し、最終的にゼロとなる。
ここで、データD1のハッチング部分(右下がりのハッチ)と、データD3のハッチング部分(左下がりのハッチ)との面積、すなわちブレーキング開始から終了までの減速量はほぼ同じとなっている。
データD3の場合にも、データD2と同様に、ブレーキング期間中における減速量の総和がデータD1と同等以上の場合であっても、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値を超えないことから変速判定値Csを用いた判定ではダウンシフト制御が行われないことになる。
データD3の場合には、ブレーキング初期の変速判定値Csの増加率がデータD2に対して小さいことから、変速判定値微分値ΔCsもダウンシフト微分値判定閾値を超えず、変速判定値微分値ΔCsを用いた判定でもダウンシフト制御が行われないことになる。
データD3の場合には、期間T[s]における変速判定値積分値ICs(図中における右上がりのハッチングを付した部分の面積)が所定のダウンシフト積分値判定閾値を超えることから、図中に示す制御作動点T3においてダウンシフト制御が行われる。
これによって、変速判定値Cs及びその微分値ΔCsを用いた判定が成立しない場合であってもダウンシフト制御を実行することができ、制御ムラの発生を防止できる。
(1)車両の加速度ベクトルCvecに基づいて演算される変速判定値Csの微分値ΔCsがダウンシフト微分値判定閾値を超えた場合にダウンシフトを実行することによって、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値を超えない場合であっても、例えば減速G等の立ち上がりが速い場合にはダウンシフトを実行させることができ、適切な変速制御を行うことができる。
(2)車両の加速度ベクトルCvecに基づいて演算される変速判定値Csの積分値ICsがダウンシフト積分値判定閾値を超えた場合にダウンシフトを実行することによって、変速判定値Csがダウンシフト判定閾値を超えない場合であっても、例えば所定期間内における減速量の総和が大きい場合にはダウンシフトを実行させることができ、適切な変速制御を行うことができる。
(3)横加速度Gyの増加による加速度ベクトルCvecの角度θvの増加に応じて、ダウンシフト判定が成立し難くなるように変速判定値Csを補正することによって、コーナリングによる横方向加速度が大きく、タイヤが摩擦円限界値の範囲内で発生可能な前後力の余力が乏しい場合には、ダウンシフトを抑制してタイヤのスリップが生じることを防止できる。
(4)前後加速度Gx及び横加速度Gyを合成したベクトルCvecに基づいて変速判定値Csを演算することによって、摩擦円限界値に対するタイヤの前後力及び横力を適切に評価可能な変速判定値Csを得ることができ、適切な変速制御を行うことができる。
(5)加速度ベクトルCvecのスカラ量Veに基づいて演算される変速Csを、加速度ベクトルCvecの角度θvが増加するのに応じて減少するように補正することによって、簡単な処理により上記(4)項の効果を得ることができる。
図9は、実施例2の自動変速機のシステム構成を示す模式図である。
上述した実施例1においては加速度ベクトルCvecのスカラ量Veを、角度θvに応じて補正することによって変速判定値Csを算出しているが、実施例2では、この補正に代えて、変速判定値、微分値、積分値それぞれに対応する閾値を、加速度ベクトルCvecの角度θvに応じて補正している。
また、図9に示すように、実施例2のTCU30には、閾値補正手段60が設けられている。
閾値補正手段60は、ベクトル演算手段35が演算した加速度ベクトルCvecの角度θvに応じて、変速制御手段39におけるダウンシフト判定に用いられる変速判定値Cs、変速判定値微分値ΔCs、変速判定値積分値ICsそれぞれに対応する閾値を補正するものである。この点、後に詳しく説明する。
当該フローは、実施例1の図3に示したフローに対して、ステップS04に代えてステップS21を設けた点、及び、ステップS06とステップS07との間にステップS22を設けた点で相違する。以下、ステップS21、S22について説明する。
ベクトル演算手段35は、ステップS03において求めた加速度ベクトルCvecのスカラ量Veを、角度θvで補正することなく変速判定値Csとして出力する。
その後、ステップS05に進む。
閾値補正手段60は、変速制御手段39において用いられるダウンシフト判定閾値、ダウンシフト微分値判定閾値、ダウンシフト積分値判定閾値を、加速度ベクトルCvecの角度θvに応じてそれぞれ補正する。
具体的には、ダウンシフト判定閾値、ダウンシフト微分値判定閾値は、ともに現在の角度θvの増加に応じて増加するように補正される。
また、ダウンシフト積分値判定閾値は、比較の対象となる変速判定値積分値ICsの積分期間中に角度θvが増加した場合には、ダウンシフト積分値判定閾値も増加する補正を行う。そして、ステップS09における判断時に角度θvが所定値以上である場合には、増加補正されたダウンシフト積分値判定閾値を用いて判定を行う。一方、車両がカーブ路を抜けること等によって、ステップS09における判断時の角度θvが所定値未満である場合には、ダウンシフト積分値判定閾値を所定の基準値に戻して判定を行う。
以上説明した実施例2においても、上述した実施例1と実質的に同様の効果を得ることができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)変速制御装置や自動変速機の構成は、各実施例の構成に限定されず、適宜変更することができる。例えば、制御対象となる自動変速機は、実施例のようなトルクコンバータ及びプラネタリギアセットを用いたものに限らず、例えば手動変速機ベースでシフト、セレクトをアクチュエータで行うAMTや、奇数段、偶数段のギアセットを複数のクラッチで切り換えるDCTであってもよく、段数も特に限定されない。
また、自動変速機はベルト式、トロイダル式等の無段変速機(CVT)であってもよく、この場合ダウンシフトとは、減速比を増大させる方向の変速動作を指すものとする。
(2)実施例では、前後方向及び横方向の加速度を加速度センサを用いて検出しているが、加速度を求める手法は特に限定されず、適宜変更することができる。例えば、車速センサ出力の変化やブレーキフルード液圧に基づいて前後方向の加速度を求めてもよい。また、車速、舵角、ヨーレート等の車両の走行状態に基づいて、車両の運動モデルを用いて旋回に起因する横加速度を推定するようにしてもよい。また、車速センサは、実施例のように変速機に設けられたものに限らず、例えばホイールハブの回転を検出するもの等であってもよい。
(3)実施例では、エンジンは例えばスロットルバルブを用いて出力制御を行うガソリンエンジンであったが、本発明はこれに限らず、バルブ開閉時期やリフト量で出力制御を行ういわゆるバルブスロットリングを行うガソリンエンジンや、燃料噴射量で出力制御を行うディーゼルエンジン等の他のエンジンに設けられる自動変速機の制御にも用いることができる。
(4)実施例では変速判定値、微分値、積分値ともにそれぞれ1つの閾値を設定しているが、例えば2段階の閾値を設定し、変速判定値が第1段階の閾値を超えかつ第2段階の閾値を超えない場合には1段のダウンシフトを行い、第2段階の閾値を超えた場合には2段のダウンシフトを行うようにしてもよい。また、3段階以上の閾値を用いた制御としてもよい。
(5)実施例では、変速判定値及び各閾値の補正を、加速度ベクトルの角度に基づいて行っていたが、この角度に代えて、横加速度を用いて補正してもよい。この場合、横加速度の増加に応じて、変速判定値を低減し、また、閾値を増加させるようにするとよい。
12 エアフローメータ 13 インテークダクト
14 スロットルボディ 15 インテークマニホールド
16 スロットル開度センサ
20 自動変速機 21 トルクコンバータ
22 変速機構部 23 プロペラシャフト
24 油圧回路部 25 ソレノイドバルブ
26 車速センサ 27 インヒビタスイッチ
30 変速機制御ユニット(TCU)
31 前後加速度センサ 32 横加速度センサ
33 前後加速度演算手段 34 横加速度演算手段
35 ベクトル演算手段 36 変速判定値演算手段
37 変速判定値微分手段 38 変速判定値積分手段
39 変速制御手段
40 路面μ推定装置 50 路面勾配検出手段
60 閾値補正手段
Claims (6)
- 自動変速機の変速制御を行う変速制御装置であって、
車両の加速度を演算する加速度演算手段と、
前記加速度演算手段によって演算された加速度に基づいて変速判定値を演算する変速判定値演算手段と、
前記変速判定値演算手段によって演算された変速判定値を微分する変速判定値微分手段と、
前記変速判定値微分手段が求めた前記変速判定値の微分値が閾値を超えた場合に前記自動変速機のダウンシフトを許可するとともに、前記変速判定値の微分値が前記閾値未満である場合に前記ダウンシフトを禁止する変速制御手段と
を備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 自動変速機の変速制御を行う変速制御装置であって、
車両の加速度を演算する加速度演算手段と、
前記加速度演算手段によって演算された加速度に基づいて変速判定値を演算する変速判定値演算手段と、
前記変速判定値演算手段によって演算された変速判定値を積分する変速判定値積分手段と、
前記変速判定値積分手段が求めた前記変速判定値の積分値が閾値を超えた場合に前記自動変速機のダウンシフトを許可するとともに、前記変速判定値の積分値が前記閾値未満である場合に前記ダウンシフトを禁止する変速制御手段と
を備えることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 - 前記加速度演算手段は、車両の前後方向加速度を演算する前後加速度演算手段、及び、車両の横方向加速度を演算する横加速度演算手段を備え、
前記横方向加速度の増加に応じて、前記ダウンシフトの許可が成立し難くなるように前記変速判定値と前記閾値との少なくとも一方を補正する補正手段を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動変速機の変速制御装置。 - 前記変速判定値演算手段は、前記前後加速度演算手段によって演算された前記前後方向加速度、及び、前記横方向加速度演算手段によって演算された前記横方向加速度を合成したベクトルに基づいて前記変速判定値を演算すること
を特徴とする請求項3に記載の自動変速機の変速制御装置。 - 前記補正手段は、前記ベクトルのスカラ量に基づいて前記変速判定値演算手段が演算する変速判定値を前記ベクトルの方向が前後方向から横方向に遷移するのに応じて減少するように補正すること
を特徴とする請求項4に記載の自動変速機の変速制御装置。 - 前記補正手段は、前記閾値を前記ベクトルの方向が前後方向から横方向に遷移するのに応じて増加するように補正すること
を特徴とする請求項4に記載の自動変速機の変速制御装置。
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