JP2010166847A - 海ぶどうの清浄化剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 実質的に海ぶどうにダメージを与えることなく、腸炎ビブリオのような食中毒の原因となる細菌数を低減させることのできる手段を提供すること。
【解決手段】 遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する海ぶどうの清浄化剤並びに海ぶどうの人工培養工程において、その養生工程の途中に清浄化工程を設け、遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する清浄化剤で海ぶどうを処理する海ぶどうの清浄化方法清浄化方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は海ぶどうの清浄化剤に関し、更に詳細には、生の海ぶどうに影響を与えることなく、海ぶどうに付着する可能性のある腸炎ビブリオ菌や海洋細菌、あるいは小さなエビ等の生物を除去することのできる海ぶどうの清浄化剤に関する。
海ぶどう(クビレヅタ)は、熱帯・亜熱帯に分布する食用の海藻であり、以前より沖縄県の特産物とされていたが、1990年より、陸上タンクによる養殖が始まり、94年頃から、本格的に出荷が行われている。そして、現在では観光客にも人気を博しており、その生産量は、200t(2006年現在)を超えると言われている。
この海ぶどうは、他の海藻類と異なり、その食感を楽しむものであるため、飲食は生のままで行い、加熱調理を行うことはないものである。
このような海ぶどうの特性から、生産、貯蔵、流通の各段階において、例えば、腸炎ビブリオのような食中毒の原因となる微生物の付着を防ぐことが重要ではあるが、次に記載するような海ぶどうの性質から見て、従来の殺菌方法を用いることは極めて困難であった。
すなわち、このものは、根、茎、葉の区別はあるものの、それらの隔壁がない非常に大きな単一の細胞であるため、温度や浸透圧の変化に弱く、真水での洗浄や加熱による殺菌は困難であった。そこで、公知の殺菌剤などの利用も想定されるが、塩素系やエタノール系あるいは次亜塩素酸系の殺菌剤では、海ぶどう自体に大きなダメージを与えてしまい、実際上採用不可能であった。
従って、本発明は実質的に海ぶどうにダメージを与えることなく、腸炎ビブリオのような食中毒の原因となる微生物量を低減させることのできる海ぶどう清浄剤およびこれを用いた海ぶどうの清浄化方法の提供をその課題とするものである。
本発明者らは、海ぶどうにダメージを与えることのない濃度で、腸炎ビブリオに対する抗菌活性を与えることが可能な物質を見出すべく、広く検索を行っていたところ、特定の遊離カルボン酸がそのような性質を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する海ぶどうの清浄化剤である。
また本発明は、海ぶどうの人工培養工程において、その養生工程の途中に清浄化工程を設け、遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する清浄化剤で海ぶどうを処理することを特徴とする海ぶどうの清浄化方法である。
本発明の海ぶどう清浄剤によれば、実質的に海ぶどうにダメージを与えることなく、腸炎ビブリオ等の食中毒菌を除去することが可能である。また併せて、海洋細菌や、海ぶどう中に生息する小さなエビ等を排除することができ、食品としての品質をより高めることができる。
本発明の海ぶどう清浄剤(以下、「清浄化剤」という)の有効成分は、遊離ジカルボン酸である。この遊離ジカルボン酸は、その末端に2つのカルボン酸を遊離の状態で有するものであれば特に制約はなく利用可能ではあるが、腸炎ビブリオ等に対する作用の面からは、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸等が好ましく、特に、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸が好ましい。
上記清浄剤の有効成分であるジカルボン酸は、遊離の状態であることが重要であり、例えば、クエン酸ナトリウムのような塩の形態になるとその殺菌効果が失われる。
本発明の清浄剤は、上記した遊離ジカルボン酸をそのまま、あるいは、清浄海水等に溶解することにより調製される。この清浄剤に、他種成分を入れることも可能ではあるが、使用対象がそのまま生で食べる海ぶどうであることや、海ぶどう自体が種々の薬品等に弱いことを考慮すれば、他種成分を加えないことが望ましい。
上記した清浄剤は、海ぶどうの人工培養の種々の段階において使用することが可能ではあるが、特に養生工程の途中に清浄化工程を設け、清浄化剤を海水に添加し、これで海ぶどうを清浄化することが好ましい。
すなわち、海ぶどうの人工培養は、次のような工程
(1)海ぶどうの母藻をネットに挟み、これを養殖槽中、肥料を与えながら約40日間
程度養殖する工程、
(2)養殖により伸びてきたぶどう状の部分をつみ取る工程、
(3)つみ取ったぶどう状部分の、つみ取った傷口をふさぐ目的で3日間程度養生する
工程、
(4)養生後、洗浄、脱水、計量し、出荷する工程
よりなるが、このうち(3)の養生工程の途中に清浄化工程を設け、清浄化剤を海水に加えて清浄化するか、あるいは(4)の洗浄工程で、清浄な海水に本発明の清浄化剤を加え、これを洗浄水として使用すれば良い。清浄化後は紫外線等で殺菌した海水にて養生するかリンスすることが望ましい。
本発明の清浄化剤は、上記した海水等に、ジカルボン酸として、5000ないし1000μg/L、好ましくは、3000ないし1500μg/Lとなるよう添加すればよい。
また、本発明の清浄化剤による処理は、利用する清浄化剤の種類や、その濃度により相違するが、一般には、30秒から5分間程度であり、好ましくは、1分から2分間程度である。
以上のようにして清浄化された海ぶどうは、その人工培養過程で付着する可能性があり、食中毒の原因となり得る腸炎ビブリオ菌や海洋細菌等を有効に殺菌・除去したものであるため、生でも安全に食することができるものであり、また、細菌だけでなく海ぶどうに付着している小さなエビ等も効果的に除去するため、保存期間も長くすることが可能なものである。
しかも、使用する成分自体が食品添加物でもあり、また、海ぶどうにダメージを与えるものでないため、商品価値を低下させることもない。
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
実 施 例 1
各種有機酸の腸炎ビブリオに対する殺菌効果:
被検菌株として、腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus NBRC12711)を用い、各種の有機酸の抗菌活性を、抗菌製品技術協議会試験法(2003年度版)の「最小殺菌濃度測定法(MBC)測定法」を一部改変した方法に従い調べた。
この試験において、被検菌株の調整および希釈には、すべて滅菌した3%NaCl水を用い、被検菌株は、2.0〜4.0×10個/mlとなるよう調整した。
なお上記試験法では、被検菌株と供試薬剤希釈液との反応時間は通常1時間(60分)であるが、その即効性を確かめるため、反応時間を60分の他、1分および5分にも設定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 2010166847
この結果から、すべての有機酸は、腸炎ビブリオに対する殺菌作用があったが、最も殺菌効果が高かった有機酸はフマル酸で、60分接触でのMBC値が12.5μg/mlであり、5分接触でのMBC値が400μg/ml、1分接触でのMBC値が800μg/mlであった。このフマル酸の次に殺菌効果が認められたのは、酒石酸、リンゴ酸およびクエン酸であり、これらのMBC値は、それぞれ60分接触で25ppm、5分接触で800ppm、1分接触で6400ppmであり、実用性のあるものであった。
これに対し、酢酸は特有な臭気を有するために、また、アスコルビン酸は効力自体があまり高くないためにそれぞれ実用性の面では劣るものであった。なお、一般に抗菌剤として用いられる銀溶液および次亜塩素酸ナトリウム溶液は、上記有機酸より低い最小殺菌濃度を示すが、銀溶液は、海水中の塩素イオンと反応して白濁を形成するため好ましくなく、また、次亜塩素酸ナトリウムは海ぶどうに大きなダメージを与えるため利用困難と判断された。
実 施 例 2
酒石酸の濃度および処理時間と海ぶどうに対するダメージ:
被検化合物として酒石酸を用い、これを海ぶどうの清浄化剤として用いた場合の海ぶどうに対するダメージの有無を、使用酒石酸濃度および処理時間との関係で調べた。
試験は、まず海水1Lに、それぞれ0.15%、0.2%、0.3%、0.4%及び0.5%となるよう酒石酸を加え、試験溶液を作成した。各試験溶液中に、海ぶどう50gを入れ、それぞれ、1分、2分、3分、4分および5分間スターラで撹拌しながら処理した。
処理された海ぶどうは、1Lの海水に移し、28℃で3日間浸漬し、その後に海ぶどうに対するダメージの有無を確認した。ダメージ有無の評価は、コントロールの海ぶどう(海水1Lに海ぶどう50gを加え、スターラーで5分間撹拌させたもの)と比較し、弾力性および食感に変化が無く、変色がない上に、粒落ちが10個以内のものを「ダメージなし」、それ以外を「ダメージあり」と判定することで行った。この結果を表2に示す。
Figure 2010166847
この結果から明らかなように、酒石酸溶液濃度が0.5%(5000μg/ml)で2分以上浸漬した場合、0.4〜0.2%(4000〜2000μg/ml)で3分以上浸漬した場合および0.15%(1500μg/ml)で4分以上浸漬した場合に、海ぶどうにダメージが認められた。
実 施 例 3
海ぶどうでの酒石酸による海洋細菌除去試験:
処理時間を、実施例2で海ぶどうに対してダメージを与えないことが明らかになった1分とし、0.15%、0.2%、0.3%、0.4%及び0.5%の酒石酸海水溶液(処理溶液)を用いて海洋細菌の除去率を調べた。実施例2と同様に海ぶどうを各処理溶液で処理した。
その後、滅菌した海水1Lでリンスし、マリン・アガー(BD)と、希釈液として滅菌海水を用い、定法に従って各処理海ぶどうの残存海洋細菌数を測定した。また、コントロールとしては滅菌海水1Lに海ぶどう50gを入れ、スターラーで5分間撹拌した後、滅菌海水1Lでリンスした海ぶどうを使用した。
被処理海ぶどうとコントロール海ぶどうの海洋細菌数を測定した後、各濃度での処理海ぶどうの海洋細菌数をコントロールの海洋細菌数で割り、酒石酸による除菌率を求めた。この結果を表3に示す。
Figure 2010166847
この結果から明らかなように、酒石酸濃度0.5%〜0.3%の海水で、1分間処理することにより、海ぶどうに付着する海洋細菌を大幅に除去することが可能であった。
実 施 例 4
海ぶどうでの酒石酸による腸炎ビブリオ菌除去試験:
10Lの海水を入れた20Lの水槽に、食塩ポリミキシンブイヨン80mlおよび海ぶどう300gを加え、さらに、食中毒患者由来腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus :血清型O3:K6耐熱性溶血毒陽性株)の新鮮培養株(CHROMagar Vibrioにて35℃、18時間培養した後、1.5%NaCl加普通寒天培地に移植し、35℃で6時間培養した菌)を、マクファーランド(Macfarland)濃度5.0に調整したものを1ml加え28℃にて18時間エアレーションをしながら培養した。
余分な菌を除くため、培養後、海ぶどうを水槽から取り出し、別容器に移し、10Lの海水を加えて5分間撹拌しながらリンスした。さらに海ぶどうを取り出し、別の容器に入れた10Lの海水で再度リンスした後、バットに取り水切りしたものを腸炎ビブリオ添加海ぶどう(被検海ぶどう)として実験に用いた。
各被検海ぶどうを、酒石酸濃度が0.1〜0.5%の海水中で1分間処理し、その後、滅菌した海水1Lでリンスした。リンスした海ぶどう25g採取し、これに滅菌海水225mlを加え、ストマッカーで60秒間ホモジナイズして、海ぶどうの10倍希釈液を作成した。さらに9mlの滅菌海水液を用いて、上記10倍希釈液から、10〜10倍希釈液を作成し、各段階の希釈液100μlをTCBS寒天培地 (栄研化学)にコンラージ棒を用いて接種した。
希釈液を接種した培地を、35℃にて20〜24時間培養した後、出現した腸炎ビブリオ菌のコロニーとその他のビブリオ属菌のコロニーをカウントし、腸炎ビブリオ菌数およびそれ以外のビブリオ属菌数を算出した。なお、コントロールとして滅菌海水1Lに海ぶどう50gを加え、スターラーで5分間撹拌し、その後、滅菌海水1Lでリンスしたものを用い、このものの腸炎ビブリオ菌数を測定した。また、結果は、腸炎ビブリオ菌およびそれ以外のビブリオ属菌数(個/g)で示すこととしたが、検出限界である30個/g以下の場合には、「−」として表記した。この結果を表4に示す。
Figure 2010166847
この結果から明らかなように、酒石酸濃度0.5%〜0.1%の海水で、1分間処理することにより、海ぶどうに付着していた腸炎ビブリオ菌を3.4×10個/g/から検出限界値以下の30個/g未満(除菌率:>99.99%)まで除菌できた。しかし、0.1%酒石酸を含む海水での、1分の処理では他のビブリオ属菌の発育がわずかではあるが認められた。
実 施 例 5
海ぶどうでの酒石酸による腸炎ビブリオ菌除去確認試験:
実施例4では、酒石酸を含む海水での処理により、腸炎ビブリオ菌を30個/g未満としたが、これが果して完全に腸炎ビブリオを死滅させたのか否かを確認するために、増殖培地を用い、より正確に30個/g以下の菌数を測定した。
実験は、実施例4と同様に腸炎ビブリオ菌付着させた海ぶどう(高濃度付着海ぶどう)および実施例4でポリミキシンブイヨンの量を80mlから10mlに減らしたもの(低濃度付着海ぶどう)を作成し、それらの菌数を測定した(処理前菌数)。これらの腸炎ビブリオ付着海ぶどう50gについて、酒石酸濃度が0.1%、0.3%および0.5%の滅菌海水1Lでそれぞれ1分間処理を行った後、それらに残存した腸炎ビブリオ菌数を測定した(処理後菌数)。
菌数の測定は、食品衛生検査指針(微生物編)の腸炎ビブリオ菌の定量試験法に準じたMPN3本法により試験した。試験には各海ぶどうを25gを用い、増菌培地としては、食塩ポリミキシンブイヨン(日水製薬)を用いた。また、希釈液には滅菌海水を使用した。この結果を表5に示す。
Figure 2010166847
この結果から明らかなように、増菌培養液を用いた試験でも、2.4×10個/gの腸炎ビブリオ菌が、酒石酸を0.1%〜0.5%含む滅菌海水の処理で、92個/g〜24個/gまで減少することが明らかになり、その除菌率は99.999%で、腸炎ビブリオ菌を一万分の一以下とすることができた(高濃度付着海ぶどうでの試験)。同様、より少量の腸炎ビブリオ菌が付着した海ぶどうでは、腸炎ビブリオ菌を一ほぼ除菌できた(低濃度付着海ぶどうでの試験)。
本発明によれば、海ぶどう自体にダメージを与えることなく、付着した腸炎ビブリオ菌等の細菌の除去を容易に行うことが可能である。
従って、現在行われている海ぶどうの養殖において、その安全性を高めるために有利に利用することができるものである。

Claims (3)

  1. 遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する海ぶどうの清浄化剤。
  2. 遊離ジカルボン酸が、フマル酸、酒石酸またはリンゴ酸である請求項1記載の海ぶどうの清浄化剤。
  3. 海ぶどうの人工培養工程において、その養生工程の途中に清浄化工程を設け、遊離ジカルボン酸を有効成分として含有する清浄化剤で海ぶどうを処理することを特徴とする海ぶどうの清浄化方法。







































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