JP2010163818A - コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 地震時の振動がコンクリート構造物に入力しても、コンクリート構造物の弱面部に隙間や亀裂が生じることがなく、コンクリート構造物を安定した状態に保ち続けることができる補強方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート構造物1を貫通して、地盤5の所定の深さに達するアンカー孔6を削孔し、アンカー孔6内にグラウンドアンカー7を挿入して、グラウンドアンカー7の先端部を地盤5に定着させ、アンカー孔6内にせん断・引張補強部材15を挿入して、せん断・引張補強部材15をコンクリート構造物1の弱面部4に対応する部分に位置決めし、せん断・引張補強部材15をコンクリート構造物1側に保持し、グラウンドアンカー7に引張力を付与し、この状態でグラウンドアンカー7の後端部をコンクリート構造物1に定着させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、コンクリート構造物の補強方法に関し、特に、既設又は新設のコンクリート構造物を補強するのに有効なコンクリート構造物の補強方法に関する。
コンクリート構造物の一例として、地盤(岩盤)の上部に築造された重力式コンクリートダム(ダムの自重と重力で水圧を支える形式のダム)等の各種のコンクリートダムが知られている。
このようなコンクリートダムは、経年変化等によって地盤とコンクリートダムとの境界部や、コンクリートダムの打ち継ぎ目部等の弱面部に劣化が生じる虞があり、また、地震時に、それらの弱面部にせん断ひずみが集中して亀裂等が生じる虞があるため、グラウンドアンカーによって弱面部に圧縮荷重を付与し、コンクリートダムを補強することが行われている。
例えば、図11に示すように、コンクリートダム31を天端32から鉛直方向に貫通して先端が岩盤35の所定の深さに達するアンカー孔36を削孔し、このアンカー孔36内にグラウンドアンカー37を挿入し、グラウンドアンカー37の先端部(下端部)をグラウト材39により岩盤35の深層部に定着させ、グラウンドアンカー37に緊張力を付与し、この状態でグラウンドアンカー37の後端部(上端部)をコンクリートダム31の天端32に定着させることで、弱面部に圧縮荷重を付与し、コンクリートダム31を補強している。この場合、必要に応じて、図12に示すように、アンカー孔36内の全体にグラウト材39を充填し、自由長部を含むグラウンドアンカー37の全体をコンクリートダム31側に定着させている。
特開2007−46348号公報
上記のような構成のグラウンドアンカー37によってコンクリートダム31を補強した場合、通常時には、グラウンドアンカー37の緊張力によってコンクリートダム31の弱面部34を圧縮した状態に保つことができるので、弱面部34に亀裂等が生じたりするようなことはない。
しかし、地震時にコンクリートダム31に振動が入力した場合、グラウンドアンカー37の緊張力だけでは弱面部34を圧縮し続けることができないことがあり、コンクリートダム31にロッキング振動が生じ、弱面部34に亀裂や隙間が形成され、その亀裂や隙間に水が浸入してコンクリートダム31に浮力が作用し、コンクリートダム31が不安定な状態になることがある。
また、コンクリートダム31が不安定な状態になると、グラウンドアンカー37に過大なせん断力が作用し、グラウンドアンカー37が損傷したり、グラウンドアンカー37の周囲を覆っているグラウト材39に亀裂が生じて防錆機能が低下し、グラウンドアンカー37が腐食する等の問題が生じる。
上記のような地震時の問題を解決するため、グラウンドアンカーの線径を太くして剛性を高める方法があるが、グラウンドアンカーの打設に費用が嵩む等の理由から実施されていないのが現状である。
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、グラウンドアンカーによってコンクリートダム等のコンクリート構造物を補強した場合に、地震時にコンクリート構造物に振動が入力しても、コンクリート構造物の弱面部に亀裂や隙間が形成されるようなことがなく、コンクリート構造物を安定した状態に保ち続けることができる、コンクリート構造物の補強方法を提供することを目的とする。
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、地盤上に築造されたコンクリート構造物の補強方法であって、前記コンクリート構造物を貫通して、前記地盤の所定の深さに達するアンカー孔を削孔し、該アンカー孔内にグラウンドアンカーを挿入して、該グラウンドアンカーの先端部を前記地盤に定着させ、前記アンカー孔内にせん断・引張補強部材を挿入して、該せん断・引張補強部材を前記コンクリート構造物の弱面部に対応する部分に位置決めし、前記せん断・引張補強部材を前記コンクリート構造物側に保持し、前記グラウンドアンカーに引張力を付与し、この状態で前記グラウンドアンカーの後端部を前記コンクリート構造物に定着させることを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物の補強方法によれば、コンクリート構造物の弱面部に対応するアンカー孔の部分にせん断・引張補強部材を設け、このせん断・引張補強部材をコンクリート構造物側に定着したので、このせん断・引張補強部材によってコンクリート構造物の弱面部の剛性を高めることができる。
従って、地震時にコンクリート構造物に振動が入力しても、コンクリート構造物にロッキング振動が生じて弱面部に隙間や亀裂等が形成されるようなことはなく、隙間や亀裂等に水が浸入してコンクリート構造物に浮力が作用し、コンクリート構造物が不安定になるようなことはない。この結果、地震時にグラウンドアンカーに過大なせん断力が作用してグラウンドアンカーが損傷したり、グラウンドアンカーの周囲を被覆しているグラウト材に亀裂が生じて防錆機能が低下したりするようなことはなく、コンクリート構造物を長期に亘って安定した状態に保ち続けることができる。
また、本発明において、前記コンクリート構造物の弱面部は、前記コンクリート構造物と前記地盤との境界部又は前記コンクリート構造物の打ち継ぎ目部であることとしてもよい。
さらに、本発明において、前記せん断・引張補強部材は、円筒状又は角筒状の鋼管からなり、該せん断・引張補強部材の外周側を前記アンカー孔の内周側に定着材により定着させたこととしてもよい。
さらに、本発明において、前記グラウンドアンカーは伸縮変形可能な自由長部を有し、該自由長部を定着材により前記コンクリート構造物に定着させたこととしてもよい。
本発明のコンクリート構造物の補強方法によれば、グラウンドアンカーの自由長部が定着材によってコンクリート構造物側に定着させたので、外力によってグラウンドアンカーに局部的な変位が生じた場合、その変位が生じた部分で外力に抵抗することができるので、グラウンドアンカーの弱い部分に応力が集中するようなことはない。
なお、定着部材として、一定時間経過後に固化するアフターボンドを用いることにより、せん断・引張補強部材をアンカー孔内に設置し、グラウンドアンカーに緊張力を付与した後に、グラウンドアンカーの自由長部をコンクリート構造物側に定着させることができる。
さらに、本発明において、前記せん断・引張補強部材をアンカー孔内に位置決めした位置の略中心に保持手段によって保持し、この状態で前記せん断・引張補強部材を定着材により前記アンカーの内周側に定着させたこととしてもよい。
以上、説明したように、本発明のコンクリート構造物の補強方法によれば、せん断・引張補強部材によってコンクリート構造物の弱面部の剛性を高めることができるので、通常時又は地震時に関わらず、コンクリート構造物を長期に亘って安定した状態に保ち続けることができる。
本発明によるコンクリート構造物の補強方法の一実施の形態を示した概略図である。 図1の変形例を示した概略図である。 図1の変形例を示した概略図である。 図1の変形例を示した概略図である。 図1の保持手段を示した概略図である。 本発明によるコンクリート構造物の補強方法のFEM解析結果を示した説明図であって、解析モデル図を示した説明図である。 解析ケース1を示した説明図である。 解析ケース2を示した説明図である。 解析ケース3〜5を示した説明図である。 解析結果を示した説明図である。 従来のコンクリート構造物の補強方法の一例を示した概略図である。 図11の変形例を示した概略図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明によるコンクリート構造物の補強方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態のコンクリート構造物の補強方法は、地盤(岩盤5)上に築造された既設又は新設のコンクリート構造物であるコンクリートダム1(重力式コンクリートダム等)の補強に適用したものである。
すなわち、本実施の形態のコンクリート構造物の補強方法は、コンクリートダム1を天端2から鉛直方向に貫通して、岩盤5の所定の深さまで達するアンカー孔6を削孔する削孔工程と、アンカー孔6内にグラウンドアンカー7を挿入し、グラウンドアンカー7の先端部(下端部)を岩盤5の深層部に定着させるグラウンドアンカー打設工程と、アンカー孔6内にせん断・引張補強部材15を挿入し、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6内の所定の位置に位置決めし、その位置でせん断・引張補強部材15をコンクリートダム1側に定着させるせん断・引張補強部材設置工程と、グラウンドアンカー7に緊張力を付与し、この状態でグラウンドアンカー7の後端部(上端部)をコンクリートダム1の天端2に定着させる緊張力付与工程とを備えている。以下、各工程について詳しく説明する。
(1)削孔工程
図1に示すように、コンクリートダム1の天端2に削孔機(図示せず)を設置し、削孔機により、コンクリートダム1を天端2から鉛直方向に貫通して先端が岩盤5の所定の深に達するアンカー孔6を削孔する。このようなアンカー孔6をコンクリートダム1の全幅に亘って所定の間隔ごとに複数箇所に削孔する。
(2)グラウンドアンカーの打設工程
図1に示すように、削孔工程で形成した各アンカー孔6内にグラウンドアンカー7を挿入し、各アンカー孔6内の底部に所定の深さまでグラウト材9を注入して固化させることにより、グラウンドアンカー7の先端部(下端部)を岩盤5の深層部に定着させ、アンカー体部8bとする。
グラウンドアンカー7は、引張材(以下、「テンドン8」という。)がシース管内に挿入されたタイプ、或いはシース管なしのタイプ等があり、本実施の形態においては、シース管(図示せず)内にテンドン8が挿入されたタイプを用いている。
(3)せん断・引張補強部材の設置工程
図1に示すように、グラウンドアンカー7を打設したアンカー孔6内にせん断・引張補強部材15を挿入し、せん断・引張補強部材15をコンクリートダム1の弱面部4を横切るようにアンカー孔6内に位置決めし、その位置でせん断・引張補強部材15をグラウト材によりコンクリートダム1側に定着させる。
ここで、コンクリートダム1の弱面部4とは、コンクリートダム1と岩盤5との境界部、コンクリートダム1の打ち継ぎ目部等の強度が低い部分を意味する。本実施の形態においては、コンクリートダム1と岩盤5との境界部を弱面部4として、その部分にせん断・引張補強部材15を定着させている。
せん断・引張補強部材15は、引張力に対する剛性が高く、せん断抵抗力が大きく、かつ耐腐食性に優れた材料から構成され、例えば、円筒状又は角筒状の鋼管(本実施の形態では円筒状の鋼管)によって構成される。せん断・引張補強部材15をコンクリートダム1の弱面部4に設けることにより、コンクリートダム1と岩盤5との境界部やコンクリートダム1の打ち継ぎ目部等の弱面部4を補強することができる。
なお、せん断・引張補強部材15は、上記のような構成の鋼管に限らず、カーボンと鋼材とを組み合わせた材料等であってもよい。
せん断・引張補強部材15をコンクリートダム1の弱面部4に対応するアンカー孔6の部分に定着させるには、例えば、クレーン(図示せず)を用い、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6内に吊り下げ、クレーンの操作によってせん断・引張補強部材15をアンカー孔6の所定の位置に位置決めする。
そして、その位置の略中心に後述する保持手段16によってせん断・引張補強部材15を保持し、この状態でせん断・引張補強部材15の外周面とアンカー孔6の内周面との間の隙間内にグラウト材9を充填して固化させ、せん断・引張補強部材15の外周側をグラウト材9を介してアンカー孔6の内周側に定着させる。
保持手段16は、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6の所定の位置の略中心に保持できる機能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、図5(a)〜(f)に示すような構成のものを用いることができる。
図5(a)に示す保持手段16は、ワイヤー等の索条部材17によって構成したものであって、複数本の索条部材17をグラウンドアンカー7のテンドン8に取り付け、各索条部材17の両端をせん断・引張補強部材15の上端に固定し、グラウンドアンカー7のテンドン8と一体に索条部材17を介してせん断・引張補強部材15をアンカー孔6内に挿入し、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6内の所定の位置に位置決めし、その位置に保持する。このような構成の保持手段16を用いる場合には、グラウンドアンカー7の打設と同時にせん断・引張補強部材15をアンカー孔6内に設置することになる。
図5(b)に示す保持手段16は、内部にグラウト材9を充填可能な中空環状のパッカー18によって構成したものであって、このパッカー18をせん断・引張補強部材15の外周面の上下2箇所に取り付け、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6内の所定の位置に位置決めした後に、各パッカー18の内部にグラウト材9を充填して各パッカー18を膨らませ、各パッカー18の外周面をアンカー孔6の内周面に当接させ、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6の略中心に保持する。
この場合、各パッカー18の一部には、各パッカー18を上下方向に貫通する凹部又は孔部(図示せず)が設けられ、この凹部又は孔部を介して上下のパッカー18間の隙間、及びせん断・引張補強部材15より下方のアンカー孔6の部分にグラウト材9を充填する。
図5(c)に示す保持手段16は、開閉可能な楔19bを有するメカニカルアンカー19によって構成したものであって、このメカニカルアンカー19をせん断・引張補強部材15の外周面の上下2箇所に取り付け、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6内の所定の位置に位置決めした後に、各メカニカルシール19の楔19bを開いてアンカー孔6の内面に係止させることにより、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6の略中心に保持する。
楔19bを開閉させる手段としては、例えば、メカニカルアンカー19の本体部19aにヒンジ(図示せず)を介して楔19bを開閉可能に取り付け、楔19bと本体部19aとの間に楔19bを径方向外方に付勢するばね(図示せず)を取り付ける手段等が挙げられる。
図5(d)に示す保持手段16は、せん断・引張補強部材15を位置決めするアンカー孔6の部分に段差20を設けたものであって、この段差20にせん断・引張補強部材15の下端を当接させることにより、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6の所定の位置に位置決めし、その位置の略中心に保持する。
図5(e)に示す保持手段16は、せん断・引張補強部材15よりも大径又は小径(本実施の形態では大径)の管状部材21を用いたものであって、この管状部材21の先端部にせん断・引張補強部材15の上端部を着脱可能に嵌合させ、管状部材21と一体にせん断・引張補強部材15をアンカー孔6内に挿入して所定の位置に位置決めし、せん断・引張補強部材15の外周面とアンカー孔6の内周面との間にグラウト材9を充填して固化させ、せん断・引張補強部材15の外周側をアンカー孔6の内周側に定着させた後に、管状部材21をせん断・引張補強部材15から取り外す。
図5(f)に示す保持手段16は、せん断・引張補強部材15を設置するアンカー孔6の部分よりも下方に予めグラウト材9を充填したものであって、このグラウト材9の上部にせん断・引張補強部材15を配置することにより、せん断・引張補強部材15をアンカー孔6の所定の位置に位置決めするとともに、その位置の略中心に保持する。
(4)緊張力付与工程
各アンカー孔6内にグラウンドアンカー7を打設し、各アンカー孔6内の所定の位置にせん断・引張補強部材15を定着させた後に、コンクリートダム1の天端2にジャッキ(図示せず)を設置し、ジャッキにより各グラウンドアンカー7のテンドン8の自由長部8aに緊張力を付与し、この状態でテンドン8の上端部に定着具11を取り付け、テンドン8の上端部をコンクリートダム1の天端2に定着させる。
なお、図2に示すように、各テンドン8に緊張力を付与した後に、アンカー孔6内の全体にアフターボンド10を充填して、アフターボンド10を固化させることにより、テンドン8の自由長部8aの全体をコンクリートダム1側に定着させるように構成してもよい。
なお、この場合、せん断・引張補強部材15の内周面とテンドン8との間にもアフターボンド10を充填することになる。
上記のようにして、削孔工程、グラウンドアンカー打設工程、せん断・引張補強部材設置工程、及び緊張力付与工程を経ることにより、コンクリートダム1にグラウンドアンカー7を打設することができるとともに、コンクリートダム1の弱面部4にせん断・引張補強部材15を設置することができる。
上記のように構成した本実施の形態によるコンクリート構造物の補強方法にあっては、コンクリート構造物であるコンクリートダム1をグラウンドアンカー7によって補強する場合、コンクリートダム1の弱面部4(コンクリートダム1と岩盤5との境界部、コンクリートダム1の打ち継ぎ目部等)にせん断・引張補強部材15を設置し、このせん断・引張補強部材15をコンクリートダム1側に定着させたので、せん断・引張補強部材によってコンクリートダム1の弱面部4の剛性を高めることができる。
従って、地震時にコンクリートダム1に振動が入力しても、コンクリートダム1にロッキング振動が生じて弱面部4に隙間や亀裂等が形成されるようなことはなく、隙間や亀裂等に水が浸入してコンクリートダム1に浮力が作用し、コンクリートダム1が不安定になるようなことはない。この結果、地震時にグラウンドアンカー7に過大なせん断力が作用してグラウンドアンカー7のテンドン8が損傷したり、グラウンドアンカー7のテンドン8の周囲を被覆しているグラウト材9に亀裂が生じて防錆機能が低下したりするようなことはなく、コンクリートダム1を長期に亘って安定した状態に保ち続けることができる。
図3及び図4に本実施の形態のコンクリート構造物の補強方法の変形例を示す。
図3に示す変形例は、コンクリートダム1を前面から貫通して岩盤5の所定の深さに達するアンカー孔6を設け、このアンカー孔6内にグラウンドアンカー7を打設するとともに、このアンカー孔7のコンクリートダム1の弱面部4に弱面部4を横切るようにせん断・引張補強部材15を設置したものである。
また、図4に示す変形例は、コンクリートダム1の背面側にコンクリートを増し打ちし、この増し打ちした部分を貫通して岩盤5の所定の深さに達するアンカー孔6を設け、このアンカー孔6内にグラウンドアンカー7を打設するとともに、このアンカー孔6のコンクリートダム1の弱面部4に弱面部4を横切るようにせん断・引張補強部材15を設置したものである。
上記のような変形例にあっても、前述した図1に示す補強方法と同様に、コンクリート構造物であるコンクリートダム1をグラウンドアンカー7によって補強する場合、コンクリートダム1の弱面部4(コンクリートダム1と岩盤5との境界部、コンクリートダム1の打ち継ぎ目部等)にせん断・引張補強部材15を設置し、このせん断・引張補強部材15をコンクリートダム1側に定着させたので、せん断・引張補強部材によってコンクリートダム1の弱面部4の剛性を高めることができる。
従って、地震時にコンクリートダム1振動が入力しても、コンクリートダム1にロッキング振動が生じて弱面部4に隙間や亀裂等が形成されるようなことはなく、隙間や亀裂等に水が浸入してコンクリートダム1に浮力が作用し、コンクリートダム1が不安定になるようなことはない。この結果、地震時にグラウンドアンカー7に過大なせん断力が作用してグラウンドアンカー7のテンドン8が損傷したり、グラウンドアンカー7のテンドン8の周囲を被覆しているグラウト材9に亀裂が生じて防錆機能が低下したりするようなことはなく、コンクリートダム1を長期に亘って安定した状態に保ち続けることができる。
図6〜図9に、本実施の形態によるコンクリート構造物の補強方法のFEM解析結果を示す。図6は解析モデル、図7は解析ケース1、図8は解析ケース2、図9は解析ケース3〜5、図10は解析結果をそれぞれ示している。また、表1に解析定数を示し、表2に解析ケースを示している。
ここで、解析定数は、表1に示すように、提体(コンクリートダム)、基礎地盤(地盤)、貯水の各々に対して、種類、高さ/厚さ、単位重量、ポアソン比、せん断波速度、せん断弾性係数、ヤング率を設定し、これらの解析定数により、ケース1〜ケース5についてFEM解析を行っている。
ケース1は、未対策のコンクリートダム、ケース2は、グラウンドアンカーにより補強し、グラウンドアンカーの緊張後に自由長部をグラウトしたもの、ケース3は、グラウンドアンカーにより補強し、グラウンドアンカーの緊張後に自由長部をグラウトし、鋼管(l;10m、φ;300cm、t;50mm)を用いたもの、ケース4は、グラウンドアンカーにより補強し、グラウンドアンカーの緊張後に自由長部をグラウトし、鋼管(l;10m、φ;600cm、t;100mm)を用いたもの、ケース5は、グラウンドアンカーにより補強し、グラウンドアンカーの緊張後に自由長部をグラウトし、鋼管(l;10m、φ;900cm、t;120mm)を用いたものである。
図10の解析結果から、ケース1、及びケース2については、殆どの地点において、地震時の最大鉛直応力(引張力)が軽減されていないが、ケース3、4、5については、殆どの地点において、せん断・引張補強部材(鋼管)の剛性によって引張力に抵抗し、引張力が軽減されていることが分かる。
なお、前記の説明においては、本発明のコンクリート構造物の補強方法をコンクリートダム1に適用したが、土留壁やその他のコンクリート構造物に適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏することは勿論である。
1、31 コンクリート構造物
2、32 天端
4、34 弱面部
5、35 地盤(岩盤)
6、36 アンカー孔
7、37 グラウンドアンカー
8 テンドン
8a 自由長部
8b アンカー体部
9、39 グラウト材
10 アフターボンド
11 定着具
15 せん断・引張補強部材
16 保持手段
17 索条部材
18 パッカー
19 メカニカルアンカー
19a 本体部
19b 楔
20 段差
21 管状部材

Claims (5)

  1. 地盤上に築造されたコンクリート構造物の補強方法であって、
    前記コンクリート構造物を貫通して、前記地盤の所定の深さに達するアンカー孔を削孔し、
    該アンカー孔内にグラウンドアンカーを挿入して、該グラウンドアンカーの先端部を前記地盤に定着させ、
    前記アンカー孔内にせん断・引張補強部材を挿入して、該せん断・引張補強部材を前記コンクリート構造物の弱面部に対応する部分に位置決めし、
    前記せん断・引張補強部材を前記コンクリート構造物側に保持し、
    前記グラウンドアンカーに引張力を付与し、この状態で前記グラウンドアンカーの後端部を前記コンクリート構造物に定着させることを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
  2. 前記コンクリート構造物の弱面部は、前記コンクリート構造物と前記地盤との境界部又は前記コンクリート構造物の打ち継ぎ目部であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補強方法。
  3. 前記せん断・引張補強部材は、円筒状又は角筒状の鋼管からなり、該せん断・引張補強部材の外周側を前記アンカー孔の内周側に定着材により定着させたことを特徴とする請求項1又は2に記載のコンクリート構造物の補強方法。
  4. 前記グラウンドアンカーは伸縮変形可能な自由長部を有し、該自由長部を定着材により前記コンクリート構造物に定着させたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のコンクリート構造物の補強方法。
  5. 前記せん断・引張補強部材をアンカー孔内に位置決めした位置の略中心に保持手段によって保持し、この状態で前記せん断・引張補強部材を定着材により前記アンカーの内周側に定着させたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のコンクリート構造物の補強方法。
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