JP2010160161A - 不純物濃度測定方法、stm測定方法及びsts測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不純物濃度の定量的な測定や、微小領域の不純物濃度分布を測定することができる不純物濃度測定方法を提供する。
【解決手段】まず、走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する。次に、走査型トンネル顕微鏡により測定試料の測定面の傾斜角度を検出する。その後、検出した傾斜角度に基づいて走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める。次いで、走査型トンネル顕微鏡を使用し、探針が最大前進可能値を超えて移動しないようにし、トンネル電流値が一定の条件で探針を測定試料の測定面に沿って走査してSTM像を取得する。
【選択図】図17
【解決手段】まず、走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する。次に、走査型トンネル顕微鏡により測定試料の測定面の傾斜角度を検出する。その後、検出した傾斜角度に基づいて走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める。次いで、走査型トンネル顕微鏡を使用し、探針が最大前進可能値を超えて移動しないようにし、トンネル電流値が一定の条件で探針を測定試料の測定面に沿って走査してSTM像を取得する。
【選択図】図17
Description
本発明は、走査型トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)等の装置を使用して半導体デバイスの微小領域の不純物濃度又は不純物濃度分布を評価する不純物濃度測定方法に関する。また、本発明は、絶縁物を含む構造物のSTM測定方法及びSTS(走査型トンネル分光)測定方法に関する。
近年、半導体デバイスの急速な微細化が進み、チャネル長が0.1μm以下のMOSトランジスタの試作が行われている。このように微細化されたデバイスの特性を最適化したり、作成したデバイスを評価するためには、ナノメートルの分解能をもち、MOSトランジスタのソース・ドレイン領域及びチャネル領域の二次元又は三次元不純物濃度分布を測定できる測定方法が必要である。
従来から、半導体デバイスの不純物濃度の測定方法として、二次イオン質量分析法が知られている。これは、イオンビームを試料表面に照射し、試料表面から放出された二次イオンを質量分析して、その結果から不純物濃度を求めるものである。しかし、この方法では、イオンビームのビーム径をある程度以上小さくすることができないため、分解能が0.5μm程度と比較的低く、より微細な範囲の不純物濃度測定には利用できない。
このような問題点を解消するために走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて微細な領域の不純物濃度を測定することが提案されている(例えば、特開平7−211757号公報)。以下、その方法について説明する。
まず、半導体デバイスをフッ酸(HF)と水との混合液(容量比1:1)に浸漬し、ゲート酸化膜、ゲート電極及び層間絶縁膜をエッチング除去する。次に、走査型トンネル顕微鏡を用いて半導体デバイスの表面又は劈開断面を探針で走査し、トンネル電流を測定する。特開平7−211757号公報には、走査型トンネル顕微鏡を用いた測定は探針と試料との間の距離を一定に保ったまま、探針−試料間電圧Vとトンネル電流Iとを測定すると記載されている。
探針には、電解研磨法で作成したタングステン針、白金−イリジウム針、又は白金−ロジウム針を用いる。
次に、広がり抵抗法(SR法)を用いて不純物濃度nを求める。下記(1)式に示すように、不純物濃度nはSR法と同様に抵抗R=V/Iの逆数に比例する。
n=A×I/V …(1)
ここで、Aは比例定数である。比例定数Aは、下記(2)式により求める。
ここで、Aは比例定数である。比例定数Aは、下記(2)式により求める。
n0 =A×I0 /V0 …(2)
但し、n0 はシリコン基板のバルクの不純物濃度である。シリコン基板のバルク不純物濃度n0 はSR法での値を用い、例えばp型(100)基板でn0 =1×1015cm-3とする。
但し、n0 はシリコン基板のバルクの不純物濃度である。シリコン基板のバルク不純物濃度n0 はSR法での値を用い、例えばp型(100)基板でn0 =1×1015cm-3とする。
上記した方法では、電流−電圧特性を測定する際に、探針−試料間の距離を各測定点で等しくすることが極めて重要である。しかしながら、特開平7−211757号には、探針−試料間の距離を一定にする方法が明らかではない。
通常、STM測定は定電流モードで行う。定電流モードとは、探針に流れるトンネル電流が一定になるように探針の高さ方向の位置(z位置)を自動制御した状態で、探針を水平方向(x方向及びy方向)に走査するものである。定電流モードでは、試料が均質な特性をもつとすると、各測定点で一定のトンネル電流が得られる探針−試料間の距離は、その絶対値は不明であるものの等しくなる。
従って、図1(a)に示すように、探針11を水平方向に移動すると、探針11に流れるトンネル電流が一定となるように探針11の垂直方向の位置を制御するので、探針11の垂直方向の移動をつかさどるピエゾ素子に印加する電圧の変化から、試料表面の凹凸の状態を知ることができる。
しかし、例えばMOSトランジスタのソース・ドレイン領域やチャネル領域のような不純物濃度分布が均一でない領域が混在する試料の場合は、試料表面の凹凸の状態と不純物濃度とにより探針に流れるトンネル電流が変化する。
図1(b)は、不純物濃度が相互に異なる領域(図中、ハッチングを施した部分とハッチングを施していない部分)を有する試料の表面をSTM測定したときの探針11の移動を示す模式図である。この図に示すように、試料表面が平坦であっても、局所的な電気的特性の違いを反映して、一定のトンネル電流を保つのに必要な探針−試料間の距離が変化する。
図2は、シリコン基板に作成されたナノスケールのpn接合部の定電流モードSTM像の一例を示す図であり、探針を水平方向(x方向及びy方向)に移動させて、ピエゾ素子に印加する電圧の変化を基に描画したものである。この図から、キャリア濃度の異なる領域が凹凸として観察されていることがわかる。なお、図2において、走査範囲は270nm×270nm、試料電圧は0.8V、トンネル電流は0.2nAの条件で測定した。また、図中、n+ はn+ 型伝導領域、pはp型伝導領域、Dep. は空乏層領域を示している。
すなわち、定電流モードでSTM測定した場合は、探針の位置の変化を検出しても、不純物濃度に起因するものか、デバイス表面の凹凸に起因するものかを判断することができない。同様に、探針の位置を固定してトンネル電流の変化を検出したとしても、トンネル電流の変化が不純物濃度に起因するものか、デバイス表面の凹凸に起因するものかを判断することができない。
従って、上述した特開平7−211757号では、探針−試料間の距離を一定にする方法が明らかではなく、探針−試料間の距離を各測定点で厳密に等しくすることができないため、不純物濃度の定性的な測定は可能であるとしても、定量的な測定を行うことはできない。
また、STMの定電流モードを用いたSTM測定及びSTS(走査型トンネル分光)測定では、探針に流れるトンネル電流が一定となるように探針を移動させるので、測定面に絶縁物が含まれていると、測定面に向けて前進し、探針と試料とが衝突してしまうという問題点がある。
本発明の目的は、不純物濃度の定量的な測定や、微小領域の不純物濃度分布を測定することができる不純物濃度測定方法を提供することである。
本発明の他の目的は、測定面に絶縁物が含まれている場合であってもSTM測定が可能なSTM測定方法を提供することである。本発明の更に他の目的は、測定面に絶縁物が含まれている場合であってもSTS測定が可能なSTS測定方法を提供することである。
本発明に係るSTM測定方法は、走査型トンネル顕微鏡(STMモードで使用するAFMを含む。)のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにし、トンネル電流値が一定の条件で前記探針を前記測定試料の前記測定面に沿って走査してSTM像を取得する工程とを有することを特徴とする。
本発明に係るSTS測定方法は、走査型トンネル顕微鏡(STMモードで使用するAFMを含む。)のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにしてSTS測定する工程とを有することを特徴とする。
本発明においては、測定試料の測定面の傾斜角度に基づいて探針のz方向の移動範囲を制限する。これにより、測定試料の測定面に絶縁物が含まれていても、探針が測定試料に衝突することが回避され、測定面に絶縁物を含む測定試料のSTM測定又はSTS測定が可能となる。
本発明に係る不純物濃度測定方法は、走査型トンネル顕微鏡(STMモードで使用するAFMを含む。)のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記最大前進可能値を超えて前記探針が移動しないようにして前記探針を前記測定試料に近づけ、前記測定試料に印加する電圧を変化させて前記探針に流れるトンネル電流と前記測定試料に印加する電圧との関係を示す電流−電圧特性を測定する工程と、前記探針と前記測定試料との接触又は近接により発生する現象により原点を決定する工程と、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離を求める工程と、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧特性とに基づいて不純物濃度を求める工程とを有することを特徴とする。
本発明においては、測定試料の測定面の傾斜角度に基づいて探針のz方向の移動範囲を制限し、電流−電圧特性を測定する。また、探針と試料との接触又は近接により発生する現象により原点を決定し、この原点から、電流−電圧特性測定時における探針の位置までの距離を求め、不純物濃度を検出する。この場合に、探針が最大前進可能値まで移動したときには、探針が絶縁物上にあるものとして、その位置での電流−電圧特性の測定は行わない。これにより、測定面に絶縁物を含む試料の不純物濃度分布を効率よく、且つ高精度に測定することができる。
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
(1)第1の実施の形態
以下、本発明の第1の実施の形態の不純物濃度分布評価方法について説明する。本実施の形態は、MOSトランジスタのソース・ドレイン領域又はチャネル領域などの任意の1箇所の局所的不純物濃度を測定する方法に本発明を適用した例を示す。
以下、本発明の第1の実施の形態の不純物濃度分布評価方法について説明する。本実施の形態は、MOSトランジスタのソース・ドレイン領域又はチャネル領域などの任意の1箇所の局所的不純物濃度を測定する方法に本発明を適用した例を示す。
〔走査型トンネル顕微鏡〕
図3は、不純物濃度測定に使用する走査型トンネル顕微鏡の模式図である。走査型トンネル顕微鏡は、試料10を載置するステージ(図示せず)と、金属からなる探針11と、探針11を水平方向(x方向及びy方向)に微動させるxピエゾ素子12a及びyピエゾ素子12bと、探針11を垂直方向(z方向)に微動させるzピエゾ素子12cと、試料10に印加する電圧(試料電圧)を発生する可変電圧源13と、探針11に流れるトンネル電流を検出する電流計14と、制御部15とを有している。
図3は、不純物濃度測定に使用する走査型トンネル顕微鏡の模式図である。走査型トンネル顕微鏡は、試料10を載置するステージ(図示せず)と、金属からなる探針11と、探針11を水平方向(x方向及びy方向)に微動させるxピエゾ素子12a及びyピエゾ素子12bと、探針11を垂直方向(z方向)に微動させるzピエゾ素子12cと、試料10に印加する電圧(試料電圧)を発生する可変電圧源13と、探針11に流れるトンネル電流を検出する電流計14と、制御部15とを有している。
探針11は、本実施の形態では電解研磨法により研磨されたタングステン針を使用しているが、これに限定するものではない。また、図3には図示していないが、走査型トンネル顕微鏡には、探針11のx方向、y方向及びz方向の位置を粗調整するための粗動モータ(図示せず)が設けられている。
制御部15は、可変電圧源13、ピエゾ素子12a,12b,12c及び粗動モータを制御し、探針11の位置や試料電圧を決定する。また、制御部15には、電流計14で検出された電流値が一定の値となるようにzピエゾ素子12cに印加する電圧を自動制御して探針11のz方向の位置を調整する制御回路(フィードバック制御回路)15aが設けられている。
〔参照テーブルの作成〕
本実施の形態では、予め、不純物濃度が既知の標準試料を用いて、種々の試料電圧における不純物濃度とトンネル電流との関係を示す参照テーブルを作成し、コンピュータに記憶しておく。
本実施の形態では、予め、不純物濃度が既知の標準試料を用いて、種々の試料電圧における不純物濃度とトンネル電流との関係を示す参照テーブルを作成し、コンピュータに記憶しておく。
すなわち、まず、不純物濃度が相互に異なる複数の標準試料を用意する。各標準試料の不純物濃度は、二次イオン質量分析法などにより測定する。そして、それらの標準試料のうちの1つを走査型トンネル顕微鏡のステージの上に載置し、探針−試料間の距離及び試料電圧を種々変化して、トンネル電流値を測定する。なお、探針−試料間の距離は、後述する測定試料の探針−試料間距離の導出方法と同様にして決定する。
その後、標準試料を換えて、上記と同様に探針−試料間の距離、試料電圧及びトンネル電流値の関係を調べる。図4は電圧−電流特性の不純物濃度依存性を示す図であり、探針−試料間の距離Sを1nmとしたときの、不純物濃度が7×1017cm-3、1×1018cm-3、1×1019cm-3の各標準試料の試料バイアス電圧(試料印加電圧)とトンネル電流との関係を示す。
このようにして、各探針−試料間距離について、任意の電圧における不純物濃度と電流値との関係を漸近する関数を用意し、Ns×Nvの行列として参照テーブルを作成する。ここで、Nsは参照用に測定した各探針−試料間の距離の数、Nvは測定した電圧の数である。このようにして求めた参照テーブルを、コンピュータに記憶しておく。
図5は、横軸にキャリア濃度をとり、縦軸にトンネル電流をとって、参照テーブルの例を示す図である。但し、探針−試料間距離は1nm、試料バイアスは、2.28V(◆)、2.32V(△)及び2.36V(●)である。
〔測定試料の前処理工程〕
まず、シリコン基板上に形成されたトランジスタのゲート電極及び層間絶縁膜をエッチングにより除去し、測定面が平面部(シリコン基板の表面)の場合は、測定面がゲート酸化膜のみに覆われている状態にする。また、測定面が断面部の場合は、劈開又は研磨等により測定面を露出させて、表面が自然酸化膜のみに覆われている状態とする。
まず、シリコン基板上に形成されたトランジスタのゲート電極及び層間絶縁膜をエッチングにより除去し、測定面が平面部(シリコン基板の表面)の場合は、測定面がゲート酸化膜のみに覆われている状態にする。また、測定面が断面部の場合は、劈開又は研磨等により測定面を露出させて、表面が自然酸化膜のみに覆われている状態とする。
次に、フッ酸と塩酸の混合液(容積比1:19)にシリコン基板を約2分浸すことで、ゲート酸化膜又は自然酸化膜を除去し、表面を水素原子で終端する。その後、シリコン基板を速やかに超高真空雰囲気(真空度が約1×10-7Pa)中に移す。
なお、本実施の形態は、ゲート電極を形成する前のシリコン基板を製造工程の途中から取り出して、測定試料とすることもできる。この場合は、上記の前処理工程は不要である。
また、本実施の形態では真空雰囲気で電流−電圧特性の測定を行うが、空気中で電流−電圧測定を行ってもよい。但し、試料の酸化や水分の付着を回避できること、及び真空の誘電率が一定であることを考慮すると、真空雰囲気中で測定することが好ましい。
〔測定位置決定〕
図6は、測定位置の決定方法を示すフローチャートである。
図6は、測定位置の決定方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS11において、測定試料であるシリコン基板を走査型トンネル顕微鏡のステージに載置し、粗動モータを駆動して不純物濃度分布を測定したい領域に探針11をxy移動して、おおよその位置に合わせる。そして、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるz位置に探針11を移動させる。なお、上記の試料電圧及びトンネル電流の値は一例であり、試料電圧及びトンネル電流の値は任意に決めてもよい。
次に、ステップS12において、試料電圧が2.0V、トンネル電流が0.2nAの定電流モードで探針をx方向及びy方向に走査してSTM測定を行い、定性的な不純物濃度分布を得る。これにより、例えば図2に示すようなSTM像が得られ、n+ 型伝導領域、p型伝導領域及び空乏層領域等の位置がわかる。
次に、ステップS13に移行し、STM像を基に探針11をx方向及びy方向に移動して、不純物濃度を測定する位置に探針11の位置を合わせる。そして、制御部15により、探針11がx方向及びy方向に移動しないように制御する。このときの探針11のxy座標を測定点と呼ぶ。その後、電圧−電流特性の測定及び探針−試料間距離の導出を行う。
〔電流−電圧特性測定、探針−試料間距離導出〕
図7は電流−電圧特性の測定と、探針−試料間距離の導出方法を示すフローチャートである。
図7は電流−電圧特性の測定と、探針−試料間距離の導出方法を示すフローチャートである。
まず、ステップS21において、制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるように探針11のz位置を決める。このときのz位置を初期位置とする。初期位置は、探針11のz方向の移動を制御するzピエゾ素子12cに印加する電圧により規定される。
次に、ステップS22に移行し、制御回路15aをオフにする。その後、ステップS23において、ピエゾ素子12cを駆動し、探針11を、初期位置から0.1nm×N(Nはループ繰り返し数:Nの初期値=1)だけ試料10に近づけて、その位置に固定する。なお、この例では探針11の下降ステップを0.1nmとしているが、この値は任意に選択することができる。
次に、ステップS24に移行し、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、各電圧におけるトンネル電流を測定する。これにより、例えば図4に示すような電流−電圧特性が得られる。但し、試料電圧は任意に設定すればよく、上記の値に限定されるものではない。
次に、ステップS25に移行し、制御回路15aをオンにする。その後、ステップS26に移行して、定電流モードで探針11をxy方向に走査してSTM測定を行い、ステップS27で測定点における接触痕の有無を判別する。接触痕がない場合は、図6のステップS12で求めたのと同じSTM像が得られる。しかし、探針11が試料10に接触した場合は、STM像に接触痕が認められる。
接触痕が確認されない場合は、ステップS27からステップS22に戻り、制御回路15aをオフにした後、探針11を初期位置から0.1nm×Nだけ試料10に近づけ、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、各電圧におけるトンネル電流を測定する。その後、STM測定を行って接触痕の有無を調べる。このようにして接触痕が確認されるまで探針11を徐々に測定試料10に近づけて、電流−電圧特性を測定する。
ステップS27で接触痕が確認された場合は、ステップS28に移行して、そのz位置をz方向の原点とする。そして、探針11が原点に位置しているときのzピエゾ素子12cへの印加電圧と、各電流−電圧特性測定時のz位置におけるzピエゾ素子12cへの印加電圧との差に基づいて、各電流−電圧特性測定時のz位置における探針−試料間距離を導出する。
次いで、ステップS29に移行し、電流−電圧特性のうちから、探針−試料間の距離がS0 (S0 は任意に選択可能)の電流−電圧特性を抽出し、任意の電圧における電流値を参照テーブルと比較して不純物濃度を決定する。
この場合に、任意の電圧を複数個選択して、それらの電流値を参照テーブルと比較することで、決定される不純物濃度の精度が上がる。また、不純物の導電型及び濃度の高低により電流値の不純物濃度に対する感度がよい電圧領域が変化するので、目的に応じて電圧値を選択する必要がある。
例えば、図4に示すように、比較的高濃度のp型キャリアの濃度の場合では、正の試料電圧では各不純物濃度での電流値に大きな差ができないのに対し、負の試料電圧では電流値が不純物濃度に大きく依存する。従って、不純物濃度が1017〜1019cm-3程度のp型領域を測定する際には、負の試料電圧から多くの電圧値を選択して比較することで、精度が上がる。このようにして、所望の測定点における不純物濃度を検出することができる。
〔第1の実施の形態の効果〕
本実施の形態においては、探針11を徐々に試料10に近づけて電流−電圧特性を測定し、接触痕の有無で原点の位置を決定する。このため、探針−試料間の距離を正確に知ることができて、試料表面の凹凸に影響されることなく不純物濃度を測定できる。従って、本実施の形態によれば、シリコン基板に形成されたMOSトランジスタやその他のデバイス又はシリコン基板の微小な領域の不純物濃度を高精度で測定することができる。
本実施の形態においては、探針11を徐々に試料10に近づけて電流−電圧特性を測定し、接触痕の有無で原点の位置を決定する。このため、探針−試料間の距離を正確に知ることができて、試料表面の凹凸に影響されることなく不純物濃度を測定できる。従って、本実施の形態によれば、シリコン基板に形成されたMOSトランジスタやその他のデバイス又はシリコン基板の微小な領域の不純物濃度を高精度で測定することができる。
なお、上記の例ではシリコン基板を使用したデバイスの不純物濃度を調べる場合について説明したが、本発明をGaAs系半導体基板の不純物濃度測定又はGaAs系半導体基板を用いたデバイスの不純物濃度測定に適用することもできる。その場合は、真空中で(110)面を劈開により準備し、(110)面を測定することで、不純物濃度測定が可能である。
(2)第2の実施の形態
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、微小な領域の不純物濃度分布の測定に本発明を適用した例である。本実施の形態においても、走査型トンネル顕微鏡を示す図3を参照する。
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、微小な領域の不純物濃度分布の測定に本発明を適用した例である。本実施の形態においても、走査型トンネル顕微鏡を示す図3を参照する。
図8は本実施の形態の不純物濃度分布測定方法を示すフローチャートである。まず、ステップS31において、第1の実施の形態と同様にして測定試料に前処理を施し、測定面のゲート酸化膜又は自然酸化膜を除去した後、測定試料を真空雰囲気中に移す。
次に、ステップS32において、試料電圧が2.0V、トンネル電流が0.2nAの条件で定電流モードでSTM測定を行い、定性的な不純物濃度分布を得る。そして、その不純物濃度分布から、測定領域を決定する。
次に、ステップS33において、探針11を測定領域内の最初の測定点にxy移動する。そして、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるz位置に探針11を移動させる。
その後、ステップS34に移行し、制御回路15aをオフにする。そして、ステップS35において、探針11を初期位置から0.1nm×N(Nはループ繰り返し数)だけ試料10に近づける。なお、本実施の形態においても探針11の下降ステップを0.1nmとしているが、この値は任意に選択することができる。
次に、ステップS36において、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、各電圧におけるトンネル電流を測定して、電流−電圧特性を得る。その後、ステップS37において、制御回路15aをオンにし、ステップS38で定電流モードで探針11を走査してSTM測定を行い、接触痕の有無を判別する。接触痕がない場合は、ステップS39からステップS34に戻って、探針11のz方向の移動及び電流−電圧特性の測定を繰り返す。
一方、ステップS39で接触痕が観測された場合は、ステップS40に移行して、全ての測定点での測定が終了したか否かを判定する。そして、否の場合はステップS33に戻り、探針11を次の測定点まで移動して、同様の作業を繰り返す。
このようにして、各測定点で電流−電圧特性の測定、及び探針−試料間の距離の導出を行うと、ステップS40からステップS41に移行する。ステップS41では、各測定点における電流−電圧特性と参照テーブルとを比較し、各測定点における不純物濃度を導出して、その分布を出力することで不純物濃度分布を得る。
本実施の形態では、MOSトランジスタのソース・ドレイン領域、及びチャネル領域における任意の個所の不純物濃度分布を測定することができる。この場合に、各測定点における一定電圧での電流分布を得た後、各測定点の不純物濃度を得るので、測定が演算で中断されることがなく、速やかに行われる。また、試料表面に凹凸が存在していても、不純物濃度の測定が可能である。更に、走査型トンネル顕微鏡を使用しているので、1nm程度の空間分解能が得られる。
(3)第3の実施の形態
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあるので、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあるので、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
第1の実施の形態では接触痕が発生した時点の探針の位置を原点として探針−試料間の距離を導出したが、本実施の形態では、電流−電圧特性の大きな変化により探針と試料との接触を検出して原点を決定する。
図9は本発明の第3の実施の形態の不純物濃度測定方法を示すフローチャートである。まず、ステップS51において、第1の実施の形態と同様にして測定試料に前処理を施し、測定面のゲート酸化膜又は自然酸化膜を除去した後、測定試料を真空雰囲気中に移す。
次に、ステップS52において、試料電圧が2.0V、トンネル電流が0.2nAの条件で定電流モードでSTM測定を行い、定性的な不純物濃度分布を得る。そして、この不純物濃度分布を基に探針11をx方向及びy方向に移動して、不純物濃度を測定する位置に探針11の位置を合わせる。その後、制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるように探針11のz位置を決める。このときのz位置を初期位置とする。
次に、ステップS53に移行し、制御回路15aをオフにする。その後、ステップS54に移行し、ピエゾ素子12cを駆動して、探針11を、初期位置から0.1nm×N(Nはループ繰り返し数)だけ試料10に近づける。
次に、ステップS55に移行し、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、各電圧におけるトンネル電流を測定する。その後、ステップS56において、制御回路15aをオンにする。
次に、ステップS57に移行し、電流−電圧特性が急激に変化しているか否かを判定する。例えば、p型不純物濃度が1×1014cm-3の場合、探針11と試料10とが離れている間は、図10中に(a)〜(c)で示すように、MIS構造の電流−電圧特性に似た電流−電圧特性を示す。しかし、探針11が試料10の表面に接触すると、図10中に(d)で示すようにショットキー構造の電流−電圧特性に似た特性に変化する。従って、ステップS55で測定した電流−電圧特性がMIS構造の電流−電圧特性に似ている場合は、探針11が試料10に接触していないと判定し、ステップS53に戻る。
一方、ステップS55で測定した電流−電圧特性がショットキー構造の電流−電圧特性に似ている場合は、ステップS57からステップS58に移行して、そのときの探針11のz位置を原点とする。そして、探針11が原点に位置しているときのzピエゾ素子12cの印加電圧と、各電流−電圧特性測定位置(z位置)におけるzピエゾ素子12cの印加電圧との差に基づいて、各z位置における探針−試料間距離を導出する。
次いで、ステップS59に移行し、任意の探針−試料間距離における電流−電圧特性を参照テーブルと比較し、不純物濃度を決定する。
本実施の形態においては、電流−電圧特性の急激な変化により探針11と試料10との接触を検出するので、第1の実施の形態に比べて探針11と試料10との接触が容易に検出される。本願発明者らの実験により、このようにして検出した原点は、第1の実施の形態で検出した原点と完全に対応していることが実証されている。
また、探針11を水平方向に移動して同様の作業を繰り返すことにより、第2の実施の形態と同様に、微小領域の濃度分布を評価することができる。
なお、本実施の形態においては、探針11が試料10の表面に強く接触して損傷することがないように、z方向の最大移動距離を2.0〜3.0nm程度に規制しておくことが好ましい。
(4)第4の実施の形態
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあり、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
以下、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあり、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
本実施の形態では、探針と試料との接触により試料表面に凹部が形成されるため、一定の電圧で一定のトンネル電流が得られるz位置が、探針と試料との接触前と後で異なることを利用して、原点を検出する。
図11は、本発明の第4の実施の形態の不純物濃度測定方法を示すフローチャートである。まず、ステップS61において、第1の実施の形態と同様にして測定試料に前処理を施し、測定面のゲート酸化膜又は自然酸化膜を除去した後、測定試料を真空雰囲気中に移す。
次に、ステップS62において、試料電圧が2.0V、トンネル電流が0.2nAの条件で定電流モードでSTM測定を行い、定性的な不純物濃度分布を得る。そして、この不純物濃度分布を基に探針11をx方向及びy方向に移動して、不純物濃度を測定する位置に探針11の位置を合わせる。その後、制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるように探針11のz位置を決める。このときのz位置を初期位置とする。
次に、ステップS63に移行し、制御回路15aをオフにする。その後、ステップS64に移行し、ピエゾ素子12cを駆動して、探針11を初期位置よりも0.1nm×N(Nはループ繰り返し数)だけ試料10に近づけて、その位置に固定する。
次に、ステップS65に移行し、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、電流−電圧特性を測定する。その後、ステップS66において、制御回路15aをオンにする。そして、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるように探針11の位置を決める。
次に、ステップS67に移行して、zピエゾ素子12cへの印加電圧から、探針11のz位置が初期位置と同じか否かを判定する。同じ場合は、探針11と試料10とが接触していないので、ステップS63に戻って上記の作業を繰り返す。
一方、探針11の位置が初期位置よりも下がっているときは、探針11と試料10との接触により試料表面に凹部が形成され、凹部の深さ分だけ探針11の位置が下がったと考えられる。従って、ステップS68に移行し、そのときのz位置を原点とする。そして、探針11が原点に位置しているときのzピエゾ素子12cの印加電圧と、各電流−電圧特性測定位置(z位置)におけるzピエゾ素子12cの印加電圧との差に基づいて、各z位置における探針−試料間距離を導出する。
次いで、ステップS69に移行し、任意の探針−試料間距離における電流−電圧特性を参照テーブルと比較し、不純物濃度を決定する。本実施の形態においても、第3の実施の形態と同様の効果が得られる。
(5)第5の実施の形態
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあるので、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
以下、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態が第1の実施の形態と異なる点は、探針−試料間の距離の導出方法が異なることにあるので、第1の実施の形態と重複する部分の説明は省略する。
第1の実施の形態では接触痕が発生した時点の探針の位置を原点として探針−試料間の距離を導出したが、本実施の形態では、探針と試料との近接による水素の脱離現象を利用して原点を検出する。
図12は本発明の第5の実施の形態の不純物濃度測定方法を示すフローチャートである。まず、ステップS71において、第1の実施の形態と同様にして測定試料に前処理を施し、測定面のゲート酸化膜又は自然酸化膜を除去した後、測定試料を真空雰囲気中に移す。
次に、ステップS72において、試料電圧が2.0V、トンネル電流が0.2nAの条件で定電流モードでSTM測定を行い、定性的な不純物濃度分布を得る。そして、この不純物濃度分布を基に探針11をx方向及びy方向に移動して、不純物濃度を測定する位置に探針11の位置を合わせる。その後、制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が0.2nAとなるように探針11の位置を決める。このときのz位置を初期位置とする。
次に、ステップS73に移行し、制御回路15aをオフにする。その後、ステップS74に移行し、ピエゾ素子12cを駆動して、探針11を初期位置よりも0.05nm×N(Nはループ繰り返し数)だけ試料10に近づけ、その位置に固定する。本実施の形態では、第1〜第4の実施の形態に比べて探針−試料間距離に敏感なので、第1〜第4の形態に比べて1回当りの探針11の下降距離を小さく設定することが好ましい。この例では探針11の下降ステップを0.05nmとしているが、この値は任意に選択することができる。
次に、ステップS75に移行し、試料電圧を3Vから−3Vまで順次変化させて、電流−電圧測定を測定する。その後、ステップS76において、制御回路15aをオンにし、試料電圧を2.0Vとして、トンネル電流が0.2nAとなる位置に探針11を移動させる。そして、このときのz位置と初期位置の比較を行う。初期位置と同じならばステップS77からステップS73に戻り、上記の作業を繰り返す。
一方、z位置が変化している場合は、探針11の接近により試料10の表面から水素が脱離し、シリコンのダングリングボンド(dangling bonds)が生じたものとして、ステップS78に移行し、z方向の原点を決定する。その後、予め解析的又は実験的に求めておいた水素原子の脱離が生じる探針−試料間距離分を各探針−試料間距離に加算する。そして、探針11が原点に位置しているときのzピエゾ素子12の印加電圧と各電流−電圧特性測定位置におけるzピエゾ素子12cの印加電圧との差に基づいて、各z位置における探針−試料間距離を導出する。
次いで、ステップS79に移行し、任意の探針−試料間距離における電流−電圧測定を参照テーブルと比較し、不純物濃度を決定する。
本実施の形態においては、第3の実施の形態と同様の効果が得られるのに加えて、探針11が試料10と接触しないので、試料10に傷をつけないという利点がある。従って、水素終端処理をすれば、同じ試料10を用いて再測定することができる。
(6)第6の実施の形態
以下、第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態においては、濃度が既知の標準試料を用いて参照テーブルを作成していたが、本実施の形態では、不純物濃度を探針−試料間距離、試料印加電圧及びトンネル電流から解析的に求める。
以下、第6の実施の形態について説明する。第1〜第5の実施の形態においては、濃度が既知の標準試料を用いて参照テーブルを作成していたが、本実施の形態では、不純物濃度を探針−試料間距離、試料印加電圧及びトンネル電流から解析的に求める。
すなわち、本実施の形態では、不純物濃度を、探針−試料間距離、試料印加電圧及びトンネル電流の関数として定式化する。例えば、n型領域の場合、図13の式に示すように、トンネル電流を摂動として扱い、一次元ポワソン方程式と電気的中性の関係から、印加電圧が真空ギャップと半導体にどのように割り振られるかがわかる。
図13において、ΦMetal は金属探針の仕事関数、χsiは半導体試料の電子親和力、Ecsは半導体試料における導電帯の底のエネルギー、EFsは半導体のフェルミエネルギー、kはボルツマン定数、Tは温度、qは単電荷、ε1 は真性誘電率、εs は半導体の比誘電率、nn0は半導体バルク中のn型キャリア密度、pn0は半導体バルク中のp型キャリア密度、Ψs は表面ポテンシャル、Sは探針−試料間距離、Vs は印加電圧である。
その結果、積分範囲が決まるので、真空障壁を台形障壁で近似し、WKB(Wentzel, Kramers, Brillouin )近似でトンネル電流を解析的に求めることができる。
このようにして、不純物濃度、トンネル電流、印加電圧及び探針−試料間距離の関係が解析的に与えられるので、トンネル電流、印加電圧及び探針−試料間距離を代入し計算して、不純物濃度を算出することができる。当然、より厳密な関係式を用いて不純物濃度の算出を行ってもよい。
上記の第1〜第6の実施の形態においてはいずれも走査型トンネル顕微鏡を用いて不純物濃度を測定する場合について説明したが、これにより本発明が走査型トンネル顕微鏡を用いた不純物濃度測定又は不純物濃度分布測定に限定されるものではなく、原子間力顕微鏡(ATM)などの他の装置を使用した測定に適用することができる。また、上記の実施の形態においてはいずれも真空雰囲気中に試料をおいて不純物濃度を測定したが、真空中で行わなくてもよい。但し、試料の酸化や水分の付着を回避できること、及び真空の誘電率が一定であることを考慮すると、真空雰囲気中で測定することが好ましい。
(7)第7の実施の形態
以下、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、絶縁物を含む構造体のSTM測定方法に関する。
以下、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、絶縁物を含む構造体のSTM測定方法に関する。
STM測定は、基本的に金属や半導体などのようにトンネル電流が流れる試料の凹凸や表面電子状態を測定する方法であるので、試料の測定領域内に絶縁物があるときは注意が必要である。すなわち、STM測定の定電流モードでは、探針が絶縁物上に移動すると、一定のトンネル電流を維持しようとして探針が前進(下降)し、試料と衝突してしまう。
そこで、本実施の形態では、z方向の探針の移動範囲を導体又は半導体部分の凹凸及び不純物濃度の測定に追従するのに必要な分だけに限定し、限定した範囲を超えて探針が前進しようとしたときには、探針が絶縁物部分の上にあるものとする。
〔走査型トンネル顕微鏡〕
図14は本実施の形態で使用する走査型トンネル顕微鏡の構成を示す模式図である。図14において、図3と同一物には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図14は本実施の形態で使用する走査型トンネル顕微鏡の構成を示す模式図である。図14において、図3と同一物には同一符号を付してその詳しい説明は省略する。
図14で示す走査型トンネル顕微鏡が、図3に示す走査型トンネル顕微鏡と異なる点は、探針11をz方向に移動させるzピエゾ素子12cの可動範囲を制限するzピエゾ可動範囲制御回路15bを有することにある。
zピエゾ可動範囲制御回路15bに後述する最大前進z値(最大前進可能値)を設定すると、ピエゾ素子12cの最大前進位置がこの最大前進z値に制限される。すなわち、探針11が最大前進z値を超えて移動することが禁止される。
フィードバック制御回路15aは、電流計14で検出された電流値が一定の値となるように、zピエゾ素子12cに印加する電圧を自動制御して、探針11のz方向の位置を調整する。
〔STM測定方法の概略〕
図15は本実施の形態のSTM測定方法の概略を示すフローチャートである。本実施の形態では、図15に示すように、測定試料の前処理(ステップS101)、測定面の傾斜測定(ステップS102)、z方向のピエゾ素子の最大前進z値の入力(ステップS103)及びSTM測定(ステップS104)の4つの段階を経てSTM測定し、STM像を取得する。
図15は本実施の形態のSTM測定方法の概略を示すフローチャートである。本実施の形態では、図15に示すように、測定試料の前処理(ステップS101)、測定面の傾斜測定(ステップS102)、z方向のピエゾ素子の最大前進z値の入力(ステップS103)及びSTM測定(ステップS104)の4つの段階を経てSTM測定し、STM像を取得する。
なお、以下の例ではMOS構造のトランジスタが形成されたシリコン基板の断面のSTM測定方法について説明するが、これにより本発明の適用範囲が半導体デバイスの断面のSTM測定に限定されるものではない。本発明は、導体及び半導体の少なくとも一方と、絶縁物とが含まれる構造物の表面又は断面のSTM測定に適用できる。
〔測定試料の前処理〕
図16は本実施の形態における測定試料の前処理工程を示す模式図である。この図16に示すように、まず、試料50の表面を平坦化し、その後、絶縁物51を選択的に削って、探針11の最大前進位置(図中一点鎖線で示す)よりも深い凹部を形成する。
図16は本実施の形態における測定試料の前処理工程を示す模式図である。この図16に示すように、まず、試料50の表面を平坦化し、その後、絶縁物51を選択的に削って、探針11の最大前進位置(図中一点鎖線で示す)よりも深い凹部を形成する。
例えば、MOSトランジスタの断面のSTM測定を行う場合、まず、シリコン基板を劈開又は研磨して、MOSトランジスタの断面構造を露出させる。基板の劈開面又は研磨面には、ゲート絶縁膜及びサイドウォール等の絶縁部分と、配線、ゲート電極、ソース・ドレイン領域及びチャネル領域等の金属又は半導体部分が露出する。半導体及び金属部分は、表面が自然酸化膜のみで覆われた状態にする。
次に、フッ酸と塩酸との混合液(容積比1:19)に浸すことで、自然酸化膜を除去するとともに、ゲート酸化膜及びサイドウォール等の絶縁膜を十分な深さまで削り取る。この混合液に浸すことで、半導体部分の表面が水素原子で終端する。その後、シリコン基板を速やかに超高真空雰囲気(約1×10-7Pa)中に移す。
なお、シリコン酸化膜以外の絶縁膜を含む場合は、絶縁膜の材質に応じた適切な薬品を使用して絶縁膜を十分な深さまで削り取ることが必要である。そして、絶縁膜を十分な深さまで削り取った後、基板をフッ酸と塩酸との混合液(容積比1:19)に浸して、半導体部分の表面を水素原子で終端しておく。
〔測定面の傾斜の測定〕
図17は走査型トンネル顕微鏡を用いた測定面の傾斜の測定方法を示すフローチャートである。測定面の傾斜は、測定面内の複数の点のx,y,zの位置を検出し、それらの差分から求めることができる。測定面の傾きを求めるためには最低3箇所の点のx,y,z位置を検出すればよいが、より正確に面の傾きを求めるためには、4点以上の測定点のx,y,z位置を求めることが好ましい。ここでは、図18に示すように、測定点をA点からD点までの4点とした場合について説明する。
図17は走査型トンネル顕微鏡を用いた測定面の傾斜の測定方法を示すフローチャートである。測定面の傾斜は、測定面内の複数の点のx,y,zの位置を検出し、それらの差分から求めることができる。測定面の傾きを求めるためには最低3箇所の点のx,y,z位置を検出すればよいが、より正確に面の傾きを求めるためには、4点以上の測定点のx,y,z位置を求めることが好ましい。ここでは、図18に示すように、測定点をA点からD点までの4点とした場合について説明する。
まず、ステップS111において、測定試料であるシリコン基板を走査型トンネル顕微鏡のステージに搭載する。その後、ステップS112に移行し、粗動モータを駆動して最初の測定点に探針11をxy移動する。
次に、ステップS113において、制御部15により探針11のxy位置を固定し、ピエゾ素子12a,12bに印加する電圧から探針11のxy位置を読み取る。
次に、ステップS114に移行し、フィードバック制御回路15aをオンにする。そして、試料電圧を6Vとし、トンネル電流が1.0nAとなるz位置に探針11を移動させる。なお、上記の試料電圧及びトンネル電流の値は一例であり、試料電圧及びトンネル電流の値は任意に決めてもよい。
その後、ステップS115に移行し、ピエゾ素子12cに印加する電圧から探針11のz位置を読み取る。
次に、ステップS116に移行し、フィードバック制御回路15aをオフにする。そして、ステップS117において、全ての測定点(この例では4点)の測定が終了したか否かを判定する。
ステップS117で否の場合は、ステップS112に戻り、探針11を次の測定点まで移動させた後、ステップS113からステップS116までの処理を繰り返して、測定点のx,y,z位置を測定する。
ステップS117で全ての測定点での測定が終了したと判定した場合は、ステップS118に移行する。ステップS118では、各測定点のx,y,z位置の差を演算して、測定面の傾斜角度を算出する。
〔z方向ピエゾ素子の最大前進z値の決定〕
探針11のz方向に移動をつかさどるピエゾ素子12cの最大前進z値は、下記の4つのパラメータより決定される。
探針11のz方向に移動をつかさどるピエゾ素子12cの最大前進z値は、下記の4つのパラメータより決定される。
(1)測定面の傾斜によるパラメータ
測定面の傾斜によるパラメータは、上述したように、測定面上の3点以上のxyz位置を測定し、その測定値から計算により求める。
測定面の傾斜によるパラメータは、上述したように、測定面上の3点以上のxyz位置を測定し、その測定値から計算により求める。
(2)測定面の荒れ(凹凸)によるパラメータ
例えば、劈開又は研磨によりシリコン基板の表面の凹凸を約1nmとすることができる。
例えば、劈開又は研磨によりシリコン基板の表面の凹凸を約1nmとすることができる。
(3)測定面の不純物濃度によるパラメータ
本願発明者らの実験では、不純物濃度の変化による探針のz方向の移動距離は約2nmであった。
本願発明者らの実験では、不純物濃度の変化による探針のz方向の移動距離は約2nmであった。
(4)ドリフトに起因するパラメータ
走査型トンネル顕微鏡の電子回路やピエゾ素子の熱ドリフトなどに起因するパラメータである。測定時の温度を一定に保つなどの方法をとることにより、ドリフト量を小さくすることができ、実質的に無視することができる。
走査型トンネル顕微鏡の電子回路やピエゾ素子の熱ドリフトなどに起因するパラメータである。測定時の温度を一定に保つなどの方法をとることにより、ドリフト量を小さくすることができ、実質的に無視することができる。
z方向ピエゾ素子12cの可動範囲は上記(1)〜(4)の4つのパラメータの和より決定され、この可動範囲からz方向ピエゾ素子12cの最大前進z値(最大前進可能値)が決定される。
〔STM測定〕
STM測定は、ピエゾ素子12cの可動範囲を制限することを除けば、基本的に従来と同様である。
STM測定は、ピエゾ素子12cの可動範囲を制限することを除けば、基本的に従来と同様である。
すなわち、前述した方法により前処理した試料を走査型トンネル顕微鏡のステージの上に搭載する。そして、例えば、試料電圧を6.0Vとし、トンネル電流を1.0nAに設定して、定電流モードで試料をSTM測定し、STM像を取得する。このとき、絶縁物部分の上に探針11があると、探針11は試料に向けて前進するが、最大前進z値を超えて下降しようとすると、zピエゾ可動範囲制御回路15bによりピエゾ素子12cに印加される電圧が制限される。これにより、探針11が最大前進z値を超えて移動し、試料10に衝突することが防止される。
図19はこのようにして取得されたSTM像の例を示す図である。本実施の形態により、ゲート絶縁膜やサイドウォール、及びゲート電極を鮮明に視覚化することができる。図19は、走査範囲を250nm×250nm、試料電圧を6Vとし、トンネル電流値を1nAに設定して取得したSTM像である。この図19では、膜厚が5nmのゲート酸化膜、ゲート電極の側面に接するサイドウォール酸化膜が鮮明に視覚化されている。
測定条件を変えることで、図20,21に示すように、ソース・ドレイン領域及びチャネル領域の定性的な不純物濃度分布(大まかな不純物濃度分布)を得ることができる。図20は、試料電圧を2Vとし、トンネル電流値を1nAに設定した以外は図19と同じである。図20では、ソース・ドレインの不純物濃度分布が視覚化されている。また、図21は、試料電圧を6Vとし、トンネル電流値を0.2nAに設定して取得したSTM像である。図21では、ゲート酸化膜、サイドウォール酸化膜及びソース・ドレイン領域が視覚化されている。
本実施の形態では、zピエゾ素子の可動範囲を制限した状態で定電流モードSTM測定を行ってSTM像を取得するので、試料の測定面に絶縁物領域が含まれていても、探針と試料との衝突を回避することができる。これにより、絶縁物を含む試料のSTM像を取得することができるようになり、実際に製造されたトランジスタ又はその他の素子の構造解析が可能になる。また、ソース・ドレインやチャネル領域の定性的な不純物濃度分布を得ることもできる。
(8)第8の実施の形態
以下、第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、局所的に絶縁物を含む試料に対するSTS測定方法に本発明を適用した例を示す。本実施の形態は、例えば、ゲート絶縁膜などの絶縁領域を含んだ状態のMOSトランジスタのソース・ドレイン領域、チャネル領域及びゲート電極などにおける不純物濃度を反映する電流−電圧測定を調べる場合に用いる。本実施の形態においても、図14に示す走査型トンネル顕微鏡のブロック図を参照して説明する。
以下、第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、局所的に絶縁物を含む試料に対するSTS測定方法に本発明を適用した例を示す。本実施の形態は、例えば、ゲート絶縁膜などの絶縁領域を含んだ状態のMOSトランジスタのソース・ドレイン領域、チャネル領域及びゲート電極などにおける不純物濃度を反映する電流−電圧測定を調べる場合に用いる。本実施の形態においても、図14に示す走査型トンネル顕微鏡のブロック図を参照して説明する。
図22は本発明の第8の実施の形態のSTS測定方法を示すフローチャートである。但し、以下の例では、第7の実施の形態で説明した方法により、zピエゾ素子12cの最大前進z値が既に決定されているものとする。
まず、ステップS121において、第7の実施の形態で説明した方法により試料のSTM像を得る。その後、ステップS122において、得られたSTM像からSTS測定を行う測定点を決定する。
次に、ステップS123に移行し、探針11を測定点に移動する。そして、ステップS124に移行し、制御部15によって探針11のx位置及びy位置を固定する。
次に、ステップS 125に移行し、zピエゾ可動範囲制御回路15bをオンにする。これにより、zピエゾ素子12cの可動範囲が最大前進z値までに制限される。
次に、ステップS126に移行して、フィードバック制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が1.0nAとなるように探針11のz位置を決める。なお、上記の試料電圧及びトンネル電流の値は一例であり、試料電圧及びトンネル電流の値は任意に決めてもよい。
その後、ステップS127において、探針11が最大前進z位置まで移動したか否かを判定する。探針11が最大前進z位置まで移動していないときは、探針11は導体又は半導体領域上にあるので、ステップS128に移行し、フィードバック制御回路15a及びzピエゾ可動範囲制御回路15bをいずれもオフにする。そして、ステップS129において、電流−電圧特性を測定する。
一方、ステップS127で探針11が最大前進z値まで移動したと判定したときは、ステップS130に移行し、探針11が絶縁物領域にあると判定する。そして、フィードバック制御回路15a及びzピエゾ可動範囲制御回路15bをいずれもオフにする。
必要に応じて、測定点を替えて上記の処理を繰り返し、電流−電圧特性のマップ(分布図)を作製することもできる。
本実施の形態では、zピエゾ素子12cの可動範囲を制限しているので、絶縁物と探針11との衝突を確実に回避することができる。また、必要に応じて、電流−電圧特性から、測定点における不純物濃度を求めることができる。更に、測定点を順次移動させてSTS測定を繰り返すことにより、図23(a),(b)に示すように、ゲート電極、ソース・ドレイン領域及びチャネル領域の不純物濃度分布を鮮明に視覚化することができる。なお、図23(a),(b)中、Gはゲート電極、S及びDはそれぞれソース領域及びドレイン領域、Dep.は空乏層領域、Sub.は基板を示している。図23(a),(b)では、絶縁物が局在しているにもかかわらず、ゲート電極、基板、ソース・ドレイン領域に加えて、空乏層が明瞭に視覚化されている。測定時の条件は、試料電圧が2V、トンネル電流値が1nA、走査範囲が250nm×250nmである。
(9)第9の実施の形態
以下、本発明の第9の実施の形態について説明する。本実施の形態は、本発明を局所的に絶縁物を含む試料の表面又は断面の不純物濃度分布の測定に適用した例を示す。本実施の形態においても、図14に示す走査型トンネル顕微鏡のブロック図を参照して説明する。
以下、本発明の第9の実施の形態について説明する。本実施の形態は、本発明を局所的に絶縁物を含む試料の表面又は断面の不純物濃度分布の測定に適用した例を示す。本実施の形態においても、図14に示す走査型トンネル顕微鏡のブロック図を参照して説明する。
図24は本実施の形態の不純物濃度測定方法を示すフローチャートである。但し、以下の例では、第7の実施の形態で示す方法により、zピエゾ素子12cの最大前進z値が決定されており、かつ、STM像から不純物濃度を測定する範囲が決定されているものとする。
まず、ステップS131において、試料を走査型トンネル顕微鏡のステージに載置する。その後、ステップS132に移行し、探針11を試料の測定点に移動する。
次に、ステップS133に移行し、制御部15により探針11のxy位置を固定する。そして、ステップS 134に移行し、zピエゾ可動範囲制御回路15bをオンにする。これにより、zピエゾ素子12cの可動範囲が制限される。
次に、ステップS135に移行して、フィードバック制御回路15aをオンにした状態で、試料電圧を2.0Vとし、トンネル電流が1.0nAとなるように探針11のz位置を決める。
その後、ステップS136において、探針11が最大前進z位置まで移動したか否かを判定する。探針11が最大前進z位置まで移動していないときは、探針11は導体又は半導体領域上にあるので、ステップS137に移行して、フィードバック制御回路15a及びzピエゾ可動範囲制御回路15bをオフにした後、ステップS138に移行して、第1〜第6の実施の形態で示した方法により不純物濃度を測定する。すなわち、探針と試料との接触又は近接により発生する現象により原点を決定し、原点から電流−電圧特性測定時における探針のz位置を求め、その結果と電流−電圧特性とから不純物濃度を求める。その後、ステップS140に進む。
一方、ステップS136で探針11が最大前進z位置まで移動したと判定したときは、ステップS136からステップS139に移行する。そして、探針11は絶縁物領域上にあると判定し、フィードバック制御回路15a及びzピエゾ可動範囲制御回路15bをいずれもオフにした後、ステップS140に進む。
ステップS140では、全ての測定点での測定が終了したか否かを判定する。全ての測定点での測定が終了していない場合は、ステップS132に戻り、探針11を次の測定点に移動する。そして、上述した処理を繰り返す。
このようにして全ての測定点(但し、絶縁物領域を除く)での不純物濃度測定が終了するまで処理を繰り返した後、処理を終了する。
本実施の形態では、探針11が最大前進z値を超えて移動しようとすると、探針11が絶縁物上にあるとして測定点を移動するので、絶縁物を含む測定領域の不純物濃度分布を効率よく、かつ高精度に測定することができる。これにより、半導体デバイス開発において、より詳細な構造評価をプロセス初期に行なえる上に、構造設計に速やかな還元が行える。また、評価した構造からデバイス動作性能をより正確に予測することができるので、デバイスシミュレーションの精度が向上する。その結果、デバイス開発に要する時間が大幅に短縮されるとともに、開発コストを低下させることができる。
なお、第7〜第9の実施の形態では走査型トンネル顕微鏡を使用したSTM測定、STS測定又は不純物濃度測定について説明したが、AFMのSTMモードによって同様の測定が可能である。
(付記1)探針を測定試料に近づけ、前記測定試料に印加する電圧を変化させて前記探針に流れるトンネル電流と前記測定試料に印加する電圧との関係を示す電流−電圧特性を測定し、前記探針と前記測定試料との接触により発生する現象により原点を決定し、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離を求め、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧特性とに基づいて不純物濃度を求めることを特徴とする不純物濃度測定方法。
(付記2)探針を測定試料に近づけ、前記測定試料に印加する電圧を変化させて前記探針に流れるトンネル電流と前記測定試料に印加する電圧との関係を示す電流−電圧特性を測定し、前記探針と前記測定試料との近接により発生する現象により原点を決定し、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離を求め、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧特性とに基づいて不純物濃度を求めることを特徴とする不純物濃度測定方法。
(付記3)予め、濃度が既知の標準試料により、探針−試料間距離、電流−電圧特性及び不純物濃度の関係を示す参照テーブルを作成しておき、該参照テーブルを参照して不純物濃度を求めることを特徴とする付記1又は2に記載の不純物濃度測定方法。
(付記4)前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧測定とから、不純物濃度を解析的に求めることを特徴とする付記1又は2に記載の不純物濃度測定方法。
(付記5)前記測定試料の表面の複数の位置で前記不純物濃度を測定し、不純物濃度分布を求めることを特徴とする付記1又は2に記載の不純物濃度測定方法。
(付記6)走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにし、トンネル電流値が一定の条件で前記探針を前記測定試料の前記測定面に沿って走査してSTM像を取得する工程とを有することを特徴とするSTM測定方法。
(付記7)前記最大前進可能値は、前記傾斜角度と、前記試料の前記測定面の凹凸と、前記測定面の不純物濃度分布による前記探針の移動量と、前記探針のz方向のドリフト量との和により決定することを特徴とする付記6に記載のSTM測定方法。
(付記8)前記試料の測定面に露出した絶縁物を、前記最大前進可能値よりも深く削ることを特徴とする付記6に記載のSTM測定方法。
(付記9)走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにしてSTS(走査型トンネル分光)測定する工程とを有することを特徴とするSTS測定方法。
(付記10)前記最大前進可能値は、前記傾斜角度と、前記試料の前記測定面の凹凸と、前記測定面の不純物濃度分布による前記探針の移動量と、前記探針のz方向のドリフト量との和により決定することを特徴とする付記9に記載のSTS測定方法。
(付記11)前記試料の測定面に露出した絶縁物を、前記最大前進可能値よりも深く削ることを特徴とする付記9に記載のSTS測定方法。
(付記12)前記試料の複数の位置で前記STS測定を実施することを特徴とする付記9に記載のSTS測定方法。
(付記13)走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、前記最大前進可能値を超えて前記探針が移動しないようにして前記探針を前記測定試料に近づけ、前記測定試料に印加する電圧を変化させて前記探針に流れるトンネル電流と前記測定試料に印加する電圧との関係を示す電流−電圧特性を測定する工程と、前記探針と前記測定試料との接触又は近接により発生する現象により原点を決定する工程と、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離を求める工程と、前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧特性とに基づいて不純物濃度を求める工程とを有することを特徴とする不純物濃度測定方法。
(付記14)前記探針の位置が前記最大前進可能値に達したときには、前記電流−電圧特性の測定をしないことを特徴とする付記13に記載の不純物濃度測定方法。
以上説明したように、本願発明によれば、探針−試料間距離を導出して局所的な不純物濃度を求めるので、不明な係数なしに正確に局所的な不純物濃度を定量的に評価できる。
また、本願発明によれば、不純物濃度分布を得る際、各測定点で探針−試料間距離を一定に揃えることができるので、測定面に幾何的な凹凸が存在していても、凹凸に影響されることなく不純物濃度分布測定が可能である。従って、凹凸を含む可能性のある全く未知の試料を測定する際にも適用できる。
更に、例えば走査型トンネル顕微鏡を使用することで、1nm程度の空間分解能を実現することが可能である。従って、将来更に微細化される半導体デバイスの不純物濃度分布測定に適用可能であるうえに、比較的容易に不純物濃度分布を測定できる。
これらにより、半導体デバイス開発において、まず試作デバイスの構造評価をプロセス初期に行える上に構造設計に速やかに還元することができる。更に、評価した構造からデバイス動作性能を予測できるので、デバイスシミュレーションの精度がよくなる。その結果、デバイス開発に要する時間が大幅に短縮され、開発コストが低下するという効果が得られる。
更に、本願他の発明によれば、測定試料の測定面の傾斜角度に基づいて探針のz方向の移動を制限するので、測定試料の測定面に絶縁物が含まれていても、探針が測定試料に衝突することが回避され、測定面に絶縁物を含む試料のSTM測定、STS測定又は不純物濃度測定が可能となる
10,50…試料、
11…探針、
12a〜12c…ピエゾ素子、
13…可変電圧源、
14…電流計、
15…制御部、
15a…制御回路(フィードバック制御回路)、
15b…zピエゾ可動範囲制御回路、
51…絶縁物。
11…探針、
12a〜12c…ピエゾ素子、
13…可変電圧源、
14…電流計、
15…制御部、
15a…制御回路(フィードバック制御回路)、
15b…zピエゾ可動範囲制御回路、
51…絶縁物。
Claims (5)
- 走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、
前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、
前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、
前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにし、トンネル電流値が一定の条件で前記探針を前記測定試料の前記測定面に沿って走査してSTM像を取得する工程とを有することを特徴とするSTM測定方法。 - 走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、
前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、
前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、
前記走査型トンネル顕微鏡を使用し、前記探針が前記最大前進可能値を超えて移動しないようにしてSTS(走査型トンネル分光)測定する工程と
を有することを特徴とするSTS測定方法。 - 走査型トンネル顕微鏡のステージ上に測定試料を載置する工程と、
前記走査型トンネル顕微鏡により前記測定試料の測定面の傾斜角度を検出する工程と、
前記傾斜角度に基づいて前記走査型トンネル顕微鏡の探針のz方向の最大前進可能値を決める工程と、
前記最大前進可能値を超えて前記探針が移動しないようにして前記探針を前記測定試料に近づけ、前記測定試料に印加する電圧を変化させて前記探針に流れるトンネル電流と前記測定試料に印加する電圧との関係を示す電流−電圧特性を測定する工程と、
前記探針と前記測定試料との接触又は近接により発生する現象により原点を決定する工程と、
前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離を求める工程と、
前記原点から前記電流−電圧特性測定時における前記探針の位置までの距離と、前記電流−電圧特性とに基づいて不純物濃度を求める工程と
を有することを特徴とする不純物濃度測定方法。 - 試料を載置するステージと、
探針と、
前記探針を微動させるピエゾ素子と、
前記試料に印加する試料電圧を発生する可変電圧源と、
前記探針に流れるトンネル電流を検出する電流計と、
制御部とを有し、
前記制御部は、前記電流計で検出された前記トンネル電流値が一定となるように前記ピエゾ素子を制御して前記探針の垂直方向の位置を調整する制御回路を有することを特徴とする不純物濃度分布測定装置。 - 請求項4に記載の不純物濃度分布測定装置によって不純物分布が測定される試料が、半導体装置製造工程中のゲート電極を形成する前のシリコン基板であって、
該試料の不純物濃度分布に基づいてデバイス動作性能をシミュレーションすることを特徴とするデバイス設計手法。
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US9134340B2 (en) | 2011-10-05 | 2015-09-15 | Infinitesima Limited | Method of investigating a sample surface |
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- 2010-03-23 JP JP2010065501A patent/JP2010160161A/ja active Pending
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