JP2010158216A - 免疫調節作用を有する乳酸菌 - Google Patents

免疫調節作用を有する乳酸菌 Download PDF

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康之 増田
Toshinari Takahashi
俊成 高橋
Haruhiko Mizoguchi
晴彦 溝口
Masafumi Mizuno
雅史 水野
Kazutoshi Yoshida
和利 吉田
Sho Fujimura
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Abstract

【課題】免疫調節作用に優れた乳酸菌を提供すること、並びに当該乳酸菌を飲食品、医薬品等に利用すること。
【解決手段】免疫調節作用を有するラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)LK-117株(FERM AP-21756)、並びにLK-117株を有効成分とする免疫調節用組成物及び免疫調節剤。
【選択図】図4

Description

本発明は、新規乳酸菌、並びにこれを含有する組成物及び免疫調節剤に関する。
乳酸菌は、様々な生理的効用を有することが知られており、例えば、整腸作用や免疫賦活作用等の生理活性を奏することが知られている。
このような乳酸菌の効用は、近年、プロバイオティクス効果への期待から、広く関心を集めている。
プロバイオティクスという言葉は、従来、「腸内微生物のバランスを改善することによって宿主動物に有益に働く微生物及びそれらを含むもの」と定義されていた。しかし、今日、プロバイオティクスは、免疫学的効果、アトピー症状の軽減、生活習慣病の予防効果など様々な効果を有する微生物及びそれらを含むものという、広義の意味で用いられるようになっており、疾患予防や健康改善を目的とした研究が行われている。
現在、プロバイオティクスに利用される乳酸菌としては、動物性の発酵乳製品や腸管から分離された乳酸菌が多く利用されている。一方、植物性原料から分離された乳酸菌においても、免疫調節作用を有する株が見出されている。例えば、特許文献1には、「しば漬け」から分離された、免疫調節作用を有するラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)に属する乳酸菌が記載されている。
植物性原料から得られる乳酸菌は菌の利用できる糖の種類が多く、過酷な環境でも生き抜くことができるなど、動物性原料から得られる乳酸菌とは異なる能力を有する。このため、植物性原料から分離される乳酸菌のプロバイオティクスへの利用に高い関心が集まっている。
特開2005−333919号公報
植物性原料から分離される乳酸菌は、動物性乳酸菌とは異なる能力を有し、プロバイオティクスへの利用が期待されている。更に、プロバイオティクス効果は、菌株特異的であり、同じ種類でも菌株ごとにその効果は異なる。しかし、これまで、米と米麹を原料とする生もとより分離される乳酸菌については、あまり研究されていない。
本発明は、生もとから分離された乳酸菌の中から優れた生理的作用を有する乳酸菌を見出すこと、更にこれをプロバイオティクスに応用することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討を重ねた結果、生もとから分離した乳酸菌の中から、優れた免疫調節作用を有する菌株を見出し、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、次の事項に関する。
項1:免疫調節作用を有する、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)LK-117株(FERM AP-21756)。
項2:項1に記載の乳酸菌を有効成分とする免疫調節用組成物。
項3:飲食品である項2に記載の組成物。
項4:医薬品である項2に記載の組成物。
項5:項1に記載の乳酸菌を有効成分とする免疫調節剤。
項6:腸管免疫系における免疫調節のための組成物である項2に記載の組成物。
項7:受動皮膚アナフィラキシー反応抑制のための組成物である項2に記載の組成物。
以下、本発明について、詳細に説明する。
1. 本発明乳酸菌
本発明の乳酸菌は、本発明者らが、生もとから新たに単離・同定し、かつ寄託した菌株であり、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)LK-117株(以下、LK-117株とも称する)と命名される。
当該菌株の菌学的性質は、以下のとおりである。
(1)培地上での生育状況
本菌株は、Lactobacilli MRS Broth(Difco, カタログ番号:288130、培地pH6.5)を用いて、30℃で、1-2日、通性嫌気条件下で静置培養する際に、良好又は普通の生育を示す。
(2)科学的性質
本菌株は、グラム陽性の桿菌であり、カタラーゼ陰性、糖類より乳酸のみを産生(ホモ乳酸発酵)する。
(3)形態的特徴
コロニーは、前記MRS培地を用いて、30℃で、2-3日培養する場合、直径1-2mm、色調が白色の形態となる。形は円形で、隆起状態は台状である。周縁は全縁で、表面の形状はスムーズである。また、不透明で、粘稠性である。変異や培養条件、生理的状態によるコロニー形態の変化はない。
以上の諸性質、並びに、分離源が生もと酒母であること、および、16S ribosomal RNA遺伝子配列のNCBI BLASTサーチの結果に照らし、本菌株をラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)に属する菌株と同定し、Lactobacillus sakei LK-117と命名した。当該菌株は、平成21年1月5日に、日本国茨城県つくば市東1-1-1 中央第6に住所を有する独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託した(受領番号:FERM AP-21756)。
LK-117株は、優れた免疫調節作用を有する。免疫調節作用に寄与する作用として、特に、(1)IL-12産生促進作用、(2)IL-6産生促進作用、(3)IL-10産生促進作用、(4)TNF-α産生促進作用、特に、小腸上皮様細胞とマクロファージ様細胞の共培養系におけるTNF-α産生促進作用、(5)受動皮膚アナフィラキシー反応抑制作用、(6)IgA産生促進作用、及び(7)アトピー性皮膚炎抑制作用に優れる。
人間が健康を維持するためには、Th1型サイトカインとTh2型サイトカインという2種の免疫型のバランスが重要であるが、LK-117株は、IL-12などのTh1型のサイトカインの産生促進作用に優れるだけでなく、IL-6、IL-10などのTh2型サイトカインに対する適度な産生促進作用も有しており、免疫賦活作用に優れる。このIL-12、IL-6及びIL-10産生促進作用は、LK-117株の摂取によりマクロファージと呼ばれる抗原提示細胞が刺激されて、IL-12などのサイトカインの産生が促進されるという機序に基づくと考えられる。IL-12は、T細胞をTh1細胞に誘導する。Th1細胞はTh1型のサイトカインを分泌し、これらはTh2細胞への分化を阻害する。これにより、マクロファージが分泌するサイトカインのTh1/Th2バランスが調節される。これらの機序により、LK-117株は免疫調節に重要な役割を果たしていると考えられる。
また、LK-117株は、実施例に示すような、小腸上皮様細胞とマクロファージ様細胞を共培養して実際の腸管状態を模したin vitroモデルにおいて、TNF-αの産生を促進させる。
LK-117株は小腸上皮様細胞であるcaco-2細胞を介してマクロファージ様細胞Raw264.7を刺激したと考えられ、腸管免疫系における免疫調節作用に優れると考えられる。
また、LK-117株の受動皮膚アナフィラキシー反応抑制作用は、LK-117株の接種により、肥満細胞からのヒスタミンなどの放出が抑制されていることによるものと考えられる。実施例の受動皮膚アナフィラキシー反応抑制試験では、マウスに直接IgE抗体を注射していることから、マウスの体内においては肥満細胞とIgE抗体が結合したものが多く存在している状態と想定される。この状態でアレルゲンであるピクリルクロライドを塗布しても、LK-117株を接種したマウスでは耳が腫れるというアレルギー症状が抑制されていることから、LK-117株の摂取により肥満細胞からのヒスタミンなどの放出が抑制されていると考えられる。換言すると、LK-117株の摂取により脱顆粒反応が抑制されていると考えられる。
また、生もとより分離される乳酸菌は、長年にわたる醸造に関わる微生物であって、安全性にも優れる。
このように、LK-117株は、有用な機能を兼ね備えており、プロバイオティクス効果の高い菌株と考えられる。
2.本発明組成物
本発明組成物は、本発明乳酸菌をその有効成分として含有することを必須の要件とする。該組成物は、通常の飲食品と同様に、適当な可食性担体や食品素材を利用して、飲食品形態に調製される。また、該組成物は、通常の医薬品と同様に、適当な製剤学的に許容される賦型剤乃至希釈剤等を利用して、医薬品形態に調製される。
本発明乳酸菌は、特に生菌として含まれる必要はない。通常の一般的加熱滅菌操作によって滅菌されたものとして含まれていてもよく、死菌として含まれていてもよい。
また、本発明乳酸菌は、例えば、乳酸菌の培養液、培養物の粗精製品乃至精製品、それらの凍結乾燥品などとして本発明組成物中に配合することも可能である。
上記培養液は、例えば代表的には、各菌株に適した培地、例えばMRS培地などを用いて、30℃で1〜2日間程度培養することにより得ることができる。
また菌体は上記培養後に、例えば培養液を12,000×G、4℃、10分間遠心分離して集菌することによって得ることができる。これらは常法に従い精製することができる。
本発明組成物中には、必要に応じて、更に、本発明微生物の維持、増殖などに適した栄養成分の適量を含有させることができる。該栄養成分の具体例としては、各微生物の培養のための培養培地に利用される成分、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトースなどの炭素源、例えば酵母エキス、ペプトンなどの窒素源、ビタミン類、ミネラル類、微量金属元素、アミノ酸、その他の栄養成分などの各成分を挙げることができる。ビタミン類としては、例えばビタミンB、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンKなどを例示できる。
微量金属元素としては、例えば亜鉛、セレンなどを例示できる。その他の栄養成分としては、例えば乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラクチュロース、ラクチトール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖などの各種オリゴ糖を例示できる。
本発明組成物中への乳酸菌の配合量は、一般には、本発明組成物100g中に、菌数が
1×109〜1×1011個前後となる量から適宜選択することができる。ここで、菌数とは生菌数である必要はない。但し、死菌数を含む場合は、殺菌前の生菌数として計数するものとする。
生菌数の測定は、菌培養用の寒天培地に希釈した試料を塗布して37℃下で静置培養を行い、生育したコロニー数を計測することにより算出する。この生菌数と濁度とは相関するため、予め生菌数と濁度との相関を求めておくと、生菌数の測定に代えて濁度を測定することによって上記生菌数を計数できる。上記乳酸菌の配合量は、上記量を目安として、調製される本発明組成物の形態、利用する乳酸菌の種類などに応じて適宜変更することができる。
組成物の調製、及びこれらの飲食品形態及び医薬品形態への調製は、常法に従うことができる。例えば、飲食品形態であれば、可食性担体等を用いて調製することができる。また、医薬品形態であれば、製剤学的に許容される賦形剤、希釈剤などの担体を用いて調製することができる。また、本発明乳酸菌の凍結乾燥菌体等を適当なコーティング剤などで加工して組成物に含有させてもよい。なお、飲食品の調製は、後記「飲食品」の項においても詳述する。また、医薬品の調製は、後記「医薬品」の項においても詳述する。
本発明組成物は、その摂取によって、該組成物中の乳酸菌が生体内で機能することにより、優れた免疫調節作用を奏する。
特に、本発明組成物は、(1)IL-12産生促進用、(2)IL-6産生促進用、(3)IL-10産生促進用、(4)TNF-α産生促進用、(5)受動皮膚アナフィラキシー反応抑制用、(6)IgA産生促進用、及び(7)アトピー性皮膚炎抑制用として有用である。
更に本発明組成物は、小腸上皮様細胞とマクロファージ様細胞の共培養系で有意にTNF-α産生量を増加させ、かつ、IgA量を増加させる本発明乳酸菌を有効成分とするものであり、腸管免疫系における免疫調節のための組成物として有用である。また本発明組成物は、受動皮膚アナフィラキシー反応抑制のための組成物として有用である。
このように、本発明の組成物は、有用な機能を兼ね備えており、プロバイオティクス効果の高い組成物と考えられる。
2-1)飲食品
本発明組成物を飲食品とする場合、代表的な形態としては、乳酸菌飲料、発酵乳、発酵飲料などの飲料を挙げることができる。
本明細書において、「発酵乳」および「乳酸菌飲料」なる用語は、旧厚生省「乳及び乳製品の成分などに関する省令」第二条37「はつ酵乳」および38「乳酸菌飲料」の定義に従うものとする。即ち、「発酵乳」とは、乳または乳製品を乳酸菌または酵母で発酵させた糊状または液状にしたものをいう。従って該発酵乳には飲料形態と共にヨーグルト形態が包含される。また「乳酸菌飲料」とは、乳または乳製品を乳酸菌または酵母で発酵させた糊状または液状にしたものを主原料としてこれを水に薄めた飲料をいう。
発酵飲料は、乳酸菌の栄養源を含む適当な発酵用原料物質、例えば、穀類、野菜類、果実類、豆乳又は大豆乳化液などの液中で、乳酸菌を培養して該原料物質を発酵させることによって調製することができる。
発酵用原料物質としての穀類には、米、麦、とうもろこし、粟、稗などが含まれる。
野菜類には、カボチャ、ニンジン、トマト、ピーマン、セロリ、ホウレンソウ、有色サツマイモ、コーン、ビート、ケール、パセリ、キャベツ、ブロッコリーなどが含まれる。
果実類にはリンゴ、モモ、バナナ、イチゴ、ブドウ、スイカ、オレンジ、ミカンなどが含まれる。
上記穀類、野菜類および果実類は、それらの切断物、破砕物、磨砕物、搾汁、酵素処理物、それらの希釈物及び濃縮物が含まれる。
切断物、破砕物および磨砕類は、例えば上記穀類、野菜類または果実類を洗浄後、必要に応じて熱湯に入れるなどのブランチング処理した後、クラッシャー、ミキサー、フードプロセッサー、パルパーフィッシャーなどを用いて切断、破砕、磨砕することによって得ることができる。搾汁は、例えばフィルタープレス、ジューサーミキサーなどを用いて調製することができる。また上記磨砕物を濾布などを用いて濾過することによっても搾汁を調製することができる。酵素処理物は、原料、又はその切断物、破砕物、磨砕物、搾汁にそのまま或いは加熱処理後、セルラーゼ、ペクチナーゼ、プロトペクチン分解酵素、液化酵素、糖化酵素などを作用させることによって調製できる。希釈物には水等で希釈したものが含まれる。濃縮物には、例えば凍結濃縮、減圧濃縮などの手段によって濃縮したものが含まれる。
発酵用原料物質の他の具体例である豆乳は、常法に従い、大豆原料から調製することができる。該豆乳には、例えば、脱皮大豆を水に浸漬後、コロイドミルなどの適当な粉砕機を用いて湿式粉砕処理後、常法に従いホモジナイズ処理した均質化液、水溶性大豆蛋白質を水中に溶解した溶解液なども包含される。
乳酸菌を利用した発酵は、予めスターターを用意し、これを発酵用原料物質に接種して発酵させる方法が好ましい。ここでスターターとしては、例えば代表的には予め100〜120 ℃、10〜20分間通常の殺菌処理を行った発酵用原料物質、酵母エキスを添加した10%脱脂粉乳などに、本発明乳酸菌を接種して培養したものを挙げることができる。このようにして得られるスターターは、通常、本発明乳酸菌を10億〜20億個/g培養物程度含んでいる。
スターターに用いる発酵用原料物質には、必要に応じて本発明乳酸菌の良好な生育のための発酵促進物質、例えばグルコース、澱粉、蔗糖、乳糖、デキストリン、ソルビトール、フラクトースなどの炭素源、酵母エキス、ペプトンなどの窒素源、ビタミン類、ミネラル類などを加えることができる。
乳酸菌の接種量は、一般には発酵用原料物質含有液1ml中に菌体が約 1×107個以上、好ましくは2×107個前後含まれるものとなる量から選ばれるのが適当である。
培養条件は、一般に、発酵温度15〜30℃程度、好ましくは20〜25℃程度、発酵時間20 〜24時間程度から選ばれる。
尚、上記の如くして得られる乳酸発酵物は、カード状形態、或いはヨーグルト様乃至プディング用形態を有している場合があり、このものはそのまま固形食品として摂取することもできる。該カード状形態の乳酸発酵物は、これを更に均質化することにより、所望の飲料形態とすることができる。この均質化は、一般的な乳化機(ホモジナイザー)を用いて実施することができる。
調製して得られた発酵飲料は、適当な容器に充填して最終製品とすることができる。
上記以外の飲食品形態の例としては、菌含有マイクロカプセル形態、固形食品形態、前記発酵乳および乳酸菌飲料以外の乳製品などを挙げることができる。固形食品形態としては、顆粒、粉末、錠剤、発泡製剤、ガム、グミ、プディングなどを挙げることができる。
本発明の組成物は、必要に応じて適当に希釈したり、pH調整のための有機酸類を添加したり、風味改善や機能改善のための調製を行ったりすることもできる。また、糖類、果汁、増粘剤、界面活性剤、香料、酵母、食物繊維などの飲食品の製造に用いられる各種の添加剤を適宜添加することもできる。
摂取量は、これを摂取する生体の年齢、性別、体重、疾患の程度などに応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、一般には乳酸菌量が約1×107〜1×109個/mlとなる範囲から選ばれるのがよい。
2-2)医薬品
本発明組成物を医薬品とする場合、有効成分とする本発明乳酸菌と共に、製剤学的に許容される適当な製剤担体を用いて、一般的な医薬品の形態に調製して用いることができる。該製剤担体としては、通常、この分野で使用されることの知られている充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤あるいは賦形剤を例示できる。これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
医薬品形態の具体例としては、例えば、水溶液、乳化液、顆粒、粉末、カプセル、錠剤などを挙げることができる。
上記医薬品の投与単位形態としては、各種の形態が選択できる。その代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられる。特に経口投与用の形態が好ましい。
錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、リン酸カリウムなどの賦形剤;水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどの崩壊剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤;白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤;第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤;グリセリン、デンプンなどの保湿剤;デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤;精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠あるいは二重錠、多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤;アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤;ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
更に、本発明医薬品中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの添加剤や他の薬効成分を含有させることもできる。
本発明医薬品に含有されるべき本発明乳酸菌の量は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されず広範囲より適宜選択される。
医薬品の投与方法は特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与される。
また、上記医薬品の投与量は、その用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択される。
3.免疫調節剤
本発明の免疫調節剤は、上記本発明乳酸菌を有効成分として含有することを必須の要件とする。
免疫調節剤の調製は、公知の方法に従って行うことができ、上記2-2)医薬品の項目に記載の方法と同様にして調製できる。また、本発明乳酸菌そのものをそのまま免疫調節剤として使用することもでき、本発明の効果を奏する範囲内で、各種担体や添加剤、他の薬効成分を配合して調製することもできる。
本発明の免疫調節剤は、各種製剤、医薬部外品、医薬品、化粧品、飼料等に免疫調節作用有効量添加配合して用いることができる。
免疫調節作用有効量は、対象物の種類やその中に含まれる成分の種類、目的によって異なり、上記効果を奏する限り、特に制限されるものではないが、一般には、対象物全体に、菌数が1×109〜1×1011個前後程度の範囲を例示することができる。なお、前記菌数は、生菌数である必要はない。但し、死菌数を含む場合、殺菌前の生菌数として計数する。
本発明の免疫調節剤は、上記本発明乳酸菌を有効成分とするものであり、(1)IL-12産生促進剤、(2)IL-6産生促進剤、(3)IL-10産生促進剤、(4)TNF-α産生促進剤、(5)受動皮膚アナフィラキシー反応抑制剤、(6)IgA産生促進剤、又は(7)アトピー性皮膚炎抑制剤として使用することができる。
本発明には、更に、乳酸菌及びそのプロバイオティクスへの応用に関する公知技術を必要に応じて付加し得るものである。
本発明は、優れた免疫調節作用を有する乳酸菌を提供する。特に腸管免疫系における免疫調節作用、受動皮膚アナフィラキシー反応抑制作用に優れた新しい乳酸菌を提供する。
更に本発明は、当該乳酸菌を有効成分とし、プロバイオティクスに有用な組成物、特に飲食品及び医薬品形態の組成物を提供する。
実施例1の実験系において求められた各乳酸菌及び対照群(control)を供した場合におけるIL-12産生量を測定した結果を示した図面である。 実施例2の実験系において求められたLK-117株を供した群及び対照群(control)におけるIL-6産生量を測定した結果を示した図面である。 実施例2の実験系において求められたLK-117株を供した群及び対照群(control)におけるIL-10産生量を測定した結果を示した図面である。 実施例3において求められたLK-117株を共培養系に供した場合及び対照群(control)におけるTNF-α産生量を測定した結果を示した図面である。 実施例4において求められたLK-117株を投与した群及び対照群における受動皮膚アナフィラキシー反応抑制作用を測定した結果を示した図面である。縦軸はPiCl塗布前後の耳厚の差を示す。 実施例5において求められたLK-117株を摂取した群及び対照群(control)における糞便中のIgA量を測定した結果を示した図面である。 実施例6の方法に従って求められたLK-117株を摂取した群及び対照群(control)における最終日の皮膚炎症状についてスコア化した結果を示した図面である。
以下、本発明を実施例や比較例等を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。
なお、本発明において、「%」は、特に異ならない限り、「w/v(%)」(重量/容量(%))を意味する。
実施例1:IL-12 p40の産生量に与える影響
生もとから分離した乳酸菌の中でも優れた作用を有する菌株を探索するため、マウス由来マクロファージ様細胞株J774.1を用いて培養上清中のIL-12産生量を測定及び評価した。
菌株は、菊正宗酒造株式会社の生もと製造場において、生もとから分離、保存した乳酸菌の中から、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)に属するLK-117株、LK-53株、LK-65株、LK-142株を選抜して使用した。
また、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)のタイプストレインとしてLT-13株(JCM-1557T、理化学研究所)を使用した。
(1-1)使用細胞株
マクロファージ様細胞株J774.1は、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の研究資源バンクより分譲されたものを使用した。
(1-2)使用培地
培地はRPMI 1640にFBS(牛胎児血清)を10%、ペニシリン100 unit/ml、ストレプトマイシン100 unit/mlとなるように加えて調製した。
血清は凍結状態から37℃で融解し、56℃で30分間加熱処理して非働化した。非働化により血清中の細胞増殖抑制成分として知られる補体成分を不活性化した。
(1-3)細胞計測方法
細胞懸濁液をトリパンブルー染色液と混合して生細胞のみ(未染色細胞)を、血球計算板(Burker-Turk型)を用いて細胞数を測定した。
(1-4)乳酸菌の調製
10 mlのMRS試験管培地に乳酸菌を植菌し、一晩30℃でインキュベートした。翌日12000 rpm、10分遠心分離し、集菌した。さらに蒸留水に懸濁した後12000 rpm、10分遠心分離した。この操作をもう一度繰り返し、上清を捨て、オートクレーブ殺菌した。その後、凍結乾燥を行い、乾燥菌体重量を求めた。重量を元に滅菌水に懸濁し、順次滅菌水で希釈した。
(1-5)細胞の播種
あらかじめマクロファージ様細胞株J774.1を培養しておいたディッシュから培地をアスピレートし、D-PBS(-)で2回細胞を洗浄した。次に0.02%EDTA-0.25%トリプシン溶液を3 ml加え、COインキュベーターで3〜5分インキュベートし、細胞を基材から剥がした。そして、培地を15 mlになるように加えトリプシン作用を停止させた後、1000 rpmで4分遠心分離した。細胞数を計測し、1.25×106cells/mlとなるよう細胞数を調整した。次に、細胞浮遊液を100 μlずつ96穴マイクロプレートに播種し、COインキュベーターで1.5時間インキュベートした。細胞がプレートに吸着したことを確認し、上記(1-4)で調製した乳酸菌を10μg/mlとなるように加え、COインキュベーターで18時間インキュベートした。また、コントロールとして、乳酸菌を加えない以外は同様とした試験を行った。
(1-6)IL-12 p40の測定
IL-12 p40 ELISA set (BD社製)を用いて測定を行った。サンプルの希釈が必要な場合はキット付属のassay diluentにより希釈した。
(1-7)測定結果
図1に、IL-12 p40の産生量を測定した結果を示す。
その結果、LT-117株を供した場合は、IL-12産生量がコントロールと比較して有意に高く、また、LTで示しているタイプストレインや他の生もと乳酸菌と比較しても高い値となることがわかった。
実施例2:IL-6, IL-10の産生量に与える影響
次にLK-117株のIL-6, IL-10の産生量に与える影響について調べた。
試験方法は、前記(1-6)において、IL-12 p40 ELISA set (BD社製)に代えて、IL-6 ELISA set (BD社製)及びIL-10 ELISA set (BD社製)を用いる以外は、実施例1と同様とした。
IL-6の産生量に対する測定結果を図2に示す。また、IL-10の産生量に対する測定結果を図3に示す。
図2及び図3に示されるように、LK-117株は、いずれのサイトカインも有意に産生を促進していることがわかった。生体内においてはIL-12などのTh1型のサイトカインの産生のみ促進されると、逆にTh1側に傾いてしまうことが考えられる。そういった意味でTh1型のみでなく、IL-6, IL-10などのTh2型のサイトカインの産生も促進するLK-117株は免疫調節作用に優れる菌株であると考えられた。
実施例3:腸管免疫系に与える影響
小腸上皮様細胞であるCaco-2とマクロファージ様細胞RAW264.7を共培養した、実際の腸管状態を模した in vitroモデルにより、LK-117株の腸管免疫系に対する影響をRAW264.7から産生するTNF-α量を指標として調べた。
(3-1)試薬
RPMI1640培地、DMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium, low glucose)、アクチノマイシンD、E. coli O127由来リポ多糖(LPS)、TNF-α(マウス、リコンビナント)は、和光純薬工業株式会社(大阪)から購入した。MEM非必須アミノ酸(NEAA 100X SOLUTION)、トリプシンはGIBCO BRL(Grand Island, NY)から購入した。DMEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle Medium, high glucose)は、SIGMA ALDRICH Japan(東京)から購入した。 MEM培地(Eagle’s Minimum Essential Medium)は、日水製薬株式会社(東京)から購入した。ウシ胎児血清(FBS)はBiological Industries (Caco-2細胞およびRAW264.7細胞用血清;Beit, ISRAEL)、GIBCO BRL(L929細胞用血清;Grand Island, NY)から購入した。
(3-2)細胞培養
本実験に用いた細胞は、L929細胞(マウス由来繊維芽細胞)、Caco-2細胞(ヒト由来腸上皮様細胞)、RAW264.7細胞(マウス由来マクロファージ様細胞)の3種類である。L929細胞は、75cm2プラスチックフラスコ(BD Falcon, NJ)中でMEM培地(10% FBS、2 mM L-グルタミン、100 U/mL ペニシリン、70 U/mL ストレプトマイシン)を用いて37℃、5% CO2環境下にて培養した。RAW264.7細胞は、75cm2プラスチックフラスコ中でDMEM培地(low glucose;10% FBS、100 U/mL ペニシリン、70 U/mL ストレプトマイシン)を用いて37℃、5%CO2環境下にて培養した。Caco-2細胞は、75cm2プラスチックフラスコ中でDMEM培地(high glucose;10%FBS、100U/mL ペニシリン、70U/mL ストレプトマイシン、5mL NEAA)を用いて37℃、5%CO2環境下にて培養した。また、Caco-2細胞の分化誘導は、同じDMEM培地、および12ウェルトランズウェル(0.33 cm2, 0.4 μm pore size、Corning Costar Corp.、MA)を用いて実施した。フラスコ内のCaco-2細胞は、接着状態でサブコンフルエントまで増殖したことを確認し、PBS洗浄後、3 mLトリプシン(2.5 mg/mL)を添加することより剥がした。さらに遠心分離(1000 rpm、3 min)によりトリプシン除去した後、DMEM培地を用いて6.5×105 cells/mLの細胞数に調製した。その後、トランズウェル粘膜側に1.3×105 cells/200μL/wellで播種し、基底膜側に800 μL/wellのDMEM培地を添加して37℃、5% CO2環境下にて約3週間培養することで分化誘導を行った。
(3-3)乳酸菌の調製
前記(1-4)と同様にして乳酸菌を調製した後、乳酸菌を10 μg/mLの濃度(1×107 cells/mL)になるように調整して、ストック溶液とした。その後、2倍濃度になるように作成したRPMI1640培地とオートクレーブ滅菌済超純水およびストック溶液を5:4:1の割合で混合し、サンプル濃度が1 μg/mlになるように調製した。
(3-4)共培養系の構築
共培養系は、トランズウェルにて分化誘導したCaco-2細胞、およびRAW264.7細胞を用いて実施した。先ず、フラスコ内のRAW264.7細胞は、接着状態でサブコンフルエントまで増殖したことを確認し、PBS洗浄後に3 mLのトリプシンを添加することにより剥がした。さらに遠心分離(1000 rpm、3 min)によりトリプシンを除去したのち、DMEM培地中に1.0×105 cells/mLの細胞数に調製した。その後、24ウェルプレートに0.5×105 cells/500μL/wellの細胞数を播種し、接着のため24時間、37℃、5% CO2環境下にて培養した。次に、分化誘導したCaco-2細胞のトランズウェルインサートを、RAW264.7細胞を播種した24ウェルプレートに移動させることにより共培養を開始した。培地はすべて吸引除去し、RPMI1640培地を粘膜側に200 μL、基底膜側に800 μL添加し24時間、37℃、5% CO2環境下にて培養した。24時間の培養終了後に一度培地交換を行い、さらに12時間培養後(計36時間の培養)、粘膜側の培地のみを吸引除去し、乳酸菌を添加させたRPMI1640培地200 μL/wellと交換し培養した。3時間後、TNF-α濃度測定の為、基底膜側の培地を回収し共培養サンプルとした。なお、共培養における各処理区は3重検定にて実施した。また、コントロールとして、乳酸菌を加えない以外は同様とした試験を行った。
(3-5)Killing assay
培地中のTNF-α濃度測定は、TNF-α濃度依存的に細胞死を起こすL929細胞を用いたKilling assayにて実施した。先ず、フラスコ内のL929細胞は、接着状態でサブコンフルエントまで増殖したことを確認し、PBS洗浄後、3 mLトリプシンを添加することより剥がした。さらに遠心分離(1000 rpm、3 min)によりトリプシン除去した後、MEM培地を用いて2.3×105 cells/mLの細胞数に調製した。その後、96ウェルマイクロプレートに2.3×104 cells/100μL/wellで播種し、接着の為、24時間37℃、5% CO2環境下にて培養した。次に、TNF-α検量線溶液は、RPMI1640培地を用いて10, 20, 50, 100, 200, 500, 1000 pg/mLの濃度に調製した。細胞増殖を停止させるアクチノマイシンD溶液は、RPMI1640培地を用いて4 μg/ml(検量線用)および2.66 μg/mL(共培養サンプル用)の濃度に調製した。96ウェルプレートに播種したL929細胞のコンフルエントの確認、TNF-α検量線およびアクチノマイシンD溶液を作成した後、各ウェル中の培地をすべて吸引除去した。その後、TNF-α検量線処理区には、各TNF-α検量線溶液50 μL/well、およびアクチノマイシンD溶液(4 μg/ml)50 μL/wellを添加した。共培養サンプル処理区には、各共培養サンプル25 μL/well、およびアクチノマイシンD溶液(2.66 μg/mL)75 μL/wellを添加した。各溶液を添加した後、20時間、37℃、5%CO2環境下にて培養した。20時間培養後、各ウェルの生細胞からTNF-α濃度を測定するため、クリスタルバイオレットを用いた染色を実施した。0.1% クリスタルバイオレット溶液(10% エタノール、12% ホルムアルデヒド)を100 μL/well添加し15分間、暗所、室温に静止した。その後、プレートを水で洗浄し、エタノールとPBSを1:1の割合で混合した溶解液を100 μL/wellで添加した。吸光度はマイクロプレートリーダー(MTP-120 MICROPLATEREADER, CORONA ELECTRIC)にて主波長570 nm/副波長630 nmで測定した。得られた吸光度からTNF-α標準溶液を用いて検量線作成し、共培養サンプルのTNF-α濃度を算出した。
TNF-α産生量の測定結果を図4に示す。
その結果、LK-117株を供した場合は、コントロールと比較して有意にTh1型サイトカインであるTNF-αの産生が促進された。 LK-117株はcaco-2細胞を介してRaw264.7を刺激したと考えられ、腸管免疫系における免疫調節作用の高い菌株であることが示唆された。
実施例4:受動皮膚アナフィラキシー反応に対する抑制作用
LK-117株摂取による受動皮膚アナフィラキシー反応に対する抑制作用を以下の方法で評価した。
BALB/cマウス(雌)5週齢に、乳酸菌の乾燥菌体2 mgを懸濁させたPBSを4日間強制経口投与し、5日目にマウスの尾静脈から抗TNP IgEを注射し、マウスの耳にピクリルクロライド(PiCl)を塗布した。2時間後に耳厚を測定し、PiCl塗布前後の耳厚の差により耳の腫れ具合を評価した。
乾燥菌体は、前記(1-4)と同様に調製したものを用いた。また、乾燥菌体の投与方法は、一群にマウス5匹ずつとし、乾燥菌体重量でそれぞれ2 mgを200 μlのPBSに懸濁し、胃ゾンデによる強制経口投与により4日間与え続けることにより行った。
尾静脈注射は、抗TNP(トリニトロフェノール=ピクリルクロライド) IgEをマウス一匹あたり2μg/100μl-0.1%BSA-PBSの濃度で尾静脈から注射することで行った。
また、PiCl(ピクリルクロライド)は、PiClが0.8%となるようにアセトン:オリーブオ
イル1:1溶液に溶解させた液を用事調製して用いた。
コントロールとして、乾燥菌体を含めずにPBSのみを投与すること以外は同様とした試験を行った。
評価結果を図5に示す。
その結果、LK-117株を供した群は、PCA反応による耳の腫れが顕著に抑制されており、LK-117株は受動皮膚アナフィラキシー反応抑制作用に優れる菌株であることが示唆された。
実施例5:LK-117株摂取による糞便中のIgA量増加
LK-117株摂取によるIgA量増加に対する作用を以下の方法で評価した。
BALB/cマウス(雄)6週齢に35日間1%LK-117株乾燥菌体を含んだ飼料を食べさせた時の糞便を採取し、その懸濁液上清に含まれるIgA抗体を測定した。マウスは、Balb/cマウス(雄)6週齢を用い、一群5匹とした。飼料は、コントロール群にはCRF-1(オリエンタル酵母社製)を与え、サンプル群はLK-117乾燥菌体を1%含んだCRF-1を与えた。乾燥菌体は、前記(1-4)と同様にして調製した。前記飼料を与え、35日間飼育したマウスから糞便をエッペンチューブに採取した。糞便を凍結乾燥させた後に別のエッペンチューブに糞便を移し、その重量を測定した。そして、重量の40倍量のPBSを加え、懸濁した。さらに、15 k rpmで10 min遠心した上清をMOUSE IgA ELISA QUANTITATION KIT(Bethel Laboratories, ISC)により、IgA産生量を測定した。
結果を図6に示す。
その結果、LK-117株1%摂取群で有意にIgA量が増加しており、LK-117株が腸管における細菌などに対する感染予防作用を有することが示唆された。
実施例6:LK-117株摂取によるアトピー性皮膚炎抑制作用
LK-117株摂取による乳酸菌のアトピー性皮膚炎抑制作用を以下の方法で評価した。
NC/Nga Tnd(NC)マウス(日本チャールス・リバー株式会社)はピクリルクロライド(PiCl)を反復塗布することによってアトピー性皮膚炎症状によく似た皮膚炎が発症することが知られていることから、LK-117株の摂取により、皮膚炎症状が抑制されるかを調べた。
NC/Ngaマウス雄6週齢に51日間に渡りPiCl塗布を週一回繰り返し行い、サンプル群には LK-117乾燥菌体を1%含んだCRF-1(オリエンタル酵母社製)を与え、コントロール群にはCRF-1を与えた。(6-4)に示す評価方法により皮膚炎スコアとして評価した。
(6-1)試薬
感作用PiCl溶液の調製は褐色ガラス製の容器に100mg (10匹分相当) のPiClを秤量し、必要本数準備した。投与直前に、Acetoneを400μL加え溶解した後、Ethanolを1600μL加えて5w/v%濃度とした。誘発用PiCl溶液の調製は褐色ガラス製の容器に必要量のPiClを秤量後、オリーブオイルを加えて0.8w/v%濃度となるように溶解した。
(6-2)投与方法
一群10匹とし、混餌投与により給餌器を用いて自由に摂取させた。投与開始日を投与1日とし、51日間投与した。
(6-3)感作
8週齢に達したマウスを感作に用いた。すなわち、感作当日にジエチルエーテル麻酔下で電気バリカンを用いてマウス腹部の毛刈りを行い、毛刈りした腹部および足蹠に感作用 PiCl溶液 (150μL/匹) をプラスチック製の棒を用いて開放塗布した。
(6-4)誘発
毛刈りおよび誘発塗布はジエチルエーテル麻酔下で行った。感作後5日後から誘発を開始した。以降、週1回、5週間誘発を繰り返した。すなわち、バリカンを用いてマウス背部の毛刈りを行い、毛刈りした背部および左右の耳 (内外両側) に誘発用PiCl溶液 (150μL/匹) をプラスチック製の棒を用いて開放塗布した。なお、誘発2回目以降の毛刈りについては、育毛状態に応じて行った。
(6-5)皮膚炎スコアの評価
飼料投与後1、8、15、22、25、29、32、36、39、43および投与最終日 (投与開始日を1日とする) に、全例について皮膚の状態を観察した。
ヒトのアトピー性皮膚炎の臨床症状の評価基準に基づき、下記(1)〜(5)の評価項目について評点化し、その合計を皮膚炎スコアとして算出して評価した。
<評価項目>
(1)掻痒症:2分間の行動を観察し、誘発部位を掻く行動を観察した。
0:無症状:誘発部位に対する掻痒行動が見られない状態
1:軽度:連続的な掻痒行動が2回以上で、累積で約1分を超えない行動
2:中等度:累積で約1分を超え、約1分半を超えない行動
3:重度:累積で約1分半を超えるか、2分間掻き続ける行動
(2)発赤・出血:誘発部位の発赤および出血症状を観察
0:無症状:誘発部位に発赤および出血症状が認められない状態
1:軽度:誘発部位に局所的に認められるか、連続的な擦傷に伴う出血が認められない状態
2:中等度:誘発部位に散在的に認められるか、局所的に連続的な擦傷に伴う発赤および出血症状が認められる状態
3:重度:誘発部位に全体的に認められるか、連続的な擦傷が広範囲に広がり、発赤および出血症状が認められる状態
(3)浮腫:誘発部位である耳介の浮腫を定性的に観察
0:無症状:左右の耳介に厚みが認められない状態
1:軽度:左右のどちらか1方にわずかに厚みが認められる状態
2:中等度:いずれの耳介にも明らかな厚み、張りが認められる状態
3:重度:いずれの耳介に、明らかな厚み、張りおよび反りが認められ、指で触れたときに硬さが感じられる状態
(4)擦傷・組織欠損:誘発部位の擦傷及び組織欠損症状を観察
0:無症状:誘発部位に擦傷および組織欠損症状が認められない状態
1:軽度:誘発部位に局所的に認められ、連続的でない擦傷が認められ、組織欠損は認められない状態
2:中等度:誘発部位に散在的に認められるか、小規模に連続的な擦傷が認められ、組織欠損は認められない状態
3:重度:誘発部位に全体的に認められるか、連続的な擦傷が広範囲に広がり、組織欠損が認められる状態
(5)痂皮形成・乾燥:誘発部位の痂皮形成および乾燥症状を観察
0:無症状:誘発部位の痂皮形成および乾燥症状なし
1:軽度:誘発部位に局所的に認められ、誘発部位の皮膚がわずかに白色化、角質の剥離がわずかに認められる状態
2:中等度:誘発部位に散在的に認められるか、明らかに角質の剥離が認められる状態
3:重度:誘発部位に全体的に認められるか、明らかに角質の剥離が認められる状態
投与最終日における皮膚炎スコアを図7に示す。
その結果LK-117株摂取群は皮膚炎スコアが有意に抑制され、LK-117株がアトピー性皮膚炎抑制作用を有することが示唆された。

Claims (5)

  1. 免疫調節作用を有する、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)LK-117株(FERM AP-21756)。
  2. 請求項1に記載の乳酸菌を有効成分とする免疫調節用組成物。
  3. 飲食品である請求項2に記載の組成物。
  4. 医薬品である請求項2に記載の組成物。
  5. 請求項1に記載の乳酸菌を有効成分とする免疫調節剤。
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