JP2010156713A - 標識試薬と標識された標的、標的標識法、および核酸の測定と分析におけるこれらの使用のための他の方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、標識試薬、標識された標的、および標識試薬を調製するための方法を提供する。
【解決手段】標識試薬は、シアニン色素、キサンテン色素、ポルフィリン色素、クマリン色素、または複合色素の形を取ることができる。これらの標識試薬は、核酸やタンパク質を含むプローブまたは標的を標識物するのに有用である。これらの試薬は、タンパク質および核酸プローブに基づく測定法に有益に応用することができる。これらはまた、リアルタイム検出法に応用することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、標識試薬、標的標識法、標識された標的、標識試薬の調製法などの分野に関する。本発明はまた、核酸と酵素活性の測定と分析のための他の方法におけるそのような組成物と方法の使用に関する。
本発明に関する分野の技術の現状をより詳細に説明するために、本出願で引用または特定される特許、特許出願、特許刊行物、科学論文などは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
(関連出願の相互参照)
本出願は、標題「リアルタイム核酸検出法と組成物」でラッバニ(Rabbani)らにより2002年3月12日に、同時出願された米国特許出願第10/096,076号に関する。前記の第10/096,076号の内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
(発明の背景)
構成のために、背景は以下の7つの部分に分割されている。
(1)標識試薬の反応性基
(2)標識物を標的に連結するためのリンカーアーム
(3)標識物としてのポルフィリン蛍光色素
(4)蛍光性の改変
(5)蛍光性インターカレーター
(6)化学発光
(6)蛍光によるリアルタイム検出
(7)アナライト中のプライマー結合配列
(1)標識試薬の反応性基
生化学と分子生物学における非放射性標識物の使用は、近年指数的に増加した。非放射性標識物として使用された種々の化合物のうちで、蛍光又は発光シグナルを生成する芳香族色素が特に有用である。このような化合物の重要な例には、フルオレセイン、ローダミン、クマリンおよびシアニン色素(例えば、Cy3とCy5)がある。複合色素もまた、2つの異なる色素を融合して合成されている(リー(Lee)ら、(1992) Nucleic Acids Res. 20:2471-2488;リー(Lee)ら、米国特許第5,945,526号、およびワッゴナー(Waggoner)ら、米国特許第6,008,373号、これらのすべては、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
非放射性標識法はまず、シグナル生成基をタンパク質に結合させるために開発された。これは、標識物がタンパク質上に天然に存在するアミン、チオール、およびヒドロキシル基と反応できるように、化学基で修飾することにより行われた。この目的に使用された反応性基の例には、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルのような活性化エステル、イソチオシアネート、および他の化合物がある。従って、ヌクレオチドや核酸を非放射性手段で標識することが必要になった時、ヌクレオチドやポリヌクレオチドを、官能基がタンパク質と類似するような形に変換する方法が開発された。例えば、米国特許第4,711,955号(参照することにより本明細書に組み込まれる)は、プリンの8位、ピリミジンの5位、およびデアザプリンの7位への、アミンの添加を開示した。これで、タンパク質のアミン基に標識物を添加できる同じ方法を、これらの修飾ヌクレオチドのために応用できるであろう。
蛍光標識物として使用される化合物の中では、シアニンに基づく色素が、大きい吸光係数と狭い発光バンドを有するため広く使用されるようになった。さらに、これらの化合物が光を吸収し蛍光を発する特定の波長を改変できるように、その構造を修飾することができる。シアニン色素は、一連の結合体形成した2重結合により結合した2つのインドレニンに基づく環を含む一般的構造を有する。この色素は、2つの環構造を連結する中央の2重結合の数(n)により分類される;n=1の時は、モノカルボシアニンまたはトリメチンカルボシアニン;n=2の時は、ジカルボシアニンまたはペンタメチンカルボシアニン;そしてn=3の時は、トリカルボシアニンまたはヘプタメチンカルボシアニン。シアニン色素のスペクトル特性は、特定の経験則に従うことが観察されている。例えば、環の間の各追加の結合体形成2重結合は、吸収極大と発光極大を約100nm上昇させるであろう。すなわち、n=1を有する化合物の吸収極大が約550nmである時、n=2またはn=3を有する同等の化合物は、それぞれ650nmと750nmの吸収極大を有するであろう。分子の横に芳香族基を追加すると、15nm長い波長に吸収を移動させることができる。インドレニン環を含む基は、吸収と発光特性に寄与する。基準点としてジエム(gem)−ジメチル基を用いて得られる値を使用すると、ジエム−ジメチル基の代わりに環中に代用された酸素は、吸収と発光極大を約50nm低下させる。これに対してイオウの代用は、吸収と発光極大を約25nm上昇させる。アルキル、アルキル−スルホン酸およびアルキル−カルボン酸のような芳香族環上のR基は、シアニン色素の吸収と発光極大にほとんど影響を与えない(米国特許第6,110,630号)。
官能基を含有するアームを用いて合成されたシアニン色素は、タンパク質上のスルフヒドリル基と反応するヨードアセトアミド、イソチオシアネート、およびスクシンイミジルエステルを用いて調製されている(エルンスト(Ernst)ら、(1980), Cytometry 10, 3-10;ムジュンダー(Mujumdar)ら、(1989), Cytometry 10, 11-19;サウスウィック(Southwick)ら、(1990), Cytometry 11, 4187-430)。インドレニン環のフェニル部分上にスルホネート基を含有する新しい一連の修飾色素が調製され(ムジュンダー(Mujumdar)ら、(1989), Bioconjugate Chemistry 4, 105-111、参照することにより本明細書に組み込まれる)、これは、色素の水溶性を上昇させた。これらの色素を炭酸ジスクシンイミジルで処理して活性化してスクシンイミジルエステルを形成させ、次にこれを使用して、アミン基で置換してタンパク質を標識した。以来、他の活性化基がシアニン色素上に置かれている。米国特許第5,627,027号と米国特許第5,268,486号(参照することにより本明細書に組み込まれる)では、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノもしくはジハロゲン置換ピリジン、モノもしくはジハロゲン置換ジアジン、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、グリオキザル基およびアルデヒド基、および他の基を含むシアニン色素が調製された(これらはすべては、標的分子上のアミン、チオール、またはヒドロキシル基と共有結合を形成することができる)。
米国特許第6,110,630号(参照することにより本明細書に組み込まれる)では、シアニン色素は、N−ヒドロキシナフタリミドから得られる一連の反応性基を用いて調製された。これらの基には、ヒドロキシスクシンイミド、パラ−ニトロフェノール、N−ヒドロキシフタリミド、およびN−ヒドロキシナフタリミドがあり、これらはすべて、一級アミンで修飾されたヌクレオチドと反応することができる。前記と同じ化学反応はまた、米国特許第6,114,350号(参照することにより本明細書に組み込まれる)で記載されているが、成分は逆転している。この開示では、シアニン色素は、アミン、スルフヒドリルまたはヒドロキシル基で修飾され、標的分子は、適当な反応性基を含むように修飾された。
反応性官能基を含むアームを含有するシアニン色素は、一般的スキームにより調製されており、ここでは、2つのインドレニン構造と介在する不飽和鎖を含む全複素環化合物をまず合成し、次に、色素をタンパク質または核酸に連結するのに必要な末端反応性基または他の官能基を、全ダイマー色素単位の完了後、付加した。
(2)標的に標識物を連結するためのリンカーアーム
標識ヌクレオチドは、ターミナルトランスフェラーゼ標識、ニック(nick)トランスレーション法、ランダムプライミング、逆転写、RNA転写、およびプライマー伸長を含む多くの酵素法で、DNAとRNAのプローブの合成のために使用されている。これらのヌクレオチドの標識ホスホラミダイト(phosphoramidite)物も、標識オリゴヌクレオチドを調製するために自動合成機と共に用いられている。生じる標識プローブは、ノーザンブロッティング、サザンブロッティング、インサイチュー(in situ)ハイブリダイゼーション、RNAse保護分析、DNA配列決定反応、DNAおよびRNAマイクロアレイ分析、および染色体染色のような標準的方法で広く使用される。
核酸の化学的修飾について膨大な文献があり、これらを利用して、シグナル残基が、核酸に直接あるいは間接的に付加される。この技術の主要な懸念は、核酸中のどの部位(すなわち、糖、塩基またはリン酸類似体)が結合に使用され、これらの部位が破壊的または非破壊的であるか(例えば、米国特許第4,711,955号および米国特許第5,241,060号を参照;いずれも参照することにより本明細書に組み込まれる)、核酸と反応性基またはシグナル伝達残基とスペーサーの末端の反応性基(例えば、シグナル伝達残基への結合を可能にするOH、NH、SHまたは他の基)との距離を提供するための、反応性基またはシグナル伝達残基への、通常、単一の芳香族基(米国特許第4,952,685号および5,013,831号、いずれも参照することにより本明細書に組み込まれる)または炭素/炭素脂肪族鎖からなるスペーサー基の連結を可能にする結合部位の化学、およびシグナル伝達残基の性質に関する。
前記はすべて、修飾ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの合成に関する種々の態様の説明であるが、これらはまた、生じるヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの性質に関して重要な因子であることが証明されている。実際、現状で記載されている修飾ヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドと比較して欠点を有するという多くの証拠がある。
例えば、これらの因子は、ポリメラーゼにより取り込まれるからの修飾ヌクレオチドの能力に大きな影響を有する。この結果は、特定のヌクレオチドの唯一の供給源として修飾塩基を使用すると、非修飾ヌクレオチドを用いる反応と比較して、核酸合成の量の喪失があるかも知れないということである。その結果、修飾ヌクレオチドは通常、あるヌクレオチドの修飾および非修飾物の混合物の一部として使用される。これは、修飾ヌクレオチドの無い反応に匹敵するレベルまで、合成を回復するが、ヌクレオチドの修飾物の使用に対して、しばしば偏見が見られる。そのため、修飾/非修飾ヌクレオチドの最終比率は、試薬の比率よりはるかに低いかも知れない。次にユーザーは、わずかに標識された核酸を使用するかまたは収率の低い核酸を使用する選択肢がある。塩基に結合したリンカーアームのみを含む同等の修飾ヌクレオチド(アリルアミンdUTP)が使用される時、取り込みの困難さはめったに見られない。そのため、前記の問題は、合成が起きている標識物とポリメラーゼまたは活性部位との相互作用による可能性がある。
ポリメラーゼの使用における困難さは、オリゴヌクレオチド合成機を使用することにより避けることができ、ここで、ヌクレオチドのホスホラミダイト誘導体のきちんとした化学結合を使用して、目的の標識核酸を産生することができる。しかし、修飾ヌクレオチド上のシグナル物質の存在は、この系では問題となり得る。例えば修飾ヌクレオチドのホスホラミダイトは、鎖が伸長されるとともに、結合効率の喪失が起きることがある。これ自体が問題かも知れないが、修飾ヌクレオチドの頻回の特に連続的な使用により、生成物の劇的な累積的喪失が起きることがある。さらに、化学合成自体がいつも適切な答えではない。標識核酸が、合成機に実用的な長さ以上に長いことが必要な場合がある。また合成法の本質的な部分は、核酸の分かれた配列に必須である。多くの目的のために、核酸のプールまたはライブラリーは、合成アプローチのために、非現実的に多くの数の異なる分子種が必要である。
標識オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの収率を上昇させる方法の一例は、ポリメラーゼまたはオリゴヌクレオチド合成機による合成で、アリルアミン修飾類似体のような非妨害基を使用することである。次に、化学反応性アリルアミン残基を介して、所望の基を合成後に結合させることにより、標識が行われる。しかしこの場合、取り込みまたは結合効率は回復されるかも知れないが、アルリアミンへの所望の基の結合効率の問題があるかも知れない。例えば、核酸中のアリルアミン残基への標識物の結合は、1本鎖標的と比較して2本鎖DNAでは劇的に低い。収率の問題の可能性以外に、これが塩基にどのように結合するかにより、修飾官能基が影響を受けることがある。例えばハプテンが塩基に結合するなら、ハプテンを塩基から分離するアームの性質が、結合パートナー候補の近づき安さに影響を与えるかも知れない。シグナル生成残基が塩基を介して結合する時、アームの性質はまた、シグナル生成残基と、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドとの相互作用に影響を与えるかも知れない。
これらの有害な相互作用を制限しようとする試みが、いくつかの方法で行われている。例えば、塩基へのアームの結合は、2重結合アルケン基(米国特許第4,711,955号)または3重結合アルキン基(米国特許第5,047,519号)を介して行われ、こうしてヌクレオチドまたはポリヌクレオチドから離れる方向へのリンカーの指向性が誘導される。しかし、このアプローチでは、その剛性が、塩基へのリンカーの結合の近傍に限定されるため、有用性が限定される。さらに、スペーサー基を延長することによりヌクレオチドまたはポリヌクレオチドからの活性基またはシグナル基の分離を、アームにさせるようにして、相互作用を制限する試みが行われている。例えば、ある市販の修飾ヌクレオチドは、シグナル生成に使用される塩基とビオチン残基の間で、7つの炭素の脂肪族鎖(カタログ番号42724、エンゾーバイオケム(ENZO Biochem, Inc.)、ニューヨーク、ニューヨーク州)を有した。この生成物は、11個または16個の炭素長のリンカーを代用することにより、さらに改善された(カタログ番号42722と42723、これらも、エンゾーバイオケム(ENZO Biochem, Inc.)、ニューヨーク、ニューヨーク州から入手できる)。また、異なる長さのリンカーアームとシアニン色素標識ヌクレオチドを使用して、比較が行われた(ズー(Zhu)ら、1994, Nucl Acid Res. 22:3418-3422)。長さを10から17へ、および17から24へ延長すると、効率の直接の改善が認められた。しかし、最も長いリンカーでさえ、効率の点で、蛍光マーカーの存在の補償は不完全であった。これは、このスペーサーセグメントに使用される脂肪族炭素鎖の可撓性により、コンフォメーション中にレポーター基がめったに見られず、ここで、これらは、ヌクレオチド自体からは完全に遠くに延長されている、という事実の結果かも知れない。すなわち、このアプローチは、リンカーの長さを変化させたが、これはスペーサーの可撓性の変化ではなかった。
この問題を回避するために、カーン(Khan)らの米国特許第5,948,648号は、マーカーをヌクレオチドに連結する複数のアルキン基または芳香族基の使用を開示した。しかしこの方法は、リンカーとマーカーとの相互作用を誘導し得るリンカー中で、極性の非常に低い基を使用しており、これが、結合効率を低下させることにより、またはこれらの基を含む標識物化合物による非特異結合を上昇させることにより、その有効性を制限しているかも知れない。さらに、これらの基は、標識化合物または標識化合物を作成するのに使用される種々の中間体の水溶性を低下させるかも知れない。
前記特徴を取り込んだ活性化または標識ヌクレオチドの使用において継続している困難さは、先行技術の方法において、塩基、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびアームの末端の残基との間に、有害な相互作用が発生するを証明している。前記は、核酸の結合に関して説明されたが、これらの問題は、マーカーまたは標識物を結合することが有用である他の基でも同様である。
(3)標識物としてのポルフィリン蛍光色素
蛍光標識されたプローブを使用する測定法は、ある特定の波長での照射と別の波長での発光の検出(ストークスシフト(the Stokes shift)に依存する。そのような測定法に適した種々の吸収/発光スペクトル特性を有する種々の化合物について、広範な文献がある。比較発現分析のために蛍光化合物が使用される時、各標識物について同時にシグナル検出を行う能力は、標識物間の差がどれだけ大きいかに依存する。すなわち、Cy3やCy5のような蛍光物質は、それぞれ570と667に発光ピークを有するため、発現分析に一般的に使用されている。この分析のために有効に使用されていない1つのクラスの化合物は、ポルフィリンである。
光エネルギーを吸収しそれを効率的に放出するポルフィリンの能力は、多くの他の系で使用されている。例えば、光誘導性の核酸の切断は、溶液中で遊離しているかまたは配列特異的オリゴヌクレオチドに結合した多くの金属ポルフィリンにより行われる(ドアン(Doan)ら、(1986) Biochemistry 26:6736-6739)。この系の1つの応用は、金属ポルフィリンの吸収後の、光誘導性DNA傷害による癌細胞のターゲティングと死滅である(モアン(Moan)ら、(1986) Photochemistry and Photobiology 43:681-690)。金属ポルフィリンの高エネルギー能の別の例は、非酵素的化学発光について触媒性物質として使用されるその使用で見られる(フォーギオン(Forgione)ら、米国特許第4,375,972号)。さらに、ポルフィリンが標識試薬として使用されている場合があり、例えばロエラント(Roelant)ら、米国特許第6,001,573号とヘンドリックス(Hendrix)、米国特許第5,464,741号(参照することにより本明細書に組み込まれる)があり、ここで、Pdオクタエチルポルフィリンは、イソチオシアネートに変換され、特に免疫測定法で使用するための標識試薬として使用された。しかしこれらの場合に、もっぱら金属ポルフィリンが使用された。
金属ポルフィリンの使用の欠点は、この化合物の破壊性能力は、アナライトまたはプローブの核酸鎖の完全性の維持を必要とするアレイ分析または他の測定系で使用される時、逆効果であることである。従って、その核酸破壊性を排除しながら、蛍光および化学発光性のためにポルフィリンを利用できるなら、非常に有利であろう。
(4)蛍光性の変化
先行技術において、フェニルアセチレン基のアントラセンへの付加が、発光極大を72nm上昇させることが証明されている(モールディング(Maulding)とロバーツ(Roberts)、1968 J Org Chem)。さらに、ストークスシフト(吸収極大と発光極大の差)もまた、アントラセン色素へのフェニルアセチレン基の付加により上昇した。具体的には、2つのフェニルアセチレン基の付加後に、6nmの差が31nmに上昇した。フェニルアセチレン基をナフタセンに付加すると、吸収極大と発光極大の差は、7nmから32nmに上昇した。さらに、アントラセンとナフタセンの量子収率は、これらにフェニルアセチレン基を付加することにより、有意に上昇した。
これらの置換基の付加に使用される化学と反応は、ケトンまたはアルデヒド基を必要とするため、この作用の応用はこれらの化合物に限定される。また、不飽和基を色素に付加すると、水溶液中の溶解度を低下させる可能性があるという好ましくない作用がある。さらに、モールディング(Maulding)とロバーツ(Roberts)が記載した修飾されたアントラセン色素は、結合に使用可能な反応性基が欠如していた。
(5)蛍光性インターカレーター(fluorescent intercalators)
挿入結合性色素(intercalating dyes)は、電気泳動ゲル中のDNAの検出、インサイチューハイブリダイゼーション、フローサイトメトリー、および増幅のリアルタイム検出を含む多くの方法で、DNAの検出と視覚化のために使用されている。一般的に使用されてきた長い歴史のある挿入結合性色素は、臭化エチジウムである。臭化エチジウムは、核酸に対する高親和性と、結合後に蛍光が上昇するという有用な性質を示す。蛍光のこの増強は、1本鎖核酸と2本鎖核酸の両方で起き、2本鎖DNAがはるかに顕著な作用(一般に約30倍)を示す。核酸に結合すると蛍光シグナルの上昇を示す他の色素が、近年開発されており、アクリジンオレンジ、SYBRグリーン、およびピコグリーンなどの化合物がある。しかし、特にリアルタイム増幅のような方法で使用するために、核酸との結合または挿入結合後のシグナル生成の上昇に対する、継続したニーズが存在する。
(6)化学発光
シグナル検出のための化学発光試薬は、近年、広く使用されるようになった。1,2−ジオキセタンとルミノールを含む、発光シグナルを生成することができるいくつかの異なるクラスの化合物がある。1,2−ジオキセタンは、2つの隣接酸素を含有する4員環である。これらの化合物のいくつかの型は、非常に不安定であり、分解すると発光する。一方、アダマンチル基の存在により、半減期が数年という非常に安定な型となることができる(ウィエリンガ(Wieringa)ら(1972)Tetrahedron Letters 169-172、参照することにより本明細書に組み込まれる)。安定な型の1,2−ジオキセタンを酵素結合測定法において基質として使用することができ、ここで、酵素の存在が、基質を不安定な型に変換し、こうして、シグナル生成のために化学発光を使用する。酵素切断の基質である追加の基を用いて、アダマンチルジオキセタンが合成された、化学発光シグナルの酵素的誘導が記載されている(米国特許第5,707,559号、シャープ(Shaap)ら(1987)Tetrahedron Letters 28:935-938;シャープ(Shaap)ら(1987)Tetrahedron Letters 28:1159-1163、これらのすべては、参照することにより本明細書に組み込まれる)。適切な酵素の存在下では、切断が起き、不安定な化合物が形成され、これは分解すると発光する。
この方法のためのジオキセタン誘導体の一般的な設計は、保護基を含有するヒドロキシル置換基を有するアリール基の結合である。適切な酵素による保護基の除去は、陰性荷電した酸素を与える。この中間体は不安定であり、化合物は分解され、発光する。保護基の性質により異なる酵素により活性化することができる種々の1,2−ジオキセタン誘導体が、開発されている。この目的に有用な可能性のあるとされている酵素には、特に、アルカリホスファターゼ、ガラクトシダーゼ、グルコシダーゼ、エステラーゼ、トリプシン、リパーゼ、およびホスホリパーゼがある(例えば、米国特許第4,978,614号を参照、参照することにより本明細書に組み込まれる)。
この基礎的な方法の変法も開示されている。例えばウルデア(Urdea)は、シグナルを生成するために2つの酵素の活性を必要とする、安定な1,2−ジオキセタン誘導体を開示している(米国特許第5,132,204号、参照することにより本明細書に組み込まれる)。ハセス(Haces)は、1,2−ジオキセタンの分解が、末端求核性物質を放出する酵素反応または化学反応により開始される方法を開示している(米国特許第5,248,618号、参照することにより本明細書に組み込まれる)。これは、分子内置換反応を受けて、フェノキシ基を放出し、これが1,2−ジオキセタンの分解を開始させる。分子内反応が起きる連鎖は、1重結合から構成され、従ってすべての結合の周りで完全に自由に回転でき、分子内反応に参加する基の間のランダムな相互作用に依存する。
化学発光シグナル伝達分野の改良にもかかわらず、新しい基質と試薬に対するニーズが存在する。現在利用可能な基質の多くは、酵素に非依存性の基質分解の開始と化学発光シグナルの放出のために、高レベルのバックグランドを生成する。従って、酵素の非存在下でより安定な新しいタイプの1,2−ジオキセタンは、好適な試薬となるでしたあろう。
(7)蛍光によるリアルタイム検出
臨床試料からの核酸の増幅は、広く使用される技術となっている。この方法の最初の技術であるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、ムリス(Mullis)らの米国特許第4,683,202号に記載された(参照することにより本明細書に組み込まれる)。それ以来、他の方法、例えば結合連鎖反応(LCR)(米国特許第5,494,810号)、GAP−LCR(米国特許第6,004,286号)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)(米国特許第5,130,238号)、鎖置換増幅(SDA)(米国特許第5,270,184号と米国特許第5,455,166号)、およびループ介在増幅(米国特許出願09/104,067号;ヨーロッパ特許出願EP0971039A)が記載されている(これらはすべて、参照することにより本明細書に組み込まれる)。適切な標的から得られた増幅産物の検出は、多くの方法により行われている。ムリス(Mullis)らが記載した初期の方法は、別個の核酸種の存在を検出するために、ゲル分析を使用した。目的の標的の存在を示すこの分子種の同定は、サイズの評価と、標的配列が欠如した陰性対照の使用により測定された。増幅に使用されるプライマーを含めると、適切な標的配列からの生成物の特定のサイズを決定した。非標的配列から生成される擬増幅産物は、標的から得られる配列と同じサイズの生成物を有する可能性は低い。あるいは、増幅産物中に存在する配列の特定の性質を調べるのに、より複雑な方法が使用されている。例えば、特異的な配列の存在、欠如、または空間的位置を測定するのに、制限酵素消化が使用されている。適切な配列の存在はまた、ハイブリダイゼーション実験により確立されている。この方法では、増幅産物は、標的またはプローブとして使用することができる。
前記検出法は歴史的に、増幅反応が完了後に使用されている。さらに最近は、増幅中の合成の程度を測定(すなわち、「リアルタイム検出」)するための方法が記載されている。例えば、最も簡単な系では、増幅反応中に、挿入結合する物質が存在する(ヒグチ(Higuchi)、米国特許第5,994,056号、およびウィトワー(Wittwer)ら、米国特許第6,174,670号;両方とも、参照することにより本明細書に組み込まれる)。この方法は、2本鎖核酸へのインターカレーターの結合により示される蛍光の増強を利用する。蛍光量の測定は、反応が終わった後に、合成後に蛍光計で行われるか、または、蛍光検出系を備え反応のために毛細管を使用する特殊なPCRサイクラー装置を使用して、反応の経過中にリアルタイム測定を行うことができる(米国特許第5,455,175号、および米国特許第6,174,670号、参照することにより本明細書に組み込まれる)。増幅の経過中に2本鎖物質の量が増加すると、シグナルの量も増加する。この系の感度は、産生される2本鎖核酸の充分量に依存し、これは、a)非結合インターカレーター、およびb)反応混合物中の1本鎖プライマーに結合したインターカレーター分子、の蛍光から区別可能なシグナルを生成する。特異性は、増幅反応自体の本質から、または反応生成物のTmプロフィールを見ることにより得られる。初期の研究は、臭化エチジウムを用いて行われたが、現在ではSYBRグリーン(登録商標)がより一般的に使用されている。このシステムの変法は、シンガー(Singer)とホーグランド(Haugland)、米国特許第6,323,337B1号(参照することにより本明細書に組み込まれる)により記載されており、ここでは、PCR反応に使用されるプライマーが、消光物質で修飾され、こうしてプライマーのダイマー分子に結合する蛍光性インターカレーターのシグナル生成が減少する。標的配列から得られたアンプリコンは、消光物質からは充分に遠いセグメントに結合したインターカレーターを含むため、標的由来のアンプリコンからのシグナル生成がまだ起きる。
取り込みに依存する別の分析法は、ナザレンコ(Nazarenko)(米国特許第5,866,336号;参照することにより本明細書に組み込まれる)により記載されている。この系では、シグナル生成は、2本鎖増幅産物へのプライマーの取り込みに依存する。プライマーは、その5’末端に余分の配列が付加されるように、設計される。増幅が無い場合は、分子内ハイブリダイゼーションによりステムループ構造が形成され、これは次に、エネルギードナーの近傍に消光物質を取り込み、こうして蛍光を妨害する。しかし、プライマーが2本鎖アンプリコンに取り込まれると、消光物質とドナーは物理的に分離され、ドナーは蛍光シグナルを生成することが可能となる。この系の特異性は、増幅反応自体の特異性に依存する。ステムループ配列は余分の配列から得られるため、アンプリコンが適切な標的分子から得られてもまたは非標的配列から得られても、シグナル生成のTmプロフィールは同じである。
取り込みに基づく測定法以外にプローブに基づく測定法も、リアルタイム分析に使用されている。例えば、適切な標的配列の存在を検出するための均一測定法には、2重プローブ系を使用することができる。この方法では、1つのプローブがエネルギードナーを含み、他のプローブがエネルギーアクセプターを含む(ミシェルヘラー(Michael Heller)のヨーロッパ特許出願0070685号、1983年1月26日公開)。すなわち、標的配列が存在する時は、2つのプローブが隣接配列に結合し、エネルギー移動が起きる。標的配列が存在しない時は、プローブは非結合のままであり、エネルギー移動は起きない。たとえ偶然に、1つまたは両方のプローブの結合が起きるのに充分に均一な試料中に非標的配列があっても、エネルギー移動には両方のプローブが結合して、これらが互いに特定の近傍になければならないため、シグナルは生成されない。この系の利点は、ウィトワー(Wittwer)ら、米国特許第6,174,670号(参照することにより本明細書に組み込まれる)により、前記の毛細管を備えたPCR装置を使用して、PCR増幅のリアルタイム検出のために、利用されている。個々のサイクル中のプライマーアニーリング工程はまた、各プローブが同時に標的配列に結合することを可能にして、標的配列の有無の評価を提供する。この方法のさらなる改良法では、プライマーの1つはエネルギー移動要素を含有し、単一のエネルギー移動プローブが使用される。蛍光性インターカレーターとともに標識プローブも使用され、プローブ法の特異性を、核酸への結合から得られる蛍光の増強と組合せることが可能となる。これは、米国特許第4,868,103号に初めて記載され、後にPCT国際出願WO99/28500で増幅反応に適用された(両方とも参照することにより本明細書に組み込まれる)。
同じ核酸中にエネルギードナーとエネルギーアクセプターを含むプローブも、使用されている。これらの測定法において、エネルギーアクセプターは、適切な相補的標的の非存在下で蛍光性エネルギー放出を「消す(quench)」。リザルジ(Lizardi)ら、米国特許第5,118,801号に記載された1つの系において、「分子標識(molecular beacons)」が使用され、ここで、エネルギードナーと消光物質は、内部塩基対合を用いる2次構造により、近傍に維持される。標的配列が存在する時は、分子標識中の相補配列は、ハイブリダイゼーションを可能にし、これは、2次構造を破壊して、こうしてエネルギー放出を可能にする。タクマン(Taqman)と呼ぶ別の系において、Taqポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性の2本鎖選択性が使用される(ゲルファンド(Gelfand)ら、米国特許第5,210,015号)。標的分子が存在する時、相補的配列へのプローブのハイブリダイゼーションは、1本鎖プローブを、エキソヌクレアーゼの基質に変換する。プローブの分解により、ドナーが消光物質から分離され、こうして光が放出される。
(8)アナライト中のプライマー結合配列
真核細胞mRNAの特徴の1つは、3’末端におけるポリAテイルの存在である。この特徴は、ポリAセグメントが、真核生物mRNAのcDNAコピーの合成のための普遍的な結合部位として使用することができるため、mRNAを扱う場合の大きな利点を提供する。しかし、mRNAの3’末端は容易に得られかつ充分に研究されているが、5’末端はそのような共通配列は欠如してため、これはまた、RNA研究においていくつかの偏見を与える。すなわち、その主要な目的が、元々の5’末端配列を完全に示すクローンを作成することである多数の系が、記載されている。これはまた、比較転写研究のためのアレイ分析に引き継がれている。この目的に使用される実質的にすべての系は、mRNAの3’末端でのオリゴTプライミングにより開始されるため、下流の配列は、3’開始点から離れる合成の継続に依存する。しかし、特定の数の塩基の合成後にポリメラーゼがしばしば鋳型から離れるため、重合の減衰作用があることは公知である。別の作用は、多くの逆転写酵素の成分であるRNaseHの存在により形成される。いったん停止したDNA鎖は、DNAの3’末端の近くでRNAの消化を可能にし、こうして、RNA鋳型のコピーされない部分を、成長するDNA鎖から分離する。この作用はまた、cDNAの合成中にランダムに起きる。従って、配列の表示は、3’ポリAプライマー部位からのその距離に反比例する。
先行技術は、RNAのポリAセグメントを広く利用してきたが、生体系においてポリA mRNAは、核酸のほんの一部であることを認識されたい。先行技術の別の制限は、ポリAテイルの使用が、真核生物mRNAでのみ可能であることである。特に関係する2つの領域は、この利点を利用できない。1つの領域は、細菌mRNAであり、これはポリA付加物が本質的に欠如しているためである。2つ目は、真核生物系における異種RNAである。特定の真核生物遺伝子にとって、異種RNA中に存在する大量の遺伝情報があり、これは、1つのみのエキソン情報を含む転写体のポリアデニル化成熟型の使用により失われる。
これらの系におけるプライマー共通配列の欠如は、オリゴTプライミングの代替の使用を必要としている。先行技術において、オクタマーを用いるランダムプライミング(セリンガー(Sellinger)ら、2000 Nature Biotechnology 18:1262-1268)、37個の7量体と8量体の選択されたセット(タラート(Talaat)ら、2000 Nature Biotechnology 18:679-682)、および4290遺伝子特異的プライマーのセット(タオ(Tao)ら、1999 J. Bact. 181:6425-6490)により、細菌発現試験が行われている。ランダムプライマーのセットと遺伝子特異的プライマーのセットにより示されるプライマーの大きいセットの使用は、反応を進めるのに多量のプライマーを必要とし、プライマーと標的配列の複雑さのために、乏しい速度を示す。すなわち、アナライト中のある特定の配列について、その配列に相補的なプライマーのほんの一部のみしか無い。大きいセットのランダムプライマーはまた、互いをプライマーと鋳型として使用する能力を有し、こうしてナンセンス核酸を生成し、利用可能なプライマーの有効量を低下させる。ランダムオリゴヌクレオチドの量を増加させてプライミングの速度を改良する試みは、非常に限定されている。まず、反応混合物中に溶解するオリゴヌクレオチドの量に、物理的制約がある。第2に、プライマー濃度が上昇すると、自己プライミングが増加し、こうしてより多くのナンセンス配列が生成され、本来アナライト依存合成に使用される試薬の吸収が増加するため、プライマーの量の増加は、自己制限性である。プライマーの複雑さ(すなわち、配列の長さ)を低下させることにより、より低濃度を使用することは理論的に可能であるが、ハイブリッド形成の安定性が限定される。一方、前記の7量体および8量体の分かれたサブセットは、目的の標的生物の完全なゲノムの知識を必要とする。従って、これらは、完全に配列決定された生物でのみ使用され、各標的生物についてユニークなセットを個々に開発しなければならず、その応用が限定される。RNA連結によりまたはポリAポリメラーゼにより、共通配列を酵素的に付加することができるが、これらの両方とも、遅くて非効率的な方法である。こうして、低レベルの複雑さを維持しながら、可変のまたは未知の配列の多数の非ポリアデニル化鋳型の安定なプライミングを、効率的に提供することができる方法と組成物に対するニーズが存在する。
また、増幅目的のためにアナライト中に配列を導入するための方法が記載されている。例えば、標的配列に相補的なセグメントおよびプロモーター配列を含むセグメントを含む、オリゴヌクレオチドも記載されており、ここで標的は、選択された別個の配列または天然のポリA配列である(米国特許第5,554,516号および米国特許第6,338,954号(両方とも参照することにより本明細書に組み込まれる))。標的mRNAにハイブリダイゼーション後、相補的セグメントにハイブリダイズしたアナライトのセグメントを切断し、次にプロモーターセグメントを鋳型として使用してアナライトの3’末端を伸長するのに、RNaseHが使用される。これらの方法で使用されるオリゴヌクレオチドは、均一なため、この具体的な方法は、エンドヌクレアーゼ反応がアナライトの相補的セグメントの消化を完了する前に開始される伸長反応に依存する。
(発明の要約)
本発明は、標的を標識するための標識試薬を提供し、標識試薬は、マーカー残基Mと反応性基Rとを含む
M−R
(式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基であり、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)。
本発明はまた、標的を標識するための方法を提供し、この方法は、(a)(i)標的;(ii)マーカー残基Mと反応性基Rとを含む標識試薬
M−R
(式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基であり、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)を提供する工程;および(b)標的(i)と標識試薬(ii)との間で炭素−炭素結合が形成される条件下で、標的(i)と標識試薬(ii)とを反応させ、こうして標的(i)をマーカー残基Mで標識する工程とを含む。
本発明はまた、標識された標的を提供し、標的は、(a)(i)標的;(ii)マーカー残基Mと反応性基Rとを含む標識試薬
M−R
(式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基であり、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)を提供する工程;および(b)標的(i)と標識試薬(ii)との間で炭素−炭素結合が形成される条件下で、標的(i)と標識試薬(ii)とを反応させ、こうして標的(i)をマーカー残基Mで標識する工程により標識されている。
また本発明により、シアニン色素標識試薬の調製法が提供され、この方法は、(a):
(i)以下を含む第1の中間体化合物:
Figure 2010156713

(式中、X1 は、炭素、酸素、窒素、またはイオウを含む);および
(ii)以下を含む第2の中間体化合物:
Figure 2010156713

(式中、X1は、炭素、酸素、窒素、またはイオウを含む;ここで、R1〜R10の少なくとも1つは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる反応性基を含有する)、そして(ii)第1の中間体化合物と第2の中間体化合物を結合するのに適した結合試薬を提供する工程と;(b)第1の中間体化合物(i)、第2の中間体化合物(ii)、および結合試薬を含む反応混合物を、(i)と(ii)が結合する条件下で形成して、以下の化合物
Figure 2010156713

(式中、R1〜R10の少なくとも1つは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる反応性基を含み、nは1、2または3の整数であり、X1とX2は独立に、炭素、酸素、窒素またはイオウを含む)を形成する工程とを含む。
さらに本発明により、ローダミン色素の非フェニル性類似体を含む標識試薬が提供され、この類似体は、標的に標識試薬を結合させるための少なくとも1つの反応性基を含み、この少なくとも1つの反応性基は、類似体に直接またはリンカーアームを介して間接に結合している。
本発明はまた、ローダミン色素の非フェニル性類似体を含む標識試薬に関し、色素は、ヌクレオチドに直接またはリンカーを介して間接に結合している。
本発明はまた、以下を含む標識された標的を提供する
T--L--M
(式中、Tは標的であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをTに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、
Figure 2010156713

(d)(a)、(b)または(c)のマルチマー、および(e)(a)、(b)、(c)および(d)の任意の組合せである、の1つ以上を含む少なくとも1つの剛性基を含む骨格を含む)。
本発明はまた、以下を含む標識された標的を提供する
R--L--M
(式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、
Figure 2010156713

(d)(a)、(b)または(c)のマルチマー、および(e)(a)、(b)、(c)および(d)の任意の組合せである、の1つ以上を含む少なくとも1つの剛性基を含む骨格を含む)。
また、以下を含む標識された標的が提供される
T--L--M
(式中、Tは標的であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをTに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続ペプチド結合を含む骨格を含む)。
さらに、以下を含む標識された標的が提供される
R--L--M
(式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続極性剛性単位を含む骨格を含む)。
本発明はまた、以下を含む標識された標的を提供する
T--L--M
(式中、Tは標的であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをTに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続ペプチド結合を含む骨格を含む)。
本発明の別の態様は、以下を含む標識試薬である
R--L--M
(式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続ペプチド結合を含む骨格を含む)。
本発明の別の態様は、非金属性ポルフィリンを含む標識試薬に関し、標識試薬は以下を含む:
Figure 2010156713

(式中、R0は反応性基であり、非金属性ポルフィリンに直接または間接に結合しており、R1〜R8は独立に、水素、脂肪族、不飽和脂肪族、環状、複素環、芳香族、複素環式芳香族、荷電または極性基、または前記の任意の組合せを含む)。
さらに、非金属性ポルフィリンを含む標識された標的が記載および提供され、試薬は以下を含む:
Figure 2010156713

(式中、Tは、非金属性ポルフィリンに直接または間接に結合しており、R1〜R8は独立に、水素、脂肪族、不飽和脂肪族、環状、複素環、芳香族、複素環式芳香族、荷電または極性基、または前記の任意の組合せを含む)。
本発明の別の部分は、目的の試料中の核酸量を測定する方法であって、この方法は:(a)(i)目的の試料、(ii)第1と第2のフェナントリジニウムのそれぞれのフェニル基を介して、第2のフェナントリジニウム残基に結合した第1のフェナントリジニウム残基を含む色素、(iii)色素結合、ハイブリダイゼーション、鎖伸長、またはこれらの任意の組合せを実施するための試薬、を提供し;(b)前記(i)、(ii)および(iii)の混合物を形成して、色素(ii)と、目的の試料(i)中に存在するかも知れない任意の核酸とを含む複合体を形成し;(c)工程(b)で形成された混合物に、400ナノメートル(nm)未満の波長を照射し;(d)工程(c)で照射された混合物からの蛍光発光を測定する(発光は目的の試料(i)中に存在する任意の核酸量に比例する)工程を含む。
本発明はまた、以下の色素構造体の少なくとも1つを含む組成物を提供する:
(a)
Figure 2010156713

(b)
Figure 2010156713

(c)
Figure 2010156713

および(d)
Figure 2010156713

また本発明により、目的の試料中の核酸量を測定する方法における、前記組成物の使用が提供され、この方法は、(a)(i)目的の試料、(ii)前記組成物からの色素(a)、(b)、(c)および(d)、(iii)色素結合、ハイブリダイゼーション、鎖伸長、またはこれらの任意の組合せを実施するための試薬、を提供し;(b)前記(i)、(ii)および(iii)の混合物を形成して、色素(ii)と、目的の試料(i)中に存在するかも知れない任意の核酸とを含む複合体を形成し;(c)工程(b)で形成された混合物に、第1の波長を照射し;(d)工程(c)で照射された混合物からの蛍光発光を、第2の波長で測定する(発光は目的の試料(i)中に存在する任意の核酸量に比例する)工程を含む。
本発明はヘテロダイマー性色素組成物を提供し、この組成物は、フェナントリジニウム残基を含む第1の色素と、第1の色素とは異なる第2の色素からなり、第2の色素は、フェナントリジニウム残基のフェニル環を介して結合している。
本発明はまた、前記組成物を使用して、目的の試料中の核酸量の測定する方法を提供する。この方法は、(a)(i)目的の試料、(ii)前記色素、(iii)色素結合、ハイブリダイゼーション、鎖伸長、またはこれらの任意の組合せを実施するための試薬、を提供し;(b)前記(i)、(ii)および(iii)の混合物を形成して、色素(ii)と、目的の試料(i)中に存在するかも知れない任意の核酸とを含む複合体を形成し;(c)工程(b)で形成された混合物に、第1の波長を照射し;(d)工程(c)で照射された混合物からの蛍光発光を、第2の波長で測定する(発光は目的の試料(i)中に存在する任意の核酸量に比例する)工程を含む。
本発明により、また化学発光試薬が提供され、この化学発光試薬は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、Qは、上記ジオキセタンの4員環部分に、直接または結合基を介して間接に共有結合したシクロアルキルまたはポリシクロアルキル基を含み;Zは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはシクロヘテロアルキルを含み;R1とR2は、ジオキサンに結合した環の異なる部位に結合した化学残基を含み、R1は、化学反応性基G1を含むR1 *に、酵素的に変換され、R2は、酸素、窒素またはイオウ原子を介して環に結合し、ジオキサンを不安定な発光性ジオキセタン型に変換する、G1と反応する化学的反応性基G2を含む)。
前記組成物を使用して、本発明はさらに、試料中の目的の酵素活性の存在または量を検出するための方法を提供する。この方法は、(a)(i)酵素活性を含むことが疑われる試料、(ii)前記の化学発光試薬、(iii)化学発光反応を実施するための試薬と緩衝液、を提供し;(b)(1)(i)、(ii)および(iii)、または(2)(ii)と(iii)の混合物を形成して、(ii)と(iii)の混合物に(i)を接触させ;(c)前記(ii)の化学発光試薬を、不安定な発光性ジオキセタン型に酵素的に変換し;そして(d)工程(c)の酵素的変換により生成する光の量を測定する工程を含む。
本発明により提供される別の化学発光試薬は、以下の構造を有するものである:
Figure 2010156713

(式中、Qは、上記ジオキセタンの4員環部分に、直接または結合基を介して間接に共有結合したシクロアルキルまたはポリシクロアルキル基を含み;Zは、水素、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはシクロヘテロアルキルを含み;Rは、構造中の芳香環に結合した反応性部位を有する化学リンカーを含み、R’は、非切断性酵素法の基質を含み、酵素法の生成物により、さらに化学転位が起き、これは不安定な発光性ジオキセタン型を生成する)。
本発明はまた、前記化学発光試薬を使用して、試料中の目的の酵素活性の存在または量を検出するための方法を提供する。この方法は、(a)(i)酵素活性を含むことが疑われる試料、(ii)前記の化学発光試薬、(ii)化学発光反応を実施するための試薬と緩衝液、を提供し;(b)(1)(i)、(ii)の混合物および(iii)、または(2)(ii)と(iii)の混合物を形成して、(ii)と(iii)の混合物に(i)を接触させ;(c)前記(ii)の化学発光試薬を、不安定な発光性ジオキセタン型に酵素的に変換し;そして(d)工程(c)の酵素的変換により生成する光の量を測定する工程を含む。
本発明によりまた色素組成物も提供され、この色素組成物は以下の式を有する
R−蛍光色素
(式中、Rは、蛍光色素に共有結合し、a)不飽和脂肪族基、b)不飽和複素環基、c)芳香族基からの2つ以上のメンバーを組合せて含み;Rは、結合系または電子非局在化系に蛍光色素を提供することができる)。
標識された標的がさらに提供され、この標識された標的は以下の式を有する
Figure 2010156713

(式中、Dyeは蛍光色素であり、Rは、Dyeに共有結合し、Rは、a)不飽和脂肪族基;b)不飽和複素環基;c)芳香族基、からの2つ以上のメンバーを組合せて含み、Rは、結合系または電子非局在化系にDyeを提供することができる)。
剛性極性単位で作成したリンカーアームのいくつかの例を示す。 臭化エチジウムの種々のホモダイマーの構造を示す:A)メタ−EthD、B)EthD−1、およびC)EthD−2。 第1および第2のエネルギー移動要素を有するプライマーの使用を例示する: 2つのプライマーの伸長から作成した2本鎖核酸、 2本鎖SDAアンプリコン、 ネステッド(nested)PCR、 リガーゼ連鎖反応。 2本鎖核酸中のプライマーの位置の変化を示す。 エネルギー移動要素を有するプライマーの使用の例示である。 エネルギー移動要素を有するマトリックスの使用を示す。 TAMRAの非フェニル性類似体のスペクトルである。 テキサスレッドの非フェニル性類似体のスペクトルである。 ホモダイマーの合成法の概略である。 DNAの存在下および非存在下での493nmでメタ−EtBrを照射した結果を示す。 DNAの存在下での350nmでメタ−EtBrを照射した結果を示す。 本発明のエネルギー移動の新規使用を例示するために以下の例で使用した、HIVアンチセンスアンプリコンの配列と、2つのプライマーと1つのプローブの配列を示す。 オリゴCプライマー結合配列の取り込みによる、ポリAテイル部分を排除するためのCNACの使用を示す。 ジオキサン誘導体の合成のための種々の工程を示す。 ジオキサンの不安定な発光型の酵素的産生を示す。
本発明の他の実施態様および態様は、以下に詳述される。
(発明の詳細な説明)
本発明は、リガンドや色素で標識された化合物の調製のための新規方法と組成物を開示する。本開示には、本発明の新規試薬を合成するのに使用できる、新規標識試薬、新規色素、および新規方法が含まれる。本発明の新規方法はまた、既に記載されている化合物の合成にも応用される。
1.炭素−炭素結合形成に参加する標識試薬
本発明の1つの態様は、マーカーまたは標識物と所望の標的分子の間で炭素−炭素結合を作成することができる反応性基を含む新規標識試薬を開示する。これは、アミン、スルフヒドリルまたはヒドロキシル基と、適切な反応性基の間の結合形成が関与する、タンパク質由来の化学を利用した先行技術の標識試薬とは異なる。本発明の新規標識試薬は、シグナル残基を所望の標的分子に結合させる非常に効率的な手段を与える。すなわち、本発明の新規標識試薬は、炭素−炭素結合を作成することができるリガンドまたは色素部分と反応性基とを含む。さらに、反応性基から、リガンドまたは色素部分を分離させるリンカーアームを挿入することが好ましい。これは、新規標識試薬と目的の標的分子との、より効率的な結合を提供する。リンカーアームの存在と性質はまた、標識標的分子の生物活性または化学活性を上昇させることがある。本発明の新規試薬は、標識試薬の反応性基との結合形成に参加することができる任意の標的分子を標識するのに使用することができる。標的分子は、未変性の状態でも、または新規標識試薬との炭素−炭素結合の形成に参加するように修飾されていてもよい。
本発明で使用されるリガンドには、特に限定されないが、糖、レクチン、抗原、インターカレーター、キレート剤、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびこれらの組合せがある。本発明の新規標識試薬を合成するのに使用される色素の具体的な選択は、吸収極大、発光極大、量子収率、化学的安定性、および溶媒の溶解度などの物性に依存する。タンパク質や核酸の標識に多数の蛍光および化学発光化合物が有用であることが証明されている。色素部分として使用される化合物の例には、特に限定されないが、キサンテン、アントラセン、シアニン、ポルフィリン、およびクマリン色素がある。本発明で使用可能なキサンテン色素の例には、特に限定されないが、フルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)、5−または6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセイン(TET)、5−または6−カルボキシ−4’5’2’4’5’7’ヘキサクロロフルオレセイン(HET)、5−または6−カルボキシ−4’、5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、5−カルボキシ−2’,4’,5’,7’−テトラクロロフルオレセイン(ZOE)ロドール(rhodol)、ローダミン、テトラメチルローダミン(TAMRA)、4,7−ジクロロテトラメチルローダミン(DTAMURA)、ローダミンX(ROX)およびテキサスレッドがある。本発明で使用可能なシアニン色素の例には、特に限定されないが、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7およびCy7.5がある。本発明で使用可能な他の色素には、特に限定されないが、エネルギー移動色素、複合色素、および蛍光シグナルを出す他の芳香族化合物がある。本発明で使用可能な化学発光化合物には、特に限定されないが、ジオキセタンおよびアクリジニウムエステルがある。またリガンドと色素は互いに排除的な基ではないことも、理解されたい。例えば、フルオレセインは、蛍光標識物としても、標識抗体の抗原としても使用されている残基の公知の例である。
本発明の新規標識試薬の反応性基は、炭素−炭素結合形成に参加でき、従って新規標識試薬が、標識物を適当な標的分子に結合させることを可能にすることが知られている化学残基から選択される。そのような反応性基の例には、特に限定されないが、アルケン、アルキン、金属−有機化合物、およびハロゲン化化合物がある。金属−有機化合物とハロゲン化化合物は、芳香族、複素環、アルケンおよびアルキン基、ならびにこれらの種々の組合せを含むことができる。そのような基は、標識化合物の合成に既に記載されているが、それらの反応性基は、ヌクレオチドやポリヌクレオチドをタンパク質のようにするために、核酸にアミノ基を付加する点でのみ使用された(米国特許第4,711,955号と米国特許第5,047,519号、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる)。本発明において、新規標識試薬の反応性基は、リンカーアームの末端でまたはリンカーアーム内の内部部位で、リガンドまたは色素に直接結合することができる。金属−有機化合物およびハロゲン化化合物の使用のための種々の方法の総説が、ラロック(Larock)(1982、Tetrahedron Report 128:1713-1754)、ロビンズ(Robins)ら(J. Org Chem 1983, 48:1854-1862)、ホブス(Hobbs)とコクザ(Cocuzza)(米国特許第5,047,519号)、エグリントン(Eglington)とマクリー(McCrae)(1963、Advances in Organic Synthesis 4:225-328)およびリーケ(Rieke)(2000、Aldrichimica Acta 33:52-60)にあり、これらはすべて、参照することにより本明細書に組み込まれる。
新規標識試薬の部分を含むリンカーアームは、任意の所望の長さでよく、特に限定されないが、炭素、窒素、酸素、イオウおよびこれらの任意の組合せを含む適当な原子を含んでよい。リンカーアームを含むことができる化学基には、特に限定されないが、脂肪族結合、2重結合、3重結合、ペプチド結合、芳香環、脂肪族環、複素環、エーテル、エステル、アミド、およびチオアミドがある。リンカーアームは、自然界で環構造を形成するかまたは可撓性である。
本発明は、多様な標的分子を標識するのに使用してもよい。標的は本質的に、新規標識試薬の反応性基との炭素−炭素結合形成に参加することができる化学残基を含有するか、または標的は、そのような基を含むように修飾されてもよい。新規標識試薬の反応性基と結合することができる化学残基または標的分子の例には、特に限定されないが、アルケン、アルキン、金属−有機化合物、およびハロゲン化化合物がある。金属−有機化合物とハロゲン化化合物は、芳香族、複素環、アルケンおよびアルキン基、ならびにこれらの種々の組合せを含むことができる。本発明で使用可能な標的分子には、特に限定されないが、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、リガンド、合成化合物、合成ポリマー、糖、多糖、脂質およびホルモンがある。これらの化合物により標識可能なヌクレオチドには、特に限定されないが、1リン酸、2リン酸、または3リン酸がある。これらは、リボヌクレオチドでもデオキシヌクレオチドでもよい。前記のいずれかの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体も、所望であれば使用することができる。修飾ヌクレオチドの例には、特に限定されないが、ジデオキシヌクレオチド、および3’アミノ基または3’リン酸塩基を有するヌクレオチドがある。ヌクレオチド類似体の例には、特に限定されないが、ペプチド核酸、アラビノシド、およびアシクロ物がある。これらの類似体は、ヌクレオチドとして、またはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドの成分として使用してもよい。標識オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの合成は、新規標識試薬により標識されたヌクレオチドを使用して行うことができる。あるいは、新規標識試薬との炭素−炭素結合形成に使用できる化学基を有する修飾ヌクレオチドを使用して、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを合成してもよい。この方法では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド生成物中の反応性基の存在が、以後の本発明の新規標識試薬との反応を可能にする。さらに、非修飾オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを、炭素−炭素結合形成に参加できる基を含むように、化学的に処理してもよい。
所望の標的分子への本発明の新規標識試薬の結合は、当該分野で公知の種々の方法のいずれかを使用して行うことができる。例えばアセトキシ水銀化反応は、ピリミジン環の5位またはデアザプリン環のC−7位に、共有結合した水銀原子を導入するための、公知の確立された方法である(デール(Dale)ら、(1975) Biochemistry 14:2447-2457、(1973) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 70:2238-2242)。ヌクレオチドは、酢酸水銀(II)で処理されて水銀塩に変換される。K2PdCl4の存在下で、末端2重結合を用いて調製された本発明の標識試薬を添加すると、ヌクレオチドの芳香環と標識試薬の2重結合の末端炭素との間で炭素−炭素2重結合が形成され、こうして標識物がヌクレオチドに結合される。リンカーの末端に2重結合を有するシアニン色素の新規標識試薬の場合、ヌクレオチド水銀が、シアニン色素残基の2つの環の間の芳香環または結合2重結合ではなく、リンカーの末端の2重結合と反応する。
前記反応の別の用途において、反応性基が水銀塩である本発明の新規標識試薬を調製することができる。これで、この化合物は、標識することが好ましい標的上の不飽和結合と反応することができる。この結合は、標的分子の固有の部分であっても、またはそのような基を含むように標的分子を修飾してもよい。例えばラロック(Larock)(1982、前述、Eqns. 146-151)は、それぞれ構造R1−C=C--HgClを有する2つの基が、適切な触媒の存在下でいかに結合することができるかを記載している。
水銀およびパラジウム触媒の付加反応の1つの利点は、必要であれば溶解度を上げるために少量の有機溶媒を加えた水の中で反応を実施できることである。この方法は、任意の型のヌクレオチド、例えばリボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、ジデオキシヌクレオチド、および任意の類似体、ならびにオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド類似体、タンパク質核酸複合体、およびポリヌクレオチドを用いて行うことができる。あるいは、末端3重結合を有する反応性アーム、または標的分子と炭素−炭素2重結合を形成することができる任意の他の分子を用いて、新規標識試薬を調製することができる。
2.炭素−炭素結合形成によるタンパク質の標識
新規標識試薬の重要な用途はまた、タンパク質にシグナル基を結合させることである。この具体的なケースでは、タンパク質が、前記の核酸標的に似るように、タンパク質を修飾することができる。例えば、標的タンパク質を酢酸水銀(II)と反応させて、タンパク質のチロシン、トリプトファンまたはフェニルアラニン残基で、化合物を水銀化することができる。これで、タンパク質は、2重結合反応性基を有する新規標識試薬との反応に使用することができ、水銀が置換されて標識が結合する。所望であれば、2,2’−ジピリジルジスルフィドで処理してタンパク質中のチオール基を保護した後、水銀化工程を行うことができる。
一級アミンを有するアミノ酸はまた、新規標識試薬で使用できるタンパク質上の部位である。例えば、チロシン基が欠如したタンパク質は、ボルトンハンター活性エステルで修飾して、チロシン基を一級アミンに導入することができる。次に、これらを前記のように使用することができる。あるいはタンパク質を、アクリル酸活性エステルで修飾して、一級アミンを含有する残基中に末端2重結合を導入することができる。この修飾により、反応性基として水銀化合物を有する、本発明の新規標識試薬とともに、タンパク質を使用することが可能になる。
3.炭素−炭素結合形成のための反応性基を有する色素前駆体
炭素−炭素結合に参加するのに適したマーカーへの基の結合は、マーカーの修飾により行うことができる。一方、結合は、特定のマーカーを合成するのに使用される中間体を用いて、行うことができる。例えば、シアニン色素標識試薬は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、n=1、2または3である;X1とX2は、S、O、N、CH2またはC(CH32であり、R1〜R8は、シアニン色素を所望の標的分子に結合するのに使用される反応性基を含む)。シアニン色素は、2つのインドレニン前駆体単位を介在不飽和鎖と連結することにより、調製できる。鎖を構成する単位の具体的な数は、シアニン色素の具体的な吸収スペクトルと発光スペクトルを決定する。
本発明の方法において、シアニン色素は、シアニン色素の前駆体であるインドレニンに、炭素−炭素結合を生成することができる反応性基を含有するリンカーアームを結合させることにより、調製することができる。この修飾インドレニンは、新規化合物であり、介在不飽和アルキル鎖を介して第2のインドレニン環に結合して、前記構造を有するシアニン色素を合成する反応の試薬として使用することができる。第2のインドレニンは、第1のインドレニンと同じでも、リンカーアームおよび反応性基が欠如した非修飾物でもよい。同じ新規インドレニン化合物を使用して、第2のインドレニン環の性質と2つの環をつなぐ具体的な不飽和鎖に依存して、種々の異なるシアニン色素を作成することができる。この操作の結果として、前駆体環を結合することによりシアニン色素生成物が形成される時、これは、反応性基を有するリンカーアームを含み、適当な標的分子に結合する準備ができる。
4.フェニル基の無い新規ローダミン色素
本発明の別の態様において、新しい色素およびその合成手段が開示される。先行技術において、ローダミンの誘導体は、一般的には色素と、ローダミンを所望の分子に結合するのに使用される反応性基との間に、芳香族基を有する。本発明において、色素をヌクレオチド上の塩基に結合させるリンカーアームが、通常ローダミン上に存在する芳香族基が欠く、ローダミン類似体を含む安定なヌクレオチドを合成することができることが開示される。そのようなヌクレオチドの取り込みは、ポリメラーゼにより許容されるものになり、従って修飾ヌクレオチドは、非修飾ヌクレオチドと混合することなく使用できることは、驚くべき結果である。従って、本発明は、以下の新規ローダミン類似体を開示する:
Figure 2010156713

(式中、Rは反応性基である)。
5.剛性リンカーアーム
本発明の別の態様において、酵素的および化学的合成手段において、修飾ヌクレオチドをより効率的に使用することを可能にし、および/または、これらがポリヌクレオチドの一部である時、より効率的に機能することを可能にする方法と組成物が開示される。本発明のある実施態様において、標的分子と、マーカーまたは標識物を提供するために加えられる基との間で、向上した指向性の分離が行われる。本発明において、以下の式を有する新規組成物が開示される:
T----L----M および R----L----M
前記の略図において、Tはマーカーまたは標識物の結合の標的であり、Rは、標的への結合のために使用される反応性基であり、Mはマーカーまたは標識物である。
本発明のある態様において、Lは、M残基をT残基またはR残基に共有結合させる化学基であり、1つ以上の以下の基を含む:
Figure 2010156713
アルケン基は、互いにシスまたはトランス配置でもよく、炭素原子に結合した水素原子のみを含有してもよく、またはこれらは置換されていてもよい。好適なモードにおいて、前記の基の1つを、標的のすぐ近くに結合させ、1つ以下の介在原子により分離し、または剛性の極性単位を介して標的に結合させることにより、指向性が得られる。
本発明の別の態様において、Lは、M残基をT残基に共有結合させる化学基であり、少なくとも2つの連続的剛性極性単位を含む。
本発明で使用される標的の例には、特に限定されないが、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、サイトカイン、リガンド、ハプテン、抗原、および固体支持体がある。本発明で使用される固体支持体の例には、特に限定されないが、ビーズ、試験管、プラスチックスライド、ガラススライド、マイクロチップアレイ、ウェル、およびくぼみがある。
本発明で使用される反応性基の例には、特に限定されないが、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−もしくはジ−ハロゲン置換ジアジン、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシ−スルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、グリオキザル基、アルデヒドアミン、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基がある。また、前記のように、炭素−炭素結合形成に参加することができる基が含まれる。
本発明において、剛性単位は、原子間の空間的関係が比較的静的である、原子群として定義される。
本発明において、2つの残基が連続として記載される時、残基は近接しているかまたは直接隣にある。さらに、2つの連続的残基は、1つ以下の原子(すなわち、単一の原子)により分離することができる。
本発明において、剛性単位は、基本的に同じ型の原子を含む時、非極性である。非極性剛性単位の例は、アルケン、アルキン、不飽和環、部分飽和環、および炭素と水素のみを含む完全に飽和した環である。
本発明において、剛性単位は、少なくとも2つまたはそれ以上の異なる原子を含有し、こうして電荷を単位内に不均等に分布させる時、極性である。極性に寄与する配置の例には、特に限定されないが、N、S、O、Pまたはハロゲンに結合した炭素原子がある。炭素に結合したヘテロ原子は、単独でも、または極性もしくは荷電官能基の一部でもよい。後者の例には、特に限定されないが、−OH、−SH、−SO3、−PO4、−COOH、および−NH2基がある。剛性単位は、線形の、分岐した、または環状の骨格を含有することができる。環に結合した極性または荷電官能基をも含む環型は、不飽和環、部分的不飽和環、および完全に飽和した環でもよい。2つ以上のそのような極性剛性単位のマルチマーは、剛性の伸長したアームを提供し、これは、標的分子とマーカーまたはシグナル生成残基との規定された空間関係を生み出す。
本発明において、非置換の複素環式芳香族化合物は、環内の電子共有のために、非極性剛性単位であると考えられる。一方、環に結合した極性または荷電官能基を含む置換複素環式芳香族化合物は、極性剛性単位であると考えられる。
本発明で有用な線形の極性剛性単位の例は、特に限定されないが、ペプチド結合を含む残基である。固有の剛性を有する環状極性単位の例は、特に限定されないが、糖である。サブユニット間の相互作用から得られる剛性を有する本発明で有用な基の例は、特に限定されないが、電荷の反発がサブユニットの間の距離を最大にする荷電成分である。陰性荷電した成分が使用される時、陰性荷電したポリヌクレオチド自体からの反発もある。リンカーはまた、回転電荷を妨害する大きな側鎖基を有するように設計され、こうして塩基とシグナルまたは反応性基の関係に対して、別個の空間構造を維持する。
標的分子からの反応性基またはシグナル残基の距離は、スペーサーを構成する剛性単位の数と性質により決定されるであろう。従って、2つのペプチド結合が後に続くアルケン結合を含む一連の3つの剛性単位は、図1Aに示すように、ヌクレオチドから直接離れてシグナル基を延長させるであろう。この具体例は、非極性剛性単位ならびに2つの極性剛性単位を含むであろう。一連の複数のペプチド結合は、図1Bに示すように、標的分子からさらに離れるように色素またはマーカーを伸長しながら、剛性を提供するであろう。この具体例において、ウラシルヌクレオシドが標的として使用され、グリシンサブユニットは、一連のペプチド結合を提供するのに使用される。所望であれば、異なるアミノ酸を使用してもよく、ここで、剛性アームに溶解度または電荷のような他の性質を付与するために、アミノ酸のR基の種々の成分が選択される。
全体の構造が剛性であるか否かについて、剛性単位からなるリンカーは、剛性単位間の特定の関係に依存するであろう。例えば、複数のペプチド結合が先行技術で使用されている。しかし、そのような結合を有する利点は、ペプチドの間に脂肪族炭素基を含めることにより失われた。基本的に、これらは、可撓性のリンカーにより結合された剛性単位である。図1に示すように、本発明は、剛性単位間の最大で1つの原子を可能にし、こうして、剛性単位間の可撓性の程度を制限する。同様に、所望の指向性に寄与する可能性を有しながら、全体的剛性を維持する基の間で、非炭素性の他の基を使用できるであろう。そのような基の例は、2つの剛性単位間の−S−結合であろう。
前記したように、糖基もまた、本発明の実施に使用される。個々の剛性単位として使用可能な広範な糖があり、これらの糖が酵素的または化学的に連結される多くの方法が、文献に広く記載されている。
本発明は、2つ以上の極性剛性単位を使用して剛性リンカーアームを作成するが、可撓性の基や非極性剛性単位もまた、剛性リンカーアーム中に含めてもよいことを理解されたい。例えば図1は、ペプチド結合とウラシル残基との間でアルケン結合を利用する。さらに、リンカーの有効性を保持しながら、追加の可撓性単位、剛性単位またはこれらの組合せが、図1で前記ペプチド結合と色素分子の間に含まれる。
本発明において、問題のある基は、酵素的取り込みが起きる活性部位から空間的に排除されるため、ヌクレオチドから遠いそのような伸長結合の存在は、取り込み時の有害な作用を減少させるはずである。さらに、修飾ヌクレオチドが酵素的にまたは合成で取り込まれた後に、本発明の使用により官能基が増加する。例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドからのハプテンまたは化学的反応性基の伸長は、近づきやすさを上昇させ、こうして結合効率を改善するはずである。さらに、近接さのために妨害作用が引き起こされるなら、本発明の使用により、シグナル生成基もまた、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドから排除される。
本発明で記載したリンカー結合のための特定の点は、可撓性リンカーについて前記した技術を利用してもよい。すなわち、ヌクレオチドは通常のヌクレオチドでも、米国特許第4,711,955号、米国特許第5,241,060号、米国特許第4,952,685号、米国特許第5,013,831号(これらのすべては、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載のように、付加されたか、塩基、糖またはリン酸残基中の成分を置換する種々の置換基を有する修飾ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体でもよい。さらに、これらの修飾は、非破壊性、半破壊性または破壊性でもよい。結合点は、前記開示において、塩基、糖またはリン酸でもよいが、本発明において塩基への結合が特に有用である。
本発明のさらなる利点は、記載されたリンカーの一部は、その化学ならびに構造のために、有利な結果を与え得ることである。例えば、ペプチドサブユニットからなるリンカー中の最後のペプチドは、アミン基を与え、これは、シグナル残基のような有用な基を結合するのに使用される。先行技術において、アミン基は脂肪族鎖の末端に位置し、pK値は約11である。しかし、結合反応は通常約8のpH値で行われるため、ある時点で反応性型のアミン基はほとんど無く、従って反応の効率と速度を制限する。これに対して、ペプチド鎖の末端のアミン基はpHが約9であり、目的の結合反応により適合する。従って本発明は、適切な基へのヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのより有効な結合を可能にする。
また本発明のこの具体的な態様は、ヌクレオチドと色素の間に介在する剛性リンカーについて記載されているが、他の応用も本発明の利点を享受できる。例えば、タンパク質の標識は、タンパク質とシグナル残基の間で、本発明の剛性アームを使用して改良することができる。これらの利点を享受するタンパク質の例は、特に限定されないが、抗体、酵素、サイトカイン、およびオリゴペプチドまたはポリペプチドのライブラリーがある。核酸について前記したように、本発明の使用は、標識化合物の性質ならびに標識自体の効率を改良する。さらに、固体支持体へのリガンド、ハプテン、タンパク質または核酸の結合を含む多くの方法がある。そのような支持体の例には、特に限定されないが、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、ガラススライド、プラスチックスライド、マイクロチップアレイ、ウェル、およびくぼみがある。本発明は、支持体の表面からリガンド、ハプテン、タンパク質または核酸の指向性分離を形成するのに使用される。これらの利点を享受するタンパク質の例は、特に限定されないが。抗体、酵素、サイトカイン、およびオリゴペプチドまたはポリペプチドのライブラリーがある。
6.非ピロール位に反応性基を有する非金属性ポルフィリン
本発明の別の態様において、非ピロール位に反応性基を有する非金属性ポルフィリンを含む新規標識試薬が開示される。蛍光色素としての非金属性アルキル化ポルフィリンのスペクトル性質は、ヘンドリックス(Hendrix)の米国特許第4,707,454号(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されており、ここで150nmを超えるストークスシフトが開示された。しかし、ポルフィリンの反応性基を記載する時、開示された唯一の教示は、ピロール位の化学基を利用した。従って、8個のピロール位のいずれかまたはすべてに、水素、脂肪族、不飽和脂肪族、環状、複素環、芳香族、複素環式芳香族、荷電または極性基を独立に含み、反応性基を結合するための部位として非ピロール位置の1つを使用する非金属性ポルフィリンを得ることができることが、本発明の主題である。この組成物は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、R0は、ポルフィリンの非ピロール位置(すなわち、α、β、γ、またはδ位)に、直接または間接に結合した反応性基を含み、R1〜R8は、前記で定義したものである)。
既に記載した反応性基のいずれかも、R0として本発明で使用できる。R1〜R8は同じ基を含んでも、あるいはこれらは異なってもよい。所望であれば、アルキル基はまた、ポルフィリンの水溶性の上昇を助ける極性または荷電基をさらに含んでよい。また所望であれば、ポルフィリンに反応性基を結合させるのにリンカーが使用される。本発明のこの態様で使用される具体的な剛性アームは、既に開示または記載された任意のリンカーアームでもよいが、本発明の剛性リンカーの使用が特に好ましい。ファーホップ(Fuhrhop)とスミス(Smith)“Laboratory Methods”第19章の Porphyrins and Metalloporphyrins、ケビン・エム・スミス(Kevin M. Smith)編、エルスビアサイエンティフックパブリッシングカンパニー(Elsevier Scientific Publishing Company)、アムステルダム、1975年(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載のように、非ピロール位置にニトロ基を付加することができる。この基をアミンに還元することは、当該分野で公知であり、さらに、標準的方法によりリンカーまたは反応性基を付加する反応を行うことができる。
前記の任意の標的を、本発明の非金属性ポルフィリンで標識してもよい。例えば、本発明の非金属性ポルフィリンは、ポルフィリン標識ヌクレオチドの取り込みにより、またはポルフィリン標識ホスホラミダイトにより合成的に、使用できる。あるいは合成後の工程で、非金属性ポルフィリンの化学的適合性誘導体との反応に適した、誘導体化ヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを合成することができる。本発明の非金属性ポルフィリンを含む標識オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、高効率発光を有する大きなストークスシフトを有するはずである。この組成物と検出法は、高レベルの感度を有し、同じ波長で励起される他の化合物からの高レベルの区別を可能にするであろう。例えば、転写体のライブラリーをフルオレセインで標識し、第2のライブラリーをオクタエチルポルフィンで標識するなら、490nmの単一波長で照射することができる。しかし、フルオレセインの発光ピークが530nmであり、オクタエチルポルフィリンの発光ピークが620nmであるため、この具体的な蛍光物質間の区別は容易である。同時に、オクタエチルポルフィリンの量子収率がフルオレセインの発光ピークに匹敵する。また、非金属性ポルフィリンは、本明細書に開示の他の任意の新規方法とともに使用されることを理解されたい。
7.結合および/または電子非局在化系に参加する基による色素の修飾
本発明の他の実施態様において、中間体中にケトン基が存在する必要無く、フルオレセイン色素に付加された2つ以上の不飽和化合物を含む新規組成物の合成法が開示される。本発明においてこれらの不飽和化合物は、不飽和脂肪族基、不飽和環状化合物、不飽和複素環式化合物、芳香族基、またはこれらの任意の組合せでもよい。そのような基の結合は、これらが、色素の結合および/または電子非局在化系(モールディング(Maulding)とロバーツ(Roberts)、前述、参照することにより本明細書に組み込まれる)に参加することを可能にし、色素のスペクトル特性に変化を与える。これらの変化には、励起ピークと発光ピークの幅の変化、励起ピークと発光ピークの位置の移動、および量子収率の上昇がある。
色素に不飽和基を付加すると、溶解度が低下し、非特異的疎水性相互作用が起きるため、荷電または極性基をさらに添加することにより、この作用を補償することが本発明の目的である。これらは、色素または不飽和化合物に結合してもよい。またこれらの新規色素は、標識試薬として使用できるため、これらはまた、標識物を所望の標的分子に結合させるのに適した反応性基を含んでもよい。反応性基は、直接または間接に、色素、不飽和化合物、または荷電もしくは極性修飾基に結合できる。
本発明のこの態様の新規化合物は、以下の構造を有する:
R−Dye
(式中、Dyeは蛍光色素であり、Rは、Dyeに共有結合し、Rは、不飽和脂肪族基、不飽和環状化合物、不飽和複素環式化合物、芳香族基、またはこれらの組合せでよい2つ以上の不飽和化合物を含む)。さらに、Rの1つ以上のメンバーは、Dyeの結合および/または電子非局在化系に参加する。不飽和化合物は、置換されても非置換でもよい。不飽和脂肪族基は、アルケンまたはアルキンを含むことができる。芳香族基は、フェニル基、アリール基、または芳香族複素環を含むことができる。基が置換される時、置換基は、特に限定されないが、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシル基、アミン、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、スルホン酸塩、スルフヒドリル基、ニトロ基、リン酸塩、または色素の性質を改良できる任意の基を含む。芳香族基の場合、これは、縮合環構造の一部であることにより、置換されてもよい。そのような縮合環の例は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、およびフェナントレンを含む。
Rのすべてまたは一部として使用可能な基はまた、以下のように記載される:
Figure 2010156713
前記略図において、Arは、不飽和環状化合物、不飽和複素環式化合物、または芳香族基である。前記したように、前記の基は置換されても非置換でもよい。
本発明で使用される蛍光色素には、特に限定されないが、アントラセン、キサンテン、シアニン、ポルフィリン、クマリンおよび複合色素がある。アントラセンが、中央の環に結合したアルキンとアルキンに結合したフェニル基ともにDyeとして使用される場合、フェニル基は置換されるであろう。
本発明の別の態様において、新規組成物は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、RとDyeは前記したものであり、R1は、R、Dye、またはRとDyeの両方に共有結合している)。R1はさらに、1つ以上の荷電または極性基を有して、さらなる溶解性を与える。これは、色素またはR修飾を有する色素の水への溶解度が限定されているか、または非特異的疎水性相互作用に問題がある時、有用であろう。
本発明の別の態様において、新規組成物は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、R、DyeおよびR1は前記したものであり、R2は、R、Dye、R1またはこれらの任意の組合せに共有結合しており、R2はさらに、色素を適当な標的分子に結合するのに使用できる反応性基を含む)。R2は、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、およびアミン基を含む前記した反応性基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、およびアミン基と反応することができる基、および炭素−炭素結合を形成することができる基の任意のものを含む。R2はさらに、色素から反応性基を分離するリンカーアームを含む。リンカーアームは、任意の所望の長さであり、炭素ならびに非炭素原子の骨格を含む。使用可能な非炭素原子には、特に限定されないが、イオウ、酸素、および窒素がある。リンカーアームは、飽和、不飽和、または芳香族基を含み、また前記の剛性アームを含んでよい。
本発明の別の態様において、新規の標識された標的は以下の構造を含む:
Figure 2010156713

(式中、RとDyeは前記したものである)。本発明で使用される標的には、特に限定されないが、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、受容体、天然のもしくは合成薬剤、合成オリゴマー、合成ポリマー、ホルモン、リンフォカイン、サイトカイン、トキシン、リガンド、抗原、ハプテン、抗体、炭水化物、糖、またはオリゴ−もしくは多糖がある。標識された標的はまた、R、DyeまたはRとDyeの両方に共有結合したR1を含むことができる。R1はさらに、溶解性を与えるための1つ以上の荷電または極性基を含む。これは、標識された標的または標識された標的を作成するために使用される中間体の水への溶解度が限定されているか、または非特異的疎水性相互作用に問題がある時、有用であろう。標識された標的はまた、前記リンカーアームをさらに含むことができ、色素を標的から分離する。
8.インターカレーター
本発明の別の態様において、結合しないままの色素と比較して標的に結合した挿入結合性色素の区別を増強する新規方法が開示される。前記したように、臭化エチジウムは、多くのフォーマットにおいてDNAの検出と視覚化のための一般的な試薬である。核酸への親和性に対する第2のフェナントリジニウム環系の作用を調べるために、ホモダイマー型の臭化エチジウムのを合成し、試験した(クールマン(Kuhlmann)ら、(1978) Nucleic Acids Research 5:2629-2633)。この化合物N,N−ビス[3−(3,8−ジアミノ−5−メチルフェナントリジニウム−6−イル)ベンゾイル]1,5−ジアミノペンタンジクロリド(メタ−EthD)は、核酸に対してモノマー型よりはるかに高い親和性を示した。しかし、493nmの標準的波長で蛍光を測定すると、核酸への結合後の蛍光発光の上昇は、基本的にすでに臭化エチジウムモノマーで見られたものと同じであった。
メタ−EthDを標準的フォーマットとは異なる方法で使用した時、結合型と非結合型の区別の大幅な増強が観察されたことは、驚くべきかつ予想外の結果であった。本発明は、2つの臭化エチジウム分子がそのフェニル基を介して結合される時、試料を493nmで励起した時見られた6倍の上昇に対して、400nm以下の波長で励起すると、ホモダイマーへのDNAの結合により150倍を超える蛍光発光の上昇が見られたことを開示している。
2つの他のホモダイマー臭化エチジウム化合物(EthD−1とEthD−2)は、モレキュラープローブズインク(Molecular Probes, Inc.)(ユージーン(Eugene)、オレゴン州)から販売されている。しかし、メタ−EthDで得られた結果とは異なり、結合と非結合色素との区別は、400nm未満の波長で励起してもあまり変化しなかった。メタ−EthD、EthD−1およびEthD−2はすべて臭化エチジウムダイマーであるが、これらは化学的に異なることを指摘したい。(図2)に示すように、メタ−EthDは、アミド結合によりフェニル環のメタ位置を介して結合した2つのフェナントリジニウム環からなる。これに対して、EthD−1とEthD−2ダイマーのフェナントリジニウム環は、フェニル環ではなく中央の環の窒素を介して結合している。介在鎖は、EthD−1中で2級であり、メチル化されてEthD−2の4級塩を与える2つのアミン結合基を有するアルキル鎖からなる。EthD−1とEthD−2化合物がメタ−EthDで見られた結果と同じ結果を示すことができないことは、本発明の方法が、エチジウムダイマー自体の予測可能な性質ではないことを証明している。
本発明の方法は、臭化エチジウム、臭化エチジウムホモダイマー、および他のインターカレーターについてこれまで記載されている多くの方法で使用できる。特に、核酸増幅とメタ−EthDで標識されたプローブのリアルタイム分析に対する本発明の応用は、有用である。400nm以下の波長での照射後の蛍光の大きな上昇は、従来法より大きなシグナル対ノイズ比を可能にするであろう。従って、本発明は、そのような増幅法において核酸合成の検出のためのより高い感度を享受する。
先行技術において臭化エチジウムはまた、中央の環を介して他のインターカレーターの結合(米国特許第5,646,264号)およびインターカレーターの断片(米国特許第5,582,984号および米国特許第5,599,932号)により修飾され、2本鎖DNAへの結合性能が改良されている。米国特許第5,582,984号に開示されたものと類似の修飾基が、臭化エチジウムの中央の環に付加されて、RNAを用いる性能が改良されている(米国特許第5,730,849号)。メタ−EthDで得られた結果を考慮すると、米国特許第5,646,264号;5,582,984号;5,599,932号;および5,730,849号(これらはすべて、参照することにより本明細書に組み込まれる)中の修飾はまた、結合部位として中央の環をフェニル環で置換することにより、新規化合物を合成するのに使用されることが開示される。これらはまた、臭化エチジウム、臭化エチジウムダイマー、臭化エチジウムヘテロダイマー、修飾臭化エチジウム組成物、および他のインターカレーターについて従来記載された多くの応用で使用される。
9.新規化学発光試薬
本発明の他の実施態様において、新規1,2−ジオキセタン化合物が開示され、これは選択された酵素の基質として使用されると、芳香環の異なる部位に結合した2つの基の間の分子内反応が起き、化学発光シグナルが生成する。本発明の別の態様において、新規1,2−ジオキセタン化合物が開示され、これは、分解性酵素より修飾酵素の基質であり、修飾により化学発光シグナルが生成する。
a.環上の異なる部位に結合した2つの基の間の酵素依存性相互作用
本発明の別の態様において、環の異なる部位に結合した2つの基を含む新規1,2−ジオキセタンが開示され、ここで、適切な酵素による触媒後に、試薬は分子内反応を受け、化学発光シグナルが生成する。本発明のこの態様の試薬は以下の構造を有する:
Figure 2010156713

(式中、Qは、ジオキセタンの片側に位置するシクロアルキルまたはポリシクロアルキル基であり、R1とR2は、1,2−ジオキセタンの反対側に結合した環の異なる部位に位置する)。Zは、水素、アルキル、アリール、アルカリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはシクロへテロアルキル基を含んでよい。好適な実施態様においてQは、アダマンチル基を含む。別の好適な実施態様において、R1とR2が結合した2つの部位は、芳香環上で互いに隣接している。R1は、酵素活性の基質である化学基を含む。適切な酵素の存在下で、R1は、R1 *(これは、化学的反応性基G1を含む)に触媒的に変換される。R2は、酸素原子を介して環に結合し、R1からR1 *への変換により産生されるG1基と相互作用できる化学基G2を含む。環により付与される剛性のために、G1はG2に極めて近接しており、従って好ましい速度で相互作用を引き起こす。この相互作用により、不安定なジオキセタンが生成され、こうして化学発光が発生する。
2は、脂肪族基、置換脂肪族基、芳香族基、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。R2が置換脂肪族基を含む場合、置換基は、ハロゲン、硝酸塩、イオウまたは亜硝酸塩でもよい。脂肪族基は、1つの位置またはいくつかの位置で置換されてもよい。各位置の置換基は、同じでも異なってもよい。
前記したように、R1からR1 *への酵素的変換後、化学的反応性基G1が形成される。G1の一部として使用される化学反応性原子には、特に限定されないが、窒素、イオウ、または酸素がある。本発明で使用される酵素には、特に限定されないが、アミダーゼ、エステラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、酸性およびアルカリ性ホスファターゼ、脱炭酸酵素、リパーゼ、グルコシダーゼ、キシロシダーゼ、トリプシン、およびキモトリプシンがある。R1の成分として使用される酵素基質には、特に限定されないが、アミド、エステル、リン酸塩、カルボン酸、脂肪酸、グルコース、キシロース、フコースまたはアミノ酸がある。
必須ではないが、R1はまた、R1からR1 *への酵素的変換後、G1とG2との相互作用が、基本的に安定なコンフォメーションであることが公知の5員環または6員環を作成するように、設計される。そのような中間体生成の例は、以下の
ように、R2の芳香環への結合として酸素を使用して証明される:
Figure 2010156713
上記したように、中間体構造は、内部置換反応を受け、これはG2基をR1 *残基のG1基に移動し、こうして酸素を放出し、不安定なフェノキシイオンを形成して、不安定な型のジオキセタンとし化学発光シグナルを産生する。剛性構造のセグメント上に各基を配置することにより引き起こされるG1とG2基の並置は、効率的な相互作用と以後の置換および転位を可能にして、酵素活性によるG1の産生後に光発生性中間体を生成する。
b.修飾酵素から得られる化学発光生成
本発明の別の態様において、化学発光シグナルの分解と産生に開始させる作用は、構造の特異的な基の酵素修飾である、新規1,2−ジオキセタン誘導体が開示される。これは、開始作用が置換基の切断である以前の例とは正反対である。好適なモードにおいて、置換基の修飾は、酵素反応に依存する。そのような組成物の例は、以下により与えられる:
Figure 2010156713
上記略図において、QとZは既に記載したものであり、Rは、C、N、O、Sまたは他の任意の必要な原子からなる原子鎖を含む。Rはまた、飽和または不飽和基を含む。さらにR’は、特に限定されないが、アルコールまたはカルボキシル基を含む。光産生反応に至る修飾反応には、特に限定されないが、酸化と還元がある。本発明のこの態様で使用される酵素には、特に限定されないが、オキシダーゼとリダクターゼがある。
末端アルコールを含むジオキセタン誘導体が、アルコール脱水素酵素の作用により酵素的にアルデヒドに変換される、このプロセスの代表例を以下に示す。
Figure 2010156713
次に、生じる生成物はβ脱離を受け、これは次に、不安定なフェノキシドイオンを形成させ、これが1,2−ジオキセタンの分解を開始させ、化学発光シグナルが生成される。
10.リアルタイムシグナル生成
本発明は、別個の核酸または複数の配列のライブラリーを標識するために使用可能な、シグナル生成法を開示する。本発明は、目的のアナライトを他の核酸配列の存在下で、特異的に標識するための方法と組成物を提供する。本発明はまた、さらなる核酸合成のためにそのような核酸を使用する過程で、目的の核酸の存在および/または量の検出に使用してもよい。これは、合成後分析、またはそのような合成過程のリアルタイム分析により行われる。本発明において、エネルギー移動対の少なくとも1つの第1の要素と、エネルギー移動対の少なくとも1つの第2の要素とを含む核酸が合成される。第1のエネルギー移動要素がエネルギードナーとして作用することができる時、第2のエネルギー移動要素はエネルギー移動アクセプターとして作用することができる。逆に、第1の要素がエネルギー移動アクセプターであり、第2の要素がエネルギードナーでもよい。この第2の要素は、第1の要素を含む同じ核酸鎖中に取り込まれるか、または核酸鎖に結合することにより、第1の要素と結合する。核酸合成または結合が無い時、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動はほとんどまたはまったく無い。しかし適切な設計により、本発明は、核酸合成中または合成後の、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動を可能にする。
本発明の種々の実施態様は、標識プライマー、プローブ、ヌクレオチド、核酸結合物質、および固体支持体を、エネルギー移動要素の供給源として使用する。本発明において、プローブとプライマーは、プライマーが伸長可能な追加の性質を有するという条件下で、相補配列に結合する共通の特徴を有する。核酸構築体はまた、本発明においてプライマー、プローブまたは鋳型として使用される。本発明において、核酸構築体は、目的の核酸のすべてまたは一部と同一または相補的な配列を有する核酸を含み、少なくとも1つの非天然のまたは人工的要素をさらに含んでよい。
核酸構築体を含む非天然のまたは人工的要素の例は、特に限定されないが、プロモーター配列、捕捉配列、本体タグ配列、共通配列、タンパク質結合配列、人工的プライマー結合配列、修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、非塩基部位、標識物、リガンド、ペプチドおよびタンパク質を含む。さらに核酸構築体は、アナライトを含有してもよい。これらは、元々のアナライト自体またはそのコピーでもよい。これらは、染色体、エピソームまたはこれらの断片から得ることができる。エピソームの例には、特に限定されないが、プラスミド、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、およびウイルスがある。
a.標識プライマー間のエネルギー移動
本発明のある実施態様において、第1と第2のエネルギー移動要素は、適切な核酸の存在下で伸長できる、少なくとも2つのプライマーまたは核酸構築体の成分である。これらのプライマーまたは核酸構築体の少なくとも1つは、目的の核酸の一部に存在する配列に相補的な配列を含むであろう。少なくとも1つの他のプライマーまたは核酸構築体は、目的の核酸の別の一部に存在する配列と同一の配列を含むであろう。こうして、目的の核酸を、プライマーまたは核酸構築体の結合と伸長のための鋳型として使用することができる。伸長したプライマーの標的からの分離または排除は、標的鎖が別のプライマー結合/伸長に使用されることを可能にする。さらに、その伸長したプライマー自体は、プライマー結合/伸長に使用することができる。従って、互いにハイブリダイズした2つの伸長したプライマーを含む生成物が作成されるであろう。本発明のこの態様において、前記の連続的プライマー結合/伸長に使用されるプライマーは、第1のエネルギー移動要素または第2のエネルギー移動要素を含む。各鎖のプライマーが互いに充分近いなら、これらは、ドナーからアクセプターへのエネルギー移動を可能にするであろう。この工程は、2本鎖標識核酸を作成するのに使用することができる。診断目的で特に有用なことは、この工程により発生するシグナルの程度を使用して、鋳型として使用される特定の核酸を存在と量を同定できることである。
シグナル量はまた、増幅法の導入により増加させることができる。例えば、所望の核酸標的の各鎖についてのプライマーの使用は、各プライマーの鎖伸長がさらなる合成のための鋳型を生成させる、多くの標的増幅法の基礎である。これらの方法は、PCR(米国特許第4,683,202号)で使用されるように分かれた工程に依存するか、またはSDA(米国特許第5,270,184号と5,455,166号)およびループ介在増幅(米国特許出願第09/104,067号;およびヨーロッパ特許出願EP0971039A)(これらのすべては参照することにより本明細書に組み込まれる)のような連続的等温法でもよい。すなわち本発明は、適切な核酸の合成量の合成後評価のために使用できるが、これはまた増幅中に起きる複数の合成工程(すなわち、リアルタイム分析)で使用することもできる。増幅は、標識プライマーの非存在下で使用されるものと同じ条件下で行われるか、またはシグナル生成の効率または選択性を上昇することができる追加の工程を含めてもよい。例えば、等温反応のリアルタイム分析のために、連続的にまたは選択された間隔でモニタリングが行われる。後者の方法では、追加の工程が行われ、分析のために試料が採取されるか、または特定の状態でシグナル生成または読みを促進するが、反応の継続を実質的に妨害しない熱工程が導入される。
先行技術では、診断目的の2本鎖合成核酸産物のプライマー位置の設計は、各鎖のプライマーが充分離れて位置し、そのため、これらの間に追加の配列(これは、プローブを用いるハイブリダイゼーションまたは制限酵素による性状解析に使用できる)を取り込むことができるようにすることである。すなわち、2本鎖合成核酸産物の配列は、2つの起源から得られる。第1に、プライマーから得られる固有の配列とその相補体がある。これらは、鋳型として使用される特定の標的セグメントに非依存性に存在する。第2に、プライマーセグメント間の配列がある。これらは、核酸合成の鋳型として使用される特定の核酸セグメントの性質に、完全に依存するであろう。増幅反応に使用されるプライマーの設計の本質、反応条件、および試料中の特定の核酸配列に依存して、特定の所望の配列のみが合成されるか、または他の所望ではない配列も合成される。診断目的には、プライマー間のセグメントは、所望の配列のみの存在と量に依存するであろうシグナルを生成するための標識プローブの標的として使用されている。
本発明のこの具体例において、プローブは増幅産物の検出のために使用されないため、プライマーセグメント間の伸長配列の要件は不要となる。実際、本発明は、アンプリコンの各末端のプライマー間の近接性が、シグナル生成の新規手段のために使用される、好ましい配置であることを開示する。1つの標的鎖のプライマーに第1の要素を導入し、相補的標的鎖のプライマーに第2の要素を導入することにより、各要素が異なる鎖の上にあっても、2本鎖アンプリコン中のこれらのプライマーの近接性が、ドナーとして作用する要素からアクセプターとして作用する要素へのエネルギー移動が起きることを可能にする。
前記したように、取り込まれたプライマーを有する2本鎖アンプリコンを与える一連のプライマー伸長反応に基づく種々の増幅系は、本発明のこの実施態様を享受することができるであろう。例えば図3は、a)PCRとb)SDAの増幅産物候補を示す。これらの増幅法に使用できる方法の詳細は、これらの各方法についての元々の特許を含む多くの刊行物に見られる(ムリス(Mullis)ら、米国特許第4,683,202号、およびウォーカー(Walker)ら、米国特許第5,270,184号と5,455,166号;参照することにより本明細書に組み込まれる)。これらの方法は異なる原理を使用するが、2本鎖核酸の各鎖中の標識プライマーまたは核酸構築体の存在は、本発明の使用を可能にする。さらに、既に開示されている他の方法も本発明で使用でき、マルチプライマー増幅(米国特許出願第08/182,621号;1994年1月13日出願;09/302,816号、1998年3月31日出願;および09/302,818号、1998年2月3日;および09/302,817号、1999年4月16日出願)、および逆オリゴヌクレオチドを用いる増幅(米国特許出願第5,462,854号)(これらのすべては、参照することにより本明細書に組み込まれる)がある。
既に記載されているように、本発明のこの実施態様は、各鎖上のプライマーまたは核酸構築体の間の近接性に依存する。第1のプライマーまたは核酸構築体から作成された伸長鎖について、これは、相補鎖を合成するための、取り込まれた第1のプライマーまたは核酸構築体から得られるセグメントと、第2のプライマーまたは核酸構築体の結合部位として使用できるセグメントとの近接性であるとも説明される。例えば、伸長鎖上で互いにすぐ隣接するこれらの2つのセグメントを有することにより、近接性は達成される。そのような場合、伸長鎖の核酸配列は、完全にタンパク質または核酸構築体の配列およびその相補体から得られるであろう。これをより明瞭に説明するために、本発明で使用される可能なプライマー配置を有する任意の配列を図4に示す。図4(A)において、プライマー用に選択された配列は、各鎖上で互いに隣接している。あるいは、増幅産物中でドナーとアクセプター間がエネルギー移動のために充分近接していれば、プライマーセグメントとプライマー結合セグメントとの間に空隙があってもよい。同じ標的配列を使用するより長い間隔の例を、図4(B)に示す。
シグナル生成の新規な系を可能にする以外に、プライマー結合領域以外はあまり含まないようにアンプリコンサイズを低下させることは、より伝統的な長いアンプリコンに対して利点を与えることに注意されたい。これらには、合成の量が最小になるため、各増幅ラウンドでのより短い伸長時間、狭い融点、および全体的高効率がある。また適切なエネルギー移動要素と検出系の選択は、複合増幅が、2つ以上の標的配列を追跡することを可能にする。
適切な標的配列の存在下では、より多くの標識されたプライマーが2本鎖核酸中に取り込まれるため、シグナル生成が増加する。このシグナル生成は、試料中の適切な標的分子の存在に、特異的でありかつ比例する。すなわち、各要素は、別個のプライマーまたは核酸構築体上に位置するため、核酸合成の非存在下では、ドナーとアクセプター分子間にほとんどまたはまったくエネルギー移動が無い。第2に、適切な標的鋳型の非存在下では、シグナル生成を、核酸合成がほとんどまたはまったく起きない反応条件下で行うことができる。これを行う1つの方法は、例えば3’末端で重複の無いプライマー配列を選択することにより、プライマー−ダイマー生成が最小になるように、プライマー自体を適切に設計することである。一方、プライマー結合配列とある程度の類似性を有する配列を有する非標的核酸が存在するなら、核酸合成が起きるが、核酸産物が、エネルギー移動が起きるように適切な長さに取り込まれるプライマーを有する可能性は低い。標的特異的シグナル生成を上昇させることができる別の方法は、いわゆる「ネステッド(nested)PCR」の使用による。この方法では、ほとんどの増幅は、標識プライマーの横に位置する第2セットのプライマーにより行われる。これを図3(C)に示す。標識プライマーは、減少した量で存在することができ、異なるアニーリング条件を必要とするか、または別の短い増幅反応で使用される。これは、プライマー−ダイマーまたは非標的配列の増幅における標識プライマーの関与を減少させるはずである。この具体例では、3’末端間にある程度の重複を有する標識プライマーまたは核酸構築体を用いて、標的依存性シグナルをうまく生成することが可能かも知れない。最後に、標的非依存性産物は、異なる長さおよび/または塩基組成を有し、従ってその熱プロフィールにより標的特異的2本鎖核酸と不適切な産物の区別を可能にする。前記したように、このプロフィールは、方法の一部として得られるか、または別の工程を導入してそのようなプロフィールを得てもよい。
本発明のこの具体例は、ヌクレオチドの取り込みについて説明したが、個々のヌクレオチドではなくポリヌクレオチドの添加に依存する、プライマー伸長手段もある。そのような方法として、LCR(米国特許第5,494,810号)とGAP−LCR(米国特許第6,004,286号)の2つの方法も、本発明の利点を享受する。これらの方法は、2セットの隣接オリゴヌクレオチドの使用に依存し、ここで各セットは、標的核酸の1つの特定の鎖に相補的である。本発明において、第1のエネルギー移動要素は、1つの鎖に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチド中であり、第2のエネルギー移動は、他の鎖に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチド中である。この方法による本発明の使用の例を図3(D)に示す。
b.標識プライマーとヌクレオチド間のエネルギー移動
本発明の別の実施態様において、第1のエネルギー移動要素を含む1つ以上のプライマーまたは核酸構築体は、第2のエネルギー移動要素を含む少なくとも1つのヌクレオチドとともに使用される。プライマーまたは核酸構築体への、標的鋳型に従うヌクレオチドの付加後に、1つのプライマーまたは核酸構築体中の第1のエネルギー移動要素と、取り込まれたヌクレオチド中の第2のエネルギー移動要素との相互作用により、エネルギー移動が可能である。プライマー伸長中に単一のプライマーまたは核酸構築体のみが使用されるなら、標識プライマーまたは核酸構築体と標識ヌクレオチドは、同じ鎖の上にあってもよい。結合/伸長の連続的ラウンドで、プライマーまたは核酸構築体が使用されるなら、線形増幅を行うことができる。
一方、前記したように、伸長プライマーまたは伸長核酸構築体を鋳型として使用することができる1つ以上のプライマーまたは核酸構築体の取り込みは、さらなる合成を可能にする。この場合、ヌクレオチド取り込みにより導入される第2のエネルギー移動要素は、伸長鎖およびその相補的コピーの両方でもよい。図5は、本発明のこの具体例を例示する種々の増幅法により作成される可能な増幅産物を示す。図5(A)、5(B)および5(C)において、増幅に使用される1つ以上のプライマーは、エネルギー移動要素を含有する。この図は、アクセプター要素(A)がプライマー中に存在し、ドナー要素(D)が、増幅中に取り込まれるヌクレオチド中に存在することを示すが、反対の構成も使用できる。本発明のこの具体的な態様において、プライマー間の空隙は、増幅を行うのに適した任意の所望の長さである。
前記したように、適切な標的のみからシグナルを選択的に生成するのに、種々の方法を使用することができる。これらには、プライマー設計、2本鎖核酸の熱プロフィール、およびネステッド(nested)増幅がある。本発明のこの具体例はまた、多重フォーマットが可能である。例えば、2つ以上の伸長プライマー種が合成されるように種々のプライマーが使用されるなら、これらは、ヌクレオチド中の共通のエネルギー移動ドナーと、各プライマー中の異なるエネルギー移動アクセプターとを使用することにより、互いに区別することができる。個々の核酸産物のそれぞれは、プライマー上のアクセプターのスペクトル特性により同定することができる。
先行技術は、第1のエネルギー移動要素を含むプライマーと、第2のエネルギー移動要素を含むジデオキシリボヌクレオチドの両方の使用を記載している(クウォック(Kwok)とチェン(Chen)、米国特許第5,945,283号)。本発明は、反応混合物中で鎖停止物質ではないヌクレオチドを使用し、従ってa)複数の取り込みを可能にする、およびb)所望であれば相補的核酸の合成のために、鋳型として伸長鎖を使用することができる充分な合成を可能にする、ヌクレオチドを使用する点で、先行技術とは異なる。
c.標識ヌクレオチド間のエネルギー移動
本発明の別の実施態様において、標識ヌクレオチドのみを用いる合成中に、シグナル生成が可能であることが開示される。この具体例において、合成は、第1のおよび第2のエネルギー移動要素を含む少なくとも1つのヌクレオチドの存在下で行われる。第1のエネルギー移動要素と第2のエネルギー移動要素を含むヌクレオチドは、例えばdUTPの混合物を使用して、同じヌクレオチドでもよく、一部はエネルギー移動ドナーで標識され、一部はエネルギー移動アクセプターで標識される。一方、これらは、例えばエネルギー移動ドナーで標識されたdUTPと、エネルギー移動アクセプターで標識されたdCTPを有する混合物を使用して、異なるヌクレオチドでもよい。
前記したように、第1のおよび第2のエネルギー移動要素を含むヌクレオチドの取り込みは、鎖伸長の単一のラウンド、線形増幅のための1つの鎖の伸長の複数のラウンド、または指数的増幅のための少なくとも1つの第2のプライマーまたは核酸構築体の提供により、起こすことができる。図5(D)は、ドナーとアクセプターの両方が標識ヌクレオチドを介して取り込まれているPCR増幅産物を示す。取り込みの非存在下では、あるヌクレオチドから別のヌクレオチドへのエネルギー移動はほとんどまたはまったく無いであろう。しかし、核酸鎖にいったん取り込まれると、これらは、エネルギー移動が起きることを可能にする位置にある。これは、同じ鎖内の鎖内相互作用によっても、または相補的鎖上のヌクレオチド間の鎖間相互作用によってもよい。具体的なヌクレオチド塩基は、完全にヌクレオチドからなるか、または標識ヌクレオチドと非標識ヌクレオチドの混合物でもよい。
PCRやSDAのような方法は、主要な生成物として2本鎖アンプリコンを産生するが、2本鎖DNAと1本鎖RNA型を行き来するNASBAのような系がある。これらの増幅法において、本発明は、DNAを標識するためのエネルギー移動標識デオキシリボヌクレオチド、またはRNA産物を標識するためのエネルギー移動標識リボヌクレオチドを提供することにより、使用される。後者の場合、RNA鎖中のドナー標識およびアクセプター標識リボヌクレオチドの存在は、鎖内エネルギー移動を可能にするであろう。前記したように、適切なアンプリコンからのみシグナルを選択的に生成するために、種々の方法が使用される。これらには、プライマー設計、2本鎖核酸の熱プロフィール、およびネステッド(nested)増幅がある。さらに、本発明のこの具体例のシグナル生成は、取り込まれたヌクレオチド間のエネルギー移動から得られるため、プライマーがエネルギー消光物質を含むシンガー(Singer)とホーグランド(Haugland)(米国特許第6,323,337B1号)が記載した方法も使用できる。この目的に使用される消光物質には、シンガー(Singer)とホーグランド(Haugland)(前述)が記載したフルオレセイン、ローダミン、ロドールまたはトリアリールメタン色素の非蛍光誘導体がある。
d.蛍光インターカレーターと標識プライマーまたはヌクレオチド間のエネルギー移動
本発明の前記の実施態様は、プライマーとヌクレオチドをエネルギー移動要素として使用した。本発明の別の実施態様は、核酸結合物質が、鎖伸長後のエネルギー移動要素として使用できることを開示する。米国特許第4,868,103号には、標識タンパク質とインターカレーターとが関与するハイブリダイゼーション測定法で、エネルギー移動を使用できることを既に記載している。この技術に対して、第1のエネルギー移動要素を有する標識プライマーまたは核酸構築体は伸長されて、第2のエネルギー移動要素を含み実質的に配列非依存性である核酸結合物質により結合される核酸を合成する。伸長鎖がその鋳型と塩基対合していてもまたは鋳型からの分離後でも、結合は起き、すなわち、伸長鎖は、2本鎖型でも1本鎖型でもよい。核酸結合物質は、核酸に対して高親和性を有するタンパク質でも化学物質でもよい。本発明で使用されるタンパク質の例には、特に限定されないが、T4遺伝子32タンパク質、SSBタンパク質、ヒストンおよび抗体がある。T4遺伝子32タンパク質とSSBタンパク質は、1本鎖核酸に対する親和性を有し、ヒストンは2本鎖核酸に対する親和性を有する。核酸およびRNA/DNAハイブリッドに対して特異的な抗体が、文献に記載されている(米国特許第6,221,581号と米国特許第6,228,578号)。蛍光標識物をタンパク質に結合させる方法は、当該分野で広く開示されている。1本鎖核酸に対して優先的な親和性を有する化学物質には、特に限定されないが、SYBR(登録商標)グリーンIIがある。2本鎖核酸に対して優先的な親和性を有する化学物質の例には、特に限定されないが、インターカレーターがある。本発明で使用されるインターカレーターの例には、特に限定されないが、アクリジン、臭化エチジウム、臭化エチジウムホモダイマー、SYBR(登録商標)グリーンI、TOTO(登録商標)、YOYO(登録商標)、BOBO(登録商標)およびPOPO(登録商標)がある。結合物質は、エネルギー移動要素を直接または間接に含むことができる。エネルギー移動要素で標識されたタンパク質は、間接的手段の例である。上記で列挙したインターカレーターは、直接手段の例である。
また核酸結合物質へのまたは核酸結合物質からのエネルギー移動は、所望であれば、標識プライマーではなく標識ヌクレオチドにより行われる。核酸が2本鎖型である時、本発明のこの実施態様は、一部のインターカレーターが、2本鎖核酸への結合により蛍光が増強するという能力を利用する。前記したように、この作用は、増幅反応中のリアルタイム核酸合成を追跡するのに使用される。しかし、単独で使用すると、この方法は、色素単独または1本鎖プライマーと結合する色素が示すバックグランドの量という欠点がある。非結合色素は、非取り込まれる標識ヌクレオチドとのエネルギー移動相互作用を受けないため、この欠点は本発明により克服される。従って本発明は、標識核酸結合物質単独を使用することと比較して、シグナル生成の選択性を増強する。
前記したように、適切な標的分子のみからシグナルを選択的に生成するのに、種々の方法が使用される。これらには、プライマー設計、2本鎖アンプリコンの熱プロフィール、およびネステッド(nested)増幅がある。
e.標識タンパク質とヌクレオチド間のエネルギー移動
核酸タンパク質が与える特異性が好ましい場合がある。すなわち、本発明の別の態様は、第1のエネルギー移動要素を含む少なくとも1つの核酸プローブが、第2のエネルギー移動要素を含むヌクレオチドとともに使用される、シグナル生成の新規手段を開示する。先行技術は、エネルギー移動標識プライマーとエネルギー移動標識配列特異的タンパク質の使用を記載している(ウィトワー(Wittwer)ら、米国特許第6,174,670号)。この技術に対して、本方法は、プライマーのみの近傍にあるプローブの使用に限定されず、所望の核酸鎖上の任意の位置にアニーリングするように設計されたプローブの使用を可能にする。さらに本発明は、伸長核酸の種々のセグメントをプローブ標的として使用することにより、複数のエネルギー移動プローブを使用する能力を付与する。すなわち、エネルギー移動要素を含むヌクレオチドを使用する時、標識核酸鎖への標識プローブのハイブリダイゼーション後にシグナル生成が起きる。
例えば、鎖伸長後、鋳型鎖の分離または除去が、1本鎖の伸長鎖へのプローブの結合を可能にし、こうしてプローブ中の第1のエネルギー移動要素と伸長鎖中に取り込まれた第2のエネルギー移動要素とで、エネルギー移動が可能になる。プローブ中の第1の要素へのまたは第1の要素からのエネルギー移動は、プローブにハイブリダイズしたセグメントから得られるか、またはこれらが充分に近傍にあるなら、隣接する1本鎖領域から得られる。本発明の別の例は、ループ介在増幅を使用する(米国特許出願第09/104,067号;ヨーロッパ特許出願EP0971039A)。この系により生成する構造の1つは、2本鎖ステムに隣接した1本鎖ループである。すなわち、本発明に開示されるように、プローブはループ領域中の配列に結合でき、取り込まれたヌクレオチドとのエネルギー移動反応を受けることができる。
本発明のこの実施態様において、特異性は2つの要因により与えられる。第1に、鎖伸長は、プライマー結合/伸長反応自体の特異性に依存する。第2に、プローブは3’末端でブロックされ、プライマー伸長反応の結果として合成される時は、適切な配列に結合することによってのみ参加する。
上記で開示した本発明の種々の実施態様は、均一測定系で使用することができる。しかし、本発明により、固体支持体の使用により与えられる利点もある。固体支持体への固定は、伸長反応の開始前に、鎖伸長中に、および鎖伸長の完了後に起きる。本発明で使用される固体支持体の例には、特に限定されないが、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、ガラススライド、プラスチックスライド、マイクロチップアレイ、ウェル、およびくぼみがある。支持体への固定は、直接または間接に行われる。間接的固定の例として、捕捉物質が固体支持体に結合される。この捕捉物質は、プライマー、核酸構築体、アナライトまたはアナライトのコピー中に存在する配列に相補的な配列、従ってハイブリダイゼーションにより固定可能な配列を有する核酸でもよい。捕捉物質の他の例は、核酸に対する親和性を有する抗体でもよい。(米国特許第4,994,373号、米国特許第4,894,325号、米国特許第5,288,609号;米国特許第6,221,581B1号;および米国特許第6,228,578号;これらのすべては参照することにより本明細書に組み込まれる)。
直接固定の例として、多くの前記実施態様は鎖伸長のプライマーを使用する。従って所望であれば、これらのプライマーは、伸長反応を行う前に、固体支持体に共有結合することができる。適切な核酸の存在下では、前記したように鎖伸長が起き、こうして、鎖伸長産物も直接固体支持体に結合する。第1のおよび第2のエネルギー移動要素は、固体支持体に固定されたプライマー中でもよく、および/またはこれらは、上記の種々の実施態様に記載のように、ヌクレオチド、プローブまたは核酸結合物質中でもよい。この例は、第1のエネルギー移動要素を含む遺伝子座の少なくとも1セットのプライマーと第2のエネルギー移動要素を含むヌクレオチドを用いる、ラッバニ(Rabbani)ら、米国特許出願第09/896,897号(2001年6月30日出願)(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載のマイクロアレイ上の増幅の使用であろう。適切な装置を用いて、次にチップ上の各遺伝子座は、増幅の過程で合成の程度について別々に追跡される。直接結合の別の例は、リガンドと適切なリガンド受容体を含む固体支持体を含む、プライマーの使用であろう。この構成の例は、ビオチンで標識されたポリTプライマーの使用と、固定のためにアビジンまたはストレプトアビジンで被覆されたビーズの使用であろう。第1のエネルギー移動要素を含むヌクレオチドは、ポリTプライマーを用いて作成したcDNAコピー中に取り込むことができ、そのRNA鋳型に結合したcDNAの複合体は、第2のエネルギー移動要素を含むインターカレーターに結合することができる。この例では、ビーズへのプライマーの結合は、鎖伸長の前、その最中、または後に起きる。
f.エネルギー移動要素を含む固体支持体
さらに固体支持体は、受動的な役割に甘んじてはいない。本発明の別の実施態様において、固体支持体は第1のエネルギー移動要素を含む。支持体への核酸の固定は、第2のエネルギー移動要素を、シグナルを生成するのに充分な近傍に持ってくることができる。本発明のこの実施態様において、第2のエネルギー移動要素は、ヌクレオチド、プライマー、プローブまたは核酸結合物質の一部でもよい。例として、アレイ上に核酸プローブを選択してマトリックスが作成される。次にマトリックスは、第1のエネルギー移動要素も表面に固定されるように処理される。適切な鋳型またはアナライトの存在下では、前記したように、第2のエネルギー移動要素を用いて一群の核酸が合成される。標識核酸をアレイにハイブリダイズさせることにより、第2のエネルギー移動要素が、表面に結合した第1のエネルギー移動要素の近傍にくる。次に、アレイ上の特定の遺伝子座に結合した核酸の量に対応するエネルギー移動によりシグナルが生成する。この原理ならびに前記の他の実施態様の一部の例を、図6に記載する。捕捉要素を有する固体支持体はまた、伸長反応の必要の無い方法で使用することができる。例えば、固体支持体、核酸に特異的な捕捉オリゴまたは抗体は、第1の要素を含有することができる。次に、1本鎖または2本鎖型の非標識アナライトが支持体に結合した後にシグナルが生成され、ここで第2の要素の存在は、支持体に結合されるアナライトの存在と量により決定される。例えば、第2の要素は、プローブまたは核酸結合物質の形の複合体の一部でもよい。
g.標識に使用される前の方法(a〜f)
標的依存性の鎖合成後の第1のエネルギー移動要素と第2のエネルギー移動要素からのシグナル生成は、試料中の目的の核酸の存在または量を検出するために使用することができる。シグナル生成がプライミングの特異性に依存する時、標的非依存性プライマー伸長が最小になる条件下で操作が行われるか、または前記したように、標的由来核酸と突発的な鎖伸長産物とを区別できる方法を含める。一方、核酸ハイブリダイゼーションの鑑別能力を利用する工程を含めることは、プライマー特異性の必要性を制限するかまたは不要にすることができる。例えば、ポリA mRNA配列の完全なライブラリーは、普遍的なポリTプライマーの使用によりcDNAコピーのライブラリーに変換することができる。次に、cDNA鎖のライブラリーは、第2の鎖の合成のための鋳型として無差別に使用することができる。第1の鎖プライマー(米国特許第5,891,636号)または第2の鎖プライマー(ラッバニ(Rabbani)ら、米国特許出願第09/896,897号(2001年6月30日出願)(参照することにより本明細書に組み込まれる)は、個々の元々のmRNAの複数のRNAのコピーを合成することを可能にする。この生成物またはcDNAコピーのいずれかを標識する時、核酸のマイクロアレイとのハイブリダイゼーションを使用して、元々の試料中の特定の分子種の量を決定することができる。本発明は、第1のおよび第2のエネルギー移動要素を、プライマー、ヌクレオチド、プローブ、核酸結合物質またはマトリックス自体に含めることにより、そのような方法とともに使用することができる。
一方、既知量の目的の核酸をユーザーが供給することができ、上記の種々の本発明に開示の実施態様を使用して、標識プローブを合成することができる。例えば、目的の核酸の単一の精製分子種は、1つまたは2つのプライマーとの標識反応のための鋳型として提供される。従って、別個の群の種々の核酸の標識が所望の場合、プライマーセットを伸長することができる。次に、前記の任意の手段により第1のおよび第2のエネルギー移動要素を含有させることにより、標識プローブ作成することができる。次にこれらのプローブを使用して、当業者に公知の種々のフォーマットのいずれかの、試料中の非標識核酸の存在または量を同定することができる。
h.プライマー伸長基質としてのアナライト
目的の核酸または目的の核酸のコピーもまた、末端トランスフェラーゼ付加、結合、またはプライマーとして作用させることにより、鎖伸長により直接使用することができる。例えば、個々の核酸または核酸ライブラリーの3’末端への、第1のエネルギー移動要素の鋳型非依存性付加により、末端トランスフェラーゼを使用することができる。次に、第2のエネルギー移動要素を、末端付加反応の一部として含めるか、またはこれらは、プライマー、プローブ、核酸結合物質、または固体支持体を含むことができる。別の例において、DNAの制限消化後に、第1のおよび第2のエネルギー移動要素を用いてヌクレオチド混合物の末端付加を行う。次に、核酸の個々の分子種を、アレイ上の別個の遺伝子座上の種々の捕捉配列にハイブリダイズさせて、個々の標識配列の存在または量を測定する。
類似体またはアナライトのコピーを、鋳型依存性標識反応のプライマーとして使用できることも、本発明の主題である。この点で、鋳型に従う合成は、適切なハイブリダイズされた鋳型中の成分に対応する類似体中の別個の配列の存在に依存するため、取り込み自体も測定法として使用することができる。すなわち、所望の核酸配列は、混合物中に存在し得る他の核酸の存在下で、特異的に標識することができる。少なくとも1つのセグメントは、所望のアナライト配列に一致するように設計されるが、使用される鋳型のセグメントが、アナライト上に付加される配列を決定する。
類似体またはアナライトのコピーを、鋳型依存性標識反応のプライマーとして使用できることも、本発明の主題である。この点で、鋳型に従う合成は、適切なハイブリダイズされた鋳型中の成分に対応する類似体中の別個の配列の存在に依存するため、取り込み自体も測定法として使用することができる。すなわち、所望の核酸配列は、混合物中に存在し得る他の核酸の存在下で、特異的に標識することができる。少なくとも1つのセグメントは、所望のアナライト配列に一致するように設計されるが、アナライト上に付加された配列に向くように用いられる鋳型のセグメントは、天然の配列でも任意の配列でもよい。
11.所望の核酸セグメントの断片化および/または取り込み
a.アナライトの末端への所望の核酸配列の鋳型依存性付加
本発明の別の態様は、アナライトまたは標的核酸への所望の核酸配列の鋳型依存性付加のための、新規組成物と方法を提供することである。先行技術において、mRNA操作のための多くの方法の基礎として、ポリA配列が使用されている。さらに、mRNAの有用性は、そのような操作のいずれかおよびすべてを行うための鋳型としてのその使用に由来する。例えば、ポリAは、cDNAコピーを作成し、mRNAの線形または指数的増幅を行うためのプライマー結合部位として使用されている。しかし、前記したように、この特徴は、すべてのRNA標的で普遍的に共有されている訳ではない。さらに、これはmRNAの3’末端の選択的特徴である。先行技術に対して本発明は、アナライトまたは標的核酸を鋳型としてではなく、鎖伸長の基質(すなわち、プライマー)と見なして使用することにより、核酸分析の限定された範囲を克服する。従って、これらの方法で提供される核酸構築体は、プライマーとしては使用されず、ユーザーが所望する任意の配列を、アナライトまたは標的核酸が取り込むことを可能にする鋳型として作用する。そのような配列には、プロモーター、プライマー結合部位、またはシグナル生成残基を含む。
本発明において、核酸分析で使用することを目的とする方法はまた、任意の所望の核酸アナライトでも使用し得る。アナライトまたは標的核酸は、RNAまたはDNAならびにRNAまたはDNAのコピーからなってもよい。アナライトまたは標的核酸は、生物的試料から抽出されるか、またはこれらは、インビトロで産生されてよい。これらはまた、消化、断片化、増幅、抽出および分離のような操作および方法を受けていてもよい。
本発明は、核酸の末端が、2つのセグメントを有する相補的キメラ核酸構築体(CNACs)にハイブリダイズできることを開示する。第1のセグメントは、アナライトの3’末端に結合またはハイブリダイズすることができるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む。第2のセグメントは、アナライトの3’末端の伸長のための鋳型として使用できるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む。先行技術とは異なり、アナライトの末端のポリAセグメントのような選択された配列の存在に依存しない方法が開示されるが、本発明は、アナライトのまたはアナライトのライブラリーの3’末端に存在してもよい任意のかつすべての配列が、結合と鋳型依存性伸長反応のための部位である方法を開示する。本発明において、鋳型依存性鎖伸長は、個々の核酸の取り込み(重合)により、またはあらかじめ合成されたオリゴヌクレオチドの付加(結合)により、起きる。結合が代わりに使用される時、3’伸長はポリメラーゼに支配される方法に特徴であるため、本発明は一般的に3’伸長で説明されるが、5’末端もまた、鋳型依存性鎖伸長のための適当な基質である。標的またはアナライト核酸の3’末端に任意の核酸配列を導入する能力は、アナライトをさらなる操作のために使用可能なプローブまたは核酸構築体に変換するための、単純で強力なビヒクルを提供する。種々の配列を有する核酸のライブラリーはまた、シグナル伝達目的、プライミング、捕捉または増幅のために、制御されたかつ測定された方法で直接、さらなる操作のために後に使用し得る普遍的な配列を有するライブラリーに変換される。
本発明の1つの具体例において、第1のセグメントがヌクレオチド配列のすべての可能な組合せを含むCNACsのセットが使用される。すなわち、CNACsのセットの第1のセグメントが6つの可変ヌクレオチドを含むなら、第1のヌクレオチド(N1)はG、TまたはCで、第2のヌクレオチド(N2)はG、AまたはCなどでもよく、このセット自体は46(4,096)の異なるCNACsを含むであろう。この点で、これは、核酸コピーの合成のためのランダムプライマーの使用と類似性を有する。しかし本発明は、CNACsはそれ自体伸長しない(すなわち、プライマーとして作用する)が、そのアナライトに対して相補的結合を提供し、CNACsの第2のセグメントが、アナライトの鋳型依存性伸長に使用できるようになる点で、ランダムプライミングとは異なる。このために、CNACsの末端はブロックされることが好ましい。すなわち、本発明はランダム配列を使用するが、互いをプライマーと鋳型として使用するランダムプライマーの副反応は完全に避けられる。本発明はまた、アナライトの特定の部位へのランダムプライマーの結合が伸長を可能にする点で、異なる。本発明において、CNACがアナライトの末端で相補的配列に結合する時のみ、伸長が起きる。アナライト鎖の複数の部位上でCNACsのランダムな結合と解離が起きるが、実際には末端への結合の動的な好みがあるため、これは平衡状態ではない。例えば、アナライト中の3’OHと相補的CNACの並置は、ポリメラーゼに結合することができ、内部部位に結合したCNACより安定な複合体を形成することができる。複合体形成により末端へのCNACの結合のより長い半減期を提供する以外に、複合体は、アナライトを伸長して、より安定な型を生成し、こうして相補的に塩基対合している塩基の数を増加させる。この平衡喪失は等温反応で行われるか、または所望であれば、反応温度を上げて非生産性結合部位からのCNACsの解離を促進し、次に同じ反応温度に戻して、別のラウンドのアナライトへのCNACsの結合を促進する。所望であれば、これらの可変条件は複数回繰り返して、鋳型依存性付加を受けるアナライト末端の量を最適化することができる。
本発明のさらなる目的は、ユニバーサル塩基(すなわち、2つ以上の相補的塩基と塩基対合することができる塩基)を用いて合成されたCNACsを使用する新規組成物と方法を開示することである。ユニバーサル塩基を含むヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、複雑さを増すことなく安定性に寄与することができる。従って本発明のこの態様において、前記の2つのセグメントを含む新規CNACが開示されるが、ヌクレオチドの並べ換えを利用する代わりに、配列特異性の無いユニバーサル塩基が第1のセグメントで使用される。例えば、6つの位置での並べ換え(従って4,096個の異なるCNACsを必要とする)を含むCNACsのセットを有する例を上記した。ユニバーサル塩基を使用することにより、末端の配列に無関係に、類似体または類似体のセットに、所望の核酸配列の鋳型依存性付加を提供するのに、単一のCNAC種が必要なだけである。ユニバーサル塩基は、必ずしも区別の完全な欠如や特定のヌクレオチドに結合する能力の欠如を示すものではないため、異なるユニバーサル塩基またはユニバーサル塩基類似体、またはユニバーサル塩基とユニバーサル塩基類似体との異なる混合物を含む、CNACsのセットを使用することが、可能でありかつ好ましくさえある。前記したように、この方法は、CNACが3’末端に結合するまで、CNACsが、アナライトのランダムセグメントへのユニバーサル塩基の一連の結合と解離を受ける、自己選択性プロセスが関与する。この具体例において、各CNACはユニバーサル塩基対合能を有し、生産性伸長は、アナライトの3’末端とCNACの第2のセグメントとの関係に最も相関するため、末端での塩基対合は問題ではない。合成される最初の塩基が、第2のセグメントの最初の塩基の相補体であるように、CNACの第2のセグメントの開始が、アナライトの3’末端と整列する効率的な鎖伸長が起きることができる。一方、ユニバーサル塩基はまた、鋳型として使用可能なある程度の能力を有し、従って、アナライトの3’末端が、CNACの第1のセグメントと第2のセグメントとの結合部に完全には隣接していないハイブリッドは、アナライトの鎖伸長を行うことができるはずである。
本発明のさらなる目的は、CNACが、ヌクレオチドの並べ換えとともにユニバーサル塩基を含む、新規組成物と方法を開示することである。この具体例においてCNACは、3つの異なるセグメント(第1のセグメントがユニバーサル塩基を含有し、第2のセグメントが1つ以上の位置で並べ換えシリーズの別個のヌクレオチドであり、第3のセグメントが3’末端の伸長のための鋳型として使用可能な核酸を含む)を含むと考えられる。すなわち本発明は、並べ換えられた第2セグメントアンカーによる特異的塩基対合により与えられる選択性とさらなる安定性とともに、第1のセグメントのユニバーサル塩基の複雑さの無い安定性を享受することができる。すなわち、もしCNACの第1のセグメントに使用されるユニバーサル塩基が正常の核酸間の塩基対合の結合親和性の約半分を有するなら、4つの可変ヌクレオチド位置と4つのユニバーサル塩基を含むCNACsのセットは、ランダムヘキサマーと同じ平均Tmを有するであろうが、44すなわちわずかに256の異なるCNACsが必要なだけであろう。これは、ヘキサマー並べ換えである第1のセグメントで必要な4,096の異なるCNACsとは異なる。同様に4つのユニバーサル塩基と6つの可変位置を有するCNACは、4,096の異なるCNACsを含むであろうが、48の並べ換え(すなわち、65,536の異なるCNACs)を必要とするランダムオクタマーの第1のセグメントを有するCNACsと同様の結合性を有するであろう。
従って、その由来に無関係に、任意のアナライトの末端に存在するであろうすべての可能な並べ換えの組合せをカバーできるであろうし、同時に、第1のセグメント中のユニバーサル塩基は、さらなる特異性を負荷することなく、追加の結合安定性を提供するため、適度に高い結合効率と能力を享受できるであろう。すなわち、反応混合物中の同じ数のCNAC分子について、前記例のアナライトの特定の3’末端に結合する濃度より16倍高い濃度のCNACsが、有効にあるであろう。これは、並べ換えセグメントのみを有するCNACsと比較して、優れた速度と効率とを提供する。
ユニバーサル塩基(すなわち、2つ以上の相補的塩基と塩基対合することができる塩基)はまず、ヌクレオチド配列の正体が不明であった標的核酸との安定なハイブリダイゼーションを維持するために、オリゴヌクレオチド中で使用された。この公知の例は、PCRプライム中のイノシンの置換である(リウ(Liu)とニコルス(Nichols)、(1994) Biotechniques 16:24-26)。イノシンは、相補鎖中のG、A、TまたはCと効率的に塩基対合できる性質を有する(カワセ(Kawase)ら、1986, Nucleic Acids Res. 19:7727-7736)。融点は、通常の塩基対合より低いが、ミスマッチよりは高い。鋳型として使用される時、イノシンは、有効にGであるように認識され、Cが優先的に相補的コピー中に取り込まれる。ユニバーサル塩基として作用するヌクレオチドの他の類似体も記載されている。例えば、5−ニトロインドレニンと3−ニトロピロール類似体もまた、ユニバーサル塩基として記載されている(ローケス(Loakes)とブラウン(Brown)、1994, Nucleic Acids Res. 22:4039-4043、ニコルス(Nichols)ら、1994, Nature 369:492-493、これらは両方とも、参照することにより本明細書に組み込まれる)。これらのおよび他のユニバーサル塩基の使用は、ローケス(Loakes)の総説、(2001) Nucleic Acids Res. 29:2437-2447がある(参照することにより本明細書に組み込まれる)。ユニバーサル塩基がプライマーの複雑さを付加することなく安定性を加える能力は、ボール(Ball)らにより記載され(1998, Nucleic Acids Res. 26:5225-5227、参照することにより本明細書に組み込まれる)、5’末端の5−ニトロインドレニン残基の付加は、サイクル配列決定に使用されるオクタマープライマーの特異性とシグナル強度を改善した。すなわち、これらのおよび他のユニバーサル塩基は、本発明において使用される。
前記したように本発明は、核酸または核酸断片を鋳型依存性伸長に使用することを可能にし、ポリAテイルへの依存性を不要にする。アナライト鎖中に取り込まれる所望の核酸(または目的の核酸)は、任意の核酸または核酸断片を、以前はポリアデニル化核酸により享受された機能を実施できるプライマー結合配列を提供する型に変換することができる。CNAC中の所望の核酸(または目的の核酸)としてプロモーターを取り込むことにより、線形増幅を実施することができ、ポリA標的について既に記載されている方法のいずれかを使用して、所望のプライマー結合核酸配列を用いて、指数的増幅をすることができる。さらに、アナライトへの核酸の鋳型依存性取り込みはまた、取り込み工程で標識ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを使用して、類似体を直接標識する機会を提供すると考えられる。
基質としての利用しやすさや便利さのために、ポリA mRNAに研究の焦点が当てられてきた。本発明は、従来ポリAに与えられたものと同じ使用の容易さで、非ポリアデニル化核酸を操作することを可能にする。すなわち本発明は、DNA、hnRNA、snRNA、tRNA、rRNA、細菌mRNA、またはポリA配列が欠如した任意のRNAで使用することができる。ポリA mRNAでさえ、本発明で使用することができる。3’ポリAテイルへの依存により、この末端に含有される情報に偏見が生まれた。先行技術のほとんどの方法では、mRNAの他端の配列はまだ、3’でプライミングが起きる効率に依存した。従って、5’末端とポリA末端とのコピープロセスまたは切断の妨害は、試験または操作に利用可能な5’配列の量を減少させた。すなわち、大きなmRNA分子中の単一のニックでさえ、分子の5’末端の使用を排除し、多くの報告や市販品でさえ、単離中のmRNAの5’末端と3’末端の連続性の保持に向けられている。本発明は、ポリAに非依存性である方法を開示するため、ポリA領域から分離されたポリA RNAの断片は、使用と研究に利用可能になる。
実際、ポリA mRNAのすべてのセグメントは、その3’末端との関係からの偏り無しで、独立にかつ効率的に使用することができるため、そのような断片化プロセスは有利である。この断片化は、充分活用されていない研究分野になっているhnRNAにとって、特に有用であろう。このように無視されてきたことは、hnRNAの2つの特徴から来ている:ハンドルとしてのポリAが無いこととサイズが非常に大きいこと。hnRNa中に存在するイントロンは、最終遺伝子産物のコード配列が欠如しているが、調節、制御、および他の遺伝子および遺伝子産物との相互作用に重要な、最終生成物中に現れない多数の配列が存在する可能性がある。本発明は、hnRNA中に配列する配列を、従来ポリA mRNAがそうであったように、完全に利用可能にする。
本発明の多くの実施態様は、RNA分析について記載されるが、これらの方法の多くは、DNA断片にも容易に応用可能であることを指摘する。前記断片化法で使用される方法は、物理的でも酵素的でもよい。物理的手段は、化学的方法ならびに機械的剪断および音波破壊がある。本発明で使用される断片化の酵素的手段には、特に限定されないが、S1ヌクレアーゼ、大豆ヌクレアーゼ、RNase、DNase、および制限酵素のようなエンドヌクレアーゼがある。所望であれば、伸長可能な3’末端を提供するために、アナライトをホスファターゼで処理できることは、本発明のさらなる目的である。本発明のCNACは、DNA、RNまたはこれらの任意の組合せを含有してもよく、ヌクレオチドは、所望により、修飾されても修飾されなくてもよい。CNACsは、標準的ヌクレオチドを含有しても、またはヌクレオチド類似体、糖類似体、およびリン酸塩類似体を含有してもよい。これらのそれぞれの例は、ペプチドヌクレオチド(PNAs)、アラビノシドおよびホスホロチオエート結合である。
b.シス特異的断片化のためのCNAC
複雑さを増すことなく安定性を提供するユニバーサル塩基の有用性は、他のプロセスでも応用される。本発明の別の態様は、アナライトまたはアナライトのライブラリーの制御断片化のための組成物と方法を開示する。2つのセグメント(非特異結合を提供するためのユニバーサルヌクレオチドを含む第1のセグメント、およびエンドヌクレアーゼ性消化を提供する複合体を形成する、分かれた選択された配列を有する第2のセグメント)を含む、新規CNACが開示される。適切なハイブリダイゼーション条件下で、CNACは、CNACの第2のセグメントに充分に相補的な、アナライト中の各位置でエンドヌクレアーゼ感受性部位を形成する。選択された配列のサイズと性質は、エンドヌクレアーゼ部位間の平均間隔を決定し、従って、断片の具体的な平均サイズを決定する。例えば、4つまたはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドを有する第2のセグメントは、RNaseHの基質である複合体を形成するはずである。これにより、第2のセグメントに相補的なアナライト中の各部位が切断される。平均して、特定の4塩基配列が、約250塩基毎に現れるはずである。2つ以上のCNACを使用することによりより小さいサイズの分布も得られ、こうして、可能な消化部位の数が増える。所望であれば、より大きな第2のセグメントが使用でき、より少ない間隔で複合体が形成されるようにハイブリダイゼーション/消化条件が適用され、こうして断片サイズのより大きな平均分布が得られる。第1のまたは第2のセグメントに別個の塩基を付加し、これらの塩基の正しい塩基対合により生成する安定性で、安定なハイブリッドのみが形成される条件を使用して、特異性を上昇させてもよい。
1本鎖DNAの消化に、同じ方法を適用することができる。CNACの第2のセグメントを、制限酵素の認識部位を有するように設計することができる。ほとんどの制限部位は4〜6塩基のみであるため、CNAC中にユニバーサル塩基が存在すると、4〜6塩基セグメントのみを使用するより、はるかに安定なハイブリッドを提供するはずである。本発明のこの具体例において、第2のセグメントは断片化に使用されるが、これはまた、エンドヌクレアーゼ性消化後に断片化アナライト中に所望の核酸配列を取り込むための、鎖伸長の鋳型としても使用される。前記したように、これは、その末端でアナライト断片を標識するための、標識ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの鋳型依存性取り込みのための手段を提供することができる。
所望であれば上記CNACは、第3のセグメントをさらに含むことができる。例えば、第3のセグメントは、第2のセグメント中の分かれた塩基の反対側に隣接する別のセットのユニバーサル塩基を含むことができる。CNACは、式「Un−Dp−Uq 」で示され、ここで「n」は、第1のセグメント中のユニバーサル塩基の数であり、「p」は、第2のセグメント中の分かれた塩基の数であり、「q」は、第3のセグメント中のユニバーサル塩基の数である。追加の第3のセグメントは、追加の安定性を提供するか、またはハイブリダイズした第2のセグメントを、エンドヌクレアーゼ性分解消化のより効率的な酵素基質としてもよい。あるいは、第1と第2のセグメントは上記したものであり、第3のセグメントは、前記したように1つ以上の標識物または所望の核酸配列の取り込みのための鋳型を提供する分かれた核酸配列である。ユニバーサル塩基は、無差別な結合を可能にするため、CNAC中の分かれた塩基と正しい整列を含むハイブリダイゼーションのみが、CNACとアナライトとの安定なハイブリッドを形成する条件下で、反応が起きることができる。あるいは、非生産性に結合し、アナライト上の実質的にすべての所望の部位が消化されるまで、部位特異的断片化に至る追加の結合を可能にするCNACsを解離するために、熱サイクリングを行うことができる。
c.消化/伸長のためのCNACs
本発明の別の態様において、第1のセグメントが第1のアナライト核酸配列に相補的で、第2のセグメントが第2のアナライト核酸配列に相補的な、少なくとも2つのセグメントを含む新規CNACsが開示される。アナライト核酸と混合後、第1のアナライト核酸配列への第1のセグメントのハイブリダイゼーションが、特定のエンドヌクレアーゼに対して耐性の第1の複合体を形成し、第2のアナライト核酸配列への第2のセグメントのハイブリダイゼーションが、エンドヌクレアーゼの基質である第2の複合体を形成するように、CNACは設計される。さらに、第2の複合体は、アナライト鎖のみが、ニッキングまたはエンドヌクレアーゼによるヌクレオチドの除去を受けるように、不斉切断をすることができる。この処理により、アナライト鎖中に新しい3’末端が生成し、これは次に、アナライト鎖へのヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの鋳型依存性付加のために使用することができる。
CNACはさらに、第3のアナライト核酸配列に相補的でも相補的でなくてもよい第3のセグメントを含む。CNACの第3のセグメントは、第3のセグメントが、エンドヌクレアーゼ性分解消化に感受性の第3の複合体を生成しない点で、第2のセグメントから区別される。第3のセグメントは、第3のアナライト核酸配列に相補的ではない時、第3の複合体は決して形成されない。一方、第3のセグメントが第3のアナライト核酸配列に相補的である時、第3の複合体が形成されるが、第1の複合体を耐性にするために使用することができる手段のいずれかにより、エンドヌクレアーゼ耐性が与えられる。エンドヌクレアーゼ消化後、第2のおよび第3のセグメント中の配列は、末端の作用により形成されている3’末端からの鎖伸長のための鋳型として作用する。鎖伸長は、鋳型依存性重合酵素(DNAポリメラーゼまたは逆転写酵素)、または鋳型依存性結合酵素(DNAリガーゼ)により行われる。エンドヌクレアーゼ消化により生成する断片は、所望により3’末端または5’末端にリン酸基を付加または除去するために、キナーゼまたはホスファターゼ処理をさらに受ける。
本発明で使用されるアナライトは、CNACとエンドヌクレアーゼの性質に依存して、DNAまたはRNAであり得る。本発明で使用されるアナライト中の配列は、アナライトのライブラリーのすべてまたはほとんどに存在する、分かれた個々の配列、コンセンサス配列、または包括的配列でもよい。本発明で使用されるRNAの例は、特に限定されないが、hnRNA、rRNA、mRNA、tRNA、またはsnRNAを含む。本発明で使用されるDNAの例は、特に限定されないが、染色体、1本鎖、プラスミド、ウイルス、細菌DNAを含む。第2の複合体の消化は、RNaseHのようなエンドヌクレアーゼおよび制限酵素により行われる。CNACとのハイブリダイゼーションの前に、標的核酸またはアナライト核酸はまた、消化、断片化、抽出および分離を含む前処理を受ける。これらの断片化前処理は、剪断、音波処理または化学処理のような物理的手段を含むことができる。前処理はまた、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ処理を含んでよい。前処理のために本発明で使用されるエンドヌクレアーゼの例は、特に限定されないが、S1ヌクレアーゼ、大豆ヌクレアーゼ、制限酵素、DNAse、リボヌクレアーゼHおよび他のRNaseがある。
キメラ核酸構築体ポリマーの種々のセグメントは、同じまたは異なる骨格を含んでよい。例えば、CNACの第1のセグメントがオリゴリボヌクレオチドを含み、第2のセグメントがオリゴデオキシヌクレオチドを含んでもよい。一般に、糖−リン酸骨格は、リン酸塩、リボース、またはデオキシリボースのような天然の要素を含むか、またはホスホロチオエートのようなリン酸塩の類似体、アラビノシドのような糖の類似体を含有してもよい。所望であれば、CNACの3’末端または5’末端をブロックして、プライマーとして作用させるかまたは結合に参加するのを防いでもよい。CNACのセグメントはさらに、ポリペプチドのような合成骨格を含有してもよい。塩基が、塩基対合が起きるように正しい配向で加えられるなら、任意の合成ポリマーを骨格として使用することができる。この能力と有用性を有する合成ポリマーのようなの顕著な例は、ペプチド核酸(PNA)である。塩基は、天然の精製およびピリミジン塩基、ならびにこれらの修飾型からなってよい。塩基はまた、天然の塩基の類似体を含んでよい。例えば、本発明のこの実施態様で、前記したユニバーサル塩基を使用してもよい。CNACの異なるセグメントは、同じかまたは異なる骨格を含み、所望の機能に依存して、任意の塩基構造体または要素であってよい。すなわち、上記の種々の成分および要素から所望のCNACを構築することができる。成分の具体的な選択は、使用されるアナライトとエンドヌクレアーゼの性質に依存するであろう。
例えば、アナライトがRNA分子なら、第1のセグメントの骨格がオリゴリボヌクレオチドを含み、第2のセグメントの骨格がオリゴデオキシリボヌクレオチドを含む時、RNaseHをエンドヌクレアーゼとして使用することができる。従って、第1のセグメントのRNAアナライトへのハイブリダイゼーションは、リボヌクレアーゼHに耐性の2本鎖RNAの第1の複合体と、RNaseH活性の基質であるRNA−DNAの第2の複合体を作成する。RNaseHで処理すると、第2の複合体に関与するRNAアナライトのすべてまたは一部を非対称的に切断するが、第1の複合体のRNA−RNAハイブリッドおよびCNACの第2のセグメントを無傷で残すであろう。前記したように、CNACはまた、第3のセグメントを含んでよい。前記例において、第3のセグメントがRNAアナライトに相補的なら、第3のセグメントはまた、アナライトへのハイブリダイゼーションが、RNaseHの作用に対して耐性であるRNA−RNAハイブリッドを生成するように、オリゴリボヌクレオチドを含んでよい。あるいは前記したように、第3のセグメントはRNAアナライトには相補的ではなく、ハイブリッドは形成されない。
本発明のこの態様を実施するのに使用される具体的なエンドヌクレアーゼの選択は、多くの要因に依存する。エンドヌクレアーゼは、ヌクレオチドのニッキングまたは除去の基質としてアナライトを利用できなければならないため、主要な要因はアナライトの性質である。第2に、エンドヌクレアーゼは、そのようなニッキングまたは除去が実質的に非対称であり、アナライト鎖中で起きる状況を可能にしなければならない。第3に、エンドヌクレアーゼは、第1のまたは第2の複合体がエンドヌクレアーゼの作用に対して実質的に耐性であり続けることができるような状況を可能にしなければならない。最後に、エンドヌクレアーゼは、CNACとの第2の複合体の形成に参加するアナライトの部分にのみ作用する、充分な特異性を有する必要がある。前記RNaseHを用いる例は、これらのすべての基準を満たすことがわかる。
他の例は、本質的に非対称切断を与えるエンドヌクレアーゼを利用することであろう。例えば、制限酵素N.BstNBIを用いる2本鎖DNAの消化により、認識配列5’GAGTC3’から4塩基下流の1つの鎖でのみニックが生じる。すなわち、この配列に相補的なオリゴデオキシリボヌクレオチド配列を有するキメラ核酸構築体の第2のセグメントと、第2のセグメントの結合部位に隣接する配列に相補的な第1のセグメントを設計することができるであろう。そのような方法で、CNACをアナライトにハイブリダイズすることにより第2の複合体が形成される時、2本鎖DNAはこの特異的制限酵素の基質であり、アナライト配列のみが切断を受けるであろう。前記したように、CNACは、エンドヌクレアーゼ消化により作成されたニックの3’末端への付加により、新規核酸配列の導入のための鋳型として作用することができる第3のセグメントを含有してもよい。この例は、CNACが、化学的に均一な分子である時でさえ、「キメラ」と見なされることの例示である。例えば、上記CNACは、オリゴデオキシリボ核酸のみを含む3つのセグメントを用いて合成することができる。本発明においてこれは、各セグメントが異なる機能的性質を有する(すなわち、第1のセグメントは、相補的塩基対合と安定性を与える;第2のセグメントは、エンドヌクレアーゼ感受性を提供する;および第3のセグメントは、鎖伸長の鋳型を提供する)ため、キメラ分子であろう。この方法はまた、前記で開示した本発明の他の実施態様と組合せてもよい。例えば、2つのセグメントを有するCNACは、前記の非対称エンドヌクレアーゼによる認識と消化に必要な部位でのみ、特異的ヌクレオチドを有するユニバーサル塩基を含むことができる。
本発明のこの態様がいかに実施されるかの別の例は、成分が修飾されるかまたは類似体を含む、人工的または合成の第2のセグメントの使用であろう。そのような修飾または類似体は、a)第2のセグメントとアナライトとの間でハイブリダイゼーションを起こさせる、b)エンドヌクレアーゼ消化を受けやすい複合体を生成するアナライトとのハイブリダイゼーション、およびc)第2のセグメントは、エンドヌクレアーゼの作用に実質的に耐性のままである限り、この目的のために使用される。例えば、第2のセグメントは、塩基間のホスホロチオエート結合を含む。2本鎖分子中の制限酵素部位が、非修飾セグメントとホスホロチオエートセグメントとを含む時、非修飾セグメントのみが切断を受けることは、従来から知られている(米国特許第5,270,184号、および米国特許第5,455,166号;参照することにより本明細書に組み込まれる)。すなわち第2のセグメントの制限酵素配列中に1つ以上のホスホロチオエート結合を有するCNACは、アナライトの相補的セグメントとハイブリダイズすることができ、アナライト鎖のみがエンドヌクレアーゼ消化を受けるはずである。
一般に、第3のセグメントは、標的核酸に関連するかまたは関連しない任意の配列セグメントを含有してもよい。第3のセグメントは、その上で、切断された標的核酸またはアナライトがプライマーとして作用する鋳型を提供し、こうして、所望の核酸配列がアナライト中に導入されることを可能にする。アナライトへのそのような鋳型依存性配列導入を介して、シグナル残基または他の要素(例えば、プライマー結合配列)を、直接アナライト中に導入することができる。さらに、そのような方法により、ユニバーサル配列を、アナライト核酸に導入することができ、これは後に、米国特許第5,891,636号、およびラッバニ(Rabbani)らの米国特許出願第09/896,897号(これらの両方とも、参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載のように、アナライトのコピーを調製するための、ユニバーサルプライマーまたはプライマー指令プロモーター系の導入のための鋳型として作用する。核酸断片を、そのような方法によりそのような構築体に変換することができるという事実は、3’末端配列への偏り無しで、核酸ライブラリーの均等な増幅を提供するであろう。さらにそのような配列は、プライミングまたは捕捉のために直接または増幅後に使用されるであろう。場合により、エンドヌクレアーゼ切断が残りのアナライト中の遊離3’−OHを残さないなら、残りのアナライトをホスファターゼで処理して3’−OHを作成することができ、これがプライミングを促進する。所望の時または場所で、洗浄、溶融または分離工程を使用することができる。一般に、3つの配列セグメントを有するキメラ核酸構築体を用いて、所望の核酸配列を任意の位置で、アナライト核酸配列(任意の可能な内部配列部位を含む)に導入することができる。
本発明の種々の方法は、鋳型に従う方法で、所望の特異配列をアナライト中に導入することを可能にし、こうしてアナライトまたはアナライトのセットに、多様な性質と能力(プローブとして;鋳型として;プライマーとして作用)とを付与する。CNACおよび/またはCNACを使用して標識されたアナライトは、固体支持体(これは、試験管、キュベット、プレート、マイクロタイターウェル、ビーズ、磁性ビーズ、およびチップを含む)に、直接または間接に固定化することができる。この具体例を実施するための方法と組成物は、米国特許第4,994,373号;米国特許第4,894,325号;米国特許第5,288,609号;および米国特許第6,221,581B1号;米国特許第5,578,832号;および米国特許第5,849,480号に記載されている(これらはすべて、参照することにより本明細書に組み込まれる)。この固定化は、鎖伸長およびアナライトの標識の前または後に行うことができる。例えば、そのような能力は、核酸アレイ分析で使用でき、ここでは、アナライトをプローブ探索する代わりに、アナライトは、多様なアナライトの鎖伸長の鋳型を提供することができるCNACのアレイを含むマトリックス上のプライマーとして作用する。本発明の具体例に依存して、ハイブリダイズしたアナライトは、直接伸長されるか、またはエンドヌクレアーゼ工程を受けた後に伸長される。1つ以上の標識物またはシグナル残基を、直接またはそのようなアレイとともに間接に取り込み、アレイ上の部位への、アナライトの特異的ハイブリダイゼーションを示すことができる。
d.ホモポリマー配列の部分的除去のためのCNAC
本発明の別の態様は、ホモポリマー配列の部分的除去のための新規組成物と方法を開示する。ホモポリマー配列は、ポリAメッセンジャーRNA中に自然に存在し、クローニングに使用される多くの方法で人工的に存在する。後者の例は、2本鎖cDNA分子のポリCとポリGテイリングである(オカヤマ(Okayama)とバーグ(Berg)、1982, Mol. Cell. Biol. 2:161)。これらのホモポリマー部分の存在は、ユニバーサルプライマー結合とクローニングのための有利な作用を提供するが、通常必要なのはそのほんの一部であり、大きなセグメントの存在は実際には問題になる。例えば、mRNAのcDNAコピーから作成される転写鋳型では、長いホモポリマーセグメントは、早期の停止を誘導することがある。
従って、本発明は、2つのセグメントを含むCNACを開示する。第1のセグメントは、選択されたホモポリマー配列に相補的であり、ホモポリマー配列と第1のセグメントとの間で形成される複合体が、特定のエンドヌクレアーゼの作用に対して耐性である第1の複合体を形成するように、設計される。第2のセグメントもまた、ホモポリマー配列に相補的な配列を含むが、ホモポリマーのエンドヌクレアーゼ消化を可能にする第2の複合体を形成する。すなわち、各セグメントは、同じ標的配列に相補的な配列を含むが、これらは、ハイブリダイゼーション後に付与する性質が異なる。
例えば、rUでできた第1のセグメントとdTでできた第2のセグメントを含むCNACは、mRNAのポリAテイルの任意のセグメントにハイブリダイズすることができる。RNaseHによる消化は、第2のセグメントにハイブリダイズしたポリAセグメントのみを除去する。CNACは、熱サイクリングまたは温度を使用して、複数回使用することができる(ここで、第1のセグメントまたはセグメントのみをによるハイブリダイゼーションは、安定なハイブリダイゼーションには不充分である)。例えば、10個のrUと10個のdT塩基からなるCNACは、37℃で20塩基ポリAセグメントに効率的にハイブリダイズすることができるであろう。このセグメント中のrA塩基をRNaseH活性により排除すると、CNACが不安定になり、これが新しいセグメントに結合できるようになる。このプロセスは、そのmRNA分子が有する3’末端に残るrA塩基が20未満になるまで続く。次に、残りの小ポリAセグメントを適切なハイブリダイゼーション条件を使用することにより、プライマー結合部位として使用することができる。CNACまたはオリゴTを含有するDNAプライマーがこの目的に使用されるなら、この消化に使用されるRNaseH活性を、プライミングの前に除去しておくことが好ましい。
耐性および感受性の複合体を生成するための上記CNACは、本発明を例示するためのみであり、他のサイズも、第1のセグメントと第2のセグメントに使用することができる。例えば、4塩基のデオキシリボヌクレオチドセグメントは、RNaseH活性の基質である複合体を形成するのに充分であることが証明されている。CNACのセグメントのサイズは、エンドヌクレアーゼ消化の前に効率的な複合体形成があり、エンドヌクレアーゼ消化のために使用される条件下で、無傷にとどまるホモポリマー標的の充分な部分があるように、設計される。
さらに、本発明のCNACは、ホモポリマー標的配列に相補的であるか相補的ではない第3のセグメントを含むことができる。前記したように、もし第3のセグメントが相補的なら、エンドヌクレアーゼと第3のセグメントの性質は、第3の複合体が、エンドヌクレアーゼによる消化に対して耐性でとどまるようなものである。第3のセグメントは、その目的に依存して、ホモポリマーまたはヘテロポリマーでもよい。CNACの種々のセグメント中のヌクレオチドは、所望の配列とのより弱いまたはより強いハイブリッド形成を提供する、天然の塩基またはその類似体、またはそのユニバーサル塩基または組合せでもよい。例えば、第3のセグメント中のユニバーサル塩基の使用は、通常の結合より弱い相補的セグメントの合成を可能にする。すなわち、もしアナライト上の新しいセグメントを、プライマー結合部位として使用することを所望なら、プライマー結合部位に相補的な通常の塩基を有するプライマーは、CNAC中のユニバーサル塩基による再アニーリングに対してより有利であろう。
上記の組成物、固体支持体、試薬、色素、プライマー、核酸構築体などのいずれも、キットとして調製でき、これらは、本明細書に記載のまたは特許請求した方法、およびそのような方法の変法を実施するのに使用できることを、当業者は容易に理解できるであろう。例えば、キットは、タンパク質または核酸標識キット、核酸処理キット、所望の核酸配列を取り込むためのキット、標的、アナライトおよびアナライトのライブラリーを増幅するための増幅キットとして、調製することができる。合成後およびリアルタイム増幅キットもまた、組成物、固体支持体、試薬、色素、プライマー、核酸構築体などから調製することができる。
以下の例は、例示のためであり、決して本発明を限定するものではない。
例1 Cy3標識試薬の調製
(a)化合物I(2,3,3−トリメチルインドリニウム5−スルホン)の調製
p−ヒドラジノベンゼンスルホン酸(250g)を氷酢酸(750ml)および3−メチル−2−ブタノン(420ml)と混合し、3時間加熱還流した。溶液を、2Lのビーカーに注ぎ、一晩冷却した。生じる懸濁液をろ過し、酢酸で洗浄し、凍結乾燥して、残存酢酸を除去した。生じた固体をメタノール(1.5L)に溶解し、2−プロパノール(900ml)中の水酸化カリウム飽和溶液をゆっくり加えた。溶液の色が徐々に薄くなり、2,3,3−トリメチルインドリニウム5−スルホンのカリウム塩が沈殿した。沈殿物を吸引ろ過し、2−プロパノールで洗浄し、凍結乾燥により乾燥して238gの化合物Iを得た。
(b)化合物IIの調製(1−エチル−2,3,3−トリメチルインドレンニニウム5−スルホン)
工程(a)で合成した化合物Iの一部(78g)を1,2−ジクロロベンゼン(700ml)に懸濁した。ヨウ化エチル(250ml)を加え、混合物を、攪拌しながら90〜100℃で12時間加熱した。混合物を3Lの酢酸エチル/エーテルの1:1混合物中に注ぎ、2時間攪拌した。生じた沈殿物をろ過し、1:1の酢酸エチル/エーテルで洗浄し、風乾して68gの生成物(化合物II)を得た。
(c)化合物III(6−ブロモヘキサノイルアリルアミド)の調製
6−ブロモヘキサン酸(20g)とN−ヒドロキシスクシンイミド(15g)を、200mlの無水ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。無水DMF(50ml)中のジシクロヘキシルカルボジイミド(22g)を加え、混合物を室温で一晩放置した。沈殿した尿素をろ過して除去し、生成物(N−ヒドロキシスクシンイミド−6−ブロモヘキサノエート)を含有するDMF溶液を、−10〜−20℃に冷却した。H2O (11ml)中の等モル量のアリルアミンを、まず氷酢酸でpH8〜9にし、次にゆっくり攪拌して活性エステルにした。固体重炭酸ナトリウム(10g)をゆっくり加えて過度の発泡を避け、混合物を2時間で温度が−10℃に上がるまで、カバーをせずに放置した。混合物をH2O(1L)中に注ぎ、生成物をクロロホルム(300ml)で2回抽出した。抽出物を、1N塩酸で1回、5%NaHCO3(300ml)で1回、そして10%NaClで3回洗浄した。固体MgSO4を加えてクロロホルム相を乾燥し、攪拌しながら一晩放置した。真空下で蒸発させてクロロホルムを除去すると、液体が残り、これを、さらに精製することなく次の工程に使用した。
(d)化合物IV(化合物IIIへのリンカーアームの添加)の調製
工程(a)からの化合物I(11g)と工程(c)からの化合物III(15g)を一緒に、1,2−ジクロロベンゼン(100ml)に溶解し、アルゴン下で攪拌しながら110℃で12時間加熱した。混合物を酢酸エチル/エーテルの1:1混合物(700ml)中にゆっくり注ぎ、30分後、固体沈殿物をろ過し、酢酸エチル/エーテルの1:1混合物で洗浄し、風乾し、取って置いた。フラスコの底に生成したガラス状固体を、乳鉢で砕き、酢酸エチル/エーテルの1:1混合物で粉砕し、ろ過し、2−プロパノールで洗浄し、真空下で乾燥し、上記からの沈殿物と組合せて、化合物IVを得て、これをさらに精製することなく使用した。
(e)Cy3標識試薬(化合物V)の合成
酢酸(60ml)中の工程(b)からの化合物II(12g)の一部とN,N’−ジメチルホルムアミジン(10g)を、攪拌しながら100〜110℃で90分加熱した。反応中、286nmと415nmの吸光度を測定した。最初の60分中に415/286の比が増加し、次の20分間に2.2で一定に維持された。90分後、ホット混合物を700mlの酢酸エチル/エーテルの1:1混合物にゆっくり注いだ。生じた固体沈殿物をロートで加圧して集め、酢酸エチル/エーテルの1:1混合物で洗浄し、ケーキにアルゴンを通過させて乾燥した。加圧フィルターロート沈殿物を集め、工程(d)からの化合物IVの6.5g、50mlのピリジンおよび50mlの無水酢酸の混合物に、ゆっくり加えた。385nmの吸光度の減少と550nmの吸光度の上昇とにより、反応の進行を追跡した。反応は、室温で攪拌しながら一晩行った。550nmの吸光度は経時的に上昇し、溶液から生成物が沈殿すると、吸光度が急に低下した。反応の最後に、褐色の沈殿物を集め、取って置いた。液体部分に、7倍量の酢酸エチルを加えて処理した。生成した沈殿物を集め、最初の沈殿物と一緒にした。ピリジンは、後のパラジウム触媒工程を妨害するため、一緒にした沈殿物を100mlの0.5M炭酸トリエチルアンモニウム(pH8.0)(TEAC)に溶解して、残存するピリジンを除去した。次に、真空下で蒸発させてTEACを除去し、固体ペレットを残した。この生成物(化合物V)を次に、H2Oに溶解し、使用するまで−70℃に保存した。
例2 Cy5標識試薬(化合物VI)の調製
例1の工程(b)からの化合物II(8g)と塩酸マロニルアルデヒドジアニル(10g)を、氷酢酸と無水酢酸の1:1混合物100mlに溶解し、次に110℃で2時間加熱した。この混合物を、酢酸エチル/エーテルの1:1混合物500mlにゆっくり注ぎ、沈殿物をろ過し、酢酸エチル/エーテルの1:1混合物で洗浄し、上記のようにアルゴンで乾燥した。次に沈殿物を、ピリジン/無水酢酸の1:1混合物150mlに溶解した化合物IVの12gの混合物に、攪拌しながらゆっくり加えた。混合物を、90〜100℃に維持した浴に攪拌を続けながら30分間移した。所望であれば、この工程は90分まで延長することができた。次に反応混合物を室温まで冷却し、沈殿物を、例1のCy3標識試薬について前記したように処理した。
例3 Cy3(化合物V)のdUTPへの結合
米国特許第5,449,767号に記載のように調製した水銀化dUTP(30μmol)を、1mlの1M酢酸リチウムに溶解し、例1(化合物V)で調製したCy3標識試薬(60μmol、0.6ml)を攪拌しながら加えた。アルゴン下でカリウムテトラクロロパラデート(0.5mlのH2O中の30μmol)を加えた。HPLCにより反応を追跡し、40℃で1時間後完了した。一晩インキュベートしても、収率は増加しなかった。反応混合物に4倍量のアセトンを加え、−20℃に一晩放置した。翌日、遠心分離して沈殿物を集めた。
ペレットを0.1M酢酸リチウム(pH4)に溶解し、DEAEセファデックスA25カラムにのせた。0.1M酢酸リチウム中0.1〜0.7MのLiClの線形勾配により、カラムを展開させた。HPLCにより画分を調べ、単一の後のピークを含有する画分を集め、取って置いた。他の群の画分は2つのピークを示した:上記の後のピークと前のピーク。これらの画分を一緒にし、0.1M LiClに調整し、再度DEAEセファデックスA25カラムにのせ、前記したように再分画した。再度、単一の後のピークを含有する画分を集め、取って置いた。この例ではしなかったが、第2のクロマトグラフィー後に2つのピークを含有する画分を一緒にして、別の時にカラムにのせて、単一ピーク生成物の収率を上昇させることができた。HPLCにより単一の後のピークを示した画分を一緒にし、真空下で蒸発させてH2Oを除去した。最後の微量のH2Oを、50mlの100%エタノール中への半固体残渣の再懸濁と次の溶媒留去により、除去した。アルコール工程をもう1回繰り返した。残渣を30mlのエタノールに再懸濁し、1mlの3M酢酸リチウムを加えた。溶液を充分混合し、−20℃に一晩放置して、三リン酸の完全な沈殿を促進した。遠心分離して沈殿物を集め、H2Oに再溶解し、部分的に凍結乾燥して残存エタノールを除去した。生成物の量を550nmの吸光度とモル吸光係数150,000により測定した。次に、溶液を10mMのストック濃度に再調整して、−70℃に保存した。
上記方法は、Cy3標識dUTPの調製を記載するが、前記例で使用したCy3標識試薬(例1からの化合物V)の代わりにCy5標識試薬(例2からの化合物VI)を使用して、Cy5標識dUTPの調製について、同じ工程を行うことができた。
例4 剛性アームリンカーと非フェニル性TAMRA類似体を用いる標識ヌクレオチドの調製
(a)化合物VII(3,6−ビス−(ジメチルアミノ)−キサンテン−9−プロピオン酸)の調製
3−(ジメチルアミノ)フェノール(5.8g)を無水コハク酸(2.1g)と混合し、アルゴン下で攪拌しながら120℃で90分加熱した。混合物を冷却し、H2O(80ml)を加え、混合物を10分間加熱還流した。水相を捨て、暗褐色のゴム状の物質が残った。H2Oを加えてこの物質を溶解し、次に攪拌しながら1M NaOHでpH10に調整した。次に1M塩酸を加えて、清澄な溶液のpHを2に下げた。最終濃度2.5MまでNaClを添加して、色素を塩析した。沈殿物をろ過し、NaCl(2.5M)で洗浄し、凍結乾燥により乾燥して、1.2gの化合物VIIを得た。化合物VIIの蛍光スペクトルを図7に示す。
(b)化合物VIII(化合物VIIの活性エステル)の調製
工程(a)からの化合物VIIをクロロホルム(200ml)に溶解し、攪拌しながらN−ヒドロキシスクシンイミド(1.5g)を加えた。N−ヒドロキシスクシンイミドが溶解後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(2g)を加え、混合物を暗所で一晩攪拌した。混合物をH2O(80ml)で抽出し、化合物VIIIを含有するクロロホルム相を、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、−20℃で保存した。
(c)化合物IX(グリセリルグリシンの遊離酸型)の調製
13gのグリシルグリシンを、300mlの無水メタノール中の等モルのトリエチルアミンの混合物に懸濁し、1.5モル過剰のメチルトリフルオロ酢酸エステルと混合した。懸濁液を、均一な溶液が得られるまで還流した。ロータリーエバポレーターでメタノールを除去し、残渣を100mlのH2Oに懸濁した。次にpHを10.0に調整して、トリフルオログリセリルグリシンを溶液にした。次に、塩酸でpHを1〜2に下げると、トリフルオログリセリルグリシンが溶液から沈殿した。この混合物を4℃で一晩放置して、生成物を完全に沈殿させた。翌日、沈殿物(化合物IX)をろ過して集め、次に乾燥した。
(d)化合物X(グリセリルグリシンのNHSエステル)の調製
工程(c)からの15gの化合物IXを100mlのDMFに溶解し、2倍モル過剰のN−ヒドロキシスクシンイミドを攪拌しながら加えた。次に、10mlのDMFに溶解した1.1倍モル過剰のジシクロヘキシルカルボジイミドを加え、混合物を室温で一晩放置して、NHSエステル(化合物X)を得た。
(e)化合物XI(グリシルグリシンリンカーを有するdUTP)の調製
10μmolのアリルアミンdUTPを、0.5mlの0.3M NaHCO3に溶解し、次に工程(d)からの15μmolの化合物Xを加え、室温で2時間インキュベートして、化合物XIを得た。次に、最終濃度0.5MまでLiAcを加え、5倍量のエタノールを加え、溶液を−20℃に一晩放置して、ヌクレオチド生成物(化合物XI)を沈殿させた。室温で1時間、1MのLiOH中の沈殿物を溶解して、アミンを脱保護した。冷所で溶液を氷酢酸で中和し、上記のようにエタノールで三リン酸を沈殿させた。
(f)化合物XII(テトラグリシルリンカーを有するdUTP)の調製
工程(e)を繰り返して追加のグリシルグリシンリンカー単位を加えることにより、工程(e)からの化合物XIをさらに処理し、5’−アリルアミド−(テトラグリシル)アミンdUTP(化合物XII)が生成した。アミンを脱保護し、工程(e)で前記したように三リン酸を沈殿させた。
(g)化合物XIII(dUTPへの非フェニル性TAMRA類似体の結合)の調製
工程(f)からの20μmolの化合物XIIを2mlのNaHCO3(0.3M)とLiCl(0.7M)に溶解し、氷上で冷却した。工程(b)からのクロロホルム中の色素活性エステル(40μmol)(化合物VIII)を真空下で乾燥し、DMF(2ml)中に溶解した。次に、この溶液を氷冷dUTP溶液に加え、混合物を暗所で室温で一晩攪拌した。混合物を20mlの水で希釈し、4℃でDEAEセファデックスA24(20ml)カラムにのせた。カラムをTEAC(0.1M、pH7.8、50ml)で洗浄し、生成物を、0.1〜0.8M TEAC(pH7.8)の線形勾配により、溶出させた。HPLCにより純粋な画分を一緒にした。吸引を繰り返して真空下でTEACを除去し、次に水を加えた。残渣を酢酸リチウム(4M)に溶解し、4倍量の無水エタノールで沈殿させ、次に水に溶解し、−70℃で保存して13.6mgの化合物XIIIを得た。
上記例では、テトラグリシル剛性アームリンカーを使用したことに注意されたい。上記と同じ方法は、他の長さの化合物を合成するのに使用できるであろう。例えば、工程(f)からの化合物XII(テトラグリシルアームを有するdUTP)は、工程(e)の繰り返しによりさらに操作し、別のグリシルグリシンを加えて、こうしてヘキサグリシルアームを作成した。同様に、グリシンを出発物質として、グリシルグリシンの調製について記載した活性化工程(工程cとd)をまた行い、こうして単一のグリシル単位の添加を可能にした。
例5 剛性リンカーアームと非フェニル性テキサスレッド類似体を有する標識ヌクレオチドの調製
(a)化合物XIV(3,6−ビス−ジュロリジノキサンテン(Julolidinoxanthen)−9−プロピオン酸)の調製
8−ヒドロキシジュロリジン(Hydroxyjulolidine)(10g)と無水コハク酸(2.6g)をアルゴン下で一緒にし、攪拌しながら130℃で2時間加熱した。混合物を冷却し、H2O(150ml)を加え、混合物を15分間還流し、次に冷却した。水層を捨て、H2Oを加えてガラス状の暗褐色の残渣を溶解し、次に攪拌しながら1M NaOHでpH10に調整した。次に1M塩酸を加えて、溶液のpHを2に下げ、ここで再度生成物が沈殿した。混合物を遠心分離し、上清を捨て、ペレットを水に懸濁し、再遠心分離して洗浄した。次に、ペレットを凍結乾燥して3.6gの生成物(化合物XIV)を得た。化合物XIVの蛍光スペクトルを図8に示す。
(b)ヌクレオチドへの標識物の結合
化合物XIVの活性エステルの調製と、剛性リンカーアームを有するdUTPの結合のための以後の工程は、例4に記載のように行った。
例6 剛性リンカーアームを有するシアニン色素の調製
(a)化合物XV[(2,3,3,トリメチル−3−H−インドール−5−イル)酢酸]の調製
110gの4−ヒドラジノ安息香酸を、攪拌しながら450mlの氷酢酸および250mlの3−メチル−2−ブタノンと混合した。混合物を128℃〜130℃で6時間加熱し、室温で一晩放置して冷却させた。氷酢酸と3−メチル−2−ブタノンを真空下で除去し、固体を300mlのH2Oで粉砕し、ろ過し、300mlのH2Oで再洗浄した。次に、ケーキを真空下で乾燥した。次に、固体を酢酸エチルから再結晶化して化合物XVを得た。
(b)化合物XVI(ジグリシルアリルアミン)の調製
例4の工程(d)からの化合物Xを、DMF/H2Oの50:50混合物中の1.2倍過剰の酢酸アリルアミンと反応させた。トリエチルアミンを加えて、溶液をpH8で維持し、室温で4時間反応を行った。溶液を真空下で乾燥し、混合物をH2Oで粉砕して、トリエチルアミン塩を除去した。スラリーをろ過し、冷H2Oで洗浄し、凍結乾燥し、乾燥して化合物XVIを得た。
(c)化合物XVII[(2,3,3トリメチル−3−H−インドール−5−イル)アセトアミドジグリシルアリルアミン]の調製
例7で調製した20.6gの化合物XVを、100mlのDMFで溶解し、次に攪拌しながら20gのN−ヒドロキシスクシンイミドを加えた。次に、30mlのDMFに溶解した22gのジシクロヘキシルカルボジイミドの混合物を加えた。混合物を室温で一晩放置し、翌日、ろ過して尿素を除去した。工程(a)からの30gの化合物XVIを、エタノールとH2O中の1M LiOHの50:50混合液100mlに溶解して、アミンを放出させた。この溶液を酢酸でpH8に中和し、前記ろ液に加えた。この溶液に等量のトリエタノールアミンをゆっくり1時間かけて加えた。混合物を室温で一晩放置し、生じた沈殿物をろ過し、500mlのクロロホルムで抽出して、化合物XVIIを得た。
(d)化合物XVIII[ヨウ化(2,3,3トリメチル−3−H−インドール−5−イル)アセトアミドジグリシルアリルアミドエチルアンモニウム]の調製
真空により化合物XVIIからクロロホルムを除去した。ガラス状の残渣を200mlのDMFに溶解し、次に真空でDMFを除去した。残渣を150mlのジクロロベンゼンおよび100mlのヨウ化エチルと混合して、100℃で16時間還流した。冷却後、デカントして溶媒を除去した。ガラス状の残渣をエーテルで粉砕して化合物XVIIIを得た。
(e)シアニン色素とシアニン色素標識ヌクレオチドの調製
さらに精製することなく化合物XVIIIを使用して、例1と2に記載のシアニン色素を合成した。化合物XVIIIで作成したCy3類似体の構造を以下に示す。
Figure 2010156713
末端アルケン結合の存在は、例3に記載のようにdUTPの標識を可能にした。従来のcDNA合成測定法で試験すると、アマシャムバイオサイエンシーズ社(Amersham Biosciences Corp.)(ピスカタウェイ(Piscataway)、ニュージャージー州)から市販されているCy−3標識dUTP(カタログ番号PA530220)と比較して、化合物XVIIIで標識したdUTPでは、有意に高い取り込みが見られた。
例7 メタ−EthD、DNA有りおよび無し
a)メタ−EthDの合成
クールマン((Kuhlmann)ら、前述)により記載された方法に従って、メタ−EthDの合成を行った。合成工程の略図を図9に示す。この方法では、2−アミノ−ジフェニル−化合物(1)を酸塩化物(2)と縮合させて、アミド(3)を得て、次にこれを環状型に変換してフェナントリジン(4)を得た。この化合物(4)を加水分解して、酸(5)を得て、酸塩化物(6)に変換し、次に1,5−ジアミノ−ペンタンと縮合させて、ホモダイマーを得た。このホモダイマーをメチル化して(7)を得て、これを還元して、最終生成物(8)メタ−EthD(この構造を図2に示す)を得た。
b)スペクトル分析
メタ−EthDを493nmで励起して、617nmで1×105カウント/秒の発光を得た(図10A)。2本鎖DNAを加えると、発光は6×105に増加した(図10B)。これに対して、350nmの波長で励起すると、600nmでの発光は2×104カウント/秒であり、これは、DNAを添加すると、3.25×106カウント/秒に上昇した(図11)。
例8 ドナーヌクレオチドとアクセプターヌクレオチドとのエネルギー移動
HIVアンチセンス構築体から作成することができるアンプリコンの配列を図12に示す。この構築体の誘導の説明は、リウ(Liu)ら(1997)J.Virol 71:4079−4085に記載されている。試料中の標的アナライトのPCRは、エネルギードナーとしてフルオレセインで標識したdUTPとエネルギーアクセプターとして例4からの化合物XIIIで標識したdUTPの混合物の存在下で、図12に示すプライマーを使用して行うことができる。増幅の最中に、これらの標識物のそれぞれを取り込む核酸鎖が合成される。フルオレセインに適した波長で照射し、次に化合物XIIIの発光に適した波長で照射すると、ドナーヌクレオチドとアクセプターヌクレオチドが充分な近傍にあるといつもシグナルが生成する。この目的のために、1本鎖または2本鎖のいずれも分析することができる。
例9 インターカレーターと取り込まれた色素の間のエネルギー移動
例8で使用したものと同じプライマーを使用して、PCRが行われる。しかしこの例では、SYBRグリーンと例7からの標識dUTPの存在下で、反応が行われる。取り込みが進行すると、化合物XVIIIで標識したヌクレオチドを取り込んだ2本鎖DNAが蓄積し始める。前記したように、SYBRグリーンは521nmで最大に発光し、化合物XVIIIは550nmで最大に吸収するため、SYBRグリーンドナーからアクセプターとしての化合物XVIIIへのエネルギー移動により、化合物XVIIIからの蛍光は、合成の進行とともに上昇し、こうして標的配列の増幅が成功していることを示している。
例10 インターカレーターと消光物質残基を含むプライマーを有する取り込まれた色素の間のエネルギー移動
本例は、例9に記載のように行われるが、プライマーは以下の消光物質で標識される:
5'CAU*GATCCGGAU*GGGAGGTG 3’ および
5'GCACAU*CCGGAU*AGU*AGA 3’
ここで、U*は、約530nmで吸光する、シンガー(Singer)とホーグランド(Haugland)(米国特許第6,323,337号)が記載した非蛍光3−アミノキサンテンで修飾したウリジン残基である。PCRは、これらのプライマーを使用して、例7からの標識dUTPと前記のSYBRグリーンの存在下で行われる。挿入結合したSYBRグリーンからの蛍光は、化合物XVIIIまたは消光物質により吸収することができる。プライマー−ダイマーが形成されるなら、これらは、プライマーとこれらの相補体のみを含む。そのようなエネルギー移動は、消光物質で効率的に起き、こうしてプライマー−ダイマー合成からの突発的なシグナル生成を減少させる。一方、標的配列の増幅から得られるアンプリコンは、化合物XVIIIのみが、エネルギー移動が起きるためにSYBRに充分な近傍にあるセグメントを有し、合成が進むにつれて、標的依存性シグナルが生成される。
例11 プローブと取り込まれたヌクレオチドの間のエネルギー移動
PCRは例8で使用したものと同じプライマーを用いて行うことができる。この反応混合物で、ドナー候補は、例7からの化合物XVIIIで標識したdUTPの形で供給される。反応混合物はまた、エネルギーアクセプターとして作用することができるテキサスレッド残基で標識したDNAプローブを含有する。プローブは以下の配列を有する
5’UFAATGGUFGAGTATCCCUFGCCTAACTCUF3’
ここで、UFは、テキサスレッドで標識されたウリジンを示す。アンプリコン中のプローブの位置を図12に示す。プローブはまた、伸長できないように3’末端でブロックされる。増幅が行われると、標識されたアンプリコン鎖へのプローブのハイブリダイゼーションが、化合物XVIIIとテキサスレッドとの間でエネルギー移動が起きることを可能にし、これは、より多くのアンプリコン鎖が生成されると増加する。
例12 基質としてホモポリマー標的を使用するエンドヌクレアーゼ消化と鎖伸長
この例の工程を図13に示す。3つのセグメントを有する以下の配列を有するCNACを合成することができる:
5’−UUUUUUUUUUTTTTQQQQQQQQ−3’
ここで、Uはウリジンリボヌクレオチドであり、Tはチミジンデオキシリボヌクレオチドであり、Qはイノシンリボヌクレオチドであり、3’末端は、伸長を防ぐために修飾されている。本例において、リボヌクレオチドは、シバハラ(Shibahara)ら(1987)Nucleic Acids Res. 15:4403-4415とバラノフ(Baranov)ら(1997)Nucleic Acids Res. 25:2266-2273(この両方とも参照することにより本明細書に組み込まれる)が記載したように2’−O−メチルである。CNACは、ポリA mRNAのライブラリーとハイブリダイズ(工程A)して、以下を形成する:
ポリAテイルの一部に結合したオリゴ−ウリジン第1のセグメントとの第1の複合体、
ポリAテイルの一部に結合したオリゴ−チミジン第2のセグメントとの第2の複合体、
ポリAテイルの一部に結合したオリゴ−イノシン第3のセグメントとの第3の複合体。
本例において、4つのデオキシリボヌクレオチドは充分であることが知られているため、第1の複合体と第3の複合体は、RNaseHの作用に対して耐性であり、第2の複合体は、RNAse活性の基質を形成する。20〜25℃でRNaseHで消化(工程B)すると、第2の複合体中のオリゴTに結合したポリAセグメントの切断が誘導され、切断されたポリAテイルが放出される。dATP、dCTPおよび逆転写酵素を供給すると、mRNAの3’末端が伸長可能となる(工程C)。さらに、もしRNaseH消化工程中にこれらの試薬が存在すると、これらは、前記したようにエンドヌクレアーゼ性切断後の3’末端へのCNACの結合を安定化するのを助ける。イノシンは、鋳型として使用されると、ポリAセグメントに結合することができるが、これはシトシンを優先的に取り込み、こうして新しいオリゴCセグメントをmRNAの末端に導入することに注意されたい。CNACを除去すると、相補的オリゴGセグメントとRNAプロモーター配列を含有するオリゴヌクレオチドのプライマー結合部位として、オリゴCセグメントを使用することが可能になる。次に、cDNA鎖の合成、第2のcDNA鎖の産生、および標識ライブラリーの生成は、米国特許第5,891,636号とラッバニ(Rabbani)ら、米国特許出願第09/896,897号(2001年6月30日出願)を含む既に記載された任意の方法により行われる。
例13 アナライトへのRNAポリメラーゼ配列の付加
本例は、例12に記載のように行われるが、CNACの第3のセグメントは、非修飾リボヌクレオチドを含み、RNAプロモーターの配列を含有する。従って、工程(c)の鎖伸長後、新しい第3の複合体が形成され、ここで、伸長されたヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチドであり、CNAC第3のセグメントはリボヌクレオチドを含む。これはRNaseH消化の基質であり、RNAプロモーター配列に相補的なmRNAの3’末端で、1本鎖セグメントを形成するのに使用することができる。次に、プロモーター配列を有するプライマーをmRNAの伸長セグメントにハイブリダイズさせて、5’末端にプロモーターを有するcDNAを合成することができる。以後は、例12に記載のように行われる。CNACの残りの部分は、プライマーの結合前に除去されるか、またはプライマーの伸長は、鎖の除去を可能にする。
例14 酵素に触媒された鎖内転位後に発光することができるジオキセタン誘導体の調製
ジオキセタンの誘導のための中間体化合物を合成するのに使用できる工程の略図を、図14に示す。この略図に示す工程のシリーズは、標準的な化学法を使用して行うことができる。この方法の最後の工程で、化合物(e)はジオキセタン誘導体に結合される(ここで「Q」と「Z」の両方とも既に記載したものである)。このジオキセタン誘導体(f)は、本発明で開示し定義した環の隣接部位に結合したR1とR2基を含む。
例15 例14からの化合物(f)を用いる酵素依存性事象の可能なシリーズ
アシラーゼIの存在下で、図15の化合物(g)に変換される化合物(f)により示される遊離の一級アミンを生成する切断が起きる。化合物(g)中のベンゾイル残基への放出される一級アミンの近接性と、遷移状態の6員環化合物(h)の以後の生成のために、化合物(i)を生成する内部転位は、非常に速い反応である。化合物(i)中のフェノキシ基の存在は、これを不安定なジオキセタンとし、これは分解する時光を生成する。アシル残基およびアシル基に結合した鎖の一級アミンまたはチオールで、同様の置換が起きることは、すでに文献に記載されている。これらの既に記載された反応は、本例に示す反応の好適な速度は持たない。
本例は、R1をR1 *に変換する酵素反応を示し、こうして環の1つの部位に結合した鎖の末端にある反応性基G1を産生する。この具体例では、アシラーゼIは酵素であり、G1は遊離の一級アミンである。G1との反応は続き、G1は、環の異なる部位に結合したベンゾイル基(G2)と相互作用する。この中間体を、図15に(h)として示す。アミンとベンゾイル基(それぞれG1とG2)の間で内部転位が起き、こうして、ベンゾイル基の鎖内移動が起き、不安定な発光性ジオキセタンが生成する。
上記の詳細な説明と本発明の例から、当業者には多くの変更が可能であろう。そのような変更は、さらに特許請求の範囲で詳細に説明する本発明の範囲と精神により完全に包含される。

Claims (112)

  1. 標識試薬は、マーカー残基Mと反応性基Rとを含む、標的を標識するための標識試薬
    M−R
    (式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基を含み、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)。
  2. 標的は、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、受容体、天然のもしくは合成薬剤、合成オリゴマー、合成ポリマー、ホルモン、リンフォカイン、サイトカイン、トキシン、リガンド、抗原、ハプテン、抗体、炭水化物、糖、またはオリゴ糖もしくは多糖を含む、請求項1の標識試薬。
  3. 核酸またはヌクレオチドまたは核酸類似体は修飾されている、請求項2の標識試薬。
  4. リガンドは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含む、請求項1の標識試薬。
  5. 色素は蛍光色素を含む、請求項1の標識試薬。
  6. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項5の標識試薬。
  7. キサンテン色素は、フルオレセイン、ローダミンまたはロドール、またはこれらの誘導体を含む、請求項6の標識試薬。
  8. マーカー残基Mと反応性基Rとの間にリンカーアームをさらに含む、請求項1の標識試薬。
  9. リンカーアームは、可撓性、半剛性または剛性である、請求項8の標識試薬。
  10. リンカーアームは、1つ以上の炭素原子を含む骨格を有する、請求項8の標識試薬。
  11. リンカーアームは、少なくとも1つの非炭素原子を含む骨格を有する、請求項8の標識試薬。
  12. 非炭素原子は、イオウ、酸素または窒素を含む、請求項11の標識試薬。
  13. 骨格は、1つ以上のペプチド結合を含む、請求項10の標識試薬。
  14. 反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物、または金属−有機化合物を含む、請求項1の標識試薬。
  15. 金属−有機化合物は、水銀、亜鉛、銅、または白金を含む、請求項14の標識試薬。
  16. 金属−有機化合物は、芳香族基、複素環式芳香族基、アルケン基、またはアルキン基を含む、請求項14の標識試薬。
  17. 標的を標識するための方法であって、
    (a)(i)標的;
    (ii)マーカー残基Mと反応性基Rとを含む標識試薬
    M−R
    (式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基であり、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)を提供する工程;および
    (b)標的(i)と標識試薬(ii)との間で炭素−炭素結合が形成される条件下で、標的(i)と標識試薬(ii)とを反応させ、こうして標的(i)をマーカー残基Mで標識する工程とを含む、上記方法。
  18. 提供工程において、標的は、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、受容体、天然のもしくは合成薬剤、合成オリゴマー、合成ポリマー、ホルモン、リンフォカイン、サイトカイン、トキシン、リガンド、抗原、ハプテン、抗体、炭水化物、糖、またはオリゴ糖もしくは多糖を含む、請求項17の方法。
  19. 提供工程において、リガンドは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含み、色素は、蛍光色素を含む、請求項17の方法。
  20. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項19の方法。
  21. 提供工程または反応工程において、反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物または金属−有機化合物を含む、請求項17の方法。
  22. 提供工程において、標的は修飾されている、請求項17の方法。
  23. 修飾標的は、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物または金属−有機化合物を含む、請求項22の方法。
  24. 標識された標的であって、標的は、
    (a)(i)標的;
    (ii)マーカー残基Mと反応性基Rとを含む標識試薬
    M−R
    (式中、マーカー残基Mと反応性基Rは、互いに共有結合しており、Mは、リガンド、色素、またはリガンドと色素の両方を含む少なくとも1つの残基であり、反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる)を提供する工程;および
    (b)標的(i)と標識試薬(ii)との間で炭素−炭素結合が形成される条件下で、標的(i)と標識試薬(ii)とを反応させ、こうして標的(i)をマーカー残基Mで標識する工程とを含む方法、により標識された、上記標的。
  25. 提供工程において、標的は、タンパク質、ペプチド、核酸、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、受容体、天然のもしくは合成薬剤、合成オリゴマー、合成ポリマー、ホルモン、リンフォカイン、サイトカイン、トキシン、リガンド、抗原、ハプテン、抗体、炭水化物、糖、またはオリゴ糖もしくは多糖を含む、請求項24の方法。
  26. 提供工程において、リガンドは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含み、色素は、蛍光色素を含む、請求項24の方法。
  27. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項26の方法。
  28. 提供工程または反応工程において、反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物または金属−有機化合物を含む、請求項24の方法。
  29. 提供工程において、標的は修飾されている、請求項24の方法。
  30. 修飾標的は、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物または金属−有機化合物を含む、請求項29の方法。
  31. ローダミン色素の非フェニル性類似体を含む請求項1に記載の標識試薬であって、該類似体は、該標識試薬を標的に結合させるための少なくとも1つの反応性基を含み、該少なくとも1つの反応性基は、直接またはリンカーアームを介して間接に該類似体に結合している、上記試薬。
  32. ローダミン色素の非フェニル性類似体を含む標識試薬であって、該類似体は、該標識試薬を標的に結合させるための少なくとも1つの反応性基を含み、該少なくとも1つの反応性基は、直接またはリンカーアームを介して間接に該類似体に結合しており、該反応性基は標的と炭素−炭素結合をを形成することができる、上記試薬。
  33. 試薬は以下の構造を有する請求項31又は32に記載の標識試薬
    Figure 2010156713

    (式中、Rは、標的に標識試薬を結合させるための反応性基であり、Rは、直接または非フェニル性リンカーアームを介して間接に結合している)。
  34. 試薬は以下の構造を有する請求項31又は32に記載の標識試薬
    Figure 2010156713

    (式中、Rは、標的に標識試薬を結合させるための反応性基であり、Rは、直接または非フェニル性リンカーアームを介して間接に結合している)。
  35. 反応性基は、スルフヒドリル、ヒドロキシル、アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ジアジン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキザル、またはアルデヒドを含む、請求項31、32、33又は34のいずれか一項に記載の標識試薬。
  36. 反応性基は、標的と炭素−炭素結合を形成することができる、請求項31、32、33又は34のいずれか一項に記載の標識試薬。
  37. 反応性基は、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物、または金属−有機化合物を含む、請求項36の標識試薬。
  38. 金属−有機化合物は、水銀、亜鉛、銅または白金を含む、請求項37の標識試薬。
  39. 金属−有機化合物は、アルケン基またはアルキン基を含む、請求項37の標識試薬。
  40. 非フェニル性リンカーアームは、1つ以上の炭素原子を含む、請求項31又は32に記載の標識試薬。
  41. 非フェニル性リンカーアームは、少なくとも1つの非炭素原子を含む、請求項31又は32に記載の標識試薬。
  42. R--L--M:
    (式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは:
    Figure 2010156713

    (d)(a)、(b)または(c)のマルチマー、および
    (e)(a)、(b)、(c)または(d)の任意の組合せ
    の1つ以上を含む少なくとも1つの剛性基を含む骨格を含む)、
    を含む請求項1に記載の標識試薬。
  43. R--L--Mを含む標識試薬:
    (式中、Rは反応性基であり、該反応性基Rは標的と炭素−炭素結合をを形成することができ、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは:
    Figure 2010156713

    (d)(a)、(b)または(c)のマルチマー、および
    (e)(a)、(b)、(c)または(d)の任意の組合せ
    の1つ以上を含む少なくとも1つの剛性基を含む骨格を含む)。
  44. 反応性基Rは、スルフヒドリル、ヒドロキシル、アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ジアジン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキザル、またはアルデヒドを含む、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  45. 反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる、請求項44の標識試薬。
  46. 反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物、または金属−有機化合物を含む、請求項45の標識試薬。
  47. 金属−有機化合物は、水銀、亜鉛、銅または白金を含む、請求項46の標識試薬。
  48. 金属−有機化合物は、芳香族基、複素環式芳香族基、アルケン基またはアルキン基を含む、請求項46の標識試薬。
  49. マーカー残基Mは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含むリガンドを含む、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  50. マーカー残基Mは蛍光色素を含む、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  51. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項50の標識試薬。
  52. キサンテン色素は、フルオレセイン、ローダミンまたはロドール、またはこれらの誘導体を含む、請求項51の標識試薬。
  53. 骨格は、1つ以上の炭素原子を含む、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  54. 骨格は、少なくとも1つの非炭素原子を含む、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  55. 非炭素原子は、イオウ、酸素または窒素を含む、請求項54の標識試薬。
  56. 化学基Lは、ペプチド結合、アミノ酸、C1〜C20の脂肪族鎖、アルケン基、アルキン基、飽和または不飽和または部分的に飽和された環、複素環、および糖を含む、少なくとも1つの追加の残基をさらに含む、請求項54の標識試薬。
  57. 構造(a)は、互いにシス配置の2つのアルケン基を含む、請求項42又は43に記載の標識された標的。
  58. 構造(a)は、互いにトランス配置の2つのアルケン基を含む、請求項42又は43に記載の標識された標的。
  59. 1つ以上の水素は、化学残基により置換される、請求項42又は43に記載の標識試薬。
  60. R--L--M:
    (式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続的極性剛性単位を含む骨格を含む)
    を含む請求項1に記載の標識試薬。
  61. R--L--Mを含む標識試薬:
    (式中、Rは反応性基であり、該反応性基は標的と炭素−炭素結合を形成することができ、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続的極性剛性単位を含む骨格を含む)。
  62. 反応性基Rは、スルフヒドリル、ヒドロキシル、アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ジアジン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキザル、またはアルデヒドを含む、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  63. 反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  64. 反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物、または金属−有機化合物を含む、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  65. 金属−有機化合物は、水銀、亜鉛、銅または白金を含む、請求項64の標識試薬。
  66. 金属−有機化合物は、芳香族基、複素環式芳香族基、アルケン基またはアルキン基を含む、請求項64の標識試薬。
  67. マーカー残基Mは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含むリガンドを含む、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  68. マーカー残基Mは蛍光色素を含む、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  69. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項68の標識試薬。
  70. キサンテン色素は、フルオレセイン、ローダミンまたはロドール、またはこれらの誘導体を含む、請求項69の標識試薬。
  71. 2つの連続的剛性極性単位の少なくとも1つは、ヘテロ原子性である、請求項60又は61に記載の標識された標的。
  72. ヘテロ原子性剛性極性単位は、N、S、O、Pまたはハロゲン原子に結合した炭素原子を含む、請求項71の標識された標的。
  73. ヘテロ原子は、−OH、−SH、−SO3、−PO4、−COOH、または−NH2基を含む、請求項71の標識された標的。
  74. 2つの連続的剛性極性単位の少なくとも1つは、ペプチド結合を含む、請求項60又は61に記載の標識された標的。
  75. 2つの連続的極性単位の少なくとも1つは、環構造を含む、請求項60又は61に記載の標識された標的。
  76. 環構造は、該環に結合した極性または荷電官能基をさらに含む、請求項75の標識された標的。
  77. 極性または荷電官能基は、ハロゲン化物、−OH、−SH、−SO3、−PO4、−COOH、または−NH2基を含む、請求項76の標識された標的。
  78. 環構造は、糖を含む、請求項75の標識された標的。
  79. 環構造は、置換された複素環式芳香族化合物を含む、請求項75の標識された標的。
  80. 骨格は、1つ以上の炭素原子を含む、請求項60又は61に記載の標識された標的。
  81. 骨格は、少なくとも1つの非炭素原子を含む、請求項60又は61に記載の標識された標的。
  82. 非炭素原子は、イオウ、酸素または窒素を含む、請求項81の標識された標的。
  83. 化学基Lは、ペプチド結合、アミノ酸、C1〜C20の脂肪族鎖、アルケン基、アルキン基、飽和または不飽和または部分的に飽和された環、複素環、および糖を含む、少なくとも1つの追加の残基をさらに含む、請求項60又は61に記載の標識試薬。
  84. R--L--Mを:
    (式中、Rは反応性基であり、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続的ペプチド結合を含む骨格を含む)
    を含む請求項1に記載の標識試薬。
  85. R--L--Mを含む試薬:
    (式中、Rは反応性基であり、該反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができ、Mはマーカー残基であり、Lは、MをRに共有結合させる化学基であり、化学基Lは、少なくとも2つの連続的ペプチド結合を含む骨格を含む)。
  86. 反応性基Rは、スルフヒドリル、ヒドロキシル、アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ジアジン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキザル、またはアルデヒドを含む、請求項84又は85に記載の標識試薬。
  87. 反応性基Rは、標的と炭素−炭素結合を形成することができる、請求項84又は85に記載の標識試薬。
  88. 反応性基Rは、アルケン基、アルキン基、ハロゲン化化合物、または金属−有機化合物を含む、請求項84又は85に記載の標識試薬。
  89. 金属−有機化合物は、水銀、亜鉛、銅または白金を含む、請求項88の標識試薬。
  90. 金属−有機化合物は、芳香族基、複素環式芳香族基、アルケン基またはアルキン基を含む、請求項88の標識試薬。
  91. マーカー残基Mは、ビオチン、イミノビオチン、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインを含むリガンドを含む、請求項84又は85に記載の標識試薬。
  92. マーカー残基Mは蛍光色素を含む、請求項84又は85に記載の標識試薬。
  93. 蛍光色素は、キサンテン色素、シアニン色素、クマリン色素、ポルフィリン色素、または複合色素を含む、請求項92の標識試薬。
  94. キサンテン色素は、フルオレセイン、ローダミンまたはロドール、またはこれらの誘導体を含む、請求項93の標識試薬。
  95. 2つの連続的ペプチド結合の少なくとも1つは、単一の原子により分離される、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  96. 単一の原子は、C、N、S、O、またはPを含む、請求項95の標識された標的。
  97. 骨格は、1つ以上の炭素原子を含む、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  98. 骨格は、少なくとも1つの非炭素原子を含む、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  99. 非炭素原子は、イオウ、酸素または窒素を含む、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  100. 化学基Lは、ペプチド結合、アミノ酸、C1〜C20の脂肪族鎖、アルケン基、アルキン基、飽和または不飽和または部分的に飽和された環、複素環、および糖を含む、少なくとも1つの追加の残基をさらに含む、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  101. 化学基Lは、ジペプチドまたはオリゴペプチドを含む、請求項84又は85に記載の標識された標的。
  102. ジペプチドまたはオリゴペプチドは、(グリシン)2または(グリシン)4を含む、請求項101の標識された標的。
  103. 非金属性又は金属性のポルフィリンを含む請求項1に記載の標識試薬であって、該試薬は、
    Figure 2010156713

    (式中、R0は反応性基であり、非金属性又は金属性のポルフィリンに直接または間接に結合しており、R1〜R8は独立に、水素、脂肪族、不飽和脂肪族、環状、複素環、芳香族、複素環式芳香族、荷電または極性基、または前記の任意の組合せを含む)
    を含む、上記試薬。
  104. 非金属性又は金属性のポルフィリンを含む標識試薬:
    Figure 2010156713

    (式中、R0は反応性基であり、該反応性基R0は、標的と炭素−炭素結合を形成することができ、非金属性又は金属性のポルフィリンに直接または間接に結合しており、R1〜R8は独立に、水素、脂肪族、不飽和脂肪族、環状、複素環、芳香族、複素環式芳香族、荷電または極性基、または前記の任意の組合せを含む)。
  105. 反応性基R0は、4つの非ピロール位置のいずれか1つに直接または間接に結合している、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  106. 0は、スルフヒドリル、ヒドロキシル、アミン、イソチオシアネート、イソシアネート、モノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ピリジン、モノ−またはジ−ハロゲン置換ジアジン、マレイミド、アジリジン、ハロゲン化スルホニル、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミドエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジン、アジドニトロフェニル、アジド、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド、グリオキザル、またはアルデヒドを含む、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  107. 反応性基R0は、標的と炭素−炭素結合を形成することができる、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  108. 反応性基R0は、アルケン基、アルキン基、またはハロゲン化化合物を含む、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  109. 1〜R8アルキル基のいずれかも、メチル、エチルまたはプロピルを含む、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  110. 1〜R8アルキル基のいずれかは、極性または荷電した基をさらに含む、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  111. 反応性基R0は、リンカーアームを介して非金属性ポルフィリンに間接的に結合している、請求項103又は104に記載の標識試薬。
  112. リンカーアームは、少なくとも2つの連続的ペプチド結合を含む、請求項111の標識試薬。
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