JP2010155914A - プリプレグ及びその製造方法、積層板、プリント配線板 - Google Patents

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Abstract

【課題】プリント配線板とした際に高い誘電特性を発揮し得るプリプレグ等を提供する。また、当該プリプレグを効率よく製造することができるプリプレグの製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂及び絶縁化超微粉末を含有してなる樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥してなり、絶縁化超微粉末が、導電性超微粉末に絶縁皮膜が設けられてなり、導電性超微粉末が所定の形状の炭素材料からなり、絶縁皮膜が、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなり、その平均厚さが1〜100nmであるプリプレグ等及び当該プリプレグの製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、特定の絶縁化超微粉末を用いたプリプレグ及びその製造方法、並びに、積層板、プリント配線板に関する。
ガラスやセラミック等の一般的な物質の比誘電率は大抵10以下であるのに対し、非常に大きな誘電率をもつ物質がある。これらの多くは強誘電体やそれに近い結晶構造をもつ物質である。この代表的なものにチタン酸バリウムがある。そして、このチタン酸バリウム等に代表される強誘電体を強誘電体フィラーとして熱硬化性樹脂に充填した樹脂複合材料及びプリント配線板が提案されている(特許文献1参照)。しかし、特許文献1では、十分な誘電率を確保するために、強誘電体フィラーを高濃度(65体積%以上)に添加する必要があった。
このような強誘電体フィラーの大量添加が必要となる理由は以下のとおりである。
まず、添加量が少ない場合、強誘電体フィラーが比誘電率3程度の樹脂に絶縁された状態となっている。この状態を等価回路で考察すると、低誘電率の樹脂に対応する容量の小さいキャパシタンスと強誘電体フィラーに対応する容量の大きなキャパシタンスとの直列回路で表される。この場合、誘電率の逆数に加成性があるため、例えば強誘電体フィラーの添加率が50体積%でも複合材料の誘電率は6程度にしかならない。この点を回避するためには、複合材料の等価回路が並列回路となるようにする必要がある。実態としては強誘電体フィラーの連続層を複合材料内に形成することが必要となる。
このような連続層を形成し、複合材料の高誘電率化を図るために、強誘電体等の強誘電体フィラーを65体積%以上添加することが必要とされていた。このため、比誘電率20以上を実現するには80質量%以上の強誘電体を強誘電体フィラーとして添加することが必要となり、高誘電率化と引き換えに樹脂材料本来の特徴である加工性、成形性が損なわれることになる。
また、短径が1nm以上100nm以下の球状、長球状もしくは針状の導電性超微粉末を絶縁被覆した絶縁化超微粉末を樹脂に添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。さらに、導電性超微粉末を炭素材料とした高誘電率樹脂複合材料が提案されている(特許文献3参照)。
しかしこれらには、プリント配線板やそれに使用するプリプレグについての具体的な構造設計が明確には記載されていなかった。
特開2001−237507号公報 特開2005−97074号公報 特開2006−344570号公報
本発明は、プリント配線板とした際に高い誘電特性を発揮し得るプリプレグ及び積層板を提供することを目的とする。また、当該プリプレグを効率よく製造することができるプリプレグの製造方法を提供することを目的とする。さらに、当該プリプレグを硬化してなる層を有し、優れた誘電特性を有するプリント配線板を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく鋭意検討を行なったところ、本発明者らは下記本発明に想到し当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]熱硬化性樹脂及び絶縁化超微粉末を含有してなる樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥してなり、前記絶縁化超微粉末が、導電性超微粉末に絶縁皮膜が設けられてなり、前記導電性超微粉末が、直径1〜500nmの球状、断面直径1〜500nmの繊維状、又は厚さ1〜500nmの板状の炭素材料からなり、前記絶縁皮膜が、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなり、その平均厚さが1〜100nmであるプリプレグ。
[2]前記絶縁化超微粉末と前記熱硬化性樹脂との体積比(絶縁化超微粉末/熱硬化性樹脂)が、5/95〜50/50である[1]に記載のプリプレグ。
[3]上記[1]又は[2]に記載のプリプレグを硬化してなる層を有する積層板。
[4]少なくとも一方の面に金属箔が設けられてなる[3]に記載の積層板。
[5]上記[1]又は[2]に記載のプリプレグを硬化してなる層を有するプリント配線板。
[6]下記の順次工程:
(1)アセトンを除くケトン類を主成分とした溶媒中で、直径1〜500nmの球状、断面直径1〜500nmの繊維状、又は厚さ1〜500nmの板状の炭素材料からなる導電性超微粉末に、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなる絶縁皮膜を形成して絶縁化超微粉末を作製して、当該絶縁化超微粉末を含有し、かつ熱硬化性樹脂を溶解してなるワニスを作製するワニス作製工程、
(2)作製したワニスを基材に含浸し乾燥する含浸乾燥工程、を含むプリプレグの製造方法。
[7]前記ワニス作製工程において、前記熱硬化性樹脂を、絶縁化超微粉末を作製した後に混合する[6]に記載のプリプレグの製造方法。
本発明によれば、プリント配線板とした際に高い誘電特性を発揮し得るプリプレグ及び積層板を提供することができる。また、当該プリプレグを効率よく製造することができるプリプレグの製造方法を提供することができる。さらに、当該プリプレグを硬化してなる層を有し、優れた誘電特性を有するプリント配線板を提供することができる。
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、熱硬化性樹脂及び絶縁化超微粉末を含有してなる樹脂組成物を基材に含浸し乾燥してなる。以下、当該プリプレグについて詳細に説明する。
(絶縁化超微粉末)
本発明に係る絶縁化超微粉末は、導電性超微粉末に絶縁皮膜が設けられてなる。
ここで、導電性超微粉末は、単独で熱硬化性樹脂に添加した場合、樹脂組成物の体積抵抗を低下させる、すなわち、導電性を付与する効果を有するものである。
このような導電性超微粉末を構成する材質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、ファーネスカーボンブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の導電性の炭素材料を用いることが好ましい。
導電性の炭素材料に対し、代表的な導電体である金属は一部の貴金属を除いて、超微粉末とした場合に酸化され易く、導電性が低下しやすいのみでなく、粉塵爆発の可能性もある。また、金属原子が超微粉末から絶縁体媒質中に拡散し、樹脂組成物の絶縁性を低下させる。これに対し、導電性の炭素材料にはこうした問題点がなく、さらに、炭素材料が比重2.2と小さく、他の導電性物質や従来の高誘電率フィラーにはない特徴を有し、樹脂組成物の軽量化という効果もある。
炭素材料からなる導電性超微粉末には、後述する絶縁性金属酸化物又はその水和物の皮膜(絶縁被膜)を形成するために、予め表面に酸化処理を施しておくことが好ましい。酸化処理としては、酸素含有雰囲気下での酸化処理、硝酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素等の水溶液による酸化処理;三塩化ルテニウムと次亜塩素酸ナトリウムからなる酸化触媒等を用いた酸化処理;が挙げられる。
本発明で用いる導電性超微粉末は、粒子直径が1〜500nm、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmの球状の炭素材料;断面直径が1〜500nm、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜200nmの繊維状の炭素材料;厚さが1nm〜500nm、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜200nmの板状の炭素材料;のいずれかである。
炭素材料の、粒子直径、断面直径又は厚さが上記範囲より小さいと量子サイズ効果により導電性が低下する。また、製造が難しく工業的に用いることができないばかりでなく、凝集などにより取り扱いも難しい。一方、粒子直径、断面直径または厚さが上記範囲より大きいと、連続層の形成が50体積%以下、すなわち樹脂特性を悪化させない添加率の範囲では連続層が形成されなくなってしまう。
球状の炭素材料、例えばカーボンブラックは、炭化水素原料を気相で熱分解することによって得られる。また黒鉛化カーボンブラックは、He、CO、またはこれら混合ガスの雰囲気系により内圧2〜19Torrに保持された減圧容器内において、炭素材料をアーク放電によって気化させ、気化した炭素蒸気を冷却凝固することによって得られる。
具体的には、東海カーボン(株)製のシーストSや導電性カーボンブラック#5500、#4500、#4400、#4300や黒鉛化カーボンブラック#3855、#3845、#3800、あるいは、三菱化学(株)製の#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、MA7、MA8、MA11、あるいは、ライオン(株)製のケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JD等が挙げられる。
なお、ここで球状とは必ずしも厳密な球状である必要はなく、等方的な形状であればよい。例えば角が発生した多面体状であってもよい。
繊維状の炭素材料の長手方向の長さは、既述の断面直径の3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような繊維状の炭素材料、例えばカーボンナノファイバーや、カーボンナノチューブは、触媒となるコバルトや鉄の有機金属化合物と炭化水素原料とを気相で混合し、加熱することによって得られる。また、カーボンナノファイバーはフェノール系樹脂を溶融紡糸し、非活性雰囲気下で加熱することによって得られるものもある。
具体的には、昭和電工(株)製のVGCFおよびVGNFや、(株)GSIクレオス製のカルベール、群栄化学工業(株)製のカーボンナノファイバー等が挙げられる。
なお、ここで繊維状とは一方向に伸びた形状を意味し、例えば角材状、丸棒状や長球状であってもよい。また、断面形状が円形でない場合(楕円形や多角形状等)は、断面直径は、最大径を意味する。
板状の炭素材料の長手方向の長さおよびこれに直行する方向の長さ(幅)は、既述の厚さの3倍以上300倍以下であることが好ましい。このような板状の炭素材料は、例えば天然黒鉛や人造黒鉛を精製・粉砕・分級することによって得られる。
具体的には、(株)エスイーシー製のSNEシリーズ、SNOシリーズ等や日本黒鉛製の鱗状黒鉛粉末、薄片化黒鉛粉末等が挙げられる。また、これらをさらに粉砕し、精密分級してもよい。
なお、ここで板状とは、一方向が縮んだ形状を意味し、例えば扁平球状や鱗片状であってもよい。
また、導電性超微粉末の形状が繊維状もしくは板状の場合、アスペクト比は3〜300が好ましい。本発明で用いる導電性超微粉末は、この中でも繊維状の方が球状や板状よりも好ましい。これは繊維状の方が、比誘電率が20以上である誘電体材料として連続層を形成するために必要な添加量を例えば30体積%以下とすることが可能となるためである。
本発明に係る絶縁化超微粉末に用いる絶縁皮膜は、プリプレグ用の樹脂組成物の全体的な絶縁性の確保を目的の一つとしている。絶縁皮膜の平均厚さは、1〜100nmとし、好ましくは5〜80nm、より好ましくは30〜70nmである。絶縁皮膜の平均厚さが1nm未満であると、被膜形成時に生じる欠陥やトンネル電流等により絶縁が保てないため高誘電率が発現せず、100nmを超えるとフィラーのコンデンサーとしての静電容量が著しく減少しこれを配合してなる複合材料の高誘電率が発現しなくなってしまう。
ここで、平均厚さは、絶縁化超微粉末の電子顕微鏡観察象の任意に10点の厚みを測定し、その平均を計算することで求めることができる。
絶縁皮膜の材質は、絶縁性金属酸化物またはその水和物である。
具体的には、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、二酸化ジルコニウムなどの絶縁性酸化物が挙げられる。また、これらの水和物として、四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウム、四水酸化ジルコニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。好ましくは比誘電率20以上の五酸化二タンタル等の絶縁性金属酸化物、アナタース型、及びブルカイト型の二酸化チタン、チタン酸ジルコニウムが挙げられる。また、これらの固溶体も用いることができる。
これらのうち、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル、二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム、又はこれらの水和物が好ましい。
さらに好ましくは、比誘電率100以上の金属酸化物が挙げられ、具体的には、ルチル型の二酸化チタン(TiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸バリウム(BaTi0.5Zr0.53)、チタン酸ジルコン酸鉛(PbTi0.5Zr0.53)等の組成式「MTi1−xZrxO3(Mは2価の金属元素、xは0以上1未満)」で表される絶縁性金属酸化物、又はこれらの水和物、さらにはこれらのうち少なくとも一種類を組成に含む絶縁性固溶体が挙げられる。これらの誘電率が大きい材料を用いると、絶縁被膜を厚くしても複合材料の誘電率が低下しないため好ましい。
また、絶縁皮膜の材質としては、分子分極が5cm3以上の絶縁性金属酸化物又はその水和物が好ましい。常誘電体の多くの金属酸化物の分子分極は、次のClausius−Mossottiの式にある通り金属酸化物の誘電率、比重、式量から計算される。
Figure 2010155914
(但し、αは分子分極、εは比誘電率、Mは式量、ρは比重を表す。)
本発明においては、式量は1金属原子あたりに換算したものを意味する。例えば、三酸化二アルミニウムの場合、AlO1.5として、五酸化二タンタルの場合にはTaO2.5として計算した式量から分子分極を計算する。
なお、二酸化シリコンや二酸化チタンなどでは、通常の式量となる。
特に、分子分極が大きい材質を用いた場合、同じ皮膜の厚さにおいて、樹脂組成物における誘電率が大きくなる。具体的には、分子分極が9cm3以上の二酸化シリコン、三酸化二アルミニウム等の絶縁性金属酸化物が挙げられる。その水和物として四水酸化シリコン、三水酸化アルミニウムが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。好ましくは分子分極15cm3以上のいわゆるジルコンすなわち二酸化ジルコニウムと二酸化シリコンとの固溶体、又はその水和物として四水酸化ジルコニウムと四水酸化シリコンとの固溶体が挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。さらに好ましくは分子分極が17cm3以上の二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、五酸化二タンタル又はその水和物として四水酸化チタン、四水酸化ジルコニウム、五水酸化タンタルが挙げられる。水和物の場合、その一部が脱水縮合した構造のものも含まれる。
絶縁皮膜の形成は、後述する[プリプレグの製造方法]で説明するような方法を採用することもできるが、公知の方法を利用することもできる。
例えば、導電性超微粉末が分散した水溶液中で金属塩とアルカリとを反応させ、導電性超微粉末を核として金属水酸化物を析出させ、濾別・乾燥することにより脱水縮合させ、導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。この場合、予め金属塩水溶液に導電性超微粉末を分散させてアルカリを滴下しても、導電性超微粒子の水分散液に金属塩水溶液とアルカリ水溶液を同時もしくは逐次滴下してもよい。
また、アルコールなどの有機溶媒に導電性超微粉末を分散し、金属アルコキシドを添加してゾルゲル反応により導電性超微粉末を核とした金属水酸化物の析出、さらに有機溶媒中での脱水縮合反応により導電性超微粉末表面に絶縁性金属酸化物が付着した状態を形成できる。
これらの中でも好ましいのは、ゾルゲル反応による絶縁皮膜の形成である。金属塩とアルカリの反応を用いた場合、副生成物である塩の除去に大量の水が必要となるばかりでなく、塩による凝析が起こり、絶縁化超微粉末が固まってしまうため好ましくない。
ゾルゲル反応により絶縁皮膜の形成を行なった後は、さらに脱水処理を施すことが望ましい。脱水方法としては、反応液から絶縁化超微粉末を濾別したのちに乾燥により脱水する方法が挙げられる。
また、反応液を加熱しつつ、加熱温度より沸点が高い溶媒を添加して溶媒を置換する方法もある。この方法は、ゾルゲル反応時の有機溶媒の蒸発に伴って、液相中で絶縁皮膜の脱水処理を行うものである。
また、これらの反応後に焼成処理を行ってもよい。通常、焼成処理は200〜1500℃の温度範囲で、30分〜24時間保持することにより行う。但し、導電性超微粉末が炭素材料であるため、焼成雰囲気は非酸化性とする必要がある。すなわち、窒素置換やアルゴン置換を施し、酸素を遮断する必要がある。
(熱硬化性樹脂)
本発明において、上記絶縁化超微粉末と共に用いられる熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、フラン系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アニリン系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱硬化性ポリイミド系樹脂、アリル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂等が挙げられる。
なかでもエポキシ系樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂が好適に用いられる。
特に好ましくは、エポキシ樹脂を含む樹脂材料である。これは配線基板などに用いる場合、銅等の金属層と密着強度が大きいためである。
これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
なお、上記エポキシ樹脂とは、少なくとも1個のオキシラン環(エポキシ基)を有する化合物をいう。
本発明において、高誘電率を有する樹脂組成物は、所期の特性を損なわない範囲において、その他の難燃剤、充填剤等の添加も可能である。これらは周知であり、一般に使用されているものであれば、特に限定はされない。難燃剤の代表例としては、メラミン、ベンゾグアナミン変性等の窒素含有化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。充填剤の代表的例としては、シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維及び微粉末、中空ガラス等の無機物粉末、シリコーンパウダー等が挙げられる。
本発明において、絶縁化超微粉末と熱硬化性樹脂との体積比(絶縁化超微粉末の体積/熱硬化性樹脂の体積)は、5/95〜50/50の範囲であることが好ましく、5/95〜20/80の範囲であることがより好ましい。5/95の割合以上に絶縁化超微粉末が配合されると、樹脂組成物中で連続層が形成され、充分な比誘電率が得られる。一方、50/50の割合以下に絶縁化超微粉末が配合されると、樹脂組成物本来の加工性などが損なわれることがない。
なお、絶縁化超微粉末と配合する際の樹脂は、重合体の形態としてのみならず、重合性化合物の形態として配合しておいて後で重合させてもよい。
本発明において、必要に応じ有機溶剤を使用してもよい。その種類としては、本発明で使用される樹脂組成物の樹脂成分と相溶するものであれば、特に限定されるものではない。その代表例としては、メチルエチルケトン、メチルセルソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル及びそのアセテート、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらを単独もしくは2種以上混合して使用することもできる。基材への含浸性を重視する場合は、沸点120〜200℃程度の溶剤を併用することが好適である。
また、本発明においては、樹脂組成物に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤等を添加してもよい。これらは周知で一般に使用されるものであれば、特に限定はされない。その代表的な例としては、ベンソトリアゾール系等の紫外線吸収剤;ヒンダートフェノール系、スチレン化フェノールなどの酸化防止剤;チオキサントン系等の光重合開始剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;が挙げられる。
(基材)
本発明のプリプレグは、樹脂組成物を基材に含浸し、その後乾燥してBステージ化することで得られるが、当該基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。
その材質の代表的な例としては、Eガラス、Nガラス、Dガラス、Sガラス、Hガラス及びQガラスなどの無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレンなどの有機繊維;及びそれらの混合物;等が挙げられる。
これらの基材は、その形状により、織布、不織布、ロービング、チョプドストランドマット、サーフェシングマット等が挙げられる。材質及び形状は、目的とする成形物の用途や 性能により適宜選択され、必要により単独もしくは、2種類以上の材質及び形状を選択して使用することもできる。
基材の厚みには特に制限はないが、0.03〜0.5mm程度とする。また、シランカップリング剤などで表面処理したものや機械的に開繊処理を施したものは、吸湿耐熱性の面から好適である。
基材に対する樹脂組成物の付着量は、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率として、20〜90質量%であることが好ましい。基材に樹脂組成物を含浸(塗布を含む)させた後、通常100〜200℃の乾燥機で、1〜30分間加熱し、半硬化(Bステージ化)させる方法などにより、本発明のプリプレグが得られる。
[プリプレグの製造方法]
本発明のプリプレグの製造方法は、
(1)アセトンを除くケトン類を主成分とした溶媒中で、直径1〜500nmの球状、断面直径1〜500nmの繊維状、又は厚さ1〜500nmの板状の炭素材料からなる導電性超微粉末に、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなる絶縁皮膜を形成して絶縁化超微粉末を作製して、当該絶縁化超微粉末を含有し、かつ熱硬化性樹脂を溶解してなるワニスを作製するワニス作製工程、
(2)作製したワニスを基材に含浸し乾燥する含浸乾燥工程、を順次含む。
絶縁化超微粉末の製造を、アセトンを除くケトン類を主成分とした溶媒中で行なうことで、その後の工程で固液分離の処理を施すことなく、プリプレグ作製用のワニスを調製することが可能となる。これにより、工程の短縮化を図ることができプリプレグを効率よく製造することができる。
既述のように、ケトン類を熱硬化性樹脂の溶剤とすることで絶縁被膜形成後のスラリーにエポキシ樹脂を添加することにより、そのままワニスとすることが可能である。アセトンでも反応機構上は可能だが、含水し易い為、テトラプロピルオキシチタネート添加時に白濁が生じ導電性超微粉末を被覆することが困難であり工業的に用いるには向かない。
ここで、「アセトンを除くケトン類を主成分とした溶媒」における「主成分」とは、当該溶媒中においてアセトンを除くケトン類の含有量(質量基準)が最も大きいことを意味する。アセトンを除くケトン類は、溶媒中、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。アセトンを除くケトン類としては、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン等が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。
ワニス作製工程においては、熱硬化性樹脂の混合順序や方法は特に限定しないが、工程管理の容易性を考慮すると、絶縁化超微粉末を作製した後に混合することが好ましい。
ワニス作製工程後は、作製したワニスを基材に含浸し乾燥する含浸乾燥工程を経てプリプレグが製造される。含浸や乾燥条件等は既述の通りであり、また、従来公知の条件を適宜参考にすることができる。
[積層板]
本発明の積層板は、本発明プリプレグを硬化してなる層を有する。すなわち、本発明のプリプレグを用いて積層成形したものである。好ましい態様としては、本発明のプリプレグを適宜、1ないし複数枚重ね、所望によりその片面もしくは両面に、銅やアルミニウムなどの金属箔を配置した構成で積層成形したものが挙げられる。
金属箔は、電気絶縁材料用途に用いられているものであれば特に制限はなく、成形条件としては、通常の電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用できる。例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2で、加熱時間0.03〜3時間である。また、本発明のプリプレグと別途作製した内層用の配線板を組み合わせ、積層成形することにより、多層板を製造することもできる。
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明のプリプレグを硬化してなる層を有する。
具体的には、本発明の積層板(特に、銅張り積層板)に回路を形成させることにより、また、回路形成された基板上に本発明のプリプレグ、ビルドアップフィルム、樹脂付銅箔を用いて多層化し、回路形成させることによって得ることができる。
本発明のプリント配線板は、本発明のプリプレグを用いているため、高い誘電率を示し、誘電正接が低いといった優れた誘電特性を有する。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
イソプロパノール150質量部中にカーボンナノファイバー(昭和電工(株)製VGCF−H、断面直径150nm、長さ5〜6μmの繊維状)5質量部とテトラプロピルオキシチタネート11質量部とを添加し、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に質量比で蒸留水:イソプロパノールが1:6の混合液77質量部を5分間かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した。12時間自然乾燥した後、100℃にて真空乾燥して絶縁化超微粉末を作製した。
走査型電子顕微鏡(30万倍)により得られた絶縁化超微粉末の断面を観察したところ、30〜70nm厚、平均50nm厚の二酸化チタンの絶縁皮膜の形成が確認された。
得られた絶縁化超微粉末37質量部、及びビスフェノールA型シアネートのプレポリマー(BT2070、三菱瓦斯化学製)50質量部をメチルエチルケトンにて溶解し、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン製)50質量部及びオクチル酸亜鉛0.04質量部を混合してワニスを得た。
このワニスをメチルエチルケトンで希釈し、厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、150℃で5分間乾燥して、樹脂組成物の含有量が50質量部のプリプレグを得た。
次に、このプリプレグを6枚重ね、その上下に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、圧力18kgf/cm2、昇温速度3℃/分、温度180℃で60分間のプレスを行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の片面の銅箔をエッチングで直径14.0mm、幅1.0mmで円形に剥がし、アジレントテクノロジー社製インピーダンスアナライザー4294AとD電極とを用い1MHzでの物性(比誘電率及び誘電正接)を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例2)
得られた絶縁化超微粉末の配合量を10質量部とした以外は実施例1と同様にして、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例3)
得られた絶縁化超微粉末の配合量を90質量部とした以外は実施例1と同様にして、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例4)
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、カーボンナノファイバー5質量部を60質量%硝酸水溶液中で100℃加熱し、酸化処理を施した以外は、実施例1と同様にして、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例5)
絶縁化超微粉末を合成するに当たり、イソプロパノール25質量部中に、天然黒鉛((株)エスイーシー製SNO−2:厚さ100〜200nm、平均厚さ150nm、1×3μm角、平均2×2μm角の板状)5質量部とテトラプロピルオキシチタネート1.8質量部を加え、1時間攪拌した後、室温にて1時間で攪拌混合した。この分散溶液に蒸留水:イソプロパノールが1:6である混合液13質量部を5分かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続した後、濾過した以外は、実施例1と同様にして、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例6)
テトラプロピルオキシチタネートを0.22質量部とし、絶縁化超微粉末の絶縁被膜の厚さを0.6〜1.4nm厚、平均1.0nm厚nmとした以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(実施例7)
テトラプロピルオキシチタネートを22gとし、絶縁化超微粉末の絶縁被膜の厚さを 60〜140nm厚、平均100nm厚nmとした以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(比較例1)
絶縁化超微粉末を使用しないこと以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(比較例2)
カーボンナノファイバーに換えてボールミルで粉砕した炭素繊維(断面直径:800nm〜1.2μm、平均断面直径:1μm、長さ:50μm、繊維状)を用いた以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
(比較例3)
テトラプロピルオキシチタネートを0.14質量部とし、絶縁化超微粉末の絶縁被膜の厚さを0.4〜0.9nm厚、平均0.6nm厚とした以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定したところ導通してしまうため誘電物性を測定する事が出来なかった。
(比較例4)
テトラプロピルオキシチタネートを38.5質量部とし、絶縁化超微粉末の絶縁被膜の厚さを105〜245nm厚、平均175nm厚とした以外は実施例1と同様にして行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について実施例1と同様の物性を測定した。結果を下記表1に示す。
Figure 2010155914
上記結果から明らかなように、本発明に係る絶縁化超微粉末の絶縁被膜の厚さを所定の範囲とすることで、高い誘電特性(誘電率)が得られることが確認できた。また、誘電正接についても実用的で良好な結果となっていた。
(実施例8)
メチルエチルケトン200質量部中にカーボンナノファイバー(昭和電工(株)製VGCF−H、断面直径150nm、長さ5〜6μmの繊維状)24質量部とテトラプロピルオキシチタネート35質量部とを添加し、室温にて1時間で攪拌混合し、この分散溶液に蒸留水8.7重量部を5分間かけて滴下した。滴下終了後更に1時間攪拌を継続し絶縁化超微粉末スラリーを作製した。
この絶縁化超微粉末スラリーにビスフェノールA型シアネートのプレポリマー(BT2070、三菱瓦斯化学製)50質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート1001、ジャパンエポキシレジン製)50質量部及びオクチル酸亜鉛0.04質量部を混合してワニスを得た。
得られたワニスを、厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、150℃で5分間乾燥して、樹脂組成物の含有量が50質量部のプリプレグを得た。
次に、このプリプレグを6枚重ね、その上下に厚さ12μmの電解銅箔を配置し、圧力18kgf/cm2、昇温速度3℃/分、温度180℃で60分間のプレスを行い、厚さ0.7mmの銅張積層板を得た。
得られた銅張積層板の片面の銅箔をエッチングで直径14.0mm、幅1.0mmで円形に剥がし、アジレントテクノロジー社製インピーダンスアナライザー4294AとD電極とを用い1MHzでの物性(比誘電率及び誘電正接)を測定した。
比誘電率は21.5であり、誘電正接は0.029であり、上記実施例と同様に良好な結果が示された。
また、本実施例のプロセスは、絶縁皮膜の形成時の溶媒をそのままワニス希釈用の溶媒とする事ができ、イソプロパノールを溶媒としたときに必要とされる固液分離が不要であるため、工程の簡略化が図れ、生産性に優れることが確認できた。
なお、メチルエチルケトンの代わりにアセトンを溶媒として絶縁化超微粉末の作製を行なったが、テトラプロピルオキシチタネート添加と同時に溶媒中に白濁が生じ、後に沈殿物となり十分な絶縁皮膜を形成する事ができなかった。

Claims (7)

  1. 熱硬化性樹脂及び絶縁化超微粉末を含有してなる樹脂組成物を基材に含浸し、乾燥してなり、
    前記絶縁化超微粉末が、導電性超微粉末に絶縁皮膜が設けられてなり、
    前記導電性超微粉末が、直径1〜500nmの球状、断面直径1〜500nmの繊維状、又は厚さ1〜500nmの板状の炭素材料からなり、
    前記絶縁皮膜が、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなり、その平均厚さが1〜100nmであるプリプレグ。
  2. 前記絶縁化超微粉末と前記熱硬化性樹脂との体積比(絶縁化超微粉末/熱硬化性樹脂)が、5/95〜50/50である請求項1に記載のプリプレグ。
  3. 請求項1又は2に記載のプリプレグを硬化してなる層を有する積層板。
  4. 少なくとも一方の面に金属箔が設けられてなる請求項3に記載の積層板。
  5. 請求項1又は2に記載のプリプレグを硬化してなる層を有するプリント配線板。
  6. 下記の順次工程:
    (1)アセトンを除くケトン類を主成分とした溶媒中で、直径1〜500nmの球状、断面直径1〜500nmの繊維状、又は厚さ1〜500nmの板状の炭素材料からなる導電性超微粉末に、絶縁性金属酸化物又はその水和物からなる絶縁皮膜を形成して絶縁化超微粉末を作製して、当該絶縁化超微粉末を含有し、かつ熱硬化性樹脂を溶解してなるワニスを作製するワニス作製工程、
    (2)作製したワニスを基材に含浸し乾燥する含浸乾燥工程、
    を含むプリプレグの製造方法。
  7. 前記ワニス作製工程において、前記熱硬化性樹脂を、絶縁化超微粉末を作製した後に混合する請求項6に記載のプリプレグの製造方法。
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