JP2010152763A - 真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】真空比例開閉弁16の弁開度を調整して、反応室10内の真空圧力を目標圧力にフィードバック制御する真空圧力制御システムにおいて、反応室10内の真空圧力、または真空目標圧力から予圧圧力値(Oリング49のリーク開始位置)を算出し、その予圧圧力値をフィードバック制御の下限値とする。
【選択図】 図7
Description
図32に示すように、真空圧力制御の準備段階では、まず、真空圧力センサ14,15により反応室10内の現在の真空圧力を測定する(ステップ101(以下「S101」と略記する。))。そして、真空比例開閉弁16の弁開度が、遮断された状態からランプ関数的に変化するように、コントローラから指令信号を出力する(S102)。この状態で、10secを上限に、反応室10内の真空圧力を測定し、僅かな圧力降下(例えば266Pa以上の圧力降下)があったか否かを繰り返し確認する(S103〜105)。
(1)本発明の一態様に係り、弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着されたOリング等の弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整するものであって、反応室と真空ポンプとの間に配置される真空比例開閉弁と、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する制御手段と、を有する真空圧力制御システムにおいて、前記シリンダの内圧を測定する圧力測定手段を有し、前記制御手段は、前記反応室内の真空圧力、または真空圧力目標値から予圧圧力値を算出し、前記予圧圧力値を前記フィードバック制御の下限値とする。
前記反応室内の真空圧力、または真空圧力目標値から算出した予圧圧力値を入力し、前記予圧圧力値を前記フィードバック制御の下限値とする。
<真空圧力制御システムの全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空圧力制御システムの概略構成図である。
本実施の形態に係る真空圧力制御システムは、従来技術の欄で示した図32に対し、真空比例開閉弁16の弁開閉動作をフィードバック制御する前に、フィードバック制御の下限値を真空比例開閉弁16の特性に合わせて個別に設定するものである。真空圧力制御システムは、コントローラ20(制御手段の一例)、空気圧制御部30、操作部40である真空比例開閉弁16、検出部60である真空圧力センサー14、15とを備える。
尚、真空比例開閉弁16と空気圧制御部30との間には、圧力センサ50が配設され、真空比例開閉弁16のシリンダ圧力を測定する。圧力センサ50は、圧力測定結果をコントローラ20に出力する。
このような構成を持つ本実施の形態に係る真空圧力制御システムでは、動作モードとして強制クローズモード(CLOSE)と、真空圧力コントロールモード(PRESS)とを、コントローラ20で選択して設定できる。
図4に示す真空圧力制御システムの制御ブロック図に基づいて具体的に説明すると、真空圧力センサー14、15で計測された反応室10内の真空圧力値を比例微分回路105、106により調整した値は、現場入力又は遠隔入力で指示された目標真空圧力値と比較された後、比例微分積分回路102、103に入力される。その後、直列に接続された積分回路104は、位置制御回路31に出力するため、0〜5Vの範囲の電圧を出力する。積分回路104の時定数は、積分時間調整回路101により決定される。
(真空圧力センサー14、15の計測値)>(目標真空圧力値)
となる場合は、積分回路104の最大値である5Vが、位置制御回路31に対して出力される。その結果、真空比例開閉弁16は急速に開く方向に動作する。一方、
(真空圧力センサー14、15の計測値)<(目標真空圧力値)
となる場合は、積分回路104の最小値である0Vが位置制御回路31に対して出力される。その結果、真空比例開閉弁16は、急速に閉じる方向に動作する。
図5は、シリンダ圧力と反応室10の真空圧力との関係を示す図である。縦軸はシリンダ圧力(kPa)を示し、横軸は位置センサ出力(V)を示す。
図5は、Oリング49の潰し量を0.500mmに設計した真空比例開閉弁16について、反応室10の真空圧力を0〜800×0.133kPaとしたときに圧力センサ50(圧力測定手段の一例)が計測するシリンダ圧力を示している。
しかし、Oリング49から漏れが生じるシリンダ圧力に、弁体45に作用している真空圧力を加算すると、図中X2に示すように、その加算圧力値が一定の値(本実施形態では140kPa)を示し、位置センサ出力も一定になることが判明した。よって、Oリング49から漏れが生じ始める位置(リーク開始位置)は、圧力測定値が測定するシリンダ圧力と真空圧力からOリング49のリーク開始位置を算出することができる。
ここで、真空圧力制御システムは、真空比例開閉弁16や圧力センサ50のバラツキを考慮して、リーク開始位置として、125kpa(弁開度0.050mm相当分のマージンを考慮)をコントローラ20に記憶している。
図7に示す真空圧力制御プログラムは、コントローラ20に格納され、真空圧力コントロールモード(PRESS)が設定されたときに実行され、コントローラ20に下記の処理を行わせる。
S21において、圧力センサ14,15の測定結果を取得して反応室10の真空圧力を取得する。そして、S22において、圧力センサ50からシリンダ圧力を取得する。そして、S23において、S20で取得した所望の真空圧力と、S21で取得した真空圧力を比較して、125kPa(本実施例での例)から大きい方を減算する。すなわち、現在の真空圧力が所望の真空圧力よりも大きいか、等しい場合には(S23;YES)、125kPaから現在の真空圧力値を減算して、Oリング49のリーク位置を算出する(S231)。一方、現在の真空圧力が所望の真空圧力よりも小さい場合には(S23;NO)、125kPaから所望の真空圧力値を減算して、Oリング49のリーク位置を算出する(S232)。これにより、Oリング49のリーク開始位置となるシリンダ圧力を算出する。
発明者らは、本実施形態の真空圧力制御システムの圧力制御応答性について調べた。
実験では、シリンダ圧力0kPaのときの弁開度をフィードバック制御の下限値とする真空圧力制御システム(以下、「真空圧力制御システムA」という。)と、Oリング49のリーク開始位置をフィードバック制御の下限値とする本実施形態の真空圧力制御システム(以下「真空圧力制御システムB」という。)を用いて行った。実験では、真空圧力制御システムA,Bの各真空比例開閉弁16に、シリンダ圧力を500kPaに加圧して供給していた流量を、シリンダ圧力を140kPaに減圧して流量調整する場合の応答性について調べた。
真空圧力制御システムAは、真空比例開閉弁16のシリンダ圧力を500kPaから20kPaに減圧した後、140kPaに調整する。この場合、反応室10の真空圧力は、図中X3に示すように、オーバーシュートを発生した。また、反応室10の真空圧力が安定するのに、約23秒を要する。
真空圧力制御システムBは、真空比例開閉弁16のシリンダ圧力を500kPaから110kPaに減圧した後、140kPaに調整する。この場合、反応室10の真空圧力は、図中X4に示すように、オーバーシュートを発生しない。また、反応室10の真空圧力が安定するのに約20秒を要する。
発明者らは、本実施形態の真空圧力制御システムの圧力制御安定性について調べた。
実験では、真空圧力制御システムAと真空圧力制御システムBを用いて行った。実験では、真空圧力制御システムA,Bに、各真空比例開閉弁16の供給流量が30SML時のPID制御定数を使用して供給流路10SLMにて同じ制御を行った場合に、ハンチングが生じるか否かを調べた。
真空圧力制御システムAは、図10のX5に示すように、供給流量が30SLM時のPID制御を用いて、真空比例開閉弁16に供給流量を30SLMに制御させる場合には、ハンチングが約20秒間続く。一方、図11のX6に示すように、供給流量が30SLM時のPID制御を用いて、真空比例開閉弁16に供給流量を10SLMに制御させる場合には、ハンチングが100秒以上続く。
真空圧力制御システムBは、図12のX7に示すように、供給流量が30SLM時のPID制御を用いて、真空比例開閉弁16に供給流量を30SLMに制御させる場合には、ハンチングが約10秒間続く。一方、図13のX8に示すように、供給流量が30SLM時のPID制御を用いて、真空比例開閉弁16に供給流量を10SLMに制御させる場合には、ハンチングが約40秒程度で収束する。
上記真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、反応室10内の真空圧力、または真空目標圧力値から予圧圧力値(Oリング49のリーク開始位置)を算出し、その予圧圧力値をフィードバック制御の下限値とする。よって、上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、真空比例開閉弁16が、Oリング49がシール力を失うリーク開始位置を弁体45が余分に通り越して弁開閉動作することがなく、圧力制御応答性が向上する。また、上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、オーバーシュートやハンチングが生じた場合でも、フィードバック制御の下限値が、リーク開始位置であるため、真空圧力が短時間で安定し、圧力制御応答性が向上する。
続いて、第2実施形態の真空圧力制御システムについて説明する。
第2実施形態の真空圧力制御システムは、真空圧力制御プログラムが、ポテンショメータ18が測定する位置センサ出力を用いて、Oリング49のリーク開始位置を算出する点で、第1実施形態と相違する。よって、ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明する。尚、第1実施形態と同一構成には、第1実施形態と同じ符号を図面と説明に用い、詳細な説明を省略する。
図16は、位置センサ出力と反応室10の真空圧力との関係を示す図である。縦軸は、ポテンショメータ18の位置センサ出力(V)を示し、横軸は、シリンダ圧力(kPa)を示す。
図16は、Oリング49の潰し量を0.500mmに設計した真空比例開閉弁16について、反応室10の真空圧力を0〜800×0.133kPaとしたときにOリング49から漏れを生じる弁体45の位置(弁開度)及びポテンショメータ18が出力する位置センサ出力を測定した結果を示す図である。
図中数値は、Oリング49から漏れが生じたときの位置センサ出力を示す。Oリング49から漏れを生じるときの位置センサ出力は、真空圧力が0kPaのときには1.264V、真空圧力が100×0.133kPaのときには1.265V、真空圧力が200×0.133kPaのときには1.263V、真空圧力が300×0.133kPaのときには1.264V、真空圧力が400×0.133kPaのときには1.262V、真空圧力が500×0.133kPaのときには1.264V、真空圧力が600×0.133kPaのときには1.261V、真空圧力が700×0.133kPaのときには1.263V、真空圧力が800×0.133kPaのときには1.260Vとなる。このように、真空比例開閉弁16は、Oリング49から漏れが生じるときの位置センサ出力が約1.263V前後で安定している。
位置センサ出力の変動量は、例えば、真空圧力が0kPaの場合、シリンダ圧力が0kPaのときの位置センサ出力が1.200Vで、Oリング46のリーク開始位置における位置センサ出力が1.264Vであり、その差分が0.064Vである。位置センサ出力0.001Vが弁開度として約0.0078mmに相当するポテンショメータ18を使用すると、位置センサ出力の変動量0.064Vは、弁開度の変動量0.498mmに相当する。そして、この弁開度の変動量0.498mmは、Oリング49の潰し量0.500mmにほぼ一致する。よって、位置センサ出力の変動量から弁開度の変動量を認識できる。
そこで、真空圧力制御システムは、真空圧力と変動量の関係テーブルをコントローラ20に格納している。図17は、真空圧力と変動量の関係テーブルの一例を示す図である。
テーブルは、図16に示す測定結果から真空圧力毎に算出される弁開度の変動量及び位置センサ出力の変動量に、弁開度0.100mm(位置センサ出力13mV)分のマージンを考慮して、弁開度の変動量と位置センサ出力の変動量を記憶している。
図14は、真空圧力制御プログラムのフローチャートである。
真空圧力制御プログラムは、コントローラ20に格納され、真空圧力コントロールモード(PRESS)が設定された場合に実行されて以下の処理をコントローラ20に行わせる。
先ず、S21において、圧力センサ14,15の測定結果を取得して反応室10の真空圧力を取得する。そして、S32において、現在の弁開度を、ポテンショメータ18の位置センサ出力により取得する。そして、S33において、S21で取得した真空圧力とS32で取得した位置センサ出力より、Oリング49のリーク開始位置を算出する。
Oリングリーク開始位置は、図15に示す処理を実行することにより算出される。具体的には、S41において、真空比例開閉弁16がクローズ状態であるか否かを検出する。真空比例開閉弁16がクローズ状態でない場合は(S41:NO)、S45において、コントローラ20に保存されているOリング49のリーク開始位置を採用し、図14のS24へ進む。
一方、真空比例開閉弁16がクローズ状態である場合は(S41:YES)、図15のS42において、真空圧力に応じた弁開度の変動量として、図17に示すテーブルより位置センサ出力の変動量を参照して取得する。そして、S43において、S32で取得した現在の位置センサ出力にS42で取得した位置センサ出力の変動量を加算することにより、Oリング49のリーク開始位置を算出する。そして、S44において、S43で算出したOリング49のリーク開始位置をコントローラ20に更新・保存する。その後、図14のS24へ進む。
ところで、真空比例開閉弁16は、バルブメンテナンス後の再組立による弁位置の変化や、経年的な機械的ずれ、生成物付着による弁位置の変化により、シリンダ圧力0kPaのときの弁位置が正常な弁位置からずれることがある。この場合でも、真空圧力制御システムは、シリンダ圧力を0kPaにして真空比例開閉弁16をクローズした時にポテンショメータ18が測定する位置センサ出力に、Oリング49の潰し量分を考慮した位置センサ出力変動量を加算することにより、Oリング49のリーク開始位置を補正する。
実験では、真空比例開閉弁16をオープン状態からクローズ状態にした時にポテンショメータ18の位置センサ出力が1.145Vである真空圧力制御システムCと、真空比例開閉弁16をオープン状態からクローズ状態にした時にポテンショメータ18の位置センサ出力が1.240Vである真空圧力制御システムDと、真空比例開閉弁16をオープン状態からクローズ状態にした時にポテンショメータ18の位置センサ出力が1.335Vである真空圧力制御システムEをそれぞれ用いて、反応室10の真空圧力を目標圧力(ここでは、9.0×0.133kPa)に制御した。この場合に、真空圧力制御システムC〜Eが、真空比例開閉弁16に出力する制御コマンド(V)とポテンショメータ18から出力される位置センサ出力(V)と、真空比例開閉弁16のシリンダ圧力(kPa)と、反応室10の真空圧力(kPa)とを測定した。この実験結果を図18、図19に示す。
真空圧力制御システムC〜Eが真空比例開閉弁16に付与する制御コマンドは、位置センサ出力とリニアに対応するようになっている。よって、制御コマンドも位置センサ出力に対応して変化し、制御コマンド下限値が、その時の位置センサ出力に応じて異なる値になっている。よって、図18に示す測定結果から、真空圧力制御システムC〜Eが、クローズ時の位置センサ出力に応じて制御コマンドを補正していることが分かる。
図19は、シリンダを予圧する様子を示す図であって、左側縦軸は反応室10の真空圧力(×0.133kPa、絶対圧力)、右側縦軸はシリンダ圧力(kPa、ゲージ圧力)、横軸は時間(sec)を示す。
上記のように制御コマンドを補正された真空圧力制御システムC〜Eは、真空比例開閉弁16のクローズ時における位置センサ出力が1.145V、1.240V、1.335Vと異なる場合であっても、シリンダ41が同じ圧力で予圧されている。
次に、真空圧力制御システムが、フィードバック制御する際に真空比例開閉弁16に出力する制御コマンドの下限値設定に関する具体例を説明する。
例えば、真空比例開閉弁16をクローズ状態にしたときに、圧力センサ14,15が測定する現在の真空圧力が0kPaであり、且つ、ポテンショメータ18の位置センサ出力が1.203Vである場合には、位置センサ出力が、図16のX9部に示す正常時の位置センサ出力基準値(1.200V)より0.003V大きい。すなわち、弁開度が正常時より大きい。この場合、図17に示す真空圧力0kPaのときの位置センサ出力基準値0.051Vを読み出し、位置センサ出力(1.203V)に加算する。これにより、Oリング49のリーク開始位置は、位置センサ出力が1.254Vを出力する位置に補正される。
上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、Oリング49がシール力を失うときに、真空比例開閉弁16の弁体45の位置に応じて出力値を変化させて出力するポテンショメータ18が出力する出力値(位置センサ出力)がほぼ一定である。そして、上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、ポテンショメータ18の出力値が、Oリング49がシール力を失うリーク開始位置まで弁体45が移動したときにポテンショメータ18が出力する出力値となるように、シリンダ41を予圧して、フィードバック制御の下限値とする。よって、上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、真空比例開閉弁16が、リーク開始位置を弁体45が余分に通り越して弁開閉動作することがなく、圧力制御応答性が向上する。また、上記態様の真空圧力制御システム及び真空圧力制御プログラムによれば、オーバーシュートやハンチングが生じた場合でも、フィードバック制御の下限値がリーク開始位置であるため、真空圧力が短時間で安定し、圧力制御応答性が向上する。
続いて本発明の第3実施形態に係る真空圧力制御システムついて説明する。
第3実施形態の真空圧力制御システムは、反応室10からガスをスロー排気するスロー排気モードを備える点が第1実施形態と相違する。よって、ここでは、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する点については、第1実施形態と同一符号を図面や説明に用い、詳細な説明を省略する。
図20は、真空圧力制御システムが実行するスロー排気制御プログラムのフローチャートである。
スロー排気制御プログラムは、真空圧力制御システムのコントローラ20に格納されている。真空圧力制御システムは、スロー排気モードが設定されると、図20に示すスロー排気制御プログラムをコントローラ20に実行させ、以下の処理を行う。
真空圧力制御システムは、真空比例開閉弁16がクローズしている場合には、現在の真空圧力を取得と弁開度を取得し、Oリング49のリーク開始位置を算出する(S201:YES、S21,S52,S53)。弁開度及びOリング49のリーク開始位置は、第1実施形態のようにシリンダ圧力で検出しても良いし、第2実施形態のようにポテンショメータ18の位置センサ出力で取得しても良い。一方、真空比例開閉弁16がクローズしていない場合には(S201:NO)、保存されているOリング49のリーク位置を採用する。
発明者らは、シリンダの予圧がスロー排気時間に与える影響について調べた。
実験では、フィードバック制御の下限値をシリンダ圧力0kPa時のシリンダ圧力とする真空圧力制御システムFと、フィードバック制御の下限値をOリング49のリーク開始位置とする真空圧力制御システムGとを使用して行った。実験では、真空圧力制御システムF,Gが、設定流量(ここでは0.333kPa/sec)で反応室10を減圧するように真空比例開閉弁16の弁開度を調整し、その間の真空圧力とシリンダ圧力を経時的に測定した。その実験結果を、図22及び図23に示す。
真空圧力制御システムFは、反応室10を目標流量で減圧するように真空比例開閉弁16の弁開度を調整するまでに、9秒間かかった。
図22は、真空圧力制御システムGによるスロー排気に要する時間を示す図であって、左側縦軸は反応室10の真空圧力(×0.133kPa、絶対圧力)を示し、右側縦軸はシリンダ圧力(kPa、ゲージ圧力)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
真空圧力制御システムGは、反応室10を目標流量で減圧するように真空比例開閉弁16の弁開度を調整するまでに、6秒間かかった。
よって、真空圧力制御システムGは、真空圧力制御システムFよりスロー排気に要する時間を3分の2に短縮することができた。これは、真空圧力制御システムGが、シリンダ41をOリング49のリーク開始位置まで予圧しており、真空比例開閉弁16の供給ポート18Aに圧縮空気を供給すると同時に真空比例開閉弁16にガスが流れ始めるためと考えられる。
発明者らは、上記真空圧力制御システムF,Gを用いて、スロー排気時にアンダーシュートが発生した場合の制御について調べた。実験では、真空圧力制御システムF,Gが設定流量(ここでは0.333kPa/sec)で反応室10を減圧するように真空比例開閉弁16の弁開度を調整し、反応室10が減圧し始めるときにシリンダ41を加圧してアンダーシュードを生じさせる。この場合に、真空圧力制御システムF,Gについて真空圧力とシリンダ圧力を経時的に測定した。その実験結果を、図23及び図24に示す。
真空圧力制御システムFは、シリンダ圧力変動が最大約70kPaであり、シリンダ圧力の安定に約30秒かかった。そして、反応室10では、−27.5×0.133kPaのアンダーシュートが生じ、アンダーシュート発生後から安定するまでに約40秒かかった。
真空圧力制御システムGは、シリンダ圧力変動が最大約30kPaであり、シリンダ圧力の安定に約15秒かかった。そして、反応室10では、−9.0×0.133kPaのアンダーシュートが生じ、アンダーシュート発生後から安定するまでに約15秒かかった。
第3実施形態に係る真空圧力制御システムは、第1実施形態と同様、圧力制御応答性が向上を図ることができる。また、第3実施形態に係る真空圧力制御システムは、アンダーシュートが生じた場合でも、フィードバック制御の下限値が、Oリング49がシール力を失うリーク開始位置であるため、真空圧力が短時間で安定し、圧力制御応答性が向上する。
ここで、第3実施形態に係る真空圧力制御システムと特許文献1記載の真空圧力制御システムとを、真空圧力と制御コマンドとの関係、真空圧力とシリンダ圧力との関係、真空圧力と位置センサ出力との関係から対比し、両者の差異を明らかにする。
図25は、特許文献1に記載する真空圧力制御システムの真空圧力と制御コマンドとの関係を示す図であって、左側縦軸は真空圧力(×0.133kPa、絶対圧力)を示し、右側縦軸は制御コマンド(V)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
特許文献1記載の真空圧力制御システムは、真空比例開閉弁16の不感帯をなくすために、シリンダ41に予圧をかけている。しかし、Oリング49のリーク開始位置が不明なため、シリンダ41に予圧できる予圧可能量が不明である。そこで、図32のS103,S108に示すように、規定時間(10sec)の間、真空圧力変動を確認しながら弁開度を段階的に調整して予圧を行い(図25のA部)、その後、規定時間(10sec)の間、フィードバック制御を行うことにより(図25のB部)、予圧可能量を求めている。そのため、特許文献1記載の真空圧力制御システムは、予圧に、最大で20secを要し、スロー排気の流量安定に29.6秒もかかり、制御応答性が悪かった。
第3実施形態の真空圧力制御システムは、真空圧力または真空圧力目標からOリング49のリーク開放位置を算出し、又は、位置センサ出力値に位置センサ出力変動量を加算してOリング49のリーク開始位置を算出し、シリンダ41の予圧可能量を求めている。そのため、Oリング49のリーク開始位置までシリンダ41に圧縮空気を供給してシリンダ41を一気に予圧できるため、予圧時間が短く、スロー排気の流量安定に9.2秒しかかからず、制御応答性が良い。
特許文献1記載の真空圧力制御システムは、予圧可能量を調整する図中A部とB部において、殆どシリンダ41を予圧していない。
図28は、第3実施形態に係る真空圧力制御システムの真空圧力とシリンダ圧力との関係を示す図であって、左側縦軸は真空圧力(×0.133kPa、絶対圧力)を示し、右側縦軸はシリンダ圧力(kPa、ゲージ圧力)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
第3実施形態の真空圧力制御システムは、スロー排気開始と同時にシリンダ41を予圧し始めている。
特許文献1記載の真空圧力制御システムは、予圧可能量を調整する図中A部とB部において、位置センサ出力が殆ど変化していない。すなわち、弁開度が変化していない。
図30は、第3実施形態に係る真空圧力制御システムの真空圧力と位置センサ出力との関係を示す図であって、左側縦軸は真空圧力(×0.133kPa、絶対圧力)を示し、右側縦軸は位置センサ出力(V)を示し、横軸は時間(sec)を示す。
第3実施形態に係る真空圧力制御システムは、スロー排気と同時に位置センサ出力が変化している。すなわち、弁開度が変化している。
例えば、本実施例では、予圧圧力値を実験データから算出しているが、Oリングのつぶし量の設計値に基づいて算出しても良い。または、Oリングのつぶし量が所定値(例えば、0.500mm)になったときのシリンダ圧力に基づいて算出してもよい。
また、本実施例では、予圧圧力値を予め記憶させているが、前記シリンダ圧力等から自動検出するシステムを採用しても良い。
また例えば、第2実施形態のようにポテンショメータ18の位置センサ出力と反応室10の真空圧力に基づいてOリング49のリーク開始位置を算出する場合は、圧力センサ50を省略してコストダウンを図っても良い。
また例えば、ピストンに設けたマグネットを検出して弁開度を測定するものを、位置測定手段の一例としても良い。
13 真空ポンプ
16 真空比例開閉弁
18 ポテンショメータ(位置検出手段の一例)
20 コントローラ(制御手段の一例)
41 シリンダ
45 弁体
47 弁座
49 Oリング
50 圧力センサ(圧力測定手段の一例)
Claims (8)
- 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整するものであって、反応室と真空ポンプとの間に配置される真空比例開閉弁と、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する制御手段と、を有する真空圧力制御システムにおいて、
前記シリンダの内圧を測定する圧力測定手段を有し、
前記制御手段は、前記反応室内の真空圧力、または真空圧力目標値から予圧圧力値を算出し、前記予圧圧力値を前記フィードバック制御の下限値とする
を特徴とする真空圧力制御システム。 - 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整する真空比例開閉弁を、反応室と真空ポンプとの間に配置し、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する真空圧力制御システムにおいて、
前記シリンダの内圧を測定する圧力測定手段を有し、
前記反応室内の真空圧力、または真空圧力目標値から算出した予圧圧力値を入力し、前記予圧圧力値を前記フィードバック制御の下限値とする
を特徴とする真空圧力制御システム。 - 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整するものであって、反応室と真空ポンプとの間に配置される真空比例開閉弁と、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する制御手段と、を有する真空圧力制御システムにおいて、
前記弁体の位置に応じて出力値を変化させて出力する位置検出手段を有することと、
弾性シール部材がシール力を失うときに前記位置検出手段が出力する出力値がほぼ一定であることと、
前記制御手段は、前記位置検出手段の出力値が、前記弾性シール部材がシール力を失うリーク開始位置まで前記弁体が移動したときに前記位置検出手段が出力する出力値となるように、前記シリンダを予圧して、前記フィードバック制御の下限値とすること、
を特徴とする真空圧力制御システム。 - 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整する真空比例開閉弁を、反応室と真空ポンプとの間に配置し、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する真空圧力制御システムにおいて、
前記弁体の位置に応じて出力値を変化させて出力する位置検出手段を有することと、
弾性シール部材がシール力を失うときに前記位置検出手段が出力する出力値が一定であることと、
前記位置検出手段の出力値が、前記弾性シール部材がシール力を失うリーク開始位置まで前記弁体が移動したときに前記位置検出手段が出力する出力値となるように、前記シリンダを予圧して、前記フィードバック制御の下限値とすること、
を特徴とする真空圧力制御システム。 - 請求項3又は請求項4に記載する真空圧力制御システムにおいて、
前記シリンダが無加圧のときに前記位置検出手段が出力する出力値から、前記シリンダを前記リーク開始位置まで予圧したときに前記位置検出手段が出力する出力値まで変動する変動量を、前記反応室内の真空圧力別に予め記憶するデータ記憶手段を有し、
前記反応室の真空圧力に応じた前記変動量を前記データ記憶手段から取得し、取得した変動量を前記位置検出手段が出力する出力値に加算することにより、前記リーク開始位置を算出する
ことを特徴とする真空圧力制御システム。 - 請求項5に記載する真空圧力制御システムにおいて、
無加圧時の弁位置を検出して、その位置から一定リフト量となるように予圧することにより、弁位置を補正することを特徴とする真空圧力制御システム。 - 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整する真空比例開閉弁を、反応室と真空ポンプとの間に配置し、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する真空圧力制御システムに用いられる真空圧力制御プログラムにおいて、
前記反応室内の真空圧力、または真空圧力目標値から予圧圧力値を算出し、制御コマンドを変更して前記圧力測定手段が前記予圧圧力値を検出するまで前記シリンダを予圧することにより、前記フィードバック制御の下限値とするように、前記真空圧力制御システムを動作させる
を特徴とする真空圧力制御プログラム。 - 弁体と、前記弁体が当接又は離間する弁座と、前記弁体の前記弁座に当接する面に装着された弾性シール部材と、前記弁体に駆動力を付与するシリンダとを有し、前記弾性シール部材の潰し量を変化させて微小流量を調整する真空比例開閉弁を、反応室と真空ポンプとの間に配置し、反応室内の真空圧力に基づいて、前記真空比例開閉弁の弁開度を調整し、前記反応室内の真空圧力を真空目標圧力値にフィードバック制御する真空圧力制御システムに用いられる真空圧力制御プログラムにおいて、
弾性シール部材がシール力を失うときに前記位置検出手段が出力する出力値がほぼ一定であることと、
前記弁体の位置に応じて出力値を変化させて出力する位置検出手段の出力値が、前記弾性シール部材がシール力を失うときに前記位置検出手段が出力する出力値となるように、前記シリンダを予圧することにより、前記弾性シール部材がシール力を失う位置まで前記弁体を移動させ、前記フィードバック制御の下限値とするように、前記真空圧力制御システムを動作させること、
を特徴とする真空圧力制御プログラム。
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