JP2010150620A - 防食被覆鋼材 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐硫酸性および耐塩酸性に優れた防食被覆鋼材を提供する。
【解決手段】鋼材の少なくとも1面に防食被覆層を有する防食被覆鋼材であって、前記鋼材は、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.01〜1.5質量%、Mn:0.1〜2.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.03質量%、Cu:0.03〜1.0質量%、Sb:0.002〜0.7質量%、W:0.003〜0.5質量%およびAl:0.005〜0.5質量%、N:0.001〜0.01質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、C、SbおよびWが下記(1)式の関係を満たし、前記防食被覆層は、硫黄を含む物質を含有し、前記鋼材に直接または中間層を介して積層されてなる。2.5≦(W+Sb)/C・・・(1)。(1)式のW、SbおよびCは、各成分の含有量(質量%)である。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として土木・建築用の資材に適用出来、特に硫酸、塩酸などの酸に接する環境下で優れた耐硫酸性および耐塩酸性を有する防食被覆鋼材に関するものである。
下水道や温泉地帯などで用いられる構造物は現在コンクリートが主な材料として用いられている。下水道や温泉地帯では微生物や火山ガスの影響で硫化水素が発生し、これに水が介在すると硫酸となる。このような箇所では、硫酸や硫酸塩によるコンクリート構造物の腐食が問題となっている。コンクリートなどのセメント硬化体は、硫酸のような酸に接触すると、硬化体中に存在する水酸化カルシウムとの反応によってニ水石膏が生じ、さらにはエトリンガイトが生成し劣化が起きる。
このような劣化に対し、耐硫酸性に優れる材料として高炉水砕スラグにポリマーを配合した材料(特許文献1)、アルミナセメントからなる材料(特許文献2)、高炉水砕スラグやシリカフュームなどの微粉末を多量に混和したセメントモルタルが使用されている(特許文献3)。
これらの材料は従来のコンクリートと比較し硫酸環境での劣化を抑制するが、特許文献1では劣化抑制が十分ではない。また特許文献2、3では劣化抑制効果はあるが、構造体の材料とする場合強度保持のため躯体の厚みを50〜100cmとする必要があり、構造体の重量が大きくなってしまうという問題がある。
これに対し、耐硫酸性および耐塩酸性に優れる硫黄固化体を鋼材に被覆した材料が提案されている(特許文献4)。これはコンクリートと比較し引張り強度に優れる鋼材に耐硫酸性および耐塩酸性に優れた硫黄固化体を被覆し、構造体の軽量化、縮小化をはかることができる材料であるが、硫黄固化体と鋼材界面に硫酸や塩酸が侵入した場合、耐硫酸性および耐塩酸性に劣る。
またタンクやプラントなど硫酸や塩酸などの酸に接する環境下で、あるいは硫酸露点や塩酸露点などの酸露点が生じる環境下で使用される構成材料として用いられる低合金鋼材が提案されている(特許文献5)。これは従来の鋼材と比較し耐硫酸性および耐塩酸に優れたものであるが、その効果は十分ではない。
特開平03−290348号公報 特開2004−292245号公報 特開2000−128618号公報 特開2007−307806号公報 特開2003−213367号公報
本発明の目的は、耐硫酸性および耐塩酸性に優れた防食被覆鋼材を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決して耐硫酸性および耐塩酸性に優れた防食被覆鋼材を得るために種々検討を重ねた結果、本発明に至った。上記課題を解決する本発明の手段は、下記の通りである。
[1]鋼材の少なくとも1面に防食被覆層を有する防食被覆鋼材であって、
前記鋼材は、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.01〜1.5質量%、Mn:0.1〜2.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.03質量%、N:0.001〜0.01質量%、Cu:0.03〜1.0質量%、Sb:0.002〜0.7質量%、W:0.003〜0.5質量%およびAl:0.005〜0.5質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、C、SbおよびWが下記(1)式の関係を満たし、
前記防食被覆層は、硫黄を含む物質を含有し、前記鋼材に直接または中間層を介して積層されてなることを特徴とする防食被覆鋼材。
2.5≦(W+Sb)/C・・・(1)
ここで、(1)式のW、SbおよびCは、各成分の含有量(質量%)である。
[2]前記鋼材が、さらに、Sn:0.005〜0.5質量%を含有し、かつ、C、Sb、WおよびSnが下記(2)式の関係を満たすことを特徴とする[1]に記載の防食被覆鋼材。
2.5≦(W+Sb+3×Sn)/C・・・(2)
ここで、(2)式のW、Sb、SnおよびCは、各成分の含有量(質量%)である。
[3]前記鋼材が、さらに、Mo:0.001〜1質量%を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の防食被覆鋼材。
本発明によれば、耐硫酸性と耐塩酸性に優れ、また従来のコンクリート構造物と比較し軽量化、縮小化を図ることが可能な防食被覆鋼材を提供することができる。
以下、本発明の構成と限定理由を説明する。
本発明の防食被覆鋼材の被覆層の構成例を図1に示す。図1の防食被覆鋼材は、鋼材1の表面に中間層2、防食被覆層3を順次積層した例である。以下、各構成について詳細に述べる。
(鋼材)
本発明の防食被覆鋼材の母材となる鋼材の成分組成について説明する。
C:0.01〜0.12質量%
Cは、鋼の強度を高める元素であり、本発明では、所望の強度を得るために、0.01質量%以上添加する。一方、0.12質量%を超える添加は耐硫酸性を劣化させるとともに、溶接性および溶接熱影響部の靭性をも劣化させる。よって、本発明では、Cは0.01〜0.12質量%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.1質量%の範囲である。
Si:0.01〜1.5質量%
Siは、脱酸剤として添加される成分であり、また、鋼の強度を高める効果があるので、本発明では0.01質量%以上含有させる。しかし、1.5質量%を超える添加は、鋼の靭性を劣化させる。よって、Siは0.01〜1.5質量%の範囲とする。なお、Siは、酸性環境では、防食皮膜を形成して耐硫酸性および耐塩酸性の向上に寄与する。この耐硫酸性および耐塩酸性の向上効果を得るためには、0.2質量%以上添加することが好ましい。
Mn:0.1〜2.5質量%
Mnは、鋼の強度を高める元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.1質量%以上の含有を必要とする。一方、2.5質量%を超えるMnの含有は、鋼の靭性および溶接性を低下させる。よって、本発明では、Mnは0.1〜2.5質量%の範囲とする。なお、強度の維持および耐硫酸性および耐塩酸性を劣化させる介在物形成を抑制する観点からは、0.3〜1.6質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜1質量%の範囲である。
P:0.05質量%以下
Pは、粒界に偏析して、鋼の靭性を低下させる有害な元素であり、特に、0.05質量%を超えて含有すると、靭性が顕著に低下するため、Pは、0.05質量%以下とする。なお、Pはできるだけ低減するのが望ましいが、0.005質量%未満への低減は、製造コストの上昇を招くので、Pの下限は0.005程度とするのが好ましい。
S:0.005〜0.03質量%
Sは、非金属介在物であるMnSを形成し、これが局部腐食の起点となって耐局部腐食性を低下させる有害な元素であり、低減するのが望ましいが、一方で、Cuの存在下では、CuS皮膜の形成に寄与し、鋼表面における腐食反応を抑制し、耐硫酸性を向上させる元素でもある。そこで、本発明では、耐局部腐食性の低下を回避するために、Sの上限を0.03質量%とするとともに、耐硫酸性を確保する観点からSの下限を0.005質量%とする。
Cu:0.03〜1.0質量%
Cuは、酸による腐食環境において耐硫酸性を向上する元素であり、本発明では、耐硫酸性を向上させるために必須の元素である。しかし、0.03質量%未満の添加では、その効果が小さく、一方、1.0質量%を超える過度の添加は、熱間加工性の劣化を招く。よって、Cuは0.03〜1.0質量%とする。
Sb:0.002〜0.7質量%
Sbは、Cuとの複合効果により鋼板表面に濃化し、耐硫酸性を向上する元素であり、必須の添加成分である。しかし、0.002質量%未満では、その効果が小さく、一方、0.7質量%を超える添加は、効果が飽和するとともに、加工性が劣化する。よって、Sbは0.002〜0.7質量%の範囲で添加する。好ましくは、0.02〜0.3質量%の範囲である。
W:0.003〜0.5質量%
Wは、耐硫酸性を維持したまま、耐塩酸性を向上させる効果がある。上記Wの添加は、腐食環境で形成されるWO 2−イオンが、塩化物イオン等の陰イオンに対するバリア効果を発揮するとともに、不溶性のFeWOを形成して腐食の進行を抑制すること、さらに、鋼板表面に形成される錆層は、Wを含むことにより非常に緻密化されることによるものである。すなわち、Wの添加は、化学的および物理的な作用によって、硫酸や塩酸などの酸に接する環境下における腐食を抑制する。上記の効果は、0.003質量%よりも少ないと、効果が十分に得られず、一方、0.5質量%を超えると、耐塩酸性が徐々に低下するとともに、コストの上昇を招く。よって、本発明では、Wは0.003〜0.5質量%の範囲で添加する。
2.5≦(W+Sb)/C
発明者らは、硫黄を含む物質を含有する防食被覆層を有する鋼材について、その鋼成分組成を種々に変化させた鋼を用いて、後述する実施例と同じ硫酸浸漬腐食試験と塩酸浸漬腐食試験を行い、耐硫酸性と耐塩酸性への各成分の寄与について調査した。その結果、Cuを有意に含有している鋼においては、Sbの添加は、耐硫酸性の向上に優れた効果を示すこと、そして、耐塩酸性に対する有効性は、「W+Sb」(ここで、前記各元素記号は、それら成分の含有量(質量%)である。)の値の大きさで評価できることを見出した。このことは、SbおよびWの許容組成範囲内においては、SbおよびWの添加量が増えるほど、耐硫酸性と耐塩酸性が向上することを示している。一方、Cは、耐硫酸性を劣化させる元素であることも見出したが、実用的なCの範囲である0.01〜0.12質量%においては、W+Sbの値が、C含有量に対して、一定量以上存在していれば、具体的には、Sbが下記(1)式;
2.5≦(W+Sb)/C・・・(1)
ここで、上記各元素記号は、それら成分の含有量(質量%)
を満たして含有していれば、耐硫酸性と耐塩酸性を高いレベルに保持できることを見出した。よって、本発明においては、高い耐硫酸性と耐塩酸性を確保するために、C、SbおよびWが上記(1)式の関係を満たすようにSbとWを添加する。
Al:0.005〜0.5質量%
Alは、脱酸剤として添加される成分であり、本発明では0.005質量%以上の添加が必要である。一方、0.5質量%を超えて添加すると、鋼の靭性が低下する。よって、Alは0.005〜0.5質量%の範囲とする。好ましくは0.01〜0.05質量%の範囲である。
N:0.001〜0.01質量%
Nは、固溶状態で、鋼の靭性を劣化させる不可避的不純物であり、低いほど好ましい。靭性を確保する観点からは、0.01質量%以下であれば許容できる。一方、Nを完全に除去することは技術的に難しく、また、必要以上の低減は、製鋼コストの上昇を招くだけなので、Nの下限は0.001質量%とする。
本発明の本発明の防食被覆鋼材の母材となる鋼材には、基本成分の他に、耐硫酸性、および耐塩酸性に対する要求レベルに応じて、下記の成分を添加することができる。
Sn:0.005〜0.5質量%
Snは、緻密な錆層を形成して硫酸や塩酸などの酸に接する環境下におけるにおける腐食を抑制する作用がある。しかし、上記効果は、0.005質量%未満の添加では十分ではなく、一方、0.5質量%を超える添加は、熱間加工性および靭性の劣化を招く。よって、Snは、添加する場合には、0.005〜0.5質量%の範囲で添加するのが好ましい。
Snを添加するときは、C、Sb、WおよびSnが下記(2)式の関係を満たすことが必要である。
2.5≦(W+Sb+3×Sn)/C・・・(2)
ここで、上記各元素記号は、それら成分の含有量(質量%)である。
発明者らは、硫黄を含む防食被覆層をもつ、Cuを有意に含有している鋼においては、SbおよびWの他に、特にSnの添加が、耐硫酸性および耐塩酸性の向上に対して著しい効果を示すことを見出した。その各成分の耐硫酸性および耐塩酸性に対する有効性は、「W+Sb+3×Sn」(ここで、前記各元素記号は、それら成分の含有量(質量%)である。)の値の大きさで評価することができる。このことは、各成分の許容組成範囲内においては、Sn、SbおよびWの添加量が増えるほど、耐硫酸性および耐塩酸性が向上し、Snの効果は、SbおよびWの3倍であることを示している。そして、実用的なCの範囲である0.01〜0.12質量%においては、上記式で得られる値が、C含有量に対して、一定量以上存在していれば、具体的には、Sb、WおよびSnが上記(2)式を満たして含有していれば、耐硫酸性および耐塩酸性を非常に高いレベルに保持できる。よって、本発明では、高い耐硫酸性および耐塩酸性を確保するためには、上記(2)式を満たすようSb、SnおよびWを添加することが必要である。
Mo:0.001〜1質量%
Moは、Cu、Sbとの複合効果により耐硫酸性を維持したまま、耐塩酸性を向上させる効果がある。しかし、上記効果は、0.001質量%未満の添加では十分ではなく、一方1%を超える添加は機械的性質へ悪影響を及ぼす。
本発明の防食被覆鋼材の母材となる鋼材の、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を害さない範囲であれば、上記以外の成分の添加を拒むものではない。
(防食被覆層、中間層)
本発明の防食被覆層は、前記鋼材の上に、直接または中間層を介して積層され、硫黄を含む物質を含有する。
中間層は、主として鋼材と防食被覆層との密着性向上のために形成され、例えば、エポキシ樹脂又はポリウレタン等の熱硬化性樹脂からなるプライマー、リン酸塩被膜、クロメート被膜などの化成被膜、シランカップリング剤の接着層等が挙げられる。密着性を向上するものであればどのようなものでも支障はないが、密着性だけでなく耐硫酸性および耐塩酸性を向上できるものが好ましい。
密着性と耐硫酸性および耐塩酸性の点からエポキシ樹脂及び/又はポリウレタン等の熱硬化性樹脂からなるプライマーがより好ましい。このプライマーは、例えばエポキシ樹脂系では、主剤/硬化剤の組み合わせとして、ジャパンエポキシレジン社製jER 828/jER T、jER 828/jER DC11、jER 828/jER RX221PF等を用いることができる。またポリウレタン系としては第一工業製薬社製パーマガード(登録商標)331 主剤/硬化剤等を用いることが出来る。
また中性やアルカリ環境において、アルカリに溶解する性質をもつ改質硫黄を用いた防食被覆層の剥離抑制のため、中間層中にpH上昇を抑制するpH緩衝作用のある物質を含有させてもよい。
pH緩衝作用のある物質としては水酸化物イオンが生成された場合でも、pHが変動しない緩衝作用を有する物質であれば特に限定されるものではないが、水酸化物イオンの濃度上昇を抑制しpHを中性域に保つ作用に優れる点から、フタル酸水素カリウム(C(COOK)(COOH))、クエン酸ナトリウム、(Na・2HO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素カルシウム(CaHPO)、トリポリリン酸アルミニウム(AlHPO10)及び五酸化バナジウム(V)の中から選択される1種または2種以上の混合物であることが好ましく、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム及び五酸化バナジウムの中から選択される1種または2種以上がより好ましい。前記pH緩衝作用のある物質の添加量は特に限定されるものではないが、中間層中の含有量として中間層全体の1〜50質量%の範囲内が好ましい。1質量%未満では、緩衝作用の効果が十分ではなく、50質量%を超えて添加しても緩衝作用の効果は変わらないためである。
中間層が前述のプライマーの場合は、前述の樹脂を鋼材上に塗布したのち、指触乾燥前に防食被覆層を被覆し、防食被覆層とともに固化させることで形成できる。
中間層の膜厚は、耐硫酸性および耐塩酸性を向上させる観点から50μm以上が好ましく、経済性の観点から500μm以下が好ましい。
本発明の防食被覆層は、硫黄を含む物質を含有する。硫黄を含む物質は防食被覆層のバインダーとして用いる。硫黄を含む物質としては硫黄の一部をポリマー化した改質硫黄を用いることが出来る。硫黄を含む物質の防食被覆層中の含有量は、防食被覆層全体を100質量%としたときに、20質量%以上、70質量%の範囲内が好ましい。20質量%未満であると被覆する際の材料の流動性が低くなり、扱いが困難になることや被覆自体に空隙ができ易くなってしまう。また70質量%を超えると強度不足となり剥離が生じてしまう。
硫黄の改質方法については、例えば硫黄を溶融させ、ジシクロペンタジエンを加えて混練するときは、硫黄と、ジシクロペンタジエンの混合割合は、硫黄100質量部に対して、ジシクロペンタジエン2〜20質量部が好ましい。また、用いる改質硫黄には、取扱いを容易にするための難燃性の無機資材やその他添加物が含まれていても良い。
そのため、この改質硫黄は市販品をそのまま使用することができ、例えば、新日本石油社製のレコサール(登録商標)中間資材を用いることができることが判明している。
また中性やアルカリ環境において、アルカリに溶解する性質をもつ改質硫黄を用いた防食被覆層の剥離抑制のため、防食被覆層中に前述のpH上昇を抑制するpH緩衝作用のある物質を含有させてもよい。前記pH緩衝作用のある物質の添加量は特に限定されるものではないが、防食被覆層中の含有量として防食被覆層全体の1〜50質量%の範囲内が好ましい。1質量%未満では、緩衝作用の効果が十分ではなく、50質量%を超えて添加しても緩衝作用の効果は変わらないためである。
本発明の防食被覆層は、防食被覆層に強度を付与する目的で、骨材が含有されていても良い。具体的には、硅砂、シリカ、製鋼スラグ、砕石、砂利等の公知の骨材を使用できる。その粒径は5mm以下が望ましく、5mmを超える場合被覆する際の材料の流動性が低くなり、扱いが困難になることや被覆自体に空隙ができ易くなってしまうなどの問題がある。なお、骨材の上記粒径は、その骨材がJIS Z 8801−1(2006年)に規定する公称目開き4.75mmのふるいを全て通ることで確認できる。
本発明における骨材として、コンクリートやモルタル用の骨材として利用される市販品を用いることができる。これら市販品を使用する場合は、内容物や粒径をその市販品の仕様から決定しても問題ない。骨材の含有量は防食被覆層全体を100質量%として、30質量%以下、80質量%以上である必要がある。30質量%未満であると強度不足による剥離等が生じ、80質量%を超えると被覆する際融解した状態での流動性が低くなり被覆することができなくなる。
また防食被覆層の厚さは、5mm以上、50mm以下であることが好ましい。耐硫酸性および耐塩酸性を向上させる観点から5mm以上が好ましい。また経済性の観点から50mm以下が好ましい。膜厚が50mmを超えても有益な耐硫酸性向上および耐塩酸性向上は望めず経済的でないためである。防食被覆層の厚さは、被覆層が固化したときの厚さである。
次に、上記の防食被覆鋼材の製造方法の一例について、説明する。
本発明の鋼材は、上記成分組成に調整した鋼を、通常の鋼と同様の方法で、厚鋼板、薄鋼板、形鋼および鋼管などの種々の形状に仕上げたものである。例えば、本発明の鋼は、転炉や電気炉、真空脱ガス装置等の通常公知の方法で、主要元素(C、Si、Mn、P、S、N)を本発明範囲に調整するとともに、その他の合金元素を要求特性に応じて添加して溶製し、その後、上記鋼は、連続鋳造法等で鋼スラブとし、この鋼スラブは、その後直ちに、あるいは冷却後、再加熱して熱間圧延するのが好ましい。
熱間圧延条件については、特に条件を付さないが、鋼材として要求される機械的特性を確保する観点からは、適切な熱延温度や圧下比等に制御するのが望ましい。熱間圧延後は、所望する機械的特性に応じて、冷却速度を制御することが望ましい。例えば、引張強さ490N/mm級以上の高強度鋼材とする場合には、熱間圧延の仕上温度を750℃以上とし、その後2℃/sec以上の冷却速度で700℃以下まで冷却するのが好ましい。仕上げ温度が750℃未満では、変形抵抗が大きくなり、形状制御が難しくなる。また、冷却速度が2℃/sec未満もしくは冷却停止温度が700℃を超える場合には、490N/mm級以上の引張強さが得難いからである。
次に防食被覆層の被覆方法を示す。まず防食被覆層や中間層との密着性確保のため前記鋼材の清浄化処理を行う。鋼材表面に残る汚れや酸化スケールを取り除き、また表面に適度な凹凸を与えるためブラスト処理を行う。清浄化処理の方法はブラスト処理に限定されず、鋼材表面の汚れや酸化スケールを除去して鋼材表面に適度な凹凸を付与する機能があればブラスト処理以外の方法でもよい。
次に中間層の被覆を行う。中間層の被覆は本発明において必須ではないが、鋼材との密着性確保のため被覆することが好ましい。中間層は密着性と耐硫酸性および耐塩酸性の点からエポキシ樹脂及び/又はポリウレタン等の熱硬化性樹脂からなるプライマーがより好ましい。このプライマーは、前述の通り例えばエポキシ樹脂系の、ジャパンエポキシレジン社製jER 828/jER T等を用いることができ、前述の通り被覆剥離抑制のためpH緩衝作用のある物質を1〜50質量%の範囲で添加するのが好ましい。
被覆方法としては、特に限定されずスプレー塗布やハケ塗りなどで行うことが出来る。スプレー塗布ではエアスプレーやエアレススプレー等の方式に関わらず用いることができる。中間層の膜厚は、耐硫酸性および耐塩酸性を向上させる観点から50μm以上が好ましく、経済性の観点から500μm以下が好ましい。膜厚は固化したときの膜厚である。
次に防食被覆層の被覆を行う。防食被覆層中のバインダーとなる硫黄を含む物質としての改質硫黄は市販品をそのまま使用することができ、例えば、新日本石油社製のレコサール(登録商標)中間資材を用いることができる。この改質硫黄を120〜150℃に加熱融解させ、そこに骨材や、中間層を設けない場合は剥離抑制のためpH緩衝作用のある物質を加え、防食被覆層の材料とする。骨材は前述の通りコンクリートやモルタル用の骨材として利用される市販品を用いることができる。骨材の量は30〜80質量%である必要がある。30質量%未満であると強度不足による剥離等が生じ、80質量%を超えると被覆する際融解した状態での流動性が低くなり被覆することができなくなる。
被覆方法としては、特に限定されず型枠流し込みや吹付け塗布などで行うことが出来る。防食被覆層防食被覆層の厚さは、5mm以上、50mm以下であることが好ましい。耐硫酸性および耐塩酸性を向上させる観点から5mm以上が好ましい。また経済性の観点から50mm以下が好ましい。膜厚が50mmを超えても有益な耐硫酸性向上および耐塩酸性向上は望めず経済的でないためである。
防食被覆層の被覆後、数時間放冷することで本発明の防食被覆鋼材が得られる。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、特許請求の範囲内において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
表1、表2に示した鋼No.1〜14の成分組成を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法により厚さ200mmの鋼スラブとした。この鋼スラブを1200℃に再加熱後、仕上終了温度を800℃とする熱間圧延し、板厚6mmの熱延鋼板とした。このようにして得た熱延鋼板を、幅100mm×長さ100mm×厚さ6mmに切断後、スチールグリッドブラストによりその表面粗さを十点平均粗さで50μm程度とした。
Figure 2010150620
Figure 2010150620
次に中間層を被覆する試験体については、中間層として、表3に示すpH緩衝物質(pH緩衝作用のある物質)を添加したエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製jER 828/jER DC11)を、平均膜厚(固化膜厚)が200μmになるように鋼板の表面にスプレー塗装した。
一方、硫黄を含む物質を含有する材料として、新日本石油社製レコサール(登録商標)中間資材を準備し、この新日本石油社製レコサール(登録商標)中間資材を150℃に加熱融解し、そこに骨材として、粒径が0.6〜2.4mmの硅砂3号と粒径が50〜400μmの硅砂7号とを表3の含有量になるように加え混練した。この混練物を防食被覆材料とした。なお、珪砂号数には統一規格がないため、同じ号数であって業者間で粒径に多少の差があるが、珪砂3号、珪砂7号と指定することで、上記とぼぼ同等の粒径のものを入手可能である。
次に中間層を被覆した上記鋼板および中間層を被覆しなかった上記鋼材を180℃ホットプレート上で4分加熱した。これを箱型の型枠中に設置し、そこに溶融状態の上述の防食被覆材料を流し込み、所定の厚さとなるように被覆した。その後、室温まで冷却した後型枠をはずして、No.1〜19の防食被覆鋼板を得た。
Figure 2010150620
作製した防食被覆鋼板の耐硫酸性、耐塩酸性、防食被覆層の密着性を評価した。
耐硫酸性および耐塩酸性の評価は次に示す酸浸漬試験で行った。耐酸性に優れる防食被覆層に欠陥が生じたことを想定し、被覆に欠陥を持つ試験体を作成した。具体的には、上記で作成した試験片の防食被覆層上部の中央部に直径5mmの鋼材まで到達する人工欠陥を形成し、その上に直径70mmの円筒を立て、中に硫酸(10%HSO、60℃)または塩酸(5%HCl、60℃)を満たした。そして、60℃の電気炉で3日間曝露した。回収した該試験片の防食被覆層の被覆厚さ減少量、鋼材の腐食速度(腐食減量)、被覆欠陥部周辺の剥離距離を調査した。
防食被覆層の密着性をせん断試験で評価した。上記で作製した試験片の鋼板部分を固定し、被覆端面を鋼板面に平行方向に1mm/minの速度で押し込み、被覆剥離時の荷重を測定し、これを鋼板の面積で割ったものをせん断付着強度とした。試験は室温で行った。
Figure 2010150620
Figure 2010150620
上記各試験の評価結果を表4と表5に示す。これによれば、No.1〜6、10〜15においては硫酸浸漬試験において腐食速度が30g/m・hr以下、被覆厚減少量が1mm以下、被覆剥離距離が5mm以下とともに良好であった。とくにNo.10〜15においては塩酸浸漬試験においても腐食速度が30g/m・hr以下、被覆厚減少量が1mm以下、被覆剥離距離が5mm以下とともに良好であった。No.11〜20においては鋼材の成分組成が本発明範囲から外れるため耐硫酸性に劣り、それに伴い被覆の剥離距離が劣る。
また被覆No.14〜16、19、20においては、防食被覆層の骨材量が多く、被覆する際融解した状態での流動性が低くなり被覆することが出来なかった。
以上より、本発明の範囲内であれば、耐硫酸性、耐塩酸性に優れた防食被覆層をもち、防食被覆層に欠陥が生じた場合においても鋼材自体の耐硫酸性および耐塩酸性が優れる防食被覆鋼材が得られることが、明らかになった。
本発明によれば、耐硫酸性と耐塩酸性に優れ、また従来のコンクリート構造物と比較し軽量化、縮小化を図ることが可能な防食被覆鋼材を提供することができる。
本発明の防食被覆鋼材の一構成例を示す断面図である。
符号の説明
1 鋼材
2 中間層
3 防食被覆層

Claims (3)

  1. 鋼材の少なくとも1面に防食被覆層を有する防食被覆鋼材であって、
    前記鋼材は、C:0.01〜0.12質量%、Si:0.01〜1.5質量%、Mn:0.1〜2.5質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.03質量%、Cu:0.03〜1.0質量%、Sb:0.002〜0.7質量%、W:0.003〜0.5質量%およびAl:0.005〜0.5質量%、N:0.001〜0.01質量%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ、C、SbおよびWが下記(1)式の関係を満たし、
    前記防食被覆層は、硫黄を含む物質を含有し、前記鋼材に直接または中間層を介して積層されてなることを特徴とする防食被覆鋼材。
    2.5≦(W+Sb)/C・・・(1)
    ここで、(1)式のW、SbおよびCは、各成分の含有量(質量%)である。
  2. 前記鋼材が、さらに、Sn:0.005〜0.5質量%を含有し、かつ、C、Sb、WおよびSnが下記(2)式の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の防食被覆鋼材。
    2.5≦(W+Sb+3×Sn)/C・・・(2)
    ここで、(2)式のW、Sb、SnおよびCは、各成分の含有量(質量%)である。
  3. 前記鋼材が、さらに、Mo:0.001〜1質量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防食被覆鋼材。
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