防音壁やトンネルの壁やポール等の車両の周辺に設置されている構造物(以下、周辺構造物と呼ぶ)自体およびこれらの周辺構造物同士の間には、温度分布の偏りが存在する。従って、車両に搭載した赤外線センサによって、車両の走行中にこのような温度分布の偏りが存在する場所の検知を行った場合には、この偏りを熱源として誤検知してしまうおそれがある。例えば、特許文献1に開示の技術では、上述したように誤検知した熱源の検出温度が設定温度以上であった場合には車両を検知したものと判断するので、車両でない周辺構造物を車両として誤検知してしまうという問題点を有していた。また、特許文献2に開示の技術でも、上述したような誤検知に基づくセンサ出力が、所定の周波数や波数で変化する場合には、誤検知した熱源を歩行者と判別するので、歩行者でない周辺構造物を歩行者として誤検知してしまうという問題点を有していた。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、車両に備えられた赤外線センサによって、走行中の車両周辺の移動体をより精度良く検知することを可能にする移動体検知装置を提供することにある。
請求項1の移動体検知装置は、上記課題を解決するために、車両の周辺の熱源を検知する赤外線センサを備えた移動体検知装置であって、前記赤外線センサは、アレイ状に複数配列された焦電素子を有する焦電型赤外線センサであり、隣接する前記焦電素子間の出力の差および比のうちのいずれかに基づく値を所定の閾値と比較することによって前記車両の周辺の移動体の有無を判定する第1車両有無判定部を備えていることを特徴としている。
これによれば、隣接する焦電素子間の出力の差および比のうちのいずれかに基づく値を所定の閾値と比較するので、走行中の自車両に対する対象物の相対速度の違いによって対象物を区別することが可能になる。例えば、相対速度の違いによって、防音壁やトンネルの壁やポール等の周辺構造物と車両や歩行者等の移動体とを区別することが可能になる。よって、以上の構成によれば、車両に備えられた赤外線センサによって、走行中の車両周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
また、請求項2の移動体検知装置では、前記第1車両有無判定部は、隣接する前記焦電素子間の出力信号の差分をとることによって、隣接する前記焦電素子間の差分信号を算出する差分信号算出部と、前記差分信号算出部で算出された差分信号の所定時間分の総和を所定の単位時間で除算することによって移動平均値を算出する第1移動平均値算出部と、を有し、前記第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均値用の所定の閾値である移動平均用閾値とを比較することによって前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
これによれば、隣接する焦電素子間の出力の差である差分信号に基づく移動平均値を所定の閾値である移動平均用閾値と比較するので、走行中の自車両に対する対象物の相対速度の違いによって対象物を区別することが可能になる。よって、以上の構成によれば、車両に備えられた赤外線センサによって、走行中の車両周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
また、請求項3の移動体検知装置では、前記焦電型赤外線センサは、少なくとも水平方向に3つ以上配列された焦電素子を有しているとともに、前記第1車両有無判定部は、前記焦電素子の出力信号が出力信号用の閾値を超えていた場合に、当該出力信号のピークのうちの当該閾値を超えた所定の箇所である出力信号ピーク位置を算出する第1ピーク位置算出部と、お互いに隣接する前記焦電素子の出力信号ピーク位置間の時間差をそれぞれ算出する第1時間差算出部と、をさらに有し、前記第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と前記移動平均用閾値とを比較することに加え、前記第1時間差算出部で算出した各時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
赤外線センサで移動体を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差のずれが一定の範囲内におさまるが、赤外線センサで外乱を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差のずれが大きく異なることがある。以上の構成によれば、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差同士の時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、外乱を誤って移動体と判定する可能性を低減することが可能になる。また、以上の構成によれば、第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、第1時間差算出部で算出した各時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することのみによって車両の周辺の移動体の有無を判定する場合に比べて、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項4の移動体検知装置では、前記第1車両有無判定部は、前記焦電素子の出力信号から、標本化を伴うA/D変換によって前記焦電素子の出力信号のデジタル値を得るA/Dサンプリング部と、前記A/Dサンプリング部で得られたデジタル値をもとに、隣接する前記焦電素子間のデジタル値の比の値を算出する出力比算出部と、前記出力比算出部で算出されたデジタル値の比の値の所定時間分の総和を所定の単位時間で除算することによって移動平均値を算出する第2移動平均値算出部と、を有し、前記第2移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均値用の所定の閾値である移動平均用閾値とを比較することによって前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
これによれば、隣接する焦電素子間の出力の比であるデジタル値の比の値に基づく移動平均値を所定の閾値である移動平均用閾値と比較するので、走行中の自車両に対する対象物の相対速度の違いによって対象物を区別することが可能になる。よって、以上の構成によれば、車両に備えられた赤外線センサによって、走行中の車両周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
また、請求項5の移動体検知装置では、前記焦電型赤外線センサは、少なくとも水平方向に3つ以上配列された焦電素子を有しているとともに、前記第1車両有無判定部は、前記焦電素子の出力信号が出力信号用の閾値を超えていた場合に、当該出力信号のピークのうちの当該閾値を超えた所定の箇所である出力信号ピーク位置を算出する第1ピーク位置算出部と、お互いに隣接する前記焦電素子の出力信号ピーク位置間の時間差をそれぞれ算出する第1時間差算出部と、をさらに有し、前記第2移動平均値算出部で算出した移動平均値と前記移動平均用閾値とを比較することに加え、前記第1時間差算出部で算出した各時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
これによれば、請求項3と同様に、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、外乱を誤って移動体と判定する可能性を低減することが可能になる。また、以上の構成によれば、第2移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、第1時間差算出部で算出した各時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、第2移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することのみによって車両の周辺の移動体の有無を判定する場合に比べて、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項6の移動体検知装置では、前記焦電型赤外線センサは、少なくとも水平方向に3つ以上配列された焦電素子を有しており、前記第1車両有無判定部は、前記第1移動平均値算出部で順次算出した移動平均値が前記移動平均用閾値を超えていた場合に、当該移動平均値の経時的変化のピークのうちの当該閾値を超えた所定の箇所である移動平均ピーク位置を算出する第2ピーク位置算出部と、お互いに隣接する前記焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差を算出する第2時間差算出部と、をさらに有し、前記第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と前記移動平均用閾値とを比較することに加え、前記第2時間差算出部で算出した時間差が所定の範囲内であるか否かに応じて、前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
これによれば、赤外線センサで移動体を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差が一定の範囲内におさまるが、赤外線センサで外乱を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差が一定の範囲内におさまらないことがある。以上の構成によれば、上述の時間差が所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、外乱を誤って移動体と判定する可能性を低減することが可能になる。また、以上の構成によれば、第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、第2時間差算出部で算出した時間差が所定の範囲内であるか否かに応じて、車両の周辺の移動体の有無を判定するので、第1移動平均値算出部で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することのみによって車両の周辺の移動体の有無を判定する場合に比べて、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項7の移動体検知装置では、前記所定の単位時間を、前記車両の速度に応じて設定する第1可変調整部をさらに備えることを特徴としている。
車両の速度に応じて適切な所定の単位時間も変化する。これに対して、以上の構成によれば、所定の単位時間を車両の速度に応じて設定するので、車両の速度に応じた適切な所定の単位時間を設定することが可能になり、その結果、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項8の移動体検知装置では、前記所定の閾値を、前記車両の速度に応じて設定する第2可変調整部をさらに備えることを特徴としている。
車両の速度に応じて適切な所定の閾値も変化する。これに対して、以上の構成によれば、所定の閾値を車両の速度に応じて設定するので、車両の速度に応じた適切な所定の閾値を設定することが可能になり、その結果、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項9の移動体検知装置では、前記焦電素子の出力信号と所定の閾値とを比較することによって前記車両の周辺の移動体の有無を判定する第2車両有無判定部をさらに備え、前記第1車両有無判定部の判定結果に加え、前記第2車両有無判定部の判定結果をもとに、前記車両の周辺の移動体の有無を判定することを特徴としている。
これによれば、第1車両有無判定部の判定結果に加え、焦電素子の出力信号と所定の閾値とを比較することによって車両の周辺の移動体の有無を判定するので、異なる判定方法による判定結果をもとに車両の周辺の移動体の有無を判定することができる。例えば、第1車両有無判定部と第2車両有無判定部との両方で車両の周辺に移動体が有る旨の判定結果が得られた場合にのみ、車両の周辺に移動体が有るものと判定することによって、誤った判定が行われる可能性を低減し、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項10の移動体検知装置では、前記赤外線センサは、前記車両の左右の側面周辺の熱源をそれぞれ検知可能なように前記車両の左右にそれぞれ設置されていることを特徴としている。
この請求項10のように、車両の左右の側面周辺の熱源をそれぞれ検知可能なように車両の左右にそれぞれ赤外線センサが設置されている態様としてもよい。
また、請求項11の移動体検知装置では、前記車両の周辺の移動体の有無の判定結果に応じてドライバーに車両周辺の移動体の有無を報知する報知部をさらに備えることを特徴としている。
この請求項11のように、車両の周辺の移動体の有無の判定結果に応じてドライバーに車両周辺の移動体の有無を報知する報知部をさらに備える態様としてもよい。
また、請求項12の移動体検知装置では、前記車両の周辺の状況を検知する周辺状況検知部をさらに備え、前記周辺状況検知部での検知結果に応じた処理を行うことを特徴としている。
ここで、周辺状況検知部での検知結果に応じた処理としては、例えば、請求項13〜23の態様がある。
請求項13の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部での検知結果に応じて、前記焦電素子の出力信号の増倍率の調整を行うことを特徴としている。
これによれば、車両の周辺の状況に応じて焦電素子の出力信号の増倍率の調整を行うことが可能になる。気温が低くなるほど路面の温度が低くなるといったように、車両周辺の熱源の検出温度は、車両周辺の気温に依存して変化する傾向にあるので、この気温による影響を低減するために焦電素子の出力信号の増倍率を気温に応じて調整することが好ましい。以上の構成によれば、車両の周辺の状況に応じて焦電素子の出力信号の増倍率の調整を行うことが可能になるので、例えば気温に応じて焦電素子の出力信号の増倍率の調整を行うことも可能になる。
また、請求項14の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部での検知結果をもとに、現在の季節が夏および冬のうちのいずれに相当するかを判断するとともに、現在の季節が夏に相当すると判断した場合には、前記焦電素子の出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の季節が冬に相当すると判断した場合には、前記焦電素子の出力信号の増倍率をより高めに調整することを特徴としている。
現在の季節が夏である場合には、気温が他の季節よりも高めなので車両周辺の熱源の検出温度は夏以外の季節よりも高めに変化し、現在の季節が冬である場合には、気温が他の季節よりも低めなので車両周辺の熱源の検出温度は冬以外の季節よりも低めに変化する。これに対して、以上の構成によれば、現在の季節が夏に相当すると判断した場合には、焦電素子の出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の季節が冬に相当すると判断した場合には、焦電素子の出力信号の増倍率をより高めに調整するので、気温による影響を低減することが可能になる。
また、請求項15の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部での検知結果をもとに、現在の時間帯が昼および夜のうちのいずれに相当するかを判断するとともに、現在の時間帯が昼に相当すると判断した場合には、前記焦電素子の出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の時間帯が夜に相当すると判断した場合には、前記焦電素子の出力信号の増倍率をより高めに調整することを特徴としている。
これによれば、現在の時間帯が昼である場合には、気温が夜よりも高めなので車両周辺の熱源の検出温度は夜よりも高めに変化し、現在の時間帯が夜である場合には、気温が昼よりも低めなので車両周辺の熱源の検出温度は昼よりも低めに変化する。これに対して、以上の構成によれば、現在の時間帯が昼に相当すると判断した場合には、焦電素子の出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の時間帯が夜に相当すると判断した場合には、焦電素子の出力信号の増倍率をより高めに調整するので、気温による影響を低減することが可能になる。
また、請求項16の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部での検知結果に応じて、前記赤外線センサでの検知範囲を変更することを特徴としている。
これによれば、車両の周辺の状況から赤外線センサによる移動体の検知を行わなくてもよい領域が判別可能な場合に、移動体の検知を行わなくてもよい領域を除くように赤外線センサでの検知範囲を変更することが可能になる。移動体の検知を行わなくてもよい領域を除くように赤外線センサでの検知範囲を変更することによって、移動体の検知を行わなくてもよい領域については赤外線センサでの熱源の検知の処理を行わないので、無駄な処理を低減することが可能になる。
また、請求項17の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部は、照度を検知するセンサである照度センサであって、前記照度センサによって所定の値以上の照度の変化を検知した場合、一定時間の間は、前記車両の周辺の移動体の有無の判定について、前記車両の周辺に移動体が有るものと判定しないことを特徴としている。
車両が日中にトンネルや高架や道路上のゲート等を通過するときには、日向と日陰との境界を通過することになるが、この境界部分の温度分布の偏りを赤外線センサが熱源として誤検知する場合が想定される。これに対して、以上の構成によれば、照度センサによって所定の値以上の照度の変化を検知することにより、車両が日中にトンネルや高架や道路上のゲート等を通過するタイミングを検知する。また、車両が日中にトンネルや高架や道路上のゲート等を通過するタイミングを検知した場合、一定時間の間は、車両の周辺に移動体が有るものと判定しないので、赤外線センサによって上述したような境界部分の温度分布の偏りを熱源として誤検知するような箇所を車両が通過し終えるまでは、車両の周辺に移動体が有るものと判定しない。従って、上述したような熱源の誤検知により車両の周辺の移動体の有無の誤った判定が生じる可能性を排除することが可能になる。
また、請求項18の移動体検知装置では、前記赤外線センサが前記車両の左右にそれぞれ設置されており、前記照度センサによって所定の値以上の照度の変化を検知した場合であって、且つ、左右の前記赤外線センサの焦電素子の出力信号が実質的に同一のタイミングで前記出力信号用の閾値を超えたと判断した場合、一定時間の間は、前記車両の周辺の移動体の有無の判定について、前記車両の周辺に移動体が有るものと判定しないことを特徴としている。
これによれば、赤外線センサが車両の左右にそれぞれ設置されている場合、車両が日中にトンネルや高架や道路上のゲート等を通過するときに、左右の赤外線センサの焦電素子の出力信号が実質的に同一のタイミングで出力信号用の閾値を超えるものと推定されるので、以上の構成によれば、車両がトンネルや高架や道路上のゲート等を通過中であることをより正確に判断することが可能になる。
また、請求項19の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部は、日射量を検知する日射センサであって、前記日射センサによって検知した日射量に応じて前記移動平均用閾値を設定することを特徴としている。
日射量が多くなるほど路面の温度が高くなるといったように、車両周辺の熱源の検出温度は、車両周辺の日射量に依存して変化する傾向にあるので、この日射量による影響を低減するために移動平均用閾値を日射量に応じて設定することが好ましい。以上の構成によれば、車両の周辺の日射量に応じて移動平均用閾値を設定するので、日射量による影響を低減し、車両の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。
また、請求項20の移動体検知装置では、前記日射センサは、日射量とともに前記車両に対する太陽方位を検知する位置検出型日射センサであり、前記赤外線センサが前記車両の左右にそれぞれ設置されている場合に、前記位置検出型日射センサによって検知した太陽方位に応じて、左右の前記赤外線センサのそれぞれの前記移動平均用閾値を設定することを特徴としている。
太陽方位によって路面への陰の出来方が異なることによって路面の温度分布に偏りが生じるといったように、太陽方位によって車両周辺の構造物の温度分布に偏りが生じる。よって、赤外線センサが車両の左右にそれぞれ設置されている場合に、太陽方位によっては左右の赤外線センサの検知範囲の温度が大きく異なり、車両の周辺の移動体の有無の判定の条件が大きく異なることも想定される。以上の構成によれば、位置検出型日射センサによって検知した太陽方位に応じて左右の赤外線センサのそれぞれについての移動平均用閾値を設定することが可能なので、左右の赤外線センサの検知範囲の温度が大きく異なり、車両の周辺の移動体の有無の判定の条件(つまり、最適な移動平均用閾値)が大きく異なる場合であっても、個々の赤外線センサに最適な移動平均用閾値を設定し、車両の周辺の移動体の有無の判定をより精度良く行うことが可能になる。
また、請求項21の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部は、前記車両に対する太陽方位を判断することが可能な車載ナビゲーション装置であって、前記赤外線センサが前記車両の左右にそれぞれ設置されている場合に、前記車載ナビゲーション装置によって判断した太陽方位に応じて、左右の前記赤外線センサのそれぞれの前記移動平均用閾値を設定することを特徴としている。
この請求項21の構成によっても、車両に対する太陽方位を判断することが可能な車載ナビゲーション装置によって太陽方位を判断することができるので、この太陽方位に応じて左右の赤外線センサのそれぞれの移動平均用閾値を設定することによって、請求項20の構成の場合と同様に、車両の周辺の移動体の有無の判定をより精度良く行うことが可能になる。
また、請求項22の移動体検知装置では、前記太陽方位が前記赤外線センサの検知方向と実質的に同方向であるかを判断する方向一致判断部をさらに備え、前記方向一致判断部で前記太陽方位が前記赤外線センサの検知方向と実質的に同方向であると判断した場合であって、且つ、前記第1車両有無判定部で前記車両の周辺に移動体が有るものと一定期間以上判定し続けた場合には、この判定を取り消すとともに、前記車両の周辺の移動体の有無の判定が不能であることを示す報知をドライバーに対して行わせることを特徴としている。
太陽方位が赤外線センサの検知方向と実質的に同方向であって、第1車両有無判定部で車両の周辺に移動体が有るものと一定期間以上判定し続ける場合には、太陽の直射光入射による赤外線センサの誤検知が原因で車両の周辺の移動体の有無の誤判定が生じている可能性がある。これに対して、以上の構成によれば、このように車両の周辺の移動体の有無の誤判定が生じている可能性がある場合には、この判定を取り消すとともに、車両の周辺の移動体の有無の判定が不能であることを示す報知をドライバーに対して行わせるので、誤判定によってドライバーを混乱させる事態を防ぐことが可能になる。
また、請求項23の移動体検知装置では、前記周辺状況検知部は、前記車両が現在走行している車線を判断することが可能な車載ナビゲーション装置であって、前記赤外線センサが前記車両の左右にそれぞれ設置されている場合に、前記車載ナビゲーション装置によって前記車両が現在走行していると判断された車線が全車線中のどこに位置するかに応じて、左右の前記赤外線センサのうちのいずれの側の赤外線センサを使用するかを決定することを特徴としている。
これによれば、車両が現在走行していると判断された車線のいずれかの隣側に車線がなく、この隣側の移動体の検知を行う必要がない場合のように、車両の左右にそれぞれ設置されている赤外線センサのうちのいずれかを使用する必要がない場合に、使用する必要のない赤外線センサを使用しないようにすることが可能になる。つまり、移動体の検知を行わなくてもよい領域を除くように赤外線センサでの検知範囲を変更し、無駄な処理を低減することが可能になる。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された移動体検知装置1の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す移動体検知装置1は、車両2に搭載されるものであり、走行支援ECU11、赤外線センサ12a・12b、表示器13a・13b、ライトセンサ14、日射センサ15、およびナビゲーション装置16を備えている。また、走行支援ECU11、赤外線センサ12a・12b、表示器13a・13b、ライトセンサ14、日射センサ15、およびナビゲーション装置16は、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LANで各々接続されている。
走行支援ECU11は、赤外線センサ12a・12b、ライトセンサ14、日射センサ15のセンサ出力やナビゲーション装置16から送られてくる情報をもとに、車両2の周辺の移動体の有無の判定の処理(以下、車両有無判定処理と呼ぶ)を始めとした処理を行うものである。なお、走行支援ECU11で行う処理の詳細については後述する。
赤外線センサ12a・12bは、物体から放出される赤外線エネルギーを検出することによって車両周辺の熱源を検知するセンサである。なお、本実施形態では、図1に示すように、車両2の左側のドアミラー3aに赤外線センサ12aが設置されるとともに、車両2の右側のドアミラー3bに赤外線センサ12bが設置され、車両2の側部から後部にかけて(つまり、左右の側面周辺)のドライバーの死角領域を検知範囲とするものとして以降の説明を行う。ここで言うところの死角領域とは、車両2の側部から後部にかけての領域のうち、ドライバーが直接視認できる範囲とドライバーがドアミラー3a・3bによって視認できる範囲とから外れた領域を指している。また、赤外線センサ12a・12bは、アレイ状に複数配列された焦電素子を有する焦電型赤外線センサである。
ここで、図2(a)および図2(b)を用いて、赤外線センサ12a・12bに必要な焦電素子のアレイ数の決め方についての説明を行う。図2(a)は、車両2と車両2の隣りの車線を走行中の車両(以下、並走車両と呼ぶ)とを示す俯瞰図である。図2(b)は、車両2と並走車両とを示す背面図である。
まず、焦電素子の水平方向のアレイ数の決め方について図2(a)を用いて説明を行う。ここでは便宜上、赤外線センサ12a・12bのうちの車両2の右側の赤外線センサ12bについての説明のみを行う。なお、図2(a)に示すように、ドライバーが直接視認できる範囲は、ドアミラー3bよりも後方の30°の範囲とし、ドライバーがドアミラー3bによって視認できる範囲は、車両2の側面から右側に20°の範囲とする。そして、赤外線センサ12a・12bの検知範囲は残りの40°の範囲とする。また、図2(a)中に示すように、車線幅は3.5m、車両2および並走車両の車幅は1.8m、並走車両のタイヤの外径は0.7m、並走車両のフロント部分の長さは1.5mとする。また、車両2および並走車両はそれぞれの車線の中央を走行しているものとし、車両2と並走車両との左右方向の車間距離は(0.85m+0.85m)=1.7m、並走車両の前後方向の中心軸の先端が車両2の赤外線センサ12bの検知範囲にさしかかるときの車両2のドアミラー3bから並走車両のこの先端までの距離は4.7mとする。さらに、角度βは1つの焦電素子で検知を行う範囲を示す角度とする。
並走車両の1本分のタイヤ外形を1つの焦電素子で検知可能とする場合を想定すると、焦電素子の水平方向のアレイ数は以下の式によって「13」と求められる。なお、角度αは、並走車両の前後方向の中心軸の先端が車両2の赤外線センサ12bの検知範囲にさしかかってから1本分のタイヤ外形が赤外線センサ12bの検知範囲におさまった時点での、赤外線センサ12bからタイヤの左前方の端部方向と車両2の側面方向とにそれぞれ延びる直線間の角度である。
角度α=tan−1・((0.85m+0.85m)/(4.7m−0.7m))=23°
角度β=α―20°=3°
水平方向のアレイ数=40°/3°=13
また、並走車両のフロント部分を1つの焦電素子で検知可能とする場合を想定すると、焦電素子の水平方向のアレイ数は以下の式によって「5」と求められる。なお、角度αは、並走車両の前後方向の中心軸の先端が車両2の赤外線センサ12bの検知範囲にさしかかってからフロント部分が赤外線センサ12bの検知範囲におさまった時点での、赤外線センサ12bからフロント部分の左前方の端部方向と車両2の側面方向とにそれぞれ延びる直線間の角度である。
角度α=tan−1・((0.85m+0.85m)/(4.7m−1.5m))=28°
角度β=α―20°=8°
水平方向のアレイ数=40°/8°=5
本実施形態では、水平方向のアレイ数を例えば5とするものとして以降の説明を続ける。
続いて、焦電素子の水平方向のアレイ数の決め方について図2(b)を用いて説明を行う。ここでは便宜上、赤外線センサ12a・12bのうちの車両2の右側の赤外線センサ12bについての説明のみを行う。なお、図2(b)に示すように、路面からドアミラー3a・3bまでの距離は1.0m、とする。また、車両2および並走車両はそれぞれの車線の中央を走行しているものとし、車両2と車両2の右隣の車線までの幅は(3.5m/2)=1.75mとする。また、角度γは赤外線センサ12bから鉛直方向と車両2の右隣の車線との境界線方向とにそれぞれ延びる直線間の角度であり、この角度γは以下の式で求められる。
角度γ=tan−1・((1.75m−0.9m)/1.0m)=40°
赤外線センサ12a・12bの垂直方向の検知角度は、太陽光等の外乱の入射の防止を目的にドアミラー3a・3bの水平方向よりも下降気味に設定するため、赤外線センサ12a・12bの検知範囲は90°−40°=50°よりも小さく設定する。よって、焦電素子の垂直方向のアレイ数は少なくとも2つあればよい。
本実施形態では、死角領域に存在する熱源を検知可能とするため、例えば水平方向に5つずつ、垂直方向に2つずつの計10個の焦電素子を赤外線センサ12a・12bのそれぞれに備えるものとする。また、水平方向に5つずつ配列される赤外線センサ12aの焦電素子を、車両2から遠い側からLa、Lb、Lc、Ld、Leとし、水平方向に5つずつ配列される赤外線センサ12bの焦電素子を、車両2から遠い側からRa、Rb、Rc、Rd、Reとするものとして以降の説明を行う。なお、赤外線センサ12a・12bに複数配列された焦電素子のうち垂直方向に配列されたものについてはそのうちの1列についての説明のみを以降では行うが、他の列についても同様であるものとする。
表示器13a・13bは、点灯および消灯が可能なものであって、点灯と消灯との状態を切り替えることによってドライバーの死角領域に歩行者や車両等の移動体が存在するか否かをドライバーに報知する。詳しくは、表示器13aはドライバーから見て車室内の左手に位置するように設置され、車両2の左側の死角領域で移動体を検知したと走行支援ECU11で判定した場合に、走行支援ECU11の指示に従って点灯し、車両2の左側の死角領域で移動体を検知したと走行支援ECU11で判定しなかった場合には点灯を行わない。また、表示器13bはドライバーから見て車室内の右手に位置するように設置され、車両2の右側の死角領域で移動体を検知したと走行支援ECU11で判定した場合に、走行支援ECU11の指示に従って点灯し、車両2の右側の死角領域で移動体を検知したと走行支援ECU11で判定しなかった場合には点灯を行わない。よって、表示器13a・13bは、請求項の報知部として機能する。
ライトセンサ14は、周囲の明るさ(つまり、照度)を検知する周知の照度センサであって、車両2の周囲の照度を検知する。よって、ライトセンサ14は、請求項の周辺状況検知部として機能する。
日射センサ15は、太陽光の強度(つまり、日射量)や太陽方位を検知する周知の位置検出型日射センサであって、車両2の周囲の日射量を検知したり、車両2に対しての太陽方位を検知したりする。よって、日射センサ15は、請求項の周辺状況検知部として機能する。
ナビゲーション装置16は、周知のナビゲーション装置と同様のものであって、GPS受信機、車速センサ、およびジャイロスコープ等を有する位置検出器、地図データ入力器、操作スイッチ群、外部メモリ、リモコンセンサ、ならびに送受信機等から入力された各種情報に基づき、ナビゲーション機能としての処理(例えば、地図縮尺変更処理、メニュー表示選択処理、目的地設定処理、経路探索実行処理、経路案内開始処理、現在位置修正処理、表示画面変更処理、音量調整処理等)を実行する。なお、地図データ入力器は、記憶媒体(図示せず)が装着され、その記憶媒体に格納されている位置検出の精度向上のためのいわゆるマップマッチング用データ、地図データ、および目印データを含む各種データを入力するための装置であるが、この地図データ中には、トンネルや高架等の情報も含まれているものとする。また、上述の外部メモリには、日時に基づいて定まる太陽方位をデータベースとして保持している。これらのデータは、地球の公転・自転に伴う太陽の日周運動を公知の数学公式から算出した後、各種実験データによって補完され、精度の高いものとなっている。また、上述の送受信機は、情報センタ等から提供される道路交通情報、気象情報、日付情報、施設情報等を受信する。なお、気象情報は、例えば時間帯ごとの晴れや曇りや雨等の情報、太陽光照度の情報、日照時間の情報、気温の情報などである。また、日付情報は、日時の情報、季節の情報などである。さらに、施設情報は、道路上のゲート(道路標識等を掲示したもの)の有無の情報、屋根の有無の情報、ビル影の有無の情報などである。また、ナビゲーション装置16は、位置検出器から入力される車両2の現在位置の情報や送受信機から入力される日付情報や外部メモリに保持している太陽方位の情報をもとに現在位置での太陽方位を判断する。さらに、ナビゲーション装置16は、位置検出器から入力される車両2の現在位置の情報や送受信機による路上機との通信によって車両2が現在走行している車線を判断する。よって、ナビゲーション装置16は、請求項の周辺状況検知部および車載ナビゲーション装置として機能する。
次に、図3を用いて、移動体検知装置1での車両有無判定処理のフローについての説明を行う。図3は、移動体検知装置1での車両有無判定処理のフローを示すフローチャートである。なお、ここでは便宜上、赤外線センサ12a・12bのうちの車両2の右側の赤外線センサ12bの出力に基づく処理についての説明のみを行うが、車両2の左側の赤外線センサ12aの出力に基づく処理についても赤外線センサ12bの出力に基づく処理と同様である。また、本フローは、例えば車両2が発車したときに開始される。なお、車両2の発車は、車速センサや車輪速センサ等によって車速を検知することによって判断すればよい。
まず、ステップS1では、順次(つまり、経時的に)出力される赤外線センサ12bの出力信号を走行支援ECU11が取得(つまり、赤外線センサ出力取得)し、ステップS2に移る。詳しくは、焦電素子Ra〜Reの出力信号を走行支援ECU11が取得する。なお、赤外線センサ12bでの検知は、以降では例えば10msecごとに行われ、10msecごとに焦電素子Ra〜Reの出力信号が出力されるものとして説明を続ける。また、焦電素子Ra〜Reは前述したように車両2から遠い側から水平方向にRa、Rb、Rc、Rd、Reの順に並んでいるので、焦電素子Ra〜Reの検知範囲は図4に示すように、車両の前方から後方に向けてRa、Rb、Rc、Rd、Reの順に扇状に並ぶことになる。
ステップS2では、焦電素子Ra〜Reから取得した出力信号をもとに、隣接する焦電素子間の出力信号の差分である差分信号を走行支援ECU11が算出し、ステップS3に移る。よって、走行支援ECU11は、請求項の差分信号算出部として機能する。
ここで、図5を用いて、焦電素子Ra〜Reの出力信号をもとに、隣接する焦電素子間の差分信号を算出する回路についての説明を行う。図5は、焦電素子Ra〜Reの出力信号をもとに、隣接する焦電素子間の差分信号を算出する回路を模式的に示した図である。図5に示すように、赤外線センサ12bでは、焦電素子Ra〜Reの出力信号をそれぞれ増幅回路Aa〜Aeによって増幅してから走行支援ECU11に出力する。なお、増幅回路Aa〜Aeは、設定された増幅度で信号を増幅するものであって、走行支援ECU11の指示に従って増倍率の調整を行うことが可能となっている。また、増幅後の焦電素子Ra〜Reの出力信号は、図5に示すように、そのまま走行支援ECU11に出力されるものの他、差分処理回路Sba、差分処理回路Scb、差分処理回路Sdc、差分処理回路Sedによって差分が算出され、差分信号として出力される。具体的には、焦電素子Rbの出力信号と焦電素子Raの出力信号とをもとに差分処理回路Sbaから差分信号|Rb−Ra|が出力され、焦電素子Rcの出力信号と焦電素子Rbの出力信号とをもとに差分処理回路Scbから差分信号|Rc−Rb|が出力され、焦電素子Rdの出力信号と焦電素子Rcの出力信号とをもとに差分処理回路Sdcから差分信号|Rd−Rc|が出力され、焦電素子Reの出力信号と焦電素子Rdの出力信号とをもとに差分処理回路Sedから差分信号|Re−Rd|が出力される。なお、これらの差分信号は、焦電素子Ra〜Reから取得した10msecごとの出力信号をもとに10msecごとに算出されて出力される。例えば、図7(a)に示すような焦電素子Reの出力信号と焦電素子Rdの出力信号とを取得した場合は、このステップS2の処理によって図7(b)に示すような差分信号|Re−Rd|が得られることになる。
ステップS3では、差分処理回路Sba、差分処理回路Scb、差分処理回路Sdc、差分処理回路Sedで算出された各差分信号の所定時間分の総和を所定の単位時間Δtで除算することによって移動平均値を走行支援ECU11が算出し、ステップS4に移る。よって、走行支援ECU11は、請求項の第1移動平均値算出部としても機能する。ここで言うところの所定の単位時間Δtとは、任意に設定可能なものであり、本実施形態では、例えば100msecであるものとする。また、Δtが100msecである場合には、差分信号の100msec分の総和をΔtで除算したものが移動平均値となるので、10msec×10回分の差分信号の総和をとることになる。具体的には、10msecごとに差分処理回路から出力される差分信号の1回目の出力値〜10回目の出力値までの総和をとって100msecで除算し、算出した結果を移動平均値として出力し、続いて2回目の出力値〜11回目の出力値までの総和をとって100msecで除算し、算出した結果を移動平均値として出力するといった処理を順番に続けていく。なお、差分処理回路Sbaから出力される差分信号の移動平均値(以下、移動平均値ba)をΣ|Rb−Ra|/Δt、差分処理回路Scbから出力される差分信号の移動平均値(以下、移動平均値cb)をΣ|Rc−Rb|/Δt、差分処理回路Sdcから出力される差分信号の移動平均値(以下、移動平均値dc)をΣ|Rd−Rc|/Δt、差分処理回路Sedから出力される差分信号の移動平均値(以下、移動平均値ed)をΣ|Re−Rd|/Δtで表す。例えば、図7(b)に示すような差分信号|Re−Rd|からは、このステップS3の処理によって図7(c)に示すような移動平均値edが得られることになる。
なお、本実施形態では、Δtの値を固定して設定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。車両2の速度に応じて適切なΔtの値も変化するので、Δtの値を車両2の速度に応じて走行支援ECU11が設定する構成としてもよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の第1可変調整部としても機能する。この場合、図6(a)に示すように、車両2の速度が大きくなるほどΔtの値を小さく設定し、車両2の速度が小さくなるほどΔtの値を大きく設定するようにすればよい。
ステップS4では、各差分処理回路から出力された各移動平均値(つまり、移動平均値ba、移動平均値cb、移動平均値dc、移動平均値ed)と移動平均値用の所定の閾値である移動平均用閾値とを走行支援ECU11が比較する。そして、各移動平均値のうちの少なくともいずれかが移動平均用閾値以上であったと判定した場合(ステップS4でYes)には、ステップS5に移る。また、各移動平均値のうちのいずれも移動平均用閾値以上であったと判定しなかった場合(ステップS4でNo)には、ステップS10に移る。なお、ここで言うところの移動平均用閾値とは、移動体以外の、防音壁やトンネルの壁やポール等の車両2の周辺に設置されている構造物(以下、周辺構造物)を要因とする移動平均値よりも少なくとも高い値になるように設定されるものであって、任意に設定可能な値である。例えば、焦電素子Rd・Reの検知範囲に移動体が存在した場合には、図7(c)に示すように、移動平均値edのピークが移動平均用閾値を超えることになる。
また、車両2の速度に応じて適切な移動平均用閾値も変化するので、移動平均用閾値を車両2の速度に応じて走行支援ECU11が設定する構成としてもよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の第2可変調整部としても機能する。この場合、図6(b)に示すように、車両2の速度が大きくなるほど移動平均用閾値を大きく設定し、車両2の速度が小さくなるほど移動平均用閾値を小さく設定するようにすればよい。
ステップS5では、各移動平均値のうち移動平均値edのみが移動平均用閾値以上であるか否かを走行支援ECU11が判定する。そして、移動平均値edのみが移動平均用閾値以上であると判定した場合(ステップS5でYes)には、ステップS6に移る。また、移動平均値edのみが移動平均用閾値以上であると判定しなかった場合(ステップS5でNo)には、ステップS7に移る。
ステップS6では、焦電素子Reからの出力信号の所定時間分の総和(以下、ΣReで表す)と焦電素子Rdからの出力信号の所定時間分の総和(以下、ΣRdで表す)とを走行支援ECU11が比較し、ΣReがΣRd以上であると判定した場合(ステップS6でYes)には、車両2の後方から移動体が接近してきているものと判断してステップS9に移る。また、ΣReがΣRd以上であると判定しなかった場合(ステップS6でNo)には、車両2の後方へ移動体が離れていっているものと判断してステップS10に移る。なお、ここで言うところの所定時間とは、ステップS3の所定時間と同じものである。本実施形態の例ではこの所定の時間が100msecであり、焦電素子Ra〜Reの出力信号が10msecごとに走行支援ECU11に出力されるので、ΣReは焦電素子Reの10回分の出力信号の総和となり、ΣRdは焦電素子Rdの10回分の出力信号の総和となる。
ステップS7では、各移動平均値のうち移動平均値baのみが移動平均用閾値以上であるか否かを走行支援ECU11が判定する。そして、移動平均値baのみが移動平均用閾値以上であると判定した場合(ステップS7でYes)には、ステップS8に移る。また、移動平均値baのみが移動平均用閾値以上であると判定しなかった場合(ステップS7でNo)には、車両2の死角領域に移動体が存在するものと判断してステップS9に移る。
ステップS8では、焦電素子Rbからの出力信号の所定時間分の総和(以下、ΣRbで表す)と焦電素子Raからの出力信号の所定時間分の総和(以下、ΣRaで表す)とを比較し、ΣRbがΣRaよりも大きいと判定した場合(ステップS8でYes)には、車両2の前方へ移動体が離れていっているものと判断してステップS10に移る。また、ΣRbがΣRaよりも大きいと判定しなかった場合(ステップS8でNo)には、車両2の前方から移動体が接近してきているものと判断してステップS9に移る。よって、走行支援ECU11は、請求項の第1車両有無判定部として機能する。なお、ここで言うところの所定時間も、ステップS3の所定時間と同じものである。本実施形態の例ではこの所定の時間が100msecであり、焦電素子Ra〜Reの出力信号が10msecごとに走行支援ECU11に出力されるので、ΣRbは焦電素子Rbの10回分の出力信号の総和となり、ΣRaは焦電素子Raの10回分の出力信号の総和となる。
ステップS9では、走行支援ECU11が表示器13bを点灯させ、ドライバーの死角領域に移動体が存在することを報知し、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。また、ステップS10では、ドライバーの死角領域に移動体が存在しないものとして走行支援ECU11が表示器13bを点灯させず、ステップS1に戻ってフローを繰り返す。なお、ステップS10では、既に表示器13bが点灯していた場合には走行支援ECU11が表示器13bを消灯させる。また、車両2の左側の赤外線センサ12aの出力に基づく処理では、表示器3a・3bの点消灯については表示器3aの点消灯を行わせることになる。
なお、本フローの途中であっても、車両2が駐停車したときには、フローを終了するものとする。車両2の駐停車は、車速センサや車輪速センサ等によって車速を検知したり、シフトポジションセンサでシフト位置を検知したりすることによって判断すればよい。
また、本実施形態では、ΣReがΣRd以上であるか否か、およびΣRbがΣRaよりも大きいか否かによって、移動体が車両2に対してどのように移動しているのかを判断する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、焦電素子Ra〜Reの出力信号が出力信号用の所定の閾値(以下、出力信号用閾値と呼ぶ)を越えた順番を走行支援ECU11で保持しておき、この保持しておいた順番の情報に従って、移動体が車両2に対してどのように移動しているのかを判断する構成としてもよい。具体的には、ステップS6の処理の代わりに、焦電素子Reの出力信号、焦電素子Rdの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたか否かを判断する処理を行い、焦電素子Reの出力信号、焦電素子Rdの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたと判断した場合には、車両2の後方から移動体が接近してきているものと判断してステップS9に移り、焦電素子Reの出力信号、焦電素子Rdの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたと判断しなかった場合には、車両2の後方へ移動体が離れていっているものと判断してステップS10に移る処理を行えばよい。また、ステップS8の処理の代わりに、焦電素子Rbの出力信号、焦電素子Raの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたか否かを判断する処理を行い、焦電素子Rbの出力信号、焦電素子Raの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたと判断した場合には、車両2の前方へ移動体が離れていっているものと判断してステップS10に移り、焦電素子Rbの出力信号、焦電素子Raの出力信号の順で出力信号用閾値を超えていたと判断しなかった場合には、車両2の前方から移動体が接近してきているものと判断してステップS9に移る処理を行えばよい。なお、ここで言うところの出力信号用閾値については後に詳述する。
移動体検知装置1では、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較し、走行支援ECU11で算出した移動平均値が移動平均用閾値以上であった場合であって、且つ、移動体が車両2に接近してきているか並走していると判断した場合に、車両2の周辺に移動体が存在するものとして走行支援ECU11が判定する。以上の構成によれば、隣接する焦電素子間の差分信号に基づく移動平均値を移動平均用閾値と比較するので、走行中の車両2に対する対象物の相対速度の違いによって対象物を区別することが可能になる。例えば、相対速度の違いによって、防音壁やトンネルの壁やポール等の周辺構造物と車両や歩行者等の移動体とを区別することが可能になる。よって、以上の構成によれば、車両2に備えられた赤外線センサ12a・12bによって、走行中の車両2の周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
ここで、本発明における作用効果について、具体的に図7(a)〜図7(c)および図8(a)〜図8(c)を用いて説明を行う。なお、図7(a)〜図7(c)は、赤外線センサ12bによって移動体を検知した場合の焦電素子の出力信号、差分信号、および移動平均値の一例を示した図であり、図8(a)〜図8(c)は、赤外線センサ12bによって周辺構造物を検知した場合の焦電素子の出力信号、差分信号、および移動平均値の一例を示した図である。なお、図7(a)および図8(a)中の出力信号用閾値とは、出力信号用の所定の閾値であって、任意に設定可能な値である。
設置されている周辺構造物は、車両2の速度と同じ速度で車両2から離れていくことになるので、車両2に近づいてきている移動体(以下、接近移動体と呼ぶ)に比べて車両2に対しての相対速度が大きくなる。よって、図7(a)および図8(a)に示すように、焦電素子Reの出力信号および焦電素子Rdの出力信号がそれぞれ出力信号用閾値に最初に達する時点(以下、出力信号ピーク位置と呼ぶ)の時間差は、検知対象が周辺構造物であった場合の時間差(Te’−Td’)の方が、検知対象が接近移動体であった場合の時間差(Te−Td)よりも小さくなる。また、(Te’−Td’)<(Te−Td)の関係となるので、図7(b)および図8(b)に示すように、検知対象が周辺構造物であった場合の差分信号|Re’−Rd’|では、検知対象が接近移動体であった場合の差分信号|Re−Rd|よりも信号のピークが小さくなる。従って、検知対象が周辺構造物であった場合の移動平均値ed’のピークも、検知対象が接近移動体であった場合の移動平均値edよりも小さくなり、図7(c)および図8(c)に示すように、検知対象が接近移動体であった場合と検知対象が周辺構造物であった場合とを移動平均用閾値によって区別することが可能になる。なお、本実施形態では、焦電素子の出力信号が出力信号用閾値に最初に達する時点を出力信号ピーク位置とする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。出力信号ピーク位置は、出力信号のピークのうちの出力信号用閾値を超えた所定の箇所であればよく、例えば、焦電素子の出力信号のピークの頂点に達する時点を出力信号ピーク位置とする構成としてもよい。
なお、本実施形態では、日射センサ15によって検知した日射量やナビゲーション装置16が保持している日付情報等によって、現在の季節が夏および冬のうちのいずれに相当するかを判断し、判断結果に応じて前述の増倍率の調整を行う構成としてもよい。具体的には、現在の季節が夏に相当すると判断した場合には、焦電素子Ra〜Reおよび焦電素子La〜Leの出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の季節が冬に相当すると判断した場合には、焦電素子Ra〜Reおよび焦電素子La〜Leの出力信号の増倍率をより高めに調整すればよい。現在の季節が夏である場合には、気温が他の季節よりも高めなので車両周辺の熱源の検出温度は夏以外の季節よりも高めに変化し、現在の季節が冬である場合には、気温が他の季節よりも低めなので車両周辺の熱源の検出温度は冬以外の季節よりも低めに変化するが、以上の構成によれば、気温による影響を低減することが可能になる。
また、本実施形態では、ライトセンサ14によって検知した照度やナビゲーション装置16が保持している日付情報等によって、現在の時間帯が昼および夜のうちのいずれに相当するかを判断し、判断結果に応じて前述の増倍率の調整を行う構成としてもよい。具体的には、現在の時間帯が昼に相当すると判断した場合には、焦電素子Ra〜Reおよび焦電素子La〜Leの出力信号の増倍率をより低めに調整し、現在の時間帯が夜に相当すると判断した場合には、焦電素子Ra〜Reおよび焦電素子La〜Leの出力信号の増倍率をより高めに調整すればよい。現在の時間帯が昼である場合には、気温が夜よりも高めなので車両周辺の熱源の検出温度は夜よりも高めに変化し、現在の時間帯が夜である場合には、気温が昼よりも低めなので車両周辺の熱源の検出温度は昼よりも低めに変化するが、以上の構成によれば、気温による影響を低減することが可能になる。
本発明では、前述の実施形態で示したように走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、さらに、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差をそれぞれ算出し、この算出した時間差が所定の範囲内であるか否かにも応じて車両2の周辺の移動体の有無を判定する構成としてもよい。
詳しく説明すると、図3のフローのステップS5の代わりに、まず、移動平均値ba、移動平均値cb、移動平均値dc、移動平均値edのそれぞれの移動平均ピーク位置を走行支援ECU11が算出する。よって、走行支援ECU11は、請求項の第2ピーク位置算出部として機能する。続いて、走行支援ECU11が、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差をそれぞれ算出する。つまり、移動平均値baと移動平均値cbとの移動平均ピーク位置間の時間差、移動平均値cbと移動平均値dcとの移動平均ピーク位置間の時間差、および移動平均値dcと移動平均値edとの移動平均ピーク位置間の時間差を走行支援ECU11が算出する。よって、走行支援ECU11は、請求項の第2時間差算出部としても機能する。なお、移動平均ピーク位置は、図9に示すように、移動平均値の経時的変化のピークの頂点に達する時点とする。また、図9では、便宜上、各移動平均値のうちの移動平均値dcおよび移動平均値edのみを示している。なお、ここで言うところの移動平均ピーク位置とは、移動平均値の経時的変化のピークのうちの移動平均用閾値を超えた所定の箇所であればよく、例えば、移動平均値の経時的変化のピークが移動平均用閾値に最初に達する時点を移動平均ピーク位置とする構成としてもよい。
続いて、各移動平均値のうち移動平均値edおよび移動平均値dcでのみ移動平均ピーク位置が存在するとともに、これらの移動平均ピーク位置間の時間差が所定の範囲内であるか否かの判定(以下、判定A)を走行支援ECU11が行う。そして、判定Aの結果が肯定判定であった場合には、移動平均ピーク位置が時間軸上で移動平均値edの移動平均ピーク位置、移動平均値dcの移動平均ピーク位置の順に並んでいるか否かの判定(以下、判定B)を走行支援ECU11が行う。なお、ここで言うところの所定の範囲とは、外乱による誤判定を除くように任意に設定するものとする。
続いて、判定Bの結果が肯定判定であった場合には、車両2の後方から移動体が接近してきているものと判断して図3のステップS9に移る。また、判定Bの結果が肯定判定でなかった場合には、車両2の後方へ移動体が離れていっているものと判断して図3のステップS10に移る。
さらに、判定Aの結果が肯定判定でなかった場合には、各移動平均値のうち移動平均値baおよび移動平均値cbでのみ移動平均ピーク位置が存在するとともに、これらの移動平均ピーク位置間の時間差が所定の範囲内であるか否かの判定(以下、判定C)を走行支援ECU11が行う。そして、判定Cの結果が肯定判定であった場合には、移動平均ピーク位置が時間軸上で移動平均値cbの移動平均ピーク位置、移動平均値baの移動平均ピーク位置の順に並んでいるか否かの判定(以下、判定D)を走行支援ECU11が行う。なお、ここで言うところの所定の範囲も、判定Aで用いる所定の範囲と同一のものとする。
続いて、判定Dの結果が肯定判定であった場合には、車両2の前方へ移動体が離れていっているものと判断して図3のステップS10に移る。また、判定Dの結果が肯定判定でなかった場合には、車両2の前方から移動体が接近してきているものと判断して図3のステップS9に移る。
さらに、判定Cの結果が肯定判定でなかった場合には、移動平均値baと移動平均値cbとの移動平均ピーク位置間の時間差、移動平均値cbと移動平均値dcとの移動平均ピーク位置間の時間差、および移動平均値dcと移動平均値edとの移動平均ピーク位置間の時間差が所定の範囲内であるか否かの判定(以下、判定E)を走行支援ECU11が行う。そして、判定Eの結果が肯定判定であった場合には、車両2の死角領域に移動体が存在するものと判断して図3のステップS9に移る。また、判定Eの結果が肯定判定でなかった場合には、図3のステップS10に移る。なお、ここで言うところの所定の範囲も、判定Aで用いる所定の範囲と同一のものとする。
赤外線センサ12bで移動体を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差が一定の範囲内におさまるが、赤外線センサ12bで外乱を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差が一定の範囲内におさまらないことがある。以上の構成によれば、上述の時間差が所定の範囲内であるか否かに応じて、車両2の周辺の移動体の有無を判定するので、外乱を誤って移動体と判定する可能性を低減することが可能になる。また、以上の構成によれば、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、お互いに隣接する焦電素子の組同士の移動平均ピーク位置間の時間差が所定の範囲内であるか否かにも応じて、車両2の周辺の移動体の有無を判定するので、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することのみによって車両2の周辺の移動体の有無を判定する場合に比べて、車両2の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。なお、本構成では、移動平均ピーク位置間の時間差が1種類は必要となるので、少なくとも水平方向に配列された焦電素子が3つ以上必要となる。
なお、本発明では、前述の実施形態で示したように走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、さらに、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の時間差をそれぞれ算出し、この算出した各時間差間での時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かにも応じて車両2の周辺の移動体の有無を判定する構成としてもよい。
この場合、焦電素子Ra〜Reの出力信号ピーク位置は、焦電素子Ra〜Reの出力信号と出力信号用閾値とをもとに走行支援ECU11が算出する構成とすればよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の第1ピーク位置算出部としても機能する。また、焦電素子Raと焦電素子Rbとの出力信号ピーク位置間の時間差、焦電素子Rbと焦電素子Rcとの出力信号ピーク位置間の時間差、焦電素子Rcと焦電素子Rdとの出力信号ピーク位置間の時間差、および焦電素子Rdと焦電素子Reとの出力信号ピーク位置間の時間差を走行支援ECU11が算出する構成とすればよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の第1時間差算出部としても機能する。そして、走行支援ECU11で算出したこれらの時間差同士の時間の幅のずれが所定の範囲内でなかった場合には、赤外線センサ12bで外乱を検知したものと走行支援ECU11が判断し、車両2の周辺に移動体が存在すると判定しないようにする。なお、ここで言うところの所定の範囲とは、外乱による誤判定を除くように任意に設定するものとする。
赤外線センサ12bで移動体を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差のずれが一定の範囲内におさまるが、赤外線センサ12bで外乱を検知している場合には、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差のずれが大きく異なることがある。以上の構成によれば、上述の各時間差同士の時間の幅のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両2の周辺の移動体の有無を判定するので、外乱を誤って移動体と判定する可能性を低減することが可能になる。また、以上の構成によれば、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することに加え、お互いに隣接する焦電素子の出力信号ピーク位置間の各時間差のずれが所定の範囲内であるか否かに応じて、車両2の周辺の移動体の有無を判定するので、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することのみによって車両2の周辺の移動体の有無を判定する場合に比べて、車両2の周辺の移動体の有無をさらに精度良く判定することが可能になる。なお、本構成では、出力信号ピーク位置間の時間差が2種類は必要となるので、少なくとも水平方向に配列された焦電素子が3つ以上必要となる。
なお、前述の実施形態では、焦電素子Ra〜Reの出力信号をもとに差分信号|Rb−Ra|、差分信号|Rc−Rb|、差分信号|Rd−Rc|、差分信号|Re−Rd|を算出し、これらの差分信号の所定時間分の総和を所定の単位時間Δtで除算したものを移動平均値ba、移動平均値cb、移動平均値dc、移動平均値edとする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行支援ECU11において、標本化を伴うA/D変換によって焦電素子Ra〜Reの出力信号を電圧値(つまり、デジタル値)として保持し、焦電素子Raの出力信号のデジタル値と焦電素子Rbの出力信号のデジタル値との比(以下、出力比A)の値、焦電素子Rbの出力信号のデジタル値と焦電素子Rcの出力信号のデジタル値との比(以下、出力比B)の値、焦電素子Rcの出力信号のデジタル値と焦電素子Rdの出力信号のデジタル値との比(以下、出力比A)の値、および焦電素子Rdの出力信号のデジタル値と焦電素子Reの出力信号のデジタル値との比(以下、出力比D)の値を算出する。そして、走行支援ECU11が、出力比Aの値、出力比Bの値、出力比Cの値、出力比Dの値のぞれぞれの所定時間分の総和を所定の単位時間Δtで除算し、除算した結果を移動平均値ba、移動平均値cb、移動平均値dc、移動平均値edとする構成としてもよい。よって、走行支援ECU11は、請求項のA/Dサンプリング部、出力比算出部、および第2移動平均値算出部としても機能する。
以上の構成によれば、隣接する焦電素子間の出力信号のデジタル値の比の値に基づく移動平均値を移動平均用閾値と比較することになるので、車両2に対する対象物の相対速度の違いによって対象物を区別することが可能になる。よって、以上の構成によれば、車両2に備えられた赤外線センサ12bによって、走行中の車両2の周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
なお、前述の実施形態では、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することによって車両2の周辺の移動体の有無を判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することによって車両2の周辺の移動体の有無を判定した結果と、焦電素子Ra〜Reの出力信号と所定の閾値とを比較することによって車両2の周辺の移動体の有無を走行支援ECU11で判定した結果とをもとに、両者の判定結果が共に肯定判定であった場合に、車両2の周辺に移動体が存在すると確定させる構成としてもよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の第2車両有無判定部としても機能する。なお、ここで言うところの所定の閾値とは、任意に設定可能な値である。
また、前述の実施形態では、便宜上、赤外線センサ12a・12bのうちの赤外線センサ12bについての処理のみを示したが、赤外線センサ12aについても赤外線センサ12bについての処理と同様であるものとする。
なお、前述の実施形態では、ライトセンサ14によって検知した照度によって、現在の時間帯が昼および夜のうちのいずれに相当するかを判断し、判断結果に応じて前述の増倍率の調整を行う構成を示したが、ライトセンサ14によって検知した照度をもとに車両2がトンネルや高架下や道路上のゲート等の太陽光を遮断する構造物(以下、太陽光遮断構造物)下の通過を判断し、判断結果に応じて車両2の周辺に移動体が有るものと判定させない処理(以下、車両有無判定中断処理と呼ぶ)を行う構成であってもよい。以下では、図10を用いて車両有無判定中断処理のフローの説明を行う。図10は、車両有無判定中断処理のフローを示すフローチャートである。なお、本フローも、例えば車両2が発車したときに開始される。
まず、ステップS21では、順次(つまり、経時的に)出力されるライトセンサ14のセンサ出力を走行支援ECU11が取得(つまり、ライトセンサ出力取得)し、ステップS22に移る。
ステップS22では、順次取得したライトセンサ14のセンサ出力をもとに車両2の周辺の照度の変化の度合いを算出し、算出した照度の変化の度合いが所定の値以上である(つまり、急激な照度の変化がある)か否かの判定を走行支援ECU11が行う。そして、照度の変化の度合いが所定の値以上であると判定した場合(ステップS22でYes)には、ライトセンサ14によって急激な照度の変化を検知したものとしてステップS23に移る。また、照度の変化の度合いが所定の値以上であると判定しなかった場合(ステップS22でNo)には、ライトセンサ14によって急激な照度の変化を検知しなかったものとしてステップS21に戻り、フローを繰り返す。
ステップS23では、焦電素子Raの出力信号と焦電素子Laの出力信号とがそれぞれ出力信号用閾値を超え、且つ、焦電素子Raの出力信号が出力信号用閾値を超えたタイミングと焦電素子Laの出力信号が出力信号用閾値を超えたタイミングとのずれが設定時間内(つまり、各タイミングが設定時間内)か否かの判定を走行支援ECU11が行う。なお、ここで言うところの設定時間内とは、太陽光遮断構造物下を車両2が通過する際に、太陽光遮断構造物の陰と日向との境界部分に焦電素子Raの検知範囲と焦電素子Laの検知範囲とがそれぞれさしかかるタイミングのずれ程度の実質的に同一のタイミングと考えられる時間範囲であって、任意に設定可能なものである。例えば、設定時間を0とする構成であってもよい。そして、各タイミングが設定時間内であると判定した場合(ステップS23でYes)には、ステップS24に移る。また、各タイミングが設定時間内であると判定しなかった場合(ステップS23でNo)には、ステップS21に戻ってフローを繰り返す。
なお、日射センサ15で検知した太陽方位やナビゲーション装置16で判断した太陽方位およびナビゲーション装置16から得られる地図データや施設情報をもとに、太陽光遮断構造物の陰の発生方向を走行支援ECU11で判断し、上述の設定時間を調整する構成としてもよい。
ステップS24では、焦電素子Ra、焦電素子Rb、焦電素子Rc、焦電素子Rd、焦電素子Reの順に出力信号が出力信号用閾値を超えるとともに、焦電素子La、焦電素子Lb、焦電素子Lc、焦電素子Ld、焦電素子Leの順に出力信号が出力信号用閾値を超えた(つまり、a、b、c、d、eの順に閾値を超えた)か否かを走行支援ECU11が判定する。そして、a、b、c、d、eの順に閾値を超えたと判定した場合(ステップS24でYes)には、ステップS25に移る。また、a、b、c、d、eの順に閾値を超えたと判定しなかった場合(ステップS24でNo)には、ステップS21に戻ってフローを繰り返す。
ステップS25では、車両2が太陽光遮断構造物下を通過しているものと走行支援ECU11が判断し、一定時間の間は、図3のフローに優先して車両2の周辺に移動体が有るものと判定せず、表示器13a・13bを点灯させないようにする。そして、一定時間が経過した後は、ステップS21に戻ってフローを繰り返す。なお、ここで言うところの一定時間とは、例えば焦電素子Raおよび焦電素子Laの検知範囲が太陽光遮断構造物の陰と日向との境界部分にさしかかってから、焦電素子Reおよび焦電素子Leの検知範囲がこの境界部分を越える程度の時間であって、任意に設定可能な時間である。
なお、本フローの途中であっても、車両2が駐停車したときには、フローを終了するものとする。
車両2が日中に太陽光遮断構造物下を通過するときには、日向と日陰との境界を通過することになるが、この境界部分の温度分布の偏りを赤外線センサが熱源として誤検知する場合が想定される。これに対して、以上の構成によれば、ライトセンサ14によって所定の値以上の照度の変化を検知したことにより、車両2が日中に太陽光遮断構造物下を通過するタイミングを検知する。また、車両2が日中に太陽光遮断構造物下を通過するタイミングを検知した場合、一定時間の間は、車両2の周辺に移動体が有るものと判定しないので、赤外線センサによって上述したような境界部分の温度分布の偏りを熱源として誤検知するような箇所を車両2が通過し終えるまでは、車両2の周辺に移動体が有るものと判定しない。従って、上述したような熱源の誤検知により車両2の周辺の移動体の有無の誤った判定が生じる可能性を排除することが可能になる。また、赤外線センサが車両の左右にそれぞれ設置されている場合、車両2が日中に太陽光遮断構造物下を通過するときに、左右の赤外線センサの焦電素子の出力信号が実質的に同一のタイミングで出力信号用閾値を超えるものと推定されるので、以上の構成によれば、車両2が太陽光遮断構造物下を通過中であることをより正確に判断することが可能になる。
なお、前述の実施形態では、左右の赤外線センサ12a・12bの焦電素子Ra・Laの出力信号が実質的に同一のタイミングで出力信号用閾値を超えたと判断した場合に、一定時間の間は、車両2の周辺に移動体が有るものと判定しない構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ライトセンサ14によって所定の値以上の照度の変化を検知した場合に、一定時間の間は、車両2の周辺に移動体が有るものと判定しない構成としてもよい。
また、ライトセンサ14によって所定の値以上の照度の変化を検知した場合に、一定時間の間は、移動平均用閾値をより高い値に設定する構成としてもよい。
なお、前述の実施形態では、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することによって車両2の有無の判定を行う処理と車両有無判定中断処理とを移動体検知装置1でともに行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行支援ECU11で算出した移動平均値と移動平均用閾値とを比較することによって車両2の有無の判定を行う処理を行わず、車両有無判定中断処理のみを行う構成としてもよい。この場合であっても、トンネルや高架下や道路上のゲート等の太陽光遮断構造物下を車両2が通過する場合に前述の誤判定が生じる可能性を排除することが可能になるので、車両2に備えられた赤外線センサ12a・12bによって、走行中の車両2の周辺の移動体をより精度良く検知することが可能になる。
なお、前述の実施形態では、日射センサ15によって検知した日射量によって、現在の季節が夏および冬のうちのいずれに相当するかを判断し、判断結果に応じて前述の増倍率の調整を行う構成を示したが、日射センサ15によって検知した太陽方位に応じて左右の赤外線センサ12a・12bについての移動平均用閾値をそれぞれ設定する処理(以下、日射対応補正処理と呼ぶ)を行う構成であってもよい。以下では、図11を用いて日射対応補正処理のフローの説明を行う。図11は、日射対応補正処理のフローを示すフローチャートである。なお、本フローも、例えば車両2が発車したときに開始される。
まず、ステップS31では、日射センサ15のセンサ出力を走行支援ECU11が取得(つまり、日射センサ出力取得)し、ステップS32に移る。ステップS32では、ステップS31で取得したセンサ出力をもとに、走行支援ECU11が車両2の周辺の日射量を算出し、ステップS33に移る。具体的には、センサ出力としての電流値が日射量に比例していることを利用して、センサ出力をもとに車両2の周辺の日射量を算出する。
ステップS33では、ステップS32で算出した日射量に応じて走行支援ECU11が移動平均用閾値を調整して設定し、ステップS34に移る。具体的には、図12(a)に示すように、車両2の周辺の日射量が多くなるほど移動平均用閾値を大きく設定し、車両2の周辺の日射量が少なくなるほど移動平均用閾値を小さく設定するようにすればよい。日射量が多くなるほど路面の温度が高くなるといったように、車両2の周辺の熱源の検出温度は、車両2の周辺の日射量に依存して変化する傾向にあるので、この日射量による影響を低減するため、以上のように、移動平均用閾値を日射量に応じて設定することが好ましい。
ここでは、移動平均用閾値を車両2の周辺の日射量に応じて設定する構成を示したが、移動平均用閾値をライトセンサで検知した車両2の周辺の照度に応じて設定する構成であってもよい。この場合には、車両2の周辺の照度が高くなるほど移動平均用閾値を大きく設定し、車両2の周辺の照度が低くなるほど移動平均用閾値を小さく設定するようにすればよい。
ステップS34では、ステップS31で取得したセンサ出力をもとに、走行支援ECU11が車両2に対する太陽方位を検知し、ステップS35に移る。具体的には、複数方位に対してのセンサ出力の強度の違いをもとにして車両2に対する太陽方位を検知する。
ステップS35では、太陽方位が右(つまり、太陽が車両2の右方向に存在する)との検出結果が得られた場合(ステップS35で右)には、ステップS36に移る。また、太陽方位が左(つまり、太陽が車両2の左方向に存在する)との検出結果が得られた場合(ステップS35で左)には、ステップS37に移る。さらに、太陽方位が前後(つまり、太陽が車両2の前後方向に存在する)との検出結果が得られた場合(ステップS35で前後)には、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。
ステップS36では、赤外線センサ12aについての移動平均用閾値を、ステップS33で設定した基準の値よりも高く設定(図12(b)の「高め」参照)するとともに、赤外線センサ12bについての移動平均用閾値をステップS33で設定した基準の値よりも低く設定(図12(b)の「低め」参照)し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。つまり、左側を高め、右側を低めに設定する。また、ステップS37では、赤外線センサ12aについての移動平均用閾値をステップS33で設定した基準の値よりも低く設定(図12(b)の「低め」参照)するとともに、赤外線センサ12bについての移動平均用閾値をステップS33で設定した基準の値よりも高く設定(図12(b)の「高め」参照)し、ステップS31に戻ってフローを繰り返す。つまり、左側を低め、右側を高めに設定する。
なお、本フローの途中であっても、車両2が駐停車したときには、フローを終了するものとする。
太陽方位によって路面への陰の出来方が異なることによって路面の温度分布に偏りが生じるといったように、太陽方位によって車両周辺の構造物の温度分布に偏りが生じる。特に高速道路等を走行する場合など防音壁がある場合には、太陽方位と同じ側の車線は陰になり易く、反対側の車線は陰になり難い。そのため、太陽の直射光により上述の反対側の車線の防音壁の温度分布の偏りが大きくなり、赤外線センサによる誤検知を誘発することが想定される。つまり、赤外線センサが車両の左右にそれぞれ設置されている場合に、太陽方位によっては左右の赤外線センサの検知範囲の温度が大きく異なり、車両2の周辺の移動体の有無の判定の条件が大きく異なることも想定される。これに対して、以上の構成によれば、日射センサ15によって検知した太陽方位に応じて左右の赤外線センサ12a・12bのそれぞれについての移動平均用閾値を設定することが可能なので、左右の赤外線センサ12a・12bの検知範囲の温度が大きく異なり、車両2の周辺の移動体の有無の判定の条件(つまり、最適な移動平均用閾値)が大きく異なる場合であっても、個々の赤外線センサ12a・12bに最適な移動平均用閾値を設定し、車両2の周辺の移動体の有無の判定をより精度良く行うことが可能になる。
また、日射センサ15によって検知した太陽方位と赤外線センサ12a・12bの検知方向とが実質的に同方向か否かを走行支援ECU11で判断し、検知した太陽方位が赤外線センサ12a・12bの検知方向と実質的に同方向であると判断した場合であって、且つ、車両有無判定処理で車両2の周辺に移動体が有るものと一定期間以上判定し続けた場合には、この判定を取り消すとともに、車両2の周辺の移動体の有無の判定が不能であることを示す報知をドライバーに対して行わせる構成であってもよい。よって、走行支援ECU11は、請求項の方向一致判断部としても機能する。なお、ここで言うところの実質的に同方向とは、太陽の直射光入射によって赤外線センサ12a・12bで誤検知が生じる可能性が高くなると推測される程度に同方向であることを表している。また、ここで言うところの一定期間とは、任意に設定可能な期間である。さらに、車両2の周辺の移動体の有無の判定が不能であることを示す報知は、例えば図示しない表示装置に表示したり、図示しない音声出力装置から音声出力したりすることによって行うものとすればよい。
太陽方位が赤外線センサ12a・12bの検知方向と実質的に同方向であって、車両有無判定処理で車両2の周辺に移動体が有るものと一定期間以上判定し続ける場合には、太陽の直射光入射による赤外線センサ12a・12bの誤検知が原因で車両2の周辺の移動体の有無の誤判定が生じている可能性がある。これに対して、以上の構成によれば、このように車両2の周辺の移動体の有無の誤判定が生じている可能性がある場合には、この判定を取り消すとともに、車両2の周辺の移動体の有無の判定が不能であることを示す報知をドライバーに対して行わせるので、誤判定によってドライバーを混乱させる事態を防ぐことが可能になる。
また、前述の実施形態では、日射センサ15によって検知(詳しくは、日射センサ15のセンサ出力をもとに検知)した太陽方位を用いて日射対応補正処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ナビゲーション装置16によって判断した太陽方位を用いて日射対応補正処理を行う構成としてもよい。
なお、ナビゲーション装置16によって車両2が現在走行していると判断された車線が全車線中のどこに位置するかに応じて、左右の赤外線センサ12a・12bのうちのいずれの側の赤外線センサを使用するかを走行支援ECU11が決定する構成としてもよい。具体的には、車両2が現在走行していると判断された車線の左右のいずれかの隣側に車線がない場合には、車線がない側の赤外線センサを使用しないように決定すればよい。例えば、右側に車線がない場合には、赤外線センサ12bを使用しないように決定し、左側に車線がない場合には、赤外線センサ12aを使用しないように決定すればよい。
以上の構成によれば、車両2が現在走行していると判断された車線の左右のいずれかの隣側に車線がない場合のように、検知すべき移動体が存在せず、車両2の左右にそれぞれ設置されている赤外線センサ12a・12bのうちのいずれかを使用する必要がない場合に、使用する必要のない赤外線センサを使用しないようにすることが可能になる。つまり、移動体の検知を行わなくてもよい領域を除くように赤外線センサでの検知範囲を変更し、無駄な処理を低減することが可能になる。なお、作動させる赤外線センサを選択するだけでなく、作動させる焦電素子までを選択する構成としてもよい。
また、本実施形態では、赤外線センサ12a・12bは左右のドアミラー3a・3bに設置され、車両の左右の側面周辺の死角領域を検知範囲とする構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、赤外線センサを左右のドアに設置し、車両の左右の側面周辺を検知範囲とする構成としてもよいし、赤外線センサをリアバンパーに設置し、車両の後方周辺を検知範囲とする構成等としてもよい。また、これらの構成を組み合わせてもよい。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
1 移動体検知装置、2 車両、3a・3b ドアミラー、11 走行支援ECU(第1車両有無判定部、差分信号算出部、第1移動平均値算出部、A/Dサンプリング部、出力比算出部、第2移動平均値算出部、報知部、第1可変調整部、第2可変調整部、第1ピーク位置算出部、第1時間差算出部、第2ピーク位置算出部、第2時間差算出部、第2車両有無判定部、方向一致判断部)、12a・12b 赤外線センサ(焦電型赤外線センサ)、13a・13b 表示器(報知部)、14 ライトセンサ(周辺状況検知部、照度センサ)、15 日射センサ(周辺状況検知部、位置検出型日射センサ)、16 ナビゲーション装置(周辺状況検知部、車載ナビゲーション装置)、Aa〜Ae 増幅回路、La〜Le 焦電素子、Ra〜Re 焦電素子、Sba、Scb、Sdc、Sed 差分処理回路、