以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、第1の基材11上にハードコート層12、ハードコート層12上に低屈折率層13を備えている。反射防止フィルム10の最表面は低屈折率層13である。低屈折率層13のみで反射防止性能を発現させるためには、可視光領域において波長の1/4となるような光学膜厚を有する層厚の低屈折率層13が設けられる。可視光領域において波長の1/4となるような光学膜厚を有する層厚の低屈折率層13を設けることにより、反射防止フィルム10の表面に入射する外光の反射を抑制することができる。また、第1の基材11上にハードコート層12を設けることにより、反射防止フィルム10の表面に高い表面硬度を付与することができ、耐擦傷性に優れた反射防止フィルム10とすることができる。
なお、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、図1に示す反射防止フィルム10の構成に限定されるものではなく、例えば、低屈折率層13とハードコート層12の間に高屈折率層を設け、低屈折率層13と高屈折率層の積層構造とすることにより、反射防止フィルム10により高い反射防止性能を付与することができる。また、低屈折率層13とハードコート層12との間、ハードコート層12と第1の基材11の間に帯電防止層を設けることにより、反射防止フィルム10に帯電防止性能を付与することもできる。また、ハードコート層12や高屈折率層に導電性材料を添加することにより帯電防止性を付与してもよい。
本発明の実施の形態に係る第1の基材11としては、プラスチックフィルムを好適に用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン6等のポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂フィルム、ポリウレタン(PUR)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル化合物、ポリアクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物またはフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール等を用いることができるがこれらに限定されるものではなく、機械的強度や寸法安定性に優れるものであれば良い。また、密着性を良くするために前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理などを施しておいても良い。上述したプラスチックフィルムの中でも、トリアセチルセルロースを用いることが特に好ましい。トリアセチルセルロースは、複屈折率が小さく、透明性が良好であることから液晶ディスプレイに対し好適に用いることができる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、ロール・ツー・ロール方式により製造され、第1の基材11としてはウェブ状のプラスチックフィルムが用いられる。
第1の基材11の厚みは特に制限を受けるものではないが、反射防止フィルム10としての適性や複数の層を積層させることを考えると、25μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
第1の基材11上にハードコート層12を形成する。ハードコート層12は、第1の基材11の表面硬度を向上させ、鉛筆等の荷重のかかる引っ掻きによる傷を付きにくくすることができる。また、第1の基材11の屈曲により低屈折率層13にクラックが入るのを抑制することができ、反射防止フィルム10の機械的強度を改善することができる。
次に、本発明の実施の形態に係るハードコート層12の形成方法について説明する。ハードコート層12は、電離放射線硬化型材料を含むハードコート層12の形成用塗液を第1の基材11上に塗布し、第1の基材11上に塗膜を形成し、塗膜に対し、必要に応じて乾燥を行い、その後、紫外線、電子線といった電離放射線を照射することにより電離放射線硬化型材料の硬化反応を行うことにより、ハードコート層12とすることができる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10においては、ロール・ツー・ロール方式によりハードコート層12が形成される。
ハードコート層12の形成用塗液に加えられる電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
なお、本発明の実施の形態において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層12の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらのもの限定されるものではない。
また、ハードコート層12を形成するための塗液を紫外線により硬化させる場合には、ハードコート層12の形成用塗液に光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
さらに、ハードコート層12の形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
また、反射防止フィルム10には、静電気を帯びやすく埃の付着などから外観上の問題となることがある。そのため、静電気を防止するための導電性材料を添加し、帯電防止性能を付与することができる。例えば、ハードコート層12に金属酸化物微粒子を分散させることによって帯電防止性を付与することができる。金属酸化物微粒子としては、透明導電膜に用いられるATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(酸化インジウム酸化スズ)、酸化スズ、酸化チタン、五酸化アンチモンなどを用いることができる。また、導電性材料として、4級アンモニウム塩や導電性ポリマーを用いることもできる。
ハードコート層12の形成用塗液の塗布方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
ハードコート層12の形成用塗液が第1の基材11上に塗布された後、必要に応じて第1の基材11上の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。
第1の基材11上の塗膜に対し、活性エネルギー線を照射することにより塗膜は硬化され、ハードコート層12が形成される。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、あるいはガンマ線などを用いることができる。活性エネルギー線として電子線あるいはガンマ線を用いた場合、必ずしもハードコート層12の形成用塗液に光重合開始剤や光開始助剤を含有する必要はない。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。また、電子線としては、コックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
次に、ハードコート層12上に低屈折率層13を形成する。低屈折率層13は、紫外線硬化型材料と低屈折率粒子とシリコーン系材料と溶媒とを含む形成用塗液を塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。
低屈折率層13の形成用塗液に加えられる紫外線硬化型材料としては、ハードコート層12の形成用塗液の場合と同様に、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
さらに、低屈折率層13の形成用塗液には、低屈折率粒子が加えられる。低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlF3またはAlF3(いずれも、屈折率1.4)、または、Na3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子においては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
本発明の実施の形態に係る低屈折率層13の形成用塗液に加えられる低屈折率粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。低屈折率粒子の粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層13が白化して反射防止フィルム10の透明性が低下する傾向にある。一方、低屈折率粒子の粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層13における粒子の不均一性等の問題が生じる。
さらに、低屈折率層13の形成用塗液には、溶媒が加えられる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
本発明の実施の形態においては、低屈折率層13の形成用塗液に含まれる溶媒が全溶媒100重量部に対して60重量部以上を占める主溶媒を含むことを特徴とする。一つの溶媒が60重量部以上を占める溶媒を用いることにより、形成される低屈折率層13の面性を向上させることができ、製造管理を簡略化でき、特に、塗液の安定性を向上させることができる。
また、低屈折率層13の形成用塗液には、シリコーン系材料が加えられる。低屈折率層13の形成用塗液にシリコーン系材料を添加することにより、滑り性に加えて防汚性も付与することができる。シリコーン系材料としては、シリコーン結合を持つ材料であり、例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルを用いることができる。
また、低屈折率層13の形成用塗液には光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。また、光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化型材料100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下、好ましくは1重量部以上7重量部以下である。
低屈折率層13は、紫外線硬化型材料と低屈折率粒子とシリコーン系材料と溶媒とを含む低屈折率層13の形成用塗液を塗布し塗膜を形成する塗布工程と、塗膜を乾燥する乾燥工程と、塗膜に紫外線を照射する紫外線照射工程によって形成される。
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の製造方法において、低屈折率層13はロール・ツー・ロール方式により形成される。低屈折率層13の形成用塗液の塗布方法としては、ハードコート層12の形成用塗液の場合と同様に、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
低屈折率層13の形成用塗液がハードコート層12上に塗布された後、ハードコート層12上の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の製造方法としては、乾燥工程における塗膜の乾燥温度が、主溶媒の沸点−20℃以上主溶媒の沸点+20℃以下の範囲内であることを特徴とする。乾燥温度が低屈折率層13の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点−20℃を下回る場合には、反射防止フィルム10を巻き取った際に低屈折率層13に含まれるシリコーン材料成分が第1の基材11側に裏移りしてしまい、低屈折率層13の防汚性と耐擦傷性が低下してしまう。一方、乾燥温度が低屈折率層13の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点+20℃を上回る場合には、熱によって反射防止フィルム10に熱シワと呼ばれるシワが発生してしまう場合がある。
低屈折率層13は、ハードコート層12上の塗膜に対し、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され形成される。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の製造方法は、紫外線照射工程において、照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm2以上400mJ/cm2以下の範囲内であることを特徴とする。照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm2未満の場合は、反射防止フィルム10を巻き取った際に低屈折率層13に含まれるシリコーン材料成分が第1の基材11側に裏移りしてしまい、低屈折率層13の防汚性と耐擦傷性が低下してしまう。一方、照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm2を超える場合であっても、反射防止フィルム10を巻き取った際に低屈折率層13に含まれるシリコーン材料成分が第1の基材11側に裏移りしてしまい、低屈折率層13の防汚性と耐擦傷性が低下してしまう。以上のように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を製造することができる。
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、低屈折率層13がシリコーン系材料を含み、且つ、低屈折率層13の形成面と反対側の第1の基材11表面においてシリコーン材料成分が確認されないことを特徴とする。本発明の実施の形態においては、塗液に含まれる溶媒が全溶媒100重量部に対して60重量部以上を占める主溶媒を含み、且つ、乾燥工程における塗膜の乾燥温度が、主溶媒の沸点−20℃以上主溶媒の沸点+20℃以下の範囲内であり、且つ、紫外線照射工程おいて、照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm2以上400mJ/cm2以下の範囲内であることを特徴とする製造方法により反射防止フィルム10を製造することにより、低屈折率層13の形成面と反対側の第1の基材11の表面においてシリコーン材料成分が確認されない反射防止フィルム10とすることができる。
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10において、「シリコーン材料成分が確認されない」とは、X線光電子分光分析装置(ESCA−3200(島津製作所))を用いて、裏面の第1の基材11を測定した際に、Siの検出量が0.1atomic%未満である表面である。
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10の第1の基材11の裏面(第1の基材11のハードコート層12が形成されていない面)には、シリコーン系材料成分による裏面汚染が発生せず、防汚性と耐擦傷性を維持することができる。
また、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、視感平均反射率が0.5%以上1.3%以下の範囲内であり、且つ全光線透過率が95%以上であることが好ましい。視感平均反射率が1.3%を越える場合は、反射防止性能が低下してしまい、外光の映り込みが発生してしまう。一方、視感平均反射率が0.5%未満の場合は、高い反射防止性能を実現するために高屈折率層、低屈折率を積層する必要があり、コスト高となる。また、全光線透過率が95%未満の場合には、透過型液晶表示装置等の画像装置の表面に設けるのに適さなくなってしまう。
次に、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いた第1の偏光板20について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いた第1の偏光板20を示す概略断面図である。図2に示すように、本発明の実施の形態に係る第1の偏光板20は、第1の基材11及び第2の基材22の間に第1の偏光層23が狭持されている。本発明の実施の形態に係る第1の偏光板20は、第1の基材11の低屈折率層13が設けられている反対側の面に、第1の偏光層23、第2の基材22を備えている。すなわち、反射防止フィルム10の第1の基材11が、第1の偏光層23を狭持するための第1の基材11を兼ねる構造となっている。
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10は、ディスプレイ部材、画像装置の一部として用いることができる。
次に、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を用いた透過型液晶表示装置60について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム10を備える透過型液晶表示装置60を示す概略断面図である。図3に示すように、本発明の実施の形態に係る透過型液晶表示装置60においては、バックライトユニット50、第2の偏光板40、液晶セル30、反射防止フィルム10を含む第1の偏光板20を備えている。このとき、反射防止フィルム10側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
バックライトユニット50は、図示しないが光源と光拡散板とを備えている。液晶セル30は、図示しないが、一方の第3の基材41に電極が設けられ、もう一方の第4の基材42に電極及びカラーフィルタを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。第1の偏光板20及び第2の偏光板40は液晶セル30を挟むように設けられる。
また、本発明の実施の形態に係る透過型液晶表示装置60においては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶表示装置60はこれらに限定されるものではない。
低屈折率層13を形成する際の乾燥温度を85℃、紫外線照射による積算光量395mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム(第1の基材11)の一方の面にハードコート層12及び低屈折率層13を備える反射防止フィルム10を製造した。
[比較例1]
低屈折率層13を形成する際の乾燥温度を45℃、紫外線照射による積算光量384mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム(第1の基材11)の一方の面にハードコート層、低屈折率層を備える反射防止フィルム10を製造した。
[比較例2]
低屈折率層13を形成する際の乾燥温度を140℃、紫外線照射による積算光量384mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム(第1の基材11)の一方の面にハードコート層12及び低屈折率層13を備える反射防止フィルム10を製造した。
[比較例3]
低屈折率層13を形成する際の乾燥温度を80℃、紫外線照射による積算光量80mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム(第1の基材11)の一方の面にハードコート層12及び低屈折率層13を備える反射防止フィルム10を製造した。
[比較例4]
低屈折率層13を形成する際の乾燥温度を80℃、紫外線照射による積算光量560mJ/cm2とした以外は、実施例1と同様にして、トリアセチルセルロースフィルム(第1の基材11)の一方の面にハードコート層12及び低屈折率層13を備える反射防止フィルム10を製造した。
[評価]
実施例1乃至実施例5、比較例1乃至比較例4で得られた反射防止フィルム10を以下の方法で評価した。評価結果は、表1に示す。
(1)機械強度(耐擦傷性)
スチールウール「ボンスター#0000」(日本スチールウール製)により200g/cm2、500g/cm2で各10回擦り、傷の有無を目視判定した。なお、初期特性としては、200g/cm2、500g/cm2ともに傷を確認することが出来ず、良好な耐擦傷性(下記判断基準:○)を有している。判定基準を以下に示す。
○:傷を確認することが出来ない。
△:数本傷を確認できる。
×:傷が多数確認できる。
(2)裏面汚染
得られた反射防止フィルム10の塗工面にケン化済みのTACを接着させ、5kg/cm2の荷重をかけて恒温恒湿下で48時間放置した後、裏面のトリアセチルセルロースフィルムへのSi成分の裏面汚染をX線光電子分析装置ESCA−3200(SHIMADZU社製)を用い、X線源:MgKα線、加速電圧:10kV、エミッション電流:10mAで測定した。0.1atomic%未満を不検出(n.d.)とした。
(3)平均視感反射率
分光光度計U−4100(日立製作所製、測定波長360〜800nm)を用い、平均視感反射率を測定した。なお、比視感度は明所視標準比視感度を用いた。
(4)全光線透過率
ヘーズメーターNDH2000(日本電色社製)を用い、全光線透過率を測定した。
(5)防汚性
マジックインキ(寺西化学社製)で反射防止フィルム10に描写後、ハジキ性を目視判定した。なお、初期特性としては、良好な防汚性(下記判断基準:○)を有している。判定基準を以下に示す。
○:よくはじく
△:あまりはじかない
×:はじかない
表1に示すように、実施例1乃至実施例5においては、裏面汚染が発生せず、耐擦傷性が初期特性を維持しているが、比較例1乃至比較例4ではシリコーン成分が裏面汚染し、反射防止フィルム10の耐擦傷性、防汚性が悪くなっていることが分かる。
10…反射防止フィルム、11…第1の基材、12…ハードコート層、13…低屈折率層、20…第1の偏光板、22…第2の基材、23…第1の偏光層、30…液晶セル、40…第2の偏光板、41…第3の基材、42…第4の基材、43…第2の偏光層、50…バックライトユニット、60…透過型液晶表示装置