JP2010138518A - 超疎水性粉体、これを用いる超疎水性表面を有する構造体及びそれらの製造方法 - Google Patents

超疎水性粉体、これを用いる超疎水性表面を有する構造体及びそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シリカを主成分とする粉体そのものを超疎水性にすること、および得られた超疎水性粉体を用いてなる、超疎水性表面を有する構造体とその簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該ナノファイバー(I)が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントが、疎水性基を有する化合物(X)を物理吸着したシリカ(B)で被覆されてなるものであることを特徴とする超疎水性粉体、及びこれらを固体基材上に固定してなる、超疎水性表面を有する構造体。
【選択図】図3

Description

本発明は、シリカ系ナノファイバーの会合体を基本構造とするものであって、そのシリカ表面に疎水性基を有する化合物が物理吸着されてなる超疎水性粉体、これを用いる超疎水性表面を有する構造体、およびそれらの製造方法に関する。
固体表面に水滴が接触した際、水滴の接触角が150°以上である場合には超疎水性と定義されている。接触角が70〜150°の範囲は、疎水性と定義される。一般に疎水性は表面張力が低い分子残基で表面が被われることで発現するものであるが、超疎水性は表面張力が低い分子残基だけで発現させることは困難である。
一方、自然界の生物には超疎水性を示すものが多い。例えば、蓮、稲、キャベツなどの葉は水滴を完全に弾く超疎水性(超撥水性)を有する。蓮の葉の超疎水性は葉の表面構造と深く関係していることが知られている。即ち、ナノファイバーが表面全体に広がりながら表層を形成し、その上にナノファイバーの会合体のようなミクロンサイズの凸起物が一定距離で最表面層を作りあげており、且つこれらのナノファイバーの表面に疎水性ワックスが存在することが知られている。このことは、超疎水性を発現するには表面荒さ、即ち、ナノ次元での表面構造・形状の制御が最重要であることを示唆する。
蓮の効果とも言われる超疎水性発現の構造原理は、多くの人工蓮類似構造設計法の開発の指針となり、ナノ材料の進歩に伴い、この数年、多様な超疎水性材料が数多く開発されてきた。例えば、カーボンナノチューブを基材表面に規則的に配列させることで、接触角を170°以上に持ち上げることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、白金コートされたシリコン表面に、電気化学プロセスでポリピロールのナノファイバーを成長させ、表面接触角を170°以上にすることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。また、ガラス基材表面に400℃以上の温度で、酸化亜鉛のナノ結晶シーズ膜を形成させた後、その上でロッド状の酸化亜鉛のナノファイバーを無数に成長させることで、超疎水性を発現している(例えば、非特許文献3参照)。
単純な方法としては、例えば、ポリプロピレンの溶液に一定の貧溶剤を加え、それを基材表面にキャストし、温度調整することにより、ポリプロピレンのナノ粒子からなるネットワーク構造を形成させ、それにより接触角を160°まで上げたことが報告されている(例えば、非特許文献4参照)。また、ケイ素、ホウ素、ナトリウムの酸化物からなるガラスに相分離構造を持たせ、それをさらに化学処理でエッチングすることにより、その表面に凹凸構造を誘導した後、最後に、表面にフッ素化合物を反応させることで超疎水性を発現できる(例えば、特許文献1参照。)。さらに、ポリアリールアミンとポリアクリル酸との積層膜を作製したのち、その表面を化学法で処理することで表面ポーラス構造を誘導し、その上にシリカナノ粒子を固定した後、最後にフッ素化アルキル基を有するシランカップリング剤で疎水化させることで、超疎水性表面を構築することも知られている(例えば、特許文献2参照。)。
多くの公知文献では、超疎水性膜及びそれらの作製法が頻繁に取り上げられているが、それらは基材表面での荒さ(即ち、ラフネス)を加工する手法に相当することが多く、その表面処理加工過程が煩雑になりやすく、コストも高い。また、有機ポリマーをベースにする超疎水性表面の場合、コストは低いが、得られた超疎水性表面の耐溶剤性、耐腐食性が低く、実用上の問題がある。
粉体そのものを超疎水性(超撥水性)にしたり、また、その超疎水性粉体を用いて超疎水性膜を構成したりすることについての研究は極めて稀であるが、最近の1例を挙げると、2−3μmの大きさの酸化鉄(α−Fe)の粉体が、表面に花びら構造を有することで超疎水性を発現するようになることが見出されている(例えば、非特許文献5参照)。しかしながら、前記非特許文献5で提案された技術はその応用範囲が狭く、工業的に簡便な手法によるものではない。
一方で、自然界における超疎水性の粉体としては、例えば、アメンボの足が超疎水性粉体の集合体に相当すると理解されている。アメンボの足の構造は超疎水性であり、それに起因して発生する水の浮力と表面張力が加わることで、その足の25倍以上の重さの体を水面に浮かばせることが出来、それに弾力が加わることでアメンボは水面を飛ぶように走ることができる(例えば、非特許文献6参照。)。超疎水性粉体の開発は産業上の利用価値が高く、特に自然界に大量に存在するケイ素化合物を原料とし簡便な製造方法で合成できるということになれば、その応用を更に広げることになり、期待の大きい課題である。
Sun et al.,Acc.Chem.Res.,2005,38,644−652 Li et al.,J.Mater.Chem.,2008,18,2276−2280 Feng et al.,J.Am.Chem.Soc.,2004,126,62−63 Erbil et al.,Science,2003,299,1377−1380 Cao et al.,Appl.Phys.Lett.,2007,91.034102 Gao et al.,Nature 2004,432,36 特表2008−508181号公報 米国特許出願公開第2006/029808号明細書
本発明が解決しようとする課題は、シリカを主成分とする粉体そのものを超疎水性にすることにある。より詳しくは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーのフィラメントにシリカが被覆されてなる有機無機複合ナノファイバーの会合体に表面自由エネルギーを低下させることができる、疎水性基を有する化合物を物理吸着してなることを特徴とする超疎水性粉体、及びその粉体の簡便な製造方法を提供することにある。さらには、上記有機無機複合ナノファイバーから直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーを焼成によって除去して得られる、シリカを主構成成分とするナノファイバーの会合体に疎水性基を有する化合物を物理吸着させることで得られる超疎水性粉体とその粉体の簡便な製造方法を提供することにある。
さらには、上記の超疎水性粉体を用いる超疎水性表面を有する構造体とその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、有機物であるポリマーと無機物であるシリカとがナノメートルオーダーで複合化されてなる有機無機複合ナノファイバーの会合体表面を形成するシリカ、または当該有機無機複合ナノファイバーの有機部分が除去されたナノファイバー構造のシリカ表面には、疎水性の官能基を有する化合物を物理吸着する能力があり、物理吸着後に得られる粉体は超疎水性を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、有機無機複合ナノファイバーの会合体を含有する超疎水性粉体であって、該ナノファイバーが、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーのフィラメントが、疎水性基を有する化合物を物理吸着したシリカで被覆されてなるものであることを特徴とする超疎水性粉体とその簡便な製造方法を提供するものである。
更に本発明は、シリカナノファイバーの会合体の該シリカ表面に疎水性基を有する化合物が物理吸着してなることを特徴とする超疎水性粉体とその製造方法を提供するものである。
更に又本発明は、上記で得られた超疎水性粉体を固体基材上に固定してなる、超疎水性表面を有する構造体とその製造方法を提供するものである。
本発明の超疎水性粉体は、任意材質、任意形状の基材表面に塗布することで、あらゆる固体表面を超疎水性に変換させることができる。これは水により錆びる、腐る、汚れる可能性がある金属、金属酸化物、繊維、木材、紙、皮革、プラスチックの保護膜に応用出来る。また、もっと具体的には、建築体、車体、船舶体、容器構造体、パッケージ、ガラス製品、陶器製品(便器、風呂場全体)、プール、水道管、電線、電球、各種カバーなどの構造体の保護膜に応用出来る。さらに、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機などの家電製品およびパソコン、テレビ、携帯電話などの通信用電気製品の表面コーティングにも応用出来る。また、エネルギー変換関連の燃料電池デバイスにも応用可能である。
本発明者らは既に、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーが水性媒体中で自己組織化的に成長する結晶性会合体を反応場にし、溶液中でその会合体表面にてアルコキシシランを加水分解的に縮合させ、シリカを析出させることで、ナノファイバーを基本ユニットにした複雑形状のシリカ含有ナノ構造体(粉体)及びそれらの製法を提供した(特開2005−264421号公報、特開2005−336440号公報、特開2006−063097号公報、特開2007−051056号公報参照。)。
この技術の基本原理は、溶液中で直鎖状ポリエチレンイミン骨格含有ポリマーの結晶性会合体を自発的に生長させることであり、一旦結晶性会合体ができたら、後は単に該結晶性会合体の分散液中にシリカソースを混合して、結晶性会合体表面上だけでのシリカの析出を自然に任せることになる(いわゆる、ゾルゲル反応)。これで得られるシリカ含有ナノ構造体は基本的にナノファイバーを構造形成のユニットとするものであり、それらユニットの空間的配列によって全体の構造体の形状を誘導するため、ナノレベルの隙間が多く、表面積が大きい粉体である。
このような粉体は、自然界での超疎水性を発現するに必要とする基本構造、即ち、ナノファイバーが集合して、マイクロメーター次元の大きさを形成することと非常に良く似ている。従って、この粉体表面を表面張力が低い化学残基で修飾さえすれば、超疎水性を発現することは可能であると考えられる。
このような考え方をもとに、本発明者らは、直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマーにより誘導されたナノファイバーを基本構造とするマイクロメーターオーダーのシリカ含有ナノ構造体(シリカを含有するナノメートルオーダーの基本単位からなる構造体のことを示す。)である粉体表面に疎水性基を導入することで、粉体そのものを超疎水性にすることができる事を見出した。以下、本発明について、詳細に記載する。
なお、本願において、フィラメントとは、本発明で用いる直鎖状ポリエチレンイミン骨格を有するポリマー鎖中にある直鎖状ポリエチレンイミン骨格部分の複数が水分子の存在下で結晶化することにより、ポリマー鎖が相互に会合して繊維状に成長したものである。このフィラメントの表面でゾルゲル反応が起こることによって、該フィラメントがシリカで被覆された有機無機複合ナノファイバーが形成されるが、この反応時に複数の有機無機ナノファイバー間がシリカによって結合されたり、凝集したりすることによって、有機無機ナノファイバーの会合体であるシリカ含有ナノ構造体(粉体)が形成されることになる。
[直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)]
本発明で用いる直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)としては、線状、星状、櫛状構造の単独重合体であっても、他の繰り返し単位を有する共重合体であっても良い。共重合体の場合には、該ポリマー(A)中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)のモル比が20%以上であることが、安定なフィラメントを形成できる点から好ましく、該ポリエチレンイミン骨格(a)の繰り返し単位数が10以上である、ブロック共重合体であることがより好ましい。
前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)としては、結晶性会合体形成能が高いほど好ましい。従って、単独重合体であっても共重合体であっても、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)部分に相当する分子量が500〜1,000,000の範囲であることが好ましい。これら直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)は市販品または本発明者らがすでに開示した合成法(前記特許文献を参照。)により得ることができる。
[シリカ(B)]
本発明で提供する超疎水性粉体は、前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体、又は当該有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体から前記ポリマー(A)を焼成により除去して得られるシリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を基本構造とする。
前記シリカ(B)は、前記ポリマー(A)のフィラメントの存在下、該フィラメント表面でゾルゲル反応によって得られるものであり、該シリカ(B)の形成に必要なシリカソースとしては、例えば、アルコキシシラン類、水ガラス、ヘキサフルオロシリコンアンモニウム等を用いることができる。
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、メトキシシラン縮合体のオリゴマー、テトラエトキシシラン、エトキシシラン縮合体のオリゴマーを好適に用いることができる。さらに、アルキル置換アルコキシシラン類の、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン等、更に、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリメトキシシラン、p−クロロメチルフェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等を、単一で、又は混合して用いることができる。
また、上記シリカソースに、他のアルコキシ金属化合物を混合して用いることもできる。例えば、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、または水性媒体中安定なチタニウムビス(アンモニウムラクテート)ジヒドロキシド水溶液、チタニウムビス(ラクテート)の水溶液、チタニウムビス(ラクテート)のプロパノール/水混合液、チタニウム(エチルアセトアセテート)ジイソプロポオキシド、硫酸チタン、ヘキサフルオロチタンアンモニウム等を用いることができる。
[有機無機複合ナノファイバー(I)]
本発明において、有機無機複合ナノファイバー(I)の大きさは、用いるポリマー(A)の分子量、形状、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)の含有率等、用いるシリカソースの種類や使用割合等によって調整することが可能であり、特に該有機無機複合ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が10以上であるものを容易に製造することができる。
前記有機無機複合ナノファイバー(I)中の前記ポリマー(A)の含有率は5〜30質量%に調整可能であり、該ポリマー(A)は前述の通り、フィラメントの形状として含まれている。
前記有機無機複合ナノファイバー(I)はその生成過程(ゾルゲル反応時)において3次元空間でランダム配列し、2〜100μmの大きさの会合体(シリカ含有ナノ構造体)を形成する。このような会合体からなる粉体の表面積は50〜200m/gの範囲になる。
有機無機複合ナノファイバー(I)及びその会合体の製造方法については、前記した本発明者がすでに提供した特許文献に記載されたいずれの手法であっても良い。
[シリカを主構成成分とするナノファイバー(II)]
上述した有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を加熱焼成すると、形状を維持したまま、その内部に含まれていたポリマー(B)が除去され、シリカのみからなる、またはシリカを主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を得ることができる。通常も焼成条件では、ポリマーは完全に除去され、100%シリカを得ることができる。ここで、シリカを主構成成分とするということは、例えば、焼成が不十分の場合、ポリマー(A)の炭化物等が含まれることを指す。何れの場合でも、ナノファイバーの形状はシリカ(B)によって形成され、シリカ(B)の含有率は通常95質量%以上、好ましくは98〜100質量%である。
焼成温度は500〜800℃であればよく、焼成時間は温度により適宜に設定することができる。500℃よりもっと高い温度では1〜3時間であればよく、500℃付近では2〜6時間以上焼成することが望まれる。
焼成して得られる会合体の構造は焼成前と変わりがなく、ナノファイバー(II)の太さが10〜100nm、アスペクト比が10以上であり、この太さのナノファイバーが3次元空間でランダム配列してなる会合体は2〜100μmの大きさを保ったままである。焼成後に得られる粉体の比表面積は焼成前より大きく、概ね100〜400m/gである。
[疎水化処理及び超疎水性粉体製造方法]
本発明では、超疎水性粉体とするためにナノファイバー(I)又はナノファイバー(II)の会合体表面の自由エネルギーを低下させなければならない。その表面の自由エネルギーを低下させるには、疎水性基を有する化合物(X)、例えば、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、長鎖アルキル基含有化合物(X3)、またはフッ素含有化合物(X4)をシリカ部分に物理吸着させることで超疎水性を容易に達成できる。尚、本発明において「疎水性基を有する化合物」なる表記は、その化合物中に疎水性を示す部分(基)があるか、又は化合物として疎水性を示すものであることをいう。例えば、後述するポリプロピレンオキシド等においては明確な「疎水性基」が存在していないが、水と任意の割合で混和することがない点において疎水性を示す化合物であり、本願では疎水性基を有する化合物として包含する。
前記疎水性ポリマー(X1)としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート類を好適に用いることができる。具体的には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリベンジル(メタ)アクリレート、ポリシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリt−ブチル(メタ)アクリレート、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート等であり、また、汎用のポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニル酢酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等の、水に容易に溶解しないポリマーを挙げることができる。
前記両親媒性ポリマー(X2)としては、例えば、ポリアクリルアミドであるポリNイソブチルアクリルアミド、ポリN、N−ジメチルアクリルアミド等、また、ポリオキサゾリンであるポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリビニルオキサゾリン、ポリフェニルオキサゾリン、ポリプロピレンオキシド等を好適に用いることができる。
前記長鎖アルキル基含有化合物(X3)としては、炭素数6〜22のアルキル基を有する化合物であるアルキルアミン、アルキルカルボン酸、アルキルスルホン酸、アルキルリン酸などを好適に用いることができる。
前記フッ素含有化合物(X4)として、例えば、2,3,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート、DIC株式会社製のFLUONATE K−700,K702,K703,K−704,K−705,K−707,K−708などを好適に用いることができる。
これらの表面エネルギーを低下させうる、疎水性基を有する化合物(X)を効率的に前記ナノファイバー(I)又はナノファイバー(II)の会合体の表面のシリカ(B)に物理吸着させるためには、これらの化合物を単独、又は数種類を溶剤中に溶解させ、その溶液中にナノファイバー(I)又はナノファイバー(II)を分散し、室温、例えば20〜30℃で1〜24時間攪拌することで十分可能である。
前記溶剤としては、前記化合物(X)を溶解させることができると同時に、シリカとも親和性を保つことが望ましい。具体的には、トルエン、四水素化フラン、塩化メチレン、クロロホルム、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、キシレンなどを挙げることができる。
上記溶液中、前記化合物(X)の濃度は1〜5質量%であれば好適に用いることができる。その際、化合物(X)とナノファイバー(I)または(II)の質量比(X)/(I)又は(II)を5/100〜100/100にすることが好ましい。このとき、ナノファイバー(I)又は(II)の濃度が1〜10質量%になるように、前述の溶剤を適宜追加することが好ましい。或いは、予めナノファイバー(I)又は(II)を、化合物(X)を分散させた溶剤と混和する溶剤に分散させておいてから、前記化合物(X)の溶剤に添加し攪拌する方法であっても良い。
一定時間攪拌混合を行なった後、混合物を濾過または遠心分離して、固形分をトルエン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサンなどの溶剤で洗浄し、それを常温乾燥させることで本発明の超疎水性粉体を得ることができる。
上記の手法で得られる超疎水性粉体は、水の濡れ性が全くなく、水に分散しても粉体として水面に浮かぶことしかできない。これは表面自由エネルギーが低い、疎水性基を有する化合物(X)の吸着前では、水中に完全に沈むことと全く異なるものである。
[超撥水性粉体を用いる超疎水性表面]
本発明の超疎水性粉体を固体基材表面に接着固定することで超疎水性表面を有する構造体を得ることができる。接着固定は、該粉体をポリマー溶液、シリカゾル液、または市販の塗料、接着剤などと混合し、その混合液を基材表面に塗布し、必要に応じて乾燥等を行なうことで容易に実現できる。
上記超疎水性表面は、超疎水性粉体が基材表面に固定された状態であり、ポリマーまたはシリカゾル等がバインダーとして連続膜を形成し、その連続膜表面に本発明の超疎水性粉体が一定間隔で分布している。
上記バインダー層に用いることができるポリマーは、疎水性のポリマーであれば特に限定せず用いることができる。疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
また、上記塗膜のバインダー層としては、通常市販の塗料、または市販の接着剤を用いることもできる。
上記で得られる超疎水性表面の接触角は150〜179°の範囲で変えることができる。表面における超疎水性粉体の密度が高ければ高いほど、接触角は向上する。目的とする疎水性のレベルがこれよりも低い、例えば、一般的な疎水性レベルである接触角70〜150°の表面を得るためには、本発明の超疎水性粉体の使用割合を下げ、該粉体の密度を下げれば良いことは勿論である。
上記固体基材としては、バインダー層に用いる材料に応じて選択可能であり、例えば、ガラス、金属、金属酸化物、木材、紙、繊維、プラスチック、ゴム、皮革等が挙げられ、その形状としても特に限定されるものではなく、超疎水性粉体が分散された塗液が塗布できる形状のものであれば良い。
超疎水性粉体を固体基材表面に固定接着する方法としても、特に限定することがなく、該粉体を含む塗液をスピンコーター、バーコーター、ブラシング、スプレーなどの通常の塗布方法で適宜塗布すればよい。
また、塗膜を形成するバインダー層の性質に合わせ、塗布して得られる膜をUV硬化、熱硬化、自然乾燥などの工程で硬化することもできる。
本発明の超疎水性粉体は水以外の有機溶剤には濡れやすく、容易に分散できる。従って、バインダーを溶解または分散できる媒体としては、水以外の溶剤類であればよく、有機溶剤と水との混合媒体でも用いることができる。
表面作製用の塗液中、バインダー構成部分と超疎水性粉体部分との割合としては、バインダー/粉体=60/50〜99/1(質量比)の範囲であればよく、その組成比の範囲で塗液の粉体濃度を適宜に決めることができる。
特に、疎水性表面を作製する際、超疎水性粉体は塗膜の表面に一定に露出状態にしなければならない。そのため、塗膜の厚さを一定範囲、例えば、0.1〜20μmにすることが望ましい。塗膜が薄いほど、粉体が塗膜表面で突起することになり、水の接触角を大きくすることができる。
また、塗膜表面に露出する粉体由来構造体同士の水平距離は膜全体の超疎水性発現にとっては重要な構造要素である。粉体構造体同士の水平距離は1〜20μmであれば超疎水性を充分発現できるが、それ以上の距離でも水の接触角を150°程度まで高くすることもでき、目的とする用途によって、適宜調整することが好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。なお、特に断わりがない限り、「%」は「質量%」を表わす。
[走査電子顕微鏡によるナノファイバーの会合体や粉体の形状分析]
単離乾燥した会合体や粉体を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
[透過電子顕微鏡によるナノ構造体の観察]
粉末状態のサンプルをメタノール中に分散し、それを銅グリッドに乗せ、日本電子株式会社製透過型電子顕微鏡「JEM−2200FS」にて観察した。
[接触角測定]
接触角は自動接触角計Contact Angle System OCA(Dataphysics社製)により測定した。
[示差熱重量分析]
シリカナノファイバーに吸着された疎水性基を有する化合物(X)の含有率をTG−DTA 6300 (SII Nano Technology Inc社製)により測定した。
[比表面積測定]
比表面積はFlow Sorb II 2300(Micrometrics社製)により測定した。
合成例1
[有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体からなる粉体の作製]
特許文献(特開2005−264421号公報、特開2005−336440号公報、特開2006−063097号公報、特開2007−051056号公報)に開示した方法により、形状が異なる粉体を作製した。
<線状のポリエチレンイミン(P5K)の合成>
市販のポリエチルオキサゾリン(数平均分子量500,000、平均重合度5,000、Aldrich社製)100gを、5Mの塩酸水溶液300mLに溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加熱し、その温度で10時間攪拌した。反応液にアセトン50mLを加え、ポリマーを完全に沈殿させ、それを濾過し、メタノールで3回洗浄し、白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末をH−NMR(重水)にて同定したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖エチル基に由来したピーク1.2ppm(CH)と2.3ppm(CH)が完全に消失していることが確認された。即ち、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
その粉末を100mLの蒸留水に溶解し、攪拌しながら、その溶液に15%のアンモニア水500mLを滴下した。その混合液を一晩放置した後、沈殿した粉末を濾過し、その粉末を冷水で3回洗浄した。洗浄後の粉末をデシケータ中で室温(25℃)乾燥し、線状のポリエチレンイミン(P5K)を得た。収量は94g(結晶水含有)であった。ポリオキサゾリンの加水分解により得られるポリエチレンイミンは、側鎖だけが反応し、主鎖には変化がない。従って、P5Kの重合度は加水分解前の5,000と同様である。
<有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体からなる粉末Aの合成>
一定量のP5Kを蒸留水中に混合し、それを90℃に加熱し透明溶液を得た後、全体を3%の水溶液に調製した。該水溶液を室温で自然冷却し、真っ白のP5Kの会合体液を得た。攪拌しながら、その会合体液100mL中に、70mLのMS51(メトキシシランの5量体、)のエタノール溶液(体積濃度50%)を加え、室温で1時間攪拌を続けた。析出した沈殿物をろ過し、それをエタノールで3回洗浄した後、40℃で加熱下乾燥することにより、粉体Aとして16gの会合体を得た。図1に得られた粉体AのSEM写真を示す。ナノファイバーの会合体であることを確認した。
前記で得た粉体Aの熱重量損失分析から、ポリエチレンイミンの含有率が7%であることを確認した。また、比表面積測定を行なった結果、132m/gであった。
合成例2
[シリカを主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体からなる粉体Bの作製]
合成例1で得た粉体A(5g)を空気導入条件下、電気炉にて600℃、2時間加熱し、粉体Aに含まれたポリエチレンイミンを除去し、白い粉体Bを得た。比表面積は208m/gであった。図2に粉体BのSEM写真を示した。焼成後のナノファイバー構造には変化がないことが示唆された。
実施例1
[ポリブチルアクリレートが吸着した超疎水性粉体1の合成]
ポリブチルアクリレート200mgを20mLのトルエンに溶解し、その溶液に200mgの粉体Aを加え、その混合物を室温にて3時間攪拌した。混合液をろ過後、得られた粉体をトルエンで3回洗浄した。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。これは疎水化処理前の粉体Aが水中に完全に沈む傾向と全く異なった。
得られた粉体を両面テープに接着させ、粉体からなる表面を形成させた後、それの接触角を測定したところ、水の接触角は178.4°であった。粉体の膜状態で、超疎水性であることが強く示唆された。これを超疎水性粉体1とする。
実施例2
[ポリメチルメタクリレートが吸着した超疎水性粉体2の合成]
実施例1において、ポリブチルアクリレートの代わりにポリメチルメタクリレートを用いる以外は、実施例1と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。
得られた粉体を用いて実施例1と同様にして水の接触角を測定したところ、174°を超えた。粉体の膜状態で、超疎水性であることが強く示唆された。これを超疎水性粉体2とする。
実施例3
[ポリエチルメタクリレートが吸着した超疎水性粉体3の合成]
実施例1において、ポリブチルアクリレートの代わりにポリエチルメタクリレートを用い、粉体Aの代わりに粉体Bを用いる以外は、実施例1と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。これは疎水化処理前の粉体Bが水中に完全に沈む傾向と全く異なった。熱重量損失の分析結果、ポリマーの吸着率が12.9%であった。
得られた粉末を用いて実施例1と同様にして水の接触角を測定したところ水の接触角は179.7°であった(図3を参照)粉体の膜状態で、超疎水性であることが強く示唆された。これを超疎水性粉体3とする。
図4にこの粉体3のTEM写真を示した。ポリマー吸着前の粉体Bのシリカ表面は平滑であったが、ポリマー吸着後ではシリカ表面に数ナノメートルの大きさの粒が全体に広がっていることが観察された。即ち、ポリマーはナノファイバーの表面にナノメートルオーダーの薄膜を形成している状態であることを確認できた。
図5には、この粉体の熱分析チャートを示した。ポリマー単独の熱分解温度は327℃あたりであるが、粉体3に吸着されたポリマーの耐熱性が向上し、熱分解温度は409℃にシフトした。ナノファイバー表面にナノ薄膜状態で吸着したポリマーは、シリカとナノメートルオーダーでハイブリッド構造を形成したと考えられる。
この粉体3を種々の溶剤に1週間浸漬した後、粉体を濾過、室温乾燥した。処理後の粉体を両面テープに接着させてから、その上に水滴を落とし、濡れ性を調べた。図6に水滴の濡れ状態を示した。水、ヘキサン、トルエンに浸漬後得られた粉体を両面テープに接着した表面では、水滴が球状状態で、濡れ性が全くなかった。しかしながら、メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、THFに浸漬後得られた粉体を両面テープに接着した表面では、いずれも水に濡れる状態であった。
上記濡れ性をチェックした後のテープを乾燥機中放置し、80℃で2時間加熱した。それを取り出し、室温状態で再び濡れ性を調べた。図7に濡れ状態を示した。水、ヘキサン、トルエンに浸漬後の系では、依然濡れる傾向はまったくなく、水滴はまん丸の状態であった。メタノール、エタノール、クロロホルム、アセトン、THFに浸漬後の系でも、表面は水滴に濡れにくく、図6で見えたような水滴の広がりはなく、水滴は楕円状または球状を維持した。
上記図6と図7の結果から、粉体3を非極性または極性溶剤中浸漬しても、表面吸着のポリエチルメタクリレートは脱離しないことを強く示唆する。極性溶剤中浸漬後室温で乾燥した場合、極性溶剤によりシリカナノファイバー表面に吸着したポリマーの微小構造ドメインの表面エネルギーにやや変化が生じ、それが濡れ性を増すことになるが、それを加熱処理することで、表面エネルギーは元の低下状態に回復し、濡れ性を防ぐことになることを強く示唆する。
実施例4
[フッ素含有化合物が吸着した超撥水性粉体4の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにポリ(2,3,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート)200mgを用いる以外は、実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、ポリマーの吸着率が9.8%であった。これを超疎水性粉体4とする。
得られた粉体4を用いて実施例1と同様にして水の接触角を測定したところ179.6°であった。また、30%エチルアルコール含有のアルコール水溶液でも接触角が168°であった。さらに、50%アルコール水溶液でも表面が濡れなかった。尚、実施例3で得られた粉体3では30%アルコール水溶液の接触角は48°である。フッ素原子による表面自由エネルギー低下能はアルコールに対しても発現され、弾き効果を示した結果と考えられる。
実施例5
[テトラデシルアミンが吸着した超撥水性粉体5の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにテトラデシルアミンを用い、室温での攪拌時間を6時間とする以外は、実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、テトラデシルアミンの吸着率は10.5%であった。これを超疎水性粉体5とする。
得られた粉体5を用いて実施例1と同様にして水の接触角を測定したところ175°であった。粉体の膜状態で、超疎水性であることが強く示唆された。
実施例6
[ポリ(エチルオキサゾリン)が吸着した超撥水性粉体6の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにポリ(エチルオキサゾリン)を用いる以外は実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、ポリ(エチルオキサゾリン)の吸着率は11.3%であった。これを超疎水性粉体6とする。
得られた粉体6を用いて実施例1と同様にして水の接触角を測定したところ167°であった。粉体の膜状態で、超疎水性であることが強く示唆された。ポリ(エチルオキサゾリン)は水にも有機溶剤にも溶解する両親媒性ポリマーであるが、粉末Bに吸着されるとポリマーの極性部分がシリカと強く結合し、側鎖のエチル基が表面に向くことで、超疎水性を発現することになると考えられる。
実施例8
[超疎水性粉体3を用いたろ紙上での超疎水性膜(浸漬法)]
水性ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、ノニオン系、不揮発分10%に水を添加して調製)500mgに実施例3で得られた超疎水性粉体3(10mg)を加え、均一に分散した後、その分散液にろ紙を15分間浸漬した。ろ紙を取り出し、室温乾燥後、ろ紙の上に水滴を落としたが、水滴は完全に弾けた。
実施例9
[超疎水性粉体3を用いたろ紙上での超疎水性膜(ブラシ法)]
実施例8で用いた同様な分散液をろ紙上にブラシで塗った。それを室温乾燥した後、表面接触角を測定したところ、接触角は154°であった。ろ紙は水にぬれることがなかった。
実施例10
[超疎水性粉体3を用いたガラス上での超疎水性膜(キャスト法)]
実施例8と同様な分散液を、バーコーターを用い、ガラススライド上にキャストした。これで得たキャスト膜を室温乾燥した後、表面接触角を測定したところ、接触角は166°であった。
実施例11
[超疎水性粉体3を用いた木材上での超疎水性膜(ブラシ法)]
実施例8で用いた同様な分散液を表面処理されていない木の板にブラシで塗った。それを室温乾燥した後、水滴を落としたところ、水は完全に弾かれ、木材表面は濡れなかった。
実施例12
[超疎水性粉体6を用いた牛革上での超疎水性膜(浸漬法)]
実施例8において、超疎水性粉体3の代わりに実施例6で得られた超疎水性粉体6を用いる以外は実施例8と同様にして分散液を調製した。その分散液に表面処理されていない牛革の切り落としを1時間浸漬した。牛革を取り出し、室温乾燥後、その上に水滴を落としたが、水滴は完全に弾け、濡れ性はなくなった。
実施例13
[超疎水性粉体2を用いたガラス管内壁での超疎水性膜(浸漬法)]
実施例8において、超疎水性粉体3の代わりに実施例2で得られた超疎水性粉体2を用いる以外は実施例8と同様にして分散液を得た。この分散液をガラスピペット(内径6mm、長さ8cm)に吸い取り、それを2時間保持した後、液を押し出した。ガラスピペットを60℃で乾燥後、それに水を吸い取って、再び水を押し出すテストを行なった。ガラス壁には水滴が全く付着せず、吸い取った水は重さ低下なしに他の容器に完全移動できた。
比較として、処理していないガラスピペットを用いたときでは、水を吸い取った後、水を押し出すと必ず壁に水滴が付着していることを確認した。
[安定性評価1]
実施例1、3、4、6で得られた超疎水性粉体1、3、4、6を用いて下記に方法で安定性評価を行なった。ガラス瓶に蒸留水30mLをいれ、ここにそれぞれの粉体20mg添加する。ここにスターラーチップを入れ室温(25℃)で7日間攪拌を続けた後、粉体の様子を観測したところ、攪拌を中止するといずれの粉体も水面上に浮き上がり、再び水に沈むことがないことを確認した。
又、実施例と同様にして膜状態での接触角を測定したが、いずれの粉体においても、水中攪拌前の接触角と同じであり、超疎水性が維持されていることを確認した。
更に水中攪拌後の超疎水性粉体4を、実施例と同様にして、30%エチルアルコール含有のアルコール水溶液での接触角を測定したところ、167°であり、性能が維持されていることを確認した。
[安定性評価2]
実施例8で得られた分散液を30℃の恒温槽で7日間保持した後、実施例9と同様にしてろ紙に塗布し乾燥した。乾燥後、水の接触角を測定したところ、156°であり、水性塗料中においても超疎水性が維持されていることを確認した。
合成例1で得た粉体AのSEM写真である。上図:低倍率。下図:高倍率。 合成例2で得た粉体BのSEM写真である。上図:低倍率。下図:高倍率。 実施例3における水接触角写真である 実施例3で得た超疎水性粉体3のTEM写真である。左図:ポリエチルメタクリレートが吸着される前、右図:吸着後 実施例3で得た超疎水性粉体3の熱分析(TG−DTA)チャートである。 実施例3で得た粉体を各種溶剤中処理後作製した膜表面での濡れ性写真である。 図6の粉体膜を80℃で2時間乾燥後、再び水の濡れ性を観察した写真である。

Claims (10)

  1. 有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該ナノファイバー(I)が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントが、疎水性基を有する化合物(X)を物理吸着したシリカ(B)で被覆されてなるものであることを特徴とする超疎水性粉体。
  2. 前記有機無機ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が2以上であり、且つ該有機無機ナノファイバー(I)の会合体の大きさが2〜100μmの範囲である請求項1記載の超疎水性粉体。
  3. 前記疎水性基を有する化合物(X)が、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、炭素数6〜22の長鎖アルキル基含有化合物(X3)、及びフッ素含有化合物(X4)からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項1又は2記載の超疎水性粉体。
  4. シリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該シリカ(B)に疎水性基を有する化合物(X)が物理吸着してなるものであることを特徴とする超疎水性粉体。
  5. 前記ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が2以上であり、且つ該有機無機ナノファイバー(I)の会合体の大きさが2〜100μmの範囲である請求項4記載の超疎水性粉体。
  6. 前記疎水性基を有する化合物(X)が、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、炭素数6〜22の長鎖アルキル基含有化合物(X3)、及びフッ素含有化合物(X4)からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項4又は5記載の超疎水性粉体。
  7. 直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体からなる粉末を溶剤中に分散し、該分散液に疎水性基を有する化合物(X)を混合する工程と、
    前記工程で得られた処理後の粉末を単離する工程と、
    を有することを特徴とする超疎水性粉体の製造方法。
  8. (1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機ナノファイバー(I)の会合体を焼成する工程と、
    (2)工程(1)で得られたシリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体からなる粉末を溶剤中に分散し、該分散液に疎水性基を有する化合物(X)を混合する工程と、
    (3)工程(2)で得られた処理後の粉末を単離する工程と、
    を有することを特徴とする超疎水性粉体の製造方法。
  9. 請求項1〜6の何れか1項記載の超疎水性粉体が固体基材表面に固定されてなることを特徴とする超疎水性表面を有する構造体。
  10. 請求項1〜6の何れか1項記載の超疎水性粉体を溶液中に分散し、該分散液を塗布し乾燥する工程を有することを特徴とする超疎水性表面を有する構造体の製造方法。
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