JP2010138518A - 超疎水性粉体、これを用いる超疎水性表面を有する構造体及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該ナノファイバー(I)が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントが、疎水性基を有する化合物(X)を物理吸着したシリカ(B)で被覆されてなるものであることを特徴とする超疎水性粉体、及びこれらを固体基材上に固定してなる、超疎水性表面を有する構造体。
【選択図】図3
Description
本発明で用いる直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)としては、線状、星状、櫛状構造の単独重合体であっても、他の繰り返し単位を有する共重合体であっても良い。共重合体の場合には、該ポリマー(A)中の直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)のモル比が20%以上であることが、安定なフィラメントを形成できる点から好ましく、該ポリエチレンイミン骨格(a)の繰り返し単位数が10以上である、ブロック共重合体であることがより好ましい。
本発明で提供する超疎水性粉体は、前記直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体、又は当該有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体から前記ポリマー(A)を焼成により除去して得られるシリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を基本構造とする。
本発明において、有機無機複合ナノファイバー(I)の大きさは、用いるポリマー(A)の分子量、形状、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)の含有率等、用いるシリカソースの種類や使用割合等によって調整することが可能であり、特に該有機無機複合ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が10以上であるものを容易に製造することができる。
上述した有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を加熱焼成すると、形状を維持したまま、その内部に含まれていたポリマー(B)が除去され、シリカのみからなる、またはシリカを主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を得ることができる。通常も焼成条件では、ポリマーは完全に除去され、100%シリカを得ることができる。ここで、シリカを主構成成分とするということは、例えば、焼成が不十分の場合、ポリマー(A)の炭化物等が含まれることを指す。何れの場合でも、ナノファイバーの形状はシリカ(B)によって形成され、シリカ(B)の含有率は通常95質量%以上、好ましくは98〜100質量%である。
本発明では、超疎水性粉体とするためにナノファイバー(I)又はナノファイバー(II)の会合体表面の自由エネルギーを低下させなければならない。その表面の自由エネルギーを低下させるには、疎水性基を有する化合物(X)、例えば、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、長鎖アルキル基含有化合物(X3)、またはフッ素含有化合物(X4)をシリカ部分に物理吸着させることで超疎水性を容易に達成できる。尚、本発明において「疎水性基を有する化合物」なる表記は、その化合物中に疎水性を示す部分(基)があるか、又は化合物として疎水性を示すものであることをいう。例えば、後述するポリプロピレンオキシド等においては明確な「疎水性基」が存在していないが、水と任意の割合で混和することがない点において疎水性を示す化合物であり、本願では疎水性基を有する化合物として包含する。
本発明の超疎水性粉体を固体基材表面に接着固定することで超疎水性表面を有する構造体を得ることができる。接着固定は、該粉体をポリマー溶液、シリカゾル液、または市販の塗料、接着剤などと混合し、その混合液を基材表面に塗布し、必要に応じて乾燥等を行なうことで容易に実現できる。
単離乾燥した会合体や粉体を両面テープにてサンプル支持台に固定し、それをキーエンス製表面観察装置VE−9800にて観察した。
粉末状態のサンプルをメタノール中に分散し、それを銅グリッドに乗せ、日本電子株式会社製透過型電子顕微鏡「JEM−2200FS」にて観察した。
接触角は自動接触角計Contact Angle System OCA(Dataphysics社製)により測定した。
シリカナノファイバーに吸着された疎水性基を有する化合物(X)の含有率をTG−DTA 6300 (SII Nano Technology Inc社製)により測定した。
比表面積はFlow Sorb II 2300(Micrometrics社製)により測定した。
[有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体からなる粉体の作製]
特許文献(特開2005−264421号公報、特開2005−336440号公報、特開2006−063097号公報、特開2007−051056号公報)に開示した方法により、形状が異なる粉体を作製した。
市販のポリエチルオキサゾリン(数平均分子量500,000、平均重合度5,000、Aldrich社製)100gを、5Mの塩酸水溶液300mLに溶解させた。その溶液をオイルバスにて90℃に加熱し、その温度で10時間攪拌した。反応液にアセトン50mLを加え、ポリマーを完全に沈殿させ、それを濾過し、メタノールで3回洗浄し、白色のポリエチレンイミンの粉末を得た。得られた粉末を1H−NMR(重水)にて同定したところ、ポリエチルオキサゾリンの側鎖エチル基に由来したピーク1.2ppm(CH3)と2.3ppm(CH2)が完全に消失していることが確認された。即ち、ポリエチルオキサゾリンが完全に加水分解され、ポリエチレンイミンに変換されたことが示された。
一定量のP5Kを蒸留水中に混合し、それを90℃に加熱し透明溶液を得た後、全体を3%の水溶液に調製した。該水溶液を室温で自然冷却し、真っ白のP5Kの会合体液を得た。攪拌しながら、その会合体液100mL中に、70mLのMS51(メトキシシランの5量体、)のエタノール溶液(体積濃度50%)を加え、室温で1時間攪拌を続けた。析出した沈殿物をろ過し、それをエタノールで3回洗浄した後、40℃で加熱下乾燥することにより、粉体Aとして16gの会合体を得た。図1に得られた粉体AのSEM写真を示す。ナノファイバーの会合体であることを確認した。
[シリカを主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体からなる粉体Bの作製]
合成例1で得た粉体A(5g)を空気導入条件下、電気炉にて600℃、2時間加熱し、粉体Aに含まれたポリエチレンイミンを除去し、白い粉体Bを得た。比表面積は208m2/gであった。図2に粉体BのSEM写真を示した。焼成後のナノファイバー構造には変化がないことが示唆された。
[ポリブチルアクリレートが吸着した超疎水性粉体1の合成]
ポリブチルアクリレート200mgを20mLのトルエンに溶解し、その溶液に200mgの粉体Aを加え、その混合物を室温にて3時間攪拌した。混合液をろ過後、得られた粉体をトルエンで3回洗浄した。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。これは疎水化処理前の粉体Aが水中に完全に沈む傾向と全く異なった。
[ポリメチルメタクリレートが吸着した超疎水性粉体2の合成]
実施例1において、ポリブチルアクリレートの代わりにポリメチルメタクリレートを用いる以外は、実施例1と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。
[ポリエチルメタクリレートが吸着した超疎水性粉体3の合成]
実施例1において、ポリブチルアクリレートの代わりにポリエチルメタクリレートを用い、粉体Aの代わりに粉体Bを用いる以外は、実施例1と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。これは疎水化処理前の粉体Bが水中に完全に沈む傾向と全く異なった。熱重量損失の分析結果、ポリマーの吸着率が12.9%であった。
[フッ素含有化合物が吸着した超撥水性粉体4の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにポリ(2,3,4−ヘプタフルオロブチルメタクリレート)200mgを用いる以外は、実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉体は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、ポリマーの吸着率が9.8%であった。これを超疎水性粉体4とする。
[テトラデシルアミンが吸着した超撥水性粉体5の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにテトラデシルアミンを用い、室温での攪拌時間を6時間とする以外は、実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、テトラデシルアミンの吸着率は10.5%であった。これを超疎水性粉体5とする。
[ポリ(エチルオキサゾリン)が吸着した超撥水性粉体6の合成]
実施例3において、ポリエチルメタクリレートの代わりにポリ(エチルオキサゾリン)を用いる以外は実施例3と同様にして粉体を得た。乾燥後の粉末は水中では沈むことなく、水面で浮かぶ状態であった。熱重量損失の分析結果、ポリ(エチルオキサゾリン)の吸着率は11.3%であった。これを超疎水性粉体6とする。
[超疎水性粉体3を用いたろ紙上での超疎水性膜(浸漬法)]
水性ポリウレタン樹脂(DIC株式会社製、ノニオン系、不揮発分10%に水を添加して調製)500mgに実施例3で得られた超疎水性粉体3(10mg)を加え、均一に分散した後、その分散液にろ紙を15分間浸漬した。ろ紙を取り出し、室温乾燥後、ろ紙の上に水滴を落としたが、水滴は完全に弾けた。
[超疎水性粉体3を用いたろ紙上での超疎水性膜(ブラシ法)]
実施例8で用いた同様な分散液をろ紙上にブラシで塗った。それを室温乾燥した後、表面接触角を測定したところ、接触角は154°であった。ろ紙は水にぬれることがなかった。
[超疎水性粉体3を用いたガラス上での超疎水性膜(キャスト法)]
実施例8と同様な分散液を、バーコーターを用い、ガラススライド上にキャストした。これで得たキャスト膜を室温乾燥した後、表面接触角を測定したところ、接触角は166°であった。
[超疎水性粉体3を用いた木材上での超疎水性膜(ブラシ法)]
実施例8で用いた同様な分散液を表面処理されていない木の板にブラシで塗った。それを室温乾燥した後、水滴を落としたところ、水は完全に弾かれ、木材表面は濡れなかった。
[超疎水性粉体6を用いた牛革上での超疎水性膜(浸漬法)]
実施例8において、超疎水性粉体3の代わりに実施例6で得られた超疎水性粉体6を用いる以外は実施例8と同様にして分散液を調製した。その分散液に表面処理されていない牛革の切り落としを1時間浸漬した。牛革を取り出し、室温乾燥後、その上に水滴を落としたが、水滴は完全に弾け、濡れ性はなくなった。
[超疎水性粉体2を用いたガラス管内壁での超疎水性膜(浸漬法)]
実施例8において、超疎水性粉体3の代わりに実施例2で得られた超疎水性粉体2を用いる以外は実施例8と同様にして分散液を得た。この分散液をガラスピペット(内径6mm、長さ8cm)に吸い取り、それを2時間保持した後、液を押し出した。ガラスピペットを60℃で乾燥後、それに水を吸い取って、再び水を押し出すテストを行なった。ガラス壁には水滴が全く付着せず、吸い取った水は重さ低下なしに他の容器に完全移動できた。
実施例1、3、4、6で得られた超疎水性粉体1、3、4、6を用いて下記に方法で安定性評価を行なった。ガラス瓶に蒸留水30mLをいれ、ここにそれぞれの粉体20mg添加する。ここにスターラーチップを入れ室温(25℃)で7日間攪拌を続けた後、粉体の様子を観測したところ、攪拌を中止するといずれの粉体も水面上に浮き上がり、再び水に沈むことがないことを確認した。
実施例8で得られた分散液を30℃の恒温槽で7日間保持した後、実施例9と同様にしてろ紙に塗布し乾燥した。乾燥後、水の接触角を測定したところ、156°であり、水性塗料中においても超疎水性が維持されていることを確認した。
Claims (10)
- 有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該ナノファイバー(I)が、直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントが、疎水性基を有する化合物(X)を物理吸着したシリカ(B)で被覆されてなるものであることを特徴とする超疎水性粉体。
- 前記有機無機ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が2以上であり、且つ該有機無機ナノファイバー(I)の会合体の大きさが2〜100μmの範囲である請求項1記載の超疎水性粉体。
- 前記疎水性基を有する化合物(X)が、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、炭素数6〜22の長鎖アルキル基含有化合物(X3)、及びフッ素含有化合物(X4)からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項1又は2記載の超疎水性粉体。
- シリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体を含有する超疎水性粉体であって、該シリカ(B)に疎水性基を有する化合物(X)が物理吸着してなるものであることを特徴とする超疎水性粉体。
- 前記ナノファイバー(I)の太さが10〜100nm、アスペクト比が2以上であり、且つ該有機無機ナノファイバー(I)の会合体の大きさが2〜100μmの範囲である請求項4記載の超疎水性粉体。
- 前記疎水性基を有する化合物(X)が、疎水性ポリマー(X1)、両親媒性ポリマー(X2)、炭素数6〜22の長鎖アルキル基含有化合物(X3)、及びフッ素含有化合物(X4)からなる群から選ばれる一種以上の化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物である請求項4又は5記載の超疎水性粉体。
- 直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機複合ナノファイバー(I)の会合体からなる粉末を溶剤中に分散し、該分散液に疎水性基を有する化合物(X)を混合する工程と、
前記工程で得られた処理後の粉末を単離する工程と、
を有することを特徴とする超疎水性粉体の製造方法。 - (1)直鎖状ポリエチレンイミン骨格(a)を有するポリマー(A)のフィラメントがシリカ(B)で被覆されてなる有機無機ナノファイバー(I)の会合体を焼成する工程と、
(2)工程(1)で得られたシリカ(B)を主構成成分とするナノファイバー(II)の会合体からなる粉末を溶剤中に分散し、該分散液に疎水性基を有する化合物(X)を混合する工程と、
(3)工程(2)で得られた処理後の粉末を単離する工程と、
を有することを特徴とする超疎水性粉体の製造方法。 - 請求項1〜6の何れか1項記載の超疎水性粉体が固体基材表面に固定されてなることを特徴とする超疎水性表面を有する構造体。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の超疎水性粉体を溶液中に分散し、該分散液を塗布し乾燥する工程を有することを特徴とする超疎水性表面を有する構造体の製造方法。
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