JP2010136529A - 非磁性箇所を有する鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 非磁性箇所以外の部分の鋼材の材質に関わらず適用でき,要処理時間が短く,決まった深さ方向構造の非磁性箇所を持つようにした,非磁性箇所を有する鋼材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 凹状に溝を形成した電磁鋼板10及び電磁鋼板20を準備する。電磁鋼板10の溝に改質金属箔32を挿入し,電磁鋼板20の溝に強磁性金属箔33を挿入する。電磁鋼板20の溝の箇所に電磁石40を,電磁石40と強磁性金属箔33とで電磁鋼板20を挟むように接触させる。電磁石40で強磁性金属箔33を引っ張っている状態で電磁鋼板20を反転させ,電磁鋼板10と電磁鋼板20とを重ね合わせる。溝11,21の箇所を加圧通電することにより,改質金属箔32および強磁性金属箔33を溶融させ,非磁性合金層110を形成する。
【選択図】図5
【解決手段】 凹状に溝を形成した電磁鋼板10及び電磁鋼板20を準備する。電磁鋼板10の溝に改質金属箔32を挿入し,電磁鋼板20の溝に強磁性金属箔33を挿入する。電磁鋼板20の溝の箇所に電磁石40を,電磁石40と強磁性金属箔33とで電磁鋼板20を挟むように接触させる。電磁石40で強磁性金属箔33を引っ張っている状態で電磁鋼板20を反転させ,電磁鋼板10と電磁鋼板20とを重ね合わせる。溝11,21の箇所を加圧通電することにより,改質金属箔32および強磁性金属箔33を溶融させ,非磁性合金層110を形成する。
【選択図】図5
Description
本発明は,回転電機などの鉄心に用いて好適な鋼材に関するものである。さらに詳細には,部分的に非磁性の箇所を有する鋼材の製造方法に関するものである。
電動機や発電機などに用いられる鉄心には一般に,高い透磁率が求められる。しかしながら鉄心には部分的に,コイルや磁石の配置により有効磁気経路とならない箇所もある。例えば,図1のようなステータ80とロータ90においては,ロータ90に磁石91が取り付けられている。このロータ90における,ペリブリッジ部92およびセンターブリッジ部93は,有効磁束Fの経路とはならない。このような箇所にも鉄心が存在していることは,むしろ漏れ磁束により性能を低下させている。そのため,このような箇所の磁気抵抗を高めることが望ましい。とはいえ,全体の強度を維持し磁石91を安定して保持する必要もあるので,この箇所を空隙にするのは好ましくない。
そこで従来から,鉄心のうちこのような箇所を部分的に非磁性化することが行われている。例えば特許文献1には,鉄心の該当箇所を局所的に加熱しそして冷却させることでオーステナイト領域を形成する技術が開示されている。すなわち,基材としては,準安定オーステナイト系ステンレス鋼を冷間圧延により強磁性のマルテンサイト組織としたものを用い,その一部を,この方法で非磁性のオーステナイト組織とするのである。局所的な加熱の手段としてはレーザー照射を挙げている。さらに特許文献2には,対象の磁性部材を局所的に溶融しつつ,外部から改質元素を添加して固溶させ,非磁性化することが開示されている。
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。まず,鉄心の主要部分にマルテンサイト化したオーステナイト系ステンレス鋼を用いるものでは,結晶形の歪み等のため,透磁率が一般的な電磁鋼板より劣り,最大磁束密度が不足する。また,溶融させた状態で改質元素を添加するものでは,長い処理時間を要すること,深さ方向の制御が困難で非磁性層を所望どおりに形成できないこと,といった問題がある。また,改質元素を添加した分の体積増加により処理後の平坦性が悪いという問題もある。
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,非磁性箇所以外の部分の鋼材の材質に関わらず適用でき,要処理時間が短く,決まった深さ方向構造の非磁性箇所を持つようにした,非磁性箇所を有する鋼板の製造方法を提供することにある。
この課題の解決を目的としてなされた本発明の非磁性箇所を有する鋼材の製造方法は,一方の面に凹部を設けた第1の主鋼材と,一方の面に凹部を設けた第2の主鋼材とを,それぞれ凹部を設けた面が上側となるように配置し,第2の主鋼材の凹部に,強磁性金属を挿入し,第1の主鋼材の凹部に,強磁性金属及び第1の主鋼材及び第2の主鋼材とともに溶融して非磁性の合金を形成する合金形成材を挿入し,第2の主鋼材の凹部の下側に磁石を配置して磁石と強磁性金属とで第2の主鋼材を挟みつけつつ,その状態で第2の主鋼材を上下反転させ,強磁性金属と合金形成材とがちょうど重なるように第2の主鋼材を配置し,磁石を第2の主鋼材から除去し,その凹部のある箇所に通電することにより,合金形成材及び強磁性金属を,周囲の鋼材の一部とともに溶融して,第1の主鋼材の残部と第2の主鋼材の残部との間に非磁性合金層を形成するものである。
かかる非磁性箇所を有する鋼材の製造方法は,非磁性箇所となるべき部分にのみ通電して加熱するので,他の部分の材質を問わない。このため,主鋼材を透磁率重視で種類を選択することができる。また,製造工程において,材料同士がかじることがない。
また,上記に記載の非磁性箇所を有する鋼材の製造方法において,合金形成材がNi−Cr系合金であり,強磁性金属がフェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であるとよい。非磁性箇所の電気抵抗率を高くすることができるからである。
また,上記に記載の非磁性箇所を有する鋼材の製造方法において,合金形成材がFe−Cr系の合金または純Crであり,強磁性金属がNi系の強磁性金属であってもよい。非磁性箇所の電気抵抗率を高くすることができるからである。
本発明によれば,非磁性箇所以外の部分の鋼材の材質に関わらず適用でき,要処理時間が短く,決まった深さ方向構造の非磁性箇所を持つようにした,非磁性箇所を有する鋼材の製造方法が提供されている。
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態の非磁性箇所を有する鋼材を用いる回転電機は,図1に示したロータ90のペリブリッジ部92およびセンターブリッジ部93が非磁性箇所とされているものである。センターブリッジ部93は,隣り合う磁石取り付け穴の間の箇所であり,ペリブリッジ部92は,磁石取り付け穴と外周縁との間の箇所である。このようにペリブリッジ部92及びセンターブリッジ部93が非磁性箇所であるため,これらの非磁性箇所からの磁束の漏れは少ない。また,図1に示すように,ロータ90およびステータ80はいずれも,多数枚の電磁鋼板を積層してなるものである。
まず,ロータ90に用いる非磁性箇所を有する電磁鋼板100について説明する。電磁鋼板100は,図2に示すように2枚の電磁鋼板10,20を重ね合わせたものである。そして,電磁鋼板10と電磁鋼板20とは,その間に食い込むように形成された非磁性合金層110を介して接合されている。つまり,電磁鋼板10と非磁性合金層110とは,その接触面で接合されている。また,電磁鋼板20と非磁性合金層110とは,その接触面で接合されている。しかし,電磁鋼板10と電磁鋼板20とは,直接には接合されていない。よって,電磁鋼板10と電磁鋼板20との接触面は,非接合部3である。
続いて,本形態の電磁鋼板100における非磁性箇所の構造を説明する。電磁鋼板100における非磁性箇所は,図2に示す断面構造を有している。図2は,ロータ90を構成する電磁鋼板100の断面図である。図2に示す非磁性箇所Xは,電磁鋼板層1と,非磁性合金層110と,電磁鋼板層2とからなる3層構造となっている。電磁鋼板層1および電磁鋼板層2は主鋼材層である。電磁鋼板層1が図2中下側の表面をなしており,電磁鋼板層2が図中上側の表面をなしている。非磁性合金層110はそれらの間にある。
電磁鋼板層1は,主鋼材である電磁鋼板10そのものの一部分である。そして,電磁鋼板層2は,主鋼材である電磁鋼板20そのものの一部分である。非磁性合金層110は,Feを主成分としてそれにNi,Cr等の合金元素を添加してなる,オーステナイト相の非磁性の合金層である。そして,非磁性合金層110の電気抵抗は電磁鋼板10及び電磁鋼板20に比べて高い。その詳細は,後述する。
かかる非磁性箇所Xにおいては,電磁鋼板層1および電磁鋼板層2のみが磁性体であり,非磁性合金層110は非磁性体である。よって,非磁性箇所Xにおいて有効な磁気経路となりうるのは,電磁鋼板層1および電磁鋼板層2の部分に限られる。すなわち非磁性箇所Xでは,電磁鋼板100の全厚のうちごく限られた部分しか磁気経路となり得ない。このために磁気抵抗が大きく,実質的に非磁性の箇所と見ることができるのである。
図1に示したロータ90のペリブリッジ部92およびセンターブリッジ部93においては,すべての電磁鋼板が図2に示す非磁性箇所Xとなっている。このため,磁石91の磁束はほとんどペリブリッジ部92やセンターブリッジ部93を通らない。よって,磁石91の磁束のほとんどが有効磁束Fとなる。また,電磁鋼板100のうち非磁性箇所X以外の部分は,一般的なFe−Si系のものであり,透磁率が非常に高い。したがって,本形態の非磁性箇所を有する鋼材を用いた回転電機の磁気効率は優れている。
本形態の非磁性箇所を有する電磁鋼板100の製造方法について図3から図9により説明する。本形態の電磁鋼板100に用いる電磁鋼板10には,図3の下方に示すように溝11が形成されている。また,図中上の電磁鋼板20は,反転させたときにちょうど電磁鋼板10と重ね合わさるような形状をしている。つまり,電磁鋼板20の溝21は,電磁鋼板20を反転させた場合に電磁鋼板10の溝11と対応する位置に形成されている。また,溝21は,溝11と同一形状若しくは左右対称形状である。
そして,電磁鋼板10の厚さt1は,ここでは0.3mmとしている。溝11の部分の電磁鋼板10の厚さt2はその半分の0.15mm程度とする。すなわち,溝11の深さは電磁鋼板10の厚さの半分程度である。よって,溝11の部分の電磁鋼板10の厚さt1は,図2中における電磁鋼板層1の厚さよりも大きい。その理由は後述する。なお,このことは,溝11の部分の電磁鋼板10の厚さt2がさほど小さくないことを意味する。つまり,溝11の部分は極端に弱いわけではない。よって,溝11を形成した後の電磁鋼板10の取り扱いにそれほど慎重さが要求されるわけではない。また,電磁鋼板20も電磁鋼板10と同様の形状である。
改質金属箔32のサイズは,溝11をちょうど隙間なく埋める大きさとする。すなわち,改質金属箔32の厚さは溝11の深さと同じである。同様に,強磁性金属箔33のサイズも,溝21をちょうど隙間なく埋める大きさである。
まず,図3に示すように,図中下の電磁鋼板10の溝11に改質金属箔32を挿入する。一方,図中上の電磁鋼板20の溝21にも同様に,強磁性金属箔33を挿入する。ここで,改質金属箔32は,Feのオーステナイト相を安定化する種類の金属またはその合金からなる合金形成材である。例えば,Ni−Cr系の合金を用いることができる。また,強磁性金属箔33は,強磁性を示す金属又は合金である。例えば,フェライト系ステンレス鋼やマルテンサイト形ステンレス鋼を用いることができる。なお,改質金属箔32及び強磁性金属箔33の融点は,電磁鋼板10及び電磁鋼板20の融点よりもやや低い。後述するように,溶融して凝固した後は全体として非磁性の合金となるようにする。
そして,図4に示すように,図中下の電磁鋼板10の上側の表面と溝11に挿入された改質金属箔32の上側の表面とは,段差のないフラットな面である。また,図中上の電磁鋼板20の上側の表面と溝21に挿入された強磁性金属箔33の上側の表面とは,段差のないフラットな面である。
次に,図4に示すように,電磁鋼板20の下側から電磁石40を接触させる。つまり,強磁性金属箔33と,電磁石40とで,電磁鋼板20を挟みつけるような箇所に電磁石40を配置するのである。そして,電磁石40をオンにする。このため,強磁性金属箔33が電磁石40に引き寄せられる。この状態では,強磁性金属箔33が電磁鋼板20から離れることはない。
続いて,電磁石40により強磁性金属箔33が圧着された電磁鋼板20を,強磁性金属箔33が圧着された状態のまま上下反転させる。反転させた後の状態を図5に示す。ここで,電磁石40により強磁性金属箔33を上方に引っ張っているため,強磁性金属箔33は落下しない。
次に,図6に示すように,上下面を逆にした電磁鋼板20を電磁鋼板10に上から接触させる。ここで,図中下の電磁鋼板10の溝11と図中上の電磁鋼板20の溝21とが対向する位置にくるようにするのである。このため,溝11に挿入された改質金属箔32の表面と,溝21に挿入された強磁性金属箔33の表面とがちょうど重なる。
なお,図6に示すように,電磁鋼板10及び改質金属箔32の表面はフラットであり,電磁鋼板20及び強磁性金属箔33の表面はフラットである。このため,溝11に挿入された改質金属箔32または溝21に挿入された強磁性金属箔33が,電磁鋼板10と電磁鋼板20とを重ねる際にかじることがない。
次に,電磁石40をオフにする。そして,図7に示すように,電磁石40を電磁鋼板20から離す。このとき,改質金属箔32と,強磁性金属箔33とが挿入された箇所は,多層構造となっている。この溝11及び溝21の箇所は,下から,電磁鋼板10,改質金属箔32,強磁性金属箔33,電磁鋼板20を順に積み重ねた構造となっている。
次に,電極15,15で電磁鋼板10と電磁鋼板20とを挟み込む。電極15,15で挟み込む箇所は,溝11と,溝21とに,改質金属箔32と,強磁性金属箔33とを挿入した箇所である。電極15,15で電磁鋼板10と電磁鋼板20とを挟み込んだ後,加圧した状態で電極15,15間に通電する。
そして,スポット溶接と類似の要領で,加圧しながら電極15,15間に通電する。加圧の圧力は0.15MPa程度とし,電流値は,改質金属箔32等の面積(cm2 )当たり10kA程度とする。この通電の抵抗発熱により,改質金属箔32及び強磁性金属箔33が溶融する。そして通電終了後に再び凝固することにより,図2に示した非磁性合金層110が形成されるのである。
通電を開始すると,最も速く昇温するのは,図7中,下から電磁鋼板10と改質金属箔32との境目の箇所と,改質金属箔32と強磁性金属箔33との境目の箇所と,強磁性金属箔33と電磁鋼板20との境目の箇所(以下,境目箇所)である。接触抵抗があるからである。
よって,通電を続けることにより,これらの境目箇所付近から溶融し始める。そして,境目箇所の金属が溶融して液状となると,その液状の箇所と接している金属の金属原子も溶融金属に溶け込んでいく。これにより,溶融金属の領域が拡大していくのである。ただし,前述したように,改質金属箔32と強磁性金属箔33の融点は,電磁鋼板10及び電磁鋼板20の融点よりも低い。このため,この段階において,改質金属箔32および強磁性金属箔33が溶融する。一方,電磁鋼板10及び電磁鋼板20の溶融の程度は,改質金属箔32及び強磁性金属箔33より少ない。このため,電極15,15との接触面側は溶融しない(図8参照)。
この状態では,図8に示すように,改質金属箔32及び強磁性金属箔33は完全に溶けて電磁鋼板10及び電磁鋼板20と混ざっている。溝11の箇所の電磁鋼板10や溝12の箇所の電磁鋼板20の厚さは,図7の通電開始前の厚さに比べれば減少している。ただし,電磁鋼板10,電磁鋼板20とも,消失することなく,穴が開くこともなく,残っている。
溶融金属である液状部16が十分な大きさとなれば,この上さらに加熱する必要はない。むしろ,このままさらに加熱を続けると,電磁鋼板10及び電磁鋼板20に穴が開いて溶融金属が電極15,15に融着したり,あるいは外部に流出したりするおそれがある。このためここで通電を終了する。するとその後は,周囲への放熱により次第に温度が低下していく。温度の低下により,溶融金属は凝固する。このとき,空孔ができることはない。この後,電極15,15を電磁鋼板10及び電磁鋼板20から離す(図9参照)。
図9の状態での溶融金属の組成は,Feを主成分とし,改質金属箔32および強磁性金属箔33に由来するNiやCr等を相当程度に含んだものとなっている。このため,凝固するとオーステナイト相となり,非磁性である。また,後述するように電気抵抗は高い。このように溶融金属は,図2に示した非磁性合金層110となる。こうして,図2に示した非磁性箇所Xができあがる。
なお,通電開始から通電終了までの時間は,改質金属箔32および強磁性金属箔33の種類や各部の厚さなどにも左右されるが,おおむね1.8秒程度が適切である。条件によっては,更に短時間とすることも可能である。この時間で,溶融金属の原子は,溶融金属中に十分に拡散する。このため,形成された非磁性金属層110の金属原子の組成分布は,ほとんど均一である。
以上詳細に説明したような手順を用いることにより,次のようなメリットを有する非磁性箇所を有する鋼材の製造方法が実現されている。すなわち,非磁性箇所Xとなるべき部分にのみ通電して加熱するので,他の部分の材質を問わない。このため,電磁鋼板10,20そのものについては,透磁率重視で種類を選択することができる。したがって,磁気効率のよいロータ90が得られる。
また,溝11,21の初期深さや,改質金属箔32や強磁性金属箔33の厚さなどにより,非磁性箇所Xに形成される非磁性合金層110の厚さを調整することができる。さらに,非磁性合金層110の厚さの再現性も良好である。このため,なるべく厚い非磁性合金層110が得られるように種々の条件を定めることにより,非磁性箇所Xに占める電磁鋼板層1及び電磁鋼板層2の厚さをぎりぎりまで小さくすることができる。これにより,無効磁束を極限まで減らすことができる。溝11,21及び改質金属箔32や強磁性金属箔33の形状を自由に選ぶことができるため,形成される非磁性箇所Xの領域も限定されることはない。
また,溝11,21の初期サイズと改質金属箔32や強磁性金属箔33のサイズを一致させておくことにより,加熱の前後での体積変化がほとんどない。このため,空孔もなく,かつ表面が平坦な非磁性箇所Xを得ることができる。よって,非磁性箇所Xを持つことによる強度面での不利がほとんどない。また積み重ねの障害となることもない。
また,加熱するのは非磁性箇所Xとなるべき部分だけであり,電磁鋼板10や電磁鋼板20の全体を加熱するのではない。このため,消費電力が少なくて済む。また,スポット溶接と類似の要領で短い処理時間で非磁性箇所Xを形成できる。このため量産にも適している。
ここで,本形態の非磁性箇所を有する電磁鋼板100の電気抵抗について説明する。電磁鋼板100において,非磁性合金層110の電気抵抗は,それ以外の主鋼材層の電気抵抗よりも大きくなるように設定されている。非磁性合金層110に発生する渦電流を抑制するためである。渦電流とは,電磁誘導効果により金属内に発生する渦状の電流である。この渦電流は,モータの使用時にロータの電磁鋼板内にも発生する。これにより,ロータが発熱し,エネルギー損失を招くこととなる。このエネルギー損失を,渦電流損という。このため,モータにおいては,可能な限りこの渦電流損を小さくすることが好ましい。
渦電流損は,次式,
Pe=ke・(t・f・Bm)2/ρ (1)
Pe:渦電流損
ke:比例定数
t :電磁鋼板の板厚
f :周波数
Bm:最大磁束密度
ρ :電磁鋼板の電気抵抗率
で表される。つまり,渦電流損Peは,電磁鋼板の板厚の2乗に比例し,電磁鋼板の電気抵抗率に反比例する。
Pe=ke・(t・f・Bm)2/ρ (1)
Pe:渦電流損
ke:比例定数
t :電磁鋼板の板厚
f :周波数
Bm:最大磁束密度
ρ :電磁鋼板の電気抵抗率
で表される。つまり,渦電流損Peは,電磁鋼板の板厚の2乗に比例し,電磁鋼板の電気抵抗率に反比例する。
本形態の非磁性箇所を有する電磁鋼板100において,電磁鋼板10と電磁鋼板20との接触面は非接合部3であるため,板厚は薄く,渦電流損は小さい。また,非磁性箇所Xにおける板厚は,その他の箇所に比べて厚い。しかし,非磁性合金層110の電気抵抗は大きいため,非磁性箇所Xにおける渦電流損は大きくない。
この理解のために,非磁性合金層110の電気抵抗について具体例に基づき説明する。図10は,本形態のロータ90を示す図である。前述したように,非磁性箇所Xに発生する渦電流は大きくない。式(1)によれば,非磁性箇所Xの厚さの2乗で渦電流は大きくなる。しかし,本形態の電磁鋼板100は,非磁性合金層110の電気抵抗が大きい。このため,非磁性合金層110における渦電流損は主鋼材層における渦電流損に比べてそれほど大きくない。以下に,詳細を示す。
改質金属箔32としてNiとCrの合金(Ni:80wt%,Cr:20wt%)を,強磁性金属箔33としてフェライト系ステンレス鋼(SUS430)を使用した場合の例を表1に示す。NiとCrの合金は,Feとともに合金化することにより,高い電気抵抗率を示す。出来上がった非磁性合金層の電気抵抗は,電磁鋼板のそれに比べて非常に大きい。
また,式(1)によれば,板厚が2倍になれば,渦電流損は4倍となる。一方,表1より,非磁性合金層110の電気抵抗率は,100〜120μΩcmであり,電磁鋼板10の電気抵抗率30〜80μΩcmに比べて大きい。このため,本形態の電磁鋼板100を用いたロータ90における渦電流損は,単に板厚を2倍にしたものに比べて抑制されている。
ここで,本形態の変形例について説明する。本形態では,下側の電磁鋼板10の溝11にNi−Cr系合金を,上側の電磁鋼板20の溝21にフェライト形ステンレス鋼を挿入した。しかし,下側の電磁鋼板10の溝11にFe−Cr系の合金または純Crを挿入し,上側の電磁鋼板20の溝21にNi系の強磁性合金を用いても構わない。製造工程において,強磁性金属箔33が落下するおそれがなく,加圧通電後に高比抵抗かつ非磁性の非磁性合金層が形成されていればよいからである。
以上詳細に説明したように,本形態のロータ190に用いる非磁性箇所を有する電磁鋼板100は,非磁性合金層110を介して2枚の電磁鋼板を部分的に接合したものである。本形態の非磁性箇所を有する電磁鋼板100は,電磁鋼板10及び電磁鋼板20を有効な磁気経路とするものである。一方,非磁性合金層110は,有効な磁気経路とはならない。すなわち,十分な最大磁束密度が確保できる。このため,非磁性合金層110を所望の箇所に形成することにより,強度と,有効な磁束経路とを確保する電磁鋼板が実現されている。
また,次のようなメリットを有する非磁性箇所を有する鋼材の製造方法が実現されている。すなわち,非磁性箇所Xとなるべき部分にのみ通電して加熱するので,他の部分の材質を問わない。このため,電磁鋼板10及び電磁鋼板20そのものについては,透磁率重視で種類を選択することができる。したがって,磁気効率のよいロータ90が得られる。
また,溝11,21の初期深さや,改質金属箔32や強磁性金属箔33の厚さなどにより,非磁性箇所Xに形成される非磁性合金層110の厚さを調整することができる。さらに,非磁性合金層110の厚さの再現性も良好である。このため,なるべく厚い非磁性合金層110が得られるように種々の条件を定めることにより,非磁性箇所Xに占める電磁鋼板層1及び電磁鋼板層2の厚さをぎりぎりまで小さくすることができる。これにより,無効磁束を極限まで減らすことができる。溝11,21及び改質金属箔32や強磁性金属箔33の形状を自由に選ぶことができるため,形成される非磁性箇所Xの領域も限定されることはない。
また,溝11,21の初期サイズと改質金属箔32や強磁性金属箔33のサイズを一致させておくことにより,加熱の前後での体積変化がほとんどない。このため,空孔もなく,かつ表面が平坦な非磁性箇所Xを得ることができる。よって,非磁性箇所Xを持つことによる強度面での不利がほとんどない。また積み重ねの障害となることもない。
また,加熱するのは非磁性箇所Xとなるべき部分だけであり,電磁鋼板10や電磁鋼板20の全体を加熱するのではない。このため,消費電力が少なくて済む。また,スポット溶接と類似の要領で短い処理時間で非磁性箇所Xを形成できる。このため量産にも適している。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,改質金属箔32や強磁性金属箔33及び溝の形状を円板形状にしてもよい。改質金属箔32や強磁性金属箔33が回転したとしても,位置決めに変更が生じることがなく,挿入が容易であるためである。
また,電磁石の代わりに永久磁石を用いても構わない。板厚,溝の深さ等は例示であり,別の値であってもよい。電磁鋼板10と電磁鋼板20とで,材質,厚み等を変えてもよい。また,電磁鋼板に限らず,その他の鋼材においても本発明の製造方法を用いることができる。また,2枚の電磁鋼板を重ね合わせるかわりに,3枚以上の鋼材を重ね合わせるようにしてもよい。その際,溝を有する上下の鋼材に挟まれる鋼材には,貫通孔を設けておけばよい。
1,2…電磁鋼板層
3…非接合部
10,20…電磁鋼板
11,21…溝
15…電極
32…改質金属箔
33…強磁性金属箔
40…電磁石
100…非磁性箇所を有する電磁鋼板
110…非磁性合金層
X…非磁性箇所
3…非接合部
10,20…電磁鋼板
11,21…溝
15…電極
32…改質金属箔
33…強磁性金属箔
40…電磁石
100…非磁性箇所を有する電磁鋼板
110…非磁性合金層
X…非磁性箇所
Claims (3)
- 一方の面に凹部を設けた第1の主鋼材と,一方の面に凹部を設けた第2の主鋼材とを,それぞれ凹部を設けた面が上側となるように配置し,
前記第2の主鋼材の凹部に,強磁性金属を挿入し,
前記第1の主鋼材の凹部に,前記強磁性金属及び前記第1の主鋼材及び前記第2の主鋼材とともに溶融して非磁性の合金を形成する合金形成材を挿入し,
前記第2の主鋼材の凹部の下側に磁石を配置して前記磁石と前記強磁性金属とで前記第2の主鋼材を挟みつけつつ,その状態で前記第2の主鋼材を上下反転させ,
前記強磁性金属と前記合金形成材とがちょうど重なるように前記第2の主鋼材を配置し,
前記磁石を前記第2の主鋼材から除去し,
その凹部のある箇所に通電することにより,前記合金形成材及び前記強磁性金属を,周囲の鋼材の一部とともに溶融して,第1の主鋼材の残部と第2の主鋼材の残部との間に非磁性合金層を形成することを特徴とする非磁性箇所を有する鋼材の製造方法。 - 請求項1に記載の非磁性箇所を有する鋼材の製造方法において,
前記合金形成材がNi−Cr系合金であり,
前記強磁性金属がフェライト系ステンレス鋼またはマルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする非磁性箇所を有する鋼材の製造方法。 - 請求項1に記載の非磁性箇所を有する鋼材の製造方法において,
前記合金形成材がFe−Cr系の合金または純Crであり,
前記強磁性金属がNi系の強磁性金属であることを特徴とする非磁性箇所を有する鋼材の製造方法。
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