JP2015198475A - ロータコア - Google Patents
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Abstract
【課題】ブリッジ部における漏れ磁束をなくすことが可能なロータコアを提供する。【解決手段】電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートCが積層された円筒状のコア本体1に、その中心軸方向に連通する複数の磁石孔2が設けられたロータコア10において、コア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に配され、コア本体1の磁石孔2よりも外周面側に位置する外側コア1aと内周面側に位置する内側コア1bとを連結する複数の連結部材3を備える。連結部材3の各々が非磁性材料で構成されており、コア本体1の外側コア1aと内側コア1bとが連結部材3のみで連結されている。【選択図】図1
Description
本発明は、ラジアルギャップ型回転電機用ロータに用いられるロータコアに関する。
ラジアルギャップ型回転電機は、回転軸を中心として回転可能に配設されたロータと、このロータの径方向にギャップを隔てて配設されたステータとを備える回転電機である。かかる回転電機の一つとして、埋込磁石(IPM:Interior Permanent Magnet)型と呼ばれる回転電機が知られている。一般的なIPM型回転電機用ロータは、電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートが回転軸の軸方向に積層された円筒状のロータコアと、当該ロータコアに設けられた複数の磁石孔に埋設された複数の磁石と、を備えている。
通常、ロータコアにおいて、コア本体の磁石孔よりも外周面側に位置する外側コアと内周面側に位置する内側コアは、磁石孔の端部からコア本体の外周部までの肉厚が薄肉のブリッジ部によって連結されていることが多いが、軟磁性体から成る電磁鋼板で形成されたブリッジ部は磁束が流れる経路(磁路)となる。ブリッジ部を流れる磁束は「漏れ磁束」と呼ばれており、この漏れ磁束が増大すると、磁石磁束の有効利用率が低減し、回転電機の効率低下を招く。このため、ブリッジ部で発生する漏れ磁束に対し、何らかの対策を講じる必要がある。
そこで、ブリッジ部に対する潰し加工を施して圧縮残留応力を付与することで当該ブリッジ部の磁化特性を劣化させ、漏れ磁束を低減させる技術が下記特許文献1に開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、ブリッジ部における漏れ磁束を低減させることは可能であっても、漏れ磁束を完全になくすことまではできない。漏れ磁束を完全になくすことができれば、回転電機のより一層の高効率化を図ることが可能となるため、更なる改善策が望まれる。
本発明は、かかる事情に鑑みて為されたものであり、ブリッジ部における漏れ磁束をなくすことが可能なロータコアを提供することを目的としている。
本発明は、電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートが積層された円筒状のコア本体に、その中心軸方向に連通する複数の磁石孔が設けられたロータコアであって、前記コア本体の外周部と前記磁石孔の端部との間に配され、該コア本体の該磁石孔よりも外周面側に位置する外側コアと内周面側に位置する内側コアとを連結する複数の連結部材を備え、前記連結部材の各々が非磁性材料で構成されており、前記コア本体の前記外側コアと前記内側コアとが前記連結部材のみで連結されていることを特徴とする。
本発明のロータコアは、前記コア本体及び前記連結部材のうちの一方に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とが嵌め合わされた嵌合部を備えることを特徴とする。
本発明のロータコアは、前記連結部材が、前記中心軸方向に対して傾斜した傾斜面を備え、前記傾斜面に対向する前記コア本体の対向面が、該傾斜面に対し平行であることを特徴とする。
本発明のロータコアにおいて、前記連結部材は、前記コア本体を構成する複数の前記コアシートごとに独立した複数の連結片が前記中心軸方向に積層された積層体で構成されていることを特徴とする。
本発明のロータコアは、前記連結部材が、非磁性金属で構成されており、前記コア本体と前記連結部材とが、溶接、ろう接、又は接着により一体的に接合されていることを特徴とする。
本発明のロータコアは、前記非磁性材料が、樹脂、セラミックス、ガラス、又はセメントから選択される一又は複数の材料を含むことを特徴とする。
本発明のロータコアは、前記連結部材の表面が粗面であることを特徴とする。
本発明に係るロータコアによれば、コア本体を構成する外側コアと内側コアとが非磁性材料から成る連結部材のみで連結されているため、ブリッジ部に相当する部分が磁路にならず、当該部分への磁束の流れ込みを遮断することができる。これにより、漏れ磁束をなくすことが可能となり、回転電機の更なる高効率化を図ることが可能となる。また、外側コアと内側コアとを連結するブリッジ部に相当する連結部材における漏れ磁束の発生がなくなることで、当該連結部材を極端に薄肉化する必要もなくなり、ロータコアに所要の機械的強度と耐遠心力強度を付与することができる。
前記コア本体及び前記連結部材のうちの一方に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とが嵌め合わされた嵌合部を備えた本発明のロータコアによれば、コア本体における各外側コア及び内側コアと連結部材との連結に機械的な結合要素が介入するため、それぞれの連結強度をより向上させることができる。とりわけ、ロータ回転時の耐遠心力強度が高められるので、高速回転仕様の高性能型回転電機に特に適したロータを提供することが可能となる。
前記連結部材が、前記中心軸方向に対して傾斜した傾斜面を備え、前記傾斜面に対向する前記コア本体の対向面が、該傾斜面に対し平行である本発明のロータコアによれば、その製造時に連結部材の位置決めをラフに行うことができ、ロータコアの生産性を高めることができる。また、コア本体に対する連結部材の固定位置も高精度に定まるため、製品誤差が生じ難いという利点もある。
前記連結部材が、前記コア本体を構成する複数の前記コアシートごとに独立した複数の連結片が前記中心軸方向に積層された積層体で構成されている本発明のロータコアによれば、連結部材を構成する各連結片において、積層方向に隣接する連結片同士による積層間での短絡を防ぐことができ、渦電流損を抑制することができる。
前記連結部材が、非磁性金属で構成されており、前記コア本体と前記連結部材とが、溶接、ろう接、又は接着により一体的に接合されている本発明のロータコアによれば、比較的剛性の高い連結部材とコア本体とが金属同士の接合により固定されているので、接合強度の劣化がほとんど生じず、耐久性に優れている。
前記非磁性材料が、樹脂、セラミックス、ガラス、又はセメントから選択される一又は複数の材料を含む本発明のロータコアによれば、連結部材とコア本体とを、例えば、射出成形、押出成形、もしくは接着剤などの手法により接合できるため、両者を比較的低温で連結させることができる。このため、コア本体の連結部材との連結部近傍における磁気特性の劣化を抑制することができる。
前記連結部材の表面が粗面である本発明のロータコアによれば、コア本体と連結部材との接合強度をより高めることができ、ロータコアの機械的強度が増すという利点がある。
以下、本発明に係るロータコアの実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明において「中心軸方向」とは、円筒状のコア本体の中心軸に対し平行な方向を指すものとする。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態のロータコア10は、円筒状のコア本体1に、当該コア本体1の中心軸方向に連通する複数の磁石孔2が設けられたIPM型回転電機用ロータの構成部品である。ロータコア10は、コア本体1の外周部と各磁石孔2の端部との間に配された複数の連結部材3を備えている。コア本体1の中央部には回転軸Sを挿通させるための軸孔が形成されており、焼嵌め、締まり嵌め等の嵌め合い、溶接など公知の手法で回転軸Sがコア本体1に固定される。また、磁石孔2の各々に不図示の磁石が埋設されると、当該磁石の起磁力によってコア本体1の各磁石孔2よりも外周面側に位置する外側コア1aの各々が磁化され、コア本体1の外周側に複数の磁極が形成される。
コア本体1は、表面を絶縁処理された、厚さ0.2〜1mm、より好ましくは、0.3〜0.5mm程度の軟磁性体から成る電磁鋼板を所定形状に形成した複数枚のコアシートCが中心軸方向に積層されて成る積層体である。各コアシートCは、シート本体の中央部に円形孔を有すると共に、当該円形孔の周囲に、両端部がシート本体の外周へ向けて屈曲した略凹形状のスリット孔が周方向に等ピッチで4つ設けられた中空円板状に形成されている。これら円形孔及び各スリット孔が、それぞれ前記中心軸方向に連通するように各コアシートCが積層されたことで上記の軸孔及び各磁石孔2が形成されている。本実施形態では、電磁鋼板から成るブリッジ部が各コアシートCに存在せず、シート本体がスリット孔を挟んで外側部分と内側部分とに分断されている。このため、各磁石孔2の端部が屈曲部からコア本体1の外周部まで延びていると共に、当該外周部の近傍に連結部材3が設けられている。
コア本体1において、上記のように積層された複数枚のコアシートCの各々は、以下に例示する公知の手法により一体的に固定されている。図示を省略するが、例えば、ボルトとナットやリベット等の固定具を用いる手法、各コアシートCに設けられたダボカシメやV突起カシメ等のコアカシメにより各々の積層間を固定する手法、ワニス含浸や被膜溶融により各コアシートC同士を接着する手法、及び、各コアシートCの積層間を溶接する手法などが挙げられる。コア本体1の機械的強度を高めるために、各コアシートCが、これらの手法を組み合わされて、より強固に固定されていても構わない。
また、コア本体1において、各磁石孔2よりも外周面側に位置する複数の外側コア1aと、内周面側に位置する内側コア1bとは、連結部材3のみによって連結されている。すなわち、本実施形態では、各外側コア1aと内側コア1bとを連結する全てのブリッジ部がコアとは異なる別部材の連結部材3で構成されており、当該連結部材3の各々が、ブリッジ部としての役割を担っている。したがって、本実施形態のコア本体1には、外側コア1aと内側コア1bとを繋ぐコア部分が一切存在せず、外側コア1aと内側コア1bの間には、各連結部材3が配された部分を除き、磁石孔2を含むスリット状の空隙Gが形成されている。
連結部材3は、非磁性材料で構成されている。当該連結部材3を非磁性材料で構成することで、外側コア1aと内側コア1bとに繋がる磁路が分断され、ブリッジ部に相当する部分への磁束の流れ込みが遮断される。連結部材3を構成する非磁性材料としては、例えば、非磁性金属、樹脂、セラミックス、ガラス、及びセメントなどが挙げられ、これらの材料から一つの材料を任意に選択することが可能である。あるいは、これらの非磁性材料から選択された複数の材料を含む複合材料を採用してもよい。なお、連結部材3の外面は粗面に形成されていることが望ましい。これにより、コア本体1と連結部材3の接合強度が高められ、ロータコア10の機械的強度が増す。
とりわけ、非磁性金属製の連結部材3では、渦電流が生じる可能性があるため、コア本体1の各コアシートCを構成する電磁鋼板よりも電気抵抗値の高い材料を用いる方がより望ましい。これにより、渦電流損による回転電機の効率低下を抑制することができる。そのような非磁性金属として、例えば、ステンレス鋼材(SUS)、真鍮、アルミニウム等の非磁性合金が挙げられる。本実施形態の連結部材3は、各磁石孔2の形状・寸法に応じて、前記の非磁性金属材料を予め所定の形状・寸法に成形した角棒状の成形部材から構成されている。
連結部材3とコア本体1との固定手段についても特に限定はなく、当該連結部材3の材質に応じて好ましい手法を適宜選択することが可能である。例えば、本実施形態のように連結部材3が非磁性金属で構成されている場合、コア本体1と各連結部材3とを、溶接、ろう接(ろう付け、はんだ付け)、又は接着などの手法により一体的に接合することができる。非磁性金属の連結部材3は剛性が比較的高く、また、当該連結部材3とコア本体1とが金属同士の接合により固定されているので、接合強度の劣化がほとんど生じず、耐久性に優れている。
これに対して、連結部材3の材料が、樹脂の場合であれば射出成形、押出成形、接着など、セラミックスやガラスの場合であれば接着剤等を用いた接着など、セメントの場合であれば押出成形などの手法により、コア本体1と各連結部材3とを一体的に接合することができる。これらの材料から成る連結部材3を適用すれば、当該連結部材3とコア本体1とを比較的低温で連結させることができる。このため、コア本体1の連結部材3との連結部近傍における磁気特性の劣化を抑制することができ、回転電機の効率低下を防ぐことができる。
また、本実施形態のロータコア10は、コア本体1と連結部材3とが嵌め合わされた嵌合部4を複数箇所に備えている。具体的には、図2に示すように、コア本体1の外周部近傍において中心軸方向の一端から他端まで延びた溝状の凹部41a,41bが、外側コア1a及び内側コア1bの各々に形成されており、連結部材3の一部(この部分を凸部42a,42bと称す)がこれらの凹部41a,41bに嵌め合わされて嵌合部4が形成されている。外側コア1a側の凹部41aと内側コア1b側の凹部41bとは、当該外側コア1aと内側コア1bとの間の空隙Gを挟んで対向しており、他の空隙Gよりも部分的に拡幅している。この拡幅した部分の空隙Gを埋めるようにして連結部材3がコア本体1に固定されている。
次に、本実施形態に係るロータコア10の製造方法について説明する。なお、以下の説明は、代表的な一つの実施例を例示したものであり、他の製造方法によりロータコア10を製造することも当然可能である。
まず、コアシートCの原材料となる電磁鋼板を準備する。電磁鋼板としては、例えば、鉄にケイ素やシリコーン等を含有させた軟磁性体材料を、一定幅を有する厚さ0.2〜1mm、より好ましくは、0.3〜0.5mm程度の薄板状に圧延し、これを巻き取ってロール状に形成したものが挙げられる。当該電磁鋼板は、圧延方向に磁化容易軸を有する方向性電磁鋼板であってもよく、あるいは、磁化容易軸がランダムな方向に配置された、いわゆる無方向性電磁鋼板であってもよい。また、電磁鋼板の表面には、絶縁被膜をコーティングするための表面処理が施される。
続いて、一又は複数の金型を用いて、準備した電磁鋼板を所定形状に打ち抜く順送プレス成形を行い、多数枚のコアシートCを打抜き形成する。コアシートCは、その平面形状を一回の打抜きで成形することが可能な一の金型を用いて一体的に形成してもよく、あるいは、コアシートCの外周、内周(円形孔)、各スリット孔、及び上記の凹部41a,41bを構成する切欠き等の各構成別に対応した複数の金型を用いて、ロールの長手方向へ搬送される電磁鋼板を前記の構成ごとに順次打ち抜いて段階的に形成してもよい。本実施例では、この時点で、コアシートCが、凹部41a,41bを構成する切欠きよりも外周側に電磁鋼板から成るブリッジ部を有する状態のまま、各コアシートCを次工程へと搬送する。
続いて、打抜き形成された複数枚のコアシートCを上記のように積層すると共に、各コアシートCの積層間を上記の何れかの手法により固定して一体化し、円筒状の積層体を形成する。本実施例のように、積層体の外周部と各磁石孔2の端部との間に電磁鋼板から成るブリッジ部を有する状態で各コアシートCを一体化しておけば、生産時の取扱い性が良好になる。また、積層体が形成された時点で、上記凹部41a,41bが、電磁鋼板から成るブリッジ部よりも内周面側の位置に形成されるので、複雑かつ微細な加工を別途行う必要もない。
続いて、予め準備しておいた非磁性金属製の連結部材3を、前記積層体に形成された凹部41a,41bの各々に嵌め合わせるようにして中心軸方向へ挿入し、上記の固定手段(溶接、ろう接など)によって各連結部材3を積層体に固定する。そして、当該積層体に固定された各連結部材3よりもさらに外周側にある電磁鋼板製のブリッジ部の各々を、例えば、カッターで切断、もしくはレーザ等により溶断(熱切断)して、コア本体1から切り離す。このような手順で各ブリッジ部をコア本体1から切り離すことで、ロータコア10の平面形状をほとんど真円に近い形状に保持することができ、回転電機に当該ロータコア10を用いたロータを組み込んだ際にステータとの間に形成されるエアギャップを均一にすることができるという利点がある。こうして、本実施形態のロータコア10が製造されるのである。
なお、電磁鋼板から成るブリッジ部をコア本体1から切り離す工程は、ロータの製造工程の一部に組み込まれた形で行うこともできる。例えば、焼嵌め等により回転軸Sを前記積層体に固定した後、電磁鋼板から成るブリッジ部をコア本体1から切り離すようにしてもよい。そして、磁石孔2の各々に磁石を埋設するとともに、中心軸方向に両端側から非磁性の端板で各磁石孔2を覆うことにより、IPM型回転電機用ロータが完成する。
本実施形態のロータコア10によれば、コア本体1を構成する外側コア1aと内側コア1bとを非磁性材料から成る連結部材3のみで連結したことで、各外側コア1aと内側コア1bの各々を機械的に接合して一体化しつつ、これらが磁気的には分断された状態を実現することができる。そのため、ブリッジ部としての役割を担う連結部材3の各々が磁路にならず、連結部材3への磁束の流れ込みを完全に遮断することができる。これにより、漏れ磁束を完全になくすことが可能となり、回転電機の更なる高効率化を図ることが可能となる。また、外側コア1aと内側コア1bとを連結するブリッジ部に相当する連結部材3における漏れ磁束の発生がなくなることで、当該連結部材3を極端に薄肉化する必要もなくなり、ロータコア10に所要の機械的強度と耐遠心力強度を付与することができる。
さらに、本実施形態のロータコア10によれば、上述したような嵌合部4を備えたことで、コア本体1における各外側コア1a及び内側コア1bと連結部材3との連結に機械的な結合要素が介入するため、それぞれの連結強度をより向上させることができる。とりわけ、嵌合部4を有することによって、ロータ回転時の耐遠心力強度が高められるので、高速回転仕様の高性能型回転電機に特に適したロータを提供することが可能となる。
以上、本発明の実施形態に係るロータコア10について説明したが、本発明に係るロータコアは、その他の形態で実施することができる。なお、以下に示す他の実施形態及びその変形例において、上記のロータコア10と実質的に共通する構成に関する詳細な説明は適宜省略する。
例えば、図3に示すように、嵌合部4を形成する凹部41a,41b及び凸部42a,42b各々の形状をやや複雑化させることで、コア本体1における各外側コア1aと内側コア1bとの連結強度を高めるだけでなく、コア本体1の中心軸方向に対し直交する平面内における任意の方向へ加わる力に対する耐久強度も相補的に高めることができる。具体的には、図3(a)〜(e),(g)及び(h)に示すように、嵌合部4がコア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に位置する部分(ブリッジ部に相当する部分)よりも拡幅された部分を有する形状や、図3(f)に示すように、嵌合部4が円弧状に湾曲した形状となるような構成が挙げられる。
詳しくは、図3(a)に示すように、嵌合部4を形成する凹部41a,41b及び凸部42a,42bが平面視で台形状である場合、コア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に位置する部分(ブリッジ部に相当する部分)を上底とすると、当該上底の幅よりもその両端側へ張り出した直角三角形状の部分が拡幅部43a,43bを構成する。これら拡幅部43a,43bが引っ掛かりとなって外側コア1a及び内側コア1bを連結部材3に掛止させるように作用することで、外側コア1a及び内側コア1bと連結部材3との各嵌合部4における機械的な結合強度をより増大させることができる。この拡幅部43a,43bを設けることで、とりわけロータコアの耐遠心力強度を高めることが可能となる。
なお、嵌合部4に設ける拡幅部43a,43bの形態については、多種の変形例が考えられる。例えば、当該拡幅部43a,43bは、コア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に位置する部分(ブリッジ部に相当する部分)に対し、必ずしも両側へ拡幅されている必要はなく、片側にのみ張り出した形態であっても構わない(図3(b),(d))。また、拡幅部43a,43bは平面視で曲線状の部分を含んだ形態であってもよい(図3(c),(g))。さらに、拡幅部43a,43bが嵌合部4全体のうち少なくとも一部に設けられた形態で実施することもできる(図3(d),(e),(g),(h))。あるいは、コア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に位置する部分(ブリッジ部に相当する部分)からの延長部分を円弧状に湾曲させて、上記した引っ掛かりの要素を付加することも可能である(図3(f))。
また、図4に示すように、連結部材3が、コア本体1の中心軸方向に対して傾斜した傾斜面31を備え、この傾斜面31に対向する位置に配されたコア本体1の対向面11が、当該傾斜面31に対し平行となるような形態で実施してもよい。連結部材3の傾斜面31は、図4(a)に示すように、コア本体1の中心軸方向において一端側から他端側まで一様に傾斜したテーパ形状であってもよいし、図4(b)に示すように、コア本体1の中心軸方向における一端側から他端側に至るまでに傾斜方向が異なる複数の斜面が複合された複合傾斜面で構成されていてもよい。コア本体1の対向面11については、連結部材3の傾斜面31の形状に応じて、その傾斜角度を決定すればよい。
なお、連結部材3の傾斜面31が、図4(a)に示すような、先細りしたテーパ形状である場合は、連結部材3を中心軸方向へ挿入してコア本体1に対する位置合わせを行う。一方、連結部材3の傾斜面31が、図4(b)に示すような、くびれ形状を成す複合傾斜面である場合は、電磁鋼板から成るブリッジ部をコア本体1から切り離した後、コア本体1の外周面に形成される開口部からコア本体1の対向面11に沿って内側へ押し入れるようにしてコア本体1に対する位置合わせを行う。このように、連結部材3に傾斜面31を設けつつ、コア本体1側にも当該傾斜面31に対応する対向面11を設けることで、本発明に係るロータコアの製造時における連結部材3の位置決めをラフに行うことができ、当該ロータコアの生産性を高めることができる。また、コア本体1に対する連結部材3の固定位置も高精度に定まるため、製品誤差が生じ難いという利点もある。
また、図5に示すロータコア20のような形態で実施してもよい。ロータコア20において、連結部材3の各々は、コア本体1を構成する複数のコアシートCごとに独立した複数の連結片Lが中心軸方向に積層された積層体で構成されている。連結片Lは、非磁性金属であり、好ましくは、コアシートCを構成する電磁鋼板よりも電気抵抗値の高い非磁性金属材料が用いられる。具体的には、上記と同様、ステンレス鋼材(SUS)、真鍮、アルミニウム等の非磁性合金が挙げられる。その他、例えば、金、銀、銅等の非磁性金属が用いられていてもよい。なお、連結片Lの表面には、電磁鋼板と同様、絶縁被膜がコーティングされている。
当該実施形態では、一枚のコアシートCにつき、電磁鋼板から成るブリッジ部の全てが連結片Lに置換されており、複数の当該連結片Lによってシート本体のスリット孔を挟んだ外側部分Caと内側部分Cbとが連結されている。一枚のコアシートCごとに、電磁鋼板から成るブリッジ部を連結片Lに置換する手段としては、例えば、溶接、ろう接、又は接着などの手法により、連結片Lを電磁鋼板に接合する方法が挙げられる。なお、コアシートCおよび連結片Lは何れも金属であることから、抵抗溶接による圧接が望ましいと考えられる。あるいは、ホットプレスによるカシメなどの手法を用いて当該連結片Lへの置換をプレス加工と同時に行うことも可能である。
また、当該実施形態では、一のスリット孔につき一方のブリッジ部のみを連結片Lに置換した後に、他方のブリッジ部を連結片Lに置換する。これを4つのスリット孔の各々について、別々もしくは同時に行う。このような手順で連結片Lへの置換を行うことで、コアシートCの外周形状をほとんど真円に近い形状に維持することができ、コア本体1を高精度の円筒状に形成することが可能となる。これにより、回転電機に当該ロータコア20を用いたロータを組み込んだ際にステータとの間に形成されるエアギャップが均一化されるという利点が得られる。
当該実施形態に係るロータコア20によれば、コア本体1のブリッジ部に相当する部分が、何れも非磁性金属製の連結片Lが中心軸方向に積層された積層体から成る連結部材3で構成されているため、上記のロータコア10と同様、各外側コア1aと内側コア1bの各々を機械的に接合して一体化しつつ、これらが磁気的には分断された状態を実現することができる。したがって、当該ロータコア20においても、上記のロータコア10と同様の作用・効果を奏する。しかも、連結部材3を構成する各連結片Lにおいて、積層方向に隣接する連結片L同士による積層間での短絡を防ぐことができ、渦電流損を抑制することができる。
また、図6に示すように、連結部材3は、コア本体1の外周部と磁石孔2の端部との間に位置する部分(ブリッジ部に相当する部分)が、嵌合部4の凹部41a,41bに嵌め合わされた凸部42a,42bよりも拡幅した形状のものであってもよい。連結部材3において漏れ磁束が生じない分、ブリッジ部の肉厚に関する自由度が高いため、ロータコアの強度設計に対する自由度も大きく向上している。これにより、機械的強度をより一層高めたロータコアを提供することができる。また、ブリッジ部の肉厚を増大できる分、嵌合部4の形状等もより複雑化することができ、耐遠心力強度も相乗的に高めることも可能である。
さらに、図7に示すように、コア本体1を構成している外側コア1a及び内側コア1b各々の所定位置に凸部42a,42bが設けられていると共に、連結部材3側に対応する凹部41a,41bが設けられていてもよい。これらが嵌め合わされて形成された嵌合部4であっても、本発明の目的を達することができると同時に、上記の各実施形態及びその変形例に係るロータコアと同様の作用・効果を奏する。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
例えば、上記の実施形態に係るロータコア20では、電磁鋼板から成るブリッジ部の全てが非磁性金属製の別部材から成る連結片Lに置換されたコアシートCを用いたが、この連結片Lに相当する部分(すなわち、電磁鋼板から成るブリッジ部)の各々が、シート本体のスリット孔を挟んだ外側部分Caと内側部分Cbとを磁気的に分断できる程度に非磁性化されていればよい。電磁鋼板を非磁性化する手段として、代表的には、当該電磁鋼板の鋼材組織をオーステナイト化する方法が挙げられる。コアシートCにおけるブリッジ部に相当する部分の電磁鋼板の鋼材組織をオーステナイト化することで、その鋼材組織がオーステナイト組織に変態し、シート本体全体のうちブリッジ部に相当する部分のみが電磁鋼板から非磁性鋼板へと改質される。こうした電磁鋼板の非磁性化は、例えば、以下のような方法で行うことができる。
電磁鋼板を上記と同様にプレス成形して、コアシートCを所定形状に打抜き形成する。このとき、非磁性化する部分(電磁鋼板から成るブリッジ部)の肉厚を通常よりも大きめに形成するようにして、当該部分にオーステナイト安定化元素をセットするための孔や切欠き等を設ける。オーステナイト安定化元素としては、例えば、C、Ni、Mn、Moなどの元素が挙げられる。これらの元素から成る棒材、板材、線材、又は元素粉末とバインダとを混合した混合材料等を、前記の孔、切欠き等が形成された部分にセットする。そして、オーステナイト安定化元素がセットされた部分に対して固溶化熱処理を行う。なお、この固溶化熱処理は、例えばレーザ照射などの局所的な加熱により行うことが望ましい。これにより、非磁性化の対象となる部分以外の電磁鋼板の熱による磁気特性劣化を防ぐことができる。このような工程を経て、ブリッジ部の電磁鋼板が非磁性化されるのである。
また、オーステナイト安定化元素としてCを用いる場合、固溶化熱処理時における鋼材組織への拡散が比較的低い温度段階で開始するため、例えば、鋼材の融点近くまでの高温加熱を要することなく電磁鋼板の鋼材組織をオーステナイト組織へ変態させることができる。そのため、電磁鋼板の表面にコーティングされた絶縁被膜の融点よりも低い温度で固溶化熱処理を行うことが可能となり、積層方向に隣接するコアシートC同士による積層間での短絡を防止し渦電流損を抑制することができるという利点が得られる。しかも、他の加熱処理工程(例えば、焼鈍など)に付随させる形で上記の非磁性化処理を同時に行うことも可能であり、生産性を高められるという相乗的効果も得られる。
このほか、磁石孔2の形状は、円弧状、V字状のほか、直線状、コの字状、W形状などの他の形状に任意に設計変更することができる。また、磁石孔2の数は、偶数である限り、増減しても構わない。
さらに、上記のロータコアは、何れもステータの内側に配されるインナロータに適用されるものとして説明したが、本発明は、ステータの周囲を取り囲むように配されるアウタロータに適用することも可能である。この場合、磁石孔の端部はコア本体の内周面側へ向けて屈曲した形状となり、連結部材で構成されるブリッジ部についてもコア本体の内周部側に配されることとなる。
1 コア本体
1a 外側コア
1b 内側コア
2 磁石孔
3 連結部材
4 嵌合部
10 ロータコア
11 対向面
20 ロータコア
31 傾斜面
41a 凹部
41b 凹部
42a 凸部
42b 凸部
C コアシート
L 連結片
S 回転軸
1a 外側コア
1b 内側コア
2 磁石孔
3 連結部材
4 嵌合部
10 ロータコア
11 対向面
20 ロータコア
31 傾斜面
41a 凹部
41b 凹部
42a 凸部
42b 凸部
C コアシート
L 連結片
S 回転軸
Claims (7)
- 電磁鋼板を所定形状に形成した複数のコアシートが積層された円筒状のコア本体に、その中心軸方向に連通する複数の磁石孔が設けられたロータコアであって、
前記コア本体の外周部と前記磁石孔の端部との間に配され、該コア本体の該磁石孔よりも外周面側に位置する外側コアと内周面側に位置する内側コアとを連結する複数の連結部材を備え、
前記連結部材の各々が非磁性材料で構成されており、
前記コア本体の前記外側コアと前記内側コアとが前記連結部材のみで連結されていることを特徴とするロータコア。 - 前記コア本体及び前記連結部材のうちの一方に設けられた凸部と、他方に設けられた凹部とが嵌め合わされた嵌合部を備えることを特徴とする請求項1に記載のロータコア。
- 前記連結部材が、前記中心軸方向に対して傾斜した傾斜面を備え、
前記傾斜面に対向する前記コア本体の対向面が、該傾斜面に対し平行であることを特徴とする請求項1に記載のロータコア。 - 前記連結部材は、前記コア本体を構成する複数の前記コアシートごとに独立した複数の連結片が前記中心軸方向に積層された積層体で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のロータコア。
- 前記連結部材が、非磁性金属で構成されており、
前記コア本体と前記連結部材とが、溶接、ろう接、又は接着により一体的に接合されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一つに記載のロータコア。 - 前記非磁性材料が、樹脂、セラミックス、ガラス、又はセメントから選択される一又は複数の材料を含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一つに記載のロータコア。
- 前記連結部材の表面が粗面であることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一つに記載のロータコア。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014073946A JP2015198475A (ja) | 2014-03-31 | 2014-03-31 | ロータコア |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN106712335A (zh) * | 2016-06-12 | 2017-05-24 | 上海英磁新能源科技有限公司 | 一种抗漏磁低损耗驱动电机设计 |
JP2017112705A (ja) * | 2015-12-16 | 2017-06-22 | 富士電機株式会社 | 永久磁石式回転電機及びその製造方法 |
JP2019140843A (ja) * | 2018-02-14 | 2019-08-22 | アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 | 回転電機用ロータ |
-
2014
- 2014-03-31 JP JP2014073946A patent/JP2015198475A/ja active Pending
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