JP2010133049A - 炭素繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Takaya Suzuki
貴也 鈴木
Hidekazu Yoshikawa
秀和 吉川
Hiroshi Kimura
洋 木村
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Abstract

【課題】圧縮強度などの圧縮特性に優れた炭素繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】前駆体繊維を大気雰囲気中で200〜280℃で繊維比重を増加させつつ酸化させる耐炎化処理を行うに際し、繊維比重が1.185〜1.195の延伸倍率切替繊維比重に達するまでの耐炎化処理前期段階における延伸倍率を1〜1.2倍にし、前記延伸倍率切替繊維比重を超えた以降の耐炎化処理後期段階における延伸倍率を前記耐炎化処理前期段階における延伸倍率よりも降下させることにより、耐炎化処理前期段階延伸倍率/耐炎化処理後期段階延伸倍率を1より大きくして繊維比重が1.35以下の耐炎化繊維を得、次いで前記耐炎化繊維を不活性雰囲気中で800〜1800℃で炭素化することを特徴とするクリップ強度/ストランド引張強度が74%以上である炭素繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維軸方向の圧縮特性に優れた炭素繊維及びその製造方法に関する。
従来、炭素繊維製造用の前駆体繊維を原料として用い、これに耐炎化処理を施して耐炎化繊維を得ること、更にこの耐炎化繊維に炭素化処理を施して高性能炭素繊維を得ることは広く知られている。また、この方法は工業的にも実施されている。
近年、炭素繊維を利用する複合材料[例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)など]の工業的な用途は、大きく広がりつつある。複合材料として使用する炭素繊維に、向上が求められる機械的物性として、繊維軸方向の引張強度だけでなく、繊維軸方向の圧縮強度も重要であることが最近認識され始め、これらの物性向上について種々の提案がされている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1、2には、湿式紡糸によるアクリル繊維プリカーサーを酸化性雰囲気中で熱処理して比重が1.36〜1.40g/cm3の耐炎化繊維を得、これを不活性雰囲気中で熱処理して表面積比が1.10以上1.30未満、結晶サイズLcが1.4〜2.0 nm、ねじり弾性率が17GPa以上の炭素繊維を製造することが開示されている。
このように、特許文献1、2に記載の発明は、ねじり弾性率を規定している特許ではあるが、繊維軸方向の圧縮強度を規定する記載はない。また、圧縮強度に関する炭素繊維の物性の向上も不充分である。
特開2002−339170号公報(特許請求の範囲) 特開2002−194626号公報(特許請求の範囲)
本発明者は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、クリップ強度、特にストランド引張強度に対するクリップ強度の比率(クリップ強度/ストランド強度)が、繊維軸方向の圧縮特性、複合材料の耐衝撃性の指標となることに注目した。
この強度比率が高比率の炭素繊維は、前駆体繊維を大気雰囲気中で延伸しながら酸化させて繊維比重を増加させる耐炎化処理に際し、従来よりも低比重範囲で前駆体繊維を延伸することにより繊維配向性を高めた耐炎化繊維を得、これを炭素化処理することにより得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した炭素繊維及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 クリップ強度(MPa)/ストランド引張強度(MPa)が74%以上である炭素繊維。
〔2〕 前駆体繊維を大気雰囲気中で200〜280℃で繊維比重を増加させつつ酸化させる耐炎化処理を行うに際し、繊維比重が1.185〜1.195の延伸倍率切替繊維比重に達するまでの耐炎化処理前期段階における延伸倍率を1〜1.2倍にし、前記延伸倍率切替繊維比重を超えた以降の耐炎化処理後期段階における延伸倍率を前記耐炎化処理前期段階における延伸倍率よりも降下させることにより、耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する耐炎化処理前期段階延伸倍率の比率(耐炎化処理前期段階延伸倍率/耐炎化処理後期段階延伸倍率)を1より大きくして繊維比重が1.35以下の耐炎化繊維を得、次いで前記耐炎化繊維を不活性雰囲気中で800〜1800℃で炭素化することを特徴とする〔1〕に記載の炭素繊維の製造方法。
本発明の炭素繊維は、曲げ方向の脆性も含め繊維軸方向の圧縮特性に優れた炭素繊維であり、この圧縮特性のうちでも、特にクリップ強度が良好である。クリップ強度以外にも、繊維軸方向の圧縮強度、複合材料として用いたときの衝撃後圧縮強度などの圧縮特性にも優れている。
本発明の製造方法によれば、耐炎化工程の後期段階で延伸倍率を低下させることにより、過度の延伸による耐炎化処理中の配向の乱れや欠陥の発生を防止する。従って、この耐炎化繊維を1800℃以下で炭素化した炭素繊維は結晶子サイズが過度に大きくならず、圧縮特性の優れた炭素繊維が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維は、曲げ方向の脆性が低いことが特徴である。この曲げ方向脆性は、クリップ強度(MPa)が低いこと、特にクリップ強度(MPa)/ストランド引張強度(MPa)が低いことで評価される。
本発明の炭素繊維は、クリップ強度(MPa)/ストランド引張強度(MPa)が74%以上、好ましくは74〜80%である。クリップ強度(MPa)/ストランド引張強度(MPa)が74%未満の場合は、特に曲げ方向に対して脆性となるため、複合材料用炭素繊維として好ましくない。
クリップ強度については、クリップ強度測定方法のところで後述するように、クリップ強度は曲げ方向に負荷応力を加えた際における破断負荷応力から求められる。図1に示すように、曲げ方向負荷応力を炭素繊維2の軸方向に分解すると、曲げの外側にはA1、A2の延伸応力が掛かり、曲げの内側にはB1、B2の圧縮応力が掛かる。
このように、炭素繊維の破断強度においては、炭素繊維のクリップ強度は、曲げ方向の脆性の指標となる。なお、炭素繊維のクリップ強度は、炭素繊維の圧縮強度の影響を強く受けるため、圧縮特性の指標にもなる。また、炭素繊維の圧縮特性は、クリップ強度以外にも後述する衝撃後の圧縮強度(CAI)、単繊維断面方向圧縮強度でも評価される。
なお、上述したように、炭素繊維のクリップ強度は、炭素繊維の圧縮強度の影響を強く受けるが、炭素繊維のストランド引張強度には影響をさほど強く受けない。例えば、本発明の炭素繊維には、ストランド引張強度が低いにも拘らずクリップ強度が高いものもある。そのため、本発明の炭素繊維の物性評価には、強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)が特に適している。
本発明の炭素繊維における強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)以外の物性評価では、クリップ強度は、3700MPa以上が好ましく、3700〜5000MPaがより好ましい。
単繊維圧縮強度は、炭素繊維単繊維の繊維軸方向の圧縮強度である。この単繊維圧縮強度は、炭素繊維のグラファイト結晶の結晶サイズや配向度などの影響を受ける。そのため、炭素繊維のストランド引張弾性率によって変化する。
例えば、弾性率が240〜250GPaであれば、単繊維圧縮強度は1450MPa以上が好ましく、1500〜2000MPaがより好ましい。また、弾性率が310〜320GPaであれば、単繊維圧縮強度は1200MPa以上が好ましく、1230〜1800MPaがより好ましい。なお、単繊維圧縮強度は、炭素繊維自体の脆性の影響も受ける。
衝撃後の圧縮強度(CAI)は、複合材料に衝撃を与えた後の複合材料の圧縮強度である。この圧縮強度は、複合材料の圧縮特性の影響だけでなく、複合材料の耐衝撃性の影響も強く受ける。この複合材料の耐衝撃性は、用いる樹脂や繊維の特性の影響を受ける。
複合材料の耐衝撃性に影響する繊維の特性としては、炭素繊維の繊維軸方向の圧縮特性やストランド引張弾性率などがあげられる。この弾性率は、後述するように炭素繊維の製造工程における炭素化温度の影響を強く受ける。また、炭素繊維の繊維直径にも影響を強く受ける。
そのため、CAIの好ましい範囲は、炭素繊維のストランド引張弾性率によって変わる。例えば、弾性率が240〜250GPaであれば、CAIは305MPa以上が好ましく、310〜500MPaがより好ましい。また、弾性率が310〜320GPaであれば、CAIは265MPa以上が好ましく、270〜450MPaがより好ましい。
結晶配向度は、80%以上が好ましく、80〜85%がより好ましい。ストランド引張強度は、4000MPa以上が好ましく、4500〜6500MPaがより好ましい。ストランド引張弾性率は、200〜400GPaが好ましい。
本発明の炭素繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。
<前駆体繊維>
本発明の炭素繊維の原料である前駆体繊維については、最も高品位の炭素繊維を得る中間原料として適した耐炎化繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル(PAN)系前駆体繊維が好ましい。なお、PAN系前駆体繊維以外には、ピッチ系、フェノール系、セルロース系、レーヨン系等の前駆体繊維を用いることもできる。
PAN系前駆体繊維は、公知の方法に従って、例えばアクリロニトリルを90質量%以上含有する単量体を重合した単独重合体又は共重合体を含む紡糸溶液を、湿式又は乾湿式紡糸法において紡糸・水洗・乾燥・延伸等の処理を行うことによって得ることができる。共重合する単量体としては、アクリル酸メチル、イタコン酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸等が好ましい。前駆体繊維の比重は通常1.150〜1.180である。
<耐炎化繊維>
このようにして得られる前駆体繊維を、本発明の炭素繊維の製造方法に従って耐炎化処理して耐炎化繊維を得る。
本例の炭素繊維の製造方法における耐炎化処理過程では、上記前駆体繊維を大気などの酸化性ガス雰囲気中で炉内最高温度を200〜280℃、好ましくは240〜260℃に設定した耐炎化炉において前駆体繊維を酸化させる耐炎化処理を行う。この耐炎化処理により、繊維比重は増加する。この耐炎化処理に際し、繊維比重が1.185〜1.195、好ましくは1.187〜1.193の延伸倍率切替繊維比重に達するまでを耐炎化処理前期段階とする。耐炎化処理前期段階における延伸倍率は1〜1.2倍、好ましくは1〜1.1倍である。
前記延伸倍率切替繊維比重を超えた後、耐炎化処理が終了するまでを耐炎化処理後期段階とする。この耐炎化処理後期段階における延伸倍率は、前記耐炎化処理前期段階における延伸倍率よりも降下させる。即ち、耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する耐炎化処理前期段階延伸倍率の比率(耐炎化処理前期段階延伸倍率/耐炎化処理後期段階延伸倍率)を1より大きく、好ましくは1.01〜1.2にする。
以上の耐炎化処理を施すことで、繊維比重が1.35以下、好ましくは1.335〜1.345の耐炎化繊維が得られる。耐炎化繊維の繊維比重が1.35より大きいと、炭素繊維の比重が低下し、緻密な構造が得られないため、クリップ強度、単繊維圧縮強度、CAIが低下し好ましくない。
なお、耐炎化炉内最高温度以外に、酸化性ガスの風速、酸素濃度などによっても、耐炎化繊維の繊維比重の変化は影響を受けるので、耐炎化炉内最高温度のみで耐炎化処理条件を制御することは容易ではない。しかし、耐炎化処理するに際し、耐炎化炉内最高温度は最も重要な操作条件である。そのため、耐炎化処理条件は、先ず耐炎化炉内最高温度で調節し、酸化性ガスの風速、酸素濃度などを適宜調節することによって、耐炎化繊維の繊維比重を制御することが適当である。
耐炎化炉内最高温度が200℃未満の場合は、耐炎化処理が不充分であり、炭素化処理工程において単糸切れが多く発生し、安定した生産を行うことができなくなるので好ましくない。しかも、得られる炭素繊維の強度が低下するので好ましくない。耐炎化炉内最高温度が280℃を超える場合は、得られる耐炎化繊維の繊維比重が過剰になり、この耐炎化繊維を炭素化処理で得られる炭素繊維のクリップ強度、CAI、単繊維断面方向圧縮強度が低下するので好ましくない。
耐炎化処理前期段階における延伸倍率が1倍未満の場合は、得られる耐炎化繊維の配向度が不足し、得られる炭素繊維のストランド引張弾性率やストランド引張強度が低下するばかりでなく、結晶配向度が低下すると共に、クリップ強度、CAI、単繊維断面方向圧縮強度が低下するので好ましくない。耐炎化処理前期段階における延伸倍率が1.2倍を超える場合は、糸切れが起こり易いので好ましくない。
延伸倍率切替繊維比重が1.185未満のところで延伸を緩和する場合は、得られる炭素繊維の結晶配向度が低下すると共に、クリップ強度、CAI、単繊維断面方向圧縮強度が低下するので好ましくない。延伸倍率切替繊維比重が1.195を超えるところで延伸を緩和する場合は、得られる炭素繊維のクリップ強度、CAI、単繊維断面方向圧縮強度などの強度が低下するので好ましくない。この強度低下は、比重1.195を超える領域での過度の延伸が原因となり、繊維に過度の負荷がかかってしまい、微小欠陥が生ずることによるものと推測される。
延伸倍率比(耐炎化処理前期段階延伸倍率/耐炎化処理後期段階延伸倍率)が1以下の場合は、ストランド引張弾性率やストランド引張強度が高くなる程にはクリップ強度は高くならない。即ち、強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)が低下するので好ましくない。また、CAI、単繊維断面方向圧縮強度が低下するので好ましくない。
<炭素化処理>
上記耐炎化繊維を、不活性雰囲気中で炉内最高温度を800〜1800℃、好ましくは 1000〜1700℃に設定した炭素化炉において炭素化することにより本発明の炭素繊維は得られる。炭素化炉内最高温度が800℃未満の場合は、ストランド引張弾性率やストランド引張強度が低下するので好ましくない。
このようにして得られた炭素繊維は、圧縮特性の指標となるクリップ強度の良好な炭素繊維である。
なお、炭素化炉内最高温度が1400℃を超える場合は、ストランド引張弾性率、ストランド引張強度、クリップ強度、強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)は高いが、結晶子サイズが大きくなり、CAI、繊維断面方向圧縮強度などの圧縮強度関係の物性が低下する。そのため、圧縮強度関係の物性が良好であることが要求される場合は、炭素化炉内最高温度は1400℃以下が好ましく、1300℃以下がより好ましく、1200℃以下が特に好ましい。
炭素繊維には、その高機能化に伴い、ストランド引張弾性率が高いことと、ストランド引張強度、クリップ強度、強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)が高いこととの両立が要求される場合もある。この場合には、炭素化炉内最高温度は1400℃以上が好ましく、1600℃以上がより好ましく、1700℃以上が特に好ましい。
炭素繊維には、ストランド引張弾性率、ストランド引張強度、クリップ強度、強度比(クリップ強度/ストランド引張強度)、CAI、繊維断面方向圧縮強度の何れもの物性バランスが重要な要素となる場合もある。この場合には、炭素化炉内最高温度は1100〜1750℃が好ましく、1200〜1700℃がより好ましい。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。また、各実施例及び比較例における処理条件、並びに、耐炎化繊維及び炭素繊維の物性についての評価方法は以下の方法により実施した。
<比重>
アルキメデス法により測定した。試料繊維はアセトン中にて脱気処理し測定した。
<ストランド引張強度(C)、ストランド引張弾性率>
炭素繊維のストランド引張強度[C(MPa)]、ストランド引張弾性率(GPa)は、JIS R 7608に規定された方法により測定した、エポキシ樹脂含浸ストランド物性である。
<クリップ強度(D)>
図2は、クリップ強度測定装置の概略図であり、この測定装置を用いてクリップ強度[D(MPa)]を測定した。図2中、2は炭素繊維であり、炭素繊維2の両端を固定用土台で固定した。炭素繊維2の中央部を、オートグラフ6の下部に備えたピン8に掛けた。次いで、上方(X方向)に向けて負荷を掛けて炭素繊維2が破断した時の負荷からクリップ強度[D(MPa)]を求めた。
<クリップ強度/ストランド引張強度[強度比C/D(%)]>
上記クリップ強度(D)とストランド引張強度(C)とから算出し、%で示した。
<衝撃後の圧縮強度(CAI)>
CAIの測定には、サイジングを行った後の炭素繊維及び東邦テナックス社製エポキシ樹脂を使用し、炭素繊維目付け190g/m2、樹脂含有率33%の一方向性プリプレグを作製し、[+45°/0°/−45°/90°]3Sの擬似等法に積層した。オートクレーブ中で温度180℃、圧力0.6MPaで2時間加熱硬化し、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を得た。
このCFRPについて、JIS K 7089(1996)に従い、0度方向が152.4mm、90度方向が101.6mmの長方形に切り出し、この中央に落錘衝撃(30.5Jの衝撃エネルギー)を与えた。衝撃試験は落錘型衝撃試験機(Dynatup社製GRC-8250)を用いて、衝撃後、供試体の損傷面積は、超音波探傷試験機(キャノン社製M610)にて測定した。衝撃後、供試体の強度試験は、供試体の上から25.4mmでサイドから25.4mmの位置に、歪みゲージを左右各1本ずつ貼付けて、同様に表裏に合計4本/体の歪みゲージを貼付けた後、試験機(島津製作所製オートグラフAG-100TB型)のクロスヘッド速度を1.3mm/minとし、供試体の破断まで荷重を負荷した。この破断時の荷重負荷からCAI(MPa)を求めた。
<単繊維断面方向圧縮強度>
島津微小圧縮試験機MCT−W200を用いて繊維軸に対して直角の方向から、直径50μmのフラット圧子で単繊維の表面を押した。顕微鏡で破壊状態を観察し、単繊維表面が破断した時点の荷重を測定した。この破断時の荷重負荷から単繊維断面方向圧縮強度(MPa)を求めた。
<結晶子サイズ、結晶配向度>
X線回折装置:RIGAKU社製RINT2200、コンピュータ:RIGAKU社製RINT2000シリーズ解析ソフトを使用し、回折角26°における結晶子サイズを回折パターンより、結晶配向度を半値幅より求めた。
実施例1
アクリロニトリル95質量%/アクリル酸メチル4質量%/イタコン酸1質量%よりなる共重合体紡糸原液を湿式紡糸し、水洗・乾燥・延伸・オイリングして繊度1.28dtex、フィラメント数 12,000の前駆体繊維を得た。
この前駆体繊維を加熱空気中、炉内最高温度を250℃に設定した熱風循環式耐炎化炉において表1に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理し、表1に示す耐炎化処理後期段階終了繊維比重(耐炎化繊維比重)のPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1200℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表1に示す諸物性の繊維直径7μm、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維を得た。
比較例1〜3
実施例1で得られた前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表1に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理し、表1に示す耐炎化処理後期段階終了繊維比重(耐炎化繊維比重)のPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1200℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表1に示す諸物性の繊維直径7μm、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維を得た。
比較例4
実施例1で得られた前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表1に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理した。しかし、前期延伸倍率Aが高すぎるために、工程の通過性が悪く、耐炎化繊維を得ることはできなかった(表1中に×で示す)。
比較例5
実施例1で得られた前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表1に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理し、表1に示すPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1200℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表1に示す諸物性の繊維直径7μm、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維を得た。後期延伸倍率Bが低くすぎたために、炭素繊維の配向度が低下し、そのため、得られた炭素繊維のストランド強度、クリップ強度は低いものであった。
比較例6
実施例1で得られた前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表1に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化繊維比重が1.365になるまで耐炎化処理し、表1に示すPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1200℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表1に示す諸物性の繊維直径7μm、ストランド引張弾性率240GPaの炭素繊維を得た。耐炎化繊維比重が高すぎたため、得られた炭素繊維の構造が緻密にならず、クリップ強度は低いものであった。
実施例2
実施例1で得られた共重合体紡糸原液を湿式紡糸し、水洗・乾燥・延伸・オイリングして繊度0.72dtex、フィラメント数 24,000の前駆体繊維を得た。
この前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表2に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理し、表2に示す耐炎化処理後期段階終了繊維比重(耐炎化繊維比重)のPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1700℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表1に示す諸物性の繊維直径5μm、ストランド引張弾性率315GPaの炭素繊維を得た。
比較例7
実施例2で得られた前駆体繊維を、熱風循環式耐炎化炉において表2に示す耐炎化処理前期段階延伸倍率(前期延伸倍率A)、延伸倍率切替繊維比重、耐炎化処理後期段階延伸倍率(後期延伸倍率B)、耐炎化処理前期段階延伸倍率の耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する比率(延伸倍率比A/B)で耐炎化処理し、表2に示す耐炎化処理後期段階終了繊維比重(耐炎化繊維比重)のPAN系耐炎化繊維を得た。
次いで、この耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を1700℃に設定した炭素化炉で炭素化処理した。その結果、表2に示す諸物性の繊維直径5μm、ストランド引張弾性率315GPaの炭素繊維を得た。
Figure 2010133049
Figure 2010133049
クリップ強度測定における負荷応力の概略説明図である。 クリップ強度測定装置の概略説明図である。
符号の説明
2 炭素繊維
4 固定用土台
6 オートグラフ
8 ピン
1、A2 延伸応力の負荷方向
1、B2 圧縮応力の負荷方向
X クリップ強度測定における応力の負荷方向

Claims (2)

  1. クリップ強度(MPa)/ストランド引張強度(MPa)が74%以上である炭素繊維。
  2. 前駆体繊維を大気雰囲気中で200〜280℃で繊維比重を増加させつつ酸化させる耐炎化処理を行うに際し、繊維比重が1.185〜1.195の延伸倍率切替繊維比重に達するまでの耐炎化処理前期段階における延伸倍率を1〜1.2倍にし、前記延伸倍率切替繊維比重を超えた以降の耐炎化処理後期段階における延伸倍率を前記耐炎化処理前期段階における延伸倍率よりも降下させることにより、耐炎化処理後期段階延伸倍率に対する耐炎化処理前期段階延伸倍率の比率(耐炎化処理前期段階延伸倍率/耐炎化処理後期段階延伸倍率)を1より大きくして繊維比重が1.35以下の耐炎化繊維を得、次いで前記耐炎化繊維を不活性雰囲気中で800〜1800℃で炭素化することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
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JP2015074844A (ja) * 2013-10-08 2015-04-20 東邦テナックス株式会社 炭素繊維及びその製造方法

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