JP2010133034A - 電気絶縁紙の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】緻密で、安定して連続抄紙可能な絶縁破壊強さに優れた電気絶縁紙の製造方法を提供する。
【解決手段】DSC測定による結晶化熱量が10J/g以上であり、かつ、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下である非晶質ポリフェニレンサルファイド繊維を60〜100重量%含む湿式不織布を、該非晶質ポリフェニレンサルファイドのガラス転移温度以上融点以下の温度で加熱・加圧処理を施すことを特徴とする電気絶縁紙の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、電気絶縁紙の製造方法に関するものである。
耐熱性、耐薬品性に優れたポリフェニレンサルファイド(以下、PPSという)繊維を用いた不織布は様々な用途に使用されているが、中でも、未延伸PPS繊維(非晶質PPS繊維)をバインダーとしたPPS繊維からなる湿式不織布を用いた電気絶縁紙なるものが開示されている(特許文献1、2)。これら電気絶縁紙は電池セパレーターとして好適であることが記載されている。
一方、コンデンサーや変圧器、ケーブル等に用いられる電気絶縁紙には、高い絶縁破壊強さが要求される。しかし、特許文献1、2に記載の技術では高い絶縁破壊強さを達成することができなかった。すなわち、高絶縁を達成するためには、非晶質PPS繊維をより多く混抄し、溶融して、空隙を充填することが有効と考えられるが、非晶質PPS繊維は熱寸法安定性が悪いため、配合割合を増すと、抄紙の乾燥工程で収縮して、しわ、ふくれ、ヤンキードライヤーなどからの剥がれなどが発生してしまい連続抄紙できない、あるいは地合いのよい湿式不織布が得られないという問題があった。
特開2005−330643号公報 特開2004−285536号公報
本発明は、連続抄紙可能で高い絶縁破壊強さを有する電気絶縁紙の製造方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、絶縁破壊強さを向上させるには、不織布の空隙をつぶすこと、そのために非晶質PPS繊維をより多く混抄する方法が有効であるが、従来の非晶質PPS繊維(未延伸糸)を従来の方法で処理しただけでは熱収縮が大きく、改善が必要であることから本発明に至った。
すなわち、本発明はDSC測定による結晶化熱量が10J/g以上であり、かつ、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下である非晶質PPS繊維を60〜100重量%含む湿式不織布を、該非晶質PPSのガラス転移温度以上融点以下の温度で加熱・加圧処理を施すことを特徴とする電気絶縁紙の製造方法である。
本発明により、安定して連続抄紙可能な、緻密で、絶縁破壊強さに優れた電気絶縁紙の製造方法を提供することができる。
湿式不織布の絶縁破壊は繊維間の空隙にて生じる部分放電を発端とするといわれており、絶縁破壊強さを向上するには、空気層や電流が通じる貫通孔が少なく、緻密な湿式不織布を得ることが重要ある。PPS繊維湿式不織布を緻密にするためにはPPS未延伸糸を多く含有させ、これを溶融させて空隙をつぶす方法が有効であるが、従来のPPS未延伸糸は熱収縮が大きく、PPS未延伸糸の割合を多くすると乾燥工程などにおいて皺、ふくれ等が発生してしまう。そこで本発明においては、特定の非晶質PPS繊維を特定量だけ湿式不織布に含有させ、特定の処理を施すことによってこの問題を解決した、すなわち、本発明の電気絶縁紙の製造方法は、DSC測定による結晶化熱量が10J/g以上であり、かつ、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下である非晶質PPS繊維を60〜100重量%含む湿式不織布を、該非晶質PPSのガラス転移温度以上融点以下の温度で加熱・加圧処理を施すことを特徴とするものである。
ここで、PPSは、繰り返し単位としてp−フェニレンサルファイド単位やm−フェニレンサルファイド単位などのフェニレンサルファイド単位を含有するポリマーである。PPSは、これらのいずれかの単位のホモポリマーでもよいし、両方の単位を有する共重合体でもよい。また、他の芳香族サルファイドとの共重合体であってもよい。
また、PPSの重量平均分子量としては、40,000〜60,000が好ましい。40,000以上とすることで、PPS繊維として良好な力学的特性を得ることができる。また、60,000以下とすることで、溶融紡糸の溶液の粘度を抑え、特殊な高耐圧仕様の紡糸設備を必要とせずに済む。
本発明の製造方法で使用する湿式不織布において、PPS繊維は熱収縮率の小さい非晶質のものを含むことが重要である。非晶質PPS繊維とは示差熱分析計(DSC)で10℃/分の昇温速度で測定したときの結晶化ピークが実質的に認められるものを言う。なお、実質的とは、結晶化ピークにおける結晶化熱量が10J/g以上であることをいう。結晶化熱量は、10J/g以上、さらには15J/g以上、さらに好ましくは20J/g以上がよい。結晶化熱量が10J/g未満では、結晶化していない部分が少なすぎて乾燥工程等で軟化が不十分で融着しにくく、抄紙のバインダーとしての機能が十分でない。また、加熱・加圧処理しても空隙を充填することができない。
また、熱収縮率が小さいとは、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下であることをいい、さらに好ましくは20%以下、さらには15%以下がよい。乾熱収縮率の下限は特に限定するものではなく、小さければ小さいほどよい。よって、0〜35%であることが良い。乾熱収縮率を35%以下とすることで、高絶縁を達成するために、湿式不織布における非晶質PPS繊維の混率を大きくしても、抄紙の乾燥工程などでの湿式不織布に熱収縮によるしわや膨れが発生せずに連続抄紙することができる。
DSC測定による結晶化熱量が10J/g以上であり、かつ、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下である非晶質PPS繊維は、次のようにして製造することができる。すなわち、まずPPSポリマーをエクストルダー型紡糸機等で口金を通じて溶融紡糸したものであって、実質的に延伸することなく、かつ、結晶化温度以上で熱固定処理を施すことのないPPS繊維を得る。そして、このようにして得られた非晶質PPS繊維を、結晶化温度未満の80℃〜95℃の温度範囲で熱処理することで上記PPS繊維を得ることができる。熱固定処理とは結晶化温度以上で熱処理して非晶質状態から結晶化状態に処理することをいう。また、実質的に延伸することなくとは、製糸工程で工程上自然と発生する延伸は含まない。しかし、乾熱収縮の抑制の観点から、製糸工程での自発的な延伸は1.2倍以下であることが好ましい。
PPS繊維を80℃〜95℃の温度範囲で熱処理することによって、結晶化はせずに、予め適度に熱収縮した繊維とすることができ、これにより抄紙の乾燥工程等での収縮が抑制でき、しわ、膨れ等を小さくすることができ、良好な湿式不織布が得られる。また、しわや膨れが発生すると抄紙の乾燥工程での熱伝達が悪くなり、非晶質PPS繊維が軟化しにくくなるため繊維間の結着力が弱くなり、湿式不織布が破れやすく巻き取り時などに切断してしまう。そこで、しわや膨れ等を小さくすることで、抄紙乾燥工程で均一かつ良好に熱が伝達し、非晶質PPS繊維が軟化し繊維間の結着力が得られ、切断することなく連続抄紙の巻き取りに耐えられる湿式不織布を得ることができるようになる。さらに、非晶質部分が残留しているので、得られた湿式不織布を加熱・加圧処理して空隙を充填することができ、高絶縁を達成することができる。
PPS繊維を熱処理する手段としては、ホットローラー等との接触によるものや、熱風、スチーム等によるバンドドライヤーや乾燥機等による加熱、赤外線照射、湯浴等いかなる手段であってもよい。また、熱処理をする糸の状態としては、トウのように連続した糸の状態でもよいし、予めカットしたカットファイバーの状態で施してもよい。処理工程としては、上記したホットローラーやバンドドライヤーのように連続した工程で行ってもよいし、一定量を乾燥機等に投入するようなバッチ式で行ってもよい。生産効率の良さから連続工程で行うほうが好ましい。
本発明におけるPPS繊維への熱処理は、PPS繊維に概ね張力を付与せずに行う。張力を付与して熱処理すると、得られた繊維の熱収縮は大きくなり、抄紙工程の乾燥などで高温になったときの熱収縮が大きくなるので、しわ、膨れ等が発生してしまう。概ね張力を付与しないとは、バンドドライヤーや乾燥機等で熱処理する場合には、ネットやバットなどの上に無張力の状態で置くことをいい、また、ホットローラーや湯浴等に繊維を通過させときには繊維がたるんで工程を通過しなくならない程度に調整することをいう。
また、熱処理時間は、熱処理装置の能力および繊維への熱伝導効率によって決定されるが、本発明の物性を損なわない範囲であれば問題ない。結晶化抑制効果を十分に発現させるためには高温時は出来るだけ短時間にしたほうが好ましい。しかし、短時間過ぎると熱処理による低収縮化の効果が発現しないため、好ましい熱処理時間は0.01sec以上1時間以下である。
本発明の製造方法で使用する湿式不織布は、上記非晶質PPS繊維を湿式不織布の60重量%〜100重量%含んでなることが必要であり、好ましくは60重量%〜95重量%、さらに好ましくは70重量%〜95重量%である。高絶縁破壊強さを達成するには空隙が少ない方がよいが、非晶質PPS繊維を多く含む方が空隙をつぶしやすくなるからである。60重量%未満では、非晶質PPS繊維の量が少なすぎて、空隙をつぶしきれず、目的とするレベルにまで絶縁破壊強さを向上させることができない。
なお、湿式不織布を構成する残りの0重量%〜40重量%の成分は、特に限定されるものではないが、耐熱性、耐薬品性に優れることから、結晶化PPS繊維を好ましく用いることができる。ここで、結晶化PPS繊維は、例えば、PPSポリマーをエクストルダー型紡糸機等で溶融紡糸し、3.0倍以上、好ましくは5.5倍以下、さらに好ましくは3.5〜5.0倍の範囲で延伸することにより得ることができる。延伸の最高温度は120〜180℃である。なお、ここでの延伸熱処理は、一般に加熱ローラ上で行われるが、延伸ローラ間に熱媒体、例えば赤外線ヒーターなどを設けて非接触延伸熱処理を行ってもよい。また、延伸はせずに、延伸工程と同等の熱処理を施すのみでも得ることができる。ここで、結晶化PPS繊維とは、示差熱分析計(DSC)で10℃/分の昇温速度で測定したときの結晶化ピークが実質的に認められないものを言う。なお、実質的とは、結晶化ピークにおける結晶化熱量が10J/g未満であることをいう。
また、湿式不織布における非晶質PPS繊維と結晶化PPS繊維のいずれも、繊維長としては0.5〜15mmが好ましく、より好ましくは1〜6mmである。0.5mm以上とすることで、繊維同士の絡合により湿式不織布の強度を高くすることができる。また25mm以下とすることで、繊維同士が絡合してダマになるなどして目付けムラ等が生じるのを防ぐことができる。
非晶質PPS繊維と結晶化PPS繊維のいずれの繊維においても、抄紙原液中での繊維の分散性を向上し地合いの良い紙を得るため、繊維の直径は30μm以下が好ましい。より好ましくは25μm以下、最も好ましくは20μ以下である。なお、通常の直接紡糸法によって得られる繊維直径の下限としては5μm程度である。
また、非晶質PPS繊維と結晶化PPS繊維のいずれについても捲縮の有無は限定されない。また、捲縮を有する繊維と有しない繊維を混合してもよい。捲縮の有無については、有するものと有しないものとのそれぞれに利点があるためである。捲縮を有するPPS繊維は、繊維同士の絡合性が向上して強度の優れた湿式不織布を得るのに適している。一方、捲縮を有しないPPS繊維は、ムラが小さい均一な湿式不織布を得るのに適している。したがって、用途に応じてPPS繊維に捲縮を施すか否か判断すればよい。
非晶質PPS繊維と結晶化PPS繊維のいずれについても、捲縮は一般的に用いられる押し込み式クリンパー等を用いて付与することができる。紙の強度向上と抄紙原液中での繊維同士の絡まりを抑制する目的で捲縮数としては4山/25mm以上、18山/25mm以下が好ましい。
次に、湿式不織布を製造する方法について説明する。
抄紙工程により湿式不織布を製造するため、まずPPS繊維を含む抄紙用分散液を作製する。抄紙用分散液に対するPPS繊維の合計量としては、0.005〜5質量%が好ましい。合計量を0.005質量%未満にすると、抄紙工程で大量に水が必要で生産効率が悪くなる。また、5質量%よりも濃くすると繊維の分散状態が悪くなり均一な湿式不織布を得ることができなくなる。
分散液は、非晶質PPS繊維と結晶化PPS繊維の分散液とを別々につくってから両者を抄紙機で混合してもよいし、直接、両方を含む分散液つくってもよい。それぞれの繊維の分散液を別々につくってから両者を混合するのは、それぞれの繊維の繊度、カット長等に合わせて攪拌時間を個別に制御できる点で好ましく、直接両方を含む分散液を作るのは工程簡略の点で好ましい。
また、分散液をつくる際には、ミキサーやパルパー、あるいは攪拌ばね等を用いて攪拌して、繊維を分散することが好ましい。
さらに、抄紙用分散液には、水分散性を向上するためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系などの界面活性剤などからなる分散剤や油剤、また泡の発生を抑制する消泡剤等を添加してもよい。
上記のようにして得られた抄紙用分散液を、丸網式、長網式、傾斜網式などの抄紙機または手漉き抄紙機を用いて抄紙し、これをヤンキードライヤーやロータリードライヤー、バンドドライヤー等で乾燥し、湿式不織布とすることができる。抄紙工程の乾燥とは、上記ヤンキードライヤーやロータリードライヤー、バンドドライヤー等での乾燥のことをいう。
抄紙工程を経て得られた湿式不織布に加熱・加圧処理を施し、電気絶縁紙とするが、抄紙工程の乾燥温度をコントロールして、非晶質PPS繊維を完全には結晶化させない状態で、加熱・加圧処理することが絶縁破壊強さを向上するために重要である。なぜなら、結晶化したPPSは軟化しても塑性変形しにくいため、例え高い温度をかけたとしても、空隙を十分に埋めることができない。一方、非晶質PPSは軟化して塑性変形しやすいため、加熱・加圧処理で変形して空隙を埋め、貫通孔などを少なくし、湿式不織布を緻密にすることができ、絶縁破壊強さを向上することができる。
電気絶縁紙の絶縁破壊強さを大きくするために、加熱・加圧処理前の湿式不織布に残留している非晶質の量は、結晶化熱量が5J/g以上、好ましくは10J/g以上、さらに好ましくは15J/g以上であることが好ましい。加熱・加圧処理前の湿式不織布の結晶化熱量を5J/g以上とするためには、抄紙工程における乾燥温度を(非晶質PPSの結晶化温度+10℃)以下にすることが好ましく、さらには結晶化温度未満にすることが好ましい。特に、結晶化温度〜結晶化温度+10℃では、非晶質PPSの結晶化が進みやすいので乾燥工程を通過する時間を短くすることが好ましい。ここで、乾燥温度とは、上記抄紙工程の乾燥時の処理温度(雰囲気温度、ロール表面温度)の最高温度のことをいう。
(非晶質PPSの結晶化温度+10℃)より高い温度で乾燥処理をすると非晶質PPS繊維の結晶化が進行してしまい、その後に湿式不織布に加熱・加圧処理を施しても、非晶質PPS繊維が湿式不織布の空隙を十分に充填することができず、高い絶縁破壊強さを達成することが難しい。また、乾燥温度が低すぎると水分を蒸発させることができず、湿式不織布を乾燥できないので、乾燥温度は80℃以上、さらに好ましくは95℃以上であることがよい。
なお、結晶化温度は後述する実施例の欄の[測定・評価方法](1)項の結晶化熱量測定と同じ条件測定した主発熱ピークの頂点温度を言う。
本発明の電気絶縁紙は、上記のようにして得た湿式不織布を、加熱・加圧処理することによって得ることができる。加熱・加圧処理の手段としては、平板等での熱プレス、カレンダーなどを採用することができる。なかでも、連続して加工することができるカレンダーが好ましい。カレンダーのロールは、金属−金属ロール、金属−紙ロール、金属−ゴムロール等を使用することができる。
加熱・加圧処理の圧力としては、98N/cm〜20kN/cmが好ましい。98N/cm以上とすることで繊維間の空隙を潰すことができる。一方、20kN/cm以下とすることで、加熱・加圧処理工程における湿式不織布の破れ等を防ぎ、安定して処理を施すことができる。
本発明においては、加熱・加圧処理の温度条件を非晶質PPSのガラス転移温度以上融点以下とすることが必要である。ガラス転移点未満では、非晶質PPS繊維が軟化しないので、加熱・加圧処理しても非晶質PPS繊維によって空隙を埋めることができず、絶縁破壊強さを向上することができない。融点より高温では、PPS繊維が溶融してロール等に貼りつくため安定して連続加工することができない。加熱・加圧処理の温度条件は、さらに好ましくは結晶化温度以上270℃以下、さらに好ましくは140℃以上250℃以下である。なお、ここでいう加熱・加圧処理の温度とは、加熱・加圧処理をする装置の湿式不織布との接触面の温度をいい、例えば平板熱プレス装置の場合は熱プレス用平板の湿式不織布との接触面の表面温度、カレンダー装置の場合はカレンダーロールの表面温度である。なお、加熱・加圧処理において、湿式不織布と接触する表裏面の両方を加熱してもよいし、片面のみを加熱でもよい。
なお、ガラス転移温度および融点は、後述の実施例の欄の[測定・評価方法](1)項の結晶化熱量測定と同じ条件で測定して求め値を言う。ガラス転移温度はガラス転移開始温度前のベースラインとガラス転移変曲点での接線との交点とし、融点は主吸熱ピークの頂点温度とする。
加熱・加圧処理としてカレンダー加工を採用した場合の工程通過速度としては、1〜50m/minが好ましく、より好ましくは1〜20m/minである。1m/min以上とすることで、良好な作業効率を得ることができる。一方、50m/min以下とすることで、湿式不織布の内部の繊維にも熱を伝導させ、繊維の熱融着の実効を得ることができる。
以上のようにして得られた電気絶縁紙は、不織布(紙)としての特性を残しながらも、実質的に通気度がなく、優れた絶縁破壊強さを有するもの
なお、本発明において絶縁破壊強さは、後述の実施例の欄の[測定・評価方法](2)項に記載のJIS C 2111:2002(交流の場合のC法)に準拠して測定した値を言う。
湿式不織布及び電気絶縁紙の目付は、使用される場所によって選定されるものであり、紙の破断、損傷の防止、良好な生産性、絶縁破壊強さの維持、取り扱い性のよさなどから、20g/m〜850g/mのものを好適に使用することができ、さらには、30g/m〜500g/mのものを好ましく使用することができる。
[測定・評価方法]
(1)結晶化熱量
PPS繊維サンプルを約2mg精秤し、示差走査熱量計(島津製作所製、DSC−60)で窒素下、昇温速度10℃/分で昇温し、観察される主発熱ピークの発熱量を測定することにより行った。
(2)乾熱収縮率
JIS L 1013:1999 8.18.2 かせ収縮率(A法)に拠って測定した。
枠周1.125mの検尺機を用いて、120回/minの速度で試料を巻き返し、巻き数20回の小かせを作り、0.088cN/dtexの荷重をかけてかせ長を測った。次に荷重を外し、収縮が妨げられないような方法で140℃の乾燥機中に吊り下げ30分間放置後取り出し、室温まで放置後、再び0.088cN/dtexの荷重をかけてかせ長を測り、次の式によって乾熱収縮率(%)を求め、5回の平均値を算出した。
Sd=[(L―L1)/L]×100
ここに、Sd:乾熱収縮率(%)
L:乾燥前の長さ(mm)
L1:乾燥後の長さ(mm)。
(3)連続抄紙性評価
表1に示す配合重量の繊維を水に分散した水分散液を調合し、手漉き抄紙機(熊谷理機工業(株)社製角型シートマシン自動クーチン付き)を用い目付100g/mの湿式不織布を得、クーチング処理をした。該不織布を、未乾燥のまま熊谷理機工業(株)社製KRK回転型乾燥機(標準型)に投入し、温度120℃、処理時間約2.5min/回で処理を行い湿式不織布の乾燥後のシワを確認し、収縮シワが少なく連続抄紙可能な程度のものは○、収縮シワや剥がれが発生し連続抄紙不可と推測されるものは×とした。
(4)絶縁破壊強さ
JIS C 2111:2002(交流の場合のC法)に準拠し測定した。試料の異なる10か所から約10cm×10cmの試験片を採取し測定した。直径25mm、質量250gの円盤状の電極で試験片を挟み、試験媒体には空気を用いた。なお、電圧は1.0kV/秒で上昇させながら周波数60Hzの交流電圧をかけ、絶縁破壊したときの電圧を測定した。得られた絶縁破壊電圧をあらかじめ測定しておいた中央部の厚さで割り、絶縁破壊強さを算出した。
(5)目付け
JIS L 1906:2000(単位面積当たりの質量)に準じて、試料の異なる10cm×10cmの試験片を3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m当たりの質量(g/m)で表した。
[実施例1〜6、比較例1〜4]
(PPS繊維1−1):低収縮非晶質PPS繊維
東レ(株)社製‘トルコン(登録商標)’、品番S111(PPS未延伸糸、熱固定処理なし、単繊維繊度3dtex、捲縮数6山/25mm)のトウ0.5kgを95℃に予めセットした熱風乾燥機(ヤマト科学(株)社製送風定温恒温機DKN601)に約60分投入し熱処理し、取り出した後6mmの長さにギロチンカッターでカットした。なお、乾熱収縮率は長繊維の状態で用いた。
なお、DSCで求めた結晶化温度は120℃、結晶化熱量は24J/gで、乾熱収縮率は20%あった。また、ガラス転移温度は90℃、融点は286℃であった。
(PPS繊維1−2):非晶質PPS繊維
S111に特に熱処理を施さなかったものを6mmにカットした。なお、乾熱収縮率は長繊維の状態で用いた。
なお、DSCで求めた結晶化温度は120℃、結晶化熱量は24J/gで、乾熱収縮率は50%であった。また、ガラス転移温度は90℃、融点は286℃であった。
(PPS繊維2):結晶化PPS繊維
PPS繊維(2)として、単繊維繊度1.0dtex、カット長6mm、捲縮数13山/25mmの東レ(株)社製‘トルコン(登録商標)’、品番S101を用いた。なお、DSC測定した結果、結晶化発熱ピークは観察されなかった。
(PPS繊維(1−1、1−2、2)の分散液)
各繊維をそれぞれ表1記載の質量分の小数第1位を切り上げた数に概ね等分し、1等分ずつをとりおのおの水1Lとともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌することを繰り返し、分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
(抄紙)
各実施例・比較例において使用した繊維の分散液を、底に120メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ50cmの手すき抄紙機(熊谷理機工業(株)社製)に投入し、さらに水を追加して抄紙分散液の総量を20Lとし、攪拌棒で十分に攪拌した。
手すき抄紙機の水を抜き、ろ紙2枚とステンレス板1枚を湿式不織布上にセットして、クーチングロールで水分を搾った後、抄紙網に残った湿紙をろ紙に転写した。
(乾燥)
上記湿紙をロータリー式乾燥機に投入し、処理時間約2.5min/回にて表裏が交互にドラム面に接するように未乾燥紙を乾燥する処理を、表・裏の2回繰り返した。
ロータリー式乾燥機は、乾燥温度120℃以下の場合は熊谷理機工業(株)社製KRK回転型乾燥機(標準型)を用い、120℃より高い温度処理の場合(実施例3及び6)はジャポー(株)社製オートドライヤータイプL−3を用いた。
(加熱加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布をろ紙から剥離して、鉄ロールとペーパーロールとからなるカレンダー加工機に通した。カレンダー条件としては、鉄ロールの表面温度を表1に示すとおりとし、圧力14kN/cm、ロール回転速度3m/minとし、表裏の合計2回繰り返した。
(評価結果)
上記のようにして熱処理した繊維サンプル(PPS繊維1−1)について、カットファイバーを用いて結晶化熱量、抄紙性(乾燥工程通過性、収縮シワの有無)を、これとは別に長繊維の状態で採取した繊維サンプルで乾熱収縮率を測定した。また、上記のようにして湿式不織布を作成し、加熱・加圧処理を施した後、絶縁破壊強さを測定した結果を表1にまとめた。
Figure 2010133034
実施例1〜6において、良好な連続抄紙加工性が得られ、カレンダー加工後に高絶縁破壊強さを達成することができた。比較例1は、抄紙の乾燥工程でしわが発生し、紙力も弱く良好な湿式不織布を得ることができなかった。比較例2、4では高絶縁を達成することができなかった。比較例3はカレンダーロールに湿式不織布が貼り付きサンプルを採取することができなかった。
本発明の湿式不織布は、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル等に用いられる電気絶縁紙として利用可能である。

Claims (3)

  1. DSC測定による結晶化熱量が10J/g以上であり、かつ、140℃×30分の乾熱収縮率が35%以下である非晶質ポリフェニレンサルファイド繊維を60〜100重量%含む湿式不織布を、該非晶質ポリフェニレンサルファイドのガラス転移温度以上融点以下の温度で加熱・加圧処理を施すことを特徴とする電気絶縁紙の製造方法。
  2. 前記湿式不織布を抄紙工程により製造し、かつ該抄紙工程の乾燥温度が(非晶質ポリフェニレンサルファイドの結晶化温度+10℃)以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気絶縁紙の製造方法。
  3. 前記湿式不織布が、前記非晶質ポリフェニレンサルファイド繊維を60〜100重量%、結晶質ポリフェニレンサルファイド繊維と40〜0重量%を含む湿式不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気絶縁紙の製造方法。
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