JP2010132974A - Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板 - Google Patents

Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板 Download PDF

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Abstract

【課題】
Ni−Mo系合金ターゲット板を用いたスパッタリングにおいて、スパッタリング時間の増加に伴うNi−Moを含んだパーティクルの発生を抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】
Ni−Mo系合金のスパッタリングターゲット板であって、前記スパッタリングターゲット板の板面の表面から厚さ方向に10μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(10)及びMo(10)とし、表面から厚さ方向に100μmの位置におけるNi濃度、Mo濃度を質量%でNi(100)及びMo(100)として、次式の関係を満たすことを特徴とするNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板。
−2.0≦ΔNi≦0.2、 −0.2≦ΔMo≦2.0
且つ、
−0.2≦ΔNi+ΔMo≦0.2
ここで、ΔNi=Ni(10)−Ni(100)、ΔMo=Mo(10)−Mo(100)

【選択図】 図1

Description

本発明は、Ni−Mo系合金材料に関するものであり、特に、板状の基板にスパッタリング成膜によってNi−Mo系合金薄膜を付与する際に使用するNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板に関する。
例えば、有機EL表示素子は、有機EL材からなる各画素に電流を流して発光させる電流駆動型のディスプレイであるため、駆動時には電圧駆動型のLCD等に比べて大電流が電極に流れる。このために有機EL表示素子内の配線材料としては低電気抵抗のAlまたはAl合金がよく用いられる。しかし、AlまたはAl合金には、アルミニウムの成長部分がぶつかりあうことで盛り上がる現象であるヒロックが生じやすく、また、表面にAl酸化物が形成されやすい。また、他の金属と電気的なコンタクトを取ろうとしても、接触抵抗が大きく、そのままでは使用することが難しい。
さらに、有機EL表示素子の各画素における陰極と、信号用のマトリクス状の配線と接続するための接続端子の間には、大電流による電圧上昇を抑制するために低抵抗配線技術が必要となる。一般に陰極と接続端子の間に補助配線が設けられ、電流が補助配線を介して接続端子に流れる様な構造が導入されている。
又、特許文献1には液晶表示装置とその製造方法の発明が開示されており、MoまたはMo合金(Cr、Ti、Ta、Zr、HfまたはVと、Moとの合金)でAlまたはAl合金の配線を覆う(キャップする)手法が記載されている。MoとAlの組み合わせの場合、表示パネルを形成するためのフォトリソグラフ工程で、AlとMoとを一括してパターン形成することができる。
一般的にMoの耐湿性は低く、空気中の水分で腐食しやすいので、MoをFPD(Flat Panel Display)の配線材料に用いると配線が劣化しやすいという問題があった。そこで、特許文献2には、有機EL素子の発明において駆動回路と接続端子に透明電極材料を用い、かつ、陰極材料と補助配線材料を一体化する技術が記載されている。これにより、陰極材料と補助配線材料との間には接続箇所が無くなり、接続箇所である陰極表面や補助配線表面が酸化する事は無くなるので、陰極と補助配線とのコンタクト抵抗の問題は生じない。
特許文献3には、有機EL表示装置とその製造方法の発明において陰極と補助配線とのコンタクト抵抗を低減するための技術が開示されており、補助配線を下地パターンと電極パターンとの2層構造とし二つに分けて形成する。下地パターンにTiNあるいはCrを用い、電極パターンにAlを用いて陰極のAlとコンタクトさせることで、低抵抗なコンタクト特性が得られるとしている。
特許文献3に記載の方法では補助配線を形成するために二回のフォトリソ工程が必要となる。しかも、配線材料としてTiNを用いるには、パターニングにドライエッチングを適用する必要があり、生産性に問題が生じる。そこで、特許文献4には配線材料にAlまたはAl合金を使用し、キャップメタルとしてNi−Mo系合金を用いた組み合わせの補助配線が適切なものとして示されている。Ni−Mo系合金層はAl電極層と同じエッチング液でほぼ同じ速度でエッチングすることができる。さらに、Ni−Mo合金層は耐湿性に優れるので、キャップ層は配線の低抵抗を維持するとともに,Al系金属層の表面にAl酸化物層が発生するのを抑え.接触抵抗の増加を防止する機能を有する。なお、特許文献4には、Ni−Mo合金層のNi含有率は全成分に対して好ましくは20〜90質量%、又は、Mo含有率は全成分に対して好ましくは10〜80質量%である旨の記載がある。
ところで、Ni−Mo系合金スパッタリングターゲットの作製方法について、原料として金属Ni及び金属Moを高周波溶解炉で溶解し鋳造した後、鍛造・圧延し、切削加工して所望のターゲット形状に仕上る技術が特許文献5に開示されている。又、特許文献6には、MoにNi等の金属を微量(50ppm〜1000ppm)含有するスパッタリングターゲットを、熱間等方圧静水圧プレス(HIP)法で製造する技術が開示されている。
特開平2001−311954号公報 特開平11−317292号公報 特開平11−329750号公報 特開2004−158442号公報 特開2000−169922号公報 特開2005−154814号公報
ところで、配線用のNi−Mo合金膜を得るために、溶製(鋳造+機械加工)等により作製したNi−Mo系合金ターゲット板を用いて、基板面上にスパッタリング成膜を行うと,スパッタリング時間の増加に伴ってスパッタリング装置のチャンバー内にNi−Moを含んだパーティクルの個数が著しく増加することが従来から問題として知られている。パーティクルの発生はスパッタリング中に異常放電を誘発して成膜効率が低下するばかりでなく、パーティクルがNi−Mo合金の薄膜に付着して当該薄膜の品位が低下するという問題があった。
以上の問題に鑑みて、本発明は、FPDの配線用等のNi−Mo合金膜を作製するための、Niを20%、Moを10%程度以上を含有するNi−Mo系合金ターゲット板を用いたスパッタリングにおいて、スパッタリング時間の増加に伴うNi−Moを含んだパーティクルの発生を抑制することができる技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、Ni−Mo系合金ターゲット板でスパッタリング成膜を行なった場合に、スパッタリング時間の増加に伴ってパーティクル数が増加する問題について、ターゲット材の厚さ方向へのNi、Mo元素の濃度分布を調整することによって解消できることを見出した。本発明の要旨とするところを以下に示す。
(1)Ni、Mo及び不可避的不純物元素からなるNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板であって、
前記スパッタリングターゲット板の板面の表面から厚さ方向に10μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(10)及びMo(10)とし、表面から厚さ方向に100μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(100)及びMo(100)として、次式の関係を満たすことを特徴とするNi−Mo系スパッタリングターゲット板。
−2.0≦ΔNi≦0.2
−0.2≦ΔMo≦2.0
および、
−0.2≦ΔNi+ΔMo≦0.2
ここで、ΔNi=Ni(10)−Ni(100)
ΔMo=Mo(10)−Mo(100)
(2)Ni濃度が20質量%以上且つMo濃度が10質量%以上であることを特徴とする上記(1)に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板。
(3)上記(2)に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板において、さらに、周期表の第IVa族、Va族、VIIa族、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族のうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素を、総和で平均濃度で0.2質量%以上15質量%以下有するNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板。
(4)前記第IVa族、Va族、VIIa族、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族のうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素が、Ti、V、Fe、Cr、Ta、Zr、及びHfのうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素であることを特徴とする(3)に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板。
(5)上記(1)〜(4)に記載のスパッタリングターゲット板において、次式の関係を満たすことを特徴とするNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板。
−0.2≦ΔNi≦0.2
−0.2≦ΔMo≦0.2
本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板によれば、ターゲット板表面付近のNi濃度及びMo濃度の変化を上記のように従来よりも小さくするので、スパッタリング工程におけるパーティクル発生が抑制され,その結果,異常放電が無くなってスパッタリング作業の効率が向上する。さらに,成膜によって形成される薄膜にはパーティクルの付着が激減するので,極めて高品位なNi−Mo系合金の薄膜が得られるようになる。
以下では、本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板の実施の形態を図表を用いて詳細に説明する。
スパッタリングによる成膜においては、周知のように、通常雰囲気ガスであるArが減圧下でイオン化してArイオンとなり、片方の電極であるNi−Mo系ターゲット板面に衝突してNiおよびMo原子をスパッタリング、エロージョンし、当該原子がNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板に対向して設置された基板面上に堆積して成膜する。例えばプレーナー式のマグネトロンスパッタリング装置等では、Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板に印加される磁界の不均一な分布等によって、Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板面においてスパッタリングが顕著なエロージョン部と殆どスパッタリングされない非エロージョン部ができる。
本発明者らは、Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板(以下では単にターゲット板とも記す)のスパッタリング中のパーティクル発生がターゲット板面のArイオンによる非エロージョン部に堆積したNi−Mo酸化物の剥離によって起こり、この剥離を低減させることがパーティクル発生の抑制に有効であることに想到した。そこでまず、本発明者は詳細な検討を行なって、Ni−Mo酸化物の剥離の原因について以下のように推定した。なお、当該Ni−Mo酸化物は、スパッタリングされたNi及びMo原子が凝縮し、スパッタリング装置のチャンバー内の微量酸素と結合することにより発生すると考えられる。
ターゲット板面上に堆積したNi−Mo酸化物が剥離する主な場所は、非エロージョン部のうちでも、エロージョン部に隣接した部分に集中しているとの知見をスパッタリング成膜実験により得た。図1にはターゲット板面に垂直な断面で非エロージョン部2とエロージョン部3の境界付近の様子を模式的に示した。非エロージョン部2にはNi−Mo酸化物4が堆積しており、エロージョン部3はスパッタリングによってターゲット板1はNi−Mo原子がエロージョンされてくぼんでおり、Ni−Mo酸化物4は堆積していない。付着したNi−Mo酸化物の端部5は非エロージョン部3とエロージョン部2の境界に位置している。なお、図1では、端部5を破線で描いた円により示している。
本発明者らは原料金属の溶製又は焼成によってNi−Mo系合金成形体を作製し、その後機械加工によって平坦化された、スパッタリング前のターゲット板の表面付近では、厚み方向(深さ方向を正とする)10μm箇所と100μm箇所のNi,Mo濃度を、GDS(グロー放電発光分光分析装置)によって測定した。それぞれの箇所での測定値を比較した場合に、10μmのNi濃度が100μmの濃度に比べて低下し,逆に10μmのMo濃度が100μmの濃度に比べて増加していることを見出した。
そして、非エロージョン部3にこのようなNi及びMoの濃度分布があると非エロージョン部2と、スパッタリングにより表層部分が除去され、非エロージョン部2に隣接する一部分を除いて、当該濃度分布のないエロージョン部3との境界付近のNi−Mo酸化物の端部5付近でNi−Mo酸化物の機械的な破壊が起こるようになり、剥離が頻繁に起きるようになることを見出した。スパッタリング中のこの堆積と剥離の繰り返しによって、パーティクル発生が断続的に起こるようになる。
すなわち、ターゲット板表面付近のNi,Mo濃度が上記の特徴を持つ場合に、Ni−Mo酸化物の剥離が起き易くなる理由を次のように推定した。Ni−Mo酸化物の端部5に隣接した位置にはスパッタリングによって侵食されたエロージョン部3が存在する。Ni−Mo酸化物の端部5近傍のエロージョン部3の上記非エロージョン部2に隣接する部分の表面領域には,Ni濃度及びMo濃度が厚さ方向で異なった部位がむき出しになっている。当該表面領域内のそれぞれの部位は熱膨張係数や、熱伝導率が異なるため、スパッタリング中にArイオンの衝突による発熱で熱歪み差が生じる。この熱歪みはNi−Mo酸化物の端部5に対して応力となって印加され、スパッタリング中に酸化物を破壊させるのに十分であると推定される。
この上記NiとMoの板厚み方向の濃度分布は,先に述べたようにNi−Mo系ターゲット板製造時に発生するものであり、ターゲット板に必要な平面形状を形成させるための切削、研磨加工を行うと必ず発生してしまう。これは、切削、研磨加工時の摩擦熱だけではなく、塑性変形に伴う残留歪みのエネルギーが原因であり、これらのエネルギーとバランスするためにNi、Mo原子が上記分布に移動してしまうと考えている。
本発明者らは、上記のような詳細な検討結果を踏まえて非エロージョン部に堆積したNi−Mo酸化物の剥離を抑制する手法として、ターゲット板の表面近傍のNi、Mo元素の厚み方向への濃度分布を特定範囲内に制御して、Ni濃度及びMo濃度をできるだけ一定にすることが有効であるとの結論に至った。本発明の濃度分布範囲に制御できれば、付着した酸化物とターゲット材の間で生じる歪みは減少して、酸化物の剥離が著しく抑制される。
本発明者らが数多くのNi−Mo系合金スパッタリングターゲットの作製と当該ターゲットを用いたスパッタリング実験を行い、酸化物が剥離しにくくなるNiとMoの濃度分布について検討した。その結果を以下に示すことにする。
<Ni−Mo系合金のスパッタリングターゲット板>
表面から厚み方向に10μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(10)及びMo(10)とし、100μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(100)及びMo(100)とする。さらに、ΔNi=Ni(10)−Ni(100)、ΔMo=Mo(10)−Mo(100)とする。
−2.0質量%≦ΔNi≦0.2質量%、及び、−0.2質量%≦ΔMo≦2.0質量%および−0.2≦ΔNi+ΔMo≦0.2となるように制御すれば、非エロージョン部に堆積したNi−Mo酸化物の剥離が低減できることを見出した。上記発明範囲であれば,スパッタリングにより作製した薄膜の成分濃度にも大きな影響を及ぼすことなく、パーティクルの薄膜への付着が抑制でき、さらにスパッタリング中の異常放電防止や。薄膜の品位向上が実現できる。上記数値範囲によっても十分な効果を得ることができるが、好ましくは、−1.9質量%≦ΔNi≦0.11質量%、0質量%≦ΔMo≦1.9質量%、−0.2≦ΔNi+ΔMo≦0.16である。
ターゲット板において,上記元素の濃度分布を有する領域は非エロージョン部のスパッタリング表面下部に残留しており、GDS等の表面付近のターゲット深さ方向の元素濃度分布を測定する手法によって確認可能である。また、スパッタリング初期にエロージョン部が数μm程度のわずかな深さしか持たない場合であっても、本発明の効果が発揮されることを本発明者らは確認した。
以下、本発明の上記の限定理由について詳細に説明する。
後で説明するような溶製法や粉末冶金法で製造したNi−Mo系合金成形体はスパッタリングターゲット板に適用するために、必ず表面を滑らかな平面に加工する。この際、切削や研磨を行うが、従来の如何なる方法によって加工しても、前述のΔNiは−2.0質量%未満となり、ΔMoは2.0質量%超となってしまう。この領域でそれぞれの絶対値が大きくなるほど酸化物の剥離は起き易くなった。本発明者らは、切削、研磨加工後に適切な温度による熱処理を施すことによって、ΔNiとΔMoの絶対値を低減でき、その結果、酸化物の剥離を抑制できることを見出した。
ΔNiが−2.0質量%未満であったり、ΔMoが2.0質量%超であると、スパッタリング中に非エロージョン部2に堆積したNi−Mo酸化物4が剥離しやすくなって、パーティクルが著しく増加するようになる。このため、ΔNiは−2.0質量%以上であり.ΔMoは2.0質量%以下とした。さらに、ΔNi、ΔMoの絶対値は小さいことが望ましく、より望ましい範囲はΔNiは−0.2質量%以上、ΔMoは0.2質量%以下である。
一方、製造上ΔNiが正、ΔMoが負となる組み合わせに制御することは難しく、ΔNiは0.2質量%超、ΔMoは−0.2質量%未満に制御することは困難である。したがって、ΔNiは0.2質量%以下、ΔMoは−0.2質量%以上とした。
次に、ΔNiとΔMoの間には従属的な関係が有り、双方の和は−0.2質量%以上、0.2質量%以下に限定される。この範囲から外れた濃度分布は本発明に示す製造方法では実現するのが難しいため、この範囲に限定した。
次にNiの平均濃度が20質量%未満であったり、Moの平均濃度が80質量%超であったりすると、得られる薄膜の耐湿性が充分では無くなる。このため、好ましくは、Niの平均濃度は20質量%以上であり、Moの平均濃度は80質量%以下である。さらに、Niの平均濃度が90質量%超であったり、Moの平均濃度が10質量%未満であったりすると、エッチング液によるエッチング速度が遅くなる。したがって、Niの平均濃度は90質量%以下、Moの平均濃度が10質量%以上とした。ここで、平均濃度とは、ターゲット板の一方又は両方の表面から所定の深さまでの、厚さ方向に関するNi又はMoの濃度の平均値を意味する。そして、所定の深さとは、スパッタリングによってエロージョンがされる深さよりも大きければ良い。例えば厚さ5mmのターゲット板について1mm程度以上、又は5mm(全体)であってもよい。平均濃度を測定するには湿式の化学分析を用いるとよい。又、GDSによりターゲット板のNi及びMoの厚さ方向の分布を測定して、平均濃度を導出しても良い。
本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板には、さらに、周期表の第IVa族、Va族、VIIa族、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族のいずれかの金属元素(Ni、Moを除く)のうち少なくとも1つ以上の元素を含有させて、よりエッチング性や耐食性を向上させる場合がある。これらの各元素の望ましい含有量は0.2質量%以上15質量%以下である。0.2質量%未満であると、エッチング性や耐食性を向上させる効果が少ない。15質量%超であると、Ni−Mo系ターゲットの靭性が低下して使用中に割れるなどトラブルが多くなる。したがって、上記の範囲とした。これらの元素としては、例えば、Fe、Ti、Cr、V、Zr、Hfの他、Mn、Co、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、Ga、Siなどが挙げられる。
これらの金属元素の中でも、Fe、Ti、Cr、V、Zr、Ta、Hfのうち少なくとも1つ以上の元素が含有されると、著しくエッチング性や耐食性が向上される。これらの各元素の望ましい含有量は総和で0.2質量%以上15質量%以下である。0.2質量%未満であると、エッチング性や耐食性を向上させる効果が少ない。15質量%超であると、Ni−Mo系合金ターゲットの靭性が低下して使用中に割れるなどトラブルが多くなる。したがって、上記の範囲とした。
<Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板の製造方法>
上記した本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板を製造する方法は、溶融法、粉末冶金法等を利用してNi−Mo系合金成形体を製造する工程と、Ni−Mo系合金成形体表面を機械加工によって切削して平面化し板状にする工程と、板状のNi−Mo系合金成形体に熱処理を施す工程から構成される。さらに、熱処理によって最表面に形成された酸化物層を研磨等で除去する工程も含まれる。以下にこの製造方法の詳細を記載する。
Ni−Mo系合金の成形体を製造には溶製による方法が第1に挙げられる。例えば高周波溶解炉内でNi及びMoを含む原料を溶融させて鋳込む。その後鍛造や圧延加工により所望の厚さのターゲット材を得る。
又、Ni−Mo系合金成形体を製造する工程は溶製による方法をとることもできるが、融点が高いMoやその他の高融点金属の焼結に適用できることが知られている熱間静水圧プレス(以下「HIP」という)法で原料の金属粉末を加圧焼結させる方法が効率的である。スパッタリングターゲット材となる原料Niの粉末、Moの粉末、及び、その他の添加金属元素からなる粉末を厚み3mm程度のSS400鋼板からなるHIP用のカプセル容器に真空封入して、焼成温度が600℃以上1300℃以下、加圧力が1000気圧以上2000気圧以下の条件でHIPにより加圧焼結する。焼成温度は、金属や合金によって適切な温度が選定される。例えば、焼成温度は、融点から算出されるタンマン温度又はタンマン温度の前後100℃の範囲内とすることができる。
こうしてHIPにより得られる加圧焼結体の相対密度は95%以上100%以下である。ここで、原料金属粉末は0.1μmから50μm程度の大きさのものが望ましく、例えば平均粒径で6μmの粉末を使用する。これらの粉末をHIP用容器内に装入するが、容器に装入する前にプレス加工や冷間静水圧プレスによって仮成型してコンパクト化するとより効率的な作業が可能となる。
なお、HIPによる成形体製造方法とは別に,常圧の又は減圧した容器中に水素を流した還元雰囲気中で、CIP(冷間静水圧成形)で原料金属粉末を固めた圧粉体を高温化で焼結してもNi−Mo系成形体を製造することは可能である。焼結処理に際して容器中の平均的な水素濃度は0.5%以上20%以下とすると良い。当該水素流量によってNi−Mo系合金成形体に含まれる酸素濃度を制御できる。焼結温度は500〜1800℃程度で行うと良い。
また、上記したHIPや常圧等での焼結を行う前に、原料金属粉末の状態または仮成型体の状態において酸素を所望の量付着(吸着)するように制御することによって、焼結体にも同等の酸素濃度で酸素を残留させることが可能である。具体的には残留酸素濃度が10質量ppmよりも少ない場合には、大気中で原料金属粉末,もしくは,仮成型体を200℃から500℃程度に加熱して酸素を吸着(酸化)させる。1000質量ppmよりも酸素濃度が多い場合には、水素雰囲気の中で原料金属粉末、もしくは、仮成型体を200℃から500℃程度に加熱して酸素を還元脱離させればよい。
上記のNi−Mo系合金成形体を製造する工程で得られたNi一Mo系合金成形体は、その後の表面を機械加工で平面化して板状にする工程と、板状のNi−Mo系成形体に熱処理を施す工程によってNi−Mo系スパッタリングターゲット板に仕上げる。これらの一連の工程を順次行なうことによって,板状のNi−Mo系合金成形体の表面から内部に向けて、厚さ方向におけるNi、Mo元素の濃度分布を本発明の範囲に調整することができる。その結果、本発明のNi、Mo系合金スパッタリングターゲット材が製造することが可能となる。
機械による平面化加工としては、例えばフライス盤を用いた切削加工や平面研削盤を用いた研削加工等の公知の金属材料加工方法が挙げられる。この工程を経ることによってスパッタリング板に必要な平面が得られるが、その一方、Ni、Mo元素の分布が偏ったものになってしまう。
これに対して、次工程で熱処理を施して、偏ったNi、Moの濃度分布を平坦化することが、本発明の最も重要な部分である。熱処理を施すと機械加工によってNi−Mo系成形体の表面付近に生じた残留歪みが開放され、同時に、この開放に対してエネルギー的なバランスを取るようにNi、Moの元素が熱処理中に移動して、その結果、それぞれの濃度が平坦化すると考えている。
所望のNi、Moの濃度分布を得るための熱処理工程における熱処理温度の範囲は600℃以上1200℃以下が望ましい。600℃未満であると残留応力が付与されていてもNi、Moの濃度分布の再配列は起こらず、本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板のNi、Moの濃度分布が得られない。1200℃を超えるとNi、Mo濃度分布の再配列は起こるが、結晶粒の粗大化が発生してしまう。したがって、熱処理工程における温度範囲は600℃以上1200℃以下とした。
なお、熱処理中に表面が酸化したり窒化することは望ましく無く、雰囲気は例えば、真空としたり,Arや窒素等の不活性ガスとすると良い。熱処理を施すと,上記雰囲気であっても最表面には極薄い酸化物や窒化物が形成される場合がある。そこで,必要に応じてこの薄い酸化物や窒化物を極軽微な研磨で剥ぎ落とす。ここで、この処理にフライス盤などによる切削方法を適用すると、せっかく調整したNi、Moの濃度分布が壊れてしまうことがあるので注意が必要である。したがって,スコッチブライトやエメリー紙を使用した軽微な研磨がこの工程では好ましい。
なお、機械による平面化加工の後に、化学研磨などの方法で変質層を除去する方法も本発明に含まれるが、表面に微小な凹凸が発生したり、処理に時間がかかることから工業的には有利な方法とはいえない。
以下,実施例により、本発明をさらに詳しく説明する.
(実施例1)
アトマイズ法によって,Ni−Mo−Fe系合金粉末を製造した。線分法により求めた合金粉末の平均粒径は6μmであり、成分は成分系(i)81.5質量%Ni−15.4質量%Mo−3.1質量%Fe、成分系(ii)72.4質量%Ni−24.6質量%Mo−3.0質量%Fe、成分系(iii)64.5質量%Ni−32.3質量%Mo−3.1質量%Feの3種類であった。
厚み2.5mmのSS400製のHIP用容器(内寸:厚さ55mm×幅400mm×長さ780mm)を用意して上記粉末を中に充填した。HIP用容器の内部をロータリーポンプと油拡散ポンプとで真空引きした後に、300℃に加熱しながらさらにHIP用容器の内部の真空引きを続けた。真空度が10−2Pa程度に到達した後、吸引口等をピンホールが発生してリークしないように注意して封印した。この後、1180℃×3時間保定し、1000気圧の条件でHIP焼結処理を施して、Ni−Mo−Fe系合金成形体を得た。得られた供試体の表面からSS400製の鉄皮を剥ぎ取りNi−Mo系合金成形体を得た。当該成形体を切断加工した後、フライス盤により切削して平面化を行なった。この時の成形体の外形寸法は厚さ10mm×幅150mm×長さ600mmであった。
次に溶解法によって、成分が成分系(iv)76.6質量%Ni−15.4質量%Mo−8.0質量%Feの合金成形体を製造した。まず、Ni、Mo、及びFeの原料金属を真空中で高周波加熱により溶解した後に、モールドへ鋳込んで合金成形体を得た。その後、当該合金成形体を1000℃に加熱して熱間圧延した。熱間圧延時の全圧下率は60%であった。得られた供試体の表面をフライス盤により1.2mmの厚さ分を切削する平面化加工をした。こうして、得られた合金成形体の外形寸法は厚さ10mm×幅150mm×長さ600mmであった。
上記製造の後、平面化処理、熱処理、仕上げ処理を施してターゲット板に仕上げた。表1に各実施例の製造条件及び評価結果について詳細を示した。
以上のようにして得たNi−Mo系スパッタリングターゲット板の表面から内部への厚さ方向におけるNi、Moの元素濃度分布を、GDS(グロー放電発光分光分析装置)を使って測定した。使用した装置はJOBIN YVON社製 JY5000RF−PSS型であった。表面から厚さ方向の150μmまでスパッタリングにより除去しながら、Ni、Mo、及びFeの各元素の厚さ方向に対する濃度分布を測定した。
得られたNi−Mo系スパッタリングターゲット板はCu製のバッキングプレートにボンディングしてスパッタリングターゲット電極とした。このスパッタリングターゲット電極を用いて、スパッタリング時の異常放電性能を評価した。
スパッタリングにおける条件は次の通りとした。スパッタリングガス:Ar、スパッタリングガス圧:0.27Pa、スパッタリング電力:2.0kW、成膜基板:Corning#7059(50×50mm)。また、成膜速度測定の際に、Arガス圧0.67Pa、スパッタリング電力2.0kWの条件にて10minプレスパッタリングを実施した。
スパッタリング中における放電安定性を評価するため、上記スパッタリングターゲットをスパッタリング装置に装着し、異常放電特性を評価した。放電条件はスパッタリングガス:Ar、スパッタリングガス圧:0.27Pa、スパッタリング電力:2.0kWで、積算スパッタリング電力が5kWhに達するまで連続放電し、その間に発生した異常放電回数を測定した。異常放電は、スパッタリング放電用のDC電源供給ケーブルに直接コイルを巻いてCTプローブとし、当該プローブに誘起されるパルス信号をオシロスコープにて観察して異常放電を検知した。異常放電が全く無かった場合には極めて優秀として◎で評価し、起こった回数が2回以下であった場合には優秀として○で評価し、2回を超えた場合には不良として×で評価した。
表1には、試験片No.1〜11として成分系を上記(i)にしてNi−Mo系ターゲット板を製造した際の工程(成形体製造工程)と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末をHIPで高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては試験片No.1〜5は熱処理前にフライスと平面研削を併用し、試験片No.6〜10はフライスのみ、試験片No.11は熱処理前に平面化処理を行なわなかった。熱処理としては、試験片No.1は行なわず、試験片No.2、6は400℃、その他は600〜1200℃で行なった。
熱処理後の仕上げ加工工程では、試験片No.1〜5は住友3M社製のスコッチブライトによる研磨を行なった。試験片No.6〜10は平面研削の後にスコッチブライト研磨を施した。試験片No.11はフライス、平面研削の後にスコッチブライト研磨を施した。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、試験片No.1、2、6、11のΔNiとΔMoが本発明で規定する範囲から外れていた。これらのターゲット板を用いてスパッタリング成膜を行なって評価したところ,これらのターゲット板ではパーティクルが多数発生して.異常放電が多発した。評価後に非エロージョン部を観察したところ,堆積したNi−Mo系酸化物が部分的に剥離しており、Ni−Mo系酸化物のパーティクルとしてスパッタリング中に飛散していたことを確認した。
その他の試験片については、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.3、7、8では異常放電は2回以下とほとんど発生しなかった。さらに、その他の試験片では、異常放電は全く観察されなかった。
次に、試験片No.12〜17として成分系を上記(iv)にしてNi−Mo系ターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造は溶解法で行なったものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用した。熱処理としては、試験片No.12は行なわず、試験片No.13は500℃、その他は700〜1300℃で行なった。熱処理後の仕上げ加工工程では、住友3M社製のスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、試験片No.12、13のΔNiとΔMoが本発明で規定する範囲から外れていた。これらのターゲット板を用いてスパッタリング成膜を行なって評価したところ,これらのターゲット板ではパーティクルが多数発生して.異常放電が多発した。評価後に非エロージョン部を観察したところ,堆積したNi−Mo系酸化物が部分的に剥離しており、Ni−Mo系酸化物のパーティクルとしてスパッタリング中に飛散していたことを確認した。
その他の試験片については、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.14、15では異常放電は2回以下とほとんど発生しなかった。さらに、その他の試験片では、異常放電は全く観察されなかった。
次に、試験片No.18〜22として成分系を上記(ii)にしてNi−Mo系ターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末をHIPで高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用した。熱処理としては、試験片No.18は行なわず、その他は700〜1300℃で行なった。熱処理後の仕上げ加工工程では、住友3M社製のスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、試験片No.18のΔNiとΔMoが本発明で規定する範囲から外れていた。これらのターゲット板を用いてスパッタリング成膜を行なって評価したところ,これらのターゲット板ではパーティクルが多数発生して.異常放電が多発した。評価後に非エロージョン部を観察したところ,堆積したNi−Mo系酸化物が部分的に剥離しており、Ni−Mo系酸化物のパーティクルとしてスパッタリング中に飛散していたことを確認した。
その他の試験片については、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.19、20では異常放電は2回以下とほとんど発生しなかった。さらに、その他の試験片では、異常放電は全く観察されなかった。
次に、試験片No.23〜27として成分系を上記(iii)にしてNi−Mo系ターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末をHIPで高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用した。熱処理としては、試験片No.23は行なわず、その他は750〜1350℃で行なった。熱処理後の仕上げ加工工程では、エメリー紙(#600)研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、試験片No.23のΔNiとΔMoが本発明で規定する範囲から外れていた。これらのターゲット板を用いてスパッタリング成膜を行なって評価したところ,これらのターゲット板ではパーティクルが多数発生して.異常放電が多発した。評価後に非エロージョン部を観察したところ,堆積したNi−Mo系酸化物が部分的に剥離しており、Ni−Mo系酸化物のパーティクルとしてスパッタリング中に飛散していたことを確認した。
スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性や耐食性は、Ni−Mo系成分系に第VIII族のFeを加えることによって高いレベルの特性であった。
その他の実施例については、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.24、25では異常放電は2回以下とほとんど発生しなかった。さらに、その他の試験片では、異常放電は全く観察されなかった。
以上示したように、本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板では、スパッタリング時に異常放電が発生しにくく、効率的なスパッタリング成膜が可能であることを確認できた。


(実施例2)
アトマイズ法によって、Ni−Mo系粉末を製造した。粉末の平均粒径は6μmであり、成分系は表2に示した.厚み2.5mmのSS400製のHIP用容器(内寸:厚さ55mm×幅400mm×長さ780mm)を用意して,上記粉末を中に充填した.容器内部をロータリーポンプと油拡散ポンプで真空引きした後に,500℃に加熱してさらに真空引きを続けた。真空度が10−2Pa程度に到達した後、吸引口等をピンホールが発生してリークしないように注意して封印した.この後.各種温度、時間条件で1000気圧の条件でHIP焼結処理を施した。得られた供試体の表面からSS400製の鉄皮を剥ぎ取り,フライス盤による平面化を行なった。この時の寸法は厚さ10mmx幅150mmx長さ600mmであった。
上記製造の後、平面化処理、熱処理、仕上げ処理を施してターゲット板に仕上げた。表2に各実施例の製造条件及び評価結果について詳細を示した。ここで、ボンディング条件やターゲット板のNi、Moの元素濃度分布の評価,スパッタリング時の異常放電評価の方法は実施例1で行った内容と同一である。
試験片No.28〜33として、成分系をNi、Mo二元系にしてそれらの比率を変えたターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1100℃×4hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は1000℃×1hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.28〜33の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.28の発明例でやや腐食され易い傾向にあったものの、その他の試験片では腐食されにくい特性であった。
また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.33の発明例でややエッチング速度が遅い傾向にあったものの、その他の試験片ではエッチング速度は普通であった。
試験片No.34〜38として、Ni、Moに第VIIa族のMn,第Ib族のCu,第IIb族のZn,第IIIb族のAl,第IVb族のSiを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を950℃×8hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は1000℃×1hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.34〜38の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.34〜38の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.34〜38の実施例でエッチング速度は普通であり、実用に問題ない特性であった。
試験片No.39〜44として、Ni、Moに第IVa族のTiを加えた成分系においてそれらの比率を変えたターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を950℃×8hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は850℃×2hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はエメリー紙(#600)による研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.39〜44の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.39〜44の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.39〜44の実施例でエッチング速度は速い傾向にあり、優れた特性であった。
試験片No.45〜47として、Ni、Moに第Va族のV,第VIII族のFeを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1180℃×4hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は950℃×8hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.45〜47の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.45〜47の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.45〜47の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
試験片No.48〜50として、Ni、Moに第VIa族のCr,第IVa族のTiを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1250℃×3hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は880℃×6hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はエメリー紙(#600)による研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.48〜50の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.48〜50の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.48〜50の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
試験片No.51〜53として、Ni、Moに第Va族のTa,第VIII族のFeを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1250℃×3hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は980℃×5hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.51〜53の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.51〜53の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.51〜53の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
試験片No.54〜56として、Ni、Moに第IVa族のZr,第VIII族のFeを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1250℃×3hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は1000℃×1hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はスコッチブライトによる研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.54〜56の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.54〜56の実施例で全く腐食が起ない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.54〜56の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
試験片No.57〜59として、Ni、Moに第IVa族のHf,第VIII族のFeを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1250℃×3hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は1100℃×0.5hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はエメリー紙(#600)による研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.57〜59の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。
スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.57〜59の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.57〜59の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
試験片No.60〜62として、Ni、Moに第Va族のNb,第VIII族のFeを加えた成分系においてターゲット板を製造した際の工程と、ターゲット板におけるNi,Moの濃度分布と、スパッタリング時の異常放電特性を示した。何れも成形体製造はアトマイズで製造した粉末を1280℃×3hrのHIP条件で高温・高圧下で焼結したものである。平面化処理としては熱処理前にフライスと平面研削を併用して行なった。熱処理は1200℃×1hrで行なった。熱処理後の仕上げ加工工程はエメリー紙(#600)による研磨を行なった。
得られたターゲット板についてGDSでNi、Moの濃度分布を測定したところ、ΔNiとΔMoは本発明で規定する範囲に入っていた。スパッタリング成膜によって評価した結果は、試験片No.60〜62の本発明例では、異常放電は全く観察されなかった。スパッタリングで成膜した薄膜の耐食性を調べたところ、試験片No.60〜62の実施例で全く腐食が起らない優れた特性であった。また、スパッタリングで成膜した薄膜のエッチング性を調べたところ、試験片No.60〜62の実施例でエッチング速度は速く、優れた特性であった。
以上示したように、本発明のNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板では、スパッタリング時に異常放電が発生しにくく、効率的なスパッタリング成膜が可能であることを確認できた。


スパッタリングターゲット板面のエロージョン部と非エロージョン部とを説明する図である。
符号の説明
1 Ni−Mo系合金スパッタリングターゲット板
2 非エロージョン部
3 エロージョン部
4 Ni−Mo酸化物
5 Ni−Mo酸化物の端部

Claims (5)

  1. Ni、Mo及び不可避的不純物元素からなるNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板であって、
    前記スパッタリングターゲット板の板面の表面から厚さ方向に10μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(10)及びMo(10)とし、表面から厚さ方向に100μmの位置におけるNi濃度及びMo濃度をそれぞれ質量%でNi(100)及びMo(100)として、次式の関係を満たすことを特徴とするNi−Mo系スパッタリングターゲット板。
    −2.0≦ΔNi≦0.2
    −0.2≦ΔMo≦2.0
    および、
    −0.2≦ΔNi+ΔMo≦0.2
    ここで、ΔNi=Ni(10)−Ni(100)
    ΔMo=Mo(10)−Mo(100)
  2. Ni濃度が20質量%以上且つMo濃度が10質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板。
  3. さらに、周期表の第IVa族、Va族、VIIa族、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族のうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素を、総和で平均濃度で0.2質量%以上15質量%以下有する請求項2に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板。
  4. 前記第IVa族、Va族、VIIa族、VIII族、Ib族、IIb族、IIIb族、IVb族のうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素が、Ti、V、Fe、Cr、Ta、Zr、及びHfのうちNi、Moを除く1種又は複数種の金属元素であることを特徴とする請求項3に記載のNi−Mo系合金のスパッタリングターゲット板。
  5. 請求項1〜4に記載のスパッタリングターゲット板において、
    次式の関係を満たすことを特徴とするNi−Mo系合金スパッタリングターゲット板。
    −0.2≦ΔNi≦0.2
    −0.2≦ΔMo≦0.2
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