JP2015061933A - 被覆層形成用スパッタリングターゲット材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 CuまたはCu合金からなる薄膜層の被覆層形成用スパッタリングターゲット材において、Mnを5〜25原子%と、Mo、CuおよびFeから選択される一種以上の元素とを合計で60原子%以下含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、キュリー点が常温以下である被覆層形成用スパッタリングターゲット材。
【選択図】 図1
Description
また、FPDの画面を見ながら直接的な操作性を付与するタッチパネル基板画面も大型化が進んでおり、Alより低抵抗のCuまたはCu合金からなる薄膜層(以下、「Cu薄膜層」という)を主配線薄膜層として用いる検討が進んでいる。
携帯型端末やタブレットPC等に用いられているタッチパネルの位置検出電極には、一般的に透明導電膜であるインジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:以下、「ITO」という)が用いられている。CuはITOとのコンタクト性は得られるが、基板との密着性が低く、耐候性が悪い問題点を有する。このため、Cu薄膜層の密着性を確保するとともに、耐候性を改善するために、Cu薄膜層をNi合金等の被覆層で被覆した積層配線膜とする必要がある。
このような課題に対し、本出願人は、AgやCuの薄膜層の被覆層として、Cuを1〜25原子%、さらにTi、Zr、Hf、V,Nb、Ta、Cr、Mo、Wから選択される元素を1〜25原子%、且つ添加量の合計が35原子%以下のNi合金を用いた積層配線膜を提案している。(特許文献1)
特許文献1で提案した被覆層は、Ti、V、Cr等の遷移金属を所定量添加したNi合金とすることで弱磁性化されることにより、スパッタリングによる成膜が安定的かつ長時間できるという点で有用な技術である。
また、Ni合金被覆層のCuエッチャントに対するエッチング性の改善を目的に、NiにCuを25〜45wt%加えたNi−Cu合金を主体にMoやCoを5wt%以下加えた合金や、Cuを5〜25wt%加えたNi−Cu合金にFeやMnを5wt%以下加えたNi−Cu系合金が提案されている。(特許文献2)
また、同様にCuエッチャントに対するエッチング性の改善と耐候性や密着性の改善を目的に、Cuを15〜55wt%加えたNi−Cu合金を主体に、CrやTiを10wt%以下加えたNi−Cu系合金が提案されている。(特許文献3)
これら、特許文献2や特許文献3に開示されるNi−Cu系合金は、それぞれエッチング性の改善を図れる点で有用な技術である。
ところが、Cu薄膜層と上記被覆層からなる積層配線膜をウェットエッチングすると、残渣が生じやすいという問題がある。このため、揮発性の高い過酸化水素を添加したエッチャントを用いてオーバーエッチングすることで残渣の抑制が行なわれているところ、サイドエッチング量が大きくなり、今後期待される狭い幅の配線膜を安定的に得ることが難しいという課題があることが明らかになってきた。
また、特許文献2および特許文献3に提案されているNi−Cu系合金では、エッチング性を改善するために、Cuの添加量を増加させると、耐酸化性が低下するとともに、ガラス基板、樹脂等のフィルム基板、あるいは透明導電膜であるITOとの密着性が低下するとともに耐酸化性が大きく低下することを確認した。
また、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材は、前記Mnが5〜25原子%、前記Moが5〜40原子%、前記Mnと前記Moの合計量が15〜50原子%であることが好ましい。
また、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材は、前記Mnが5〜25原子%、前記Moが5〜30原子%、前記Cuが10〜40原子%、前記Feが0〜5原子%であることが好ましい。
さらに、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材は、前記Mnが7〜20原子%、前記Moが10〜25原子%、前記Cuが10〜25原子%、前記Feが0〜3原子%、且つ前記Mn、前記Mo、前記Cu、前記Feの合計量が27〜50原子%以下であることが好ましい。
本発明は、前記合金粉末は、前記Mnが5〜25原子%、前記Moが5〜40原子%、前記Mnと前記Moの合計量が15〜50原子%であることが好ましい。
また、前記合金粉末は、前記Mnが5〜25原子%、前記Moが5〜30原子%、前記Cuが10〜40原子%、前記Feが0〜5原子%であることが好ましい。
また、前記合金粉末は、前記Mnが7〜20原子%、前記Moが10〜30原子%、前記Cuが10〜25原子%、前記Feが0〜3原子%、且つ前記Mn、前記Mo、前記Cu、前記Feの合計量が27〜50原子%であることが好ましい。
NiはCuに比較して、基板やCu薄膜層、あるいは透明導電膜等との密着性向上、さらに耐候性向上にも優れる元素であり、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いて形成した被覆層においても、CuまたはCu合金からなる薄膜層を被覆することで、密着性や耐候性の改善効果を得ることが可能となる。
また、MnはNiより酸化しやすい元素であり、NiにMnを5原子%以上添加すると、基板やCu薄膜層、あるいは透明導電膜に対して、膜の界面で酸化物を形成しやすく、密着性をより改善できる効果も有する反面、25原子%を越えると耐酸化性は低下する場合がある。このため、本発明では、Mnの添加量を5〜25原子%にする。好ましくは、Mnの添加量は、7〜20原子%である。
また、非磁性化の効果が高いMoの添加量を増加させると、基板やCu薄膜層、あるいは透明導電膜等との密着性を改善する効果を有する反面、耐候性は低下しやすくなるとともに、Cuのエッチャントでエッチングした際の、エッチングムラが発生しやすくなる。このため、本発明ではMoの添加量を5〜40原子%にすることが好ましい。より好ましくは5〜30原子%、さらに好ましくは10〜25原子%の範囲である。
また、Niへの添加元素の種類と量が多いほど、スパッタリングターゲット材中の化合物相の発現量が増加してしまい、FPD用途で要求される大型のスパッタリングターゲット材を製造する際の機械加工やボンディングで割れが生じやすくなる。このため、本発明では、Mnが5〜25原子%、Moが5〜40原子%し、MnとMoの合計量が15〜50原子%であることが好ましい。
また、Mnが5〜25原子%と、Moが5〜30原子%、Cuが10〜40原子%、Feが0〜5原子%の範囲であることが好ましい。
また、Mnが7〜20原子%と、Moが10〜25原子%、Cuが10〜25原子%、Feが0〜3原子%を含有し、且つMn、Mo、Cu、Feの合計量が27〜50原子%の範囲であることが好ましい。
本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法における重要な特徴は、磁性体であるNiに添加する元素を選定し、キュリー点が常温以下となる合金粉末を加圧焼結することにある。この理由は、上述したようにNiは磁性体であり、Ni量が増加すると、スパッタリングターゲット材中に磁性を帯びやすいNi強磁性相が残存し、FPDの製造で一般的に用いられているマグネトロンスパッタリングにおいて、スパッタ速度が低下したり、スパッタリングターゲット材の寿命が短くなったりすることがあるからである。
従来は所定の組成に調整した原料を溶解して作製したインゴットを塑性加工して板状とし、機械加工を施してスパッタリングターゲット材を製造することが行われていた。これに対し、本発明は、上述したようにMnやMoの添加量が多く、塑性加工性が低下するために、FPD用の大型スパッタリングターゲット材を安定して製造するためには、特定の組成を有する合金粉末を加圧焼結する製造方法が最も好ましい。
そして、本発明では、合金粉末として、Mnを5〜25原子%含有し、前記Mnと、Mo、CuおよびFeから選択される一種以上の元素とを合計で60原子%以下含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、キュリー点が常温以下の合金粉末を用いる。
また、本発明では、合金粉末は、Mnが5〜25原子%、Moが5〜40原子%、MnとMoの合計量が15〜50原子%、残部がNiおよび不可避的不純物からなる合金粉末を用いることが好ましい。
また、前記合金粉末は、Mnが5〜25原子%、Moが5〜30原子%、Cuが10〜40原子%、Feが0〜5原子%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなることが好ましい。
また、前記合金粉末は、Mnが7〜20原子%、Moが10〜30原子%、Cuが10〜25原子%、Feが0〜3原子%を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、且つMn、Mo、Cu、Feの合計量が27〜50原子%であることが好ましい。
また、合金粉末の平均粒径が5μm未満であると、得られるスパッタリングターゲット材中の不純物が増加してしまう。一方、合金粉末の平均粒径が300μmを超えると高密度の焼結体を得にくくなる。したがって、合金粉末の平均粒径は、5〜300μmにすることが好ましい。
尚、本発明でいう平均粒径は、JIS Z 8901で規定される、レーザー光を用いた光散乱法による球相当径を用い、累積粒度分布のD50で表される。
また、焼結時の加圧力は、10MPa未満では、焼結が進みにくく高密度の焼結体を得ることができない。一方、圧力が200MPaを超えると、耐え得る装置が限られるという問題がある。
また、焼結時間は、1時間未満では焼結を十分に進行させることが難しく、高密度の焼結体を得ることが困難である。一方、10時間を超える焼結時間は、製造効率の観点から避ける方がよい。
HIPやホットプレスで加圧焼結をする際には、合金粉末を加圧容器や加圧用ダイスに充填した後に、加熱しながら減圧脱気をすることが望ましい。減圧脱気は、加熱温度100〜600℃の範囲で、大気圧(101.3kPa)より低い減圧下で行うことが望ましい。これは、得られる焼結体の酸素をより低減することができ、高純度の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を得ることが可能となるためである。
得られた合金粉末をSmCo磁石に近づけたところ磁石には付着しないことを確認した。また、得られた合金粉末を磁気特性測定用の粉末ケースに入れて、理研電子株式会社製の振動試料型磁力計VSM−5を用いて、常温(25℃)で磁気特性を測定したところ、非磁性であることを確認した。
この軟鋼製容器を冷却後、HIP装置から取り出し、機械加工により軟鋼製容器を外し、直径100mm、厚さ5mmの被覆層形成用スパッタリングターゲット材を得た。また、残部より試験片を切り出した。
その結果、相対密度は、99.9%であることを確認した。本発明の製造方法によれば、高密度の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を得られることが確認できた。
密着性の評価は、JIS K 5400で規定された方法で行なった。先ず、上記で形成した被覆層の表面に、住友スリーエム株式会社製の透明粘着テープ(製品名:透明美色)を貼り、2mm角のマス目をカッターナイフで入れ、透明粘着テープを引き剥がして、被覆層の残存の有無で評価をした。本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いて成膜した被覆層は、一マスも剥がれず、高い密着性を有することが確認できた。
また、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材および上記で作製したCuスパッタリングターゲット材を用いて、実施例1と同じスパッタ条件でコーニング社製の25mm×50mmのガラス基板(製品番号:EagleXG)上に膜厚50nmの被覆層、膜厚200nmのCu薄膜層、膜厚50nmの被覆層を順に成膜した積層配線膜からなるエッチング評価用の試料も作製した。
その結果、100nmの単層膜の試料ではCuは、約25秒で均一にエッチングされた。一方、Ni−18原子%Mo合金からなる被覆層は、エッチング完了に90秒の時間が必要であり、エッチングの早い部分と遅い部分でアイランド状にエッチングされムラが発生することを確認した。
また、Ni−30原子%Cu−3原子%Ti合金からなる被覆層は、エッチング完了までに100秒の時間が必要であり、エッチングの早い部分と遅い部分が縞状にエッチングされることが確認された。
これに対して、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材で成膜した被覆層は、は約40秒で均一にエッチングされることが確認できた。
また、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いて積層配線膜を形成したエッチング評価用試料は、エッチング完了まで要した時間は約90秒であり、ムラもなく均一にエッチングすることが可能であった。
以上のことから、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材で成膜した被覆層は、Cu薄膜層と積層とした場合にも、Cuのエッチャントを用いて、狭ピッチで均一なエッチングが可能であると推定できる。
試料No.2および試料No.4は、インゴットをインゴットケースから取り出す際に割れが発生した。そして、試料No.2は、これ以上の評価を中止した。
上記の各インゴットを用いて、実施例1と同様にアトマイズ法にて合金粉を作製してHIPにより焼結体を作製した。そして、この各焼結体をワイヤーカットで切断し直径100mm、厚さ5mmのスパッタリングターゲット材の作製を試みた結果、試料No.3および試料No.10は加工時にクラックが発生した。また、試料No.4は割れが発生してスパッタリングターゲットを作製することができなかった。
次に、作製可能であった試料No.1、試料No.3、試料No.5〜No.10のスパッタリングターゲット材を銅製のバッキングプレートにろう付けした。その後、アルバック株式会社製のスパッタ装置(型式番号:CS−200)に取り付け、Ar雰囲気、圧力0.5Pa、電力500Wの条件でスパッタテストを実施した。
本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲットを用いてスパッタすると、異常放電もなく、安定したスパッタを行なうことができることが確認できた。
エッチングムラは、実施例3のように目視で確認した。より明確な差とするために、各試料をエッチャント液に浸漬して、膜の一部が透過した時間と全面が透過したジャストエッチング時間との時間差を測定した。これは、時間差が小さいほどエッチングムラは少ないことを意味する。また、膜表面にエッチャントを20μl滴下し、2分後の広がり径を測定した。これは、広がり径が小さいほどサイドエッチングを抑制可能であり、精度の高いエッチングを行なうことができることを意味する。評価した結果を表2に示す。
また、耐酸化性の評価は、各試料を大気雰囲気において200℃〜300℃の温度で30分間の加熱処理を行ない、反射率を測定した。尚、反射率はコニカミノルタ株式会社製の分光測色計(型式番号:CM2500d)を用いた。評価結果を表3に示す。
これに対し、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いて被覆膜を形成した積層膜は、密着性が大きく改善されていることが確認できた。
試料No.1では高温で大きく反射率が低下し、耐酸化性が低かった。
これに対し、被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いて被覆膜を形成した積層膜は、350℃という高温まで加熱しても反射率の低下が抑制されており、十分な耐酸化性が得られることが確認できた。
以上のことから、本発明の被覆層形成用スパッタリングターゲット材を用いることで、Cu薄膜層の密着性、耐候性、耐酸化性を確保するとともに、安定したウェットエッチングできる被覆層を安定的に形成可能であることが確認できた。
Claims (8)
- CuまたはCu合金からなる薄膜層の被覆層形成用スパッタリングターゲット材において、Mnを5〜25原子%含有し、前記Mnと、Mo、CuおよびFeから選択される一種以上の元素とを合計で60原子%以下含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、キュリー点が常温以下であることを特徴とする被覆層形成用スパッタリングターゲット材。
- 前記Moが5〜40原子%、前記Mnと前記Moの合計量が15〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材。
- 前記Moが5〜30原子%、前記Cuが10〜40原子%、前記Feが0〜5原子%であることを特徴とする請求項1に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材。
- 前記Mnが7〜20原子%と、前記Moが10〜25原子%、前記Cuが10〜25原子%、前記Feが0〜3原子%、且つ前記Mn、前記Mo、前記Cu、前記Feの合計量が27〜50原子%であることを特徴とする請求項1に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材。
- CuまたはCu合金からなる薄膜層の被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法において、Mnを5〜25原子%含有し、前記Mnと、Mo、CuおよびFeから選択される一種以上の元素とを合計で60原子%以下含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、キュリー点が常温以下の合金粉末を加圧焼結することを特徴とする被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法。
- 前記合金粉末は、前記Moが5〜40原子%、前記Mnと前記Moの合計量が15〜50原子%であることを特徴とする請求項5に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法。
- 前記合金粉末は、前記Moが5〜30原子%、前記Cuが10〜40原子%、前記Feが0〜5原子%であることを特徴とする請求項5に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法。
- 前記合金粉末は、前記Mnが7〜20原子%と、前記Moが10〜30原子%、前記Cuが10〜25原子%、前記Feが0〜3原子%、且つ前記Mn、前記Mo、前記Cu、前記Feの合計量が27〜50原子%であることを特徴とする請求項5に記載の被覆層形成用スパッタリングターゲット材の製造方法。
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