JP2010132605A - 活性成分の溶解性が高められた医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】難溶性の薬物であっても生体内で迅速に溶解させることが可能な薬物の製剤形態を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、医薬として許容される高分子化合物と、微粒子状態または該高分子化合物に吸着された状態で存在する医薬化合物、例えばサイクロスポリン、とを含む高分子−医薬複合体を含有する医薬組成物に関する。この医薬組成物は吸入投与のために特に有用である。
【選択図】図1

Description

本発明は、製剤化が難しい難溶性低分子化合物、難溶性ペプチドやタンパク質等であっても良好な易溶性を示す医薬組成物に関する。本発明はまた、製剤学上ハンドリングが容易で且つ分散性向上のため薬剤含量の均一保持が可能である粉末製剤に関するものである。
吸入療法は経呼吸器の薬剤使用法として気道疾患への治療はもとより疾病の診断、経気道全身薬剤投与、疾患の予防、経気道免疫減感作療法などに適応されている。しかしいずれの場合にも、この療法の適応決定法が十分に検討されておらず、また対応する吸入剤の開発が望まれているところである。ターゲッティング療法として適用するにあたり、吸入剤の選択基準方法は疾患への有効性だけではなく、薬剤粒子の発生法と到達部位、ならびにそれらと薬剤の基礎物性の関連性から考える必要がある。現状ではこの形態の薬剤としてはエアロゾル吸入療法が広く用いられている。実際には、気管支拡張剤、粘膜溶解剤、抗生物質、抗アレルギー剤、ステロイド剤、ワクチン、生理食塩水などが使用されており、これらの臨床への応用の際には吸入剤の作用部位、作用機構、組成と用法などが重要な因子と考えられている。
さらに近年気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の治療において、粉末吸入剤(Dry Powder Inhaler、DPI)が注目されるようになってきた。吸入剤には他にも先述のエアロゾル剤(定量的噴霧式吸入器、Metered Dose Inhaler、 MDI)やネブライザー剤があるが、これらの薬剤は標的部位となる肺が小腸に匹敵するほどの広い表面積を有していることや、吸収された後、初回通過効果がないなどの多くの優れた性質を備えている。一般的な吸入剤の特徴としては、1)薬効が迅速に発現、2)漸進的な副作用の低減、3)小用量投与が可能、4)初回通過効果の回避等が認知されている。
先述のように MDI は広く用いられ、今でも精力的に研究が行われているものの、噴射剤としてフロンガスを使用しなければならないため、環境上の問題が指摘されている。この問題を解決すべくフロンガスの代替品開発が行われてはいるものの、それよりもむしろフロンガスを必要とせず、かつ携帯性に優れた DPI の開発がより盛んに行われている。また、ネブライザーも、薬物を溶液状態にしてデバイス中に保管しなければならないという問題を抱えており、このため不安定な薬物には適していないと考えられ、薬物が安定な形で存在しうる DPI は長期安定性においても有用な製剤の一つである。
DPI は包装形態によりカプセルタイプおよびブリスタータイプ、リザーバータイプなどに分類される。DPI の投与の際には、通常これらに包装された薬剤を取り出すためにデバイス操作によりカプセル等に吸入孔を開け、吸入操作により薬物が放出され、気管支や肺等に投与される。
DPIにおいては、患者が吸入する薬物粒子の粒子径と気道への沈着に密接な関係 [ファルマシア (1997) Vol. 33, No.6, 98-102] があり、どのような薬物粒子径が気管および肺内部に沈着するかという空気動力学的な相関が認められている。気管支や肺胞の部位まで到達できる薬物粒子の最適サイズは約 1〜6 μm の空気力学径を有する粒子であることが一般的に知られている [Int. J. Pharm. (1994) 101, 1-13]。
数 μm の粒子は肺胞に到達し、効率的に肺粘膜から吸収され血中に移行するため、全身的な作用を期待する場合には特にこの粒子サイズが重要となる。しかしながら、粒子を細かくすればするほど、粉体の流動性は悪化し、それに伴う生産時の充填精度やハンドリング性の低下が懸念される。さらには投与時にデバイスあるいはカプセル内部に付着することも想定される。そこで DPI 製剤を取り扱う中でこれらの問題を克服すべく、これら微粉末を担体となる乳糖等の粗い粒子と微細化薬物を混合する方法が良く知られている。これは微細化した薬物を乳糖表面に分子間相互作用により吸着させることにより微細化薬物の凝集力が弱められ、さらに全体として粒子径が大きくなり、製剤として流動性が向上するためである。その他の方法としては薬物の造粒、表面改質法があげられ、例えば国際公開WO99/27911号「軟質ペレット状薬剤およびその製造方法」は薬物の造粒による流動性向上を示唆している。
近年、上市されている薬剤、あるいは開発段階にある有用な医薬品候補化合物にはその溶解性が低いものが多く[ファルマシア (2005) 39 (3) 209]、これらの薬剤は低い生物学的利用率のためにその有効性が低く発現することがある。また、経口投与以外の処方で投薬する際には溶解性向上のために幾つかの製剤加工技術を必要とする場合がある。吸入剤の場合においても、薬剤の低溶解性が薬効の発現、作用時間に大きな影響を与えることは予想にたやすいところである。このことは医療現場における治療効率にも極めて大きな影響を与えうる。実際には、難溶性薬物を対象にシクロデキストリンを用いた可溶化技術や自己乳化型製剤として調製することによって、難溶性薬物でも粉末吸入製剤として提供することが不可能ではない。しかしながら、それらの処方は局所刺激性を示すことが多く、特に細胞膜障害性を有することがあるために臨床的には必ずしも適した処方設計とは言い難いのが実在である。それ故、如何にして難溶性薬物を易溶性に物性改善し、かつそれを乾燥した微細化粉末として処し、また維持するかが極めて重要な因子の一つとして考えられる。
上記のように、難溶性薬物にはこのような DPI に不向きな要因が多々存在するが、これら難溶性薬物のなかには実に有用な薬物が多く存在し、しかも局所投与とすることで極めて少ない投与量にて十分な局所薬理効果が得られることが多い。それ故、医療経済学上これらを有用に吸入剤とする製剤設計が求められているのである。
国際公開WO99/27911号
本発明の課題は、難溶性の薬物を可溶化して薬効を十分に発現しうる製剤設計、そして極めて少量の薬物を含量均一的に担体に混和させることが可能な薬物形態を開発することにある。
本発明は特に、溶解度が乏しく粉末吸入製剤としては十分な薬効を得難い数多くの薬物に対して、痛みを伴わない新規投与形態を与えることを課題とする。
本発明は更に、粉末吸入製剤に限らず、溶解度を向上させることによって作用発現時間を早めるとともに、作用を増強することによって薬剤投与量を減少させることをも課題とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、医薬化合物を高分子化合物の溶液中あるいは高分子化合物を過熱融解状態にて混合し、ウェットミルやナノミル等の粉砕器により微細化あるいは可溶化させ、次いで乾燥させて医薬化合物と高分子化合物との複合体(本発明では「高分子−医薬複合体」と称する)を製造した。そして高分子−医薬複合体の形態では医薬化合物が微粒子状態または高分子化合物に吸着された状態で高分子化合物中に極めて均一に分散していること、水への溶解性が高いことを見出し本発明を完成させるに至った。更に、高分子化合物としてヒドロキシプロピルセルロースを使用すると飛躍的に溶解性を向上させることに成功した。そして、高分子−医薬複合体は、経口投与だけでなく、従来は水難溶性の医薬化合物の投与が困難であった経肺投与、経鼻投与等の吸入投与により投薬された場合であっても、活性成分を十分に溶解させることができるという驚くべき効果を有する。すなわち、本発明は以下の(1)〜(24)を提供する。
(1)
医薬として許容される高分子化合物と、微粒子状態または該高分子化合物に吸着された状態で存在する医薬化合物とを含む高分子−医薬複合体を含有する医薬組成物。
(2)
高分子−医薬複合体を少なくとも含む、平均粒子径が20μm以下の二次微粒子と、
該二次微粒子を担持する、空気力学的に許容される粒径を有する担体と
を含有する、(1)の医薬組成物。
(3)
医薬化合物が水難溶性である、(2)の医薬組成物。
(4)
医薬化合物のlog Pが3以上である、(2)または(3)の医薬組成物。
(5)
医薬化合物が水難溶性のペプチドまたはタンパク質である、(2)〜(4)のいずれかの医薬組成物。
(6)
医薬化合物がサイクロスポリンである、(2)〜(5)のいずれかの医薬組成物。
(7)
二次微粒子と担体との比率が1:100〜10:1(重量比)の範囲である、(2)〜(6)のいずれかの医薬組成物。
(8)
担体の粒径が10〜200μmの範囲である、(2)〜(7)のいずれかの医薬組成物。
(9)
高分子−医薬複合体が、高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により製造された高分子−医薬複合体である、(2)〜(8)のいずれかの医薬組成物。
(10)
経肺投与または経鼻投与のための(2)〜(9)のいずれかの医薬組成物。
(11)
二次微粒子が前記高分子−医薬複合体と賦形剤とを含む、(2)〜(10)のいずれかの医薬組成物。
(12)
賦形剤が糖アルコール類である、(11)の医薬組成物。
(13)
高分子−医薬複合体と賦形剤との比率が1:5000〜10:1(重量比)の範囲である、(11)または(12)の医薬組成物。
(14)
高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により高分子−医薬複合体を製造することを特徴とする、(2)〜(13)のいずれかの医薬組成物を製造する方法。
(15)
前記乾燥工程が、微粉砕混合物をスプレードライ法により乾燥させて平均粒子径が20μm以下の高分子−医薬複合体を得る工程であり、
得られた高分子−医薬複合体を二次粒子として担体に担持させる担持工程を更に含む、(14)の方法。
(16)
前記乾燥工程が、微粉砕混合物を凍結乾燥法により乾燥させて高分子−医薬複合体を得る工程であり、
得られた高分子−医薬複合体と賦形剤とを混合して混合物を形成し、該混合物を粉砕して平均粒子径が20μm以下の二次粒子を得る粉砕工程と、得られた二次粒子を担体に担持させる担持工程とを更に含む、(14)の方法。
(17)
医薬化合物が水難溶性である、(1)の医薬組成物。
(18)
医薬化合物のlog Pが3以上である、(17)の医薬組成物。
(19)
医薬化合物が水難溶性のペプチドまたはタンパク質である、(17)または(18)の医薬組成物。
(20)
医薬化合物がサイクロスポリンである、(17)〜(19)のいずれかの医薬組成物。
(21)
高分子化合物がヒドロキシプロピルセルロースである、(17)〜(20)のいずれかの医薬組成物。
(22)
高分子−医薬複合体が、高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により製造された高分子−医薬複合体である、(17)〜(21)のいずれかの医薬組成物。
(23)
経口投与のための(17)〜(22)のいずれかの医薬組成物。
(24)
高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により高分子−医薬複合体を製造することを特徴とする、(17)〜(23)のいずれかの医薬組成物を製造する方法。
本発明の医薬組成物によれば、医薬化合物を生体内で速やかに溶解させ、その作用を遅延することなく発揮させることができる。また本発明の医薬組成物は含量均一な製剤として製造することができる。
特に本発明の医薬組成物が吸入投与製剤である実施形態では、経口投与と比べて薬剤投与量を減少させることが可能であり、医療経済学的な見地からもその有用性がある。
以下、本発明を詳細に説明する。
[1] 医薬化合物
本発明において使用される医薬化合物(以下、「薬剤」と同義)としては、特に限定されるものではなく、医薬品として使用され、または将来使用されるものが含まれる。薬剤としては、粉末状で入手出来るもの、及び粉砕等の処理により粉末状に加工できるものを含む。本発明において使用できる薬剤の形状及び粒径等は特に限定されないが、薬剤が水に対して低い溶解性を示すもの、または溶解しても飽和後に析出しやすい物質である場合、本発明を特に効果的に使用できる。また、本発明において特に好ましくは原薬が高価で、低い生物学的利用能のために投与量の上昇を余儀なくされる薬剤である。
「水難溶性」の薬剤としては、典型的には水・オクタノール分配係数 log Pが3以上のものが挙げられる。
水難溶性薬物として、例えばグリセオフルビン、イトラコナゾール、ノルフロキサシン、タモキシフェン、サイクロスポリン、グリベンクラミド、トログリダゾン、ニフェジピン、フェネセチン、フェニトイン、ジギトキシン、ニルバジピン、ジアゼパム、クロラムフェニコール、インドメタシン、ニモジピン、ジヒドロエルゴトキシン、コルチゾン、デキサメタゾン、ナプロキセン、ツルブテロール、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、プランルカスト、トラニラスト、ロラチジン、タクロリムス、アンプレナビル、ベクサロテン、カルシトロール、クロファジミン、ジゴキシン、ドキセルカルシフェロール、ドロナビノール、エトポジド、イソトレチノイン、ロピナビル、リトナビル、プロゲステロン、サキナビル、シロリムス、トレチノイン、バルプロ酸、アムホテリシン、フェノルドパム、メルファラン、パリカルシトール、プロポフォル、ボリコナゾール、ジプラシドン、ドセタキセル、ハロペリドール、ロラゼパム、テニポジド、テストステロン、バルルビシン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、肺・呼吸器疾患治療の直接投与方法としても本発明製剤を利用することが出来る。
医薬化合物には、医薬として有効である限り、塩、水和物等のいずれの形態も包含される。
[2] 高分子化合物
本発明において高分子化合物としては、医薬として許容されるものであれば特に限定されず、例えば水溶性セルロース類、合成高分子類、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。また、これらから選択される1種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
高分子化合物としては水溶性の高分子化合物が特に好ましい。
合成高分子類としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、またはゼラチン等、或いはそれらの誘導体が挙げられる。ポリビニルピロリドンとして具体的にはプラスドンC−15(ISP TECHNOLOGIES社製)、コリドンVA64、コリドンK−30、コリドンCL−M(KAWARLAL社製)、コリコートIR(BASF社製)等が挙げられる。ゼラチン誘導体とは、ゼラチン分子に疎水性基を共有結合させて誘導体化したゼラチンを表す。疎水性基としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリエステル類、コレステロールやホスファチジルエタノールアミンなどの脂質、アルキル基、ベンゼン環を含む芳香族基、複素芳香族基など、およびこれらの混合物が挙げられる。
具体的には、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール及びこれらの共重合体)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリアリルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、生分解性ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、サクシネート系重合体、ポリヒドロキシアルカノエート)、ポリグリコール酸、ポリリンゴ酸、ポリジオキサノン、およびポリアミノ酸、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。またこのうち、ポリアミノ酸としてはポリαグルタミン酸、ポリγグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリセリン等の酸性、塩基性、非荷電親水性および疎水性アミノ酸単独重合体及び共重合体が挙げられる。サクシネート系重合体として、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等が挙げられ、ポリヒドロキシアルカノエートとして、ポリヒドロキシプロピオナート、ポリヒドロキシブチラート、ポリヒドロキシパリラート等が挙げられる。ゼラチンの誘導体化に利用される天然高分子化合物としては、タンパク質、多糖、核酸などが挙げられ、それらの誘導体、あるいは上記合成高分子化合物との共重合体も含まれる。さらにキチン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、デンプン、ペクチン等の多糖類、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、アルブミン等のタンパク質、ポリ−γ−グルタミン酸、ポリ−L−リジン、ポリアルギニンなどのポリアミノ酸、ならびにそれらの誘導体も用いることが出来るし、メチルセルロース等のアルキルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース、ポリビニルアルコール等が同様に使用できる。特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸が溶解度向上の面で好ましい。
ヒドロキシプロピルセルロースとしては分子量や置換度(ならびに分子量や置換度に依存すると考えられる粘度)が異なる種々の製品が各社から市販されており、いずれも本発明に使用することができる。ヒドロキシプロピルセルロースとして分子量15,000〜400,000の範囲のものを好適に使用することができ、典型的には分子量15,000〜30,000(例えば、日本曹達製HPC−SSL)、分子量30,000〜50,000(例えば、日本曹達製HPC−SL)、分子量55,000〜70,000(例えば、日本曹達製HPC−L)、分子量110,000〜150,000(例えば、日本曹達製HPC−M)、分子量250,000〜400,000(例えば、日本曹達製HPC−H)等の種々の分子量範囲のものを使用することができる。また、ヒドロキシプロピルセルロースとして2%水溶液(20℃)粘度が2.0〜4000センチポイズ(cps)のものを好適に使用することができ、典型的には該粘度が2.0〜2.9cps(例えば上記HPC−SSL)、3.0〜5.9cps(例えば上記HPC−SL)、6.0〜10.0cps(例えば上記HPC−L)、150〜400cps(例えば上記HPC−M)、1000〜4000cps(例えば上記HPC−H)等の種々の粘度範囲のものを使用することができる。
高分子化合物(特に水溶性の高分子化合物)の含有量は、医薬組成物全体中に1〜75質量%、好ましくは1〜50質量%、更に好ましくは1〜35質量%、特に好ましくは1〜30質量%である。高分子化合物の含有量が1質量%より少ないと水への再分散が困難となる場合があり、75質量%より多いと製剤中に高分子化合物の割合が大きくなることで、投与量及び製剤サイズが大きくなるとともに、粉体の強度が低下するため好ましくない場合がある。難溶性薬物に対する高分子化合物の添加比率は、難溶性薬物1質量に対して高分子化合物0.1〜5質量が好ましい。高分子化合物の比率が1より小さいと高分子−医薬複合体中の難溶性薬物を完全に非晶状態にすることができない場合があり、5よりも大きい場合は製剤中の高分子化合物の割合が大きくなるため、結果として製剤サイズが大きくなるとともに溶出速度の低下が見られ、一般的な製剤として適さない場合がある。
[3] 高分子−医薬複合体
医薬化合物は、高分子化合物の繊維中に微粒子状態(例えば平均粒子径10nm以上数μm(例えば2または3μm)以下の範囲、好ましくは10nm以上1μm未満の範囲、より好ましくは数十nm(例えば20または30nm)以上1μm未満の範囲)で均一に分散され又は包括されて存在しているか、或いは、該高分子化合物に吸着された状態で均一に存在している。本発明ではこのような複合体を「高分子−医薬複合体」または「固体分散体」と称する。
本発明の高分子−医薬複合体は、例えば、混合粉砕、溶媒法、溶融法、加熱加圧溶融混練法により調製できる。
混合粉砕法とは、医薬化合物を高分子化合物と共に混合した後、医薬化合物が非晶質状態あるいは粉砕条件を制御することによって結晶状態となるように粉砕する方法をいう。
混合粉砕法においては、医薬化合物と高分子化合物に更に溶媒を加えて混合物とし、粉砕することが好ましい。本発明ではこのような混合粉砕法を特に湿式微粉砕法ということがある。湿式微粉砕法においては、好ましくは、使用する溶媒に対して医薬化合物が難溶性であり、高分子化合物が溶解性である。溶媒としては水が特に好ましく、溶媒が水である場合には医薬化合物は水難溶性であり、高分子化合物は水溶性であることが好ましい。
混合および粉砕は、混合機および粉砕機を用いて常法で行うことができる。ここで、粉砕は水溶性高分子と難溶性薬物をシンキーミキサー、ウェットミル、カッターミル、ボールミル、ハンマーミル、乳鉢等により行うことが好ましい。
湿式微粉砕法における水の量はそのミルの性能に依存するが、被験物質(医薬化合物)の最終濃度が 0.1 mg/mL から 1 g/mL 程度になるよう調整することが望ましい。ミル内設定温度は特に限定はしないが、0から60℃の範囲が望ましい。
溶媒法とは、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を、水溶性高分子物質と共に有機溶媒に溶解または分散させた後、有機溶媒を常法により除去する方法である。
有機溶媒に溶解または分散させる方法としては、(i)難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩のみを有機溶媒に溶解または分散させ、この溶液を水溶性高分子物質に分散させる方法、および、(ii)難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を、水溶性高分子物質と共に有機溶媒に溶解または分散させる方法が挙げられる。
溶媒法に用いられる有機溶媒としては、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を溶解または分散するものであれば特に制限はない。このような有機溶媒としては、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル)、脂肪族炭化水素類(例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、有機酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸)、エステル類(例えば、酢酸エチル)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒の中で、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、それらの混合溶媒が好適である。更に好適には、ジクロロメタン、メタノール、エタノール及びそれらの混合溶媒が挙げられる。
また溶媒法に用いられる有機溶媒として、上記有機溶媒と水との混合溶媒も挙げられる。
難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を水溶性高分子物質に分散かつ吸着させる方法として、具体的には、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を有機溶媒に溶解させ、さらに水溶性高分子物質を該有機溶媒に溶解または分散させ、この有機溶媒を常法により、減圧下または常圧下で留去する方法、または、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を有機溶媒に溶解させ、さらに水溶性高分子物質を該有機溶媒に溶解または分散させ、その混合液を賦形剤、崩壊剤等の助剤と共に、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、スプレードライ装置、ボーレコンテナミキサー、V型混合装置等の装置を用いて、造粒または混合を行った後、有機溶媒を常法により、減圧下または常圧下で留去する方法が挙げられる。
有機溶媒の除去としては、例えば、減圧乾燥または加熱乾燥することにより行うことができる。処理圧力、処理温度、処理時間等の条件は、使用する化合物、水溶性高分子物質、有機溶媒等により異なるが、処理圧力としては、1mmHg〜常圧、処理温度としては、室温〜250℃、処理時間としては、数分〜数日の範囲内である。
溶融法とは、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩を加熱下で水溶性高分子物質に溶解または分散させた後、冷却する方法をいう。溶解または分散させる方法としては、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩、または、水溶性高分子物質の融点もしくは軟化点以上に加熱して撹拌する方法が挙げられる。この場合、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル、ヒマシ油、トリアセチン)や界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)を添加剤として添加することができる。
溶融法による高分子−医薬複合体医薬製剤は、例えば加熱付き攪拌造粒装置を用いて製造される。
具体的には、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩と水溶性高分子物質との混合物を予め調製する。この混合物には必要に応じて、前述の可塑剤や界面活性剤等を添加してもよい。処理温度、処理時間等の条件は、使用する化合物、水溶性高分子物質、添加剤等により異なるが、処理温度としては、室温〜300℃、処理時間としては、数分〜十数時間の範囲内である。また、冷却温度としては、−100℃〜室温の範囲内である。
加熱加圧溶融混練法とは、難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩と水溶性高分子物質を加熱及び加圧下で混合する方法をいう。処理スクリュー回転数、処理温度、処理時間等の条件は、使用する化合物、水溶性高分子物質、添加剤等により異なるが、処理スクリュー回転数としては、10〜500rpm、処理温度としては、室温〜300℃、処理時間としては、数分〜十数時間の範囲内である。加熱加圧溶融混練法による高分子−医薬複合体は、例えば加熱装置を備えた多軸エクストルーダー、混練機等を用いて製造される。具体的には、例えば以下のようにして製造される。
難溶性薬物またはその医薬的に許容される塩と水溶性高分子物質及び必要に応じて前述の添加剤を予め混合する。これを粉体供給速度10〜200g/分で供給する。処理スクリュー回転数50〜300rpm、処理温度25℃〜300℃で行う。このプラスチック様の高分子−医薬複合体を、粉砕機を用いて粉砕し、高分子−医薬複合体を得る。
上記の手順により製造された本発明における高分子−医薬複合体は、そのまま散剤、細粒剤、顆粒剤として使用することができるが、常法に従って、さらに製剤に加工する工程(例えば、混合工程、造粒工程、練合工程、打錠工程、カプセル充填工程、コーティング工程)を経て、錠剤やカプセル剤等の高分子−医薬複合体を含む医薬製剤にすることができる。また、後述の通り、乾燥後に空気力学的に吸入可能な粒子に粉砕し、キャリアーと混合することによって粉末吸入製剤として利用することが出来る。ここで、混合工程とは、例えば、本発明の高分子−医薬複合体を他の化合物と混合装置等によって混合する工程をいい、造粒工程とは、例えば、本発明の高分子−医薬複合体を造粒混合装置等によって造粒する工程をいい、練合工程とは、例えば本発明の高分子−医薬複合体を練合装置等によって練合する工程をいい、打錠工程とは、例えば、本発明の高分子−医薬複合体を打錠装置等によって打錠する工程をいい、カプセル充填工程とは、例えば、本発明の高分子−医薬複合体をカプセル充填装置等によってカプセル充填する工程をいい、コーティング工程とは、例えば、本発明の高分子−医薬複合体にコーティング剤を用いてコーティング装置等によってコーティングする工程をいう。
[4] 医薬組成物の形態
上記の手順で得られた高分子−医薬複合体は、経口投与用の製剤に製剤化することもできるし、経肺投与、経鼻投与などの吸入投与用の製剤に製剤化することもできる。
吸入投与用の製剤は、高分子−医薬複合体を少なくとも含む、平均粒子径が20μm以下の二次微粒子と、該二次微粒子を担持する、空気力学的に許容される粒径を有する担体とを含有することが好ましい。ここで二次粒子は、高分子−医薬複合体の乾燥物自体が所定の粒子径を有するように調製されたものであってもよいし、高分子−医薬複合体と賦形剤との混合物をジェットミル等の粉砕手段により粉砕し、平均粒子径を20μm以下としたものであってもよい。
[5] 賦形剤
通常、賦形剤は散剤、錠剤などの固形製剤の増量、希釈、充填、補形等の目的で加えられるものであり、主薬の放出特性に大きく影響するので、その選択あるいは変更には注意を要する。本発明において、賦形剤は、薬剤の溶解性を高めるため、及び/又は自己凝集能を低減させるために効果的である。従って、賦形剤としては、水易溶性のものが好ましいが、著しく吸湿するものは本製剤の性質上好ましくない。本発明において、賦形剤は、一般的に使用されるデンプン類、乳糖、ブドウ糖、白糖、結晶セルロース、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が用いられるが、生物学的に不活性であり、かつある程度の代謝が期待されるものを用いても良い。その他、エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、蔗糖、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、寒天、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ステアリン酸等の脂肪酸あるいはその塩、ワックス類などを用いても良い。本発明において特に好ましい賦形剤は、乳糖及びエリスリトールである。
本発明の製剤において、上記高分子−医薬複合体と賦形剤との比率は、重量で1:5000〜10:1の範囲であるのが好ましい。この範囲よりも薬剤が多くなると含量均一性に支障が生じる可能性があり、賦形剤が多くなるとある種の薬剤では薬理活性の消失の恐れがある。
一方、近年、DPI において吸収率を向上させる技術として、エンハンサーを加えた製剤技術や薬物を脂質の層に封入した製剤処方が良く知られるようになった。エンハンサーとしてはクエン酸、カプリン酸をはじめとする有機酸やバシトラシンのような酵素阻害剤、さらには NO 発生剤などが知られている(Drug Delivery System (2001) 16, 297; Drug Delivery System (2001) 16, 299)。また、リポソームの基質としてはキトサンなどの高分子化合物がよく知られている。これらはあくまで薬剤の膜透過性を向上させることが主たる目的であって、必ずしも製剤の目的組織(肺・気管支)到達率が向上するわけではない。吸収率が飛躍的に向上しようとも、薬剤が目的とする組織に到達しない限りは臨床応用が可能とは必ずしも言うことはできない。従って、本製剤処方をこのような何らかの目的による工夫が施された製剤設計にも応用することは、更なる良好な製剤特性獲得を可能にするものである。
[6] 担体
本発明において、担体は、粉末製剤投与までの薬剤の凝集を防ぐと共に、投与時には、吸入器を用いた吸入操作の際に効率良く分離して吸収効率を高めるために使用する。DPI 処方設計に担体を使用する際は、薬剤がカプセルまたはデバイスから確実に放出され、担体表面から高い確率で薬物が分離されることが望ましく、十分配慮して製剤設計を行う必要がある。担体の使用に際しては製剤の流動性及び薬物凝集の予防、投与量増減の可否等が重要になる。従って担体の選択基準として毒性や物理化学的安定性はもちろんのこと、ハンドリングの際の容易性や作業性が問われることになり、この問題点をクリアすべく、従来その安定性も確立され、中性で反応性が少なくやや甘みもある乳糖は多くの点において有用であり、DPI 用の担体として有用性が確認されている [Int. J. Pharm. (1998) 172, 179-188]。本発明において使用し得る担体として、乳糖の他、ブドウ糖、果糖、マンニトール、蔗糖、麦芽糖およびデキストラン類の糖類、並びに硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の一般的な賦形剤も挙げることができ、特に限定するものではない。
本発明の医薬組成物が吸入器を用いて投与される形態である場合には、担体は、空気力学的に許容される粒径を有するものである。具体的には、担体の粒径は10〜200μmの範囲である。
担体としてのみ製剤設計上作用させたい際には、その粒径を大きくすればよいことが知られているが、同時に粒径を大きくすれば担体は咽喉あるいは口腔にて留まることも周知の事実である。従って、担体自体は生物学的にみて不活性であるものの、肺にまで到達するのを防ぐ方が望ましい場合は、その粒径を少なくとも 10 μm以上にすれば問題ない。さらに最良の条件を求める場合には主剤と混合した賦形剤との適合性等をも考慮したうえでの素材選択が望まれるが、特に大きな問題が認められない限りは賦形剤と同様の材質の担体を選択することが好ましい。
高分子−医薬複合体と賦形剤とを含有する二次粒子と担体の比率は、1:100〜10:1の範囲とすることが好ましい。この範囲よりも二次粒子が多くなると含量均一性に支障が生じる可能性があり、担体が多くなるとある種の薬剤では薬理活性の消失の恐れがある。
[7] 高分子−医薬複合体と賦形剤の混合・粉砕工程
本発明の吸入投与用の粉末製剤の製造は、まず、高分子−医薬複合体及び賦形剤の混合・粉砕工程を含む。粉砕は、例えば、賦形剤及び高分子−医薬複合体を空気力学的粉砕器によって混合と同時に行われる。本発明の粉末製剤の製造方法は特に限定されるものではなく、当業者が通常使用する方法を適宜使用することができる。いずれの方法を使用するかは、薬剤及び賦形剤の種類、最終的な粒子の大きさ等によって適宜決定することができる。化合物の結晶状態と付着性・分散性等の製剤特性は相関することが多く、それ故本工程においては望ましくは後者の処理方法を選択するべきである。但し、エリスリトールを使用する場合においては、本化合物の極めて高い結晶配向性により、いずれの工程を選択しても良好な粉砕混合物を得ることができる。
本発明において、薬剤及び賦形剤の粉砕には一般的な乾燥粉砕を用いることが出来るが、特に空気力学的粉砕器を使用することが好ましい。具体的には、一般的な乾燥粉砕器として、実験室用に乳鉢やボールミル等少量を効率的に粉砕する装置が繁用されている。ボールミルとしては転動ボールミル、遠心ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルが知られており、これらは摩砕・回転・振動・衝撃などの原理で粉砕化を行うことが出来る。工業用としては媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミルなどの大量の原料を効率的に粉砕することを目的とした装置が多い。高速回転摩砕ミルには、ディスクミル、ローラーミルがあり、高速回転衝撃ミルにはカッターミル(ナイフミル)、ハンマーミル(アトマイザー)、ピンミル、スクリーンミル等回転衝撃に加え、剪断力によっても粉砕を行うものが存在する。ジェットミルは主に衝撃にて粉砕を行うものが多いが、その種類としては最もオーソドックスな粒子・粒子衝突型、粒子・衝突板衝突型、ノズル吸い込み型(吹き出し)型がある。
この粉砕工程によって、高分子−医薬複合体は賦形剤と均一に混合され、その平均粒子径が20μm以下の微細粒子である二次粒子になるように粉砕される。この粒径とすることで、投与後に担体から分離し、気管支や肺胞等の目的の部位まで到達することができる。
[8] 担体と二次粒子の混合工程
上記混合・粉砕工程で得られた二次粒子は、次いで担体と混合し、投与時まで安定な複合体を形成するようにする。
担体と微細粒子の混合は、一般的に知られている混合機を用いることが出来る。主に回分式と連続式があり、回分式にはさらに回転型と固定型の二種が存在する。回転型には水平円筒型混合機、V 型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機があり、固定型にはスクリュー型(垂直、水平)混合機、旋回スクリュー型混合機、リボン型(垂直、水平)混合機が存在する。連続式もやはり回転型と固定型の二種に分かれ、回転型は水平円筒型混合機、水平円錐型混合機、そして固定型にはスクリュー型(垂直、水平)混合機、リボン型(垂直、水平)混合機、回転円盤型混合機が知られている。この他に、媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミル等の空気力学的粉砕器を利用した混合方法や、ナイロン性あるいはそれに準ずる性質からなる袋を利用し、撹拌することにより均一な混合製剤を作ることが可能である。
[9] 吸入器
上記工程で得られた本発明の吸入投与用の粉末製剤は、経肺投与、経鼻投与などの経粘膜投与により、被験体に投与することができる。具体的には、投与経路が経肺投与である場合、当分野で使用されるいずれかの吸入器を使用して投与することができる。
吸入器としては、スピンヘラー、イーヘラー、FlowCaps、ジェットヘラー、ディスクヘラー、ローターヘーラー、インスパイヤーイース、インハレーションエイト等の吸入経肺用デバイスや定量的噴霧器等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
メチルセルロース(30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 min の各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 95% であった。本実施例で得られた固体分散体を「製剤1固体分散体」と称する。
なお本実施例および以下の実施例において「固体分散体」とは「高分子−医薬複合体」に該当する。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-H, 約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L, 約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL, 約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し,サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ポリビニルピロリドン(PVP-K30, 約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ポリビニルピロリドン(PVP-K90, 約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
アミノアルキルメタクリレート(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒアルロン酸(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ポリエチレングリコール(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のサイクロスポリン分散物(ポリマー:サイクロスポリン=約 3:10)を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
ポリグルタミン酸(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL の分散物を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるサイクロスポリン固体分散体の製造
キトサン(約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のサイクロスポリンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL の分散物を得た。このサイクロスポリン分散物を凍結乾燥し、サイクロスポリンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
サイクロスポリン固体分散体を用いた粉末吸入製剤の試作
実施例1〜13 において作製したサイクロスポリン固体分散体(約 10 mg)について、エリスリトール(約 50 mg)と混和後、ジェットミルによって微細化を行って、微細化された二次粒子を調製し、次いで、担体とともに粉末吸入製剤として適した粒径に調節した。
(粉砕条件)
Figure 2010132605
収率はそれぞれ次の通りであった。
Figure 2010132605
それぞれの微細化された二次粒子をレーザー回折装置(セイシン企業)にて評価したところ、平均粒径は 2.0〜4.8 mm の範囲であった。これらは吸入時に気道・肺に到達しうる粒子径と考えられる。各二次粒子を乳糖担体もしくは糖アルコール担体と混和することによって、粉末吸入製剤をそれぞれ得た。この時、二次粒子と担体との混合比率は 2:10 であった。
実施例1記載の固体分散剤から得られた二次粒子を「製剤1二次粒子」と呼ぶ。「製剤1二次粒子」から得られた粉末吸入製剤を「製剤1粉末吸入製剤」と呼ぶ。
サイクロスポリン物理混合物を用いた粉末吸入製剤(対照製剤)の試作
サイクロスポリンとメチルセルロースを乳鉢にて混合し、さらに以下の条件に従いエリスリトールとともに微細化処理を行って、微細化された二次粒子を調製した。この時、収率は 86% であった。原料の使用量は実施例14の調製例と同様である。
(粉砕条件)
Figure 2010132605
得られた微細化された二次粒子を乳糖担体と混和することによって、粉末吸入製剤を得た。この時、二次粒子と担体との混合比率は 2:10 であった。
ここでサイクロスポリンとメチルセルロースを乳鉢にて混合した混合物を「製剤2混合物」と呼ぶ。製剤2混合物から得られた二次粒子を「製剤2二次粒子」と呼ぶ。「製剤2二次粒子」から得られた粉末吸入製剤を「製剤2粉末吸入製剤」と呼ぶ。
カスケードインパクターによる 製剤 1 粉末吸入製剤評価
粉体の空気力学的粒径に関して調査を行うため、人工気道および肺モデルであるカスケードインパクターにて検討を行った。本体は8段のステージと最終フィルターを重ねたものであり、これに流速計と吸引ポンプを組み合わせたものである。基本的な方法はUSP 2000 "Physical Tests and Determinations/Aerosols" 中 "Multistage Cascade Impactor Apparatus"記載の手法を適用した。具体的な方法は次の通りである。
(方法)
Figure 2010132605
本製剤を日局2号カプセルに適量充填し、デバイスに設置した。
Figure 2010132605
(結果)
UPLCにおける各定量値を下記に示す。
Figure 2010132605
カスケードインパクターによる空気力学的粒径の評価から、製剤 1 粉末吸入製剤は主にステージ 0 とステージ 3 〜 4 に分布していることが示された。ステージ 0 に分布する粒子は担体から解離していない微粒子中に含まれるサイクロスポリンであると推測される。解離した微粒子は主にステージ 3 〜 4 に分布していることが示された。ステージ 2 〜 7 に分布する粒子のパーセント量は、「標的部位である気管支や肺胞にたどりつく割合」として RF 値で定義される。本実施例における RF 値は 50% を超えるものであり、気管支および肺胞などの標的部位に十分に到達し、局所的に効果を発現するものと考えられる。また、カプセルからの放出についても、製剤の 95.7%がカプセルから排出されていることが確認され、その高い流動性・分散性も示された。
製剤1固体分散体と製剤2混合物の溶出試験
Wet mill 法によって調製された製剤におけるサイクロスポリンの溶解性を確認するために溶出試験による検討を行った。本溶出試験は、マグネチックスターラーを用いた攪拌下で行われたものである。サンプル中サイクロスポリンの定量は実施例16に示された定量法を用いて行った。具体的な方法は次の通りである。
(方法)
Figure 2010132605
本試験は、100 mL のスケールで行い、試験に用いた製剤量はサイクロスポリン量が、飽和濃度である 30 mg/L となるように秤量した。溶出試験は 60 分間行い、1、3、5、10、15、30、60 分においてサンプルの採取を行った。析出防止のため、等量のエタノールを加えたものを定量用サンプルとし、試験終了時に、試験液中のサイクロスポリン量を求めるため、残った試験液と等量のエタノールを加えたものを全量サンプルとした。なお、対照試料として、サイクロスポリン原末 (API)、サイクロスポリンとメチルセルロースの物理的混合物 (製剤2混合物) を用いた。
(結果)
本溶出試験の結果を図1に示す。
溶出試験の結果から、Wet mill 法によるナノ粉砕処理によってサイクロスポリンの溶解性が顕著に改善されていることが確認された。溶解速度が著しく向上したことから、その吸収速度の増大、薬効発現の速効性も強く示唆される。また、製剤2混合物において、API と比較し若干の改善を示したことから、メチルセルロースが溶解補助作用を示す可能性も示唆された。
卵白由来ovalbumin (OVA) 感作モデル動物の作製および製剤 1 粉末吸入製剤の気道内投与
近年、サイクロスポリンは気道における好酸球浸潤を抑制し、喘息に対し治療効果があるとの報告がされている。そこで、喘息モデルである OVA 感作動物モデルを用いて製剤 1 粉末吸入製剤の薬効を評価した。本モデルは、抗原となる OVA を感作した動物に対し、OVA 粉末吸入製剤を気道内投与することで呼吸器における局所的な炎症を惹起させるモデルである。以下にモデル作製および製剤 1 粉末吸入製剤気道内投与の具体的な方法を示す。
(方法)
動物: Sprague-Dawley rat (8-11 週齢)
試薬: 卵白由来 ovalbumin (SIGMA)、水酸化アルミニウムゲル (SIGMA)
気道内投与器具: DP-4 (株式会社イナリサーチ)
0、7、14日目において、 OVA 溶液 (OVA: 100 μg/rat、水酸化アルミニウム: 5 mg/rat を含む) を腹腔内投与し、最終感作の 24 時間後に、OVA 粉末吸入製剤 6 mg (OVA 量として 100 μg) を気道内投与した。気道内投与は、ペントバルビタール麻酔下、DP-4 を気道内に挿入し、圧縮空気を送ることで行った。なお、コントロール群に対しては、乳糖を用いて作製した粉末吸入製剤を用いた。
製剤 1 粉末吸入製剤の前投与は、OVA 粉末吸入製剤の投与 1 時間前に行い、その対照として、乳糖粉末吸入製剤および物理的混合物(PM)を用いて作製した粉末吸入製剤(製剤2粉末吸入製剤)を用いた。
Figure 2010132605
肺組織凍結切片の作製・染色、組織浸潤炎症性細胞の計数
気管支、細気管支における炎症を評価するために肺組織切片の作製を行った。肺切片は炎症性細胞である、顆粒球特異的に染色が可能なペルオキシダーゼ・ヘマトキシリン染色により染色し、鏡検により炎症性細胞の気道組織への浸潤を確認した。
肺の摘出は、OVA-DPI の気道内投与 24 時間後に行い、10% 中性緩衝性ホルマリンにて固定した。固定後、30% スクロース溶液に 24 時間浸し、OCT compound に包埋、液体窒素を用いて瞬間凍結した。切片は厚さ 12 μm に薄切した後、ペルオキシダーゼ・ヘマトキシリン染色を行った。図2にその染色写真を示す。図3には気道組織周辺における炎症性細胞の計数結果を示す。
染色・炎症性細胞の計数の結果、OVA 群において、顆粒球の顕著な浸潤が確認された。この浸潤は、製剤2粉末吸入製剤および、製剤1粉末吸入製剤の前投与により有意に抑制されることが確認された。また、製剤 1粉末吸入製剤は製剤2粉末吸入製剤と比較すると、細胞浸潤をより強く抑制していることが示された。
気管支肺胞洗浄液(BALF) 採取、BALF 中総細胞数
BALF は呼吸器疾患の診断に有用であるとされ、本実施例ではBALF 中総細胞数の計数を行うことにより炎症・組織障害の評価を行った。OVA 投与 24 時間後にネンブタール麻酔下、腹部大動脈より脱血させた後、気道にカニューレを挿入し生理食塩水 5 mL にて洗浄を行い、BALFを採取した。採取した BALF は1,000 rpm で 5 分間遠心にかけ上清を除き、PBS 1 mL で再び懸濁した。BALF 中総細胞数の計数は、手動血球計数器を用いて鏡検下で行った。図4に BALF 中細胞計数の結果を示す。
BALF 中総細胞数の計数の結果、OVA 群においては総細胞数の増大が示され、製剤2粉末吸入製剤、製剤1粉末吸入製剤の投与によりその上昇が抑制される傾向が確認された。気道における浸潤顆粒球数の結果と同様に、製剤 1粉末吸入製剤は製剤2粉末吸入製剤と比較して BALF 中総細胞数の上昇をより強く抑制することが示唆された。
Wet mill 製剤(固体分散体)溶出試験
ヒドロキシプロピルセルロース(3 種類: HPC-H;実施例2、HPC-L;実施例3、HPC-SL;実施例4)、ポリビニルピロリドン (2 種類: PVP-K30;実施例6、PVP-K90;実施例7)、 ヒドロキシプロピルセルロース (HPMC;実施例5) とサイクロスポリンとのWet millによる固体分散体についても併せて溶出試験を行った。試験方法は実施例17で示した方法と同様である。サンプル中サイクロスポリンの定量は実施例16に示された定量法を用いて行った。具体的な方法は次の通りである。
(方法)
Figure 2010132605
本試験は、100 mL のスケールで行い、試験に用いた製剤量はサイクロスポリン量が、飽和濃度である 30 mg/L となるように秤量した。溶出試験は 60 分間行い、1、3、5、10、15、30、60 分においてサンプルの採取を行った。析出防止のため、等量のエタノールを加えたものを定量用サンプルとし、試験終了時に、試験液中のサイクロスポリン量を求めるため、残った試験液と等量のエタノールを加えたものを全量サンプルとした。なお、対照試料としてサイクロスポリン原末 (API) を用いた。
(結果)
本溶出試験の結果を図5に示す。
これら製剤の溶出試験結果から、本実施例で行ったすべての製剤においてサイクロスポリンの溶解性が改善されていることが示された。中でも、3 種類の HPC については、製剤 1 固体分散体を上回る結果が確認された。サイクロスポリン溶解性の改善は、Wet-millによるナノ粉砕処理に加えて、サイクロスポリンとポリマーの間の相互作用にも起因するものと考えられる。溶解速度が改善されることで吸収率の向上・薬効の即効性が期待される。
HPC-SSL 固体分散体製剤経口投与後におけるサイクロスポリン血中濃度推移
実施例21の溶出試験の結果、溶解性の顕著な上昇が確認されたことから、実際の生体内においても、高い溶出速度を示し、その吸収性が改善されると推測される。本実施例は、生体内における吸収性向上の確認を目的とし、ラットに対し HPC-SSL 固体分散体製剤経口投与後、経時的に血中濃度測定を行った。以下に具体的な方法を示す。
(方法)
Figure 2010132605
薬物は、精製水に懸濁後、速やかに経口投与した。対照薬物は、サイクロスポリン原末 (API)を用いた。薬物経口投与後、上記の時間で尾静脈より採血を行った。採血後の血液は速やかに遠心分離器にかけ (10 分間、10,000 g、4℃)、血漿を採取し除タンパク、フィルターによるろ過を行い血漿サンプルとした。血漿中サイクロスポリン濃度は以下に示した方法を用いて定量を行った。
Figure 2010132605
(結果)
図6に本実施例における結果を示した。
経口投与後の血中濃度の測定結果より、HPC-SSL 固体分散体製剤(実施例4)における吸収性が著しく向上したことが確認された。HPC-SSL 固体分散体製剤の最高血中濃度は、API の約 15 倍にまで達し、 Tmax が短縮したことから薬効の早期発現も期待される。これらの結果は、Wet-millによるナノ粉砕処理に加えて、溶解性の改善に基づく吸収性の増大にも起因するものと考えられ、本知見は HPC-SSL 固体分散体製剤の有用性を示唆する結果となった。
ウェットミルによるグリセオフルビン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のグリセオフルビンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のグリセオフルビン分散物(ポリマー:グリセオフルビン=約 3:9)を得た。このグリセオフルビン分散物を凍結乾燥し、グリセオフルビンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるノルフロキサシン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のノルフロキサシンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のノルフロキサシン分散物(ポリマー:ノルフロキサシン=約 3:9)を得た。このノルフロキサシン分散物を凍結乾燥し、ノルフロキサシンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるタモキシフェン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のタモキシフェンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のタモキシフェン分散物(ポリマー:タモキシフェン=約 3:9)を得た。このタモキシフェン分散物を凍結乾燥し、タモキシフェンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるグリベンクラミド固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のグリベンクラミドを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のグリベンクラミド分散物(ポリマー:グリベンクラミド=約 3:9)を得た。このグリベンクラミド分散物を凍結乾燥し、グリベンクラミドの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるニフェジピン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のニフェジピンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のニフェジピン分散物(ポリマー:ニフェジピン=約 3:9)を得た。このニフェジピン分散物を凍結乾燥し、ニフェジピンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるフェニトイン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のフェニトインを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のフェニトイン分散物(ポリマー:フェニトイン=約 3:9)を得た。このフェニトイン分散物を凍結乾燥し、フェニトインの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるデキサメタゾン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のデキサメタゾンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のデキサメタゾン分散物(ポリマー:デキサメタゾン=約 3:9)を得た。このデキサメタゾン分散物を凍結乾燥し、デキサメタゾンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるプランルカスト固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のプランルカストを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のプランルカスト分散物(ポリマー:プランルカスト=約 3:9)を得た。このプランルカスト分散物を凍結乾燥し、プランルカストの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるタクロリムス固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のタクロリムスを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のタクロリムス分散物(ポリマー:タクロリムス=約 3:9)を得た。このタクロリムス分散物を凍結乾燥し、タクロリムスの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるバルプロ酸固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のバルプロ酸を添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のバルプロ酸分散物(ポリマー:バルプロ酸=約 3:9)を得た。このバルプロ酸分散物を凍結乾燥し、バルプロ酸の固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるアムホテリシン固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のアムホテリシンを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のアムホテリシン分散物(ポリマー:アムホテリシン=約 3:9)を得た。このアムホテリシン分散物を凍結乾燥し、アムホテリシンの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
ウェットミルによるハロペリドール固体分散体の製造
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL:約 30 mg)を 10 mL の脱イオン水に溶解し、ポリマー溶液を調製した。また、自転・公転ミキサー内には 100 mg のハロペリドールを添加した。自転・公転ミキサー ARE-250 を用いて、直径19.2 cm, 懸濁物分散温度 25℃ の条件で、ジルコニアビーズ(YTZ, ニッカトー)の存在下、1000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 2000 rpm−2 min, 400 rpm−1 minの各ステップごとに適当量のポリマー溶液を加えた条件で攪拌し、最終製剤として10 mg/mL のハロペリドール分散物(ポリマー:ハロペリドール=約 3:9)を得た。このハロペリドール分散物を凍結乾燥し、ハロペリドールの固体分散体を得た。収率は約 90% 以上であった。
図1は製剤1固体分散体の溶出試験結果を示す。 図2は製剤1粉末吸入製剤を吸入投与した喘息モデルラットの肺組織切片の染色結果を示す。 図3は製剤1粉末吸入製剤を吸入投与した喘息モデルラットの気道組織周辺における炎症性細胞の計数結果を示す 図4は製剤1粉末吸入製剤を吸入投与した喘息モデルラットの気管支肺胞洗浄液 (BALF)中細胞計数の結果を示す。 図5はWet mill 製剤(固体分散体)の溶出試験の結果を示す。 図6はHPC-SSL固体分散体製剤の経口投与後におけるサイクロスポリン血中濃度の推移を示す。

Claims (24)

  1. 医薬として許容される高分子化合物と、微粒子状態または該高分子化合物に吸着された状態で存在する医薬化合物とを含む高分子−医薬複合体を含有する医薬組成物。
  2. 高分子−医薬複合体を少なくとも含む、平均粒子径が20μm以下の二次微粒子と、
    該二次微粒子を担持する、空気力学的に許容される粒径を有する担体と
    を含有する、請求項1の医薬組成物。
  3. 医薬化合物が水難溶性である、請求項2の医薬組成物。
  4. 医薬化合物のlog Pが3以上である、請求項2または3の医薬組成物。
  5. 医薬化合物が水難溶性のペプチドまたはタンパク質である、請求項2〜4のいずれかの医薬組成物。
  6. 医薬化合物がサイクロスポリンである、請求項2〜5のいずれかの医薬組成物。
  7. 二次微粒子と担体との比率が1:100〜10:1(重量比)の範囲である、請求項2〜6のいずれかの医薬組成物。
  8. 担体の粒径が10〜200μmの範囲である、請求項2〜7のいずれかの医薬組成物。
  9. 高分子−医薬複合体が、高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により製造された高分子−医薬複合体である、請求項2〜8のいずれかの医薬組成物。
  10. 経肺投与または経鼻投与のための請求項2〜9のいずれかの医薬組成物。
  11. 二次微粒子が前記高分子−医薬複合体と賦形剤とを含む、請求項2〜10のいずれかの医薬組成物。
  12. 賦形剤が糖アルコール類である、請求項11の医薬組成物。
  13. 高分子−医薬複合体と賦形剤との比率が1:5000〜10:1(重量比)の範囲である、請求項11または12の医薬組成物。
  14. 高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により高分子−医薬複合体を製造することを特徴とする、請求項2〜13のいずれかの医薬組成物を製造する方法。
  15. 前記乾燥工程が、微粉砕混合物をスプレードライ法により乾燥させて平均粒子径が20μm以下の高分子−医薬複合体を得る工程であり、
    得られた高分子−医薬複合体を二次粒子として担体に担持させる担持工程を更に含む、請求項14の方法。
  16. 前記乾燥工程が、微粉砕混合物を凍結乾燥法により乾燥させて高分子−医薬複合体を得る工程であり、
    得られた高分子−医薬複合体と賦形剤とを混合して混合物を形成し、該混合物を粉砕して平均粒子径が20μm以下の二次粒子を得る粉砕工程と、得られた二次粒子を担体に担持させる担持工程とを更に含む、請求項14の方法。
  17. 医薬化合物が水難溶性である、請求項1の医薬組成物。
  18. 医薬化合物のlog Pが3以上である、請求項17の医薬組成物。
  19. 医薬化合物が水難溶性のペプチドまたはタンパク質である、請求項17または18の医薬組成物。
  20. 医薬化合物がサイクロスポリンである、請求項17〜19のいずれかの医薬組成物。
  21. 高分子化合物がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項17〜20のいずれかの医薬組成物。
  22. 高分子−医薬複合体が、高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により製造された高分子−医薬複合体である、請求項17〜21のいずれかの医薬組成物。
  23. 経口投与のための請求項17〜22のいずれかの医薬組成物。
  24. 高分子化合物と医薬化合物と溶媒との混合物に湿式微粉砕処理を施す微粉砕工程と、微粉砕工程により得られた微粉砕混合物から前記溶媒を除去する乾燥工程とを含む方法により高分子−医薬複合体を製造することを特徴とする、請求項17〜23のいずれかの医薬組成物を製造する方法。
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