JP6174374B2 - 吸入用医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物の全身暴露、特に皮膚への移行を制御することができる医薬組成物に関する。本発明はまた、製剤学上ハンドリングが容易で且つ分散性向上のため薬剤含量の均一保持が可能である粉末吸入製剤に関する。
吸入療法は、経呼吸器の薬剤使用法として、肺および気道疾患への治療はもとより、疾病の診断、経気道および経肺全身薬剤投与、疾患の予防、並びに経気道免疫減感作療法などに適応されている。しかし、いずれの場合にも、この療法の適応決定法が十分に検討されておらず、また対応する吸入製剤の開発が望まれているところである。
一般的な吸入製剤の特徴としては、1)薬効が迅速に発現、2)漸進的な副作用の低減、3)小用量投与が可能、4)初回通過効果の回避等が認知されている。標的部位が肺である場合、小腸に匹敵するほどの広い表面積を有していることで、さらに優れた性質を備えている。
ターゲッティング療法として適用するにあたり、吸入製剤の選択基準方法は疾患への有効性だけではなく、薬剤粒子の発生法と到達部位、ならびにそれらと薬剤の基礎物性の関連性から考える必要がある。現在、吸入製剤は、気管支拡張剤、粘膜溶解剤、抗生物質、抗アレルギー剤、ステロイド剤、ワクチン、生理食塩水などに使用されており、これらの臨床への応用の際には吸入剤の作用部位、作用機構、組成と用法などが重要な因子と考えられている。
近年、気管支喘息や慢性肺疾患の治療において、粉末吸入剤(Dry Powder Inhaler、DPI)が注目されるようになってきた。この形態は、上述の吸入製剤としての特長のほか、薬剤を長期間安定な形態で保存できるという利点を有する。DPIにおいては、患者が吸入する薬物粒子の粒径と気道への沈着に密接な関係があり、どのような薬物粒径が気管および肺内部に沈着するかという空気動力学的な相関が認められている(ファルマシア(1997)Vol.33,No.6,98−102)。具体的には、気管支又は肺まで到達できる薬物粒子の最適サイズは、約1−6μmの空気力学径を有する粒子であることが一般的に知られている(Int.J.Pharm.(1994)101,1−13)。
好ましくは、数μm以下の粒子は肺胞に到達し、効率的に肺粘膜から吸収され血中に移行するため、この粒子サイズが重要となる。しかしながら、粒子を細かくすればするほど、粉体の流動性は悪化し、それに伴う生産時の充填精度やハンドリング性の低下が懸念される。そこでDPI製剤を取り扱う中でこれらの問題を克服すべく、後述する微細化粒子を、担体となる乳糖、エリスリトール等の粗い粒子と混和する方法が良く知られている。これは微細化粒子を担体表面に分子間相互作用により吸着させることにより、微細化粒子の凝集力が弱められ、さらに全体として粒径が大きくなり、製剤として流動性が向上するものである。その他の方法としては薬物の造粒、表面改質法があげられる(WO99/27911号)。
ここで、ピルフェニドン(以下、「PFD」ともいう。)は、特発性肺線維症に対して世界で初めて承認取得された抗線維化剤である。化学名は5−メチル−1−フェニル−1H−ピリジン−2−オンであり、下記の構造を有する。
Figure 0006174374
その作用機序は、炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカイン等の各種サイトカインおよび線維化形成に関与する増殖因子に対する産生調節作用であり、線維芽細胞増殖抑制作用やコラーゲン産生抑制作用等複合的な作用に基づき抗線維化作用を示す。本剤とステロイド系抗炎症剤であるプレドニゾロン:
Figure 0006174374
との比較により、プレドニゾロンは抗炎症作用のみを示したのに対し、本剤は抗炎症作用と抗線維化作用との両方を示し、それ故、ステロイドよりも有効な治療結果をもたらすことができると期待されている。既に日本でも2008年より販売され、広く肺線維症に用いられているものの、本剤を服用した患者の多くが薬剤性光線過敏症の副作用を示しており、その発現頻度は約6割にも至る。この問題を回避するために肺局所で作用を示しやすい適切な投与形態が望まれるところであるが、現在までのところ、経口製剤のみが上市されており、安定かつ局所投与を目的としたより好ましい製剤設計についてはその高い需要にも拘わらず検討されていない。すなわち、ピルフェニドンの副作用である光線過敏症リスクを低減させ、より安全な肺線維症治療をもたらす新しい剤形の開発が強く望まれている。微細化粒子を担体表面に吸着させたDPI製剤としては、担体として乳糖を用いた製剤(特許第4125512号)、シクロスポリン製剤(Journal of Controlled Release (2009),138(1),16−23)、トラニラスト製剤(特開2011−93849号;Journal of Pharmaceutical Sciences(2011),100(2),622−633;European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics(2011),77(1),178−181)などが報告されている。しかし、これらの文献には、前記DPI製剤による薬物の皮膚への移行制御、および光線過敏症リスク低下については記載されていない。
一方、ポリマーおよび線維化組織抑制化合物をリンカーにより化学結合させた線維組織抑制剤が薬物の放出を持続させ、薬物送達を増進させる技術(特表2006−522140号)、高分子化合物とそれに吸着された状態で存在する医薬化合物とを含む、高分子−医薬複合体が難溶性薬物の溶解度を向上させ、薬物投与量を減少させる技術(特開2010−132605号)、並びに、ピルフェニドンとポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポロキサマーから選択される担体とを含有する固体分散体が、ピルフェニドンの溶出速度を向上させる技術(CN102008446号)が報告されている。しかし、これらの文献には、前記DPI製剤による薬物の皮膚への移行制御、および光線過敏症リスク低下については何ら言及も示唆もない。
これに対して、最近、本発明者らは、ピルフェニドン等の薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物および賦形剤を含有する平均粒径20μm以下の微細化粒子、並びに平均粒径が10〜200μmの担体を含有するDPI製剤が、薬物の皮膚への移行を制御し光線過敏症リスクの低下をもたらすことを報告した(WO2013/039167号);Pharmaceutical Research(2013),30(6),1586−1596)
WO99/27911号 特許第4125512号 特開2011−93849号 特表2006−522140号 特開2010−132605号 CN102008446号 WO2013/039167号
ファルマシア(1997)Vol.33,No.6,98−102 Int.J.Pharm.(1994)101,1−13 Journal of Controlled Release (2009),138(1),16−23 Journal of Pharmaceutical Sciences(2011),100(2),622−633 European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics(2011),77(1),178−181 Pharmaceutical Research(2013),30(6),1586−1596
薬物は、一般に経口投与により血液を介して全身に移行し、従って、皮膚にもある程度移行し、これにより副作用を発現すると考えられている。そこで、本発明の課題は、薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物であるピルフェニドンの全身暴露、特に皮膚への移行を十分に制御することができる製剤の提供である。さらに好ましくは、ピルフェニドンが十分な薬効を示し、かつ優れた吸入特性を示す吸入製剤の提供である。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物であるピルフェニドンおよび徐放性基剤を含有する平均粒径20μm以下の固体分散体が前記課題を解決し得ることを発見し、本発明を完成した。
本発明はまた、前記固体分散体および担体を含有する粉末製剤に関する。
具体的に云えば、ピルフェニドンと徐放性基剤とを混和した後、ジェットミル等の粉砕器により空気力学的に肺に到達できる粒径の固体分散体を製造し、得られた固体分散体と適合性のよい空気力学的に呼吸器系まで到達不可能な粒径を有する担体とを混和することにより、極めて含量均一性の高い製剤を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。ピルフェニドンと徐放性基剤とを混和する方法は特に限定されるものではなく、均一混合法、湿式混合法または乾式混合法等、通常の混和方法によって行うことができる。これらの内、均一混合法が好ましい。均一混合法としては、例えば、溶媒または分散媒の存在下にピルフェニドンと徐放性基剤とを均一に混和し、その後、溶媒または分散媒を除去し乾燥する方法等が挙げられる。実験的肺炎症モデルラットに本製剤を気道内投与したとき、コントロール群が極めて高い肺障害性と好中球性炎症を認めたのに対し、ピルフェニドン吸入製剤投与群ではこれらを強力に抑制することができた。さらに、抗炎症作用を示さない用量のピルフェニドン(30mg/kg)をラットに経口投与すると、光線過敏症を起こさないものの速やかに皮膚への移行を認めた。これに対し、薬理学的に有効な投与量、例えば0.01mg/kg以上のピルフェニドン粉末吸入製剤を気道内投与したとき、その皮膚移行率は経口投与と比較し、顕著に抑制された。
より具体的には、例えば炎症抑制効果については、同じ粉末吸入製剤であっても、徐放性基剤による固体分散体を含有する本願発明の粉末吸入製剤は、例えば0.1mg/kgのピルフェニドン粉末吸入製剤投与量で顕著に炎症抑制効果が発現するのに対して、非徐放性基剤を含有する粉末吸入製剤では、1mg/kgの粉末吸入製剤投与量が必要であった。この様に、徐放性基剤を賦形剤として用いることにより、薬理活性の大幅な向上が図られることから、本願発明の粉末吸入製剤ではピルフェニドンの投与量を大幅に削減することができる(上記の例では、1/10の削減率)。そのため、皮膚への移行量も削減することができて、光線過敏症の副作用を低減することができる。更に、徐放性基剤を賦形剤として用いた場合の皮膚への移行率は、非徐放性基剤を賦形剤に用いた場合に比べて、前記投与量の削減(1/10)以上に低下することが実証され、ピルフェニドンの光線過敏症副作用の抑制に一層効果的であることが判った。以上のデータから、本発明の粉末吸入製剤は、徐放性基剤の作用によってその薬理学的な標的組織に直接薬剤を送達することにより投与量を著しく減少させ、なおかつそれに伴って重篤な副作用である薬剤性光線過敏症リスクを低下させうる顕著な効果を示す製剤であるといえる。すなわち、本発明は以下の(1)〜(13)を提供する。
(1)ピルフェニドンおよび徐放性基剤を含有する平均粒径が20μm以下の固体分散体。
(2)徐放性基剤がポリビニルアセテートおよびポリビニルピロリドンから成る混合物である、(1)に記載の固体分散体。
(3)徐放性基剤が、アクリル酸誘導体のポリマーである、(1)に記載の固体分散体。
(4)アクリル酸誘導体のポリマーがメタクリル酸コポリマーである、(3)に記載の固体分散体。
(5)メタクリル酸コポリマーがアミノアルキルメタクリレートコポリマーである、(4)に記載の固体分散体。
(6)ピルフェニドンと徐放性基剤との比率が重量比で1:5000〜10:1の範囲である、(1)から(5)のいずれか1つに記載の固体分散体。

(7)(1)〜(6)のいずれか1つに記載の固体分散体および担体を含有する、粉末製剤。
(8)担体が糖類および/または糖アルコール類である、(7)に記載の粉末製剤。
(9)担体が乳糖またはエリスリトールである、(8)に記載の粉末製剤。
(10)担体の平均粒径が10〜200μmである、(7)〜(9)のいずれか1つに記載の粉末製剤。
(11)固体分散体と担体との比率が重量比で1:100〜10:1の範囲である、(7)〜(10)のいずれか1つに記載の粉末製剤。
(12)経肺吸入用である、(7)〜(11)のいずれか1つに記載の粉末製剤。
本発明の徐放性基剤を賦形剤として用いるピルフェニドン医薬組成物によれば、薬剤性光線過敏症の副作用を示すピルフェニドン粉末を容易にエアゾール化することが可能であり、肺に極めて特異的にピルフェニドンを送達することによって、経口投与と比べて著しく低用量で炎症性肺疾患や肺線維症等の治療を可能とすると同時に、非徐放性基剤を賦形剤として用いる吸入投与の場合に比べても、かなりの低用量で炎症性肺疾患や肺線維症等の治療を可能とする。この用量の低減は、薬物の皮膚移行量の低減に繋がり、ピルフェニドンの主要な副作用である光線過敏症リスクを大幅に低減することが可能である。この副作用低減効果も、非徐放性基剤を賦形剤として用いる場合に比べて、徐放性基剤を賦形剤として用いる本発明では、用量の低下率を上回る率で皮膚への移行率が低減し、光線過敏症リスクの低減に寄与する。また本発明の医薬組成物は、より好ましくは含量均一な製剤として製造することができる。
図1は、ピルフェニドン(以下、「PFD」と略すことあり。)およびピルフェニドンが徐放性基剤中に分散した固体分散体(以下、「PFD/SR」と略すことあり。)の粉末X線回折スペクトルを示す。 図2は、PFD(A)およびその固体分散体1(PFD/SR)(B)の偏光顕微鏡写真を示す。 図3は、PFD(A)およびその固体分散体1(PFD/SR)(B)の電子顕微鏡(SEM)写真を示す。倍率:2000倍。 図4は、ピルフェニドン原薬(PFD)あるいは各固体分散体(PFD/SR)からの経時的なPFD溶出率(全量に対する%)を示す。 図5は、PFDが徐放性基剤中に分散した微細化固体分散体と担体とを混和したPFD吸入製剤の粒度分布を示す。 図6は、PFDが徐放性基剤中に分散した微細化固体分散体と担体とを混和したPFD吸入製剤を用いた、カスケードインパクター本体における各ステージ上のPFD量(全体に対する割合)を示す。 図7は、喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデルラットへのPFD吸入製剤の気道内投与による炎症抑制効果を示す。 図8は、PFD吸入製剤を吸入投与したCOPDモデルラットの抗原最終感作24時間後の気管支肺胞洗浄液(BALF)中の肺炎症障害バイオマーカーを示す。(A)MPO活性;(B)LDH活性。PFD製剤の投与量はすべて0.1mg/kg。 図9は、経口および吸入での単回投与における、血漿および皮膚へのPFD移行量変化を示す。(A):血漿PFD量、(B):皮膚PFD量。
以下、本発明を詳細に説明する。
[1]ピルフェニドン(PFD)
本発明の製剤原料として用いる薬物、ピルフェニドンは、薬剤性光線過敏症の副作用を示す。ピルフェニドン薬物としてとしては、その製法が特に限定されるものではなく、結晶、非晶質、塩、水和物、溶媒和物等医薬品として使用され、または将来使用されるものが包含される。
[2]徐放性基剤
本発明では、徐放性基剤を賦形剤として用いる点が最大のポイントである。賦形剤は、通常、散剤、錠剤などの固形製剤の増量、希釈、充填、補形等の目的で加えられるものが使用される。賦形剤は、薬剤の溶解性を高めるため、および/または自己凝集能を低減させるために効果的である。賦形剤は、生物学的に不活性であり、かつある程度の代謝が期待されるものを用いても良い。
本発明で用いる徐放性基剤は、そこに分散しているピルフェニドンが徐々に放出されて、その結果として肺(肺胞)細胞にピルフェニドンが効果的に有効に取り込まれて、皮膚等への移行する割合が減少する機能が期待される。
以下、徐放性基剤を具体的に例示する。
ポリビニルピロリドン・酢酸ビニル樹脂(Kollidon SRなど)、ポリビニルピロリドン(PVP K90など)、遊離のカルボキシル基を有する重合体、例えば、α−ヒドロキシカルボン酸類(例、グリコール酸、乳酸等)、ヒドロキシジカルボン酸類(例、リンゴ酸等)、ヒドロキシトリカルボン酸(例、クエン酸等)等の1種以上から無触媒脱水重縮合で合成され、遊離のカルボキシル基を有する重合体あるいはこれらの混合物、ポリ−α−シアノアクリル酸エステル、ポリアミノ酸(例、ポリ−γ−ベンジル−L−グルタミン酸等)、無水マレイン酸系重合体(例、スチレン−マレイン酸重合体等)等のポリマー類、が挙げられる。重合の形式は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよい
セルロース誘導体:ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース類、セルロースエーテル類(例えば、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロース等のセルロースアルキルエーテル類、ベンジルセルロースなどのセルロースアラルキルエーテル類、シアノエチルセルロースなどのセルロースシアノアルキルエーテル類等)、セルロースエステル類(例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート等のセルロース脂肪酸エステル類、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等のセルロース芳香族カルボン酸エステル類等)等、並びに、ヒアルロン酸、プルラン等の多糖類が例示できる。
(メタ)アクリル系重合体:(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸又はその塩(例えば、アンモニウム塩、アミン塩、アルカリ金属塩など);(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジC1−4アルキルアミノC2−4アルキル(メタ)アクリレート又はその塩(例えば、4級アンモニウム塩、塩酸塩など)等の単独または共重合体、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体(例えば、スチレン系単量体、ビニルエステル系単量体、複素環式ビニル系単量体、重合性不飽和ジカルボン酸又はその誘導体などのビニル系単量体)との共重合体などが挙げられる。具体的には、Rohm Pharma社製、商品名「オイドラギットRSPO」、商品名「オイドラギットNE30D」、商品名「オイドラギットRS30D」、商品名「オイドラギットRL30D」、商品名「オイドラギットEPO」等が例示され、これらのうち、「オイドラギットEPO」が好ましく使用できる。
徐放性基剤として好ましくは、ポリビニルピロリドン・酢酸ビニル樹脂(Kollidon SRなど)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名「オイドラギットEPO」など)、ポリビニルピロリドン(PVP K90など)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒアルロン酸等が挙げられる。
より好ましくは、ポリビニルピロリドン・酢酸ビニル樹脂(Kollidon SRなど)、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(商品名「オイドラギットEPO」など)ポリビニルピロリドン(PVP K90など)、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
特に好ましくは、ポリビニルピロリドン・酢酸ビニル樹脂(特に、Kollidon SR)およびアミノアルキルメタクリレートコポリマー(特に、商品名「オイドラギットEPO」)、が挙げられる。中でも、特にKollidon SRが好ましく、これは徐放性基剤としてBASF社から販売されている商品であり、ポリ酢酸ビニル/ポリビニルピロリドン(ポビドンK30)=8/2のプレミックスである。
[3]担体
本発明において、担体は、薬剤および賦形剤と複合体(後述)を形成することにより粉末製剤投与までの薬剤の凝集を防ぐと共に、投与時には、経肺吸入製剤として、吸収効率を高めるために使用する。特に、気管支又は肺への適用を目的とした吸入器を用いた吸入操作の際には、吸入後に薬剤と効率良く分離し、その結果、薬物の吸収効率を高めるために使用する。DPI処方設計に担体を使用する際は、薬剤がカプセルまたはデバイスから確実に放出され、担体表面から高い確率で薬物が分離されることが望ましく、十分配慮して製剤設計を行う必要がある。担体の使用に際しては、製剤の流動性および薬物凝集の予防、投与量増減の可否等が重要になる。この観点から、本発明において担体は粉末状であることが好ましい。さらに、担体の選択基準として毒性や物理化学的安定性はもちろんのこと、ハンドリングの際の容易性や作業性が問われる。この問題点をクリアすべく、従来その安定性も確立され、中性で反応性が少なくやや甘みもある乳糖は多くの点において有用であり、DPI用の担体として有用性が確認されている[Int.J.Pharm.(1998)172,179−188]。本発明において使用し得る担体として、乳糖の他、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖およびデキストラン類の糖類、エリスリトール、ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール類、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等の一般的な賦形剤も挙げることができ、特に限定するものではない。好ましい担体は、糖類または糖アルコール類であり、より好ましい担体は、乳糖またはエリスリトールであり、特に好ましくは乳糖である。
本発明の医薬組成物が吸入器を用いて投与される形態である場合には、担体は、空気力学的に許容される粒径を有するものである。具体的には、担体の平均粒径は10〜200μmの範囲である。
担体としてのみ製剤設計上作用させたい際には、その粒径を大きくすればよいことが知られているが、同時に粒径を大きくすれば担体は咽喉あるいは口腔にて留まることも周知の事実である。従って、担体自体は生物学的にみて不活性であるものの、肺にまで到達するのを防ぐ方が望ましい場合は、その平均粒径を少なくとも10μm以上にすれば問題ない。さらに最良の条件を求める場合には主剤と混和した賦形剤との適合性等をも考慮したうえでの素材選択が望まれるが、特に大きな問題が認められない限りは賦形剤と同様の材質の担体を選択することが好ましい。
[4]薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物であるピルフェニドンと賦形剤としての徐放性基剤との混和・粉砕工程
本発明の吸入投与用の粉末製剤の製造は、まず、薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物であるピルフェニドンと賦形剤としての徐放性基剤との混和・粉砕工程を含む。
この工程の内、ピルフェニドンと徐放性基剤との混和工程は、前述の通り、種々の物理的ないし物理化学的手法で行うことができる。例えば、溶媒もしくは分散媒を用いる均一溶解もしくは均一分散混合法(合わせて、「均一混合法」と称する)や、少量の溶媒を用いる湿式混合法、或いは、溶媒を用いない乾式混合法などである。この内、均一混合法がピルフェニドンの徐放性基在中に於ける高分散性が得やすいという点で好ましい。均一混合法で用いる溶媒は、ピルフェニドンおよび/または徐放性基剤を溶解もしくは分散させ得る溶媒であれば特に限定されない。具体的には、ジオキサン等の環状エーテル類、エチルセルソルブ等の鎖状ポリエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等が挙げられる。均一混合法では具体的に、ピルフェニドンおよび/または徐放性基剤を、超音波等の混合手段により均一に溶解・分散させ、その後、溶媒を、例えば真空乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の手段により除去し、粉末状の固体を得る。得られた固体の粉砕は、例えば、ジェットミル、ロールミル等の粉砕手段により行うことができる。乾式混合法を用いる場合には、例えば、ピルフェニドンおよび徐放性基剤を空気力学的粉砕器によって混和と同時に粉砕をおこなってもよい。本発明の粉末製剤の製造方法は特に限定されるものではなく、当業者が通常使用する方法を適宜使用することができる。いずれの方法を使用するかは、ピルフェニドンおよび徐放性基剤の種類、最終的な粒子の大きさ等によって適宜決定することができる。
本発明で好ましい態様は、ジオキサン等の環状エーテル系溶媒を用いてピルフェニドンと徐放性基剤とを混合して均一溶液状態とし、凍結乾燥または噴霧乾燥後にジェットミル等で粉砕する方法である。この方法によれば、徐放性基剤中にピルフェニドンが均一に分散した固体分散体を効率よく得ることが可能である。
本発明において、薬剤および徐放性基剤の粉砕には一般的な乾燥粉砕を用いることが出来るが、特に空気力学的粉砕器を使用することが好ましい。具体的には、一般的な乾燥粉砕器として、実験室用に乳鉢やボールミル等少量を効率的に粉砕する装置が繁用されている。ボールミルとしては転動ボールミル、遠心ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミルが知られており、これらは摩砕・回転・振動・衝撃などの原理で粉砕化を行うことが出来る。工業用としては媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミルなどの大量の原料を効率的に粉砕することを目的とした装置が多い。高速回転摩砕ミルには、ディスクミル、ローラーミルがあり、高速回転衝撃ミルにはカッターミル(ナイフミル)、ハンマーミル(アトマイザー)、ピンミル、スクリーンミル等回転衝撃に加え、剪断力によっても粉砕を行うものが存在する。ジェットミルは主に衝撃にて粉砕を行うものが多いが、その種類としては最もオーソドックスな粒子・粒子衝突型、粒子・衝突板衝突型、ノズル吸い込み型(吹き出し)型がある。特に、ジェットミルで粉砕を行うのが好ましい。
本発明の製剤において、ピルフェニドンと徐放性基剤との重量比は、1:5000〜10:1の範囲であるのが好ましい。この範囲よりもピルフェニドンが多くなると含量均一性に支障が生じる可能性があり、徐放性基剤が多過ぎると薬理活性の消失するおそれがある。ピルフェニドンと徐放性基剤との重量比は、より好ましくは、1:100〜5:1であり、さらに好ましくは、1:10〜2:1であり、例えば、1:4である。
固体分散体の形成によって、ピルフェニドンは徐放性基剤と均一に混和され、更に、粉砕工程を経ることによって、固体分散体の平均粒径が20μm以下になるように粉砕される。この粒径とすることで、投与後に担体から分離し、気管支や肺等の目的の部位まで到達することができる。固体分散体の平均粒径は、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、1〜9μmであり、最も好ましくは、3〜8μmである。
本発明で用いる固体分散体とは、固体(粉体等)状態の分散媒体(本発明では、徐放性基剤)中に、活性薬剤たるピルフェニドンが非晶質状態で分子分散している状態を指す。本発明で特に好ましく用いられるピルフェニドンの徐放性基剤中に於ける固体分散体は本明細書中に於いて、「PFD/SR」で表される。この固体分散体は、非晶質PFDのX線回折パターンを示し、結晶質PFDに特有の回折パターンは見られなかった。更に、本発明の固体分散体は、PFD溶出試験に於いて、PFD原薬のみに比べて抑制された溶出パターンを示した。この抑制された溶出パターンは、ピルフェニドン(PFD)が肺(肺胞)細胞に長く止まり、少量で大きな薬効(抗肺線維化効果および抗炎症障害効果など)を発揮する結果を説明すると同時に、皮膚への移行性を抑制して、薬剤性光線過敏症の副作用を低減させるものと推定される。
なお、従来から固体分散体の概念は知られているが、例えば、特許文献5(特開2010−132605号)では難溶性薬物を生体内で迅速に溶出させることを目的としており、本発明とは逆の狙いであり、また同様に、特許文献6(CN102008446号)はピルフェニドンの溶出速度向上を目的としている。即ち、本願発明の課題であるピルフェニドンの溶出抑制および皮膚への移行抑制については、記載も示唆も無い。
[5]担体と固体分散体の混和工程
上記混和・粉砕工程で得られた固体分散体は、次いで担体と混和し、投与時まで安定な複合体を形成するようにする。本明細書中、複合体は、薬物の分子間相互作用による自己凝集能により、薬物が賦形剤および担体と凝集して生じる分子集合体を表す。担体と固体分散体の混和は、一般的に知られている混合機を用いることが出来る。主に回分式と連続式があり、回分式にはさらに回転型と固定型の二種が存在する。回転型には水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機があり、固定型にはスクリュー型(垂直、水平)混合機、旋回スクリュー型混合機、リボン型(垂直、水平)混合機が存在する。連続式もやはり回転型と固定型の二種に分かれ、回転型は水平円筒型混合機、水平円錐型混合機、そして固定型にはスクリュー型(垂直、水平)混合機、リボン型(垂直、水平)混合機、回転円盤型混合機が知られている。この他に、媒体撹拌型ミル、高速回転摩砕・衝撃ミル、ジェットミル等の空気力学的粉砕器を利用した混和方法や、ナイロン製、ポリエチレン製、またはそれに準ずる性質からなる容器を利用し、撹拌することにより均一な混合製剤を作ることが可能である。
固体分散体と担体の重量比は、1:100〜10:1の範囲とすることが好ましい。この範囲よりも固体分散体が多くなると含量均一性に支障が生じる可能性があり、担体が多くなるとある種の薬剤では薬理活性の消失の恐れがある。固体分散体と担体の重量比は、より好ましくは、1:50〜1:1であり、さらに好ましくは、1:20〜1:5であり、例えば、1:10である。
固体分散体と担体の平均粒径の比率は、1:1〜1:50の範囲が好ましく、1:5〜1:20の範囲がより好ましい。
[6]吸入器
上記工程で得られた本発明を吸入投与用の粉末製剤(Respirable Powder: 以下、「RP」と略する場合あり。)として投与する場合は、経肺投与、経鼻投与などの経粘膜投与により、被験体に投与することができる。具体的には、投与経路が経肺投与である場合、当分野で使用されるいずれかの吸入器を使用して投与することができる。
吸入器としては、スピンヘラー、イーヘラー、FlowCaps、ジェットヘラー、ディスクヘラー、ローターヘーラー、インスパイヤーイース、インハレーションエイト等の吸入経肺用デバイスや定量的噴霧器等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1−1]固体分散体の調製
Kollidon SR(BASF) 400mgとピルフェニドン(PFD)100mgを1,4−ジオキサン10mLに溶解し、超音波処理後にディープフリーザー(−80℃)内で2時間静置して凍結させた。凍結乾燥機によって1,4−ジオキサンを留去して固体分散体1を得た。他の徐放性基剤(ヒドロキシプロピルセルロース(和光純薬)、プルラン(林原商事)、ヒアルロン酸(和光純薬)、PVP K90(BASF)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学)、Eudagit EPO(エボニックデグザジャパン))による固体分散体も同様に調製した。
固体分散体1(Kollidon SR)
固体分散体2(ヒドロキシプロピルセルロース)
固体分散体3(プルラン)
固体分散体4(ヒアルロン酸)
固体分散体5(PVP K90)
固体分散体6(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)
固体分散体7(Eudagit EPO)
[実施例1−2]固体分散体の調製
ヒドロキシプロピルセルロース 360 mg、ピルフェニドン 40 mg を秤量し、150 mL の精製水に攪拌し、完全溶解させた。これを、Buchi mini spray dryer B-290 (Buchi, Switzerland) を用いて噴霧乾燥することで固体分散体8を得た。
[実施例2]固体分散体の物性
ピルフェニドン(PFD)およびその固体分散体1(PFD/SR)の物性を評価するため、粉末X線回折(D8 ADVANCE,Bruker AXS GmbH,Karlsruhe,Germany)により分析した。得られたX線回折パターンを図1に示す。ピルフェニドンでは特徴的な鋭いピークを認め、高い結晶性を示したものの、固体分散体1においてはこれらのピークは消失し、すなわち固体分散体1内のピルフェニドンは非晶質の状態で存在していること確認した。この結果は、偏光顕微鏡観察でも同様であり(図2(A)および(B))、すなわち、ピルフェニドン(A)は明瞭な偏光を示したものの、固体分散体1(B)では偏光を認めなかった。また、固体分散体1を40℃/75%相対湿度にて4週間保存後、ピルフェニドンは非晶質の状態を保持していた。また、他の徐放性基剤を用いて調製した固体分散体について偏光顕微鏡にて観察したところ偏光を認めず、すなわち本結果と同様にいずれも非晶質化されていることを示唆した。
[実施例3]電子顕微鏡観察
ピルフェニドン(PFD)及びその固体分散体1(PFD/SR)を、2本鎖炭素テープを使ってアルミニウムサンプルホルダーに固定し、表面形態をSEMで観察した。SEMはVE−7800(Keyence Corporation,Osaka,Japan)の金あるいは白金でコーティングしていないものを使用した。得られた電子顕微鏡写真を図3((A):PFD;(B):PFD/SR)に示す。ピルフェニドンは結晶に特徴的な外観を示したが、固体分散体1では結晶粉末が消失しており、ピルフェニドンが徐放性基剤中に分散していることを示唆した。
[実施例4]各固体分散体の溶出試験
各固体分散体からのピルフェニドン溶出挙動を確認するために溶出試験を実施した。サンプル中ピルフェニドンの定量はUPLC/ESI−MSを用いて行った。
(方法)
溶出試験
溶出試験液:超純水(ミリQ水)900mL
試験に用いた製剤量:ピルフェニドン量として30mg
攪拌速度:100rpm
温度:37℃
サンプル処理:採取後0.22μmメンブレンフィルターにて処理
薬物定量方法(UPLC−MS分析条件)
使用カラム:Acuity UPLC BEH C18カラム(Waters)
検出器:SQ Detector(Waters)
ポンプ:Binary Solvent Manager(Waters)
移動相流速:0.25mL/min
移動相:A:100%アセトニトリル、B:5mM酢酸アンモニウム
グラジュエントは以下の通りである:
0−1分:A 20%
1−3分:A 20−95%
3−4分:A 95%
カラム温度:40℃
(結果)
本溶出試験の結果を図4(ピルフェニドン原薬(PFD)あるいは各固体分散体(PFD/SR)からのPFD溶出パターン)に示す。ピルフェニドンは水中への速やかな溶出を認めたが、徐放性基剤を利用した各種固体分散体はピルフェニドンの放出が制御される傾向にあった。特に、Eudragit EPO(○印)ならびにKollidon SR(●印)を利用した固体分散体からのピルフェニドン溶出パターンは顕著に制御されており、薬理作用の持続性が期待されるところである。
[実施例5]粉末吸入製剤の調製
固体分散体1(約100mg)をジェットミルによって微細化を行った。
(粉砕条件)
使用機器:A−O−Jet Mill(セイシン企業)
原料供給方法:オートフィーダー
供給エアー圧力:6.0kg/cm
粉砕エアー圧力:6.5kg/cm
集塵方法:アウトレットバグ(ポリエチレン)
微細化した固体分散体と粉末状担体とともに、ポリエチレン製のSTAT−3S帯電防止袋(20×30cm、浅沼産業株式会社)に入れ、空気を満たした後に密封し、約3分間手でふって混和した。混和後、任意に4カ所からサンプリングし、含有薬物量をUPLC/ESI−MSによって測定し、含量が均一であることを確認した。この時、粉末状担体としては、エリスリトール(日研化成、平均粒径:20〜30μm)または乳糖(DMV、平均粒径:50〜60μm)を用いた。また、微細化した固体分散体と担体との重量比は1:10であった。
[実施例6]粉末吸入製剤の粒度分布測定
微細化した固体分散体と粉末状担体との混合物を乾式レーザー回折装置(LMS−300、セイシン企業)にて評価したところ、0.2MPaの圧力下でいずれの製剤も容易にエアゾール化した。図5にPFD吸入製剤の粒度分布を示す。主に2つの主要なピークを示し、平均粒径4.5μmのピークが固体分散体に、そして平均粒径55μmのピークは担体に由来するものと考える。両者の平均粒径を考慮すれば、吸入時に担体は気道内にとどまり、微細化した固体分散体は吸入時に気管支又は肺に到達しうると考えられる。
[実施例7]カスケードインパクターによる粉末吸入製剤評価
粉体の空気力学的粒径に関して調査を行うため、人工気道および肺モデルであるカスケードインパクターにて検討を行った。本体は8段のステージと最終フィルターを重ねたものであり、これに流速計と吸引ポンプを組み合わせたものである。基本的な方法はUSP 2000”Physical Tests and Determinations/Aerosols”中の”Multistage Cascade Impactor Apparatus”に記載の手法を適用した。具体的な方法は次の通りである。
(方法)
装置:アンダーセンサンプラー(AN−200、柴田化学製)
ポンプ流量:28.3L/min
使用デバイス:ジェットヘラー((株)ユニシアジェックス製)
薬物定量方法:(UPLC−MS分析条件)
使用カラム:Acuity UPLC BEH C18カラム(Waters)
検出器:SQ Detector(Waters)
ポンプ:Binary Solvent Manager(Waters)
移動相流速:0.25mL/min
移動相:A:100%アセトニトリル、B:5mM酢酸アンモニウム
グラジュエントは以下の通りである:
0−1分:A 20%
1−3分:A 20−95%
3−4分:A 95%
カラム温度:40℃
(結果)カスケードインパクター本体における各ステージ上のピルフェニドン量を図6に示す。カスケードインパクターによる空気力学的粒径の評価から、粉末吸入製剤は主にステージ0とステージ2〜4に分布していることが示された。ステージ0に分布する粒子は解離していない固体分散体と担体の複合体に含まれるピルフェニドンであると推測される。解離した固体分散体は主にステージ2〜4に分布していることが示された。ステージ2〜7に分布する粒子に対するパーセント量は、「固体分散体が標的部位である気管支又は肺にたどりつく割合」としてRF値で定義される。本実施例におけるRF値は約43%であり、このことから固体分散体及び担体の複合体である本吸入製剤は、気道内にとどまり、複合体から解離した固体分散体のみが、標的部位である気管支又は肺に十分に到達するものと考えられる。固体分散体また、カプセルからの放出についても、製剤の90%以上がカプセルから排出されていることが確認され、その高い流動性・分散性も示された。
[実施例8]卵白由来ovalbumin(OVA)感作モデル動物の作製および粉末吸入製剤の気道内投与
典型的な喘息・慢性閉塞性肺疾患モデルであるOVA感作動物モデルを用いて粉末吸入製剤の薬効を評価した。本モデルは、抗原となるOVAで感作した動物に対し、OVA粉末吸入製剤を気道内投与することで呼吸器における局所的な炎症を惹起させるモデルである。以下にモデル作製および粉末吸入製剤(RP:Respirable Powder)の気道内投与の具体的な方法を示す。
(方法)
動物:Sprague−Dawley rat(7−10週齢)
試薬:卵白由来ovalbumin(SIGMA)、水酸化アルミニウムゲル(SIGMA)
気道内投与器具:DP−4(株式会社イナリサーチ)
0、7、14日目において、OVA溶液(OVA:100μg/ラット、水酸化アルミニウム:5mg/ラットを含む)を腹腔内投与し、最終感作の24時間後に、OVA粉末吸入製剤6mg(OVA量として100μg)を気道内投与した。気道内投与は、ペントバルビタール麻酔下、DP−4を気道内に挿入し、圧縮空気を送ることで行った。なお、コントロール群に対しては、乳糖を用いて作製した粉末吸入製剤を用いた。吸入製剤の前投与は、OVA粉末吸入製剤の投与1時間前に行った。
〈投与群〉
Vehicle群:ピルフェニドンを含有しない乳糖のみの吸入製剤
PFD−RP群:ピルフェニドンとエリスリトール混合物を粉砕し、乳糖(担体)と混和した粉末吸入製剤
PFD/SR−RP群:実施例5に記載の微細化された固体分散体1および乳糖(担体)を混和した徐放性粉末吸入製剤
気管支肺胞洗浄液(BALF)採取、BALF中総細胞数
BALFは呼吸器疾患の診断に有用であるとされ、本実施例ではBALF中総細胞数の計数を行うことにより炎症・組織障害の評価を行った。OVA投与24時間後にネンブタール麻酔下、腹部大動脈より脱血させた後、気道にカニューレを挿入し生理食塩水5mLにて洗浄を行い、BALFを採取した。採取したBALFは1000rpmで5分間遠心にかけ上清を除き、PBS1mLで再び懸濁した。BALF中総細胞数の計数は、手動血球計数器を用いて鏡検下で行った。図7に実験的喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)モデル動物における炎症性細胞浸潤抑制活性を測定した結果を示す。縦軸は、BALF中細胞計数を示す。
BALF中総細胞数の計数の結果、OVA群においては総細胞数の増大が示され、吸入製剤の投与によりその上昇が抑制された。また、本願発明の吸入製剤(PFD/SR−RP)を投与した際にはPFD−RPに比して約1/10の投与量で同様の抗炎症作用を認めた。すなわち、肺線維症や喘息等において認められる肺局所での炎症を本発明製剤は有意に抑制できることを示唆している。
BALF中肺炎症・傷害バイオマーカーの測定
本願発明の吸入製剤(0.1mg /kg)の薬理効果をより詳細に検討するため、BALF中の各種バイオマーカーを測定した。肺傷害のバイオマーカーとしてLDHを、好中球性炎症のバイオマーカーとしてMPOをそれぞれ選択した。バイオマーカー測定結果を図8に示す。図中、(A)はBALF中のMPO活性、(B)はBALF中のLDH活性を示す。実験的喘息・慢性閉塞性肺疾患モデル動物ではいずれのマーカーも増大を示したが、PFD/SR−RPの投与によってそれぞれが抑制される傾向にあった。しかしながら、PFD−RPではその効果は極めて限定的であった。
[実施例9]粉末吸入製剤の体内動態
また、PFDは160mg/kg(p.o.:経口投与)でラットにおいて光毒性を示し、また、30mg/kg(p.o.)では光毒性が認められないことが既に検証されている。ラットにそれぞれの投与量でPFDを経口投与した際、図9に示すような結果となった。光線過敏症を起こさない投与量30mg/kg(p.o.)のピルフェニドンをラットに経口投与すると速やかに皮膚への移行を認めたが、薬理学的に有効な投与量1mg/kg(i.t.:吸入投与)のPFD−RPを気道内投与したとき、その皮膚移行率は約1/60程度となっており、さらに薬理学的に有効な投与量0.1mg/kg(i.t.)μg/rat)のPFD/SR−RPでは極めて低値であった。本データにより、本願発明の吸入製剤は、その薬理学的な標的組織に直接薬剤を送達することによって投与量を著しく減少させ、なおかつそれに伴って最大の副作用である光線過敏症リスクを低下させる可能性がある興味深い投与形態であることを明らかにした。
本発明は、薬剤性光線過敏症の副作用を示す薬物の副作用リスクを低下させ、治療効果を高める粉末製剤およびその製造方法を提供する。容易にエアゾール化できることで吸入療法を可能にし、肺局所での薬理効果を高めることから、投与量を減少させることが可能となる。また肺特異的送達技術によって前記薬物の皮膚移行を抑制し、副作用である光線過敏症を抑制することが出来る。
図4において記号は、■:原薬;●:固体分散体1(Kollidon SR);□:固体分散体2(ヒドロキシプロピルセルロース);▲:固体分散体3(プルラン);△:固体分散体4(ヒアルロン酸);▽:固体分散体5(PVP K90);▼:固体分散体6(ヒドロキシプロピルメチルセルロース);○:固体分散体7(Eudragit EPO)を表す。
図9において、△:経口 160mg/kg、▽:経口 30mg/kg、●:吸入(非徐放性基剤(乳糖)使用) 1mg/kg、○:吸入(徐放性基剤(Kollidon SR)使用)0.1mg/kgを表す。

Claims (12)

  1. ピルフェニドンおよび徐放性基剤を含有し、ピルフェニドンが該徐放性基剤中に分散している、平均粒径が20μm以下の固体分散体(ここで、固体分散体とは、徐放性基剤中に、活性薬剤たるピルフェニドンが非晶質状態で分子分散している状態を意味する)
  2. 徐放性基剤がポリビニルアセテートおよびポリビニルピロリドンから成る混合物である、請求項1に記載の固体分散体。
  3. 徐放性基剤が、アクリル酸誘導体のポリマーである、請求項1に記載の固体分散体。
  4. アクリル酸誘導体のポリマーがメタクリル酸コポリマーである、請求項3に記載の固体分散体。
  5. メタクリル酸コポリマーがアミノアルキルメタクリレートコポリマーである、請求項4に記載の固体分散体。
  6. ピルフェニドンと徐放性基剤との比率が重量比で1:5000〜10:1の範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の固体分散体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体分散体および担体を含有する、粉末製剤。
  8. 担体が糖類および/または糖アルコール類である、請求項7に記載の粉末製剤。
  9. 担体が乳糖またはエリスリトールである、請求項8に記載の粉末製剤。
  10. 担体の平均粒径が10〜200μmである、請求項7〜9のいずれか1項に記載の粉末製剤。
  11. 固体分散体と担体との比率が重量比で1:100〜10:1の範囲である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の粉末製剤。
  12. 経肺吸入用である、請求項7〜11のいずれか1項に記載の粉末製剤。
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