JP2010132200A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ベルト層の補強材として用いるスチールコードの磁化に起因して発生する、磁場の影響を低減した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】スチールコード1により補強されたベルト層10を有する空気入りタイヤである。ベルト層が、スチールコード1をベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成してなるエンドレスベルト層であり、かつ、エンドレスベルト層におけるスチールコード1の配置開始端E1および配置終了端E2が、50mm以内、好適には20mm以内の距離に近接して配置されている。
【選択図】図1

Description

本発明は空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、スチールコードにより補強されたベルトを有する空気入りタイヤから発生する磁場を低減する技術に関する。
従来より、空気入りラジアルタイヤのベルト層として、補強材にスチールコードを適用したスチールベルト層が用いられている。かかるスチールベルト層は、一般に、タイヤ赤道面に対し傾斜して並列配置された多数のスチールコードにより形成されている。また、スチールコードの傾斜方向がタイヤ赤道面に対して互いに反対方向である2層を積層して、いわゆる交錯ベルト構造とすることも、一般的に行われている。
スチールベルト層に用いられるスチールコードの素材としては、0.7〜0.90wt%の炭素を含有する高炭素鋼線が汎用されている。この高炭素鋼線は強磁性体であるので、タイヤの製造過程やタイヤの使用中などに、スチールコードが磁化される場合がある。スチールコードが磁化されたタイヤは、車両走行時の回転により変動磁場を発生するので、車載電子機器に対する影響への懸念や環境面の視点から、対策が検討されている。
例えば、特許文献1〜4には、タイヤを脱磁することにより、タイヤから発生する磁場を低減する方法が開示されている。中でも特に、特許文献1には、車両に装着した状態で、使用中のタイヤの脱磁を可能にする装置が開示されている。また、特許文献5には、層内でのスチールコードの磁化方向を同一にした傾斜ベルト層を、磁化の方向が互いに逆になるように積層して交錯ベルト構造を形成することにより、外部に形成される磁場を低減したタイヤが開示されている。
特開2006−100349号公報 特開2005−88817号公報 特開2006−82007号公報 特開2006−86316号公報 再表2004/065142号公報
上記のように、タイヤの脱磁処理に関しては、これまでに種々の技術が提案されてきているが、ベルト層のスチールコードは、一度脱磁したとしても、その後のタイヤの使用中に再度着磁することがある。したがって、着磁した場合でも発生する磁場が弱いタイヤが望まれる。また、車両に装着した状態での脱磁を行なう場合でも、発生する磁場が弱いタイヤの適用が有利である。
そこで、本発明の目的は、上記問題を解消して、ベルト層の補強材として用いるスチールコードの磁化に起因して発生する、磁場の影響を低減した空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者は鋭意検討した結果、ベルト層を、スチールコードをベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成してなるエンドレスベルト層とし、そのスチールコードの両配置端を互いに近接させて配置するものとしたことで、上記問題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、スチールコードにより補強されたベルト層を有する空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層が、前記スチールコードをベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成してなるエンドレスベルト層であり、かつ、該エンドレスベルト層における前記スチールコードの配置開始端および配置終了端が、50mm以内の距離に近接して配置されていることを特徴とするものである。
本発明においては、前記スチールコードの配置開始端と配置終了端との間の距離が20mm以内であることが好ましく、前記スチールコードの配置開始端と配置終了端とが連結されていることがより好ましい。また、前記スチールコードの配置開始端および配置終了端が、磁気シールド部材で被覆されていることも好ましい。さらに、前記磁気シールド部材としては、ゴム部材中に高透磁率材料を埋設または混入してなるものを好適に用いることができる。
本発明によれば、上記構成としたことにより、スチールコードの磁化に起因して発生する磁場の影響を低減した空気入りタイヤを実現することが可能となった。
以下、本発明の好適実施形態について詳細に説明する。
本発明の空気入りタイヤは、スチールコードにより補強されたベルト層を有するものである。
本発明においては、かかるベルト層が、スチールコードをベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成してなるエンドレスベルト層であり、かかるスチールコードの配置開始端および配置終了端が、50mm以内の距離に近接して配置されている点が重要である。スチールコードが磁化したときに磁極が生ずるコードの配置開始端と配置終了端とを近接して配置することにより、磁場を両端部間に局在化させることができる。このため、タイヤ外に発生する磁場が抑制されることになる。
本発明において、かかるエンドレスベルト層の構造については、特に制限されるものではなく、スチールコードをベルト層幅方向端部で折り返しながらジグザグ状に往復させて配置した構造や、スチールコードをタイヤ周方向に螺旋巻きした構造等とすることができる。いずれの構造の場合も、コードの配置開始端および配置終了端間の距離を、50mm以内の距離に近接して配置したものであればよい。
かかるコードの配置開始端および配置終了端間の距離は、好適には20mm以内とする。配置開始端と配置終了端との間の距離がより小さい方が、磁場がより局在化するため好ましく、好適には20mm以内、より好適には10mm以内とする。
特には、コードの配置開始端と配置終了端とを連結することがより好適である。コードの配置開始端と配置終了端とを連結して、閉じた磁気回路を形成することにより、ベルト層から発生する磁場自体を小さくすることができる。この場合、コードの配置開始端と配置終了端との連結は、バット溶接や、軟鋼管等の強磁性体の管に両端を挿入してかしめる等により行うことができ、これにより閉じた磁気回路を形成するようにする。
また、本発明においては、かかるコードの配置開始端および配置終了端を、磁気シールド部材で被覆することも好ましい。局在化させた磁場または連結部から漏れる磁場を、磁気シールド部材によりシールドすることで、発生する磁場をさらに抑制することができる。また、本発明では、磁場を局在化させた構造としているので、磁気シールド部材によるシールドを容易に行うことができる。この場合、磁気シールド部材は、コードの配置開始端と配置終了端とを一括して被覆するものであっても、各々の端部を個別に被覆するものであっても、いずれでもよい。
磁気シールド部材としては、磁気を遮蔽することができるものであればいかなるものを用いてもよく、例えば、ゴム部材中に高透磁率材料を埋設または混入したものを好適に用いることができる。あらかじめ、ゴム部材中に高透磁率材料を埋設または混入した部材を用意しておくことにより、生タイヤ成形工程において、磁気シールド部材を適用することが容易になる。このような部材の例としては、具体的には、パーマロイ薄板や高透磁率アモルファス合金箔等をゴム被覆したもの、および、パーマロイ粉末や高透磁率フェライト粉末等をゴム中に練り込んだものなどが挙げられる。
本発明のタイヤは、上記エンドレスベルト層におけるコードの配置開始端および配置終了端について、上記配置条件を満足するものであればよく、これにより本発明の所期の効果を得ることができる。かかるコードの配置開始端および配置終了端の配置条件以外のタイヤ構造の詳細については特に制限されず、常法に従い適宜構成することが可能である。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
ベルト層に下記表中に示す条件を適用して、タイヤサイズPSR195/50R15の空気入りラジアルタイヤを作製した。ベルト層のスチールコード材質としては、0.8wt%の炭素を含有する高炭素鋼を用いた。また、磁気シールド部材としては、ゴム被覆パーマロイ薄板を用いた。さらに、カーカスコード材質にはナイロンを用いた。なお、表中の、各配置開始端−配置終了端に対応する概略図を図1〜6に示す。
<磁場測定条件>
タイヤトレッド中央部からタイヤ半径方向に150mm離れた位置で、タイヤ周方向の磁場分布を測定した。測定には、レイクショア製ガウスメーターを使用した。測定は、製造直後と外部磁場付加後との2回行い、256点で測定した磁場の値の平均値および変動幅を算出した。結果は、従来例1の値を100とした指数にて示した。その結果を、下記表中に併せて示す。
(外部磁場付加条件)
長さ100mm、幅30mm、厚さ5mmの、幅方向に着磁された残留磁束密度約0.3Tのフェライト磁石を用いて、磁石の長さ方向をタイヤのトレッド横断方向に配置し、かつ、磁石の幅方向とタイヤ半径方向を同一に配置した条件で、タイヤ表面を周方向に一周させた後、磁石をタイヤ半径方向に遠ざけた。
Figure 2010132200
*1)エンドレスベルト層:スチールコードを、ベルト層幅方向端部で折り返しながらジグザグ状に往復させることで、ベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成したもの。
上記表中に示す結果より、エンドレスベルト層におけるコードの配置開始端および配置終了端間距離を所定に設定した各実施例の供試タイヤにおいては、製造直後および外部磁場付加後のいずれにおいても磁場の発生が抑制されていることが確かめられた。
本発明の一好適例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。 本発明の他の好適例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。 本発明のさらに他の好適例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。 本発明のさらに他の好適例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。 従来例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。 従来例に係る配置開始端−配置終了端を表す概略図である。
符号の説明
1 スチールコード
2 磁気シールド部材被覆
10 エンドレスベルト層
11 交錯ベルト層
E1 配置開始端
E2 配置終了端
S 配置開始端−配置終了端間距離

Claims (5)

  1. スチールコードにより補強されたベルト層を有する空気入りタイヤにおいて、
    前記ベルト層が、前記スチールコードをベルト層幅方向両端で切断せずに配置して形成してなるエンドレスベルト層であり、かつ、該エンドレスベルト層における前記スチールコードの配置開始端および配置終了端が、50mm以内の距離に近接して配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記スチールコードの配置開始端と配置終了端との間の距離が20mm以内である請求項1記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記スチールコードの配置開始端と配置終了端とが連結されている請求項2記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記スチールコードの配置開始端および配置終了端が、磁気シールド部材で被覆されている請求項1〜3のうちいずれか一項記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記磁気シールド部材が、ゴム部材中に高透磁率材料を埋設または混入してなるものである請求項4記載の空気入りタイヤ。
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