JP2011007512A - 保磁力分布磁石の保磁力特定方法 - Google Patents

保磁力分布磁石の保磁力特定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】保磁力分布磁石を切り刻む等することなく、当該保磁力分布磁石内部の部位ごとの保磁力を精度よく特定することができ、もって精度のよい品質保証を実現することのできる保磁力分布磁石の保磁力特定方法を提供する。
【解決手段】本発明の保磁力特定方法は、保磁力分布磁石の表面磁束密度を測定して減磁曲線を作成するステップ、減磁曲線から、平均保磁力、最低保磁力、角型性、を特定するステップ、平均保磁力と角型性との相間を用いて、最低保磁力と任意に設定された最高保磁力の間の保磁力差分量を複数設定し、平均保磁力と角型性から最適な保磁力差分量を特定し、最高保磁力を特定するステップ、最高保磁力と、最低保磁力、平均保磁力、から保磁力分布磁石内における保磁力分布グラフを特定し、該保磁力分布磁石の任意箇所における固有の保磁力を特定するステップ、からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、たとえばIPMモータ等に適用される磁石であって、保磁力分布のある保磁力分布磁石の部位ごとに固有の保磁力を精度よく特定するための、保磁力分布磁石の保磁力特定方法に関するものである。
車両用駆動モータ、たとえばIPMモータを構成する永久磁石の減磁状態を特定するに際し、従来は、磁石表面の所望箇所の磁束密度をガウスメータ等で読取り、この読取り値をもって、磁石内部の減磁状態、もしくは残留磁束密度を特定していた。また、比較的大型の磁石の磁気測定をおこなうことのできる磁化測定装置が特許文献1に開示されている。
ところで、実際に一つの永久磁石を取り上げた場合に、その内部の磁化状態、たとえば、減磁状態であったり、残留磁束密度の状態は、永久磁石の部位ごとに異なっていることは言うまでもないことである。さらに、いわゆる保磁力分布磁石においては、磁束密度に加えて、重要な磁石の性能要素であるこの保磁力もまた、文字通り、部位ごとに異なる分布を呈している。
この保磁力分布磁石の内部の保磁力分布、すなわち、内部の部位ごとの保磁力を精度よく特定することは、保磁力分布磁石の品質保証の観点から極めて重要である。たとえば、上記IPMモータ用ロータ内に埋設される保磁力分布磁石においては、ステータ側からの磁束の流れに起因して、そのステータ側側面部位の磁気特性を相対的に良好にするような最適設計がなされる場合がある。
その際に、供用開始前の保磁力分布磁石や供用開始後のある段階における保磁力分布磁石において、その内部の部位ごとの保磁力を精度よく特定し、特定対象となっている保磁力分布磁石の品質を所望部位ごとに、より精度よく保証することは、今後の製品(たとえば磁石)開発にとっても、磁石メーカーや磁石使用メーカーの信用にとっても極めて重要である。しかし、現在は、保磁力分布磁石を切り刻んで分割片とし、その保磁力を特定する方法が適用されているに過ぎない。
したがって、一つの保磁力分布磁石に関し、磁石を切り刻んで部位ごとの保磁力を特定していた従来の特定方法に代わって、磁石を切り刻むことなく、その内部の保磁力分布、すなわち、その内部の部位ごとの保磁力をより精度よく特定するための有効な方策が当該分野で模索されている。
特開2006−64419号公報
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、保磁力分布磁石を切り刻む等することなく、当該保磁力分布磁石内部の部位ごとの保磁力を精度よく特定することができ、もって精度のよい品質保証を実現することのできる保磁力分布磁石の保磁力特定方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による保磁力分布磁石の保磁力特定方法は、保磁力の相違する複数の領域からなる保磁力分布磁石において、該領域ごとに固有の保磁力を特定する、保磁力分布磁石の保磁力特定方法であって、被特定対象の前記保磁力分布磁石の減磁曲線を作成する第1のステップ、前記減磁曲線から、前記保磁力分布磁石の平均保磁力、最低保磁力、および、保磁力分布状態を表す指標である角型性、を特定する第2のステップ、平均保磁力と角型性との相間、もしくは最低保磁力と角型性との相間、のいずれか一方を用いて、保磁力分布磁石内の前記最低保磁力と任意に設定された最高保磁力の間の保磁力差分量を複数設定し、前記第2のステップで特定された前記最低保磁力もしくは前記平均保磁力と前記角型性から最適な前記保磁力差分量を特定し、該最低保磁力および該最適な保磁力差分量から最高保磁力を特定する第3のステップ、前記最高保磁力と、前記最低保磁力と、前記平均保磁力と、から前記保磁力分布磁石内における保磁力分布グラフを特定するとともに、該保磁力分布磁石の任意箇所における固有の保磁力を該保磁力分布グラフから特定する第4のステップ、からなるものである。
本発明の保磁力特定方法は、たとえば、容易磁化方向に保磁力が漸次増減する保磁力分布磁石をその保磁力特定対象としており、一つの永久磁石が5つ、8つといった複数の保磁力の異なる領域を有するものである。
まず、第1のステップにおいて、保磁力分布磁石の減磁曲線を作成する。
この減磁曲線は、軟磁性材料評価試験装置(TRF(直流自記磁束計)や、TPM(パルス励磁型磁気特性測定装置)で、いずれも東英工業株式会社製)などを使用して、被特定対象である保磁力分布磁石に外部の逆磁界をかけて減磁させていくことで、保磁力座標と残留磁束密度(磁化)座標からなる座標系(の第二象限)にI−Hカーブ(4πI−Hカーブともいう)を作成できる。
次に、第2のステップとして、作成された減磁曲線から、残留磁束密度が低下する変曲点(もしくは、最大磁束密度から数%減磁した時点)の保磁力をもって最低保磁力とし、さらに減磁して当該減磁曲線が保磁力座標と交わる点をもって平均保磁力とする。なお、容易磁化方向に保磁力が漸次増減する磁石等の場合には、この平均保磁力は、保磁力分布磁石の中間地点の保磁力であると特定できる。
さらに、この第2のステップでは、磁石の保磁力の分布状態を表す指標となる角型性を特定する。
この角型性は、作成された減磁曲線(I−Hカーブ)と保磁力座標、および残留磁束密度(磁化)座標とで囲まれる部分の面積(Sとする)の、減磁曲線で特定される最高磁束密度と平均保磁力と、保磁力座標、および残留磁束密度(磁化)座標とで囲まれる部分の面積(Aとする)に対する比(S/A)で表されるものであり、減磁曲線が作成されることで自動的に特定できるものである。
なお、補足するに、角型性:S/Aが1に近づくにつれて、その保磁力分布磁石の最大エネルギ積が大きいこと、および、磁石内における保磁力の分布が少なくて可及的に均一な永久磁石であること、を示すこととなる。逆に言えば、S/Aが小さくなるにつれて、保磁力分布磁石内部の保磁力の分布が大きいことを示すこととなる。
第2のステップで、保磁力分布磁石の平均保磁力、最低保磁力、および角型性が特定されたら、今度は、第3のステップで、平均保磁力と角型性との相間、もしくは最低保磁力と角型性との相間、のいずれか一方を用いて、保磁力分布磁石内の最低保磁力と任意に設定された最高保磁力の間の複数の保磁力差分量の中から、当該保磁力分布磁石に適合した最適な保磁力差分量を特定する。
ここで、「保磁力差分量」とは、既に第2の工程で特定されている最低保磁力と、任意に設定された最高保磁力の間の保磁力の差分(デルタ保磁力といってもよい)のことであり、たとえば、この保磁力差分量として、2kOe(キロエルステッド)、5kOeなど、複数の値を設定することができる。そして、「平均保磁力と角型性との相間」、「最低保磁力と角型性との相間」、とは、平均保磁力−角型性座標系、もしくは最低保磁力−角型性座標系を形成した際に、これらの座標系の中で、上記する保磁力差分量に応じたグラフを描けることを意味している(したがって、任意の保磁力差分量に対して、たとえば最低保磁力−角型性座標系内で一つのグラフが作成できる)。保磁力分布のない磁石では、その保磁力差分量を一次関数で示すこと、すなわち、最低保磁力と角型性が比例関係を呈することが分かっている。一方、保磁力分布磁石では、差分量が小さくなるにしたがって、この保磁力分布がない磁石のグラフ(一次関数)に漸近するような勾配領域を有し、かつ、変曲点をもったグラフが作成されることも分かっている。
たとえば、平均保磁力−角型性座標系内に、複数の保磁力差分量に関するグラフが作成されている場合において、この平均保磁力−角型性座標系内に、第2の工程で特定された平均保磁力と角型性に対応する点をプロットし、このプロット上の保磁力差分量グラフ、もしくは該プロットに最も近接した保磁力差分量グラフ(保磁力差分量)を、当該保磁力分布磁石の最低保磁力と最高保磁力の間の保磁力差分量とするのが合理的である。
保磁力差分量が特定されることにより、既に特定されている最低保磁力にこの保磁力差分量を加味することで、保磁力分布磁石内の最高保磁力を特定することができる。
第3のステップまでの段階で、被特定対象である保磁力分布磁石の最高保磁力、最低保磁力と平均保磁力が分かっていること、たとえば、容易磁化方向に保磁力が漸次増減する磁石等の場合には、その両端部領域に最高保磁力を有する領域と最低保磁力を有する領域がくることは理解に易く、平均保持力はその中間点に位置する領域の保磁力であることもまた理解に易い。
したがって、被特定対象の保磁力分布磁石の一方の端部からの長さ(距離)と、この距離ごとの保磁力に関する、距離−保磁力座標系において、最高保磁力と最低保磁力、平均保持力に関する3点をこの座標系にプロットすることで、当該保磁力分布磁石に関する保磁力分布グラフを作成することができる。
作成された保磁力分布グラフを用いることで、被特定対象の保磁力分布磁石内において、保磁力を特定したい部位の保磁力を容易に特定することが可能となる。
また、本発明による保磁力分布磁石の保磁力特定方法の好ましい実施の形態において、前記平均保磁力−角型性座標系もしくは前記最低保磁力−角型性座標系における、角型性座標として、前記第2の工程で実測に基づいて特定された前記角型性を、別途の解析にて特定された角型性を用いて補正した、補正後の角型性座標を適用するものである。
本発明者等によれば、実際に外部の逆磁界をかけて作成された減磁曲線から特定された角型性と、別途解析にて特定された角型性との間に乖離があることが分かっている。この理由として、解析では、磁石内部の磁区構造を模擬できないことが挙げられる。
そこで、平均保磁力−角型性座標系や最低保磁力−角型性座標系における、角型性座標の設定に際しては、作成された減磁曲線から特定された角型性を、解析にて特定された角型性にて補正した、補正後の角型性が使用されるのがよい。
ここで、別途の解析とは、たとえば、実測のごときTRFやTPMと検出コイルをコンピュータ内で模擬し、該検出コイル内を鎖交する磁束を読み取り、コンピュータ内で作成された減磁曲線から角型性を求めるものである。
実測値に基づいて特定された角型性を解析値に基づいて補正した、補正後の角型性を座標系に適用することで、より高い精度で保磁力差分量を特定することが可能となる。
本発明者等の検証によれば、従来のいわゆる切り刻み法にて保磁力分布磁石の各部位の保磁力を特定する場合と、上記する本発明の保磁力特定方法によって特定する場合とで、特定された結果はほぼ同値となっており、本発明の保磁力特定方法の精度の高さが実証されている。したがって、保磁力分布磁石を切り刻む等しなくとも、すなわち、非破壊状態で、当該保磁力分布磁石内部の各部位の保磁力を高精度に特定することができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の保磁力分布磁石の保磁力特定方法によれば、被特定対象の保磁力分布磁石を非破壊の状態で、その平均保磁力、最低保磁力、角型性、保磁力差分量(デルタ保磁力)、最高保磁力をそれぞれ特定し、これらに基づいて作成された保磁力分布グラフを用いて、保磁力分布磁石の任意箇所における固有の保磁力を高精度に特定することができる。
本発明の保磁力分布磁石の保磁力特定方法を説明したフロー図である。 (a)は、保磁力分布磁石の表面磁束密度を測定している状況を説明した模式図であり、(b)は、作成された減磁曲線の一実施例を示した図である。 平均保磁力−角型性座標系に作成された複数の保磁力差分量グラフを示した図である。 最低保磁力−角型性座標系に作成された複数の保磁力差分量グラフを示した図である。 実測値に基づく角型性と解析に基づく角型性の関係を説明したグラフである。 作成された保磁力分布グラフの一実施例を示した図である。 従来の切り刻み法(比較例)、本発明の保磁力特定方法(実施例)双方に基づいて保磁力の特定をおこなった実験結果を示すグラフである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は、5つの保磁力の異なる領域が一方向に漸次増減する保磁力分布磁石を取り上げて説明するものであるが、保磁力分布がこれ以外の形態の保磁力分布磁石に関する保磁力の特定に本発明の特定方法が適用できることは勿論のことである。
本発明による保磁力分布磁石の保磁力特定方法を、図1のフロー図を参照して詳述する。
被測定対象である保磁力分布磁石10は、たとえば、ハイブリッド車、電気自動車等の駆動用のIPMモータを構成するロータ内に埋設される磁石であり、ネオジムに鉄とボロンを加えた3成分系のネオジム磁石、サマリウムとコバルトとの2成分系の合金からなるサマリウムコバルト磁石、鉄酸化物粉末を主原料としたフェライト磁石、アルミニウム、ニッケル、コバルトなどを原料としたアルニコ磁石などを挙げることができる。
ここで、図示する保磁力分布磁石10は、保磁力の異なる磁石領域11、…、15の順に、保磁力が徐々に大きくなる保磁力分布を有しており(同図中、基準となるO点からの保磁力分布磁石の任意位置を距離:tとする)、これは、容易磁化方向(X方向)に保磁力分布を有するものである。なお、各磁石領域11、…、15は、残留磁束密度(Br)、リコイル比透磁率、垂下比透磁率がともにほぼ同値となっている。
軟磁性材料評価試験装置(TRFなど)を使用して、保磁力分布磁石10に外部の逆磁界をかけて減磁させていくことにより、保磁力座標と残留磁束密度(磁化)座標からなる座標系(の第二象限)に、図2bで示すような減磁曲線(I−Hカーブ)を作成することができる(ステップS1)。
なお、図2bにおいては、最大残留磁束密度が2%減磁した際の保磁力(Hr0.98)を当該保磁力分布磁石10の最低保磁力とし、減磁曲線が保磁力座標と交差する点を平均保磁力:Hcjにそれぞれ特定している。
次に、磁石の保磁力の分布状態を表す指標となる角型性を特定する。この角型性は、作成された減磁曲線と保磁力座標、および残留磁束密度(磁化)座標とで囲まれる部分の面積(図2bにおける面積S)の、減磁曲線で特定される最高磁束密度と平均保磁力と、保磁力座標、および残留磁束密度(磁化)座標とで囲まれる部分の面積(図2bにおける面積A)に対する比(S/A)で表されるものである。
このようにして、作成された減磁曲線から、被特定対象の保磁力分布磁石の最低保磁力、平均保磁力、角型性を特定する(ステップS2)。
ステップS2において保磁力分布磁石10の最低保磁力と平均保磁力を特定したら、これを、既に設定されている平均保磁力−角型性座標系、もしくは最低保磁力−角型性座標系にプロットする。
ここで、これらの座標系において、保磁力分布磁石の最低保磁力と最高保磁力の差分である、保磁力差分量に応じたグラフが作成されている。この保磁力差分量に関するグラフは、たとえば、解析結果をプロットしてこれらの近似曲線を求めることにより、差分量が2kOe、5kOe等ごとに一義的に設定できるものであり、したがって、これらの座標系の中に予め複数の保磁力差分量に応じたグラフを作成しておくのがよい。
図3は、平均保磁力−角型性座標系における保磁力差分量に応じた複数のグラフ例を、図4は、最低保磁力−角型性座標系における保磁力差分量に応じた複数のグラフ例をそれぞれ示しており、図中の多数のプロットはグラフ作成根拠となっている解析値を示している。
双方の座標系に作成されているグラフに関し、一次関数の点線ラインは、保磁力分布のない磁石の場合のグラフである。
そして、△3、△5、△7はそれぞれ、最低保磁力と最高保磁力の保磁力差分量が3kOe、5kOe、7kOeの場合のグラフをそれぞれ示している。
保磁力分布磁石内で保磁力差分量が少なくなるにつれて、保磁力分布のない磁石のグラフに漸近する傾向にあることが理解できる。
たとえば図3で示す平均保磁力−角型性座標系を使用する場合を例示すると、この座標系に、ステップS2において特定された保磁力分布磁石10の最低保磁力と平均保磁力から決定される点をプロットすることで、該プロット上の保磁力差分量グラフ、もしくは該プロットに最も近接した保磁力差分量グラフを、当該保磁力分布磁石における保磁力差分量として特定することができる。
たとえば、特定されている平均保磁力が15kOeで、角型性が0.96の場合には、これらから決定される点に最も近接した差分量:△7のグラフが特定される。
保磁力分布磁石の保磁力差分量が特定されたら、これを既に特定されている最低保磁力に付加することで、当該保磁力分布磁石の最高保磁力が自動的に特定される(ステップS3)。
ここで、本発明者等によれば、減磁曲線から特定された角型性と、別途解析にて特定された角型性との間に乖離があることが特定されている。そこで、平均保磁力−角型性座標系や最低保磁力−角型性座標系における、角型性座標の設定に際しては、測定結果を利用して作成された減磁曲線から特定された角型性を、解析にて特定された角型性にて補正した、補正後の角型性を使用するのがよい(ステップS6)。
ここで、別途の解析とは、たとえば、実測のごときTRFやTPMと検出コイルをコンピュータ内で模擬し、該検出コイル内を鎖交する磁束を読取り、コンピュータ内で作成された減磁曲線から角型性を求めるものである。
たとえば、作成された減磁曲線から特定された角型性と、別途解析にて特定された角型性と、の関係の一例を図5に示している。図5より、たとえば、実測値に基づく角型性が0.942の場合に、解析値に基づいて補正した補正後の角型性は0.966となる。
図5で示すような関係性を考慮し、作成された減磁曲線から特定された角型性を適宜補正し、この補正後の角型性が図3,4の座標系に適用される。
以上のステップで、保磁力分布磁石の最低保磁力、平均保磁力と最高保磁力が特定され、しかも、これらの値を示す保磁力分布磁石内における位置(図2aにおける、O点からの距離:t)も既知であることから、図6で示すような距離−保磁力座標系において、最高保磁力:P(H15)と最低保磁力:P(H11)、平均保持力:P(Hcj)に関する3点をこの座標系にプロットすることにより、保磁力分布グラフを作成することができる(ステップS4)。
作成された保磁力分布グラフを利用することで、被特定対象の保磁力分布磁石を破壊することなく、その内部の任意部位の保磁力を容易に特定することが可能となる(ステップS5)。
[従来の切り刻み法(比較例)、本発明の保磁力特定方法(実施例)双方に基づいて保磁力の特定をおこなった実験とその結果]
本発明者等は、本発明による保磁力特定方法の精度を検証するべく、長さが6mm程度の保磁力分布磁石を用意して、従来の切り刻み法で1mm刻みの分割片を作成して各分割片の保磁力を測定し(比較例)、一方で、図1で示すフローに則った本発明の保磁力特定方法にて保磁力分布グラフを作成した(実施例)。
その結果を図7に示しており、グラフ中、点線は実施例を、実線は比較例をそれぞれ示すものである。
同図から明らかなように、双方のグラフはほぼラップしており、したがって、本発明による保磁力特定方法によって作成された保磁力分布グラフを使用した場合においても、極めて高い精度で、保磁力分布磁石内の任意部位の保磁力を特定できることが実証された。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
10…保磁力分布磁石、11,12、13,14,15…保磁力の異なる磁石領域、X…容易磁化方向

Claims (3)

  1. 保磁力の相違する複数の領域からなる保磁力分布磁石において、該領域ごとに固有の保磁力を特定する、保磁力分布磁石の保磁力特定方法であって、
    被特定対象の前記保磁力分布磁石の減磁曲線を作成する第1のステップ、
    前記減磁曲線から、前記保磁力分布磁石の平均保磁力、最低保磁力、および、保磁力分布状態を表す指標である角型性、を特定する第2のステップ、
    平均保磁力と角型性との相間、もしくは最低保磁力と角型性との相間、のいずれか一方を用いて、保磁力分布磁石内の前記最低保磁力と任意に設定された最高保磁力の間の保磁力差分量を複数設定し、前記第2のステップで特定された前記最低保磁力もしくは前記平均保磁力と前記角型性から最適な前記保磁力差分量を特定し、該最低保磁力および該最適な保磁力差分量から最高保磁力を特定する第3のステップ、
    前記最高保磁力と、前記最低保磁力と、前記平均保磁力と、から前記保磁力分布磁石内における保磁力分布グラフを特定するとともに、該保磁力分布磁石の任意箇所における固有の保磁力を該保磁力分布グラフから特定する第4のステップ、からなる、磁石の保磁力特定方法。
  2. 前記第3のステップでは、平均保磁力−角型性座標系に作成された複数の保磁力差分量グラフ、および、最低保磁力−角型性座標系に作成された複数の保磁力差分量グラフ、が規定されており、
    第2のステップにて特定された平均保磁力と角型性、もしくは最低保磁力と角型性を、前記第3のステップにて前記平均保磁力−角型性座標系、もしくは前記最低保磁力−角型性座標系にプロットした際に、該プロット上の保磁力差分量グラフ、もしくは該プロットに最も近接した保磁力差分量グラフをもって、前記保磁力分布磁石の最低保磁力と最高保磁力の間の保磁力差分量として特定する、請求項1に記載の保磁力分布磁石の保磁力特定方法。
  3. 前記平均保磁力−角型性座標系もしくは前記最低保磁力−角型性座標系における、角型性座標は、前記第2のステップで実測に基づいて特定された前記角型性を、別途の解析にて特定された角型性を用いて補正した、補正後の角型性座標である、請求項2に記載の保磁力分布磁石の保磁力特定方法。
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