JP2010131003A - きのこの菌床栽培方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は大型で優れた形態と歯応えのある食感を有するきのこの菌床栽培方法を提供すること。
【解決手段】きのこの菌床栽培方法において、きのこの生育工程時に菌床栽培用培養基の表面に散水処理を行うことを特徴とするきのこの菌床栽培方法。散水処理に用いる物質が水又は子実体の生育に必要な成分含有水が例示される。本発明により、きのこの子実体の収量が増加し、さらに大型の子実体にもかかわらず、柄の部分の空洞が減少もしくは無くなった商品価値の高いきのこの安定生産が可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は大型で優れた形態と歯応えのある食感を有するきのこの菌床栽培方法に関する。
きのこを人工的に栽培する方法として菌床栽培があげられる。当該菌床栽培は、まず栽培ビンに菌床培地を充填し、固体種菌や液体種菌を接種するための孔を開け、当該菌床培地を殺菌する。次に当該菌床培地に好適な種菌を接種して培養した後、必要に応じ菌掻きなどの操作を行い、芽出しを経て菌床面から株状の子実体を発生させ、株状のきのこを収穫するのが一般的である。
現在、株状のきのこは市場に大量に出回っているため、一般消費者にとって目新しさがない。たとえ従来品種より味覚等の優れた特性を有する品種を開発しても、形態が似通っている限り従来品種との差別化が困難であることから、大型で株状ではなく1つの子実体でも十分な存在感のあるきのこの開発が求められている。
しかしながら、従来の方法を用いて得られる株状に群生した形態を有するきのこは、柄の太さや傘の大きさにはバラツキがあり、大型で品質のそろった、商品価値の高いきのこを栽培することは困難であった。
そこで近年、きのこの菌床栽培において大型の子実体を得る方法が検討されている。例えば、エリンギの栽培方法において、環境湿度50〜100%の範囲内で75%未満の低湿度環境と75%以上の高湿度環境とを一定間隔で保持することにより芽出し管理を行い、原基形成時に生成される発芽水を5日間以内に消失させて原基の生育を行うことが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2)
また、シメジ属きのこ、特にブナシメジの菌床栽培において、芽出しを栽培瓶の口部に施した蓋の天面の円乃至これと類似する形状の有効径が5〜30mmに設定された開口部を通じて大型のシメジを栽培することも報告されている(例えば、特許文献3)。
また、きのこの菌床栽培において、菌床培地に設けた孔の側面もしくは底部に生じた複数の芽から生育がよいと思われる1つの芽を選別し、当該1つの芽以外の他の芽は全て摘み取ってしまうという難度の高い操作を駆使した後、子実体の生育を行い、1つの孔につき1つの子実体を形成させることを特徴とするきのこの菌床栽培方法も開示されている(例えば、特許文献4)。
更に、きのこの菌床栽培において、きのこの収穫量を増加させる試みも行われている。例えば、子実体の生育時の水分補給及び栄養補給を行うため、芽出しを経て菌床面から子実体を発生・生育させる工程において、菌床培地へ水や子実体の生育に必要な物質を加える方法である。しかしながら、これらを菌床培地に加える場合、菌床培地の表面に散水すると、菌床培地の表面に出ている菌糸のため、加えた水分が表面上に長時間残り子実体が根腐れを起したり、加えた水分が子実体の上部に溜まり、子実体が透明になる「水きのこ」状態が生じる。このため、注入管を用いて菌床培地内部へ直接水分を加える方法が開発されている(特許文献5、特許文献6)。
特開2000−209944号公報 特開2002−233239号公報 特開平11−196668号公報 特開2006−115834号公報 特開平8−187030号公報 特開平10−23829号公報
しかしながら、前記特許文献1又は2に記載される方法は芽出し室の環境湿度を途中で変更するか、もしくは複数の環境湿度の異なる芽出し室が必要となるため、作業が煩雑となる。また、前記特許文献3に記載される方法は開口部から開くように複数の株状の子実体が形成されることから、良好な形態の子実体を得ることは困難であり、また子実体の根元部分については密集するため、特に柄部の形態や大きさについては満足できるものではなかった。
また、前記特許文献5又は6に記載される方法は、菌床培地中に注入管を差し込むための専用の機械が必要となる。更に、菌床培地中に直接注入管を差し込むため、生育中の子実体を傷つけたり、同じ注入管を複数の菌床培地に使用することが必要であることから、害菌汚染された菌床培地があった場合、他の汚染されていない菌床培地にも害菌被害が広がるおそれがある。
更に、きのこの菌床栽培、特にホンシメジの栽培においては子実体が大型化するにつれて、柄の部分に空洞が生じる場合があり、これによって商品価値が下がってしまうことがある。
本発明者らは大型のきのこ子実体を得るために特許文献4に記載のように、培地中に孔を設けて、その孔の側面又は底部より出た複数の芽を選別しながら生育を行い、1つの孔から1つの子実体を発生させれば、例えば、1本の子実体で20gを超える大型の、柄がまっすぐで太くかつ菌糸密度が高く肉質も緻密な、外観及び食感に優れた子実体が得られることを見出したが、この場合、孔に芽が生じない場合もあり、又は数多くの芽が出た場合にはその中から1つの芽を選別することが困難となり、その孔から所望の形状の子実体を収穫することができなくなるため、安定した収量を得ることが難しかった。そのため商業栽培においてはより安定した栽培方法の開発が望まれていた。
従って、本発明の課題は、製造管理をきわめて容易にし、大型で形状の優れた商品価値の高いきのこの子実体を安定して栽培する方法を提供することである。
本発明者らは大型の子実体を安定して得るために鋭意検討した結果、既に、きのこ原基から分化したきのこの子実体、好適には幼子実体を菌床栽培用培養基から単離し、さし芽として菌糸の蔓延した菌床栽培用培養基に移植して生育を続けると、驚くべきことに分化後の菌床から分離されたきのこ子実体が、培地の菌糸と再結合・融合し、商品として出荷しうる成熟子実体にまで成長することを見出している。また本発明の好適な栽培品種であるホンシメジの大規模商業栽培に適した菌床栽培用培養基の開発にも成功している。
本発明者らは更に鋭意検討をした結果、きのこの菌床栽培方法、特に単離されたきのこを用いる菌床栽培方法において、さし芽を移植した後の生育工程時に、菌床栽培用培養基の表面に散水処理を行うことで、驚くべきことにきのこの子実体の根腐れや水きのこ状態が生じず、きのこの子実体の収量が増加し、更に大型の子実体にもかかわらず、柄の部分の空洞が減少もしくは無くなることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明を概説すれば、本発明は、きのこの菌床栽培方法において、きのこの生育工程時に菌床栽培用培養基の表面に散水処理を行うことを特徴とするきのこの菌床栽培方法に関する。本発明の態様としては、きのこの生育工程の開始より10日以内に散水することを特徴とするきのこの菌床栽培方法が挙げられる。本発明の散水処理に用いる物質は、水又は子実体の生育に必要な成分含有水が挙げられる。また、きのことしてはホンシメジが挙げられる。
本発明により、きのこの子実体の収量の増加が可能なきのこの菌床栽培方法が提供される。本発明を利用することにより、大型で形状の優れたきのこの子実体を安定して得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明に用いることができるきのこには特に限定はなく、ホンシメジ、ハタケシメジ、ブナシメジ、ヒラタケ、シイタケ、エリンギ、アガリクス ブラゼイ ムリル等の食用きのこが挙げられる。これらきのこの菌株としては、市販の菌株でも、野生の子実体からの組織分離株でも、選抜、交配、細胞融合、遺伝子組換え等の方法により育種した株でもよいが、菌床栽培可能な菌株であればよい。本発明の好ましい一態様としてはホンシメジ(Lyophyllum shimeji)が挙げられる。ホンシメジとしては公知のホンシメジ菌株、例えば、Lyophyllum shimeji La 01−27(FERM BP−10960)、Lyophyllum shimeji La01−20(FERM BP−10959)、Lyophyllum shimeji La 01−37(FERM P−17456)、Lyophyllum shimeji La 01−45(FERM P−17457)、Lyophyllum shimeji La 01−46(FERM P−17458)及び栽培に適したこれらの変異株等が例示される。
また、本発明に好適なハタケシメジの菌株の例としては、ハタケシメジK−3303株(FERM BP−4347)、ハタケシメジK−3304株(FERM BP−4348)、ハタケシメジK−3305株(FERM BP−4349)、ハタケシメジF−623株(FERM P−13165)、ハタケシメジF−1154株(FERM P−13166)、ハタケシメジF−1488株(FERM P−13167)及び栽培に適したこれらの変異株等が例示される。
更に、本発明に好適なブナシメジの菌株の例としては、リオフィラム ウルマリウム菌株であるリオフィラム ウルマリウム M−8171(FERM BP−1415)、リオフィラム ウルマリウム K−0259(FERM P−12981)、リオフィラム ウルマリウム Lu1−172株(FERM BP−8354)、Lu1−173株(FERM BP−8355)、Lu1−174株(FERM BP−8356)、Lu1−181株(FERM BP−8357)及び栽培に適したこれら変異株等が例示される。
菌床栽培が可能な菌株で、本発明を適用できる菌株であれば、上記菌株に何ら制限されるものではない。
本発明のきのこの菌床栽培方法としては、ビン栽培、袋栽培、箱栽培などを適用することができる。一例としてビン栽培による本発明のきのこの栽培方法について述べると、その方法とは培地調製、ビン詰め、殺菌、接種、培養、(必要に応じて菌掻き)、芽出し、(必要に応じてさし芽の単離、さし芽の移植)、生育、散水、収穫等の各工程からなる。
次に、本発明の好ましい一態様であるきのこのさし芽を用いた菌床栽培方法について、具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
培地調製とは、菌床栽培に用いる各種基材を計量、かくはんし、加水してきのこの菌床栽培に適した水湿潤状態になるように水分調整する工程をいう。例えばホンシメジの菌床栽培用培養基(培地ともいう)は、麦類、トウモロコシ類、鋸屑、及びその他栄養剤等の組合せから適宜調製することができる。培地としては本発明に使用できるものであればよく限定はない。
ビン詰めとは、培地をビンに詰める工程である。具体的には、通常400〜2300mL容の耐熱性広口培養ビンに、調製した培地を、例えば1100mLビンの場合は550〜900g、好ましくは600〜850g、より好ましくは650〜750g圧詰し、中央部付近に口径0.5〜7cm、好ましくは1〜5cm程度、より好ましくは2〜4cm程度、深さが0.5cm〜16cm、好ましくは2cm〜15cm、より好ましくは7〜13cm程度の孔を1ないし複数個開け打栓する工程をいう。1ビンあたりの孔の数については、ビン口の大きさや穴の大きさに応じて適宜設定できるが、例えば1〜10個、好適には1〜8個、より好適には1〜6個が好ましい。
殺菌とは、培地中の実質的にすべての微生物を死滅させる工程であれば良く、通常蒸気による常圧殺菌では98〜100℃、4〜12時間、高圧殺菌では101〜125℃、好ましくは118℃、30〜90分間行われる。
接種とは、殺菌後20℃程度まで放冷された培地に種菌を植え付ける工程である。ホンシメジを例に説明すると、通常、種菌としてはホンシメジ菌糸をPGY液体培地、1/2PGY液体培地などのグルコース、ペプトン及び酵母エキスを主成分とする培地で25℃、10〜15日間培養したものを液体種菌として用い、1ビン当り約10〜50mL無菌的に植え付ける。また、公知の固体種菌を使用することもでき、例えば、ここまで説明した工程で得られる液体種菌接種済みの培地を25℃で60〜150日間培養し、菌廻りしたものも固体種菌として用いることができる。この場合、例えば、1ビン当り15gほどの固体種菌を無菌的に植え付ける。固体種菌は、特に限定はないが、培地調製工程で設けた孔中に植え付けることができる。
培養とは、菌糸を生育、熟成させる工程である。ホンシメジを例に説明すると、通常、種菌を接種した培地を温度20〜25℃、湿度50〜80%に保持して菌糸を蔓延させ、更に熟成させる。なお熟成は省くこともできる。培養工程は、850mLビンの場合は通常60〜150日間、好ましくは100日間前後行われる。
芽出しとは、培養工程を終了した後に栓を外し、必要があれば菌掻きを行い、子実体原基から幼子実体(原基の先端部に灰白色の菌傘が形成される様になった状態)を形成・生育させていく工程であり、通常10〜20℃、好ましくは15℃前後、湿度80%以上、照度1000ルクス以下で5〜15日間行う。また、前記の培養工程の前や芽出し工程の前に菌床面に複数の孔を形成することもできる。当該孔の形成により、培地の通気性が良好となる。芽出し工程中は加湿による結露水が発生しやすいため、濡れを防ぐ目的で菌床面を有孔ポリシートや波板等で覆っても良く、培養ビンを反転して培養しても良い。
さし芽の単離とは、芽出し工程で生育した子実体を単離する工程をいう。さし芽の単離は、きのこの品種に応じて最も適切な方法を選択すればよい。例えば、単離しやすいきのこであれば、菌床から手やピンセットで採取してもよく、単離しがたいきのこであればメス、包丁、スパーテル等の任意の器具を使用して所望の子実体を単離・採取すればよい。
本発明においてきのこのさし芽とは、後述のさし芽の移植工程に使用される子実体を意味する。きのこのさし芽の例としては、菌床栽培で得られるきのこ原基から分化した子実体が単離・使用できる。例えば原基から分化した幼子実体(原基の先端部に灰白色の菌傘が形成されるようになった状態)が好適であり、長さが5mm以上の幼子実体をさし芽として使用することが更に好適である。本発明が適用できるきのこの品種としては、後述の栽培方法に使用できるものであれば特に限定はなく、例えば上述の菌株が挙げられる。
さし芽の移植とは、さし芽の単離工程で得られたさし芽を、子実体を生育させたい培地の任意の位置に移植する工程である。
さし芽を移植する培地としては、さし芽の単離に使用した培地(さし芽単離後の培地)であってもよく、また当該培地とは別に製造したきのこの菌糸が蔓延した培地、例えば培養工程中の培地、芽出し工程中の培地であっても良い。また、これらの培地にさし芽を移植して成熟子実体を得た後の培地も再度使用することが可能である。培養工程中の培地としては菌糸が蔓延した直後のものから熟成が完了したものまでいずれのものも使用することが可能であるが、好ましくは70日以上、より好ましくは80〜120日間の培養工程を経た培養物である。また芽出し工程中の培地としては芽出し開始直後のものから芽出しが完了したものまでいずれのものでも使用することが可能である。移植される側の培地に子実体原基、幼子実体等が形成されている場合は、それらの子実体原基、幼子実体等をいったん取り除いたうえで、さし芽として使用する幼子実体を所望の位置に移植することができる。なお取り除かれた幼子実体は本発明の移植に用いるさし芽として使用することが可能であるのは言うまでもない。
移植の方法は移植されたさし芽が菌床上の菌糸と融合・成長するような方法であれば特に限定はない。また、さし芽は培地面の任意の位置に移植することが可能である。例えば培養工程の前や芽出し工程の前に菌床上に形成された孔部、例えば、植菌孔、通気孔等にかん合、すなわちはめ合わせることが好適であり、この方法はさし芽と菌床上の菌糸との融合に最適であることが本発明により見出された。また、さし芽工程の前に新たに孔を開け、そこに差し込んでもよい。これ等の孔の口径はさし芽がかん合する口径であればよく特に限定はないが、通常2〜20mm、好ましくは4〜10mmの直径であればよい。
培養基上の1つの孔に対し1本のさし芽、たとえば幼子実体を移植・生育せしめることで株状にならず1本1本が独立した大型で形状の良い子実体を製造することができる。なお1つの孔に対し数本の幼子実体を移植するのも本発明の一態様である。その際は各子実体の根元が癒着し、株状となるが、癒着する部分は子実体の根部のごく一部に限られるため、簡単に1本ずつ分けることができ、1つの孔に対し1本の幼子実体を移植して得られる子実体と同様の1本1本が独立した大型で形状の良い成熟子実体を得ることができる。また、さし芽として使用される子実体の大きさを分類し、同程度の大きさのさし芽を培地に移植し、栽培管理することで、大きさの揃った成熟子実体を得ることが可能である。
なお、さし芽、例えば幼子実体を孔への移植、例えば挿入する際には、幼子実体が直立し、かつ幼子実体の一部が培地に接触するように挿入するのが好適である。
生育とは、子実体原基や幼子実体を収穫可能な成熟子実体に生育させる工程をいい、移植したさし芽から成熟子実体を形成させる工程である。通常照度を2000ルックス以下にする以外は芽出し工程とほぼ同じ条件で5〜15日間行う。
なお生育工程では生育室での結露水による子実体の濡れの影響は少ない。
散水(本明細書において、散水処理と記載する場合もある)とは、菌床培地の表面(本明細書において、菌床栽培用培養基の表面と記載する場合もある)、上記きのこのさし芽を用いた菌床栽培方法においては、さし芽の移植の工程後の菌床培地の表面に、水もしくは子実体の生育に必要な成分含有水を散布又は添加する工程である。使用する水は、例えば水道水、地下水又は井戸水等が使用でき、好適には水道水が使用できる。また使用する子実体の生育に必要な成分含有水は、例えば水溶性の有機物もしくは有機化合物又は水溶性の無機物もしくは無機化合物等を含有する水が使用できる。子実体の生育に必要な成分とは、グルコース、カリウム等やこれらの塩が挙げられ、例えば、好適には塩化カリウム等が使用できる。これら成分を含有する水溶液を単独もしくは複数種を混合して、菌床培地の表面に散水することができる。子実体の生育に必要な成分の濃度としては、特に限定はないが、子実体の生育阻害が生じない濃度、例えば0.1%〜3%、好ましくは0.1%〜1.5%が好適である。
なお、使用する水及び子実体の生育に必要な成分含有水は、雑菌等の繁殖を防ぐため殺菌しておくことが好ましい。殺菌方法としては、特に限定はなく、例えばオートクレーブによる殺菌、水及び子実体の生育に必要な成分含有水をフィルターに通し雑菌や不純物等を取り除くフィルター滅菌等、水及び子実体の生育に必要な成分含有水が殺菌できる方法であればよい。
散水量としては、子実体の収量が増加する量であれば特に限定はないが、例えば、1100mLビン(約650〜750gの培地量)に対して、2〜50mL、好適には10〜30mLがよい。
また、散水時期に関しては、上記生育工程中であれば特に限定はないが、きのこの子実体の収量を増加及び柄の部分の空洞を減少もしくは無くすためには、きのこの菌床栽培における芽出し後の生育工程又はきのこのさし芽を用いた菌床栽培におけるさし芽の移植工程後の生育工程の開始より10日目以内がよく、好適には7〜10日目、更に好適には8日目がよい。散水回数については、生育工程中、1回だけでもよく、複数回行ってもよい。
以上の工程により成熟子実体を得ることができる。成熟子実体を収穫して栽培の全工程を終了する。
本願明細書において、湿度が100%を超える高加湿条件とは、飽和水蒸気量以上に加湿を行い、水が霧として漂う状態を指す。本願明細書では、このような高加湿状態を数値化するために、測定に(株)鷺宮製作所製の装置(商品名:ヒューミアイ100)を用いた。該装置は、空気中の水分を加熱によって下げ、湿度センサーで検出後、加熱による低下分を補正する方法を用いている。このため、本装置が示す数値は、100%以下では、相対湿度と同じであるが、100%を超えると、空気中に含まれる水分量を水蒸気に換算して飽和水蒸気量との比で現した数値となる。なお、加湿を行う方法は、超音波加湿器、蒸気式加湿器、噴霧式加湿器などの加湿器を用いるのが簡便である。
以上、本発明をホンシメジのさし芽を用いたビン栽培方法を例として説明したが、本発明は上記ホンシメジのさし芽を用いたビン栽培に限定されるものではないのは当然である。例えばハタケシメジの場合であれば、例えば特開平04−211308号記載の方法で菌床栽培を行い、本発明を実施することができる。シイタケの場合であれば、例えば特開平04−075538号記載の方法で菌床栽培を行い、本発明を実施することができる。またブナシメジ(Hypsizigus marmoreus、以前はLyophyllum ulmariumと分類)の場合であれば、例えば、特開平05−268942号記載の方法で菌床栽培を行い、本発明を実施することができる。他のきのこの場合も好適な栽培方法を選択し、本発明を実施すればよい。
以下に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例の範囲のみに限定されるものではない。
実施例1
PGY液体培地(組成:グルコース2.0%(w/v)、ペプトン0.2%(w/v)、酵母エキス0.2%(w/v)、KHPO0.05%(w/v)、MgSO・7HO0.05%(w/v))100mLにLyophyllum shimeji La 01−27株(FERM BP−10960)の菌糸を接種し、25℃で7日間振とう培養(100rpm)後、2mLを200mLの同培地に植え継ぎ7日間振とう培養(100rpm)後、更に培養物の全量を160Lの同培地が入った200L容ジャーファーメンター(小松川製作所製)に接種して6日間かくはん培養(かくはん速度:100rpm、通気量25L/分)を行い、液体種菌を調製した。一方、圧ペントウモロコシ(飯坂精麦社製)と針葉樹鋸屑のスギオガ〔(有)トモエ物産〕を乾物重量比で2:1(圧ペントウモロコシ:針葉樹鋸屑)に混合し、その水分が最終的に62重量%になるように水を加えて十分にかくはん・混合したものを、ポリプロピレン製の広口培養ビン(1100mL)にそれぞれ入れ(ビン及びフタを含めた重量合計800g)圧詰した。圧詰物表面の中央に口径2.0cmの、圧詰物表面の中央を中心とした直径4cmの円周上に均等に4つの口径1cmのそれぞれ深さが10cm程度の孔を計5つ開けたのち、培養ビンにキャップをし、118℃で30分間高圧蒸気殺菌を行い、20℃まで放冷したものを菌床栽培用培養基(固形培地)として調製した。この固形培地に上記の液体種菌を約12.5mL接種し、暗所にて温度20℃、湿度70〜75%の条件下で104日間菌糸を培養し、培地全体に菌糸を蔓延させた。次いで、キャップを外し、ビンを反転した後、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で115〜120%となるように制御した芽出室に移動し、100ルクス以下の照明下芽出しを行った。芽出し7日目にビンを正転させ、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で105〜120%となるように制御した生育室に移し、50〜100ルクス以下の照明下、2日間生育させることでさし芽として使用する幼子実体を得た。この幼子実体を上記記載の方法で培養工程まで終了した別の固形培地の、菌座中心部の孔を除く4つの孔に各1本ずつ移植した後、上記生育室に戻し、11日間生育させることで成熟子実体を得、収穫を行った。その際、生育0、2、4、7、9日目にそれぞれ25mLの0.9%KClを培地に添加した群(加水区)と添加しない群(対照区)を作製した。成熟子実体を収穫後、子実体の収量(g/ボトル)の比較を行った。その結果を表1に示す。
Figure 2010131003
実施例2
生育7,9,10日目にそれぞれ25mLの0.9%KClを添加した以外は実施例1と同様の操作を行って成熟子実体を得た。成熟子実体を収穫後、0.9%KClを培地に添加した群(加水区)と添加しない群(対照区)の子実体の収量(g/ボトル)の比較を行った。その結果を表2に示す。
Figure 2010131003
実施例3
生育8日目にそれぞれ25mLの0.9%KClを添加した以外は実施例1と同様の操作を行って成熟子実体を得た。成熟子実体を収穫後、0.9%KClを添加した群(加水区)と添加しない群(対照区)との子実体の収量(g/ボトル)及び子実体の空洞率(%)の比較を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2010131003
実施例4
生育8日目にそれぞれ50mLの0.9%KClを添加した以外は実施例1と同様の操作を行って成熟子実体を得た。成熟子実体を収穫後、0.9%KClを添加した群(加水区)と添加しない群(対照区)との子実体の収量(g/ボトル)及び子実体の空洞率(%)の比較を行った。その結果を表4に示す。
Figure 2010131003
実施例5
生育8日目にそれぞれ25mLの水道水、0.9%KCl又は0.9%KPBを添加した以外は実施例1と同様の操作を行って成熟子実体を得た。成熟子実体を収穫後、各溶液を添加した群と添加しない群(対照)との子実体の収量(g/ボトル)及び子実体の空洞率(%)の比較を行った。その結果を表5に示す。
Figure 2010131003
実施例6
実施例1と同様に培養工程が終了した固形培地に幼子実体4本を移植した後、長さ120cm、直径30mmの筒内に青色と白色のLEDが交互に計60個配置された照明器具(SONGLIM TECH(韓国)社製)を用いて照度を400ルクス以下、温度15℃、加湿をヒューミアイ100〔(株)鷺宮製作所製〕の表示値で105〜120%となるように制御した生育室に移し、菌座中心部の接種孔に15mLの水道水を添加した後、14日間生育させることで成熟子実体を得、収穫を行った。加水区と添加しない群(対照区)の子実体の収量(g/ボトル)を表2に示す。
Figure 2010131003
表1〜6より明らかなように、本発明を用いることにより、成熟子実体の収量が増加し、成熟子実体の柄の部分の空洞が減少もしくは無くなることが明らかとなった。
本発明により、きのこの子実体の収量が増加、特に子実体1つあたりの重量が増加し、更に大型の子実体にもかかわらず、柄の部分の空洞が減少もしくは無くなるといった商品価値の高いきのこが得られる、きのこの菌床栽培方法が提供される。

Claims (4)

  1. きのこの菌床栽培方法において、きのこの生育工程時に菌床栽培用培養基の表面に散水処理を行うことを特徴とするきのこの菌床栽培方法。
  2. きのこの生育工程の開始より10日目以内に散水処理を行うことを特徴とする請求項1記載のきのこの菌床栽培方法。
  3. 散水処理に用いる物質が水又は子実体の生育に必要な成分含有水である請求項1又は2記載のきのこの菌床栽培方法。
  4. きのこがホンシメジ(Lyophyllum shimeji)である、請求項1〜3いずれか1項に記載のきのこの菌床栽培方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN108617401A (zh) * 2018-04-23 2018-10-09 大兴安岭地区农业林业科学研究院(大兴安岭林业集团公司农业林业科学研究院) 一种野生毛尖蘑菌种的培育和栽培方法

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