JP2004089105A - ヒラタケ属茸の栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性が良好でコスト的に優れた、高品質のヒラタケ属茸の栽培、収穫方法を提供する。
【解決手段】乾物換算3〜7重量%の活性炭を含む培地を加熱殺菌後、ヒラタケ属茸種菌を接種し、菌回り培養および芽出しを行い、次いで生育、採取することにより、高品質のヒラタケ属茸を短期間で安定して取得できる。
【選択図】図2
【解決手段】乾物換算3〜7重量%の活性炭を含む培地を加熱殺菌後、ヒラタケ属茸種菌を接種し、菌回り培養および芽出しを行い、次いで生育、採取することにより、高品質のヒラタケ属茸を短期間で安定して取得できる。
【選択図】図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エリンギを代表とするヒラタケ属茸の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オガコと栄養材からなる培地に活性炭を添加して茸を栽培することは、特開昭55−120720号および特開昭61−201686号明細書に開示されている。
【0003】しかしながら、前者の明細書では、培地への活性炭添加量は、0.1重量%が適量であるとしており、0.6重量%も加えると、逆効果で、無添加の場合より収量が劣るとしている。本発明者らの研究によれば、このような少量の活性炭添加量では、ヒラタケ属茸では効果が見られず、実用に耐えない。
【0004】一方、後者の明細書では、培地全量に対し20〜40%に相当する活性炭を配合するとしている。活性炭は高価な素材であるので、このような高い配合率であると、費用対効果からみて茸栽培農家にとってコスト倒れとなり、全く実用化できない。さらに、この明細書では、シメジやエノキ茸について説明があるが、エリンギをはじめとするヒラタケ属茸について言及がされていない。
【0005】これらの従来技術の欠点を克服するものとして、特開2001−238541号明細書に、表面をセラミックスで被覆した活性炭を使う方法が開示されている。この方法で使用されるセラミックス表面被覆活性炭は、茸栽培用など特殊用途向けに特別に製造されるものであるので、必然的に製造コストが高く、高価になる欠点がある。
【0006】本発明者らは、汎用品として通常大量に製造され入手も容易な活性炭そのものを使い、食用茸として人気が高いエリンギ、ヒラタケ、ウスヒラタケ、トキイロヒラタケなどに代表されるヒラタケ属茸の栽培法を研究し、従来の常識を覆し、従来法の欠点を無くした本発明を完成することができた。
【0007】ヒラタケ属茸の中でも、特にエリンギは、香りヒラタケとか白鳳茸とも呼ばれ、長さ12〜13cm、かさの直径7〜8cmで茎も太く、ずっしりと肉が締まっていて、歯ごたえ、食味、日持ちの良さから、消費者に人気の高い茸である。しかし、平成5年に愛知県で導入されたばかりの新品目茸であるので、未だ十分な栽培実績があるとはいえず、生育前記に子実体が萎縮する立ち枯れ症状の被害が起きたり、収量、品質など生産が安定しないことが多いという生産上の問題を抱えているため、高価な茸となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したようにな従来技術が持っている欠点、すなわち生産性の低さや高コスト性を改善し、高品質のヒラタケ属茸を安いコストで安定して栽培し、収穫できるようにすることを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オガコと栄養材および全培地に対し乾物換算で3〜7重量%の活性炭を含む培地を加熱殺菌後、ヒラタケ属茸種菌を接種し、菌回り培養および芽出しを行い、次いで生育、採取することを特徴とするヒラタケ属茸の栽培方法である。
【0010】オガコとしては、針葉樹および広葉樹いずれも使用し得るが、通常、入手が容易なスギ材でよい。新しいオガコの場合、一般の行なわれているように、6ヶ月以上堆積熟成させることにより、オガコ中に含まれる樹脂成分その他の有害物質を取り除いてから、使用する。
【0011】栄養剤としては、米ヌカ、フスマ、コーンコブミール、豆腐粕、綿実殻、大豆皮、ホミニーフィード、特殊フスマなどがあり、入手の容易性や価格あるいは栄養成分値を勘案して適宜選択し、単品でも複数の併用でも使用できる。
【0012】栄養剤は、オガコに対し乾物換算で通常25〜80重量%程度、特に50〜75重量%使用する。
【0013】本発明においては、活性炭は、特開2001−238541号発明におけるようなセラミックス被覆などの特殊処理を施したものでなく、一般に入手可能な活性炭を使用できることが特長である。なかでもヤシ殻活性炭が適当であり、ヤシ殻と他の植物材とのブレンド活性炭であってもよい。
【0014】活性炭は、ロータリーキルンや縦炉などで400〜650℃の炭化(蒸焼)を揮発分が無くなるまで行ない、次いで、焼成炉の形状により若干異なるが、850〜1000℃程度での水蒸気賦活を12〜15時間程度行うことで高活性のものが生産できる。
【0015】活性炭粒度は30〜150メッシュがよく、特に40〜100メッシュであることが望ましい。そのほかの望ましい活性炭の性状としては、硬度が90%以上、水分率15%以下(望ましくは、12%以下)、pH値は9.0〜11.0(エリンギなどの生育適正pHが6.0〜7.0とされているので低目が望ましいと思われるが、添加量が少ないので上記範囲であれば、実際上問題にならない。)、電気伝導率280〜400μs/cm、灰分含量5〜15%(最適8〜12%)、ヨウ素吸着性能1000〜1200mg/g、シクロヘキサン吸着性能25%以上、好ましくは30%以上、比表面積1000〜1200m2/gである。
【0016】活性炭の配合量は、コストに大きく影響するので、オガコや栄養剤の種類などに応じてできるだけ予備テストをし、費用対効果の面で最も効率の良い量にするべきである。通常、乾物換算で全培地に対し3〜7重量%がよく、特に4〜5重量%が好ましい。3重量%未満では、効果が弱く、また7重量%超となると、技術的な効果は認められるものの、活性炭の原単位コストが大きくなるため、経済的なデメリットが生じ、実用的とはいえない。
【0017】活性炭添加による作用効果としては、(1)活性炭の細孔空隙部分に存在する酸素による生育促進、(2)活性炭の吸着力(ファンデアワールス力)による茸が放出する二酸化炭素の除去、(3)(2)と同様に茸が出すエチレンガスの吸着除去による生育促進、(4)活性炭に含まれる灰分のミネラルによる生育促進などがある。
【0018】
【発明の実施の形態】次に本発明における各工程について説明するが、これらは例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】オガコと栄養剤および活性炭を、上記したような配合比率で良く混合し、加水して水分率を60〜70%(特に65〜67%が望ましい。)とする。次いで、これを例えば通常使用される850ml容量の広口培養瓶に530g程度入れ、培地面中央に直径1.5〜3cmの棒で種菌接種用の穴を空けておき、施栓する。栓としては通気性のあるウレタン製の栓を用いるのが良い。施栓したものを110〜120℃で25分〜1時間高圧加熱殺菌する。この高圧加熱殺菌の前後に100℃で2時間程度の加熱工程を付加しておけば万全であるが、必須ではない。
【0020】殺菌終了後、放冷し、培地温度が20〜25℃になったことを確認したら、栓を開け、オガコ主材の培地で培養した目的ヒラタケ属種菌を15g程度接種し、施栓した後、培養室の室内温度20〜25℃、室内湿度60〜80%、室内二酸化炭素濃度3,000ppm以下において培養する。エリンギの場合、接種から15〜20日程度で培地全体に菌回りするので、それを確認したら、栓を外し、菌かき(平がき)をし、菌かき水で霧吹きを数回行い(菌かき水量2〜4ml)、そのまま芽出し工程にかける。
【0021】芽出しは、温度を15〜17℃程度に下げ、湿度を90〜100%に高め、二酸化炭素濃度を1000ppm以下とするのが良い。光照射も、300ルックス程度の光で1日数回に分け、合計1時間ほど照射した方が良い。
【0022】13〜14日程度で小さな子実体の芽が出、瓶口の高さまで伸びるるので、温度は1〜2℃下げ(13〜16℃とする。)、湿度は90〜95%、濃度は1000ppm以下とし、300ルックス程度の光を数回に分け1日当たり合計30分〜2時間程度づつ照射して2週間ほど生育を促す。芽出し、生育工程に至る前では、作業に必要な照明はするが、菌のための照明は特に必要としない。
【0023】
【実施例および比較例】
エリンギ供試菌株としてPleurotus eryngii 長野県野菜花き試験場保有菌株E−Ach(以下E−Ach)を用いた。栽培容器は850ml、58mm口径のPPビンを用い、キャップはPPウレタン栓を使用した。
培地基材として、6ヶ月以上加水堆積したスギオガコ1ビン当り211〜182g(活性炭添加量に従い減じた)を用い、これに栄養剤として1ビン当りコメヌカ45g、フスマ45g、コーンコブ25g(生重)を添加し、さらに添加剤として活性炭「ホクエツHJA−40Y」(味の素ファインテクノ株製品、ph 10.25)を2.5g(比較例1;培地中乾物重量当り含量1.37%)、5.0g(比較例2;同含量2.75%)、7.5g(実施例1;同含量4.12%)または10.0g(実施例2;同含量5.5%)添加した。活性炭をまったく添加しないで同様操作したものを対照とした。
【0024】これらをミキサーで攪拌しながら水道水を加え、水分率を66%に調整、栽培用培地とした。(上記は、説明上1ビンについて言及したが、各比較例、各実施例および対照からなる各試験区分においては、33本ずつの培養ビンを同時に使用したので、培地調整は、上記の33倍量で行い、1ビン当り535gずつ充填した。)
【0025】培地充填後、培地のビン中央部に直径20mm程度の種菌接種孔を、図1の写真に示すように、ビン底まで形成した。この培地を、高圧殺菌釜に入れ、118℃で30分間加熱殺菌した後、ダストレベルクラス1000のクリーンルームでビン温が約20℃に低下するまで放冷した。
【0026】殺菌後、各試験区から1ビンずつ任意に取り出し、培地の水分率、ph、糖度を測定した。その結果を表1に示す。水分率の測定は、殺菌後のビン内の培地を上部4分の1程掻き出し、残った培地を良く攪拌したものから10g抽出し、JAS法に従い105℃、24時間の乾熱処理を行い、前後の検体重量から質量基準による百分率で算出した。ph測定は、イオン交換水により上記培地を重量比5:1に希釈し常法により測定した。糖度は、光学屈折式の糖度計で測定した。
【表1】
【0027】殺菌・放冷後の全ての培地に、粉砕したE−Achのオガコ種菌を接種孔内および培地表面に15gずつ接種し、栽培用菌床を得た。栽培用菌床の培養は、室内温度23±1℃、室内湿度70%±10%、室内二酸化炭素濃度3000ppm以下となるように設定された培養室で行い、その間照明は作業時の天井の蛍光灯のみとした。
【0028】接種後36日で培養を終え、菌かき作業を実施した。菌かき方法は、菌床面にそって種菌を掻き取る平がきで、菌床に霧吹きで各ビンについて3ml程度の菌かき水を施した。
【0029】子実体の発生は、子実体の菌傘の径が5mm程度になるまで、室内温度16℃±1℃、室内湿度95〜100%、室内二酸化炭素濃度が1000ppm以下となるように設定された芽出し室で行った。このときの照明は蛍光灯により、照度300Lux程度で1回15分間ずつ1日4回、合計1時間実施した。
【0030】子実体がビン口まで成長した時(これまでの日数を「芽出し日数」とする。)、室内温度が15℃±1℃、室内湿度が90〜95%、室内二酸化炭素濃度が1000ppm以下となるように設定された生育室に移し、芽出し室と同様の照明管理を行い、子実体の生育を行なった。菌傘が平らになった時点で子実体を収穫した。収穫は発生した子実体を全て収穫する株取りで行い、1ビンからの発生は1回のみとした。各比較例、実施例および対照の成績を表2に示す。
【表2】
【0031】実施例1および2の場合、対照や比較例に比べ、種菌接種から収穫までの日数、特に菌回り日数が短縮され、合計で約3日から5日程短縮された。また、収量は、実施例1では対照に比べ差は見られなかったが、品質が良く、実施例2では収量および品質面のいずれにおいても優れていた。
【0032】種菌接種後56日後の各試験区分におけるエリンギの平均的な生育例の写真を図2に示す。
【0033】
【発明の効果】以上から明らかな通り、本発明によれば、入手が容易な活性炭そのものを比較的少量使用することで、短期間の培養で、高品質のエリンギをはじめとする、高価なヒラタケ属茸を安定して生産することが可能である利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、培地に種菌を接種する前の培養ビンの写真である。
【図2】は、種菌接種後56日後の各試験区分におけるエリンギの平均的な生育例の写真である。左端が対照、次が比較例1、3番目が比較例2、
4番目が実施例1、右端が実施例2のものである。
【発明の属する技術分野】本発明は、エリンギを代表とするヒラタケ属茸の栽培方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オガコと栄養材からなる培地に活性炭を添加して茸を栽培することは、特開昭55−120720号および特開昭61−201686号明細書に開示されている。
【0003】しかしながら、前者の明細書では、培地への活性炭添加量は、0.1重量%が適量であるとしており、0.6重量%も加えると、逆効果で、無添加の場合より収量が劣るとしている。本発明者らの研究によれば、このような少量の活性炭添加量では、ヒラタケ属茸では効果が見られず、実用に耐えない。
【0004】一方、後者の明細書では、培地全量に対し20〜40%に相当する活性炭を配合するとしている。活性炭は高価な素材であるので、このような高い配合率であると、費用対効果からみて茸栽培農家にとってコスト倒れとなり、全く実用化できない。さらに、この明細書では、シメジやエノキ茸について説明があるが、エリンギをはじめとするヒラタケ属茸について言及がされていない。
【0005】これらの従来技術の欠点を克服するものとして、特開2001−238541号明細書に、表面をセラミックスで被覆した活性炭を使う方法が開示されている。この方法で使用されるセラミックス表面被覆活性炭は、茸栽培用など特殊用途向けに特別に製造されるものであるので、必然的に製造コストが高く、高価になる欠点がある。
【0006】本発明者らは、汎用品として通常大量に製造され入手も容易な活性炭そのものを使い、食用茸として人気が高いエリンギ、ヒラタケ、ウスヒラタケ、トキイロヒラタケなどに代表されるヒラタケ属茸の栽培法を研究し、従来の常識を覆し、従来法の欠点を無くした本発明を完成することができた。
【0007】ヒラタケ属茸の中でも、特にエリンギは、香りヒラタケとか白鳳茸とも呼ばれ、長さ12〜13cm、かさの直径7〜8cmで茎も太く、ずっしりと肉が締まっていて、歯ごたえ、食味、日持ちの良さから、消費者に人気の高い茸である。しかし、平成5年に愛知県で導入されたばかりの新品目茸であるので、未だ十分な栽培実績があるとはいえず、生育前記に子実体が萎縮する立ち枯れ症状の被害が起きたり、収量、品質など生産が安定しないことが多いという生産上の問題を抱えているため、高価な茸となっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したようにな従来技術が持っている欠点、すなわち生産性の低さや高コスト性を改善し、高品質のヒラタケ属茸を安いコストで安定して栽培し、収穫できるようにすることを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オガコと栄養材および全培地に対し乾物換算で3〜7重量%の活性炭を含む培地を加熱殺菌後、ヒラタケ属茸種菌を接種し、菌回り培養および芽出しを行い、次いで生育、採取することを特徴とするヒラタケ属茸の栽培方法である。
【0010】オガコとしては、針葉樹および広葉樹いずれも使用し得るが、通常、入手が容易なスギ材でよい。新しいオガコの場合、一般の行なわれているように、6ヶ月以上堆積熟成させることにより、オガコ中に含まれる樹脂成分その他の有害物質を取り除いてから、使用する。
【0011】栄養剤としては、米ヌカ、フスマ、コーンコブミール、豆腐粕、綿実殻、大豆皮、ホミニーフィード、特殊フスマなどがあり、入手の容易性や価格あるいは栄養成分値を勘案して適宜選択し、単品でも複数の併用でも使用できる。
【0012】栄養剤は、オガコに対し乾物換算で通常25〜80重量%程度、特に50〜75重量%使用する。
【0013】本発明においては、活性炭は、特開2001−238541号発明におけるようなセラミックス被覆などの特殊処理を施したものでなく、一般に入手可能な活性炭を使用できることが特長である。なかでもヤシ殻活性炭が適当であり、ヤシ殻と他の植物材とのブレンド活性炭であってもよい。
【0014】活性炭は、ロータリーキルンや縦炉などで400〜650℃の炭化(蒸焼)を揮発分が無くなるまで行ない、次いで、焼成炉の形状により若干異なるが、850〜1000℃程度での水蒸気賦活を12〜15時間程度行うことで高活性のものが生産できる。
【0015】活性炭粒度は30〜150メッシュがよく、特に40〜100メッシュであることが望ましい。そのほかの望ましい活性炭の性状としては、硬度が90%以上、水分率15%以下(望ましくは、12%以下)、pH値は9.0〜11.0(エリンギなどの生育適正pHが6.0〜7.0とされているので低目が望ましいと思われるが、添加量が少ないので上記範囲であれば、実際上問題にならない。)、電気伝導率280〜400μs/cm、灰分含量5〜15%(最適8〜12%)、ヨウ素吸着性能1000〜1200mg/g、シクロヘキサン吸着性能25%以上、好ましくは30%以上、比表面積1000〜1200m2/gである。
【0016】活性炭の配合量は、コストに大きく影響するので、オガコや栄養剤の種類などに応じてできるだけ予備テストをし、費用対効果の面で最も効率の良い量にするべきである。通常、乾物換算で全培地に対し3〜7重量%がよく、特に4〜5重量%が好ましい。3重量%未満では、効果が弱く、また7重量%超となると、技術的な効果は認められるものの、活性炭の原単位コストが大きくなるため、経済的なデメリットが生じ、実用的とはいえない。
【0017】活性炭添加による作用効果としては、(1)活性炭の細孔空隙部分に存在する酸素による生育促進、(2)活性炭の吸着力(ファンデアワールス力)による茸が放出する二酸化炭素の除去、(3)(2)と同様に茸が出すエチレンガスの吸着除去による生育促進、(4)活性炭に含まれる灰分のミネラルによる生育促進などがある。
【0018】
【発明の実施の形態】次に本発明における各工程について説明するが、これらは例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】オガコと栄養剤および活性炭を、上記したような配合比率で良く混合し、加水して水分率を60〜70%(特に65〜67%が望ましい。)とする。次いで、これを例えば通常使用される850ml容量の広口培養瓶に530g程度入れ、培地面中央に直径1.5〜3cmの棒で種菌接種用の穴を空けておき、施栓する。栓としては通気性のあるウレタン製の栓を用いるのが良い。施栓したものを110〜120℃で25分〜1時間高圧加熱殺菌する。この高圧加熱殺菌の前後に100℃で2時間程度の加熱工程を付加しておけば万全であるが、必須ではない。
【0020】殺菌終了後、放冷し、培地温度が20〜25℃になったことを確認したら、栓を開け、オガコ主材の培地で培養した目的ヒラタケ属種菌を15g程度接種し、施栓した後、培養室の室内温度20〜25℃、室内湿度60〜80%、室内二酸化炭素濃度3,000ppm以下において培養する。エリンギの場合、接種から15〜20日程度で培地全体に菌回りするので、それを確認したら、栓を外し、菌かき(平がき)をし、菌かき水で霧吹きを数回行い(菌かき水量2〜4ml)、そのまま芽出し工程にかける。
【0021】芽出しは、温度を15〜17℃程度に下げ、湿度を90〜100%に高め、二酸化炭素濃度を1000ppm以下とするのが良い。光照射も、300ルックス程度の光で1日数回に分け、合計1時間ほど照射した方が良い。
【0022】13〜14日程度で小さな子実体の芽が出、瓶口の高さまで伸びるるので、温度は1〜2℃下げ(13〜16℃とする。)、湿度は90〜95%、濃度は1000ppm以下とし、300ルックス程度の光を数回に分け1日当たり合計30分〜2時間程度づつ照射して2週間ほど生育を促す。芽出し、生育工程に至る前では、作業に必要な照明はするが、菌のための照明は特に必要としない。
【0023】
【実施例および比較例】
エリンギ供試菌株としてPleurotus eryngii 長野県野菜花き試験場保有菌株E−Ach(以下E−Ach)を用いた。栽培容器は850ml、58mm口径のPPビンを用い、キャップはPPウレタン栓を使用した。
培地基材として、6ヶ月以上加水堆積したスギオガコ1ビン当り211〜182g(活性炭添加量に従い減じた)を用い、これに栄養剤として1ビン当りコメヌカ45g、フスマ45g、コーンコブ25g(生重)を添加し、さらに添加剤として活性炭「ホクエツHJA−40Y」(味の素ファインテクノ株製品、ph 10.25)を2.5g(比較例1;培地中乾物重量当り含量1.37%)、5.0g(比較例2;同含量2.75%)、7.5g(実施例1;同含量4.12%)または10.0g(実施例2;同含量5.5%)添加した。活性炭をまったく添加しないで同様操作したものを対照とした。
【0024】これらをミキサーで攪拌しながら水道水を加え、水分率を66%に調整、栽培用培地とした。(上記は、説明上1ビンについて言及したが、各比較例、各実施例および対照からなる各試験区分においては、33本ずつの培養ビンを同時に使用したので、培地調整は、上記の33倍量で行い、1ビン当り535gずつ充填した。)
【0025】培地充填後、培地のビン中央部に直径20mm程度の種菌接種孔を、図1の写真に示すように、ビン底まで形成した。この培地を、高圧殺菌釜に入れ、118℃で30分間加熱殺菌した後、ダストレベルクラス1000のクリーンルームでビン温が約20℃に低下するまで放冷した。
【0026】殺菌後、各試験区から1ビンずつ任意に取り出し、培地の水分率、ph、糖度を測定した。その結果を表1に示す。水分率の測定は、殺菌後のビン内の培地を上部4分の1程掻き出し、残った培地を良く攪拌したものから10g抽出し、JAS法に従い105℃、24時間の乾熱処理を行い、前後の検体重量から質量基準による百分率で算出した。ph測定は、イオン交換水により上記培地を重量比5:1に希釈し常法により測定した。糖度は、光学屈折式の糖度計で測定した。
【表1】
【0027】殺菌・放冷後の全ての培地に、粉砕したE−Achのオガコ種菌を接種孔内および培地表面に15gずつ接種し、栽培用菌床を得た。栽培用菌床の培養は、室内温度23±1℃、室内湿度70%±10%、室内二酸化炭素濃度3000ppm以下となるように設定された培養室で行い、その間照明は作業時の天井の蛍光灯のみとした。
【0028】接種後36日で培養を終え、菌かき作業を実施した。菌かき方法は、菌床面にそって種菌を掻き取る平がきで、菌床に霧吹きで各ビンについて3ml程度の菌かき水を施した。
【0029】子実体の発生は、子実体の菌傘の径が5mm程度になるまで、室内温度16℃±1℃、室内湿度95〜100%、室内二酸化炭素濃度が1000ppm以下となるように設定された芽出し室で行った。このときの照明は蛍光灯により、照度300Lux程度で1回15分間ずつ1日4回、合計1時間実施した。
【0030】子実体がビン口まで成長した時(これまでの日数を「芽出し日数」とする。)、室内温度が15℃±1℃、室内湿度が90〜95%、室内二酸化炭素濃度が1000ppm以下となるように設定された生育室に移し、芽出し室と同様の照明管理を行い、子実体の生育を行なった。菌傘が平らになった時点で子実体を収穫した。収穫は発生した子実体を全て収穫する株取りで行い、1ビンからの発生は1回のみとした。各比較例、実施例および対照の成績を表2に示す。
【表2】
【0031】実施例1および2の場合、対照や比較例に比べ、種菌接種から収穫までの日数、特に菌回り日数が短縮され、合計で約3日から5日程短縮された。また、収量は、実施例1では対照に比べ差は見られなかったが、品質が良く、実施例2では収量および品質面のいずれにおいても優れていた。
【0032】種菌接種後56日後の各試験区分におけるエリンギの平均的な生育例の写真を図2に示す。
【0033】
【発明の効果】以上から明らかな通り、本発明によれば、入手が容易な活性炭そのものを比較的少量使用することで、短期間の培養で、高品質のエリンギをはじめとする、高価なヒラタケ属茸を安定して生産することが可能である利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、培地に種菌を接種する前の培養ビンの写真である。
【図2】は、種菌接種後56日後の各試験区分におけるエリンギの平均的な生育例の写真である。左端が対照、次が比較例1、3番目が比較例2、
4番目が実施例1、右端が実施例2のものである。
Claims (4)
- オガコと栄養材および全培地に対し乾物換算で3〜7重量%の活性炭を含む培地を加熱殺菌後、ヒラタケ属茸種菌を接種し、菌回り培養および芽出しを行い、次いで生育、採取することを特徴とするヒラタケ属茸の栽培方法
- ヒラタケ属茸がエリンギであることを特徴とする請求項1のヒラタケ属茸の栽培方法
- 活性炭がヤシ殻活性炭またはヤシ殻を主材料とするブレンド活性炭であることを特徴とする請求項1乃至3のヒラタケ属茸の栽培方法
- 活性炭の含有量が全培地に対し乾物換算で4〜6重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のヒラタケ属茸の栽培方法
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002256596A JP2004089105A (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | ヒラタケ属茸の栽培方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002256596A JP2004089105A (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | ヒラタケ属茸の栽培方法 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN108450235A (zh) * | 2017-12-28 | 2018-08-28 | 山东常生源菌业有限公司 | 一种白灵菇生产方法 |
CN112889579A (zh) * | 2021-01-29 | 2021-06-04 | 吉林省生物研究所 | 一种食用菌培养基质 |
CN114788476A (zh) * | 2022-04-14 | 2022-07-26 | 河南农业大学 | 一种转基因平菇Pofst3+的栽培方法 |
-
2002
- 2002-09-02 JP JP2002256596A patent/JP2004089105A/ja active Pending
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CN108450235A (zh) * | 2017-12-28 | 2018-08-28 | 山东常生源菌业有限公司 | 一种白灵菇生产方法 |
CN112889579A (zh) * | 2021-01-29 | 2021-06-04 | 吉林省生物研究所 | 一种食用菌培养基质 |
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