JP2010112399A - ボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】プレス機などのように高荷重が加わる用途であっても優れた耐久性および信頼性を発揮できる新規なボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置の提供
【解決手段】ボールBとねじ溝30とのラジアル隙間Sを前記ボール径の1/300〜1/1200にすると共に、前記ラジアル隙間Sのない場合の前記ボールBとねじ溝30との初期接触角αを35°〜43°とし、かつ前記ねじ溝30が2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率Cを前記ボール径に対して51.5%〜54.0%とする。これによって、プレス機として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大荷重においてもボールの乗り上げが発生することがなく、優れた耐久性および信頼性を発揮できる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、送り機構の1つであるボールねじ装置に係り、特にプレス機などのようにストロークが短く(例えば、2リード以下)、かつ高荷重負荷が繰り返しかかる機器に最適なボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置に関する。
油圧シリンダに代わりモータでボールねじを駆動して荷重を受ける用途が増加している。
射出成型機に代表される用途では、数〜数十ストローク(ボールねじが数〜数十回転する)駆動される間、大きな荷重がボールねじに付与される。
このため、ボールねじには射出成型機として設定されたショット数(型締めや射出の回数)まで剥離などが生ずることなく使用できる寿命が必要とされる。
従来、ねじ溝曲率をボール径にできるだけ近く設定して負荷容量を増加させて長寿命になる設計が行われていた。
最近になり、板金などの曲げ加工や打ち抜き加工などのプレス機用にもボールねじが使用されるようになってきた。
この用途は、1mm以下から数mm程度の板材を加工するため、ボールねじに力がかかるストローク長は、射出成型機よりも小さく、高負荷容量用ボールねじの通常リード(16〜32mm)より小さくなるため、1ショット当たりに移動する距離が短くなり、同じ荷重であれば、数倍から数十倍のショット数まで耐えられる。
このため、寿命までのショット数は射出成型機より大きくなり、同寸のボールねじを用いると要求寿命より遙かに長い寿命となる。このため、ボールねじをダウンサイズして要求寿命と計算寿命を合わせられれば機械のコンパクト化を図ることができる。
しかし、現状の設計でサイズダウンを行うと要求寿命は満足するものの、大きな荷重が負荷されるため、ボールがねじ溝肩部に乗り上げ、ねじ溝肩部を破損させる可能性が高まる。
このリスクを回避するため、今までは計算寿命が要求寿命より非常に長くなってもサイズの大きなボールねじを使用せざるを得なくなり、装置をコンパクトにできないといった問題があった。
そのため、例えば、以下の特許文献1〜3では、ボールとねじ溝との初期接触角に着目し、その初期設定角を調整することで、ボールのねじ溝肩部への乗り上げを防止するようにしている。
特開2004−68996号公報 特開2006−105308号公報 特開2002−276765号公報
しかしながら、前記特許文献1〜3のようにボールとねじ溝との初期接触角を調整しただけでは、高荷重用途に用いた場合に充分な耐久性と信頼性を発揮することが困難である。
すなわち、高荷重が加わった場合には、ボールとねじ溝との接触角は、ラジアル隙間との関係により上方に変化するため、単に初期接触角のみを調整してもボールのねじ溝肩部への乗り上げを防止することはできない。また、ボールとねじ溝との接触楕円の長径寸法がねじ溝肩部に乗り上げるか否かが重要であるため、ボールとねじ溝曲率との関係も重要となってくる。
そこで、本発明は前記のような従来技術が有する問題点を解決するために案出されたものであり、その目的は、プレス機などのように高荷重が加わる用途であっても優れた耐久性および信頼性を発揮できるボールねじ装置およびこれを用いたサーボプレス装置を提供するものである。
前記課題解決するために第1の発明は、
外周に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、内周に前記ねじ軸のねじ溝と対向するように螺旋状のねじ溝を有するナットとを有し、前記両ねじ溝内に複数のボールを転動自在に配設したボールねじ装置であって、
前記ボールとねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200にすると共に、前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールとねじ溝との初期接触角を35°〜43°とし、かつ前記ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%としたことを特徴とするボールねじ装置である。
ここで、ボールとねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200としたのは、1/300を超えると、ボールとねじ溝との接触角が上昇し、高荷重が加わった際にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからであり、その一方、1/1200未満では、その隙間が小さすぎて管理が困難となるからである。より望ましくは、ボールとねじ溝とのラジアル隙間は、1/500〜1/1000の範囲である。
また、ラジアル隙間のない場合のボールとねじ溝との初期接触角を35°〜43°としたのは、後に実証するように、35°未満では、プレス機に適用した場合に必要な寿命を発揮するのが難しくなり、反対に43°を超えると、最大荷重負荷時にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからである。より望ましくは、この初期接触角は約40°である
また、ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率をボール径に対して51.5%〜54.0%と規定したのは、同じく後に実証するように51.5%未満では、最大荷重負荷時にボールがねじ溝肩部に乗り上げてしまうおそれがあるからであり、反対に54.0%を超えると、プレス機に適用した場合に必要な寿命を発揮するのが難しくなるからである。より望ましくは、この曲率は52.0%〜53.0%の範囲である。
また、第2の発明は、
発明1のボールねじ装置を用いたことを特徴とするサーボプレス装置である。
本発明によれば、プレス機として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大荷重においてもボールの乗り上げが発生することがなく、優れた耐久性および信頼性を発揮することができる。
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本発明に係るボールねじ装置100の実施の一形態を示したものである。
図示するようにこのボールねじ装置100は、 外周に螺旋状のねじ溝30を有するねじ軸10と、内周に前記ねじ軸10のねじ溝30と対向するように螺旋状のねじ溝40を有するナット20とを有し、前記両ねじ溝30,40内に転動体となるボールBを複数、転動自在に配設した構造となっている。
また、このナット20の側面には、これを貫通するようにリターンチューブ50,50が設けられており、両ねじ溝30,40内を転動してきたボールBを貫通孔22を介してナット20外に抜き出してから再び両ねじ溝30,40内に戻すように循環するようになっている。
そして、このような構成をした本発明のボールねじ装置100にあっては、図2に示すように、先ず、ボールBとねじ溝30(40)とのラジアル隙間Sがこのボール径dの1/300〜1/1200の大きさに設定されている。
具体的には、このボールBの径が3/8インチ(9.525mm)であるとすると、このラジアル隙間Sは、約30μm〜8μmとなる。但し、このボールBの径が1インチであるとすると、このラジアル隙間Sは、約85μm以下でその下限は、管理が容易な最小値である20μm以上となる。
次に、図示するように、このような前記ラジアル隙間Sのない場合の前記ボールBとねじ溝40(30)との初期接触角αがねじ軸10の半径方向に対して35°〜43°の範囲となっている。
また、図示するように、このねじ溝30および40の断面形状は、それぞれ2つの円弧30a、30a(40a、40a)で形成されるゴシックアーク形状となっていると共に、各円弧30a、30a(40a、40a)の曲率Cが前記ボール径dに対して51.5%〜54.0%の範囲となっている。
以下の表1は、ボールねじをプレス機に適用した場合に必要な寿命を満足する、ねじ溝曲率CおよびボールBとねじ溝30(40)との接触角αの関係を、また、以下の表2は、最大荷重負荷時にボールBがねじ溝肩部に乗り上げることがない、ねじ溝曲率CおよびボールBとねじ溝30(40)との接触角αの関係をそれぞれ示したものである。
ここで、各表中、塗り潰し領域が各条件を満足する範囲であり、また、表2は、ボールBが循環する部分の配列や、ねじ軸10とナット20との軸方向弾性変形量を考慮した。
また、この評価に用いたボールねじ装置としては、軸径φ63mm、リード16mm、循環巻き数2.5巻3列、ボール径1/2インチ仕様のボールねじを用い、最大荷重150kN、要求寿命1000万サイクルとして実験を行った。
Figure 2010112399
Figure 2010112399
この結果、先ず表1に示すように、プレス機に用いた場合に必要な寿命を満足するボールBとねじ溝40(30)との初期接触角αをみてみると、ねじ軸10の半径方向に対して少なくとも30°以上必要であることがわかる。
また、ねじ溝30(40)を構成する各円弧30a、30a(40a、40a)の曲率Cは、前記ボール径dに対して少なくとも曲率比(×100)で0.550(55.0%)以下が必要なことがわかる。
従って、プレス機用に用いた場合に必要な寿命を満足するねじ溝曲率と、ボールとねじ溝との接触角との関係を調べてみると、同表の塗り潰し範囲に示したように初期接触角αが30°以上、かつねじ溝曲率が55.0%以下であることがわかる。
一方、表2に示すように、最大荷重負荷時にボールBがねじ溝肩部に乗り上げることがないボールBとねじ溝30および40との接触角αと、ねじ溝曲率Cとの関係をみてみると接触角αが小さく、かつねじ溝曲率Cが大きい領域ほど良好な結果が得られることがわかる。
従って、ボールねじをプレス機に用いた場合にこれら両方の特性を満足する範囲としては、表1および表2の塗り潰し領域のうち、それぞれ太い実線で囲んだ重なり合った領域の範囲にすることが望ましい。
すなわち、上述したようにラジアル隙間Sのない場合の前記ボールBとねじ溝40(30)との初期接触角αがねじ軸10の半径方向に対して35°〜43°の範囲で、かつねじ溝40(30)の円弧30a、30a(40a、40a)の曲率Cが前記ボール径dに対して51.5%〜54.0%の範囲とすることが望ましい。
より好ましくは、表1および表2の太い実線で囲んだ領域の略中央の領域である、初期接触角αが約40°±1°、かつねじ溝40(30)の溝曲率Cが52.0%〜53.0%とすることが望ましい。
そして、このような構成をした本発明のボールねじ装置100にあっては、プレス機として一般的に要求される寿命を充分に満足すると共に、最大荷重が加わった場合でもボールがねじ溝肩部に乗り上げるようなことがなく、ねじ溝肩部の破損などを回避できる。従って、プレス機のような高荷重が繰り返し加わり、かつストロークが短い機器に用いた場合に特に優れた耐久性および信頼性を発揮することができる。
なお、表1および表2からもわかるように、溝曲率C:0.510、接触角α:25°〜30°の範囲もオーバーラップ範囲であって両特性を満足するが、この範囲はボール径dに対して溝曲率Cが非常に小さく、精度の良い加工が困難であるといった不都合があるため、この範囲での設計は現実的でない。
図3は、このような構成をした本発明のボールねじ装置100を用いたサーボプレス装置200の一例を示したものである。
図示するように、ボールねじ装置100のねじ軸10は、軸受92によって垂直方向に軸支されており、その頂部にはプーリー80が設けられると共に、ナット20には、プレス板90が取り付けられている。
そして、このプーリー80をサーボモータ60とタイミングベルト70によって回転させてナット20を上下動させることによってプレス板90とベース91とを近接離間させてプレス加工(板金の曲げ、打ち抜きプレス(プレスブレーキ、パンチングプレス、ベンダーなど)など)を行うことになる。
本発明に係るボールねじ装置100の実施の一形態を示す断面図である。 本発明に係るボールねじ装置100のボールBとねじ溝30(40)との関係を示す拡大図である。 本発明に係るボールねじ装置100を用いたサーボプレス装置200の一例を示す構成図である。
符号の説明
100…ボールねじ装置
200…サーボプレス装置
10…ねじ軸
20…ナット
30、40…ねじ溝
30a、40a…円弧
50…リターンチューブ
60…サーボモータ
70…タイミングベルト
80…プーリー
90…プレス板
91…ベース
B…ボール
C…ねじ溝曲率
S…ラジアル隙間
α…初期接触角

Claims (2)

  1. 外周に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、内周に前記ねじ軸のねじ溝と対向するように螺旋状のねじ溝を有するナットとを有し、前記両ねじ溝内に複数のボールを転動自在に配設したボールねじ装置であって、
    前記ボールとねじ溝とのラジアル隙間を前記ボール径の1/300〜1/1200にすると共に、前記ラジアル隙間のない場合の前記ボールとねじ溝との初期接触角を35°〜43°とし、かつ前記ねじ溝を2つの円弧で形成されるゴシックアーク形状にすると共に各円弧の曲率を前記ボール径に対して51.5%〜54.0%としたことを特徴とするボールねじ装置。
  2. 請求項1に記載のボールねじ装置を用いたことを特徴とするサーボプレス装置。
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